建 設 分 野 における 競 合 国 に 関 する 調 査 研 究 概 要 (1) 調 査 研 究 の 目 的 技 術 力 等 の 強 みを 活 かした 海 外 展 開 の 取 組 が 進 められているところ 日 本 の 技 術 力 品 質 信 頼 等 に 関 する 定 評 に 拘 わらず 受 注 に 結 びつかない 状 況 が 生 じている また 人 口 減 少 に 伴 う 日 本 国 内 市 場 の 縮 小 や 復 興 需 要 オリンピック 需 要 の 収 束 を 迎 えた 将 来 の 時 点 で は 海 外 展 開 が 必 要 不 可 欠 となる 事 態 も 想 定 される この 様 な 認 識 の 下 本 調 査 研 究 では 自 国 市 場 国 に 比 べて 調 査 分 析 が 必 ずしも 充 分 ではなかった 競 合 国 の 状 況 戦 略 取 組 等 を 調 査 分 析 を 行 った 日 本 と 競 合 国 との 比 較 分 析 を 通 じて 日 本 の 問 題 点 を 分 析 するとともに 主 に 中 長 期 的 な 取 組 課 題 を 整 理 した (2) 競 合 国 の 特 定 日 本 建 設 企 業 は 海 外 受 注 額 の50% 超 をアジア オセアニア 市 場 (その 殆 どがアジア)で 受 注 しているものの 同 市 場 における 企 業 国 籍 別 売 上 高 は 首 位 (2003 年 )から 第 5 位 (2013 年 )に 低 下 し 第 6 位 の 韓 国 にも 急 速 に 差 を 縮 められている 上 位 国 のうち オセアニア(オーストラリ ア)での 受 注 が 多 いドイツ スペインは 日 本 との 競 合 度 合 いは 比 較 的 低 いと 考 えられる また 日 本 建 設 企 業 の 意 向 を 調 査 すると ベトナムが 特 に 有 望 な 市 場 と 捉 えられている 図 表 アジア オセアニア 市 場 における 受 注 企 業 国 籍 別 売 上 高 出 典 :Engineering News-Record(2014) The Top 250 International Contractors を 基 に 作 成 図 表 将 来 受 注 高 を 伸 ばしたい 国 地 域 国 土 交 通 省 建 設 業 活 動 実 態 調 査 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 1 位 ベトナム 25 ベトナム 25 ベトナム 31 ベトナム 23 インドネシア 27 2 位 中 国 20 タイ 18 インドネシア 22 インドネシア 23 ベトナム 25 3 位 タイ 18 インドネシア 18 タイ 21 タイ 20 タイ 23 4 位 シンガポール 15 中 国 16 シンガポール 16 シンガポール 13 シンガポール 14 5 位 台 湾 13 シンガポール 15 中 国 15 インド 12 ミャンマー 12 調 査 対 象 は 大 手 建 設 企 業 55 社 ( 総 合 建 設 業 35 社 設 備 工 事 業 20 社 ) 中 国 は 香 港 を 含 む 出 典 : 国 土 交 通 省 (2014) 平 成 25 年 度 建 設 業 活 動 実 態 調 査 等 を 基 に 作 成 - 1 -
ベトナム 建 設 省 及 び 政 府 官 房 が 集 計 した 受 注 金 額 データによると 計 上 額 に 偏 在 が 見 ら れるが 全 体 的 な 傾 向 としては 受 注 を 伸 ばしたいという 日 本 の 意 向 に 拘 わらず 特 に 韓 国 に 大 きな 差 をつけられている 状 態 が 見 て 取 れる 図 表 ベトナムにおける 企 業 国 籍 別 年 次 別 受 注 金 額 ( 建 設 工 事 上 位 5 位 ) 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 総 計 韓 国 23,988 23,258 65,762 86,985,432 768,960 176,927 88,044,328 シンガポール 262 5,785 40,494,430 641 1,644 1,542 40,504,305 中 国 6,371,603 45,887 56,605 912 88,689 6,146 6,589,843 日 本 8,493 21,199 17,053 32,731 1,688,488 30,297 1,798,260 イタリア 185,668 185,668 出 典 :ベトナム 政 府 ( 建 設 省 及 び 政 府 官 房 ) 提 供 資 料 を 基 に 作 成 統 計 上 の 制 約 等 から 厳 密 な 分 析 は 困 難 であるが 1 日 本 がターゲットとする 海 外 建 設 市 場 のエリアはアジア オセアニアであり そこでの 主 要 な 競 合 国 は 中 国 米 国 韓 国 と 想 定 される 2 日 本 建 設 企 業 にとっての 有 望 市 場 国 であるベトナムの 建 設 市 場 では 韓 国 建 設 企 業 のシェアが 圧 倒 的 に 高 い という 点 に 鑑 み 本 調 査 研 究 においては 市 場 国 をベトナム 競 合 国 を 韓 国 として 特 定 した - 2 -
(3) 競 合 国 の 海 外 展 開 に 関 する 分 析 1 国 内 企 業 の 評 価 等 による 競 合 国 の 海 外 展 開 の 分 析 韓 国 日 本 背 景 海 外 市 場 獲 得 の 切 迫 感 強 ( 国 内 市 場 海 外 市 場 獲 得 の 切 迫 感 弱 ( 国 内 市 場 小 ) 大 国 内 市 場 の 延 長 線 ) 経 緯 財 閥 グループ 体 制 各 企 業 は 専 門 性 に 特 化 市 場 を 絞 った 展 開 営 業 幅 広 い 分 野 で 実 績 数 積 み 上 げ STEP 案 件 かつ 高 い 技 術 力 を 要 する 低 価 格 と 豊 富 な 実 績 をアピール 案 件 優 良 事 業 者 を 国 が 指 定 技 術 力 品 質 安 全 性 をアピール 国 の 強 力 なバックアップ 技 術 力 評 価 は 分 かれるが 通 常 案 件 には 充 分 高 い( 主 観 論 ) 現 地 社 員 を 通 じて 現 地 ニーズに 柔 軟 現 地 との 間 にミスマッチが 存 在 ( 過 剰 品 に 対 応 質 スペックダウンは 苦 手 ) 価 格 低 価 格 受 注 最 優 先 ( 受 注 ありき) コスト 積 み 上 げ 型 リスク 対 応 費 は 事 後 調 整 リスク 対 応 費 は 事 前 算 入 下 請 活 用 による 低 コスト 化 調 達 財 閥 グループ 体 制 を 活 用 したグローバ 日 本 基 準 を 充 たす 資 機 材 調 達 ( 高 コス ル 調 達 ( 低 コスト 化 ) ト 化 ) 高 金 利 による 資 金 調 達 低 金 利 による 資 金 調 達 意 思 決 定 迅 速 な 意 思 決 定 ( 権 限 集 中 と 指 揮 命 令 慎 重 な 意 思 決 定 ( 事 前 リスク 評 価 権 系 統 の 明 確 化 ) 限 分 散 株 主 訴 訟 リスク) 交 渉 本 社 経 営 陣 による 直 接 交 渉 コンプライアンス 日 本 とは 異 なる 意 識 高 い 意 識 リスク 採 算 ありきの 対 応 ( 韓 国 人 社 員 の 配 置 トラブル 処 理 が 苦 手 ( 乏 しい 交 渉 経 験 ) 対 応 数 等 ) 日 本 からの 応 援 による 対 応 ト ラ ブ ル 処 理 が 上 手 ( 豊 富 な 交 渉 経 験 下 請 への 転 嫁 ) 最 近 の 動 向 低 価 格 受 注 による 収 益 悪 化 リスク 回 避 の 観 点 から 未 経 験 国 への 進 韓 国 企 業 同 士 の 争 い 出 に 消 極 的 政 権 交 代 為 替 変 動 経 済 低 迷 の 影 STEP 案 件 の 下 請 に 韓 国 企 業 を 活 用 響 活 発 なトップセールス 2 市 場 国 の 評 価 による 競 合 国 の 海 外 展 開 の 分 析 ~ ベトナム 政 府 機 関 へのヒアリング ベトナムでの 案 件 獲 得 に 向 けて 建 設 企 業 に 求 められる 能 力 は ⅰ. 技 術 力 ⅱ. 品 質 ⅲ. 価 格 ⅳ. 経 験 実 績 ⅴ. 組 織 力 ( 運 営 能 力 ) ⅵ. 意 思 決 定 ⅶ.その 他 ( 財 務 能 力 ( 資 金 力 ) 公 的 金 融 機 関 による 融 資 積 極 性 競 争 性 現 地 人 材 の 活 用 能 力 現 地 法 令 の 理 解 度 コンプライ アンス)である 各 能 力 についての 日 本 と 韓 国 に 対 する 評 価 は(4)で 後 述 - 3 -
(4) 海 外 市 場 獲 得 に 向 けた 今 後 の 日 本 の 取 組 課 題 1 競 合 国 と 日 本 の 戦 略 取 組 の 違 い1 ~ 背 景 と 戦 略 1) 海 外 展 開 への 切 迫 感 国 内 市 場 の 規 模 が 小 さい 韓 国 では 海 外 展 開 が 必 須 であり 切 迫 感 が 非 常 に 強 い 行 政 機 関 や 海 外 建 設 協 会 等 を 中 心 に 国 全 体 が 一 丸 となった 海 外 展 開 が 行 われてき た 2) 分 野 市 場 の 積 極 的 な 拡 大 韓 国 は 日 本 から 技 術 等 を 学 べる 分 野 ( 土 木 建 築 分 野 ) 日 本 が 未 進 出 の 市 場 ( 中 東 等 )で 技 術 力 価 格 競 争 力 実 績 等 を 培 った 後 新 たな 分 野 (プラント 都 市 開 発 )や 市 場 ( 日 本 が 優 位 なアジア 市 場 )へと 積 極 的 に 拡 大 していった 3) 事 業 全 体 をカバーできる 企 業 体 制 韓 国 の 大 企 業 は 同 一 グループ 内 にプラント 機 器 素 材 建 設 商 社 等 の 多 岐 に 亘 る 部 門 を 有 する 財 閥 体 制 にあるため グループ 内 だけで 海 外 へ 進 出 する 体 制 を 構 築 しやすい 2 競 合 国 と 日 本 の 戦 略 取 組 の 違 い2 ~ 取 組 1) 標 準 レベルの 技 術 力 と 規 格 やニーズへの 適 合 韓 国 の 技 術 力 は 最 高 水 準 ではないものの 通 常 案 件 を 受 注 するには 充 分 な 水 準 にあると 見 られている また 見 解 は 分 かれているが 国 際 標 準 や 現 地 ニーズに 対 応 能 力 が 高 いという 見 方 がある 2) 積 極 性 ( 守 備 範 囲 の 広 さと 意 欲 の 高 さ) 韓 国 は 小 規 模 案 件 アンタイドODA 案 件 民 間 投 資 案 件 等 守 備 範 囲 が 広 く 案 件 獲 得 の 意 欲 は 非 常 に 高 い 3) 低 コスト 化 の 徹 底 と 多 様 迅 速 な 資 金 調 達 支 援 韓 国 は グローバル 調 達 や 現 地 人 材 の 活 用 等 低 コスト 化 の 徹 底 を 図 っている ま た 公 的 金 融 機 関 による 融 資 等 の 資 金 調 達 支 援 に 力 が 入 れられている 但 し 金 利 は 日 本 に 比 べて 高 い 4) 受 注 ありきの 事 前 リスク 分 析 韓 国 は 受 注 を 最 優 先 する 姿 勢 で 動 く 傾 向 が 見 られ そのことが 迅 速 な 意 思 決 定 と 強 力 な 価 格 競 争 力 に 繋 がっていると 見 られている ただし リスク 分 析 の 甘 さも 指 摘 され ている 5) グローバル 人 材 の 育 成 韓 国 は 自 国 民 に 対 するグローバル 教 育 に 官 民 挙 げて 取 り 組 んでいる 3 市 場 国 と 日 本 の 認 識 評 価 の 違 い 1) 市 場 国 は 韓 国 の 営 業 姿 勢 を 高 く 評 価 韓 国 の 案 件 獲 得 の 積 極 性 実 績 の 豊 富 現 地 への 参 入 方 法 が 日 本 による 評 価 よりも - 4 -
一 層 高 く 評 価 されている 一 方 日 本 のODAに 特 化 した 案 件 獲 得 姿 勢 を やる 気 のな さの 顕 れとして 日 本 による 自 己 評 価 よりも 一 層 低 く 評 価 している 2) 市 場 国 は 日 本 の 技 術 力 品 質 を 不 必 要 と 評 価 韓 国 の 技 術 力 品 質 は 必 要 充 分 な 水 準 であり その 結 果 としての 価 格 も 合 理 的 で あると 高 く 評 価 されている 一 方 日 本 の 技 術 力 品 質 は 高 水 準 と 認 められつつも そ の 必 要 性 は 全 く 理 解 されておらず 過 剰 な 水 準 は 高 価 格 の 原 因 としてむしろ 不 要 であ ると 評 価 されており 日 本 自 身 による 最 大 級 の 評 価 と 大 きな 開 きがある 3) 市 場 国 は 日 韓 の 意 思 決 定 を 一 長 一 短 で 評 価 韓 国 の 意 思 決 定 は 速 いものの 適 切 さに 欠 け 一 方 日 本 の 意 思 決 定 は 適 切 であるも のの 慎 重 に 過 ぎ 迅 速 性 や 柔 軟 性 に 欠 けると 一 長 一 短 の 評 価 がされている 4) 市 場 国 は 自 己 資 金 で 先 行 着 手 できるか 否 かを 重 視 韓 国 は 自 国 ( 自 社 グループや 公 的 金 融 機 関 等 )から 巧 く 調 達 した 自 己 資 金 で 先 行 的 に 工 事 を 行 う 点 を 根 拠 に 財 務 能 力 が 高 いと 評 価 されている 一 方 日 本 は 現 実 の 財 務 能 力 とは 関 係 無 く 前 払 い 無 しには 工 事 を 行 わない 点 を 根 拠 に 財 務 能 力 が 低 いという 評 価 を 受 けている 金 利 の 高 低 は 評 価 に 大 きな 影 響 は 及 ぼしていない 5) 市 場 国 はリスク 分 析 の 慎 重 さよりもトラブル 処 理 の 上 手 さを 評 価 韓 国 は リスク 分 析 の 甘 さが 指 摘 されつつも 現 地 法 制 度 への 理 解 やトラブル 対 応 に 長 けていることから 日 本 による 評 価 よりも 高 い 評 価 を 受 けている 一 方 日 本 は 責 任 を 持 って 工 事 を 完 遂 する 点 は 評 価 されているが 事 前 のリスク 分 析 が 過 剰 で 慎 重 過 ぎ る 現 地 法 制 度 の 理 解 が 不 十 分 である 等 日 本 による 自 己 評 価 とは 大 きく 異 なる 評 価 を 受 けている 4 分 析 受 注 に 関 して 韓 国 はベトナムから 総 じて 高 い 評 価 を 受 ける 一 方 日 本 は 総 じて 低 い 評 価 を 受 けている 発 注 者 であるベトナムの 評 価 と 事 実 や 実 力 がどうであるか 及 び 日 本 自 身 がどうで あるかとの 間 に ギャップが 存 在 している 特 に 1) 技 術 力 品 質 2) 積 極 性 競 争 性 ( 市 場 進 出 戦 略 ) 3) 自 己 資 金 による 工 事 着 手 ( 財 務 能 力 ) の3 点 について 大 きなギャップが 存 在 している 技 術 力 品 質 日 本 の 高 さは 過 剰 不 要 であり 理 解 不 能 積 極 性 競 争 性 ( 市 場 進 出 戦 略 ) 日 本 は 単 に 消 極 的 なだけ 自 己 資 金 による 工 事 着 手 ( 財 務 能 力 ) 日 本 だけが 前 払 金 無 しに 工 事 着 手 をしないのは 財 務 能 力 が 低 いため - 5 -