地震保険、最近の動向を中心にした一考察



Similar documents
Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

災害時の賃貸住宅居住者の居住の安定確保について

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

●電力自由化推進法案

スライド 1

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

●幼児教育振興法案

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

平成24年度税制改正要望 公募結果 153. 不動産取得税

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

<4D F736F F D C482C682EA817A89BA90BF8E7793B1834B A4F8D91906C8DDE8A A>

Taro-01 議案概要.jtd

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

税制面での支援

< EE597768E968BC688EA97972D372E786477>

<4D F736F F D208E52979C8CA78E598BC68F5790CF91A390698F9590AC8BE08CF D6A2E646F6378>

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

 

高松市緊急輸送道路沿道建築物耐震改修等事業補助金交付要綱(案)

社 会 保 障 税 一 体 改 革 ( 年 金 分 野 )の 経 緯 社 会 保 障 税 一 体 改 革 大 綱 (2 月 17 日 閣 議 決 定 ) 国 年 法 等 改 正 法 案 (2 月 10 日 提 出 ) 法 案 を 提 出 する または 法 案 提 出 を 検 討 する と された 事

定款

財政再計算結果_色変更.indd

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

<819A955D89BF92B28F BC690ED97AA8EBA81418FA48BC682CC8A8890AB89BB816A32322E786C7378>

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

スライド 1

課 税 ベ ー ス の 拡 大 等 : - 租 税 特 別 措 置 の 見 直 し ( 後 掲 ) - 減 価 償 却 の 見 直 し ( 建 物 附 属 設 備 構 築 物 の 償 却 方 法 を 定 額 法 に 一 本 化 ) - 欠 損 金 繰 越 控 除 の 更 な る 見 直 し ( 大

<6E32355F8D918DDB8BA697CD8BE28D C8EAE312E786C73>

Taro-条文.jtd

文化政策情報システムの運用等

18 国立高等専門学校機構


代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

Microsoft Word 行革PF法案-0概要

学校安全の推進に関する計画の取組事例

工 事 名 渟 城 西 小 学 校 体 育 館 非 構 造 部 材 耐 震 改 修 工 事 ( 建 築 主 体 工 事 ) 入 札 スケジュール 手 続 等 期 間 期 日 期 限 等 手 続 きの 方 法 等 1 設 計 図 書 等 の 閲 覧 貸 出 平 成 28 年 2 月 23 日 ( 火

Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

の 提 供 状 況 等 を 総 合 的 に 勘 案 し 土 地 及 び 家 屋 に 係 る 固 定 資 産 税 及 び 都 市 計 画 税 を 減 額 せずに 平 成 24 年 度 分 の 固 定 資 産 税 及 び 都 市 計 画 税 を 課 税 することが 適 当 と 市 町 村 長 が 認 め

m07 北見工業大学 様式①


工 事 名 能 代 南 中 学 校 体 育 館 非 構 造 部 材 耐 震 改 修 工 事 ( 建 築 主 体 工 事 ) 入 札 スケジュール 手 続 等 期 間 期 日 期 限 等 手 続 きの 方 法 等 1 設 計 図 書 等 の 閲 覧 貸 出 平 成 28 年 5 月 24 日 ( 火

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

就 学 前 教 育 保 育 の 実 施 状 況 ( 平 成 23 年 度 ) 3 歳 以 上 児 の 多 く(4 歳 以 上 児 はほとんど)が 保 育 所 又 は 幼 稚 園 に 入 所 3 歳 未 満 児 (0~2 歳 児 )で 保 育 所 に 入 所 している 割 合 は 約 2 割 就 学

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

(4) 運 転 する 学 校 職 員 が 交 通 事 故 を 起 こし 若 しくは 交 通 法 規 に 違 反 したことにより 刑 法 ( 明 治 40 年 法 律 第 45 号 ) 若 しくは 道 路 交 通 法 に 基 づく 刑 罰 を 科 せられてから1 年 を 経 過 していない 場 合 同

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

退職手当とは

している 5. これに 対 して 親 会 社 の 持 分 変 動 による 差 額 を 資 本 剰 余 金 として 処 理 した 結 果 資 本 剰 余 金 残 高 が 負 の 値 となるような 場 合 の 取 扱 いの 明 確 化 を 求 めるコメントが 複 数 寄 せられた 6. コメントでは 親


3. 選 任 固 定 資 産 評 価 員 は 固 定 資 産 の 評 価 に 関 する 知 識 及 び 経 験 を 有 する 者 のうちから 市 町 村 長 が 当 該 市 町 村 の 議 会 の 同 意 を 得 て 選 任 する 二 以 上 の 市 町 村 の 長 は 当 該 市 町 村 の 議

は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

川崎市木造住宅耐震診断助成金交付要綱

公表表紙

Microsoft Word - 目次.doc

<4D F736F F D F8D828D5A939982CC8EF68BC697BF96B38F9E89BB82CC8A6791E52E646F63>

人事行政の運営状況の報告について

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

定款  変更

Ⅰ 元 請 負 人 を 社 会 保 険 等 加 入 建 設 業 者 に 限 定 平 成 28 年 10 月 1 日 以 降 に 入 札 公 告 指 名 通 知 随 意 契 約 のための 見 積 依 頼 を 行 う 工 事 から 以 下 に 定 める 届 出 の 義 務 ( 以 下 届 出 義 務 と

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

第5回法人課税ディスカッショングループ 法D5-4

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

<4D F736F F D208DE3905F8D8291AC8B5A8CA48A948EAE89EF8ED0208BC696B18BA492CA8E64976C8F BD90AC E378C8E89FC92F994C5816A>


S16-386・ソフトウェアの調達に関する入札実施の件


(Microsoft Word - \220\305\220\247\211\374\220\263.doc)

Microsoft Word - 交野市産業振興基本計画 doc

<4D F736F F D2091E F18CB48D C481698E7B90DD8F9590AC89DB816A2E646F63>

定 性 的 情 報 財 務 諸 表 等 1. 連 結 経 営 成 績 に 関 する 定 性 的 情 報 当 第 3 四 半 期 連 結 累 計 期 間 の 業 績 は 売 上 高 につきましては 前 年 同 四 半 期 累 計 期 間 比 15.1% 減 少 の 454 億 27 百 万 円 となり

(2) 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 保 育 の 必 要 な 子 どものいる 家 庭 だけでなく 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 のために 利 用 者 支 援 事 業 や 地 域 子 育 て 支 援 事 業 な

4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

スライド 1

一般競争入札について

送 信 局 を 電 気 通 信 事 業 者 に 貸 し 付 けるとともに 電 気 通 信 事 業 者 とあらかじめ 契 約 等 を 締 結 する 必 要 があること なお 既 に 電 気 通 信 事 業 者 において 送 信 局 を 整 備 している 地 域 においては 当 該 設 備 の 整 備

っては いずれか 一 方 の 事 業 を 補 助 金 の 交 付 の 対 象 とする 3 第 1 項 各 号 に 掲 げる 事 業 において 国 県 若 しくは 本 市 からの 補 償 金 の 交 付 又 は 損 害 保 険 契 約 によ る 損 害 てん 補 その 他 これに 類 するものを 受

16 日本学生支援機構

1_2013BS(0414)

<4D F736F F D C689D789B582B581698AAE90AC92CA926D816A2E646F63>

新ひだか町住宅新築リフォーム等緊急支援補助金交付要綱

に 認 める 者 を 含 む 以 下 同 じ )であること (2) 町 税 を 滞 納 していない 者 であること ( 補 助 対 象 事 業 ) 第 4 条 補 助 金 の 交 付 の 対 象 となる 事 業 ( 以 下 補 助 対 象 事 業 という )は 補 助 事 業 者 が 行 う 町 内

根 本 確 根 本 確 民 主 率 運 民 主 率 運 確 施 保 障 確 施 保 障 自 治 本 旨 現 資 自 治 本 旨 現 資 挙 管 挙 管 代 表 監 査 教 育 代 表 監 査 教 育 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部 市 町 村 警 視 総 監 道 府 県 警 察 本 部

目 改 正 項 目 軽 自 動 車 率 の 引 上 げ 〇 国 及 び 地 方 を 通 じた 自 動 車 関 連 制 の 見 直 しに 伴 い 軽 自 動 車 の 標 準 率 が 次 のとおり 引 き 上 げられます 車 種 区 分 引 上 げ 幅 50cc 以 下 1,000 円 2,000 円

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果

参 考 改 正 災 害 対 策 基 本 法 1 ( 災 害 時 における 車 両 の 移 動 等 ) 第 七 十 六 条 の 六 道 路 管 理 者 は その 管 理 する 道 路 の 存 する 都 道 府 県 又 はこれに 隣 接 し 若 しくは 近 接 する 都 道 府 県 の 地 域 に 係

近畿中部防衛局広報誌

Ⅰ 年 金 制 度 昭 和 37 年 12 月 1 日 に 地 方 公 務 員 等 共 済 組 合 法 が 施 行 され 恩 給 から 年 金 へ 昭 和 61 年 4 月 から 20 歳 以 上 60 歳 未 満 のすべての 国 民 が 国 民 年 金 に 加 入 厚 生 年 金 基 金 職 域

<4D F736F F F696E74202D208CE38AFA8D8297EE8ED288E397C390A CC8A AE98EBA8DEC90AC816A2E707074>

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

[2] 控 除 限 度 額 繰 越 欠 損 金 を 有 する 法 人 において 欠 損 金 発 生 事 業 年 度 の 翌 事 業 年 度 以 後 の 欠 損 金 の 繰 越 控 除 にあ たっては 平 成 27 年 度 税 制 改 正 により 次 ページ 以 降 で 解 説 する の 特 例 (

Transcription:

平 成 18 年 度 大 会 レジュメ 地 震 保 険 最 近 の 動 向 を 中 心 にした 一 考 察 社 団 法 人 日 本 損 害 保 険 協 会 竹 井 直 樹 Ⅰ.はじめに 地 震 によって 住 宅 や 家 財 に 生 じた 損 害 をてん 補 する 家 計 地 震 保 険 ( 以 下 特 に 断 り 書 きのないかぎり 地 震 保 険 という )ついては 1964 年 に 発 生 した 新 潟 地 震 を 契 機 として 1966 年 に 国 の 積 極 的 な 関 与 のもとに 立 法 化 を 含 めた 制 度 として 誕 生 した 以 来 今 年 でちょうど 40 年 をむかえることになる この 40 年 の 間 も 日 本 列 島 では 大 小 さまざまな 規 模 の 地 震 が 発 生 し 時 には 人 的 物 的 被 害 を 与 えてきたが 地 震 保 険 についても 大 きな 地 震 が 発 生 するたびに 世 間 の 関 心 を 集 め 損 害 に 対 応 した 保 険 金 がもらえなかったとか 商 品 内 容 の 周 知 が 十 分 には されていないとか 普 及 のための 取 組 みが 不 十 分 である 等 の 指 摘 が 寄 せられてい る 地 震 保 険 は これから 詳 述 するその 制 度 的 な 特 徴 から 国 と 民 間 損 害 保 険 会 社 が 社 会 的 な 責 任 を 果 たしていくことが 明 示 的 に 求 められている 1 それ 故 この 高 い 公 共 性 を 有 するという 観 点 から 恒 常 的 に 制 度 見 直 しを 行 うことが 強 く 要 請 さ れ これまでの 40 年 の 間 に さまざまなきっかけを 通 じて 十 数 回 にのぼる 制 度 改 定 を 実 施 してきた 2 ところで 最 近 も 地 震 保 険 をめぐって その 見 直 しのきっかけになる あるい はなりそうな いくつかの 動 きがある 筆 者 としては それらの 動 きの 一 つひと つが 今 後 の 地 震 保 険 制 度 の 見 直 し 論 議 にとって これまでになく インパクト の 大 きい 興 味 深 いものであると 思 っている そこで 地 震 保 険 をめぐる 最 近 の 動 きを 概 観 しながら 地 震 保 険 の 位 置 付 けを この 機 会 に 再 考 察 し そのうえで 課 題 と 将 来 展 望 を 考 えてみたい 1

Ⅱ. 問 題 意 識 1. 地 震 への 備 え( 地 震 防 災 )に 関 する 最 近 の 状 況 (1) 地 震 防 災 の 進 展 まず 最 近 の 地 震 そのものに 対 する 国 や 社 会 全 般 の 防 災 を 中 心 とした 動 きや 現 状 について 整 理 したいと 思 う 地 震 保 険 を 考 察 するに 際 しては 差 し 迫 った リスクを 示 す 地 震 の 発 生 状 況 のほか 地 震 防 災 をめぐる 動 きや 現 状 も 十 分 に 認 識 しておくことが 重 要 であり その 前 提 を 抜 きにした 地 震 保 険 制 度 の 論 議 はあ り 得 ないといっても 過 言 ではない 何 故 この 点 を 強 調 するかは 後 述 するが いずれにしても 地 震 に 対 する 備 えとしての 防 災 の 問 題 は わが 国 の 恒 久 的 な 焦 眉 の 課 題 であることに 間 違 いはなく 地 震 保 険 制 度 もその 大 きなフレームの なかにあることを 看 過 してはならない さて 1995 年 に 発 生 した 阪 神 淡 路 大 震 災 は 数 多 くの 尊 い 犠 牲 のもとに 地 震 防 災 のさまざまな 分 野 に 対 して 多 くの 教 訓 を 与 え また 深 い 反 省 を 促 し た その 教 訓 や 反 省 は その 後 具 体 的 な 改 善 策 や 対 応 策 として 実 現 されてい った 以 下 予 防 時 報 220 号 3 で 掲 載 された 論 稿 を 中 心 にその 具 体 例 を 抽 出 してみた 1 法 律 制 度 ( 西 暦 は 各 法 律 の 公 布 年 を 示 す ) 消 防 法 の 改 正 1996 年 など 建 築 基 準 法 の 改 正 1998 年 など 建 築 物 の 耐 震 改 修 の 促 進 に 関 する 法 律 の 創 設 改 正 1995 年 2005 年 など 被 災 者 生 活 再 建 支 援 法 の 創 設 改 正 1998 年 2004 年 住 宅 の 品 質 確 保 の 促 進 等 に 関 する 法 律 の 創 設 1999 年 地 震 防 災 対 策 特 別 措 置 法 の 創 設 1995 年 2

2 国 または 自 治 体 の 体 制 整 備 各 省 庁 にまたがっていた 防 災 部 門 を 内 閣 府 に 統 合 首 相 官 邸 に 危 機 管 理 センターを 整 備 し 内 閣 官 房 に 内 閣 危 機 管 理 監 を 新 設 総 理 府 ( 現 文 部 科 学 省 )に 地 震 調 査 研 究 推 進 本 部 を 新 設 3 そ の 他 マイコンメーターやフレキシブル 配 管 等 の 開 発 設 置 よるガス 関 係 火 災 の 防 止 感 震 ブレーカーや 感 震 コンセント 等 の 開 発 による 通 電 火 災 の 防 止 災 害 用 伝 言 ダイヤル の 設 置 i モード 災 害 用 伝 言 板 サービス の 実 施 以 上 のとおり この 10 年 間 あまりの 間 にさまざまな 分 野 において 確 実 に 地 震 防 災 のレベルが 向 上 してきているが 地 震 から 個 人 の 生 命 や 財 産 を 守 るとい う 点 では 建 物 の 倒 壊 をいかに 少 なくするか 換 言 すれば 建 物 の 耐 震 化 をいか に 推 進 していくかが 問 題 解 決 のための 大 きな 鍵 となる しかし この 建 物 の 耐 震 化 の 推 進 という 課 題 に 対 しては 新 築 建 物 については 建 築 基 準 法 等 の 規 制 強 化 が 図 られているが 既 存 建 物 については 耐 震 改 修 の 動 きが 鈍 く なかなか 進 まないのが 実 態 である 4 地 震 保 険 を 運 営 する 側 からみても 建 物 耐 震 化 の 状 況 はリスク 評 価 の 上 で 極 めて 重 要 な 要 素 であり 耐 震 化 の 推 進 といういわば 国 家 的 命 題 に 関 して 地 震 保 険 制 度 がいかなる 役 割 を 果 たせるのかは われわれ も 真 剣 に 考 えなければならない 問 題 であろう (2) 地 震 防 災 のなかの 地 震 保 険 ここで 地 震 防 災 という 大 きなフレームの 中 で 地 震 保 険 の 位 置 付 けを 考 える ために 以 下 のとおり 地 震 災 害 発 生 の 時 系 列 的 経 過 ごとに 防 災 の 取 組 み 主 3

体 別 に 図 示 ( 例 示 )した 対 策 区 分 地 震 発 生 前 の 対 策 地 震 発 生 時 の 対 策 地 震 発 生 後 の 対 策 防 災 主 体 ( 狭 義 の 防 災 対 策 ) ( 緊 急 対 策 ) ( 復 旧 復 興 対 策 ) 行 政 耐 震 化 の 推 進 の 地 域 防 災 計 画 の ライフラインの (いわゆる 公 助 ) ための 政 策 実 施 復 旧 津 波 対 策 の 整 備 被 災 者 緊 急 支 援 防 災 基 本 計 画 の 策 定 地 域 社 会 (いわゆる 共 助 ) 地 域 コミュニテ ィの 連 携 自 主 防 衛 組 織 の 構 築 地 域 救 命 活 動 災 害 ボランティ ア 個 人 (*) 家 庭 内 防 災 対 策 家 族 の 救 命 生 活 復 興 資 金 の ( 自 助 ) 経 済 的 備 え 初 期 消 火 手 当 て 地 震 保 険 など * ここでは 個 人 の 役 割 を 中 心 に 整 理 したが 企 業 についても 事 業 継 続 計 画 (BCP) への 取 組 みの 推 進 など 地 震 をはじめとした 自 然 災 害 への 自 主 的 な 取 組 みが 進 展 しつ つある これでわかるように 地 震 保 険 は 個 人 の 自 助 の 一 手 段 に 過 ぎず 地 震 防 災 の さまざまな 分 野 や 切 り 口 からの 取 組 みが 有 機 的 にコラボレートすることによっ て 地 震 防 災 全 体 の 向 上 が 実 現 するものと 考 えられる (3) 情 報 提 供 活 動 の 進 展 最 近 の 地 震 防 災 の 動 きのなかで 平 時 における 国 による 情 報 提 供 活 動 や 啓 発 活 動 の 活 発 化 が 注 目 される なかでも 文 部 科 学 省 が 作 成 公 表 した 確 率 論 4

的 地 震 動 予 測 地 図 5 は 地 震 発 生 確 率 によって 全 国 を 色 分 けしたもので そ れぞれの 地 域 の 地 震 に 対 する 関 心 を 高 めてもらって 防 災 対 策 に 役 立 てようと いうねらいである この 予 測 地 図 はマスコミでも 頻 繁 に 取 り 上 げられ 地 域 ご とに 特 性 があることから ほぼ 全 国 的 に 関 心 を 集 め 周 知 されてきている そ の 影 響 もあって 阪 神 淡 路 大 震 災 が 発 生 してから 数 年 後 国 民 の 地 震 に 関 す る 関 心 は 一 時 低 下 しつつあったが その 後 の 新 潟 県 中 越 地 震 (2004 年 10 月 ) や 福 岡 県 西 方 沖 地 震 (2005 年 3 月 )の 発 生 も 寄 与 して 現 在 は 比 較 的 高 レベル を 維 持 しているといえる なお この 予 測 地 図 作 成 データは 後 述 する 地 震 保 険 の 料 率 算 出 にも 使 用 され ることとなった 2. 地 震 保 険 をめぐる 動 き 地 震 保 険 は 前 述 したようにその 制 度 的 な 性 格 から 常 に 見 直 しを 求 められてい る 地 震 保 険 制 度 が 発 足 して 40 年 の 間 に 都 度 制 度 改 定 が 行 われてきたが それでも さらなる 商 品 改 善 や 料 率 引 下 げへのニーズは 依 然 根 強 いと 考 えられ る また 建 物 の 耐 震 化 が 進 むにつれて 保 険 の 目 的 である 建 物 の 構 造 における 保 険 契 約 者 間 の 公 平 性 あるいはリスクの 均 質 化 と 料 率 のバランスの 要 請 から 割 引 制 度 への 期 待 も 高 まっている そして 国 の 財 政 面 での 要 請 という 点 では 行 政 改 革 の 一 環 として 政 府 再 保 険 を 支 える 地 震 再 保 険 特 別 会 計 の 見 直 し 論 議 も 始 まる 予 定 である Ⅲ. 地 震 保 険 の 歩 み 1. 公 的 保 険 としての 社 会 的 な 要 請 (1) 普 及 促 進 の 重 要 性 地 震 保 険 が 強 制 保 険 ではないにしても 公 的 保 険 としての 性 格 を 持 ってい るということは この 制 度 を 国 民 が 広 く 利 用 しなければ 社 会 的 な 損 失 になり かねないということであり そうした 事 態 を 招 来 しないためには 普 及 の 促 進 5

を 図 っていくことがきわめて 重 要 になる また 地 震 災 害 後 の 住 宅 復 興 に 係 る 仮 設 住 宅 の 建 設 費 負 担 等 の 行 政 支 出 を 抑 制 するためにも 自 助 努 力 による 備 えとしての 地 震 保 険 の 普 及 が 求 められている 現 在 国 ( 財 務 省 )と 日 本 損 害 保 険 協 会 を 中 心 にして 普 及 促 進 のための 活 動 が 続 けられている 具 体 的 には 毎 年 8 月 から 9 月 に 実 施 される 防 災 週 間 に 合 わせて テレビやラジオ 等 のマスメディアを 使 った 広 報 活 動 が 行 われて いるし 各 損 害 保 険 会 社 においても 毎 年 火 災 保 険 のみ 加 入 している 保 険 契 約 者 宛 に 地 震 保 険 の 契 約 締 結 を 促 す おすすめはがき を 出 状 している なお 普 及 促 進 活 動 を 行 っている 筆 者 の 立 場 からすれば これまでさまざ な 場 面 で 地 震 保 険 の 認 知 度 を 実 感 する 機 会 に 遭 遇 しているが 残 念 ながら 認 知 度 が 決 して 高 いとは 思 えないし 特 に 地 震 保 険 の 仕 組 みそのものに 対 する 世 間 一 般 の 理 解 については きわめて 乏 しいというのが 率 直 な 感 想 である このことは 制 度 を 運 営 する 側 に 何 らかの 問 題 があるといわざるを 得 ない 公 的 保 険 であればなおさらアカウンタビリティーを 要 請 されると 考 えるべきだ ろう (2) 制 度 改 定 の 歴 史 6 次 に 地 震 保 険 の 制 度 改 定 の 歴 史 について 概 観 することにする まず 創 設 当 初 の 地 震 保 険 制 度 の 内 容 をまとめる ( 1966 年 創 設 時 ) 1 保 険 の 目 的 住 宅 ( 建 物 )または 生 活 用 動 産 ( 家 財 ) 2 担 保 危 険 とてん 補 する 損 害 地 震 もしくは 噴 火 またはこれらによる 津 波 を 直 接 間 接 の 原 因 とする 火 災 損 壊 埋 没 または 流 出 によって 保 険 の 目 的 に 生 じた 損 害 のうち 全 損 のみ 6

3 加 入 方 法 住 宅 総 合 保 険 または 店 舗 総 合 保 険 に 付 帯 する( 自 動 付 帯 ) 4 保 険 金 額 および 加 入 限 度 額 住 宅 総 合 保 険 または 店 舗 総 合 保 険 の 保 険 金 額 30% ただし 建 物 90 万 円 家 財 60 万 円 を 限 度 とする 5 保 険 料 率 構 造 非 木 造 木 造 7 等 地 1 等 地 0.60 円 2.10 円 2 等 地 1.35 円 3.60 円 3 等 地 2.30 円 5.00 円 ( 注 ) 保 険 期 間 1 年 保 険 金 額 1,000 円 につき 6 1 回 の 地 震 による 保 険 金 総 支 払 限 度 額 3,000 億 円 さらに 制 度 創 設 以 来 40 年 の 間 に 十 数 回 の 改 定 を 行 ってきているが これ らを 上 記 各 項 目 ごとに 概 略 整 理 すると 次 のとおりである 1 保 険 の 目 的 特 段 改 定 なし 2 担 保 危 険 とてん 補 する 損 害 住 宅 または 家 財 の 半 損 もてん 補 する 改 定 を 行 い その 後 一 部 損 も て ん 補 3 加 入 方 法 特 定 の 火 災 保 険 契 約 に 自 動 付 帯 から 火 災 保 険 一 般 に 原 則 自 動 付 帯 に 変 更 7

4 保 険 金 額 および 加 入 限 度 額 火 災 保 険 の 保 険 金 額 の 30%から 30% 以 上 50% 以 下 へ 引 き 上 げ 加 入 限 度 額 は 建 物 家 財 別 に 順 次 引 上 げが 行 われ 阪 神 淡 路 大 震 災 後 は 大 幅 に 引 き 上 げて 現 在 に 至 る 5 保 険 料 率 等 地 区 分 料 率 水 準 割 引 の 新 設 などの 見 直 しを 過 去 5 回 行 ってい る 6 1 回 の 地 震 による 保 険 金 総 支 払 限 度 額 後 述 するが 過 去 10 回 引 き 上 げられている 地 震 保 険 の 普 及 率 が 顕 著 に 上 昇 してきたこの 10 年 では 予 想 最 大 損 害 額 (PML)が 当 然 増 大 するため 頻 繁 な 改 定 が 行 われている これまでどのような 制 度 改 定 が 行 われてきたかについて その 概 略 をまと めたが 最 後 に 今 現 在 の 地 震 保 険 の 概 要 を 記 す 項 目 概 要 保 険 の 目 的 住 宅 または 家 財 担 保 危 険 地 震 噴 火 またはこれらによる 津 波 を 原 因 とす る 火 災 損 壊 埋 没 または 流 失 8

加 入 方 法 火 災 保 険 一 般 に 原 則 自 動 付 帯 保 険 金 額 火 災 保 険 等 の 保 険 金 額 の 30% 以 上 50% 以 下 加 入 限 度 額 建 物 5,000 万 円 家 財 1,000 万 円 てん 補 する 損 害 全 損 保 険 金 額 の 100% 半 損 保 険 金 額 の 50 % 一 部 損 保 険 金 額 の 5 % 保 険 料 率 割 引 構 造 非 木 造 木 造 等 地 1 等 地 0.50 円 1.20 円 2 等 地 0.70 円 1.65 円 3 等 地 1.35 円 2.35 円 4 等 地 1.75 円 3.55 円 ( 注 ) 保 険 期 間 1 年 保 険 金 額 1,000 円 につき 建 築 年 割 引 1981 年 6 月 以 降 の 新 築 建 物 10% 耐 震 等 級 割 引 耐 震 等 級 3 は 30% 耐 震 等 級 2 は 20% 耐 震 等 級 1 は 10% 9

1 回 の 地 震 による 保 険 金 総 5 兆 円 支 払 限 度 額 2. 損 害 保 険 会 社 と 国 のキャパシティー 地 震 保 険 を 健 全 で 安 定 した 制 度 として 運 営 していくためには 巨 大 な 地 震 リ スクを 吸 収 できるキャパシティーをいかに 確 保 するかが 重 要 である 地 震 保 険 に 関 する 法 律 ( 以 下 地 震 保 険 法 という)と 地 震 保 険 の 政 府 再 保 険 に 係 る 運 営 ルール 定 めた 地 震 再 保 険 特 別 会 計 法 では 地 震 保 険 に 係 る 収 支 残 を 積 み 立 てることが 義 務 付 けられている これまでの 積 立 残 高 の 推 移 は 下 表 のとおりであり 直 近 の 2005 年 度 末 ( 平 成 17 年 度 末 )では 民 間 損 害 保 険 会 社 が 7,555 億 円 国 が 1 兆 124 億 円 で 合 計 1 兆 7,679 億 円 である しかし 関 東 大 震 災 が 再 来 した 場 合 や 東 海 東 南 海 南 海 地 震 が 同 時 発 生 した 場 合 を 想 定 すると この 水 準 は 十 分 な 金 額 ではないと されている 10

( 単 位 : 億 円 ) 民 間 損 保 政 府 政 府 民 間 合 計 年 度 責 任 限 度 額 危 険 準 備 金 責 任 限 度 額 責 任 準 備 金 責 任 限 度 額 準 備 金 昭 和 41 300 13 2,700 6 3,000 19 42 300 41 2,700 24 3,000 65 43 300 74 2,700 44 3,000 119 44 300 111 2,700 66 3,000 176 45 300 149 2,700 89 3,000 238 46 600 187 3,400 116 4,000 304 47 600 239 3,400 143 4,000 382 48 600 298 3,400 183 4,000 481 49 1,225 367 6,775 236 8,000 603 50 1,225 460 6,775 301 8,000 761 51 1,225 563 6,775 386 8,000 949 52 1,837.5 677 10,162.5 496 12,000 1,173 53 1,837.5 812 10,162.5 602 12,000 1,414 54 1,837.5 952 10,162.5 722 12,000 1,674 55 1,837.5 1,133 10,162.5 870 12,000 2,003 56 2,285 1,326 12,715 1,043 15,000 2,369 57 2,285 1,545 12,715 1,221 15,000 2,765 58 2,285 1,753 12,715 1,419 15,000 3,171 59 2,285 1,982 12,715 1,630 15,000 3,612 60 2,285 2,202 12,715 1,855 15,000 4,057 61 2,285 2,406 12,715 2,093 15,000 4,499 62 2,285 2,612 12,715 2,339 15,000 4,951 63 2,285 2,845 12,715 2,590 15,000 5,435 平 成 1 2,285 3,073 12,715 2,846 15,000 5,919 2 2,285 3,337 12,715 3,115 15,000 6,453 3 2,285 3,573 12,715 3,410 15,000 6,983 4 2,285 3,780 12,715 3,717 15,000 7,496 5 2,742 3,912 15,258 4,038 18,000 7,951 6 2,742 3,393 15,258 4,404 18,000 7,797 7 4,116 3,634 26,884 4,786 31,000 8,420 8 5,025.5 4,032 31,974.5 5,286 37,000 9,317 9 5,025.5 4,468 31,974.5 5,809 37,000 10,277 10 6,108.7 4,926 34,891.3 6,337 41,000 11,263 11 6,108.7 5,399 34,891.3 6,874 41,000 12,273 12 6,108.7 5,762 34,891.3 7,433 41,000 13,195 13 7,473.3 6,087 37,526.7 7,972 45,000 14,059 14 7,473.3 6,560 37,526.7 8,464 45,000 15,024 15 7,473.3 6,934 37,526.7 8,979 45,000 15,913 16 8,778.1 7,098 41,221.9 9,529 50,000 16,626 17 8,778.1 7,555 41,221.9 10,124 50,000 17,679 ( 注 ) 平 成 17 年 度 の 政 府 責 任 準 備 金 額 は 来 年 の 通 常 国 会 で 平 成 17 年 度 決 算 が 承 認 された 時 点 で 確 定 値 となる ( 日 本 地 震 再 保 険 株 式 会 社 調 べ) 11

Ⅳ. 地 震 保 険 の 仕 組 みに 関 する 実 務 家 から 見 た 特 徴 1. 何 故 公 的 保 険 か 地 震 保 険 がいかなる 理 由 で 公 的 保 険 なのかを 法 律 の 規 定 をキーにして 考 えて みたい 以 下 保 険 商 品 を 構 成 するうえで 重 要 な 項 目 ごとに 地 震 保 険 法 等 との 関 わりを 整 理 した 単 なる 民 間 保 険 とはまったく 異 にする 特 異 な 保 険 である ことがこの 表 によって 理 解 できると 思 う 法 律 約 款 地 震 保 険 法 同 法 政 令 お 地 震 保 険 普 通 保 険 約 款 項 目 よび 省 令 など 保 険 契 約 の 定 義 法 第 2 条 第 2 項 第 1 条 第 1 項 保 険 の 目 的 法 第 2 条 第 2 項 第 1 号 第 3 条 てん 補 する 損 害 および 金 額 法 第 2 条 第 2 項 第 2 号 お よび 政 令 第 1 条 第 1 条 第 1 項 および 第 2 項 第 4 条 第 1 項 加 入 方 法 法 第 2 条 第 2 項 および 第 3 第 23 条 項 に 基 づく 省 令 第 1 条 第 2 項 保 険 金 額 の 限 度 法 第 2 条 第 2 項 および 第 4 第 4 条 第 2 項 政 府 の 再 保 険 保 険 金 の 総 支 払 限 度 額 項 法 第 3 条 第 1 項 第 2 項 および 第 3 項 法 第 3 条 第 2 項 に 基 づく 政 令 第 3 条 および 政 令 第 3 条 に 基 づく 省 令 第 1 条 の 3 一 地 震 の 定 義 法 第 3 条 第 4 項 第 7 条 保 険 金 の 削 減 払 い 法 第 4 条 および 政 令 第 4 第 6 条 条 12

警 戒 宣 言 が 発 令 された 場 合 に 契 約 締 結 の 停 止 法 第 4 条 の 2 および 政 令 第 5 条 第 10 条 第 2 項 保 険 料 率 と 再 保 険 料 率 法 第 5 条 国 の 資 金 あっせん 義 務 法 第 8 条 保 険 会 社 の 責 任 準 備 金 積 立 義 務 国 の 責 任 準 備 金 積 立 義 務 法 第 10 条 および 省 令 第 7 条 地 震 再 保 険 特 別 会 計 法 第 8 条 2. 法 律 制 度 保 険 地 震 保 険 が 保 険 の 目 的 てん 補 内 容 保 険 金 額 保 険 料 率 など 保 険 商 品 の 基 本 的 な 部 分 を 法 律 の 規 定 に 依 拠 している 事 実 は 法 律 が 保 険 制 度 を 作 って いるという 意 味 で きわめて 特 異 な いわば 法 律 制 度 保 険 であるといえる このことは 地 震 保 険 に 関 するさまざまなニーズや 見 直 し 要 請 に 対 して その 対 応 を 民 間 損 害 保 険 会 社 の 自 主 性 に 委 ねる 仕 組 みにはなっていないということ である 民 間 損 害 保 険 会 社 が 火 災 保 険 に 付 帯 して 引 き 受 ける 地 震 保 険 は 火 災 保 険 などの 他 の 損 害 保 険 とはその 仕 組 みが 大 きく 異 なり 主 要 な 見 直 しにあた っては 立 法 権 限 を 持 つ 国 会 すなわち 国 民 的 な 合 意 の 手 続 きが 必 要 であること に 留 意 しなければならない 要 するに 地 震 保 険 を 改 定 して 実 施 していくプロセ スはそう 簡 単 ではないということである Ⅴ. 最 近 の 地 震 保 険 をめぐる 動 向 最 近 の 地 震 保 険 をめぐる 動 向 のなかで 筆 者 が 注 目 する きわめて 重 要 と 思 わ れる 動 きがある 以 下 その 内 容 と 重 要 性 について 考 えてみたい 1. 料 率 の 見 直 し (1) 基 準 料 率 改 定 の 動 き 2006 年 5 月 19 日 に 損 害 保 険 料 率 算 出 機 構 が 地 震 保 険 の 基 準 料 率 を 改 13

定 する 届 出 を 金 融 庁 に 行 った この 改 定 は 前 述 した 政 府 の 地 震 調 査 研 究 推 進 本 部 が 作 成 公 表 した 確 率 論 的 地 震 動 予 測 地 図 を 活 用 し 算 出 手 法 を 全 面 的 に 見 直 したものである その 結 果 全 国 平 均 では 7.7% の 料 率 引 き 下 げとなった この 基 準 料 率 については 損 害 保 険 料 率 算 出 団 体 に 関 する 法 律 の 規 定 に 基 づいて 同 年 6 月 23 日 に 金 融 庁 の 適 合 性 審 査 を 終 了 し 同 年 7 月 7 日 に 告 示 された (2) 割 引 対 象 の 拡 大 2006 年 9 月 26 日 に 損 害 保 険 料 率 算 出 機 構 が 地 震 保 険 の 保 険 料 割 引 に ついて 従 来 の 割 引 のほか 免 震 建 築 物 割 引 と 耐 震 診 断 割 引 を 追 加 する 届 出 を 金 融 庁 に 行 った 現 在 金 融 庁 において 適 合 性 審 査 を 行 っ ているところである (3) 意 義 この 数 か 月 の 間 に 立 て 続 けに 保 険 料 の 改 定 が 行 われたことは 今 地 震 保 険 が 置 かれた 状 況 や 課 題 を 如 実 に 示 したものといえよう すなわち 一 つは 料 率 算 出 のための 基 礎 データについて いかに 統 計 的 信 頼 度 を 高 めるかということであり もう 一 つは 地 震 リスクに 対 する 保 険 契 約 者 間 の 公 平 性 をいかに 確 保 するかということである 2. 保 険 料 控 除 制 度 の 創 設 (1) 経 緯 と 内 容 公 的 保 険 としての 性 格 から 地 震 保 険 の 普 及 促 進 は 民 間 損 害 保 険 会 社 と 国 の 義 務 といっても 過 言 ではない 大 きなテーマであることは 前 述 した とおりである 日 本 損 害 保 険 協 会 では 普 及 促 進 の 切 り 札 として 阪 神 淡 路 大 震 災 が 発 生 した 1995 年 以 来 地 震 保 険 の 保 険 料 控 除 制 度 を 創 設 す る 税 制 要 望 を 行 ってきたが 永 年 の 念 願 が 叶 い 平 成 18 年 度 (2006 年 度 ) 14

税 制 改 正 において 2007 年 からの 実 施 が 決 定 した 具 体 的 には 住 宅 ま たは 家 財 を 保 険 の 目 的 とする 地 震 等 による 損 害 をてん 補 する 保 険 契 約 等 の 保 険 料 等 ( 最 高 5 万 円 )を 所 得 金 額 から 控 除 することができるように なる (2) 意 義 地 震 保 険 の 保 険 料 控 除 制 度 を 新 たに 創 設 する 基 本 的 な 考 え 方 は 地 震 災 害 に 対 する 国 民 の 自 助 努 力 による 個 人 資 産 の 保 全 を 促 進 し 地 域 災 害 時 における 将 来 的 な 国 民 負 担 の 軽 減 を 図 ることである 8 しかし 一 方 で 従 来 の 損 害 保 険 料 控 除 制 度 を 原 則 廃 止 したこととの 関 係 をどのように 考 えるかという 問 題 がある 従 来 の 制 度 がその 目 的 を 達 成 したことが 廃 止 の 理 由 のようだが では 地 震 保 険 だけをあえて 新 設 した 理 由 は 何 であろ う それは 前 述 したように 来 るべき 地 震 災 害 に 備 えて 国 民 の 自 助 努 力 を 促 進 するためには 地 震 保 険 の 普 及 率 をさらに 向 上 させる 必 要 がある と 国 が 認 識 したからである したがって 普 及 率 が 一 定 のレベルに 達 す るまでは 民 間 損 害 保 険 会 社 も 国 もその 向 上 に 向 けて 鋭 意 努 力 していく 義 務 があると 言 っても 過 言 ではない 換 言 すれば 地 震 保 険 は 公 的 保 険 で ありながら 国 民 に 十 分 利 用 されているとはいいがたく このままでは 制 度 を 利 用 する あるいはできる 側 にとっても 制 度 を 提 供 する 側 にとっ ても 社 会 的 な 損 失 になりかねないという 認 識 に 基 づくものである 3. 地 震 再 保 険 特 別 会 計 の 見 直 し 政 府 が 行 っている 行 政 改 革 をさらに 推 進 する 目 的 で 2005 年 12 月 24 日 に 閣 議 決 定 された 行 政 改 革 の 重 要 方 針 において 地 震 再 保 険 特 別 会 計 につ いては 平 成 20 年 度 (2008 年 度 )までに 再 保 険 機 能 の 取 り 扱 いにつき 検 討 するものとする とされた そして 2006 年 5 月 には この 重 要 方 針 を 盛 り 込 んだ 簡 素 で 効 率 的 な 政 府 を 実 現 するための 行 政 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 15

(いわゆる 行 政 改 革 推 進 法 )が 成 立 した この 法 律 の 第 3 節 特 別 会 計 改 革 では その 第 24 条 で 地 震 再 保 険 特 別 会 計 において 経 理 されている 再 保 険 の 機 能 に 係 る 事 務 及 び 事 業 については そ の 在 り 方 を 平 成 20 年 度 (2008 年 度 ) 末 までに 検 討 するものとする と 規 定 していて 現 在 所 管 の 財 務 省 で 検 討 を 開 始 している Ⅵ.まとめ 1. 地 震 保 険 制 度 のミッションは 何 か 地 震 リスクの 特 異 性 国 と 民 間 保 険 会 社 の 役 割 分 担 2. 地 震 保 険 の 将 来 展 望 減 災 へのインセンティブ 自 助 共 助 公 助 のバランス 1 地 震 保 険 は 国 と 民 間 損 害 保 険 会 社 がその 社 会 的 責 任 を 果 たしているという 意 味 で 今 の 時 流 的 にはまさにCSR(Corporate Social Responsibility) 保 険 だといえる 2 1965 年 4 月 に 当 時 の 田 中 角 栄 大 蔵 大 臣 に 答 申 された 保 険 審 議 会 のとりまとめ では 本 質 的 に 困 難 な 問 題 を 含 むこの 保 険 について 当 初 から 理 想 的 なもの を 望 むよりは まず 現 実 的 に 可 能 な 案 による 制 度 の 発 足 を 図 ることが 急 務 と 思 われる 政 府 および 損 害 保 険 会 社 は 今 後 とも 一 層 の 熱 意 をもってその 内 容 を さらに 充 実 したものとし 社 会 的 要 請 に 応 えるよう 希 望 するものである と あり 不 断 の 制 度 見 直 しを 要 請 している また 地 震 保 険 法 案 の 国 会 論 議 でも 施 行 後 の 改 善 を 求 める 附 帯 決 議 がなされている 3 日 本 損 害 保 険 協 会 が 発 行 するリスクマネジメント 総 合 誌 220 号 は 2005 年 16

1 月 1 日 に 発 行 した 阪 神 淡 路 大 震 災 から 10 年 と 題 する 特 集 号 である 4 国 では 1995 年 に 建 築 物 の 耐 震 改 修 の 促 進 に 関 する 法 律 が 施 行 され 建 物 耐 震 化 の 推 進 を 図 ろうとしているが さらにこの 取 組 みを 強 化 する 目 的 で 2006 年 1 月 にアクションプログラムの 策 定 等 を 盛 り 込 んだ 改 正 が 行 われてい る また 平 成 18 度 税 制 から 耐 震 改 修 促 進 税 制 が 創 設 され 耐 震 改 修 に 要 し た 費 用 の 一 部 を 所 得 税 額 控 除 する 措 置 を 講 じて 既 存 建 物 の 耐 震 改 修 の 促 進 を 目 指 している 国 の 目 標 は 住 宅 については 現 在 の 耐 震 化 率 75%を 今 後 10 年 ( 2015 年 まで)で 90%に 引 上 げるとしている 5 この 予 測 地 図 は 地 震 防 災 対 策 特 別 措 置 法 に 基 づいて 設 置 された 文 部 科 学 大 臣 を 本 部 長 とする 地 震 調 査 研 究 推 進 本 部 内 の 地 震 調 査 委 員 会 が 2005 年 3 月 に 作 成 公 表 したもの 一 定 の 期 間 内 に ある 地 域 が 強 い 地 震 動 に 見 舞 われる 可 能 性 を 確 率 等 を 用 いて 示 している 6 損 害 保 険 料 率 算 出 機 構 編 日 本 の 地 震 保 険 2005 年 9 月 を 参 照 した 7 地 震 保 険 創 設 時 は 1 等 地 から3 等 地 の 三 区 分 に 分 け 保 険 料 率 のいちばん 高 い 3 等 地 は 東 京 都 墨 田 区 江 東 区 荒 川 区 神 奈 川 県 横 浜 市 鶴 見 区 中 区 西 区 および 川 崎 市 の 東 海 道 線 以 東 の 地 区 であった 8 自 由 民 主 党 平 成 18 年 度 税 制 改 正 大 綱 平 成 17 年 12 月 15 日 3 頁 を 参 照 した 以 上 17

当 レジュメ の 著 作 権 は 日 本 保 険 学 会 に 帰 属 します 18