<955C8E86874082C68743205B8D5890568DCF82DD5D2E6169>



Similar documents
Microsoft PowerPoint - 報告書(概要).ppt

<4D F736F F D D3188C091538AC7979D8B4B92F F292B98CF092CA81698A94816A2E646F63>

Microsoft PowerPoint - 経営事項審査.ppt

●電力自由化推進法案

その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

新 行 財 政 改 革 推 進 大 綱 実 施 計 画 個 票 取 組 施 策 国 や 研 究 機 関 への 派 遣 研 修 による 資 質 向 上 の 推 進 鳥 インフルエンザ 等 新 たな 感 染 症 等 に 対 する 検 査 技 術 の 習 得 など 職 員 の 専 門

学校安全の推進に関する計画の取組事例

慶應義塾利益相反対処規程

●幼児教育振興法案

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

岡山県警察用航空機の運用等に関する訓令

Taro-01 議案概要.jtd

航空隊及び教育航空隊の編制に関する訓令

預 金 を 確 保 しつつ 資 金 調 達 手 段 も 確 保 する 収 益 性 を 示 す 指 標 として 営 業 利 益 率 を 採 用 し 営 業 利 益 率 の 目 安 となる 数 値 を 公 表 する 株 主 の 皆 様 への 還 元 については 持 続 的 な 成 長 による 配 当 可

Microsoft Word - 不正アクセス行為の禁止等に関する法律等に基づく公安

調達パートナー CSR調査票

Microsoft Word 行革PF法案-0概要

セルフメディケーション推進のための一般用医薬品等に関する所得控除制度の創設(個別要望事項:HP掲載用)

< F2D A C5817A C495B6817A>

<4D F736F F D208ED089EF95DB8CAF89C193FC8FF38BB CC8EC091D492B28DB88C8B89CA82C982C282A282C42E646F63>

1 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )について 林 地 台 帳 整 備 マニュアル( 案 )の 構 成 構 成 記 載 内 容 第 1 章 はじめに 本 マニュアルの 目 的 記 載 内 容 について 説 明 しています 第 2 章 第 3 章 第 4 章 第 5 章 第 6 章 林 地

当社の法人関係情報の管理態勢およびその強化に向けた今後の対応策について

<6D33335F976C8EAE CF6955C A2E786C73>

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

独立行政法人国立病院機構呉医療センター医療機器安全管理規程

スライド 1

<4D F736F F D208DE3905F8D8291AC8B5A8CA48A948EAE89EF8ED0208BC696B18BA492CA8E64976C8F BD90AC E378C8E89FC92F994C5816A>

< F2D926E88E6895E977089DB81608E528CFB8CA78C788E4082CC8D71>

ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

・モニター広告運営事業仕様書

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

学校教育法等の一部を改正する法律の施行に伴う文部科学省関係省令の整備に関する省令等について(通知)

プライバシーマーク 付 与 適 格 性 審 査 業 務 基 本 規 程 改 廃 履 歴 版 数 制 定 改 定 日 改 訂 箇 所 改 訂 理 由 備 考 年 8 月 26 日 初 版 制 定 年 7 月 1 日 JIPDEC プライバシーマーク 制 度 基 本

Microsoft Word - ★HP版平成27年度検査の結果


<4D F736F F D208C6F D F815B90A BC914F82CC91CE899E8FF38BB582C982C282A282C42E646F63>

<4D F736F F D E598BC68A8897CD82CC8DC490B68B7982D18E598BC68A8893AE82CC8A C98AD682B782E993C195CA915B C98AEE82C382AD936F985E96C68B9690C582CC93C197E1915B927582CC898492B75F8E96914F955D89BF8F915F2E646F6

資料2-2 定時制課程・通信制課程高等学校の現状

頸 がん 予 防 措 置 の 実 施 の 推 進 のために 講 ずる 具 体 的 な 施 策 等 について 定 めることにより 子 宮 頸 がんの 確 実 な 予 防 を 図 ることを 目 的 とする ( 定 義 ) 第 二 条 この 法 律 において 子 宮 頸 がん 予 防 措 置 とは 子 宮

<4D F736F F D C482C682EA817A89BA90BF8E7793B1834B A4F8D91906C8DDE8A A>

Microsoft Word - 交野市産業振興基本計画 doc

<81798C F6A8BE0817A8D8297EE CF6955C9770>

honbu-38H06_kunrei31

Microsoft Word - 佐野市生活排水処理構想(案).doc

する ( 評 定 の 時 期 ) 第 条 成 績 評 定 の 時 期 は 第 3 次 評 定 者 にあっては 完 成 検 査 及 び 部 分 引 渡 しに 伴 う 検 査 の 時 とし 第 次 評 定 者 及 び 第 次 評 定 者 にあっては 工 事 の 完 成 の 時 とする ( 成 績 評 定

( 補 助 金 等 交 付 決 定 通 知 に 加 える 条 件 ) 第 7 条 市 長 は 交 付 規 則 第 11 条 に 規 定 するところにより 補 助 金 の 交 付 決 定 に 際 し 次 に 掲 げる 条 件 を 付 するものとする (1) 事 業 完 了 後 に 消 費 税 及 び

私立大学等研究設備整備費等補助金(私立大学等

S16-386・ソフトウェアの調達に関する入札実施の件

(2) 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 保 育 の 必 要 な 子 どものいる 家 庭 だけでなく 地 域 の 実 情 に 応 じた 子 ども 子 育 て 支 援 の 充 実 のために 利 用 者 支 援 事 業 や 地 域 子 育 て 支 援 事 業 な

Microsoft PowerPoint 資料6 技術基準.ppt [互換モード]

Microsoft Word - 目次.doc

続 に 基 づく 一 般 競 争 ( 指 名 競 争 ) 参 加 資 格 の 再 認 定 を 受 けていること ) c) 会 社 更 生 法 に 基 づき 更 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなされている 者 又 は 民 事 再 生 法 に 基 づき 再 生 手 続 開 始 の 申 立 てがなさ

1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

独立行政法人国立病院機構

る 第 三 者 機 関 情 報 保 護 関 係 認 証 プライバシーマーク ISO27001 ISMS TRUSTe 等 の 写 しを 同 封 のうえ 持 参 又 は 郵 送 とする 但 し 郵 送 による 場 合 は 書 留 郵 便 とし 同 日 同 時 刻 必 着 とする 提 出 場 所 は 上

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

1 特 別 会 計 財 務 書 類 の 検 査 特 別 会 計 に 関 する 法 律 ( 平 成 19 年 法 律 第 23 号 以 下 法 という ) 第 19 条 第 1 項 の 規 定 に 基 づき 所 管 大 臣 は 毎 会 計 年 度 その 管 理 する 特 別 会 計 について 資 産

質 問 票 ( 様 式 3) 質 問 番 号 62-1 質 問 内 容 鑑 定 評 価 依 頼 先 は 千 葉 県 などは 入 札 制 度 にしているが 神 奈 川 県 は 入 札 なのか?または 随 契 なのか?その 理 由 は? 地 価 調 査 業 務 は 単 にそれぞれの 地 点 の 鑑 定

大田市固定資産台帳整備業務(プロポーザル審査要項)

スライド 1

共 通 認 識 1 官 民 較 差 調 整 後 は 退 職 給 付 全 体 でみて 民 間 企 業 の 事 業 主 負 担 と 均 衡 する 水 準 で あれば 最 終 的 な 税 負 担 は 変 わらず 公 務 員 を 優 遇 するものとはならないものであ ること 2 民 間 の 実 態 を 考

平 成 27 年 11 月 ~ 平 成 28 年 4 月 に 公 開 の 対 象 となった 専 門 協 議 等 における 各 専 門 委 員 等 の 寄 附 金 契 約 金 等 の 受 取 状 況 審 査 ( 別 紙 ) 専 門 協 議 等 の 件 数 専 門 委 員 数 500 万 円 超 の 受


Microsoft Word )40期決算公開用.doc

社会保険加入促進計画に盛込むべき内容

も た ら そ う と す る 効 標 標 名 標 設 定 考 え 方 単 位 4 年 度 実 績 5 年 度 見 込 6 年 度 計 画 7 年 度 計 画 8 年 度 計 画 法 規 定 に 基 づく 選 挙 事 務 ため 標 というような は 困 難 である 事 業 実 施 妥 当 性 活 動

Ⅰ 元 請 負 人 を 社 会 保 険 等 加 入 建 設 業 者 に 限 定 平 成 28 年 10 月 1 日 以 降 に 入 札 公 告 指 名 通 知 随 意 契 約 のための 見 積 依 頼 を 行 う 工 事 から 以 下 に 定 める 届 出 の 義 務 ( 以 下 届 出 義 務 と

総合評価点算定基準(簡易型建築・電気・管工事)

為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

m07 北見工業大学 様式①

< F2D8ED089EF95DB8CAF939996A289C193FC91CE8DF42E6A7464>

Taro13-公示.jtd

検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

定款

<4D F736F F D AC90D1955D92E CC82CC895E DD8C D2816A2E646F63>

( 別 紙 ) 以 下 法 とあるのは 改 正 法 第 5 条 の 規 定 による 改 正 後 の 健 康 保 険 法 を 指 す ( 施 行 期 日 は 平 成 28 年 4 月 1 日 ) 1. 標 準 報 酬 月 額 の 等 級 区 分 の 追 加 について 問 1 法 改 正 により 追 加

< E95FB8CF689638AE98BC689FC90B390A CC8CA992BC82B582C982C282A282C E90E096BE8E9E8E9197BF2E786477>

<4D F736F F D20D8BDB8CFC8BCDED2DDC482A882E682D1BADDCCDFD7B2B1DDBD8B4B92F E646F63>

03 平成28年度文部科学省税制改正要望事項

自衛官俸給表の1等陸佐、1等海佐及び1等空佐の(一)欄又は(二)欄に定める額の俸給の支給を受ける職員の占める官職を定める訓令

(Microsoft Word - \203A \225\345\217W\227v\227\314 .doc)

文化政策情報システムの運用等

通 知 カード と 個 人 番 号 カード の 違 い 2 通 知 カード ( 紙 )/H27.10 個 人 番 号 カード (ICカード)/H28.1 様 式 (おもて) (うら) 作 成 交 付 主 な 記 載 事 項 全 国 ( 外 国 人 含 む)に 郵 送 で 配 布 希 望 者 に 交


<819A955D89BF92B28F BC690ED97AA8EBA81418FA48BC682CC8A8890AB89BB816A32322E786C7378>

<6D313588EF8FE991E58A778D9191E5834B C8EAE DC58F4992F18F6F816A F990B32E786C73>

工 事 名 渟 城 西 小 学 校 体 育 館 非 構 造 部 材 耐 震 改 修 工 事 ( 建 築 主 体 工 事 ) 入 札 スケジュール 手 続 等 期 間 期 日 期 限 等 手 続 きの 方 法 等 1 設 計 図 書 等 の 閲 覧 貸 出 平 成 28 年 2 月 23 日 ( 火

資料6 国の行政機関等における法曹有資格者の採用状況についての調査結果報告(平成27年10月実施分)(法務省提出資料)

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

官報掲載【セット版】

4 参 加 資 格 要 件 本 提 案 への 参 加 予 定 者 は 以 下 の 条 件 を 全 て 満 たすこと 1 地 方 自 治 法 施 行 令 ( 昭 和 22 年 政 令 第 16 号 ) 第 167 条 の4 第 1 項 各 号 の 規 定 に 該 当 しない 者 であること 2 会 社

<4D F736F F F696E74202D B E E88E68C9A90DD8BC65F E DC58F4994C52E >

入 札 参 加 者 は 入 札 の 執 行 完 了 に 至 るまではいつでも 入 札 を 辞 退 することができ これを 理 由 として 以 降 の 指 名 等 において 不 利 益 な 取 扱 いを 受 けることはない 12 入 札 保 証 金 免 除 13 契 約 保 証 金 免 除 14 入

0439 研究開発推進事業(防衛省所管計上)250614

Microsoft PowerPoint - 基金制度

<4D F736F F D A94BD837D836C B4B92F62E646F6378>

キ 短 時 間 労 働 者 の 雇 用 管 理 の 改 善 等 に 関 する 法 律 ( 平 成 5 年 法 律 第 76 号 ) ク 労 働 契 約 法 ( 平 成 19 年 法 律 第 128 号 ) ケ 健 康 保 険 法 ( 大 正 11 年 法 律 第 70 号 ) コ 厚 生 年 金 保

<4D F736F F D C689D789B582B581698AAE90AC92CA926D816A2E646F63>

< F2D8AC493C CC81698EF3928D8ED2816A2E6A7464>

Taro-HPお知らせ(南関東局)

Transcription:

Title 9. 情 報 セキュリティ : 情 報 セキュリティ マネジメントシステム (ISMS)に 関 する 一 考 察 Author(s) 辻 本, 篤 Citation URL 聖 学 院 大 学 図 書 館 情 報 学 研 究, 第 6 号 寄 附 講 座 インター ネット 時 代 の 情 報 資 源 活 用 特 集 号, 2011.3 : 87-95 http://serve.seigakuin-univ.ac.jp/reps/modules/xoonips/de tail.php?item_id=3348 Rights 聖 学 院 学 術 情 報 発 信 システム : SERVE SEigakuin Repository for academic archive

9 情 報 セキュリティ 9 情 報 セキュリティ - 情 報 セキュリティ マネジメントシステム(ISMS)に 関 する 一 考 察 - 辻 本 篤 本 稿 は 組 織 の 情 報 セキュリティ を 支 える 情 報 セキュリティ マネジ メントシステム (Information Security Management System :ISMS)を 検 討 するものである このシステムの 基 本 コンセプトは 組 織 の 情 報 資 産 を 機 密 性 ( 漏 洩 させない) 完 全 性 ( 改 ざんさせない) 可 用 性 ( 故 障 させない) という3 点 に 集 約 される 以 下 その 導 入 の 経 緯 と 特 徴 を 解 説 し 検 討 しなければ ならない 基 本 的 な 課 題 を 整 理 していく 1.はじめに 情 報 という 組 織 資 源 組 織 の 運 営 において4 大 資 源 として 管 理 されてきたは 人 物 金 情 報 特 に90 年 代 以 降 情 報 に 対 する 扱 いに 注 目 が 集 まっている 世 界 中 を 接 続 す る 高 速 情 報 ネットワーク 網 であるインターネットの 誕 生 は 急 速 な 情 報 化 社 会 へ の 変 貌 の 一 つとなった これまで 限 られた 人 のみが 使 用 していたコンピュー タが 組 織 業 務 の 中 心 となり また 一 般 家 庭 への 普 及 高 性 能 化 大 容 量 化 も 実 現 した しかし 同 時 に 大 きな 社 会 問 題 も 産 み 落 とすこととなった 簡 単 に 大 量 の 情 報 を 扱 える 状 況 は 情 報 の 漏 えい 改 ざん 破 壊 など 世 の 中 を 震 撼 させる 新 たな 脅 威 を 生 みだし 組 織 の 存 続 に 関 わる 深 刻 な 問 題 も 散 見 され るようになったのである 情 報 に 対 する 脅 威 は 未 知 であり 現 在 のところ 絶 える 気 配 を 見 せない 組 織 や 国 民 を 守 るための 法 律 も 常 に 後 手 後 手 にまわらざ るをえない これは 情 報 システムの 技 術 進 化 が 日 進 月 歩 で 進 んでいくという 背 景 があり システムを 保 全 するセキュリティ 技 術 も 同 様 である そのため 必 然 的 に それに 関 わるリスク 要 因 も 幾 何 級 数 的 に 増 加 してゆくと 考 えられる 87

特 集 : 寄 付 講 座 インターネット 時 代 の 情 報 資 源 活 用 2. 情 報 セキュリティ マネジメントシステム(Information Security Management System:ISMS)の 必 要 性 2.1 多 発 する 情 報 漏 えい 個 人 情 報 保 護 法 ( 注 1)が 施 行 された2005 年 4 月 以 降 個 人 情 報 の 漏 えい 事 件 がメディアをにぎわすようになった 特 に 民 間 部 門 では 顧 客 情 報 など 重 要 情 報 の 漏 えい 事 件 が 多 発 している 2006 年 に 入 り ファイル 交 換 ソフト ウィニー を 介 した 情 報 漏 洩 が 多 発 した たとえば 2006 年 には 海 上 自 衛 隊 の 機 密 情 報 の 漏 えいが 明 らかとなった 防 衛 庁 は 海 上 自 衛 隊 の 護 衛 艦 の 訓 練 関 係 の 文 書 な どの 情 報 が 含 まれる 多 数 の 資 料 が ファイル 交 換 ソフト Winny を 通 じて 流 出 したとして 調 査 を 開 始 したことを 明 らかにしている i 防 衛 庁 によると 流 出 した 資 料 は 海 上 自 衛 隊 の 佐 世 保 基 地 に 配 備 されている 護 衛 艦 あさゆき の 電 信 室 所 属 の 通 信 員 ( 曹 長 )が 所 有 していたと 思 われるファイルで 同 通 信 員 の 私 用 PCがウイルスに 感 染 し Winnyを 通 じて 流 出 したと 報 告 されている 流 出 したデータには 自 衛 艦 のコールサインの 一 覧 など 情 報 の 重 要 度 で 秘 とされる 文 書 や 隊 員 の 名 簿 等 の 個 人 情 報 が 含 まれているという また さら に 重 要 度 の 高 い 極 秘 とされる 暗 号 書 や 乱 数 表 などについて 文 書 名 の 一 覧 表 も 流 出 したが 文 書 そのものは 流 出 していないと 報 告 されている また 民 間 企 業 でも 顧 客 情 報 の 大 規 模 な 漏 えいが 発 生 している 最 近 (2011 年 ) では ソニー グループの 大 規 模 な 顧 客 情 報 の 漏 えい 事 件 が 大 きな 衝 撃 を 与 え た ii ソニー ピクチャーズが 約 100 万 件 ミュージックレコーが75000 件 ミ ュージッククーポン350 万 件 これは クラッカー 集 団 LulzSecによるものとさ れている グループとして1 億 261 万 3000 件 の 漏 洩 として 報 告 されている ソニ ーグループの 事 件 は 個 人 情 報 保 護 法 施 行 以 降 事 件 として 発 覚 している 中 で は 最 も 大 規 模 は 事 故 として 扱 われるようになった 2.2 ISMS 適 合 性 評 価 制 度 の 創 設 我 が 国 では 情 報 処 理 サービス 業 のコンピュータシステムが 十 分 な 安 全 対 策 を 88

9 情 報 セキュリティ 実 施 しているかどうかを 認 定 する 制 度 として 情 報 システム 安 全 対 策 実 施 事 業 所 認 定 制 度 があった この 制 度 では 集 中 管 理 されていた 情 報 システムの 施 設 面 や 設 備 等 の 物 理 的 な 対 策 に 重 点 がおかれていた しかしこれら 物 的 技 術 的 側 面 への 対 応 策 だけでは 不 十 分 で 人 が 絡 むセキュリティ 対 策 つまり 人 的 セキュリティを 含 む 組 織 全 体 のマネジメントを 確 立 する 必 要 性 が 認 識 される ようになった ( 旧 ) 経 済 産 業 省 では 情 報 セキュリティ 管 理 に 関 する 国 際 的 なスタンダードの 導 入 および 情 報 処 理 サービス 業 情 報 システム 安 全 対 策 実 施 事 業 所 認 定 制 度 の 改 革 ( 平 成 12 年 (2000)7 月 31 日 ) を 発 表 し 従 来 の 情 報 シ ステム 安 全 対 策 実 施 事 業 所 認 定 制 度 を 平 成 13 年 (2001)3 月 31 日 をもって 廃 止 することを 決 定 した iii この 制 度 に 代 わるものとして ISMS (Information Security Management System:ISMS( 情 報 セキュリティ マネジメントシステ ム))が 登 場 したのである 技 術 的 セキュリティのほかに 人 間 系 の 運 用 管 理 面 をバランス 良 く 取 り 込 み 新 しい 制 度 としてISMSという 適 合 性 評 価 制 度 を 創 設 することとなった 2.3 ISMSとは ISMSとは 情 報 セキュリティの 個 別 の 問 題 毎 の 技 術 対 策 の 他 に 組 織 のマ ネジメントとして 自 らのリスクアセスメントにより 必 要 なセキュリティレベ ルを 決 め プランを 持 ち 資 源 配 分 して システムを 運 用 するもの iv とされ ている この 制 度 の 運 用 は 組 織 の 業 態 によって 異 なるが いずれにしても 組 織 が 保 護 すべき 情 報 資 産 に 関 して 機 密 性 完 全 性 可 用 性 を 効 率 良 く 維 持 し 問 題 や 課 題 を 発 見 抽 出 した 上 で 継 続 的 に 改 善 のプロセスを 進 んでゆくということが 根 本 理 念 となっている 89

特 集 : 寄 付 講 座 インターネット 時 代 の 情 報 資 源 活 用 図 1 情 報 の 価 値 に 対 する3つの 観 点 ( 静 岡 大 学 ISMS 研 究 会 (2007) v,p.14.より) 組 織 が 保 護 すべき 情 報 資 産 について 機 密 性 (Confidentiality) 完 全 性 (Integrity) 可 用 性 (Availability)をバランス 良 く 維 持 し 改 善 することが 情 報 セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の 基 本 コンセプトとされる (ISO/IEC 13335-1:2004より 引 用 ) vi 機 密 性 (Confidentiality)とは 認 可 されていない 個 人 エンティティ( 団 体 等 ) 又 はプロセスに 対 して 情 報 を 使 用 不 可 又 は 非 公 開 にする 特 性 であり 特 定 の 人 間 だけにアクセス 権 を 与 えることを 基 本 前 提 にしている 完 全 性 (Integrity)とは 資 産 の 正 確 さ 及 び 完 全 さを 保 護 する 特 性 であり 情 報 の 改 ざ んや 破 壊 を 防 止 することが 基 本 前 提 になっており 可 用 性 (Availability) とは 認 可 されたエンティティ( 団 体 等 )が 要 求 したときに アクセス 及 び 使 用 が 可 能 である 特 性 であり 利 用 可 能 性 を 担 保 するものと 理 解 される ISMSの 有 効 性 を 継 続 的 に 改 善 していくためには 経 営 管 理 論 で 一 般 的 に 述 べられ そ の 重 要 性 が 重 ねて 指 摘 されている PDCAサイクルを 採 用 することが 前 提 となる PDCAサイクルとは 経 営 行 動 におけるPlan( 計 画 策 定 ),Do( 導 入 運 用 ),Check 90

9 情 報 セキュリティ ( 見 直 し)を 循 環 的 に 繰 り 返 し 実 践 することであり それぞれの 頭 文 字 をとっ て PDCAサイクル と 呼 ばれている 特 に 防 災 や 減 災 の 分 野 の 扱 うリスクマネ ジメントの 分 野 では 近 年 その 重 要 度 が 再 評 価 されている ISMSとの 関 係 で は 以 下 の 実 践 が 重 要 となると 考 えられる 1.Plan : 自 社 の 情 報 資 産 を 精 査 して 情 報 セキュリティ 対 策 の 計 画 と 目 標 を 決 定 する 2.Do : 計 画 目 標 を 基 準 に 対 策 の 導 入 と 運 用 を 行 う 3.Check : Doで 実 践 した 対 策 の 結 果 を 監 視 して 適 宜 積 極 的 に 見 直 しを 行 う 4.Act : 現 場 の 情 報 セキュリティ 担 当 者 と 経 営 陣 で 改 善 処 置 を 行 う このPDCAサイクルを 慎 重 に 繰 り 返 していくことによって 当 該 組 織 の 情 報 セキ ュリティレベルの 向 上 を 検 討 していくのである( 図 2 参 照 ) 図 2 情 報 セキュリティ 対 策 におけるPDCAサイクルのイメージ ( 情 報 セキュリティマネジメントシステム(ISMS)とは (http://www.isms.jipdec.jp/isms/index.html)より) 91

特 集 : 寄 付 講 座 インターネット 時 代 の 情 報 資 源 活 用 3.ISMS 導 入 運 用 に 関 する 考 察 ISMSの 導 入 運 用 に 関 しては そのメリットとデメリットがある vii これら を 慎 重 に 検 討 しなければならない それらのバランスを 総 合 的 に 検 証 して 仮 にデメリットが 際 立 つのであれば 場 合 によっては 運 用 を 取 りやめることも 含 めて ISMSを 組 織 制 度 としてどのように 位 置 づけ 認 識 していくかを 慎 重 に 検 討 する 必 要 がある 現 時 点 で 報 告 されているメリット viii は まず 制 度 を 導 入 することによる 企 業 イメージの 向 上 同 業 他 社 との 競 争 に 打 ち 勝 つこと また 組 織 を 安 定 的 に 経 営 することである 営 業 上 のイメージ 向 上 知 名 度 の 向 上 顧 客 満 足 の 向 上 信 頼 性 向 上 競 争 優 位 性 の 維 持 総 合 的 な 経 営 の 安 定 化 これらが 報 告 されてい る 特 に 顧 客 情 報 がそのまま 経 営 資 源 として 運 用 される 業 態 の 企 業 は 情 報 を どの 程 度 安 全 に 運 用 しているかが 決 め 手 になるので これらのメリットの 獲 得 は 重 要 である また 情 報 資 産 に 対 するリスク( 潜 在 するリスク 顕 在 するリス ク 双 方 において)は 情 報 セキュリティの 向 上 によって 低 減 させる 効 果 もあ るとされる また 情 報 資 産 の 安 全 運 用 という 大 命 題 のほかに この 制 度 を 導 入 することによって 副 次 的 効 果 も 報 告 されている 社 員 の 意 識 改 革 につながり 組 織 的 に 法 令 順 守 の 精 神 が 形 成 され 企 業 倫 理 の 向 上 にも 役 立 つという これは ISMS 制 度 の 導 入 だけに 見 られる 傾 向 ではない ISMSはISO/IEC 制 度 のひとつで ある ISOシリーズとして ISO9000シリーズ( 品 質 管 理 に 関 するもの) ISO14000 シリーズ( 環 境 マネジメントに 関 するもの)があるが これらを 導 入 した 企 業 からも 社 員 の 意 識 改 革 に 役 立 った 企 業 倫 理 の 向 上 に 役 立 った という 報 告 がある いわば 副 次 的 効 果 である それまでの 業 務 プロセスが 刷 新 される 際 に 見 落 としていた 改 善 点 問 題 などが 浮 き 彫 りになり より 良 い 業 務 環 境 の 形 成 につながることが 推 察 される このことにより 社 員 の 意 識 改 革 が 促 進 され その 意 識 が 集 積 したものが 新 たな 企 業 倫 理 として 生 成 され 組 織 に 定 着 するも のと 考 えられる しかしこのISMS 制 度 はメリットだけではなく デメリット ix も 慎 重 にみてい 92

9 情 報 セキュリティ かなければならない たとえば 業 務 量 が 増 加 する 問 題 である ISMSの 構 築 運 用 のためには 文 書 化 が 義 務 付 けられているため 利 用 者 にとっては 業 務 量 が 増 加 すると 報 告 されている(ただし 適 切 なフォーマットを 作 成 することで セキュリティマネジメントは 向 上 するとされている) また 新 しい 業 務 フロー も 発 生 する ISMSの 要 求 事 項 に 合 わせて 業 務 フローが 追 加 修 正 しなければな らないことがあり そのときは 一 時 的 に 作 業 効 率 が 落 ちると 報 告 されている そのため 業 務 形 態 に 対 応 したセキュリティ 管 理 策 を 構 築 する 必 要 があると 指 摘 されている ISO14000シリーズを 導 入 運 用 する 企 業 からは 外 部 監 査 を 受 ける 前 は 制 度 を 適 切 に 運 用 しているという 結 果 を 文 書 で 示 す 必 要 があるた め 数 日 間 徹 夜 になることがあり 業 務 負 担 としては 非 常 に 大 きい という 意 見 も 出 ている x 日 産 自 動 車 が 自 身 の 再 生 を 図 るために リバイバルプランを 発 表 した これは1999 年 に 日 産 自 動 車 のカルロス ゴーンCOO(Chief Executive Officer: 最 高 経 営 責 任 者 )( 当 時 )が 発 表 した 同 社 の 経 営 再 建 計 画 であった このとき 取 引 業 者 数 は 従 来 の 半 分 にすると 宣 言 されたが その 選 定 のひとつの 基 準 が 取 引 業 者 として ISO9000や14000シリーズを 取 得 しているか 否 かとい うものであった ISMSは 情 報 資 産 に 関 する 組 織 システムである 特 に 情 報 サー ビスを 提 供 する 親 会 社 は データの 整 理 分 析 等 のほとんどを 子 会 社 に 任 せて いることが 多 いので 親 会 社 よりも 子 会 社 の 方 が 情 報 セキュリティーを 守 っ ていく 責 任 は 重 い したがって 親 会 社 との 取 引 関 係 を 引 き 続 き 継 続 していくた めには 子 会 社 はISMS 制 度 を 積 極 的 に 導 入 し 健 全 に 運 用 していることが 強 く 求 められると 考 えられる 4.まとめ 現 時 点 では ISMSの 導 入 運 用 に 関 しては メリットだけではなく デメリ ットの 方 も 慎 重 に 検 討 する 必 要 がある 特 にデメリットは 組 織 全 体 で 時 間 をか けて 検 討 していかなければならない 新 たな 業 務 負 担 やコスト 負 担 は 特 に 中 小 企 業 においては 深 刻 な 問 題 としてのしかかる システムの 導 入 による 企 業 イ 93

特 集 : 寄 付 講 座 インターネット 時 代 の 情 報 資 源 活 用 メージの 向 上 取 引 慣 行 の 継 続 労 働 意 識 の 向 上 これらの 期 待 される 効 果 が 実 現 しても 組 織 としての 負 担 があまりにも 大 きい 場 合 システムの 導 入 その ものを 再 検 討 する 必 要 があると 考 える 注 ) 1. 本 人 の 意 図 しない 個 人 情 報 の 不 正 な 流 用 や 個 人 情 報 を 扱 う 事 業 者 がずさんなデー タ 管 理 をしないように 一 定 数 以 上 の 個 人 情 報 を 取 り 扱 う 事 業 者 を 対 象 に 義 務 を 課 す 法 律 のこと ( 個 人 情 報 保 護 法 個 人 情 報 の 保 護 に 関 する 法 律 ( @IT,http://www.atmarkit.co.jp/aig/02security/protectionofpersonaldata.htm l))(2009 年 11 月 20 日 参 照 ) 詳 細 は 個 人 情 報 の 保 護 に 関 する 法 律 ( 首 相 官 邸, http://www.kantei.go.jp/jp/it/privacy/houseika/hourituan/)を 参 照 2. 下 記 URLもしくは 文 献 から 引 用 する 際 文 意 を 損 なわれない 程 度 に 適 宜 表 現 を 変 えた 箇 所 がある 引 用 URL i 海 上 自 衛 隊 の 秘 情 報 がWinnyで 流 出 防 衛 庁 が 調 査 を 開 始 INTERNET Watch, http://internet.watch.impress.co.jp/cda/news/2006/02/23/10993.html(2011 年 5 月 5 日 参 照 ) ii 個 人 情 報 漏 洩,http://ja.wikipedia.org/wiki/ 個 人 情 報 漏 洩 (2011 年 5 月 5 日 参 照 ) iii 情 報 処 理 サービス 業 情 報 システム 安 全 対 策 実 施 事 業 所 認 定 制 度 経 済 産 業 省, http://www.meti.go.jp/policy/netsecurity/nintei.htm(2011 年 5 月 5 日 参 照 ) iv ISMS 適 合 性 評 価 制 度 財 団 法 人 日 本 情 報 処 理 開 発 協 会 (JIPDEC) 情 報 マネジメ ントシステム 推 進 センター,http://www.isms.jipdec.jp/isms.html(2009 年 11 月 15 日 ) v 静 岡 大 学 ISMS 研 究 会 実 践 ISMS 講 座 静 岡 学 術 出 版 事 業 部,2007 vi 前 掲 4, 情 報 セキュリティマネジメントシステム(ISMS)とは http://www.isms.jipdec.jp/isms/index.html(2011 年 6 月 5 日 参 照 ) 94

9 情 報 セキュリティ vii ISMS Security Akademia,http://akademeia.info/index.php?ISMS(2010 年 12 月 3 日 参 照 ) viii 前 掲 6, ISMS 導 入 のメリット デメリット,http://akademeia.info/index.php?ISMS (2010 年 12 月 3 日 参 照 ) ix 前 掲 6, ISMS 導 入 のメリット デメリット,http://akademeia.info/index.php?ISMS (2010 年 12 月 3 日 参 照 ) x これは 筆 者 の 聞 き 取 り 調 査 によるものである もちろん 同 制 度 を 導 入 運 用 するす べての 組 織 がこのような 状 況 を 抱 えていることを 示 すものではない 参 考 文 献 日 本 能 率 協 会 審 査 登 録 センター 審 査 委 員 が 教 えるISO27001 実 践 導 入 マニュアル 日 本 能 率 協 会 マネジメントセンター,2006. 95