社 会 資 本 の 老 朽 化 に 伴 う 建 て 替 え 改 修 には 検 証 と 工 夫 が 必 要 ~ 公 共 施 設 白 書 の 必 要 性 について~ はじめに 戦 後 の 荒 廃 から 65 年 この 間 非 常 に 多 くのビルや 橋 梁 道 路 などの 社 会 資 本 が 建 設 されるなど 日 本 は 世 界 でも 有 数 の 豊 かな 国 となった しかし 65 歳 以 上 人 口 比 率 が 20%を 超 える 高 齢 化 社 会 に 加 え 2007 年 ~08 年 には 総 人 口 が 減 少 に 転 じるなど 日 本 の 将 来 の 発 展 に 不 安 な 要 素 が 数 多 く 出 てきている また 国 や 地 方 自 治 体 の 財 政 状 況 についても 厳 しい 状 況 となっており 限 られた 予 算 で 膨 大 な 社 会 資 本 を 維 持 改 修 していくことは 非 常 に 困 難 と 思 われる しかしなが ら 社 会 資 本 の 建 設 時 期 やかかった 費 用 耐 用 年 数 などが 明 確 でないものも 多 いとい われ 今 後 の 整 備 方 針 も 立 てられない 自 治 体 も 数 多 くみられる そこで 今 後 の 社 会 資 本 の 整 備 に 対 して どのような 問 題 があるのかを 検 証 すると ともに 問 題 解 決 のツールとなる 公 共 施 設 白 書 について 紹 介 する 1. 社 会 資 本 の 老 朽 化 問 題 について (1) 国 の 社 会 資 本 ストックの 状 況 一 般 に 国 や 自 治 体 で 作 られた 学 校 や 病 院 道 路 橋 梁 などの 私 たちの 生 活 や 経 済 活 動 に 必 要 な 公 共 施 設 を 社 会 資 本 といい その 整 備 量 を 社 会 資 本 ストック という こ の 社 会 資 本 を 作 るために 毎 年 どれくらいの 金 額 が 投 じられているかを 知 る 指 標 が 内 閣 府 管 轄 の 国 民 経 済 計 算 関 連 統 計 のなかの 国 内 総 生 産 を 構 成 する 総 固 定 資 本 形 成 である ( 表 -1) この 総 固 定 資 本 形 成 は 国 内 における 固 定 資 本 に 対 する 民 間 公 的 投 資 の 総 額 であり このなかに 一 般 政 府 の 総 固 定 資 本 形 成 が 含 まれている この 一 般 政 府 の 総 固 定 資 本 形 成 が 社 会 資 本 への 年 間 投 資 額 である また 社 会 資 本 ストック については 同 様 の 統 計 に 一 般 政 府 の 期 末 貸 借 対 照 表 があり その 非 金 融 資 産 のなかの 生 産 資 産 の 固 定 資 産 でみることができる( 表 -2) この2つ の 動 きをみると( 図 1) バブル 崩 壊 後 の 景 気 対 策 は ハコモノ 政 策 が 中 心 であったため 96 年 をピーク(32 兆 円 弱 )に 社 会 資 本 が 多 く 作 られ そのストック 量 は 2008 年 現 在 355 兆 円 に 達 している これは 日 本 の 年 間 歳 入 総 額 ( 一 般 会 計 )の4 倍 程 度 という 大 きな 額 で ある 表 -1 国 内 総 生 産 ( 名 目 )の 概 要 ( 単 位 :10 億 円 ) 平 成 21 項 目 (2009) 年 度 1. 民 間 最 終 消 費 支 出 280,687.2 (1) 家 計 最 終 消 費 支 出 274,301.5 (2) 対 家 計 民 間 非 営 利 団 体 最 終 消 費 支 出 6,385.7 2. 政 府 最 終 消 費 支 出 94,948.7 3. 総 資 本 形 成 94,376.2 (1) 総 固 定 資 本 形 成 97,853.9 a. 民 間 76,590.2 (a) 住 宅 12,905.7 (b) 企 業 設 備 63,684.6 b. 公 的 21,263.7 (a) 住 宅 563.9 (b) 企 業 設 備 4,307.6 (c) 一 般 政 府 16,392.2 社 会 資 本 の 年 間 投 資 額 (2) 在 庫 品 増 加 -3,477.8 4. 財 貨 サービスの 純 輸 出 4,028.1 (1) 財 貨 サービスの 輸 出 64,218.2 (2)( 控 除 ) 財 貨 サービスの 輸 入 60,190.1 5. 国 内 総 生 産 ( 支 出 側 )(1+2+3+4) 474,040.2 1 / 10
表 -2 一 般 政 府 期 末 貸 借 対 照 表 勘 定 の 概 要 ( 単 位 :10 億 円 ) 平 成 20 暦 年 末 項 目 2008 1. 非 金 融 資 産 491,152.4 (1) 生 産 資 産 358,775.5 a. 在 庫 3,368.4 b. 固 定 資 産 355,407.1 社 会 資 本 ストック (2) 土 地 132,376.8 2. 金 融 資 産 504,214.2 (1) 現 金 預 金 84,472.6 (2) 貸 出 54,442.3 (3) 株 式 以 外 の 証 券 137,656.7 (4) 株 式 出 資 金 99,924.0 うち 株 式 31,775.5 (5) 金 融 派 生 商 品 0.0 (6)その 他 の 金 融 資 産 127,718.6 期 末 資 産 995,366.6 3. 負 債 983,563.5 (1) 借 入 178,544.9 (2) 株 式 以 外 の 証 券 756,041.9 (3) 出 資 金 27,063.0 (4) 金 融 派 生 商 品 0.0 (5)その 他 の 負 債 21,913.7 4. 正 味 資 産 11,803.1 期 末 負 債 正 味 資 産 995,366.6 ( 参 考 ) 歴 史 的 記 念 物 480.8 無 形 非 生 産 資 産 2.9 (2) 滋 賀 県 の 社 会 資 本 ストックの 状 況 同 様 に 滋 賀 県 の 総 固 定 資 本 形 成 をみると 96 年 度 に 最 大 で 3,675 億 円 の 投 資 が されている また 滋 賀 県 の 社 会 資 本 ストックについて 調 査 したところ 国 のような 期 末 貸 借 対 照 表 が 作 成 されておらず 実 態 は 不 明 である その 代 わりとして データのある 80 年 度 以 降 に 投 資 された 総 額 を 図 2の 棒 グラフで 示 している それをみると 80 年 度 から 2008 年 度 の 29 年 間 で 約 6.8 兆 円 の 投 資 がされており 滋 賀 県 の 年 間 歳 入 額 を 上 回 っている ( 注 )データの 基 準 について データの 集 計 状 況 が 異 なるため 国 では 暦 年 滋 賀 県 では 年 度 で 表 している 図 2: 総 固 定 資 本 形 成 の 額 において データの 基 準 年 変 更 により 80 年 度 から 95 年 度 ま でと 96 年 度 から 2008 年 度 までの 基 準 は 異 なるため 色 を 変 えている よって 合 計 額 や グラフは 参 考 値 図 1 日 本 の 社 会 資 本 ストックの 推 移 400,000 350,000 社 会 資 本 ストック( 左 軸 ) 一 般 政 府 の 総 固 定 資 本 形 成 ( 右 軸 ) 31,963 ( 単 位 :10 億 円 ) 35,000 355,407 30,000 300,000 25,000 250,000 200,000 20,000 150,000 115,469 15,148 15,000 100,000 10,000 50,000 5,000 0 0 内 閣 府 : 国 民 経 済 計 算 関 連 統 計 より 2 / 10
グラフ タイトル 図 2 滋 賀 県 の 社 会 資 本 ストック 形 成 の 推 移 ( 単 位 : 百 万 円 ) 8,000,000 滋 賀 県 の 総 固 定 資 本 形 成 の 1980 年 度 からの 合 計 額 ( 左 軸 ) 滋 賀 県 の 総 固 定 資 本 形 成 1990 年 基 準 95 年 まで( 右 軸 ) 滋 賀 県 の 総 固 定 資 本 形 成 2000 年 基 準 96 年 から( 右 軸 ) 400,000 367,504 7,000,000 6,805,784 350,000 6,000,000 300,000 5,000,000 250,000 4,000,000 200,000 3,000,000 147,869 150,000 2,000,000 126,425 100,000 1,000,000 50,000 0 0 滋 賀 県 : 滋 賀 県 民 経 済 計 算 より (3) 老 朽 化 する 社 会 資 本 での 問 題 点 以 上 のように 社 会 資 本 設 備 に 非 常 に 大 きな 投 資 がされており 1 年 間 で 国 では 10 兆 円 滋 賀 県 では 1,000 億 円 以 上 に 上 る しかしながら これほど 大 きな 金 額 が 投 じられて いるにもかかわらず 県 や 市 町 村 などの 自 治 体 では その 量 を 正 確 に 把 握 できていない そしてさらに 問 題 となるのは この 社 会 資 本 の 耐 用 年 数 である 学 校 や 病 院 市 役 所 や 町 役 場 などの 建 築 物 や 橋 梁 の 耐 用 年 数 は 長 くとも 50 年 といわれ 道 路 については 15 年 と 短 い つまり 戦 後 65 年 経 過 した 現 在 これまで 建 設 してきた 社 会 資 本 の 建 て 替 えや 改 修 改 築 時 期 がすでに 来 ているのである そして 日 本 の 40~50 年 前 を 振 り 返 ると 東 京 オリンピックが 47 年 前 の 1964 年 大 阪 万 博 が 41 年 前 の 1970 年 に 開 催 されている つまり 高 度 成 長 期 の 真 っ 只 中 でかつ 国 際 的 な 大 イベントがあった 時 期 であり 今 の 中 国 をみれば どれほどの 社 会 資 本 が 作 られたの か 想 像 できるであろう この 問 題 は 日 本 で 社 会 資 本 の 事 故 がほとんどみられなかったため クローズアップされ てこなかったが 2007 年 8 月 にアメリカでは ミネアポリス 高 速 道 路 のミシシッピ 川 に 架 かる 橋 梁 ( 建 設 から 約 40 年 )が 崩 落 し 少 なくとも 60 台 の 車 が 巻 き 込 まれた この 事 故 により 社 会 資 本 の 耐 用 年 数 について 重 要 視 されるようになり 日 本 でも 橋 梁 の 点 検 が 行 われ 建 設 から 50 年 前 後 の 橋 梁 を 中 心 に 亀 裂 などがみつかっている 以 上 のように 橋 梁 をはじめとして 社 会 資 本 の 老 朽 化 が 進 んでおり 生 活 に 密 接 にかか わるものであることから 社 会 資 本 の 維 持 改 修 は 今 後 の 国 民 生 活 に 非 常 に 重 要 なもので ある 3 / 10
2. 自 治 体 の 財 政 問 題 と 社 会 資 本 の 建 て 替 え 改 修 について まず 現 状 の 生 活 レベルを 落 とさないため 社 会 資 本 を 維 持 改 修 していくことを 単 純 に 考 える 先 に 述 べたとおり 現 在 の 総 固 定 資 本 形 成 が 355 兆 円 であり その 建 て 替 えや 改 修 には 単 純 に 355 兆 円 程 度 必 要 と 考 えられる( 物 価 などは 考 慮 しない) またその 期 間 は 道 路 を 除 く 社 会 資 本 の 耐 用 年 数 が 50 年 といわれていることから 年 間 に 直 すと 7.1 兆 円 以 上 ( 道 路 の 耐 用 年 数 は 15 年 のため) 必 要 となる この 費 用 負 担 がいかに 重 いものなのかを 日 本 の 現 状 をもとにみてみたい (1) 人 口 減 少 高 齢 化 などの 問 題 はじめに 日 本 の 現 状 をみてみたい 日 本 の 総 人 口 は 2007 年 の1 億 2,777 万 人 をピーク に 減 少 が 始 まっている また 人 口 減 少 に 対 して 高 齢 化 が 進 み 生 産 年 齢 人 口 の 比 率 につ いても 1990 年 前 半 をピークに 減 少 している 滋 賀 県 は 全 国 でも 数 少 ない 人 口 増 加 県 とい われているが 実 際 に 人 口 増 加 しているのは6 市 2 町 だけで 7 市 4 町 では 減 少 している ( 平 成 22 年 10 月 1 日 現 在 前 年 比 ) また 生 産 年 齢 人 口 も 2005 年 をピークに 減 少 がは じまっており 県 内 も 人 口 減 少 高 齢 化 生 産 年 齢 人 口 の 減 少 という 流 れにおいては 例 外 ではない 図 3 人 口 ( 全 国 滋 賀 県 )の 推 移 と 県 内 の 生 産 年 齢 人 口 と 老 齢 人 口 の 推 移 ( 単 位 : 人 ) 滋 賀 県 :65 歳 以 上 ( 老 年 人 口 ) 滋 賀 県 :15~64 歳 ( 生 産 年 齢 人 口 ) 600,000 500,000 824,232 917,902 903,940 1,000,000 900,000 400,000 800,000 300,000 283,822 700,000 200,000 147,144 600,000 100,000 500,000 1,450,000 1,400,000 ( 単 位 : 人 ) 1,403,977 人 12,900 12,800 1,350,000 1,300,000 1,250,000 滋 賀 県 1,222,411 人 全 国 12,777 万 人 12,738 万 人 12,700 12,600 12,500 12,400 1,200,000 1,150,000 1,100,000 12,361 万 人 ( 単 位 : 万 人 ) 12,300 12,200 12,100 人 口 は 各 年 10 月 1 日 時 点 総 務 省 : 人 口 推 計 より 4 / 10
(2) 自 治 体 財 政 と 社 会 資 本 の 維 持 改 修 にかかる 問 題 点 こうなると 心 配 になるのが 自 治 体 の 財 政 である あたり 前 の 話 であるが 高 齢 者 が 増 加 すれば 年 金 や 社 会 保 険 などの 費 用 が 増 加 する それに 対 して 生 産 年 齢 人 口 が 減 少 す れば 税 収 減 少 になる つまり 予 算 はかなり 厳 しいものとなってくる これを 滋 賀 県 の 市 町 の 財 政 状 況 で 確 認 すると( 図 4) 県 内 全 市 町 の 歳 入 歳 出 規 模 は 2002 年 度 で 5,000 億 円 前 後 であったものが 減 少 の 一 途 をたどっている また 夕 張 市 の 財 政 破 たんや 国 の 債 務 が 問 題 視 されはじめたことから 自 治 体 の 努 力 により 地 方 債 残 高 は 2006 年 をピークに 増 加 傾 向 はストップしているものの 歳 入 額 をはるかに 上 回 る 5,600 億 円 超 も 残 る 同 様 に 合 併 などの 影 響 がなく 県 内 の 人 口 増 加 の 象 徴 である 草 津 市 をみても 歳 入 は 減 少 傾 向 である( 図 5) そして 高 齢 化 で 必 要 になるのが 老 人 福 祉 費 や 社 会 福 祉 費 であり 2002 年 度 から 08 年 度 の7 年 間 だけでも 約 17 億 円 (3,336 百 万 円 5,090 百 万 円 ) 増 加 して いる また 対 照 的 に 土 木 費 が 約 26 億 円 減 少 しているのは このしわ 寄 せを 受 けた 結 果 と いえるようだ 土 木 費 には 社 会 資 本 の 建 築 維 持 改 修 費 用 が 入 っており 社 会 資 本 に 対 する 予 算 を 取 りづらい 状 況 にあることから 今 後 の 費 用 捻 出 が 大 きな 課 題 となってくるこ とは 間 違 いないと 思 われる このため 社 会 資 本 について 認 識 を 改 め 効 率 的 で 効 果 的 な 維 持 改 修 をしていくこと が 必 要 となる そこで 公 共 施 設 白 書 は 社 会 資 本 の 現 状 を 認 識 するツールでかつ 今 後 の 維 持 改 修 に 必 要 なデータベースとなると 考 えられる ( 単 位 : 百 万 円 ) 図 4 滋 賀 県 にある 市 町 の 財 政 状 況 の 推 移 ( 各 市 町 の 合 計 ) 歳 出 総 額 歳 入 総 額 地 方 債 残 高 600,000 593,775 550,000 553,775 564,102 512,975 500,000 498,513 477,456 488,942 450,000 400,000 2002 年 度 2003 年 度 2004 年 度 2005 年 度 2006 年 度 2007 年 度 2008 年 度 総 務 省 : 地 方 財 政 状 況 調 査 資 料 より 5 / 10
図 5 草 津 市 の 財 政 状 況 の 推 移 ( 単 位 : 百 万 円 ) 歳 出 総 額 ( 左 軸 ) 歳 入 総 額 ( 左 軸 ) 地 方 債 残 高 ( 左 軸 ) 土 木 費 ( 右 軸 ) 社 会 福 祉 費 + 老 人 福 祉 費 ( 右 軸 ) 50,000 9,000 45,000 40,000 7,890 45,038 8,000 7,000 5,253 38,447 6,000 35,000 30,000 38,954 35,445 5,090 5,000 4,000 25,000 3,336 38,499 34,899 3,000 20,000 2002 年 度 2003 年 度 2004 年 度 2005 年 度 2006 年 度 2007 年 度 2008 年 度 2,000 総 務 省 : 地 方 財 政 状 況 調 査 資 料 より 6 / 10
3. 公 共 施 設 白 書 の 必 要 性 について (1) 公 共 施 設 白 書 とは 公 共 施 設 白 書 とは すべての 公 共 施 設 の 現 状 をとらえ 課 題 などを 所 管 の 枠 を 越 えて 比 較 検 討 するためのツールである 各 自 治 体 にある すべての 公 共 施 設 が 対 象 であることが ポイントである ただし 道 路 と 上 下 水 道 については 目 的 がはっきりしており 所 在 も はっきりしているため 対 象 外 とすることもある 公 共 施 設 白 書 作 成 にあたって 調 査 する 内 容 施 設 名 称 所 管 する 部 署 所 在 設 置 年 度 土 地 の 面 積 建 物 の 面 積 や 構 造 設 置 の 根 拠 利 用 状 況 管 理 運 営 に 関 する 情 報 ( 運 営 形 態 職 員 数 経 費 ) 改 修 実 績 の 情 報 など 公 共 施 設 白 書 の 特 徴 と 役 割 公 共 施 設 白 書 は 自 治 体 が 保 有 する 公 共 施 設 を 一 括 で 把 握 できるツールとなる これ までの 自 治 体 運 営 では 企 業 のようなバランスシートの 作 成 は 必 要 ないなど 一 括 で 把 握 する 必 要 がなく それぞれの 管 理 についても 各 部 署 に 分 かれていたため このようなツ ールは 存 在 していなかった そのため 一 括 で 把 握 できる 公 共 施 設 白 書 を 作 成 すること で 施 設 の 重 要 性 を 把 握 し 維 持 改 修 計 画 を 限 られた 予 算 内 で 横 断 的 に 検 討 すること が 可 能 となる また 横 断 的 に 検 討 する 事 で 複 合 施 設 ( 学 校 と 保 育 所 公 民 館 の 併 設 など)などの 可 能 性 を 探 ることも 可 能 となる 同 時 に 各 施 設 の 問 題 点 や 建 設 時 期 修 繕 記 録 を 把 握 することから 老 朽 化 による 事 故 を 事 前 に 防 ぐことも 可 能 になると 考 えられ る また 白 書 を 公 開 することで 自 治 体 住 民 に 対 して 情 報 を 提 供 することができ 自 治 体 と 住 民 が 情 報 を 共 有 し 認 識 を 合 わせた 上 での 政 策 を 検 討 できる (2) 公 共 施 設 白 書 策 定 について 以 上 のように 公 共 施 設 白 書 策 定 をおこなうことで 以 下 のようなことが 可 能 となる 自 治 体 内 の 公 共 施 設 の 一 括 把 握 現 存 する 施 設 の 有 益 性 を 検 証 できる 管 理 する 部 署 を 越 えて 横 断 的 な 政 策 検 討 が 可 能 になり 効 率 的 な 計 画 が 可 能 複 合 施 設 の 検 討 も 可 能 となる 数 値 化 することで 現 状 を 判 断 しやすい 住 民 への 情 報 提 供 現 状 認 識 のツールとなる 老 朽 化 による 事 故 の 未 然 防 止 しかしながら 詳 細 を 示 すことで 以 下 のような 問 題 点 が 明 らかになる 懸 念 もある 地 域 ごとの 行 政 サービスの 比 較 がされ 偏 りに 不 満 が 出 る これまでの 設 備 投 資 に 対 する 結 果 が 明 らかになり 問 題 点 も 明 確 になる 新 たな 施 策 に 対 し 官 庁 内 の 認 識 相 違 や 利 害 関 係 などによる 調 整 が 難 しい 7 / 10
図 6 公 共 施 設 白 書 のイメージ 公 共 施 設 白 書 自 治 体 内 の 公 共 施 設 の 情 報 を 網 羅 施 設 のストック 量 維 持 経 費 高 サービス 内 容 自 治 体 現 状 把 握 と 課 題 の 抽 出 施 策 の 決 定 住 民 居 住 地 の 現 状 把 握 自 治 体 の 施 策 の 判 断 情 報 共 有 民 間 企 業 公 共 施 設 建 設 委 託 などの 可 能 性 を 判 断 (3) 具 体 的 な 事 例 について 公 共 施 設 白 書 の 取 り 組 みについては 特 に 関 東 地 方 で 動 きが 活 発 であり 東 京 都 や 神 奈 川 県 を 中 心 に 18 自 治 体 が 公 表 している また 自 治 体 の 施 策 として 10 自 治 体 前 後 が 作 成 のための 取 り 組 みを 行 っている 県 内 においても 複 数 の 自 治 体 が 取 り 組 みを 検 討 してい る 模 様 であるが 市 民 へ 公 表 するものかは 明 確 でない このようななか 神 奈 川 県 秦 野 市 の 取 り 組 み 事 例 を 紹 介 する 秦 野 市 は 2008 年 4 月 に 専 任 組 織 を 設 置 ののち 1 年 半 をかけて 公 共 施 設 白 書 を 作 成 している 秦 野 市 の 概 要 公 共 施 設 の 現 状 と 課 題 施 設 別 の 現 状 と 課 題 公 共 施 設 を 取 り 巻 く 状 況 と 再 配 置 の 必 要 性 公 共 施 設 再 配 置 の 視 点 にまで 全 202 ページにわたり 作 成 し その 付 属 資 料 となる 施 設 別 解 説 編 として 全 294 ページの 白 書 が 作 成 されている( 秦 野 市 のホームページより) この 白 書 では 道 路 と 上 下 水 道 を 除 く 457 すべての 公 共 施 設 について 調 査 が 行 われ 一 つひとつの 問 題 点 について 調 べられている 地 区 ごとや 施 設 ごとなど 様 々な 視 点 からの 分 析 も 行 われており 現 状 の 課 題 の 洗 い 出 しがなされている この 公 共 施 設 白 書 作 成 の 先 に は その 後 の 方 策 も 考 えられ それは 今 後 厳 しくなる 財 政 の 課 題 と 既 存 施 設 の 問 題 点 を 明 確 にすることで 可 能 となる 効 率 的 な 再 配 置 計 画 である 図 7 秦 野 市 公 共 施 設 白 書 の 表 紙 秦 野 市 ホームページより 8 / 10
秦 野 市 がこの 公 共 施 設 白 書 を 作 成 した 目 的 は 市 の 全 体 像 を 知 り 市 民 の 理 解 を 得 られ る 計 画 を 作 成 するためであった 秦 野 市 が 公 共 施 設 白 書 を 作 成 の 流 れと その 後 の 計 画 は 図 8の 通 りである 公 共 施 設 白 書 作 成 のポイントで 最 も 大 切 なことは 秦 野 市 の 担 当 者 の 講 演 と 聞 き 込 みから 計 画 を 行 う 自 治 体 の 関 係 者 が 実 態 を 把 握 すること そして 市 民 に その 現 状 と 計 画 を 行 う 理 由 を 理 解 してもらうことである そのために 公 共 施 設 白 書 は 課 題 を 数 値 データで 分 かりやすく 表 現 することがポイントとなる 秦 野 市 の 公 共 施 設 白 書 は 09 年 10 月 に 公 表 されたが その 後 この 白 書 を 利 用 した 公 共 施 設 再 配 置 計 画 検 討 委 員 会 を 設 立 し 市 民 とともに 再 配 置 計 画 を 作 成 しているところで 再 配 置 計 画 の 実 行 は 今 年 11 年 4 月 を 予 定 している また その 再 配 置 計 画 のなかで 公 民 連 携 事 業 を 模 索 していくこととなるようである 図 8 公 共 施 設 白 書 作 成 の 流 れとポイント 公 共 施 設 白 書 作 成 の 流 れ 1 公 共 施 設 再 配 置 計 画 組 織 設 置 作 成 に 関 するポイントなど 専 任 部 署 専 任 者 の 任 命 2 各 施 設 の 概 要 調 査 3 管 理 運 営 実 態 の 現 地 調 査 調 査 シートの 作 成 により 所 管 各 課 へ 配 布 施 設 の 設 置 目 的 に 固 執 しない 新 たなデータ 収 集 はしない 4 所 管 課 のヒアリング 調 査 5 公 共 施 設 に 関 するデータ 収 集 分 析 施 設 の 量 (ストック 量 ) 経 費 ( 維 持 コスト) 利 用 者 利 用 頻 度 (サービス) 現 状 分 析 と 課 題 をきっちり 行 う 他 の 自 治 体 との 比 較 をする これまで 公 開 されることの 少 ない 情 報 も 掲 載 課 題 は 数 値 データで 表 現 6 公 共 施 設 白 書 作 成 公 開 7 公 共 施 設 再 配 置 計 画 の 検 討 策 定 8 計 画 の 実 行 検 討 委 員 会 の 設 置 など 市 民 に 理 解 してもらえる 計 画 とする 白 書 をもとにより 高 いサービスを より 安 い 税 負 担 で 提 供 できる 計 画 を 追 求 する 9 / 10
4. 公 共 施 設 白 書 の 作 成 とその 活 用 方 法 について 公 共 施 設 白 書 はあくまで 現 状 認 識 のためのツールであり この 認 識 をもとに 課 題 を 抽 出 し 解 決 する 方 策 が 必 要 となる その 方 策 として 第 一 に 考 えられるのは 秦 野 市 のような 再 配 置 計 画 である 再 配 置 計 画 は 自 治 体 にあるすべての 公 共 施 設 に 対 して 税 収 等 を 加 味 しながら 今 後 の 維 持 管 理 改 修 方 針 を 決 定 していくものである 自 治 体 と 市 民 生 活 の 将 来 を 考 えれば 最 も 重 要 な 計 画 であると 考 えられる しかし 再 配 置 計 画 を 行 う 上 で 予 算 に 収 まりきらない 施 設 の 改 築 などが 発 生 する 可 能 性 がある 特 に 大 型 の 施 設 ( 本 庁 舎 や 学 校 病 院 など)については 建 設 費 用 が 大 きいた め 課 題 も 大 きい 第 2 章 でも 述 べたとおり 公 共 施 設 の 維 持 改 修 には 日 本 全 体 で 年 間 7.1 兆 円 以 上 の 費 用 が 必 要 である この 費 用 を 税 金 もしくは 公 債 で 賄 うには 限 界 が 近 付 いて いる そのため 公 共 施 設 を 民 間 の 資 金 経 営 能 力 技 術 的 能 力 を 活 用 した 仕 組 みである PPP(パブリック プライベート パートナーシップ) 手 法 を 積 極 的 に 取 り 入 れる 必 要 があると 2010 年 国 土 交 通 白 書 にも 紹 介 されている PPP 手 法 は 新 しい 成 長 モデルに 向 け た 創 意 工 夫 の 代 表 として 紹 介 され 民 間 の 知 恵 と 資 金 の 積 極 的 な 導 入 により 効 果 的 な 公 共 投 資 を 行 うことが 大 切 である と 述 べられている そこで PPP 手 法 に 代 表 される 民 間 の 活 力 を 利 用 するには 民 間 企 業 に 投 資 メリットを 明 確 にする 必 要 がある 民 間 企 業 に 公 共 施 設 を 建 設 するメリットを 与 える 方 法 にはいくつか 考 えられ 一 つは PFI 事 業 のように 整 備 する 施 設 そのものの 建 設 やサービスを 担 い 売 上 と 収 益 を 確 保 するものがある その 他 に 考 えられるものでは 施 設 の 建 設 の 見 返 りに 公 共 施 設 の 一 部 を 民 間 企 業 に 利 用 させるものである これまで 施 設 全 体 を 把 握 できず サービスの 状 況 についても 把 握 できていなかったため 民 間 企 業 と 交 渉 するとしても 民 間 企 業 からはメリットを 判 断 しづらい 状 況 であった しかし 公 共 施 設 白 書 が 整 備 されれ ば 公 共 施 設 の 必 要 性 や 余 剰 不 要 の 判 断 も 可 能 となるため 余 剰 施 設 や 土 地 について 民 間 に 利 用 権 を 譲 渡 することなども 考 えられるようになる 現 在 日 本 で 行 われている PPP 事 業 ( 主 に PFI 事 業 )は 年 間 1,000 億 円 程 度 といわれて いる 将 来 公 共 施 設 白 書 が 整 備 され PPP 事 業 が 拡 大 することにより 自 治 体 財 政 の 悪 化 を 解 消 し 公 共 施 設 の 安 定 した 維 持 改 修 が 行 われていくことに 期 待 するとともに 日 に 日 に 進 む 施 設 の 老 朽 化 と 財 政 の 悪 化 にブレーキがかかり 安 心 安 全 快 適 な 社 会 を 生 か すツールとなることを 期 待 したい 2011 年 3 月 しがぎん 経 済 文 化 センター 森 下 剛 志 10 / 10