政 策 調 査 部 主 任 研 究 員 大 嶋 寧 子 03-3591-1328 当 レポートは 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 商 品 の 勧 誘 を 目 的 としたものではあり ません 本 資 料 は



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2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 平 成 27 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 役 名 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 2,142 ( 地 域 手 当 ) 17,205 11,580 3,311 4 月 1

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公表表紙

平成25年度 独立行政法人日本学生支援機構の役職員の報酬・給与等について

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

2 役 員 の 報 酬 等 の 支 給 状 況 役 名 法 人 の 長 理 事 理 事 ( 非 常 勤 ) 平 成 25 年 度 年 間 報 酬 等 の 総 額 就 任 退 任 の 状 況 報 酬 ( 給 与 ) 賞 与 その 他 ( 内 容 ) 就 任 退 任 16,936 10,654 4,36

(2)大学・学部・研究科等の理念・目的が、大学構成員(教職員および学生)に周知され、社会に公表されているか

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m07 北見工業大学 様式①

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18 国立高等専門学校機構

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ていることから それに 先 行 する 形 で 下 請 業 者 についても 対 策 を 講 じることとしまし た 本 県 としましては それまでの 間 に 未 加 入 の 建 設 業 者 に 加 入 していただきますよう 28 年 4 月 から 実 施 することとしました 問 6 公 共 工 事 の

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連合「改正高年齢者雇用安定法」に関する取り組みについて

●幼児教育振興法案

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スライド 1

った 場 合 など 監 事 の 任 務 懈 怠 の 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 減 算 する (8) 役 員 の 法 人 に 対 する 特 段 の 貢 献 が 認 められる 場 合 は その 程 度 に 応 じて 業 績 勘 案 率 を 加 算 することができる

●電力自由化推進法案

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就 業 規 則 ( 福 利 厚 生 ) 第 章 福 利 厚 生 ( 死 亡 弔 慰 金 等 ) 第 条 法 人 が 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 民 間 社 会 福 祉 施 設 等 職 員 共 済 規 程 に 基 づき 群 馬 県 社 会 福 祉 協 議 会 との 間 において 締 結 す

国 家 公 務 員 の 年 金 払 い 退 職 給 付 の 創 設 について 検 討 を 進 めるものとする 平 成 19 年 法 案 をベースに 一 元 化 の 具 体 的 内 容 について 検 討 する 関 係 省 庁 間 で 調 整 の 上 平 成 24 年 通 常 国 会 への 法 案 提

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02【発出】280328福島県警察職員男女共同参画推進行動計画(公表版)

別 紙 第 号 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 議 案 高 知 県 立 学 校 授 業 料 等 徴 収 条 例 の 一 部 を 改 正 する 条 例 を 次 のように 定 める 平 成 26 年 2 月 日 提 出 高 知 県 知 事 尾

●労働基準法等の一部を改正する法律案

平 均 賃 金 を 支 払 わなければならない この 予 告 日 数 は 平 均 賃 金 を 支 払 った 日 数 分 短 縮 される( 労 基 法 20 条 ) 3 試 用 期 間 中 の 労 働 者 であっても 14 日 を 超 えて 雇 用 された 場 合 は 上 記 2の 予 告 の 手 続

(6) 事 務 局 職 場 積 立 NISAの 運 営 に 係 る 以 下 の 事 務 等 を 担 当 する 事 業 主 等 の 組 織 ( 当 該 事 務 を 代 行 する 組 織 を 含 む )をいう イ 利 用 者 からの 諸 届 出 受 付 事 務 ロ 利 用 者 への 諸 連 絡 事 務

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代 議 員 会 決 議 内 容 についてお 知 らせします さる3 月 4 日 当 基 金 の 代 議 員 会 を 開 催 し 次 の 議 案 が 審 議 され 可 決 承 認 されました 第 1 号 議 案 : 財 政 再 計 算 について ( 概 要 ) 確 定 給 付 企 業 年 金 法 第

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平成16年年金制度改正 ~年金の昔・今・未来を考える~

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は 固 定 流 動 及 び 繰 延 に 区 分 することとし 減 価 償 却 を 行 うべき 固 定 の 取 得 又 は 改 良 に 充 てるための 補 助 金 等 の 交 付 を 受 けた 場 合 にお いては その 交 付 を 受 けた 金 額 に 相 当 する 額 を 長 期 前 受 金 とし

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3 体 制 整 備 等 (1) 全 ての 特 定 事 業 主 が 共 同 して 取 組 むものとする () 総 務 部 人 事 管 理 室 人 事 課 を 計 画 推 進 の 主 管 課 とし 全 ての 市 職 員 により 推 進 する (3) 実 施 状 況 を 把 握 し 計 画 期 間 中 で

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1 総 合 設 計 一 定 規 模 以 上 の 敷 地 面 積 及 び 一 定 割 合 以 上 の 空 地 を 有 する 建 築 計 画 について 特 定 行 政 庁 の 許 可 により 容 積 率 斜 線 制 限 などの 制 限 を 緩 和 する 制 度 である 建 築 敷 地 の 共 同 化 や

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技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

Transcription:

みずほリポート 2013 年 7 月 8 日 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 は 労 働 市 場 の 朗 報 か -ルールの 整 備 と 転 職 を 支 える 政 策 の 充 実 が 課 題 安 倍 政 権 の 経 済 政 策 で 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 が 浮 上 してい る 限 定 正 社 員 とは 職 種 勤 務 地 労 働 時 間 を 限 定 した 上 で 企 業 と 無 期 雇 用 契 約 を 結 ぶ 働 き 方 を 指 す 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 により 労 働 市 場 の 流 動 化 が 進 むほか 非 正 社 員 から 正 社 員 への 足 掛 かりや 家 庭 生 活 と 両 立 しやすい 働 き 方 が 増 えると 期 待 されている 一 方 企 業 がすでに 導 入 している 限 定 正 社 員 制 度 の 中 には 雇 用 管 理 に 問 題 があるケースが 含 まれるほか 今 後 の 普 及 に 向 けては これが 新 たな 不 安 定 雇 用 となる 懸 念 が 指 摘 されている 規 制 改 革 会 議 の 雇 用 ワーキング グループが 示 した 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールに 関 する 提 言 は 包 括 的 な 内 容 かつ 労 使 双 方 の 納 得 に 配 慮 した 内 容 となったが 更 なる 課 題 も 存 在 する 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 が 労 働 市 場 の 朗 報 となるためには 解 雇 や 均 衡 処 遇 に 関 するルールの 整 備 転 職 しやすい 労 働 市 場 を 支 え る 制 度 政 策 の 充 実 が 重 要 である

政 策 調 査 部 主 任 研 究 員 大 嶋 寧 子 03-3591-1328 yasuko.oshima@mizuho-ri.co.jp 当 レポートは 情 報 提 供 のみを 目 的 として 作 成 されたものであり 商 品 の 勧 誘 を 目 的 としたものではあり ません 本 資 料 は 当 社 が 信 頼 できると 判 断 した 各 種 データに 基 づき 作 成 されておりますが その 正 確 性 確 実 性 を 保 証 するものではありません また 本 資 料 に 記 載 された 内 容 は 予 告 なしに 変 更 されることもあ ります

目 次 I. はじめに 1 II. 限 定 正 社 員 とは 何 か 1 1. 限 定 正 社 員 の 定 義 1 2. 進 む 政 府 内 の 議 論 3 III. なぜ 国 は 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 取 り 組 もうとしているのか 5 1. 安 倍 政 権 の 経 済 政 策 と 限 定 正 社 員 の 親 和 性 5 2. 非 正 社 員 から 正 社 員 への 足 掛 かり 家 庭 生 活 と 両 立 し 易 い 働 き 方 としての 期 待 5 3. 改 正 労 働 契 約 法 がもたらす 影 響 への 対 応 6 IV. 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 と 導 き 出 される 問 題 7 1. 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 8 (1) 広 がりを 見 せる 限 定 正 社 員 の 活 用 企 業 8 (2) 限 定 正 社 員 導 入 の 主 要 な 目 的 は 人 材 の 確 保 9 (3) 従 来 型 正 社 員 と 異 なる 限 定 正 社 員 の 処 遇 10 (4) 従 来 型 正 社 員 と 同 様 のケースが 多 い 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 10 2. これまでの 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 から 見 出 される 課 題 10 (1) 限 定 正 社 員 の 曖 昧 な 位 置 づけによる 雇 用 保 障 の 不 明 瞭 化 10 (2) 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 をめぐる 労 使 の 認 識 の 隔 たり 12 (3) 賃 金 等 に 不 満 を 持 つ 限 定 正 社 員 が 一 定 割 合 を 占 める 可 能 性 13 (4) 十 分 ではない 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 14 V. 限 定 正 社 員 に 関 わる 今 後 の 懸 念 事 項 と 課 題 15 1. 新 たな 不 安 定 雇 用 の 創 出? 15 2. 従 来 型 正 社 員 の 解 雇 処 遇 引 き 下 げツール? 16 VI. 検 討 が 始 まった 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールと 今 後 の 課 題 17 1. 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールに 関 わる 雇 用 WG の 提 言 18 (1) 限 定 正 社 員 の 働 き 方 の 明 確 化 に 関 わる 提 言 18 (2) 解 雇 を 巡 る 紛 争 防 止 に 関 わる 提 言 19 (3) 限 定 正 社 員 の 公 正 な 処 遇 に 関 わる 提 言 19 (4) 限 定 正 社 員 を 労 働 者 の 自 由 意 志 による 選 択 とするための 提 言 20 2. 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 の 評 価 20 3. 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 向 けた 今 後 の 課 題 21 (1) 限 定 正 社 員 の 解 雇 を 巡 る 課 題 21 (2) 限 定 正 社 員 に 寄 せられる 期 待 から 見 た 課 題 23 (3) 限 定 正 社 員 に 寄 せられる 懸 念 から 見 た 課 題 24 VII. おわりに 24

I. はじめに 安 倍 政 権 の 経 済 政 策 では 成 熟 産 業 から 成 長 産 業 への 失 業 なき 円 滑 な 労 働 移 動 が 重 視 されて いる これを 実 現 するための 方 策 の 一 つとして 浮 上 しているのが 職 種 や 勤 務 地 労 働 時 間 を 限 定 した 上 で 企 業 と 期 間 の 定 めのない 雇 用 契 約 を 結 んで 働 く 限 定 正 社 員 (ジョブ 型 正 社 員 ) の 普 及 促 進 策 である 限 定 正 社 員 は 従 来 型 の 正 社 員 か 非 正 社 員 か すなわち 残 業 や 配 置 転 換 を 前 提 に 仕 事 中 心 の 生 活 を 迫 られる 一 方 厳 格 な 雇 用 保 障 の 下 に 置 かれる 働 き 方 か 雇 用 が 不 安 定 な 一 方 拘 束 度 が 低 い 働 き 方 かという 働 き 方 の 二 極 化 を 改 め 一 定 の 雇 用 安 定 性 と 一 定 の 働 き 方 の 自 由 度 を 併 せ 持 つ 働 き 方 として 期 待 されている その 一 方 で 限 定 正 社 員 という 働 き 方 に 対 しては これが 新 たな 不 安 定 雇 用 となるのではないか 正 社 員 の 処 遇 切 り 下 げや 人 員 調 整 の 手 段 として 利 用 されるのではないかといった 懸 念 も 寄 せられて いる 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 にあたっては これに 付 随 する 懸 念 をどう 克 服 するか あるいは 企 業 と 労 働 者 の 双 方 に 納 得 のいく 働 き 方 とするために 何 が 必 要 かという 視 点 に 立 って より 多 くの 人 がこの 働 き 方 を 前 向 きに 考 えることが 必 要 である 本 稿 では 限 定 正 社 員 という 働 き 方 が 果 たしうる 役 割 あるいは 懸 念 事 項 を 整 理 した 上 で この 働 き 方 が 労 使 にとって 公 正 で 選 択 しやすいものとなるための 課 題 を 探 る それにより 限 定 正 社 員 の 意 義 や 課 題 について より 多 くの 人 が 前 向 きに 議 論 する 材 料 の 一 つとなることを 期 待 している そのために 本 稿 ではまず 第 Ⅱ 章 で 限 定 正 社 員 の 定 義 と 政 府 内 で 進 む 検 討 の 状 況 を 確 認 する 次 に 第 Ⅲ 章 で 今 なぜ 国 が 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 取 り 組 もうとしているのかを 整 理 する 第 Ⅳ 章 ではこれまでの 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 から 見 出 される 課 題 を 第 Ⅴ 章 では 今 後 の 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 向 けて 指 摘 される 懸 念 を 取 り 上 げ その 克 服 に 向 けた 課 題 を 探 る 第 Ⅵ 章 では 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループが 示 した 限 定 正 社 員 の 提 言 を 踏 まえつつ 今 後 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 を 推 進 していく 上 での 課 題 を 考 察 する なお 限 定 正 社 員 については 他 に 多 様 な 正 社 員 多 様 な 形 態 による 正 社 員 準 正 社 員 ジ ョブ 型 正 社 員 ジョブ 型 のスキル 労 働 者 等 の 呼 び 名 があり 必 ずしも 統 一 されていない 本 稿 で は 分 かりやすさを 優 先 し 新 聞 記 事 等 で 最 も 多 く 使 用 されている 限 定 正 社 員 という 呼 び 方 で 統 一 している 一 方 職 務 や 勤 務 地 等 が 限 定 されない 従 来 型 の 正 社 員 については 限 定 正 社 員 と 区 別 するために 従 来 型 正 社 員 と 呼 ぶこととする II. 限 定 正 社 員 とは 何 か 本 章 では 限 定 正 社 員 の 定 義 を 確 認 した 後 に 政 府 内 の 各 会 議 審 議 会 における 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 の 検 討 状 況 を 整 理 する 1. 限 定 正 社 員 の 定 義 はじめに 限 定 正 社 員 とは 何 かを 考 えたい 限 定 正 社 員 の 働 き 方 を 考 える 上 では 比 較 対 象 として 1

従 来 型 正 社 員 の 働 き 方 を 確 認 することが 有 益 である 従 来 型 正 社 員 の 定 義 として 一 般 に 指 摘 されるの は (1) 期 間 の 定 めのない 雇 用 (2) 企 業 による 直 接 雇 用 (3)フルタイム 労 働 の 3 つの 要 素 で ある これに 加 えて 近 年 は より 本 質 的 な 特 性 として 職 種 や 勤 務 地 があらかじめ 限 定 されていない 点 が 指 摘 されることが 多 い 例 えば 濱 口 (2009)は 日 本 型 雇 用 システムの 最 も 重 要 な 本 質 は 雇 用 契 約 それ 自 体 の 中 には 具 体 的 な 職 務 が 定 められておらず そのつど 職 務 が 書 き 込 まれるべき 空 白 の 石 版 であるという 点 にあると 指 摘 している また 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ(2013) は 日 本 の 正 社 員 は1 職 務 2 勤 務 地 3 労 働 時 間 等 の 制 約 限 定 がないという 意 味 で 無 限 定 社 員 という 性 格 が 強 いと 指 摘 している 従 来 型 正 社 員 の 働 き 方 の 無 限 定 性 は 従 来 型 正 社 員 の 解 雇 の 難 しさと 深 く 関 わっている 日 本 では 1950 年 代 に 大 企 業 を 中 心 に 長 期 雇 用 の 慣 行 が 根 付 き 始 め これが 1970 年 代 に 深 く 労 働 社 会 に 根 を 下 ろした この 長 期 雇 用 慣 行 を 支 える 立 場 から 出 された 判 例 の 蓄 積 により 企 業 の 解 雇 権 の 行 使 が 厳 し く 制 約 される 1 一 方 で 長 期 雇 用 を 維 持 する 手 段 として 企 業 に 残 業 や 配 置 転 換 就 業 規 則 の 変 更 に 関 する 広 範 かつ 強 力 な 権 利 が 認 められてきた 2 この 結 果 従 来 型 正 社 員 は 解 雇 されにくい 代 わりに 残 業 や 配 置 転 換 に 関 する 企 業 の 命 令 に 原 則 として 従 うことを 求 められ それが 合 理 的 なものである 限 り 就 業 規 則 の 変 更 による 労 働 条 件 の 変 更 にも 応 じなければならないなど 働 き 方 の 中 身 があらかじめ 定 まらないという 特 徴 を 持 つことになった 限 定 正 社 員 は(1) 期 間 の 定 めのない 雇 用 (2) 企 業 による 直 接 雇 用 という 点 は 従 来 型 正 社 員 と 同 じであるが 職 種 勤 務 地 労 働 時 間 のいずれかまたは 複 数 の 要 素 が 特 定 されている 点 が 大 きく 異 なっている 労 働 契 約 や 就 業 規 則 で 職 種 や 勤 務 地 労 働 時 間 が 限 定 されている 場 合 企 業 は 労 働 者 の 同 意 なく 限 定 された 範 囲 を 超 える 配 置 転 換 や 残 業 を 命 令 することはできない その 反 面 事 業 縮 小 や 事 業 所 閉 鎖 によって 仕 事 や 勤 務 地 が 消 失 した 際 には 企 業 が 配 置 転 換 などによって 解 雇 を 回 避 できる 余 地 が 小 さいため 解 雇 が 有 効 とみなされる 余 地 が 従 来 型 正 社 員 より 大 きい 3 限 定 正 社 員 を 労 働 者 からみれば 仕 事 や 勤 務 地 が 存 在 する 限 り 雇 用 が 保 障 される( 仕 事 や 勤 務 場 所 が 消 失 した 際 には 解 雇 の 可 能 性 がある)という 意 味 での そこそこの 雇 用 保 障 と 同 意 なく 残 業 や 配 置 転 換 を 強 いられないという 意 味 での 拘 束 度 の 低 い 働 き 方 の 2 つの 性 格 を 持 つ 働 き 方 である 他 方 限 定 正 社 員 を 企 業 からみれば 従 来 型 正 社 員 のように 残 業 や 配 置 転 換 の 命 令 を 個 別 の 同 意 なく 1 企 業 の 解 雇 権 の 行 使 に 関 しては 1970 年 代 の 判 例 を 通 じて 客 観 的 に 合 理 的 な 理 由 を 欠 き 社 会 通 念 上 相 当 であると 認 められない 場 合 は その 権 利 を 濫 用 したものとして 無 効 とする という 解 雇 権 濫 用 法 理 が 確 立 されている なかで も 整 理 解 雇 については その 有 効 性 を 判 断 する 際 に 1 人 員 削 減 の 必 要 性 が 本 当 にあるか 2 解 雇 回 避 努 力 が 行 われ たか( 解 雇 の 前 に 残 業 削 減 や 配 置 転 換 非 正 規 労 働 者 の 雇 い 止 め 希 望 退 職 の 募 集 等 の 努 力 を 行 ったか) 3 解 雇 者 選 定 が 合 理 的 に 行 われたか 4 手 続 きの 相 当 性 があるか( 労 働 者 への 十 分 な 説 明 や 協 議 が 行 われたか)の 4 要 件 ( 要 素 )を 考 慮 すべきという 原 則 が 確 立 されている 2 例 えば 長 期 雇 用 を 前 提 に 様 々な 職 場 での 経 験 を 通 じた 人 材 育 成 を 行 い 労 働 時 間 の 調 整 や 人 員 の 再 配 置 労 働 条 件 の 調 整 を 通 じて 解 雇 を 回 避 する 日 本 型 の 雇 用 慣 行 を 前 提 に 残 業 や 配 置 転 換 に 関 する 企 業 の 広 範 な 権 利 を 認 める 法 理 合 理 的 な 範 囲 で 企 業 に 就 業 規 則 の 変 更 による 労 働 条 件 の 不 利 益 変 更 を 認 める 法 理 が 確 立 されている 3 ただし 現 行 の 解 雇 ルールを 前 提 とすれば 仕 事 や 勤 務 地 が 消 失 した 際 の 限 定 正 社 員 の 解 雇 についても 人 員 削 減 の 必 要 性 ( 職 種 や 勤 務 地 の 廃 止 を 口 実 に 労 働 者 を 排 除 するための 解 雇 ではないか 等 )や 解 雇 手 続 きの 相 当 性 ( 労 働 者 への 十 分 な 説 明 が 行 われたか 等 )を 問 われる 可 能 性 が 高 い また 限 定 正 社 員 が 実 際 には 無 限 定 な 働 き 方 をしてい た 場 合 には 従 来 型 正 社 員 同 様 の 雇 用 保 障 を 求 められる 可 能 性 がある 2

行 えないという 意 味 での 人 事 権 の 制 約 と 業 務 縮 小 や 事 業 所 閉 鎖 などの 非 常 時 における 解 雇 の 可 能 性 の 2 つの 側 面 を 持 つ 働 かせ 方 と 言 うことができる( 図 表 1) 2. 進 む 政 府 内 の 議 論 2013 年 に 入 ってから 政 府 内 の 各 会 議 審 議 会 で 限 定 正 社 員 の 普 及 策 が 相 次 いで 取 り 上 げられて いる( 図 表 2) 例 えば 総 理 大 臣 の 諮 問 を 受 けて 経 済 財 政 政 策 の 重 要 事 項 について 審 議 を 行 っている 経 済 財 政 諮 問 会 議 では 同 年 2 月 5 日 に 民 間 議 員 によって 限 定 正 社 員 の 創 出 が 提 言 され これを 受 け た 厚 生 労 働 大 臣 が 限 定 正 社 員 の 普 及 策 の 検 討 を 表 明 した また 安 倍 総 理 が 本 部 長 をつとめる 日 本 経 済 再 生 本 部 の 下 で 成 長 戦 略 の 具 体 化 に 向 けた 議 論 を 行 っ ている 産 業 競 争 力 会 議 も 人 材 力 強 化 雇 用 制 度 改 革 の 一 環 として 限 定 正 社 員 のモデルの 確 立 を 取 り 上 げている 2013 年 4 月 2 日 には 安 倍 総 理 が 日 本 経 済 再 生 本 部 長 として 限 定 正 社 員 のモデルを 確 立 するための 施 策 の 具 体 化 を 指 示 しており これを 受 けて 厚 生 労 働 大 臣 は 有 識 者 懇 談 会 で 限 定 正 社 員 の 雇 用 管 理 上 の 留 意 点 を 取 りまとめると 同 時 に 労 働 政 策 審 議 会 で 限 定 正 社 員 の 普 及 策 を 検 討 す る 方 針 を 示 した 産 業 競 争 力 会 議 が 取 りまとめ 同 年 6 月 14 日 に 閣 議 決 定 された 成 長 戦 略 ( 日 本 再 興 戦 略 )にも 雇 用 分 野 の 戦 略 の 一 環 として 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 が 盛 り 込 まれている さらに 総 理 大 臣 の 諮 問 を 受 けて 規 制 改 革 に 関 する 審 議 調 査 を 行 なう 規 制 改 革 会 議 でも 下 部 組 織 である 雇 用 ワーキング グループが 2013 年 3 月 より ( 従 来 型 ) 正 社 員 改 革 の 一 環 として 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールのあり 方 に 関 する 議 論 を 行 ってきた 同 年 6 月 5 日 に 行 われた 規 制 改 革 会 議 第 一 次 答 申 には 国 が 2013 年 度 に 限 定 型 正 社 員 の 雇 用 ルールの 検 討 を 開 始 し 2014 年 度 に 法 案 の 提 出 等 の 具 体 的 な 対 応 を 行 うという 提 言 が 盛 り 込 まれたほか 雇 用 ワーキング グループも 個 別 の 報 告 書 を 公 表 し 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールのあり 方 に 関 する 詳 細 な 提 言 を 行 った 2013 年 6 月 14 日 に 政 府 が 閣 議 決 定 した 規 制 改 革 実 施 計 画 には 国 として 同 年 度 中 に 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールの 検 討 を 行 い 2014 年 度 中 にルールを 具 体 化 するとの 内 容 が 盛 り 込 まれている これを 踏 まえ 今 後 は 公 労 使 の 三 者 で 構 成 され 厚 生 労 働 大 臣 の 諮 問 を 受 けて 雇 用 政 策 上 の 重 要 事 項 を 調 査 審 議 する 労 働 政 策 審 議 会 で 具 体 的 な 限 定 正 社 員 のルールが 検 討 される 見 通 しである 図 表 1 労 働 者 と 企 業 からみた 限 定 正 社 員 のメリット デメリット デメリット 労 働 者 からみた 限 定 正 社 員 そこその 雇 用 保 障 ( 仕 事 や 勤 務 地 消 失 時 に 解 雇 の 可 能 性 ) メリット 企 業 からみた 限 定 正 社 員 業 務 縮 小 や 勤 務 地 閉 鎖 時 に 解 雇 できる 可 能 性 メリット 拘 束 度 の 低 い 働 き 方 デメリット 従 来 型 正 社 員 と 比 べた 人 事 権 の 制 約 ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 作 成 3

図 表 2 政 府 内 の 各 会 議 審 議 会 における 限 定 正 社 員 の 議 論 経 済 財 政 諮 問 会 議 日 本 経 済 再 生 本 部 産 業 競 争 力 会 議 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ 第 4 回 経 済 財 政 諮 問 会 議 (2013 年 2 月 5 日 ) 民 間 議 員 が 限 定 正 社 員 の 創 設 を 提 言 厚 生 労 働 大 臣 が 限 定 正 社 員 のあり 方 や 支 援 策 を 検 討 する 方 針 を 表 明 第 4 回 産 業 競 争 力 会 議 (2013 年 3 月 15 日 ) 安 倍 総 理 が 失 業 なき 労 働 移 動 を 実 現 する 政 策 として 限 定 正 社 員 モデルの 確 立 に 言 及 - 厚 生 労 働 大 臣 が 示 した6 分 野 8つのアクションの 中 で 限 定 正 社 員 の 普 及 策 に 言 及 雇 用 ワーキング グループ 第 1 回 (2013 年 3 月 28 日 )~ 第 7 回 (2013 年 5 月 29 日 ) 第 9 回 経 済 財 政 諮 問 会 議 (2013 年 4 月 22 日 ) 人 材 育 成 に 関 する 議 論 で 具 体 策 の 例 として 限 定 正 社 員 の 普 及 策 に 言 及 日 本 経 済 再 生 本 部 (2013 年 4 月 2 日 ) 産 業 競 争 力 会 議 の 議 論 を 踏 まえ 安 倍 総 理 が 関 係 大 臣 に 指 示 - 雇 用 分 野 では 限 定 正 社 員 の モデルの 確 立 に 向 けた 施 策 の 具 体 化 を 指 示 第 7 回 産 業 競 争 力 会 議 (2013 年 4 月 23 日 ) 厚 生 労 働 大 臣 が 多 様 な 働 き 方 の 促 進 に 向 けた 環 境 整 備 に 取 り 組 む 方 針 を 表 明 - 限 定 正 社 員 の 成 功 事 例 の 収 集 周 知 啓 発 雇 用 管 理 上 の 留 意 点 の 取 りまとめ 雇 用 分 野 の 規 制 改 革 事 項 を 議 論 - 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルール 職 業 紹 介 労 働 者 派 遣 制 度 労 働 時 間 制 度 のあり 方 等 第 11 回 産 業 競 争 力 会 議 (2013 年 6 月 12 日 ) 成 長 戦 略 案 を 提 示 - 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 ( 成 功 事 例 の 収 集 と 周 知 啓 発 有 識 者 懇 談 会 による 雇 用 管 理 上 の 留 意 点 の 取 りまとめ 等 ) 規 制 改 革 会 議 第 一 次 答 申 (2013 年 6 月 5 日 ) 雇 用 分 野 では 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルール 労 働 時 間 制 度 職 業 紹 介 労 働 者 派 遣 制 度 の 規 制 改 革 について 提 言 ( 資 料 ) 経 済 財 政 諮 問 会 議 日 本 経 済 再 生 本 部 規 制 改 革 会 議 ウェブサイトより みずほ 総 合 研 究 所 作 成 4

III. なぜ 国 は 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 取 り 組 もうとしているのか 前 章 では 政 府 の 様 々な 会 議 審 議 会 で 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 が 取 り 上 げられていることを 見 た なぜ 今 安 倍 政 権 の 雇 用 政 策 で これほどまでに 限 定 正 社 員 がクローズアップされているのだ ろうか 以 下 では 安 倍 政 権 の 経 済 政 策 と 限 定 正 社 員 の 親 和 性 非 正 社 員 から 正 社 員 への 足 掛 かりや 家 庭 生 活 と 両 立 しやすい 働 き 方 しての 期 待 法 改 正 への 対 応 の3つの 側 面 から この 問 いへの 答 えを 考 える 1. 安 倍 政 権 の 経 済 政 策 と 限 定 正 社 員 の 親 和 性 安 倍 政 権 で 限 定 正 社 員 がクローズアップされている 背 景 として この 政 策 が 同 政 権 の 経 済 政 策 と 親 和 性 が 高 いことがある 安 倍 政 権 は 成 長 戦 略 の 一 環 として 失 業 なき 労 働 移 動 を 標 榜 し 特 に 低 生 産 性 部 門 から 高 生 産 性 部 門 に 労 働 移 動 を 促 すことを 重 視 している 従 来 型 正 社 員 と 比 較 して 限 定 正 社 員 は 仕 事 や 勤 務 場 所 が 消 失 した 際 に 企 業 が 解 雇 を 行 う 余 地 が 大 きい すなわち 限 定 正 社 員 は 低 生 産 性 部 門 に 労 働 力 を 滞 留 させにくい 働 き 方 と 言 うことが 可 能 であり こうした 特 性 が 安 倍 政 権 の 経 済 政 策 が 目 指 す 方 向 と 合 致 している このことは 政 府 内 の 複 数 の 会 議 や 審 議 会 で 繰 り 返 し 限 定 正 社 員 が 取 り 上 げられる 一 因 となっている 2. 非 正 社 員 から 正 社 員 への 足 掛 かり 家 庭 生 活 と 両 立 し 易 い 働 き 方 としての 期 待 国 が 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 取 り 組 むもう 1 つの 要 因 として これが 非 正 社 員 の 雇 用 安 定 の 足 掛 かりとなるほか 家 庭 生 活 と 両 立 し 易 い 働 き 方 の 拡 大 につながるとの 期 待 がある 日 本 では 雇 用 者 に 占 める 正 社 員 の 割 合 が 減 少 を 続 けており 本 来 は 正 社 員 を 希 望 するにも 関 わらず 非 正 社 員 として 働 く 不 本 意 型 非 正 社 員 も 1999 年 から 2010 年 にかけて 約 3 倍 に 増 加 している また 子 育 てなどの 家 庭 生 活 と 仕 事 を 両 立 する 労 働 者 が 増 えた 結 果 残 業 や 配 置 転 換 を 前 提 に 仕 事 中 心 の 生 活 を 迫 られる 一 方 厳 格 な 雇 用 保 障 の 下 に 置 かれる 働 き 方 でも 雇 用 が 不 安 定 な 一 方 拘 束 度 が 低 い 働 き 方 でも ない 新 しい 働 き 方 を 求 める 声 が 高 まった こうした 問 題 を 克 服 する 働 き 方 として 2000 年 代 以 降 の 雇 用 政 策 に 関 する 議 論 で 浮 上 してきたのが 限 定 正 社 員 である 例 えば 2002 年 には 厚 生 労 働 省 の 多 様 で 柔 軟 な 働 き 方 を 選 択 できる 雇 用 システ ムのあり 方 に 関 する 研 究 会 が 正 社 員 と 非 正 社 員 に 二 極 化 した 雇 用 システムによって (1) 経 済 活 力 の 低 下 (2) 働 き 方 に 対 する 労 働 者 の 不 満 の 増 大 (3) 非 正 社 員 の 増 加 による 不 安 定 雇 用 や 低 い 処 遇 の 拡 大 (4) 男 女 間 の 実 質 的 な 不 平 等 の 持 続 (5) 雇 用 不 安 生 活 不 安 の 増 大 といったリスクが 生 じている と 指 摘 し その 克 服 策 として 従 来 型 正 社 員 と 非 正 社 員 の 間 の 中 間 的 な 働 き 方 を 創 出 することを 提 唱 した( 多 様 で 柔 軟 な 働 き 方 を 選 択 できる 雇 用 システムのあり 方 に 関 する 研 究 会 (2002)) また 2003 年 には 労 働 経 済 学 者 の 久 本 憲 夫 氏 が 画 一 的 な 働 き 方 を 求 められる 正 社 員 か 雇 用 が 不 安 定 な 非 正 社 員 かという 選 択 肢 を 超 え 一 定 の 雇 用 安 定 性 や 賃 金 水 準 家 族 生 活 と 両 立 しうる 労 働 時 間 能 力 開 発 やキャリア 形 成 の 機 会 を 提 供 する 働 き 方 として 多 様 な 正 社 員 という 働 き 方 を 提 唱 した( 久 本 5

(2003)) さらに 2006 年 から 2007 年 頃 になると フリーター 問 題 や 働 く 人 の 格 差 問 題 がマスコミに 繰 り 返 し 取 り 上 げられるようになった こうしたなか 非 正 社 員 の 雇 用 安 定 化 が 雇 用 政 策 上 の 重 要 課 題 として 浮 上 し その 具 体 策 として 限 定 正 社 員 の 普 及 がより 本 格 的 な 形 で 取 り 上 げられるようになっ た 例 えば 経 済 財 政 諮 問 会 議 労 働 市 場 改 革 専 門 調 査 会 (2008)は 有 期 労 働 契 約 者 の 雇 用 安 定 化 策 の 一 環 として 業 務 や 職 場 事 業 所 を 限 定 した 契 約 期 間 に 定 めのない 労 働 契 約 を 提 唱 している 近 年 限 定 正 社 員 の 普 及 を 求 める 声 は 一 層 の 高 まりを 見 せている 背 景 には 非 正 社 員 の 雇 用 安 定 を 図 ろうとする 際 労 働 者 派 遣 制 度 や 有 期 労 働 法 制 の 見 直 しなどによって 非 正 社 員 の 働 き 方 を 改 善 す るだけでは 不 十 分 であり 正 社 員 の 働 き 方 を 多 様 化 して 良 質 な 雇 用 機 会 を 増 やすことが 必 要 との 認 識 が 高 まってきたことがある 例 えば 有 識 者 が 参 集 し 雇 用 問 題 への 効 果 的 な 政 策 的 対 応 を 検 討 する 雇 用 政 策 研 究 会 (2010)は 非 正 社 員 の 雇 用 安 定 を 図 るためには 労 働 者 派 遣 制 度 や 有 期 労 働 法 制 の 見 直 しによって 非 正 社 員 の 働 き 方 を 改 善 するだけでなく 正 社 員 の 働 き 方 の 多 様 化 が 必 要 であると 指 摘 した 同 研 究 会 は 有 期 労 働 者 の 雇 用 安 定 への 足 掛 かり 多 様 な 働 き 方 を 求 める 労 働 者 の 受 け 皿 な どとして 限 定 正 社 員 を 位 置 づけ これを 労 使 が 選 択 しやすくするための 環 境 整 備 を 提 言 している 4 さ らに 有 期 労 働 契 約 が 良 好 な 雇 用 形 態 として 活 用 されるようにする という 観 点 から 有 期 労 働 契 約 の あり 方 を 検 討 した 有 期 労 働 契 約 研 究 会 (2010) 5 も 有 期 労 働 者 の 雇 用 安 定 を 目 指 す 立 場 から 限 定 正 社 員 の 普 及 に 向 けた 環 境 整 備 を 視 野 に 入 れるべきと 提 言 した 同 研 究 会 によれば 有 期 労 働 者 を 従 来 型 正 社 員 に 一 挙 に 転 換 することは 難 しく 有 期 労 働 者 にとっても 配 置 転 換 が 前 提 となる 従 来 型 正 社 員 は 望 ましい 選 択 肢 とは 限 らない このため 職 種 や 勤 務 地 が 限 定 された 無 期 雇 用 契 約 の 普 及 は 有 期 労 働 者 の 雇 用 安 定 に 有 効 な 方 策 となりうるとされている 3. 改 正 労 働 契 約 法 がもたらす 影 響 への 対 応 なぜ 今 国 が 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 取 り 組 むのかを 考 える 上 では 法 改 正 の 影 響 も 無 視 できな い 2013 年 4 月 1 日 に 施 行 された 改 正 労 働 契 約 法 により 今 後 限 定 正 社 員 に 該 当 する 労 働 者 が 増 え ると 見 込 まれる そのため 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールの 検 討 が 差 し 迫 った 課 題 となっている これについてもう 少 し 詳 しく 述 べると 改 正 労 働 契 約 法 の 施 行 により 2013 年 4 月 1 日 以 降 同 じ 使 用 者 と 結 んだ 2 つ 以 上 の 有 期 労 働 契 約 が 通 算 5 年 を 超 える 場 合 契 約 期 間 中 に 有 期 労 働 者 が 無 期 雇 用 転 換 の 申 し 込 みを 行 うと 使 用 者 がこれを 承 諾 したとみなして 無 期 労 働 契 約 が 成 立 する 制 度 ( 以 下 無 期 雇 用 転 換 制 度 という)が 導 入 された( 図 表 3) 6 例 えば 2013 年 4 月 1 日 に 開 始 する 期 間 1 年 の 有 期 労 働 契 約 を 反 復 更 新 する 場 合 5 回 目 の 更 新 (2018 年 4 月 1 日 )で 通 算 契 約 期 間 が 5 年 を 超 え 4 雇 用 政 策 研 究 会 の 提 言 を 受 けて 厚 生 労 働 省 に 設 置 された 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 関 する 研 究 会 も 2012 年 3 月 に 公 表 した 報 告 書 で 非 正 社 員 の 正 社 員 転 換 の 機 会 を 拡 大 し 従 来 型 正 社 員 がワーク ライフ バランスを 実 現 す る 手 段 として 職 種 や 勤 務 地 労 働 時 間 が 限 定 された 正 社 員 の 必 要 性 を 指 摘 している 5 有 期 労 働 契 約 に 関 する 施 策 の 方 向 性 を 検 討 するため 厚 生 労 働 省 労 働 基 準 局 長 が 学 識 経 験 者 を 集 めて 行 った 研 究 会 2009 年 2 月 に 議 論 を 開 始 し 2010 年 9 月 に 報 告 書 を 公 表 した 6 実 際 に 労 働 契 約 が 無 期 に 転 換 されるのは 申 し 込 み 時 の 有 期 労 働 契 約 の 終 了 後 である また 2 つの 有 期 労 働 契 約 の 間 に 6 カ 月 以 上 の 空 白 期 間 (クーリング 期 間 )がある 場 合 契 約 は 通 算 されない 使 用 者 が 同 じであれば 事 業 所 を 変 更 しても 有 期 労 働 契 約 は 通 算 される 6

労 働 者 が 無 期 雇 用 転 換 の 申 し 込 みを 行 うことが 可 能 となる この 制 度 によって 無 期 労 働 契 約 に 転 換 した 労 働 者 の 労 働 条 件 ( 職 務 勤 務 地 賃 金 等 )は 就 業 規 則 や 個 別 の 労 働 契 約 で 特 別 に 定 めない 限 り 直 前 の 有 期 労 働 契 約 と 同 一 とされる 有 期 労 働 者 は 勤 務 地 や 職 種 労 働 時 間 を 特 定 して 労 働 契 約 を 結 んでいることが 多 いため 上 記 の 新 制 度 によって 仕 事 や 勤 務 地 労 働 時 間 を 特 定 しつつ 企 業 と 無 期 労 働 契 約 を 結 ぶ 限 定 正 社 員 が 増 えると 考 えられる この 制 度 で 通 算 される 有 期 労 働 契 約 は 改 正 法 が 施 行 された 2013 年 4 月 1 日 以 降 に 契 約 期 間 がス タートしたものに 限 られる このため この 制 度 が 導 入 されたからといって すぐに 限 定 正 社 員 が 増 加 するとは 考 え 難 い しかし 中 期 的 に 見 れば これまで 有 期 労 働 契 約 を 反 復 更 新 してきた 労 働 者 が 無 期 雇 用 に 転 換 される 事 例 が 増 えると 考 えられる そうした 人 々にとっての 公 正 な 働 き 方 を 実 現 する という 点 からも 限 定 正 社 員 という 働 き 方 に 関 わるルールの 整 備 が 求 められている IV. 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 と 導 き 出 される 問 題 前 章 で 見 たように 安 部 政 権 の 経 済 政 策 と 限 定 正 社 員 の 親 和 性 非 正 社 員 から 正 社 員 への 足 掛 かり や 家 庭 生 活 と 両 立 し 易 い 働 き 方 としての 期 待 法 改 正 に 対 応 する 必 要 など 様 々な 背 景 から 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 向 けた 機 運 が 高 まりつつある そこで 重 要 となるのは 限 定 正 社 員 が 期 待 される 役 割 を 果 すために 今 後 どのような 問 題 を 克 服 す る 必 要 があるのかという 点 である 本 章 及 び 次 章 では これまでの 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 から 見 出 さ れる 問 題 及 び 今 後 の 普 及 に 向 けた 懸 念 事 項 をそれぞれ 取 り 上 げる まず 本 章 では これまでの 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 を 確 認 した 上 で そこに 見 られる 問 題 と 克 服 に 向 けた 課 題 を 検 討 する 図 表 3 無 期 雇 用 転 換 制 度 が 適 用 されるケース( 例 ) [ 契 約 期 間 が1 年 の 有 期 労 働 契 約 を 更 新 する 場 合 ] 5 年 1 年 1 年 1 年 1 年 1 年 1 年 無 期 労 働 契 約 締 結 更 新 更 新 更 新 更 新 更 新 [ 契 約 期 間 が3 年 の 有 期 労 働 契 約 を 更 新 する 場 合 ] 5 年 申 し 込 み 転 換 3 年 3 年 無 期 労 働 契 約 締 結 更 新 申 し 込 み 転 換 ( 資 料 ) 厚 生 労 働 省 都 道 府 県 労 働 局 労 働 基 準 監 督 署 労 働 契 約 法 改 正 のあらまし より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 7

1. 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 企 業 が 労 働 者 と 職 種 や 勤 務 地 を 限 定 した 無 期 労 働 契 約 を 結 ぶことは 現 行 法 の 下 でも 可 能 であり 実 際 にそうした 働 き 方 を 導 入 してきた 企 業 は 少 なくない そこで 以 下 では 限 定 正 社 員 に 関 わる 企 業 アンケート 調 査 や 実 証 研 究 の 成 果 から これまでの 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 を 確 認 する (1) 広 がりを 見 せる 限 定 正 社 員 の 活 用 企 業 後 述 するような 問 題 を 抱 えているものの 限 定 正 社 員 に 該 当 する 働 き 方 そのものは 既 に 広 く 採 用 されている 厚 生 労 働 省 が 2011 年 に 行 った 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 係 る 企 業 アンケート 調 査 ( 以 下 企 業 調 査 と 呼 ぶ) 7 によれば 限 定 正 社 員 の 定 義 8 に 該 当 する 雇 用 区 分 ( 以 下 制 度 化 されて おらず 実 態 上 職 務 や 勤 務 地 などが 限 定 されているものを 含 む)を 導 入 する 企 業 は 回 答 企 業 1987 社 の 51.9%を 占 めている 各 企 業 が 採 用 している 限 定 正 社 員 の 雇 用 区 分 のうち 大 多 数 は 職 種 限 定 型 である 図 表 4 は 企 業 調 査 で 企 業 が 自 社 に 存 在 すると 回 答 した 正 社 員 の 雇 用 区 分 ( 合 計 3,245)の 内 訳 を 示 したものであ る これによると 限 定 正 社 員 に 該 当 する 雇 用 区 分 は 1,547 で うち 職 種 限 定 に 該 当 する 区 分 が 約 9 割 勤 務 地 限 定 に 該 当 する 区 分 が 約 4 割 労 働 時 間 限 定 に 該 当 する 区 分 が1~2 割 を 占 めた( 複 数 の 限 定 を 組 み 合 わせた 雇 用 区 分 もあるため 全 ての 区 分 の 合 計 は 10 割 とはならない) これに 基 づく 厚 生 労 働 省 の 推 計 では 限 定 正 社 員 は 正 社 員 の 約 3 割 (32.9%)を 占 める 図 表 4 正 社 員 として 報 告 された 雇 用 区 分 の 内 訳 ( 厚 生 労 働 省 企 業 アンケート 調 査 ) 一 部 無 回 答 その 他 正 社 員 96 職 種 限 定 888 314 72 40 労 働 時 間 限 定 82 6 従 来 型 正 社 員 1602 勤 務 地 限 定 145 いずれか 限 定 1547 ( 資 料 ) 厚 生 労 働 省 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 係 る 企 業 アンケート 調 査 2011 年 より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 7 企 業 調 査 は 2011 年 7 月 19 日 ~8 月 10 日 にかけて 岩 手 県 宮 城 県 福 島 県 を 除 く 全 国 44 都 道 府 県 に 所 在 する 正 社 員 300 人 以 上 の 全 企 業 11,170 社 を 対 象 に 行 われたもので 有 効 回 答 1,987 社 によって 報 告 された 雇 用 区 分 数 ( いわゆ る 正 社 員 多 様 な 正 社 員 ( 職 種 限 定 労 働 時 間 限 定 A 労 働 時 間 限 定 B 勤 務 地 限 定 ) その 他 正 社 員 一 部 無 回 答 正 社 員 のいずれかに 該 当 する 制 度 運 用 実 態 があるとして 企 業 が 回 答 した 件 数 )は 3,245 であった 8 この 調 査 では 1 職 種 が 限 定 された 無 期 労 働 者 2 労 働 時 間 が 限 定 された 無 期 労 働 者 3 勤 務 地 が 限 定 された 無 期 労 働 者 を 多 様 な 正 社 員 と 呼 んでいるが 以 下 では 本 文 中 の 表 記 を 揃 えるため これを 限 定 正 社 員 と 読 み 替 えている 8

(2) 限 定 正 社 員 導 入 の 主 要 な 目 的 は 人 材 の 確 保 企 業 が 限 定 正 社 員 を 導 入 する 大 きな 目 的 は 多 様 な 働 き 方 を 提 供 することによって 優 秀 な 人 材 を 確 保 することである 企 業 調 査 により 限 定 正 社 員 を 導 入 した 企 業 にその 理 由 を 複 数 回 答 で 訊 ねた 結 果 を 確 認 すると 優 秀 な 人 材 を 確 保 するため という 回 答 が 最 多 の 43%を 占 めている これに 続 いて 多 い 回 答 は 従 業 員 の 定 着 を 図 るため が 39% ワーク ライフ バランス 支 援 のため が 24%で ある( 図 表 5) 実 証 研 究 によれば 企 業 は 限 定 正 社 員 という 働 き 方 を 単 独 で 採 用 しているというより 人 材 戦 略 を より 開 かれたものへと 変 革 する 方 策 の 一 つとして 活 用 しているようだ これに 関 し 守 島 (2011)は 限 定 正 社 員 制 度 を 導 入 済 みの 企 業 に 着 目 し その 人 材 活 用 の 特 性 に 着 目 した 分 析 を 行 っている 9 これ によると 限 定 正 社 員 制 度 を 導 入 済 みの 企 業 は 企 業 内 の 労 働 市 場 の 外 部 開 放 に 関 わる 項 目 ( 外 部 人 材 の 活 用 自 己 都 合 で 退 職 した 社 員 の 再 雇 用 など) より 競 争 的 な 評 価 処 遇 に 関 わる 項 目 ( 成 果 に 応 じた 処 遇 や 評 価 年 齢 や 勤 続 年 数 にとらわれない 昇 進 昇 格 など) ワーク ライフ バランスに 関 わ る 項 目 ( 仕 事 と 育 児 の 両 立 支 援 ) 非 正 規 人 材 の 活 用 に 関 わる 項 目 ( 非 正 規 人 材 外 部 人 材 の 積 極 的 活 用 非 正 社 員 の 社 員 への 登 用 )で 限 定 正 社 員 を 活 用 しない 企 業 よりも 積 極 的 である 図 表 5 限 定 正 社 員 を 活 用 する 背 景 ( 複 数 回 答 ) 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 優 秀 な 人 材 を 確 保 するため 43 (%) 従 業 員 の 定 着 を 図 るため 39 ワーク ライフ バランス 支 援 24 賃 金 の 節 約 のため 18 賃 金 以 外 の 労 務 コスト 削 減 のため 9 非 正 社 員 からの 転 換 円 滑 化 のため 8 仕 事 の 繁 閑 に 対 応 するため 6 業 務 量 変 化 に 対 応 するため 5 ( 注 ) 回 答 割 合 が 5% 未 満 の 質 問 項 目 は 割 愛 した ( 資 料 ) 厚 生 労 働 省 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 係 る 企 業 アンケート 調 査 2011 年 より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 9 ここでは 労 働 政 策 研 究 研 修 機 構 が 2005 年 に 行 った 企 業 戦 略 と 人 材 マネジメントに 関 する 総 合 調 査 ( 東 京 商 工 リ サーチ 企 業 データベース 台 帳 から 従 業 員 の 多 い 順 に 11,856 社 を 抽 出 回 答 企 業 1,280 社 ) のデータを 利 用 し 複 数 の 人 事 施 策 について 過 去 5 年 間 に 重 視 してきた 企 業 の 割 合 を 取 り 上 げ 限 定 正 社 員 のいる 企 業 ( 勤 務 地 の 制 限 な ど 異 なった 雇 用 形 態 が 存 在 する 企 業 )といない 企 業 の 間 で 統 計 的 に 有 意 な 差 があるかどうかを 検 証 している 9

(3) 従 来 型 正 社 員 と 異 なる 限 定 正 社 員 の 処 遇 限 定 正 社 員 の 処 遇 については 従 来 型 正 社 員 と 差 を 設 ける 企 業 が 多 い 例 えば 企 業 調 査 により 従 来 型 正 社 員 の 賃 金 を 100 とした 場 合 の 限 定 正 社 員 の 賃 金 を 確 認 すると 100 未 満 が 83%を 占 め な かでも 8 割 ~9 割 未 満 が 最 多 ( 全 体 の 25%)となった また 従 来 型 正 社 員 の 雇 用 区 分 のうち 昇 進 昇 格 に 上 限 があるものは 24%に 止 まるのに 対 し 限 定 正 社 員 の 雇 用 区 分 のうち 同 様 の 上 限 があるもの は 49%に 上 った 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 では 企 業 の 教 育 訓 練 の 方 針 にも 違 いが 見 られる 従 来 型 正 社 員 の 雇 用 区 分 のうち 最 も 多 い 回 答 は 長 期 的 な 視 点 から 計 画 的 に 幅 広 い 能 力 を 習 得 させる であり 55%を 占 めた これに 対 し 限 定 正 社 員 の 雇 用 区 分 のうち 最 も 多 い 回 答 は 業 務 の 必 要 に 応 じてその 都 度 能 力 を 習 得 させる であり 39%を 占 めた (4) 従 来 型 正 社 員 と 同 様 のケースが 多 い 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 仕 事 や 事 業 所 がなくなれば 解 雇 の 可 能 性 がある というのが 限 定 正 社 員 の 前 提 であるが 実 際 に は 仕 事 や 勤 務 地 がなくなった 際 でも 限 定 正 社 員 に 対 して 従 来 型 正 社 員 と 同 様 の 雇 用 保 障 を 行 う 企 業 が 多 い 企 業 調 査 により 事 業 縮 小 や 事 業 所 閉 鎖 時 の 人 事 上 の 取 り 扱 いを 確 認 すると 職 種 限 定 正 社 員 に 該 当 する 雇 用 区 分 のうち 事 業 所 閉 鎖 等 の 際 の 人 事 上 の 取 り 扱 いについて 従 来 型 正 社 員 と 同 様 とする 回 答 が 77%を 占 めた また 勤 務 地 限 定 正 社 員 に 該 当 する 雇 用 区 分 のうち 同 様 の 回 答 が 63%を 占 めた 2. これまでの 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 から 見 出 される 課 題 本 節 では 企 業 従 業 員 調 査 の 結 果 や 実 証 研 究 の 示 唆 を 踏 まえつつ 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 から 見 出 される 問 題 とその 克 服 に 向 けた 方 向 を 整 理 する (1) 限 定 正 社 員 の 曖 昧 な 位 置 づけによる 雇 用 保 障 の 不 明 瞭 化 第 1 の 問 題 として 限 定 正 社 員 の 位 置 づけや 働 き 方 の 中 身 が 曖 昧 なまま 活 用 されている 結 果 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 のあり 方 も 不 明 瞭 になっている 点 が 指 摘 できる( 図 表 6) 企 業 調 査 によれば すで に 導 入 された 限 定 正 社 員 の 雇 用 区 分 のなかには 労 働 契 約 や 就 業 規 則 で 職 種 や 勤 務 地 が 明 示 的 に 定 め られていないケースが 少 なくない 例 えば 職 種 限 定 正 社 員 に 該 当 する 雇 用 区 分 のうち 労 働 契 約 や 就 業 規 則 で 仕 事 の 範 囲 を 限 定 していないものは 48% 勤 務 地 限 定 正 社 員 に 該 当 する 雇 用 区 分 のうち 労 働 契 約 や 就 業 規 則 で 勤 務 地 を 限 定 していないものは 64%である( 図 表 7) また 業 務 縮 小 や 事 業 所 閉 鎖 時 の 人 事 上 の 取 り 扱 いについても 労 働 契 約 や 就 業 規 則 で 定 めていないケースが 多 く 企 業 が 導 入 している 限 定 正 社 員 制 度 のうち 62%がこれに 該 当 した さらに 労 働 契 約 や 就 業 規 則 で 職 種 や 勤 務 地 が 明 示 されていても 実 際 の 働 き 方 がなし 崩 し 的 に 無 限 定 になっているケースもあると 指 摘 され ている( 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ(2013)) このように 限 定 正 社 員 の 位 置 づけや 働 き 方 の 中 身 が 曖 昧 な 結 果 仕 事 や 勤 務 地 等 がなくなっても 企 業 が 限 定 正 社 員 の 解 雇 を 行 い 難 い 状 況 が 生 じている 従 来 型 正 社 員 との 境 界 が 曖 昧 な 形 で 働 かせて いた 限 定 正 社 員 を 解 雇 し その 有 効 性 が 裁 判 で 争 われた 場 合 限 定 正 社 員 に 対 して 従 来 型 正 社 員 と 同 10

図 表 6 これまでの 限 定 正 社 員 の 活 用 に 見 る 問 題 点 と 対 応 の 方 向 問 題 と 対 応 の 方 向 (1) 限 定 正 社 員 の 曖 昧 な 位 置 づけによる 雇 用 保 障 の 不 明 瞭 化 限 定 正 社 員 の 位 置 づけと 働 かせ 方 の 中 身 の 明 確 化 を 促 す 措 置 限 定 正 社 員 の 名 目 と 働 き 方 の 実 態 の 一 致 を 促 す 措 置 (2) 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 をめぐる 労 使 の 認 識 に 隔 たりがある 問 題 限 定 正 社 員 の 不 公 正 かつ 安 易 な 解 雇 を 防 止 する 措 置 限 定 正 社 員 の 転 職 市 場 の 整 備 在 職 中 の 職 業 能 力 形 成 や 転 職 を 目 指 す 限 定 正 社 員 に 対 する 政 策 的 支 援 の 充 実 (3) 限 定 正 社 員 の 労 働 条 件 をめぐる 問 題 限 定 正 社 員 と 従 来 型 正 社 員 の 均 衡 処 遇 の 推 進 限 定 正 社 員 が 高 い 意 欲 や 賃 金 への 納 得 感 を 持 って 働 ける 雇 用 管 理 の 推 進 (4) 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 をめぐる 問 題 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 制 度 を 設 ける 企 業 に 対 する 支 援 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 に 資 する 限 定 正 社 員 非 正 社 員 の 雇 用 管 理 の 研 究 と 成 果 の 普 及 ( 資 料 )みずほ 総 合 研 究 所 作 成 図 表 7 就 業 規 則 労 働 契 約 による 職 種 勤 務 地 の 限 定 状 況 就 業 規 則 や 労 働 契 約 で 仕 事 の 範 囲 を 限 定 職 種 限 定 就 業 規 則 や 労 働 契 約 で 仕 事 の 範 囲 を 限 定 せず 実 際 の 範 囲 は 限 定 就 業 規 則 や 労 働 契 約 で 勤 務 地 を 限 定 36 勤 務 地 限 定 64 就 業 規 則 や 労 働 契 約 で 勤 務 地 を 限 定 せず 実 際 の 範 囲 は 限 定 52 48 ( 資 料 ) 厚 生 労 働 省 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 係 る 企 業 アンケート 調 査 2011 年 より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 11

様 の 雇 用 保 障 を 求 められる 可 能 性 がある これを 避 けるため 仕 事 や 勤 務 地 がなくなった 場 合 にも 限 定 正 社 員 に 従 来 型 正 社 員 と 同 様 の 雇 用 保 障 を 行 う 企 業 が 多 いと 指 摘 されている 10 こうした 状 況 は 労 使 双 方 に 好 ましくない 結 果 をもたらしている 限 定 正 社 員 として 働 く 人 にとっ て 従 来 型 正 社 員 同 様 の 雇 用 保 障 が 行 われることは 一 見 望 ましいようにも 見 える しかし 仕 事 や 勤 務 地 がなくなった 際 の 雇 用 保 障 が 限 定 正 社 員 としての 名 目 と 実 態 の 相 違 の 有 無 や 企 業 が 解 雇 を 巡 る 紛 争 をどう 考 えるかなどの 判 断 しにくい 要 素 に 左 右 されれば 労 働 者 は 雇 用 継 続 の 見 通 しを 立 て 難 くなる また 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 のあり 方 が 不 明 瞭 なままでは 企 業 が 限 定 正 社 員 を 大 幅 に 拡 充 することも 難 しい 以 上 の 問 題 を 克 服 するためには 限 定 正 社 員 の 位 置 づけと 働 き 方 の 中 身 を 明 確 化 することが 課 題 と なろう そのための 方 策 として 職 種 や 勤 務 地 労 働 時 間 などの 限 定 項 目 を 労 働 契 約 または 就 業 規 則 で 明 確 にした 上 で 該 当 する 労 働 者 の 職 種 や 勤 務 地 労 働 時 間 を 変 更 する 場 合 は 労 働 契 約 等 でこれ を 明 らかにするようルール 化 することが 考 えられる また 限 定 正 社 員 としてあらかじめ 特 定 した 働 き 方 の 中 身 と 実 際 の 職 場 の 働 かせ 方 が 一 致 するようガイドラインなどの 形 で 促 すことも 重 要 である (2) 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 をめぐる 労 使 の 認 識 の 隔 たり 第 2 の 問 題 として 限 定 正 社 員 に 対 する 雇 用 保 障 のあり 方 を 巡 っては 労 使 の 間 に 認 識 の 差 があり 現 時 点 ではこれが 調 整 されていない 点 が 挙 げられる 労 働 者 の 考 え 方 を 見 ると 限 定 正 社 員 に 従 来 型 正 社 員 と 同 様 の 雇 用 保 障 を 求 める 傾 向 が 強 い 図 表 8 は 現 在 従 来 型 正 社 員 限 定 正 社 員 基 幹 的 非 正 社 員 ( 担 当 する 仕 事 が 同 じ 正 社 員 がいる 有 期 労 働 者 )として 働 く 人 に 職 種 限 定 正 社 員 として 働 く 場 合 に 許 容 しうる 処 遇 条 件 を 尋 ねた 結 果 を 示 したも 図 表 8 限 定 正 社 員 として 働 く 場 合 に 許 容 できる 処 遇 水 準 として 従 来 型 正 社 員 と 同 様 と 回 答 した 割 合 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 (%) 従 来 型 正 社 員 78 74 限 定 正 社 員 60 基 幹 的 非 正 社 員 50 47 38 40 28 30 時 間 当 たり 給 与 昇 進 昇 格 雇 用 保 障 の 程 度 ( 注 )1. 現 在 限 定 正 社 員 として 働 いている/いないに 関 わらず 限 定 正 社 員 として 働 く 場 合 に 許 容 できる 処 遇 水 準 として 従 来 型 正 社 員 と 同 様 と 回 答 した 人 の 割 合 2. 基 幹 的 非 正 社 員 とは 同 じ 仕 事 をしている 正 社 員 がいる 有 期 労 働 者 を 指 す ( 資 料 ) 厚 生 労 働 省 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 係 る 従 業 員 アンケート 調 査 2011 年 より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 10 第 2 回 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ(2013 年 4 月 11 日 )では この 点 についての 議 論 が 行 われている 12

のである(ここでは 従 来 型 正 社 員 と 同 様 の 水 準 と 回 答 した 人 の 割 合 を 示 している) これによる と 限 定 正 社 員 として 働 く 場 合 の 雇 用 保 障 について 従 来 型 正 社 員 と 同 様 の 水 準 を 求 める 人 が 回 答 者 の 6~8 割 と 高 い 割 合 を 占 めている これに 対 し 企 業 は 限 定 正 社 員 と 従 来 型 正 社 員 の 雇 用 保 障 のあり 方 を 異 なるものとすることを 考 えている 例 えば 経 団 連 (2013)は 紛 争 を 予 防 するため 特 定 の 勤 務 地 ないし 職 種 が 消 滅 すれば 契 約 が 終 了 する 旨 を 労 働 協 約 就 業 規 則 個 別 契 約 で 定 めた 場 合 には 当 該 勤 務 地 ないし 職 種 が 消 滅 した 事 実 をもって 契 約 を 終 了 しても 解 雇 権 濫 用 法 理 がそのまま 当 たらないことを 法 定 化 すべき と 指 摘 している 11 職 種 や 勤 務 地 を 限 定 して 働 くという 限 定 正 社 員 の 特 性 を 考 えれば 仕 事 や 勤 務 地 がなくなった 際 企 業 に 配 置 転 換 などの 解 雇 回 避 努 力 を 尽 くすよう 一 律 に 求 めることは 難 しい 企 業 が 限 定 正 社 員 に 対 して 名 目 と 実 態 が 一 致 するような 働 かせ 方 をきちんとしていたことや 解 雇 に 際 して 必 要 な 手 続 きが 踏 まれることが 前 提 であるが 仕 事 や 勤 務 地 が 消 失 した 際 の 雇 用 保 障 のあり 方 を 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 で 異 なるものとするべきという 企 業 サイドの 主 張 には 一 理 ある 一 方 で 限 定 正 社 員 に 従 来 型 正 社 員 同 様 の 雇 用 保 障 を 求 める 労 働 者 の 希 望 については それを 全 面 的 に 否 定 するのではなく その 背 後 にある 問 題 を 考 える 必 要 がある 従 来 型 正 社 員 と 非 正 社 員 中 心 の 労 働 市 場 が 形 成 されてきた 日 本 では 専 門 的 な 技 能 を 持 つ 労 働 者 のための 転 職 市 場 が 十 分 発 達 してお らず 労 働 者 の 専 門 性 や 職 業 能 力 を 評 価 する 仕 組 みも 発 展 途 上 である また 長 期 雇 用 慣 行 を 前 提 に 失 業 時 のセーフティネットが 構 築 されてきたため 失 業 時 の 所 得 保 障 や 再 就 職 支 援 職 業 訓 練 などに 対 する 公 的 支 出 も 低 水 準 である こうした 状 況 で 仕 事 や 勤 務 地 の 消 失 を 理 由 に 解 雇 されれば 失 業 期 間 が 長 期 化 しかねない 以 上 を 踏 まえれば 限 定 正 社 員 の 解 雇 の 可 能 性 に 対 して 労 働 者 が 持 つ 懸 念 を 緩 和 する 方 策 が 必 要 である 例 えば 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 際 して 人 員 削 減 の 必 要 性 が 真 にあること 公 正 な 手 続 きの 下 に 解 雇 が 行 われることなどの 要 件 を 明 確 化 し 不 公 正 かつ 安 易 な 解 雇 を 防 止 するという 方 策 が 考 えら れる 同 時 に ハローワークと 民 間 人 材 サービスの 連 携 によって 限 定 正 社 員 の 求 人 求 職 情 報 を 収 集 し 限 定 正 社 員 の 求 人 と 求 職 をマッチングするためのプラットフォームを 創 設 するほか 失 業 した 限 定 正 社 員 に 対 するセーフティネットの 強 化 職 業 能 力 評 価 制 度 の 整 備 と 充 実 限 定 正 社 員 の 職 業 能 力 形 成 に 対 する 支 援 など 限 定 正 社 員 の 転 職 を 支 える 制 度 政 策 を 整 備 拡 充 することも 有 効 であろう (3) 賃 金 等 に 不 満 を 持 つ 限 定 正 社 員 が 一 定 割 合 を 占 める 可 能 性 第 3 の 問 題 として 限 定 正 社 員 の 中 に 賃 金 等 の 労 働 条 件 に 不 満 を 持 つ 人 が 一 定 程 度 存 在 している 可 能 性 が 挙 げられる 前 出 の 図 表 8 によれば 限 定 正 社 員 として 働 く 人 のうち 従 来 型 正 社 員 と 同 様 の 賃 11 ただし この 表 現 だけからは 職 種 や 勤 務 地 が 消 失 した 際 の 限 定 正 社 員 の 整 理 解 雇 について 1 解 雇 権 濫 用 法 理 にと らわれず 就 業 規 則 や 個 別 労 働 契 約 に 特 約 があれば 限 定 正 社 員 の 解 雇 が 即 座 に 認 められるよう 法 的 ルールを 整 備 す ることを 求 めているのか 2 解 雇 権 濫 用 法 理 の 下 に 置 かれることを 前 提 としつつも 限 定 正 社 員 の 解 雇 について 整 理 解 雇 の 4 要 件 のうち 従 来 型 正 社 員 のような 解 雇 回 避 努 力 を 求 められないことを 法 律 で 明 文 化 するよう 求 めているの かを 判 断 しにくい しかし いずれの 場 合 でも 限 定 正 社 員 について 従 来 型 正 社 員 同 様 の 雇 用 保 障 を 求 める 労 働 者 の 要 望 とギャップがあることは 変 わらない 13

金 水 準 を 求 める 人 は 47%と 雇 用 保 障 ほどではないものの 約 半 数 に 上 る 一 方 企 業 調 査 によれば 限 定 正 社 員 に 該 当 する 雇 用 区 分 のうち その 賃 金 が 従 来 型 正 社 員 と 同 等 またはそれ 以 上 のものは 17% に 過 ぎない 労 働 者 の 割 合 と 雇 用 区 分 の 割 合 は 単 純 に 比 較 できないものの 両 者 の 差 が 大 きいことは 限 定 正 社 員 の 中 に 賃 金 に 不 満 を 持 つ 人 が 一 定 程 度 存 在 する 可 能 性 を 示 している 賃 金 等 の 労 働 条 件 に 納 得 できるかどうかは 労 働 者 の 働 く 意 欲 に 影 響 するため この 問 題 を 放 置 したまま 限 定 正 社 員 の 普 及 を 図 ることは 中 長 期 的 に 見 て 企 業 の 競 争 力 に 関 わってくる 以 上 の 問 題 に 対 しては 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 間 で 働 き 方 を 理 由 とする 不 合 理 な 格 差 をな くす 方 策 や 限 定 正 社 員 が 意 欲 を 発 揮 しやすい 働 き 方 を 推 進 する 方 策 が 課 題 となろう 前 者 について は 限 定 正 社 員 と 従 来 型 正 社 員 の 労 働 条 件 について ガイドラインや 法 令 によって 均 衡 が 取 れるよう 推 進 することが 考 えられる 後 者 については 企 業 の 成 功 事 例 の 収 集 や 実 証 研 究 を 推 進 し その 成 果 を 普 及 していくことが 有 効 であろう なお 後 者 に 関 して 守 島 (2011)は 1キャリアパス( 勤 務 地 や 異 動 の 範 囲 昇 進 昇 格 が 可 能 な 範 囲 )と 仕 事 の 内 容 の 両 面 で 従 来 型 正 社 員 と 区 別 された 限 定 正 社 員 制 度 がある 職 場 と 2キャリ アパスは 区 別 されているが 仕 事 の 内 容 は 従 来 型 正 社 員 と 同 じ 限 定 正 社 員 制 度 がある 職 場 で 働 く 人 の 意 識 がどのように 異 なるのかに 焦 点 をあてた 分 析 を 行 っている これによると 会 社 への 帰 属 意 識 や 賃 金 の 納 得 度 に 関 わる 項 目 に 対 して 上 記 1に 該 当 する 限 定 正 社 員 制 度 がある に 関 わる 係 数 は 一 貫 してプラスであったのに 対 し 上 記 2に 該 当 する 限 定 正 社 員 制 度 がある に 関 わる 係 数 は 一 貫 して マイナスであった 12 すなわち 2のように 限 定 正 社 員 のキャリアの 展 望 を 限 定 する 一 方 で 従 来 型 正 社 員 と 同 じ 仕 事 に 従 事 させる 場 合 限 定 正 社 員 の 働 く 意 欲 や 賃 金 への 納 得 感 が 損 なわれる 可 能 性 が ある このように どのような 働 き 方 働 かせ 方 が 労 使 双 方 にとって 望 ましいのか 実 務 的 な 示 唆 を 得 られる 研 究 を 推 進 し その 結 果 を 広 報 していくことも 限 定 正 社 員 の 導 入 に 取 り 組 む 企 業 にとって 大 きな 助 けとなるであろう (4) 十 分 ではない 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 第 4 の 問 題 として 非 正 社 員 から 正 社 員 への 転 換 の 足 掛 かりとして 現 在 の 限 定 正 社 員 が 十 分 役 割 を 発 揮 していないことが 挙 げられる これに 関 しては 高 橋 (2012) 13 による 実 証 研 究 が 参 考 になる この 研 究 によれば 限 定 正 社 員 制 度 のある 事 業 所 では 女 性 や 35 歳 以 上 非 大 卒 事 務 職 など 先 行 研 究 で 正 社 員 への 転 換 が 難 しいとされてきた 非 正 社 員 が 正 社 員 に 転 換 する 可 能 性 が 相 対 的 に 高 まると いう しかし 非 正 社 員 全 体 についてみれば 限 定 正 社 員 制 度 の 存 在 によって 正 社 員 への 転 換 登 用 が 促 進 される 効 果 は 確 認 されておらず 現 時 点 では 限 定 正 社 員 は 期 待 される 役 割 を 十 分 果 たしてい ないと 考 えられる 一 方 で 同 じ 研 究 では 限 定 正 社 員 制 度 を 導 入 している 企 業 に 対 象 を 絞 り 込 み 非 正 社 員 から 正 社 員 への 登 用 を 促 す 条 件 を 検 証 している これによると 1 非 正 社 員 と 正 社 員 が 同 じ 仕 事 をしている 12 なお 守 島 (2011)はこれらの 係 数 が 統 計 的 に 有 意 でないため この 分 析 のみで 確 定 的 なことは 言 えないとしている 13 ここでは 10 人 以 上 の 常 用 雇 用 者 がいる 民 営 事 業 所 とその 従 業 員 を 対 象 とするアンケート 調 査 のデータを 用 いて 検 証 が 行 われている 14

2 非 正 社 員 に 対 して 教 育 訓 練 制 度 が 適 用 されている 3 非 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 賃 金 カーブのギャッ プが 小 さいといった 要 因 が 非 正 社 員 から 正 社 員 への 登 用 の 足 掛 かりとなっている 以 上 を 踏 まえれば 限 定 正 社 員 が 非 正 社 員 から 正 社 員 への 転 換 の 足 掛 かりとなるような 制 度 設 計 を 促 す 方 策 が 課 題 となる 具 体 的 には 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 制 度 を 導 入 する 企 業 に 助 成 金 等 による 支 援 を 行 うほか 非 正 社 員 に 対 する 教 育 訓 練 を 推 進 するなどの 方 策 が 考 えられる V. 限 定 正 社 員 に 関 わる 今 後 の 懸 念 事 項 と 課 題 前 章 では 既 に 限 定 正 社 員 制 度 を 導 入 している 企 業 の 状 況 から 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 向 けた 課 題 を 整 理 した 一 方 今 後 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 が 本 格 的 に 展 開 されるにあたっては これ が 新 たな 不 安 定 雇 用 の 創 出 につながるのではないか 正 社 員 の 処 遇 切 り 下 げや 雇 用 調 整 の 手 段 として 利 用 されるのではないかといった 懸 念 が 繰 り 返 し 指 摘 されている 以 下 本 章 では 過 去 の 政 策 議 論 をたどりながら それぞれの 懸 念 に 対 してどのような 克 服 策 が 提 示 されてきたのかを 確 認 する 1. 新 たな 不 安 定 雇 用 の 創 出? 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 対 しては これが 新 たな 不 安 定 雇 用 の 創 出 につながるという 指 摘 がある ( 図 表 9) 例 えば 経 済 財 政 諮 問 会 議 労 働 市 場 改 革 専 門 調 査 会 (2008)は 限 定 正 社 員 の 労 働 契 約 を 解 除 する 際 のルールを 設 定 する 必 要 があると 指 摘 しつつ こうしたルールの 設 定 にあたっては 使 用 者 図 表 9 限 定 正 社 員 に 関 する 今 後 の 懸 念 事 項 と 対 応 の 方 向 限 定 正 社 員 が 新 たな 不 安 定 雇 用 となる 懸 念 への 対 応 特 約 ( 注 ) 付 きの 無 期 労 働 契 約 を 結 んだ 上 で 特 約 が 有 効 と 認 められる 要 件 ( 労 働 者 側 との 十 分 な 協 議 等 ) の 判 断 を 厳 格 化 [ 雇 用 のあり 方 に 関 する 研 究 会 (2009)] 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 について 自 主 的 取 り 組 みや 判 例 を 踏 まえたルールを 策 定 [ 有 期 労 働 契 約 研 究 会 (2010) 雇 用 期 間 に 応 じた 金 銭 補 償 解 雇 予 告 期 間 の 延 長 [ 経 済 財 政 諮 問 会 議 労 働 市 場 改 革 専 門 調 査 会 (2008)] [ 久 本 (2003)] 限 定 正 社 員 が 従 来 型 正 社 員 の 処 遇 切 り 下 げ 雇 用 調 整 手 段 として 利 用 される 懸 念 への 対 応 限 定 正 社 員 の 公 正 処 遇 に 関 わるルール 策 定 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 相 互 転 換 を 支 える 仕 組 みの 構 築 [ 多 様 で 柔 軟 な 働 き 方 を 選 択 できる 雇 用 システムのあり 方 に 関 する 研 究 会 (2002)] 労 使 協 議 を 通 じた 労 使 が 納 得 できる 労 働 条 件 の 推 進 [ 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 関 する 研 究 会 (2012)] ( 注 )ここでの 特 約 とは 勤 務 地 や 職 種 が 合 理 的 な 形 で 限 定 される 場 合 に その 勤 務 先 や 職 種 等 での 仕 事 の 継 続 ができなくなった 場 合 に 解 雇 でき る という 内 容 を 指 す ( 資 料 ) 図 表 中 の 参 考 文 献 より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 15

の 都 合 によって 解 雇 が 容 易 に 行 われる 不 安 定 な 雇 用 形 態 を 増 大 させないかという 懸 念 に 十 分 配 慮 する 必 要 がある と 指 摘 している 14 こうした 懸 念 への 対 応 としては 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 関 わる 内 容 を 労 働 契 約 で 明 確 化 させた 上 で そうした 解 雇 が 公 正 な 形 で 行 われるためのルールを 整 備 し 安 易 な 解 雇 を 防 止 するという 方 策 が 提 言 されている 例 えば リクルートワークス 研 究 所 が 事 務 局 となり 非 正 規 雇 用 に 関 する 問 題 と 政 策 的 対 応 を 専 門 的 に 検 討 した 雇 用 のあり 方 に 関 する 研 究 会 (2009)は 勤 務 地 や 職 種 が 合 理 的 な 形 で 限 定 されている 場 合 に その 勤 務 先 や 職 種 等 での 仕 事 の 継 続 が 出 来 なくなった 場 合 は 解 雇 できる 特 約 付 きの 無 期 労 働 契 約 を 提 唱 している こうした 特 約 で 企 業 が 無 期 労 働 契 約 を 結 びやすくした 上 で こ れによる 雇 用 不 安 定 化 のリスクを 最 小 化 するために 特 約 が 有 効 と 認 められるための 要 件 の 判 断 を 厳 格 に 行 うこと 特 に 解 雇 が 正 当 と 認 められるための 手 続 きとして 労 働 者 側 との 十 分 な 協 議 が 行 われる ことが 必 要 と 指 摘 している 同 様 に 2010 年 9 月 に 有 期 労 働 契 約 研 究 会 が 公 表 した 報 告 書 も 労 使 間 の 自 主 的 な 問 題 解 決 が 図 られるよう 事 業 所 閉 鎖 時 等 における 雇 用 保 障 のあり 方 について 労 働 契 約 であらかじめ 明 確 に 合 意 しておく 必 要 があると 指 摘 している なお これも 含 めた 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールの 策 定 については 企 業 の 自 主 的 な 取 り 組 みや 判 例 を 踏 まえて 検 討 し 労 使 ともに 限 定 正 社 員 という 働 き 方 を 選 択 できるような 環 境 整 備 が 必 要 としている このほか 限 定 された 職 務 や 勤 務 地 が 消 失 した 際 に 解 雇 の 可 能 性 があることを 前 提 に 一 定 のケー スにおいて 金 銭 面 での 補 償 を 行 うという 提 案 がある 例 えば 前 出 の 経 済 財 政 諮 問 会 議 労 働 市 場 改 革 専 門 調 査 会 (2008)は 業 務 や 職 場 が 限 定 されている 以 上 景 気 状 況 の 悪 化 や 企 業 の 業 務 の 再 編 成 等 から 仕 事 がなくなる 可 能 性 もあるため 予 め 労 働 契 約 の 解 除 に 関 するルールを 明 確 化 する 必 要 が あり その 際 のイメージとして 業 務 や 職 場 事 業 所 が 縮 小 したこと 等 を 理 由 とする 労 働 契 約 解 除 の 際 には 雇 用 期 間 による 一 定 額 の 金 銭 補 償 等 を 使 用 者 に 義 務 付 ける 等 の 手 続 き 規 定 を 整 備 することなど が 考 えられる と 指 摘 している また 前 出 の 久 本 (2003)は 雇 用 期 間 が 長 期 になった 限 定 正 社 員 は 再 就 職 が 難 しくなるので そうした 限 定 正 社 員 の 解 雇 を 行 う 際 の 手 続 きとして 退 職 金 の 支 払 いま たは 解 雇 予 告 期 間 15 の 延 長 を 行 うことを 提 言 している 2. 従 来 型 正 社 員 の 解 雇 処 遇 引 き 下 げツール? 企 業 が 労 働 者 の 意 思 に 反 した 形 で 従 来 型 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 を 進 め 最 終 的 に 従 来 型 正 社 員 の 解 雇 や 処 遇 切 り 下 げを 行 う 事 例 が 増 えるのではないかという 指 摘 もある 例 えば 前 出 の 雇 用 政 策 研 究 会 (2010)は ( 限 定 正 社 員 の 雇 用 解 除 のルールを 設 定 することについて) 正 規 労 働 者 の 中 14 同 様 の 懸 念 は 新 聞 報 道 でもしばしば 取 り 上 げられている 例 えば 2013 年 5 月 2 日 付 の 東 京 新 聞 こちら 特 報 部 限 定 正 社 員 って 何 ( 下 ) 非 正 規 多 い 現 状 改 善? 正 社 員 に 段 階 的 適 用 も 欧 米 では 一 般 的 な 制 度 労 働 者 分 断 し 新 た な 格 差 2013 年 5 月 4 日 付 の 朝 日 新 聞 限 定 正 社 員 光 も 影 も 職 種 や 地 域 限 定 政 府 が 推 進 策 家 庭 重 視 も 可 解 雇 簡 単 に? 2013 年 5 月 10 日 付 の 中 日 新 聞 特 報 仕 事 や 勤 務 地 限 って 契 約 限 定 正 社 員 雇 用 にプラス? ク ビ 切 自 由 化 政 策 だ 非 正 規 との 二 極 化 改 善 新 たな 待 遇 格 差 生 じる 等 15 労 働 者 の 解 雇 に 際 し 労 働 者 保 護 の 観 点 から 法 的 に 定 められた 事 前 通 告 の 期 間 日 本 では 労 働 基 準 法 第 20 条 により 使 用 者 が 労 働 者 を 解 雇 しようとする 場 合 は 原 則 30 日 前 に 予 告 するか 30 日 分 以 上 の 予 告 手 当 てを 支 払 うことを 求 められる 16

から 切 り 出 して 一 つの 雇 用 アウトソーシングの 手 段 として 利 用 され 不 安 定 な 雇 用 形 態 を 増 大 させる ことにならないよう 十 分 配 慮 する 必 要 がある と 指 摘 した また 雇 用 政 策 研 究 会 (2010)の 提 言 を 受 けて 厚 生 労 働 省 が 開 催 した 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 関 する 研 究 会 16 (2012)も 既 にいわゆ る 正 社 員 として 働 いている 者 が 多 様 な 形 態 による 正 社 員 へ 移 行 する 場 合 には こうした 移 行 が 雇 用 調 整 の 手 段 として 利 用 されないよう 特 に 雇 用 の 安 定 の 確 保 が 強 く 要 請 される としている さらに 内 閣 府 の 成 長 のための 人 的 資 源 活 用 検 討 専 門 チーム 17 (2013)は 限 定 正 社 員 の 制 度 設 計 に 当 たって は 個 人 の 選 択 が 確 保 され 企 業 からの 強 制 や 正 社 員 の 処 遇 切 り 下 げとならず 改 革 を 通 じて 雇 用 の 安 定 化 が 図 られる 層 が 増 えるよう 配 慮 がなされるべきであると 指 摘 している このように 限 定 正 社 員 制 度 を 従 来 型 正 社 員 の 雇 用 調 整 処 遇 引 き 下 げの 手 段 として 悪 用 することへの 懸 念 は 有 識 者 の 議 論 でも 繰 り 返 し 指 摘 されている この 問 題 への 対 応 として 限 定 正 社 員 の 公 正 な 労 働 条 件 を 実 現 するルールを 整 備 することや 労 働 者 が 限 定 正 社 員 と 従 来 型 正 社 員 の 間 で 柔 軟 に 働 き 方 を 変 更 できるよう 促 すことが 提 言 されている 例 えば 前 出 の 多 様 で 柔 軟 な 働 き 方 を 選 択 できる 雇 用 システムのあり 方 に 関 する 研 究 会 18 (2002)は 拘 束 度 に 応 じた 雇 用 保 障 や 公 正 な 処 遇 に 関 わるルールを 策 定 することや 労 使 の 納 得 性 を 確 保 すること 多 様 な 働 き 方 を 労 働 者 が 主 体 的 に 選 択 可 能 であり 相 互 転 換 の 可 能 性 がある 仕 組 みの 構 築 が 必 要 であ る と 指 摘 した 一 方 厚 生 労 働 省 の 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 関 する 研 究 会 (2012)は 限 定 正 社 員 をあくまで 労 働 者 が 主 体 的 に 選 択 可 能 な 働 き 方 としていくべきであり 従 来 型 正 社 員 への 転 換 を 柔 軟 に 認 めることのほか 労 使 が 納 得 できる 賃 金 や 昇 進 昇 格 能 力 開 発 等 の 処 遇 のあり 方 を 労 使 間 の 協 議 などを 踏 まえて 設 定 することが 必 要 としている VI. 検 討 が 始 まった 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールと 今 後 の 課 題 今 後 は 厚 生 労 働 省 の 労 働 政 策 審 議 会 で 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールについて 具 体 的 な 検 討 が 開 始 され る これから 国 が 進 める 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 は 第 Ⅳ 章 及 び 第 Ⅴ 章 で 見 てきたような 限 定 正 社 員 の 問 題 や 懸 念 にきちんと 対 応 した 内 容 となるのだろうか また これまでの 政 策 議 論 では 十 分 指 摘 されていないが 今 後 の 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 で 考 慮 されるべき 点 はないのだろうか 国 の 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 が 具 体 化 されるのはこれからであり その 内 容 そのものを 現 時 点 で 評 価 することは 出 来 ない そこで 以 下 では 規 制 改 革 会 議 の 雇 用 ワーキング グループ( 以 下 雇 用 WGと 呼 ぶ)がとりまとめた 報 告 書 ( 以 下 雇 用 WG 報 告 書 と 呼 ぶ)を 取 り 上 げる この 報 告 書 は 現 時 点 で 最 も 包 括 的 な 形 で 限 定 正 社 員 のルールについて 提 言 を 行 っており 今 後 の 労 働 審 議 会 におけ る 議 論 にも 影 響 を 及 ぼすと 考 えられる そこで 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 を 参 考 に 今 後 国 が 進 める 政 策 が 限 定 正 社 員 という 働 き 方 が 抱 える 問 題 や 懸 念 に 目 配 りしたものとなりうるのか 今 後 の 限 定 正 社 16 厚 生 労 働 省 職 業 安 定 局 派 遣 有 期 労 働 対 策 部 長 が 学 識 経 験 者 を 集 めて 開 催 した 研 究 会 で 現 在 の 雇 用 システムに 関 す る 課 題 や 限 定 正 社 員 の 雇 用 管 理 上 の 課 題 について 検 討 を 行 った 17 内 閣 府 の 有 識 者 会 議 ( 経 済 社 会 構 造 に 関 する 有 識 者 会 議 )の 下 部 組 織 として 新 たな 経 済 社 会 構 造 に 適 した 人 的 資 源 の 活 用 のあり 方 を 議 論 するために 開 催 された 専 門 家 による 研 究 会 18 多 様 で 柔 軟 な 働 き 方 を 選 択 できる 雇 用 システムについて 専 門 家 による 検 討 を 行 うため 厚 生 労 働 省 が 開 催 した 研 究 会 17

員 の 普 及 促 進 に 向 けて 残 された 課 題 は 何 かを 考 えることとしたい 1. 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールに 関 わる 雇 用 WG の 提 言 (1) 限 定 正 社 員 の 働 き 方 の 明 確 化 に 関 わる 提 言 雇 用 WGは 非 正 社 員 の 雇 用 安 定 家 庭 生 活 と 両 立 できる 働 き 方 の 促 進 成 長 分 野 への 人 の 移 動 の 促 進 という 観 点 から 正 社 員 の 働 き 方 の 改 革 が 必 要 であるとし なかでも 限 定 正 社 員 の 雇 用 ルールを 優 先 的 に 検 討 してきた 雇 用 WG 報 告 書 に 盛 り 込 まれた 提 言 は 1 限 定 正 社 員 の 働 き 方 の 明 確 化 に 関 わ るルール 2 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 関 わるルール 3 限 定 正 社 員 の 公 正 な 処 遇 に 関 わるルール 4 限 定 正 社 員 を 労 働 者 の 自 由 意 志 による 選 択 とするためのルールの 4 つに 大 きく 分 けられる 提 言 の 中 身 は 立 法 化 も 含 めたルールの 整 備 に 関 するものが 中 心 であるが 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 関 わる 補 完 的 な 政 策 も 含 まれている まず1に 関 して 雇 用 WG 報 告 書 は 限 定 正 社 員 という 位 置 づけや 働 き 方 の 中 身 を 労 働 契 約 と 就 業 規 則 の 双 方 で 明 確 化 するよう 提 言 している( 図 表 10) 具 体 的 には 限 定 正 社 員 制 度 を 導 入 する 際 に 就 業 規 則 でその 具 体 的 な 中 身 を 明 確 にした 上 で 実 際 の 採 用 時 には 上 記 の 類 型 に 該 当 する 契 約 で あることを 書 面 で 明 示 すること 限 定 正 社 員 の 労 働 条 件 を 変 更 する 場 合 は 変 更 後 の 労 働 条 件 を 書 面 で 明 示 するようルール 化 することを 求 めている また 限 定 正 社 員 に 適 した 雇 用 管 理 を 普 及 させてい く 観 点 から 企 業 や 従 業 員 へのヒアリングを 通 じて 成 功 事 例 を 収 集 した 上 で 職 務 の 定 め 方 や 賃 金 体 系 時 間 管 理 人 事 評 価 異 動 などについて 留 意 点 やモデルを 提 示 する 方 策 も 提 言 されている 図 表 10 限 定 正 社 員 の 位 置 づけ 働 き 方 の 明 確 化 と 解 雇 ルールに 関 わる 提 言 ( 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ) 概 要 具 体 的 手 段 限 定 正 社 員 の 位 置 づけ 働 き 方 の 明 確 化 労 働 条 件 の 明 示 に 関 わる 現 行 法 令 の 整 理 - 限 定 正 社 員 制 度 を 導 入 する 際 に 就 業 規 則 でその 具 体 的 な 類 型 を 明 確 にした 上 で 実 際 の 採 用 時 は 上 記 の 類 型 に 該 当 する 契 約 であることを 書 面 で 明 示 - 限 定 正 社 員 の 労 働 条 件 を 変 更 する 際 には 変 更 後 の 労 働 条 件 を 書 面 で 明 示 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 関 わる ルールの 検 討 労 使 の 協 議 を 踏 まえて 就 業 規 則 の 解 雇 事 由 に 就 業 の 場 所 及 び 従 事 すべき 業 務 が 消 失 したこと を 追 加 することを 想 定 職 務 勤 務 地 消 失 による 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 関 する 判 例 の 整 理 労 使 及 び 司 法 のコンセンサス 形 成 ( 最 終 的 に 立 法 あるいは 解 釈 通 達 による 明 確 化 も 視 野 に 入 れる) ( 資 料 ) 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ 報 告 2013 年 6 月 5 日 より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 18

(2) 解 雇 を 巡 る 紛 争 防 止 に 関 わる 提 言 次 に 雇 用 WG 報 告 書 は 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 関 わる 紛 争 を 防 止 するためのルールを 提 言 している ( 前 掲 図 表 10) 具 体 的 には 就 業 規 則 の 解 雇 事 由 に 仕 事 や 勤 務 地 がなくなったこと が 明 記 され ること 19 を 前 提 に 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 際 して 求 められる 要 件 について 関 係 者 の 共 通 認 識 を 確 立 す るよう 求 めている より 具 体 的 には 職 務 や 勤 務 地 が 消 失 した 際 の 限 定 正 社 員 の 解 雇 について 従 来 型 正 社 員 と 同 様 の 解 雇 ルール( 特 に 経 営 上 の 都 合 による 解 雇 で 求 められる 4 つの 要 素 )の 下 に 置 か れることを 前 提 に これまでの 判 例 に 基 づいて 限 定 正 社 員 の 解 雇 の 有 効 性 を 判 断 するための 基 本 的 な 考 え 方 を 整 理 し 労 使 及 び 司 法 の 間 のコンセンサスを 形 成 するよう 提 言 している このコンセンサス については 立 法 化 あるいは 解 釈 通 達 を 通 じたルール 化 も 視 野 に 入 れるべきと 指 摘 されている 注 意 すべきは ここで 雇 用 WG 報 告 書 が 言 う 限 定 正 社 員 の 解 雇 が 従 来 型 正 社 員 と 同 様 の 解 雇 ル ールの 下 に 置 かれること と 限 定 正 社 員 が 従 来 型 正 社 員 と 同 じ 雇 用 保 障 の 下 に 置 かれることはイコ ールではないことだ 第 Ⅱ 章 1 節 で 触 れたように 従 来 型 正 社 員 の 整 理 解 雇 に 関 しては その 有 効 性 を 判 断 するために 4 要 件 ( 要 素 )を 考 慮 する 必 要 があるという 法 律 上 の 原 則 が 確 立 されている 雇 用 WG 報 告 書 は 職 務 や 勤 務 地 が 消 失 した 限 定 正 社 員 の 解 雇 にも 上 記 と 同 じ 原 則 が 当 てはまるとした 上 で 限 定 正 社 員 の 場 合 は 仕 事 や 勤 務 地 を 限 定 した 無 期 雇 用 契 約 であることによって 4 要 件 ( 要 素 ) の 適 用 のされ 方 が 異 なってくると 見 ている 20 そこで 限 定 正 社 員 の 整 理 解 雇 に 関 わる 判 例 をより 詳 し く 整 理 検 討 し その 結 果 を 労 使 及 び 司 法 の 共 通 認 識 とし 解 雇 に 関 する 紛 争 の 予 防 や 限 定 正 社 員 の 安 易 な 解 雇 を 防 ごうとしていると 考 えられる (3) 限 定 正 社 員 の 公 正 な 処 遇 に 関 わる 提 言 労 働 契 約 法 第 3 条 2 項 では 労 働 契 約 の 原 則 として 労 使 が 就 業 の 実 態 に 応 じた 均 衡 を 考 慮 して 労 働 契 約 を 締 結 変 更 するよう 定 めている この 原 則 に 従 って 雇 用 WG 報 告 書 は 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 均 衡 処 遇 に 関 する 法 的 ルールを 整 備 するべきとしている 具 体 的 には 労 働 条 件 を 明 示 し 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 とを 明 確 に 区 別 した 上 で 両 者 の 間 の 不 合 理 な 労 働 条 件 の 相 違 を 禁 止 する 法 律 を 整 備 するよう 提 言 している 19 この 点 について 雇 用 WG 報 告 書 はルール 化 などの 措 置 に 言 及 していない 同 報 告 書 は 限 定 正 社 員 の 解 雇 が 有 効 と 認 められる 要 件 に 関 して 関 係 者 のコンセンサスを 確 立 することを 求 めており 就 業 規 則 の 解 雇 事 由 に 仕 事 や 勤 務 地 の 消 失 が 明 記 されていることが 解 雇 の 有 効 性 を 認 める 要 件 の 一 つとしてコンセンサスに 盛 り 込 まれると 想 定 してい ると 見 られる 20 本 文 第 Ⅱ 章 1 節 で 触 れたように 日 本 では 整 理 解 雇 の 有 効 性 が 問 われる 際 1 人 員 削 減 の 必 要 性 2 解 雇 回 避 努 力 3 解 雇 者 選 定 の 合 理 性 4 解 雇 手 続 きの 相 当 性 の 4 要 件 ( 要 素 )を 考 慮 すべきという 法 律 上 の 原 則 が 判 例 で 確 立 され ている( 整 理 解 雇 の 4 要 件 ( 要 素 )) 雇 用 WG 報 告 書 が 行 った 整 理 によれば 限 定 された 職 務 や 勤 務 地 が 消 失 した 場 合 の 解 雇 について 判 例 は 整 理 解 雇 の 4 要 件 ( 要 素 )の 枠 組 みを 維 持 しつつも 従 来 型 正 社 員 と 異 なる 判 断 を 行 っ ているという 例 えば 職 種 や 勤 務 地 が 限 定 されている 限 定 正 社 員 については 解 雇 回 避 努 力 の 有 無 が 問 われなかっ たり 解 雇 回 避 努 力 を 行 ったと 判 断 されたりするケースがある また 解 雇 者 選 定 の 合 理 性 については 工 場 閉 鎖 等 で 対 象 者 全 員 が 解 雇 されるような 場 合 には 恣 意 的 な 人 選 がなされていないとして 人 選 の 合 理 性 があるとするケース も 多 い 一 方 1 人 員 削 減 が 本 当 に 必 要 かどうかについては これが 職 種 や 勤 務 地 の 廃 止 を 口 実 に 労 働 者 を 職 場 か ら 排 除 するための 解 雇 ではないかという 観 点 から 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 関 わる 判 例 ほぼ 全 てで 問 われている また 4の 労 働 者 側 への 十 分 な 説 明 協 議 も 常 に 求 められる 要 素 であるという 19

ここで 参 考 にされているのは 2013 年 4 月 1 日 に 一 部 規 定 を 除 いて 施 行 された 改 正 労 働 契 約 法 であ る 同 法 第 20 条 では 有 期 労 働 者 の 労 働 条 件 について 無 期 労 働 者 のそれと 不 合 理 な 相 違 を 設 けるこ とが 禁 止 されている 具 体 的 には 賃 金 労 働 時 間 や 教 育 訓 練 から 福 利 厚 生 に 至 る 個 々の 労 働 条 件 に ついて 職 務 の 内 容 や 配 置 の 範 囲 などを 考 慮 して 両 者 の 均 衡 が 実 現 されることが 求 められる( 図 表 11) 雇 用 WG 報 告 書 は この 労 働 契 約 法 20 条 に 類 する 法 的 規 定 を 限 定 正 社 員 の 労 働 条 件 について 設 ける よう 求 めている (4) 限 定 正 社 員 を 労 働 者 の 自 由 意 志 による 選 択 とするための 提 言 最 後 に 雇 用 WG 報 告 書 は 限 定 正 社 員 を 労 働 者 の 自 由 意 志 による 選 択 とするために 2 つの 提 言 を 行 っている 第 1 に 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 相 互 転 換 に 関 するルールを 法 定 化 も 含 めて 検 討 していくよう 提 言 している 第 2 に 同 一 企 業 で 従 来 型 正 社 員 を 限 定 正 社 員 に 転 換 する 場 合 は 労 働 者 の 同 意 を 原 則 とするとしている なお 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 相 互 転 換 に 関 わるルールについては 労 働 者 が 相 互 転 換 をいつ でも 要 求 できるルールとするのか 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 相 互 転 換 制 度 の 整 備 を 企 業 の 義 務 (あ るいは 努 力 義 務 )とするのかなど 様 々な 内 容 が 考 えうる どのようなルールとするかで 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 間 の 相 互 転 換 の 可 能 性 も 変 わってくるが この 点 について 雇 用 WG 報 告 書 は 具 体 策 を 示 していない 雇 用 WG 報 告 書 は 限 定 正 社 員 の 労 働 条 件 の 明 示 や 解 雇 に 関 する 部 分 でかなり 具 体 的 な 提 言 を 行 っている しかし 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 相 互 転 換 に 関 する 部 分 では 曖 昧 な 提 言 を 行 うに 止 まっている 2. 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 の 評 価 以 下 に 見 るように 雇 用 WG 報 告 書 以 下 はこれまでの 政 策 議 論 で 指 摘 された 内 容 を 広 くカバーした 上 で 労 使 双 方 の 納 得 に 配 慮 した 提 言 を 行 っている これに 関 して 4 つの 点 を 指 摘 したい 第 1 に 図 表 11 労 働 契 約 法 20 条 ( 有 期 労 働 契 約 を 理 由 とする 不 合 理 な 労 働 条 件 の 禁 止 )のポイント 対 象 となる 労 働 条 件 労 働 契 約 の 内 容 となっている 一 切 の 労 働 条 件 に 適 用 - 賃 金 労 働 時 間 服 務 規 律 教 育 訓 練 付 随 義 務 福 利 厚 生 ( 通 勤 手 当 食 堂 の 利 用 住 宅 手 当 等 )など 判 断 方 法 不 合 理 な 労 働 条 件 かどうかの 判 断 - 下 記 1~3を 考 慮 して 個 々の 労 働 条 件 毎 に 判 断 1 職 務 の 内 容 ( 業 務 の 内 容 及 び 当 該 業 務 に 伴 う 責 任 の 程 度 ) 2 当 該 職 務 の 内 容 及 び 配 置 変 更 の 範 囲 3その 他 の 事 情 特 に 通 勤 手 当 食 堂 利 用 安 全 管 理 などで 労 働 条 件 に 差 を 設 けることは 上 記 1~3に 基 づく 特 段 の 理 由 がない 限 り 合 理 的 とは 認 められないと 解 される ( 資 料 ) 厚 生 労 働 省 都 道 府 県 労 働 局 労 働 基 準 監 督 署 労 働 契 約 法 改 正 のあらまし より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 20

雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 は これまでの 議 論 で 指 摘 されてきた 限 定 正 社 員 の 課 題 や 懸 念 事 項 に 幅 広 く 対 応 している 図 表 12 は 第 Ⅳ Ⅴ 章 で 見 た 限 定 正 社 員 の 問 題 懸 念 事 項 と 雇 用 WG 報 告 書 の 検 討 事 項 を 対 応 させたものである ここにあるように 雇 用 WGの 雇 用 ルール 案 は これまでの 限 定 正 社 員 の 活 用 状 況 に 見 出 される 問 題 から 今 後 の 普 及 促 進 に 際 して 指 摘 される 懸 念 まで おおむね 全 ての 論 点 をカバーしている 第 2 に 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 は 限 定 正 社 員 の 位 置 づけと 働 き 方 の 中 身 の 明 確 化 に 力 点 を 置 いて いる これは これまでの 政 府 の 調 査 会 や 研 究 会 の 報 告 でほとんど 触 れられてこなかった 点 でもある その 背 景 には 従 来 型 正 社 員 との 境 界 が 曖 昧 なまま 限 定 正 社 員 が 活 用 されているケースが 多 い 結 果 企 業 が 限 定 正 社 員 に 従 来 型 正 社 員 同 様 の 雇 用 保 障 を 行 わざるを 得 ず 企 業 が 限 定 正 社 員 を 十 分 増 やせ ずにいるとの 認 識 がある 21 第 3 に 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 は 限 定 正 社 員 の 解 雇 について 紛 争 防 止 と 労 使 双 方 の 納 得 性 に 配 慮 した 提 言 を 行 っている 職 種 限 定 正 社 員 や 勤 務 地 限 定 正 社 員 の 場 合 就 業 規 則 の 解 雇 事 由 に 就 業 の 場 所 及 び 従 事 すべき 業 務 の 消 失 が 盛 り 込 まれると 想 定 することで 企 業 サイドの 要 望 に 応 える 一 方 現 行 の 解 雇 ルールを 前 提 とする 立 場 は 堅 持 している その 上 で 限 定 正 社 員 の 解 雇 が 認 められる 要 件 について 関 係 者 の 共 通 認 識 を 確 立 することで 紛 争 や 安 易 な 解 雇 を 防 ごうとしている 第 4 に 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 は 限 定 正 社 員 の 公 正 な 処 遇 の 実 現 について これまでの 議 論 をよ り 具 体 化 させている 過 去 の 政 策 議 論 では 限 定 正 社 員 の 公 正 な 処 遇 の 必 要 性 が 指 摘 されるに 止 まっ ていたのに 対 し 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 は 改 正 労 働 契 約 法 20 条 ( 有 期 労 働 者 の 不 合 理 な 労 働 条 件 の 禁 止 )の 枠 組 みを 参 考 に 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 均 衡 処 遇 に 関 わる 法 的 ルールの 整 備 を 検 討 課 題 と 指 摘 している 3. 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 に 向 けた 今 後 の 課 題 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 は 限 定 正 社 員 の 問 題 や 懸 念 に 広 く 対 応 しており 今 後 国 が 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 を 具 体 化 する 際 には これを 議 論 のベースとすることが 有 効 であろう 一 方 で 雇 用 WG 報 告 書 で 十 分 考 慮 されていない 課 題 も 残 されている 以 下 では 限 定 正 社 員 の 解 雇 を 巡 る 課 題 限 定 正 社 員 に 寄 せられる 期 待 から 見 た 課 題 限 定 正 社 員 に 寄 せられる 懸 念 から 見 た 課 題 の 3 つの 側 面 から 残 された 課 題 と 克 服 の 方 向 を 考 える (1) 限 定 正 社 員 の 解 雇 を 巡 る 課 題 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 は 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 関 する 労 使 の 紛 争 を 予 防 し 安 易 な 解 雇 を 防 ぐ 観 点 から いくつかの 提 言 を 行 っている しかし 限 定 正 社 員 が 解 雇 された 場 合 を 想 定 すると 専 門 的 な 技 能 を 持 つ 労 働 者 の 転 職 市 場 が 十 分 発 達 していないほか 失 業 時 のセーフティネットや 再 就 職 支 援 職 業 訓 練 職 業 能 力 評 価 制 度 の 整 備 が 十 分 でないために 失 業 が 生 活 不 安 定 化 の 大 きなリスクとなり かねない 限 定 正 社 員 の 解 雇 について 労 働 者 が 抱 える 不 安 を 緩 和 する 更 なる 方 策 が 求 められる 21 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ(2013)では 限 定 正 社 員 (ジョブ 型 正 社 員 )に 対 して 従 来 型 正 社 員 ( 無 限 定 正 社 員 )と 異 なる 人 事 上 の 取 り 扱 いができれば 企 業 は 一 層 限 定 正 社 員 を 増 やせると 指 摘 されている 21

図 表 12 限 定 正 社 員 に 関 わるこれまでの 議 論 と 雇 用 WG 報 告 書 の 提 言 問 題 懸 念 事 項 と 対 応 策 限 定 正 社 員 の 位 置 づけが 曖 昧 なまま 活 用 されている 問 題 [ 第 Ⅳ 章 ] 雇 用 WG 報 告 書 による 提 言 限 定 正 社 員 の 位 置 づけと 働 かせ 方 の 中 身 の 明 確 化 限 定 正 社 員 の 名 目 と 働 き 方 の 実 態 の 一 致 を 促 す 措 置 就 業 規 則 労 働 契 約 で 限 定 正 社 員 の 位 置 づけと 働 き 方 の 中 身 を 明 確 化 する 法 的 ルールを 整 備 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 をめぐる 労 使 の 認 識 に 隔 たりがある 問 題 [ 第 Ⅳ 章 ] 限 定 正 社 員 の 不 公 正 かつ 安 易 な 解 雇 を 防 止 する 措 置 限 定 正 社 員 の 転 職 市 場 の 整 備 在 職 中 の 職 業 能 力 形 成 や 転 職 を 目 指 す 限 定 正 社 員 に 対 する 政 策 的 支 援 の 充 実 限 定 正 社 員 の 労 働 条 件 をめぐる 問 題 [ 第 Ⅳ 章 ] 就 業 規 則 の 解 雇 事 由 に 就 業 の 場 所 及 び 従 事 すべき 業 務 が 消 失 したこと を 追 加 現 行 の 解 雇 ルールを 前 提 に 職 務 や 勤 務 地 が 消 失 した 限 定 正 社 員 の 解 雇 が 認 められる 条 件 について 判 例 を 整 理 し コンセンサスを 形 成 ( 立 法 化 解 釈 通 達 によるルールの 明 確 化 も 視 野 ) 限 定 正 社 員 と 従 来 型 正 社 員 の 均 衡 処 遇 を 推 進 限 定 正 社 員 が 高 い 意 欲 や 賃 金 への 納 得 感 を 持 って 働 ける 雇 用 管 理 を 推 進 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 をめぐる 問 題 [ 第 Ⅳ 章 ] 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 制 度 を 設 ける 企 業 に 対 する 支 援 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 を 促 進 するような 限 定 正 社 員 非 正 社 員 の 雇 用 管 理 の 研 究 と 成 果 の 普 及 限 定 正 社 員 の 不 合 理 な 労 働 条 件 の 禁 止 に 関 わる 法 的 ルールを 整 備 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 相 互 転 換 に 関 するルールを 整 備 ( 立 法 化 も 含 めて 検 討 ) ( 再 掲 ) 雇 用 管 理 の 留 意 点 やモデルを 提 示 雇 用 管 理 の 留 意 点 やモデルを 提 示 限 定 正 社 員 が 新 たな 不 安 定 雇 用 となる 懸 念 への 対 応 [ 第 Ⅴ 章 ] 特 約 ( 注 ) 付 きの 無 期 労 働 契 約 を 結 んだ 上 で 特 約 が 有 効 と 認 められる 要 件 ( 労 働 者 側 との 十 分 な 協 議 等 ) の 判 断 を 厳 格 化 [ 雇 用 のあり 方 に 関 する 研 究 会 (2009)] 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 について 自 主 的 取 り 組 みや 判 例 を 踏 まえたルールを 策 定 [ 有 期 労 働 契 約 研 究 会 (2010)] 雇 用 期 間 に 応 じた 金 銭 補 償 解 雇 予 告 期 間 の 延 長 [ 労 働 市 場 改 革 専 門 調 査 会 (2008)] [ 久 本 (2003)] 再 掲 限 定 正 社 員 の 不 合 理 な 労 働 条 件 の 禁 止 に 関 わる 法 的 ルールを 整 備 再 掲 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 相 互 転 換 に 関 するルールを 整 備 ( 立 法 化 も 検 討 ) 限 定 正 社 員 が 従 来 型 正 社 員 の 雇 用 調 整 手 段 として 利 用 される 懸 念 への 対 応 [ 第 Ⅴ 章 ] 限 定 正 社 員 の 公 正 処 遇 に 関 わるルール 策 定 従 来 型 正 社 員 と 限 定 正 社 員 の 相 互 転 換 を 支 える 仕 組 みの 構 築 [ 多 様 で 柔 軟 な 働 き 方 を 選 択 できる 雇 用 システムのあり 方 に 関 する 研 究 会 (2002)] 労 使 協 議 を 通 じた 労 使 が 納 得 できる 労 働 条 件 の 推 進 [ 多 様 な 形 態 による 正 社 員 に 関 する 研 究 会 (2012)] 再 掲 職 務 や 勤 務 地 が 消 失 した 限 定 正 社 員 の 解 雇 が 認 められる 条 件 について 判 例 を 整 理 し 労 使 及 び 司 法 でコンセンサスを 形 成 ( 立 法 化 解 釈 通 達 によるルールの 明 確 化 も 視 野 ) ( 注 )ここでの 特 約 とは 勤 務 地 や 職 種 が 合 理 的 な 形 で 限 定 される 場 合 に その 勤 務 先 や 職 種 等 での 仕 事 の 継 続 ができなくなった 場 合 に 解 雇 できる という 内 容 を 指 す カッコ[ ] 内 は 本 リポートにおける 該 当 箇 所 ( 資 料 ) 図 表 中 の 参 考 文 献 及 び 規 制 改 革 会 議 雇 用 ワーキング グループ(2013)より みずほ 総 合 研 究 所 作 成 22

そうした 方 策 として 第 1 に 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 際 して 企 業 に 求 められる 手 続 き 等 の 要 件 を 労 使 に 周 知 し 安 易 な 解 雇 を 防 ぐ 措 置 が 考 えられる これに 関 して 雇 用 WG 報 告 書 は 就 業 規 則 の 解 雇 事 由 に 仕 事 や 勤 務 地 の 消 失 を 明 記 する ことを 想 定 する 一 方 限 定 正 社 員 の 解 雇 に 求 められる 要 件 を 整 理 し 立 法 化 も 視 野 に 入 れつつ 労 使 や 司 法 の 共 通 認 識 として 確 立 する ことを 提 言 している しか し この 提 言 に 沿 って 限 定 正 社 員 の 解 雇 が 認 められる 要 件 が 整 理 され 専 門 家 の 共 通 認 識 として 確 立 されたとしても その 内 容 が 働 く 現 場 に 十 分 周 知 されるとは 限 らない 例 えば 就 業 規 則 の 解 雇 事 由 に 仕 事 や 勤 務 地 の 消 失 を 加 える 場 合 は 解 雇 に 際 して 仕 事 や 勤 務 地 の 消 失 以 外 に 企 業 が 満 た すべき 要 件 についても 明 示 するなど 限 定 正 社 員 として 働 く 人 が 解 雇 の 要 件 をきちんと 把 握 できるよ うなルールが 必 要 である 第 2 に 名 目 上 は 限 定 正 社 員 だが 実 際 の 働 かせ 方 が 無 限 定 になっている 場 合 は 従 来 型 正 社 員 同 様 の 雇 用 保 障 を 求 められる 可 能 性 がある 点 を 企 業 に 周 知 することも 重 要 である 限 定 正 社 員 が 実 際 には 無 限 定 な 働 かせ 方 をさせることが 可 能 であり しかも 従 来 型 正 社 員 よりも 解 雇 しやすい 働 き 方 となれば 現 行 の 解 雇 ルールの 抜 け 道 となる 懸 念 がある これを 防 ぐために 限 定 正 社 員 の 名 目 と 実 態 を 一 致 させる 必 要 性 をガイドラインなどの 形 で 示 す 必 要 がある 第 3 に 限 定 正 社 員 の 雇 用 保 障 の 緩 やかさに 対 し どのような 形 で 補 償 が 行 われれば バランスが 取 れていると 言 えるのかについて 改 めて 検 討 するべきである 例 えば 過 去 の 政 策 議 論 で 指 摘 され たように 雇 用 期 間 が 長 期 化 した 限 定 正 社 員 について 金 銭 補 償 または 解 雇 予 告 期 間 の 延 長 を 図 る 方 策 も 一 案 である 第 4 に 限 定 正 社 員 の 普 及 促 進 策 を 講 じるのと 平 行 して 限 定 正 社 員 の 転 職 を 支 える 制 度 や 政 策 を 充 実 させることが 必 要 である 具 体 的 には 失 業 した 限 定 正 社 員 の 所 得 保 障 を 拡 充 するほか 在 職 中 から 失 業 後 まで 目 配 りした 限 定 正 社 員 の 技 能 形 成 支 援 や 職 業 能 力 評 価 制 度 の 整 備 充 実 を 進 める などの 方 策 が 考 えられる さらに 民 間 人 材 サービスと 公 共 職 業 安 定 所 の 連 携 を 進 め 限 定 正 社 員 に 特 化 した 求 人 情 報 の 収 集 と 情 報 提 供 求 職 者 とのマッチングの 強 化 に 取 り 組 むことも 有 効 であろう (2) 限 定 正 社 員 に 寄 せられる 期 待 から 見 た 課 題 限 定 正 社 員 に 対 しては これが 非 正 社 員 から 正 社 員 への 足 掛 かりとなるとの 期 待 がある しかし 第 Ⅳ 章 2 節 で 見 たように 非 正 社 員 全 体 で 見 た 場 合 限 定 正 社 員 制 度 が 非 正 社 員 から 正 社 員 への 転 換 を 促 す 明 確 な 効 果 は 確 認 されていない この 問 題 に 対 して 雇 用 WG 報 告 書 は 明 示 的 に 言 及 していない ものの 限 定 正 社 員 が 非 正 社 員 から 正 社 員 への 足 掛 かりとして 十 分 役 割 を 果 すために 今 一 歩 踏 み 込 んだ 支 援 を 講 じるべきである そのための 方 策 として 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 が 進 み 易 い 限 定 正 社 員 制 度 や 非 正 社 員 の 雇 用 管 理 を 推 進 することが 挙 げられる 同 じく 第 Ⅳ 章 2 節 で 見 たように 限 定 正 社 員 を 導 入 する 企 業 では 非 正 社 員 に 教 育 訓 練 を 行 う 場 合 に 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 が 促 され 易 い このよう に 非 正 社 員 から 限 定 正 社 員 への 転 換 を 促 す 条 件 に 関 する 研 究 を 推 進 し 実 際 の 企 業 の 事 例 とともに 紹 介 するほか そうした 要 素 を 取 り 入 れる 企 業 に 助 成 金 等 の 支 援 を 行 うことも 必 要 であろう 23