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Transcription:

4. 分 娩 直 後 の 新 生 子 の 管 理 1) 出 生 直 後 の 新 生 子 の 行 動 (2) 吸 乳 反 射 が 娩 出 から 5 分 以 内 に 発 現 し 新 生 子 は 舌 で 吸 乳 の 仕 草 をみせる いななきや 音 への 反 応 など 聴 覚 および 視 覚 が 活 性 化 する (3) 娩 出 から 5 分 以 内 に 体 温 調 節 のための 馬 体 の 震 えが 認 められる 娩 出 から 5 分 後 には 聴 覚 と 視 覚 が 活 性 化 する 分 娩 直 後 ~1 分 後 新 生 子 は 胸 部 が 産 道 を 通 過 後 30~60 秒 で 呼 吸 を 開 始 する 正 常 な 仔 馬 は 娩 出 時 に 自 ら 羊 膜 を 破 り 呼 吸 を 開 始 する しかし 低 酸 素 脳 症 などによって 羊 膜 を 破 ることができない 場 合 は 胸 部 が 産 道 を 通 過 した 後 も 羊 膜 が 鼻 孔 を 被 覆 していることがある この 場 合 は 強 制 的 に 羊 膜 を 除 去 する 必 要 がある 分 娩 15 分 後 前 肢 を 前 方 に 伸 展 させて 後 肢 を 体 下 に 引 き 寄 せ 起 立 を 試 み 始 める 娩 出 から 15 分 後 には 起 立 を 試 み 始 める 新 生 子 は 娩 出 後 30~60 秒 で 呼 吸 を 開 始 する 分 娩 5 分 後 (1) 娩 出 から 5 分 以 内 に 横 臥 状 態 から 頭 頚 部 を 挙 上 し 両 前 肢 の 間 に 体 を 置 くようになる 娩 出 から 5 分 間 が 経 過 しても 後 肢 が 産 道 に 残 存 してい る 場 合 は これを 膣 外 に 出 す 分 娩 1 時 間 後 起 立 の 試 みを 繰 り 返 した 後 分 娩 1~1.5 時 間 後 に は 起 立 に 成 功 する この 時 間 内 に 起 立 できれば 正 常 である 一 方 分 娩 から 2 時 間 以 上 を 経 過 しても 起 立 できない 場 合 は 何 らかの 異 常 が 疑 われる 34

異 常 がなければ 娩 出 から 1 時 間 後 には 起 立 する 分 娩 2 時 間 後 (1) 安 定 した 起 立 状 態 を 維 持 できるようになれば 母 馬 を 後 追 いして 乳 房 を 探 し 始 め 分 娩 から 2 時 間 後 には 吸 乳 を 開 始 する 3 時 間 以 上 を 経 過 して も 乳 房 を 探 さなかったり 母 馬 を 後 追 いせずに ふらつく 場 合 は 異 常 が 疑 われる (2) 吸 乳 の 開 始 により 反 射 的 に 消 化 管 の 蠕 動 運 動 が 促 進 されて 胎 便 が 排 出 される 異 常 がなければ 娩 出 から 2 時 間 後 には 吸 乳 する 分 娩 3 時 間 後 分 娩 12 時 間 後 (1) 分 娩 12 時 間 後 までに 新 生 子 は 安 定 状 態 とな る 安 定 状 態 とは 容 易 に 意 識 的 な 起 立 と 吸 乳 が 可 能 になることである また 馬 房 内 を 駆 け 回 る ことも 可 能 になる (2)この 時 期 までに 吸 乳 が 安 定 していれば 胎 便 の 排 出 および 排 尿 を 確 認 できる 頻 繁 に 尾 を 挙 上 して 排 尿 姿 勢 を 呈 するが 糞 尿 が 排 出 されない 場 合 は 疝 痛 あるいは 尿 路 系 の 疾 病 が 疑 われる 出 生 後 の 初 回 排 尿 の 時 期 は 牡 馬 と 牝 馬 で 異 なり 通 常 牡 馬 では 6 時 間 以 内 牝 馬 では 12 時 間 以 内 である (3) 乳 汁 が 鼻 梁 や 鼻 端 部 に 付 着 している 場 合 は 乳 房 付 近 には 接 近 しているが 乳 首 の 吸 引 が 不 十 分 であることを 示 唆 している 一 方 鼻 孔 から 逆 流 している 場 合 は 口 蓋 裂 が 疑 われる 母 馬 の 乳 房 の 膨 化 程 度 や 乳 首 の 乾 燥 状 態 によっても 吸 乳 の 有 無 を 確 認 できる 新 生 子 の 健 康 状 態 の 把 握 出 産 の 翌 朝 ( 生 後 12~24 時 間 )には 獣 医 師 の 臨 床 検 査 により 新 生 子 の 健 康 状 態 を 把 握 することが 望 ましい この 臨 床 検 査 は 先 天 的 および 分 娩 後 の 疾 病 に 関 する 検 査 血 清 中 の IgG 濃 度 の 測 定 による 移 行 免 疫 不 全 の 検 査 である 呼 吸 状 態 外 貌 上 で 最 も 新 生 子 の 健 康 状 態 の 指 標 となる 所 見 は 呼 吸 状 態 である 肺 の 異 常 をはじめ 高 体 温 や 疼 痛 さらには 溶 血 性 貧 血 の 発 症 時 は 浅 表 性 の 呼 吸 となって 呼 吸 数 が 増 加 する 正 常 の 呼 吸 数 は 30 回 / 分 程 度 であり 60 回 / 分 以 上 の 呼 吸 数 や 鼻 翼 の 開 張 は 異 常 と 判 断 する ただし 分 娩 直 後 は 代 謝 が 亢 進 しているため 呼 吸 数 は 高 く 15 分 後 では 30~50 回 / 分 1 時 間 後 では 40~60 回 / 分 に 達 する 分 娩 から 3 時 間 後 までに 吸 乳 行 動 および 母 馬 の 後 産 の 排 出 を 確 認 できれば 概 ね 正 常 と 判 断 す る 以 後 は 親 子 のみの 時 間 とし 馬 房 の 電 気 を 消 し スタッフは 翌 朝 まで 休 憩 できる 35

2) 初 乳 初 乳 は 分 娩 から 24 時 間 後 までに 分 泌 される 特 殊 な 乳 汁 である 初 乳 中 には 抗 体 ( 免 疫 グロブリン)が 含 有 さ れている 初 乳 中 の 抗 体 量 を 増 加 させるためには 分 娩 前 の 母 馬 へのワクチン 接 種 など 計 画 的 な 管 理 が 必 要 である 移 行 免 疫 馬 の 胎 盤 と 子 宮 の 接 合 は 緩 い 組 織 構 造 であり 母 体 と 胎 子 の 血 液 は 直 接 的 に 混 合 することはなく 胎 子 は 妊 娠 期 間 中 に 移 行 免 疫 を 獲 得 できない また 出 生 直 後 も 自 身 による 免 疫 物 質 の 産 生 は 困 難 であ る 免 疫 物 質 の 産 生 は 生 後 2 週 齢 から 開 始 されるが 約 3 ヶ 月 齢 までは 十 分 量 に 達 しない このため 十 分 な 免 疫 物 質 の 産 生 が 可 能 になるまでの 期 間 は 初 乳 を 介 して 母 親 の 抗 体 ( 免 疫 グロブリン)を 摂 取 す ることにより 様 々な 細 菌 やウイルスの 感 染 から 生 体 を 防 御 している このように 母 馬 から 免 疫 物 質 を 獲 得 することを 移 行 免 疫 という 計 画 的 に 実 施 することにより 良 質 の 初 乳 の 産 生 が 可 能 となる 初 乳 の 総 量 は 3~5lとされており その 分 泌 量 は 経 時 的 に 減 少 する また 新 生 子 が 生 後 2 時 間 以 内 に 初 乳 を 摂 取 した 場 合 初 乳 中 の 免 疫 グロブリン 濃 度 は 娩 出 後 3~4 時 間 から 著 しく 減 少 し 10 時 間 以 内 に 枯 渇 する 初 乳 の 質 および 産 生 量 には 個 体 差 がみられる 初 産 や 15 歳 以 上 の 高 齢 馬 分 娩 が 予 定 日 より 2 週 間 以 上 早 い 場 合 などは 質 あるいは 分 泌 量 の 低 下 がみ られる また 分 娩 前 に 漏 乳 が 認 められる 場 合 も 分 娩 後 の 乳 中 に 十 分 量 の 免 疫 グロブリンが 含 有 され ていない 可 能 性 が 高 く 注 意 が 必 要 である 一 方 初 乳 は 下 剤 効 果 を 有 するとともに 吸 乳 行 為 は 反 射 的 に 消 化 管 の 蠕 動 運 動 を 促 すため 胎 便 の 排 出 が 促 進 されると 考 えられている 初 乳 初 乳 は 分 娩 から 24 時 間 後 まで 母 馬 から 分 泌 され 黄 色 味 を 帯 びた 粘 張 性 の 高 い 特 殊 な 乳 汁 である ま た その 後 に 分 泌 される 通 常 乳 に 比 較 し 高 濃 度 の タンパク 質 ( 特 に グロブリンおよびアルブミン) および 電 解 質 を 含 有 している 初 乳 は 分 娩 2~4 週 間 前 から 産 生 され 母 馬 が 豊 富 な 免 疫 グロブリンを 保 有 している 場 合 は 初 乳 中 に も 高 濃 度 の 免 疫 グロブリンが 含 有 されている 分 娩 予 定 日 の 1~2 ヶ 月 以 前 までに 母 馬 に 各 種 ワクチン ( 馬 インフルエンザ 馬 ロタウイルス 破 傷 風 馬 鼻 肺 炎 など)を 接 種 することにより さらに 高 濃 度 の 免 疫 グロブリンが 初 乳 中 に 含 有 される また 出 生 後 の 仔 馬 の 環 境 下 における 細 菌 やウイルスに 対 す る 免 疫 物 質 を 初 乳 中 に 含 有 させるためには 分 娩 予 定 日 の 1 ヶ 月 前 までに 母 馬 を 出 生 後 に 仔 馬 と 過 ご す 馬 房 や 放 牧 地 に 移 動 させておくことが 推 奨 される このようなワクチン 接 種 や 母 馬 の 繋 養 場 所 の 変 更 を 新 生 子 馬 は 初 乳 を 介 して 抗 体 を 獲 得 する 初 乳 ( 左 )と 通 常 乳 ( 右 )の 色 調 36

初 乳 の 質 ( 免 疫 グロブリン 濃 度 )の 測 定 方 法 新 生 子 の 腸 管 における 初 乳 の 吸 収 生 後 24 時 間 に 限 り 初 乳 の 吸 収 が 可 能 である 生 後 6 時 間 までの 吸 収 率 が 高 い 生 後 6 時 間 以 内 に 初 乳 を 摂 取 できない 場 合 は 500~1,000ml の 初 乳 を 投 与 する 必 要 がある 出 生 直 後 の 新 生 子 の 消 化 管 は 大 型 分 子 すなわ ち 初 乳 中 の 免 疫 グロブリンを 効 率 よく 吸 収 できる 特 殊 機 能 を 有 している 特 に 生 後 6 時 間 までの 吸 収 率 は 高 い 一 方 この 消 化 管 の 特 殊 機 能 は 細 菌 な ども 吸 収 するため 吸 収 率 は 経 時 的 に 低 下 して 生 後 24 時 間 までに 失 活 する このため 分 娩 後 6 時 間 以 内 に 新 生 子 が 自 力 で 初 乳 を 摂 取 できたかを 確 認 する 必 要 がある 分 娩 後 6 時 間 以 内 に 摂 取 できなか った 場 合 は 母 馬 から 初 乳 を 500~1,000ml 程 度 搾 乳 し 哺 乳 瓶 などを 用 いて 投 与 する 最 も 確 実 な 方 法 は 経 鼻 カテーテルを 用 いる 直 接 投 与 法 であるが このためには 獣 医 師 のサポートが 不 可 欠 である こ のような 人 為 的 な 初 乳 の 投 与 は 遅 くとも 生 後 24 時 間 以 内 に 実 施 する 必 要 がある 可 能 であれば 12 時 間 以 内 理 想 的 には 6 時 間 以 内 に 実 施 する Brix 値 から 推 測 される 初 乳 の 質 Brix 値 (%) 推 定 IgG 濃 度 (mg/dl) 初 乳 の 質 備 考 <10 0 劣 悪 冷 凍 初 乳 (1,000ml) 給 与 10~15 0~3,000 不 良 冷 凍 初 乳 (500ml) 給 与 15~20 3,000~5,000 不 良 に 近 い 冷 凍 初 乳 (500ml) 給 与 20~25 5,000~8,000 良 好 - >25 >8,000 非 常 に 良 好 冷 凍 保 存 用 として 採 取 新 生 子 の 摂 取 前 の 初 乳 Brix 値 が 25% 以 上 の 場 合 免 疫 グロブリンの 豊 富 な 良 質 の 初 乳 と 推 測 される 一 方 20% 未 満 の 場 合 は 良 質 でないことから Brix 値 は 冷 凍 保 存 された 初 乳 の 補 助 的 な 投 与 の 必 要 性 を 示 す 指 標 といえる 仔 馬 の 初 乳 摂 取 量 の 推 測 哺 乳 前 後 の Brix 値 から 推 測 される 仔 馬 の 初 乳 摂 取 量 子 馬 が 摂 取 前 の 初 乳 の Brix 値 (1)を 測 定 (Brix 値 が 20 以 上 である 良 好 な 初 乳 ) 分 娩 10~12 時 間 後 の 乳 汁 の Brix 値 (2)を 測 定 この 値 が 10 以 上 であれば 十 分 量 の 抗 体 が 移 行 1-2=>10 採 乳 のみによって 初 乳 摂 取 量 を 容 易 に 推 測 できる 自 力 で 初 乳 を 摂 取 できない 場 合 は 経 鼻 カテーテルを 用 いて 確 実 に 500~1,000ml の 初 乳 を 投 与 する 初 乳 中 の 免 疫 グロブリンが 新 生 子 に 移 行 した 量 を 正 確 に 把 握 するためには 新 生 子 の 血 液 中 の 免 疫 グ ロブリン(IgG) 濃 度 を 測 定 する 方 法 が 知 られている ( 獣 医 師 に 依 頼 ) 一 方 牧 場 において 簡 易 的 に 免 疫 グロブリンの 新 生 子 への 移 行 量 を 推 測 するために は 糖 度 計 によって 測 定 された Brix 値 を 指 標 とする 哺 乳 前 の 初 乳 の Brix 値 を 事 前 に 測 定 し 出 産 10 37

~12 時 間 後 の Brix 値 を 再 測 定 して 比 較 する その 数 値 の 差 が 10 以 上 であれば 仔 馬 は 十 分 量 の 初 乳 を 摂 取 し 満 足 できる 移 行 免 疫 を 獲 得 したと 推 測 でき る 一 方 Brix 値 の 差 が 10 未 満 の 場 合 仔 馬 は 十 分 量 の 初 乳 を 摂 取 しておらず 移 行 免 疫 不 全 の 状 態 にあると 判 断 する 移 行 免 疫 不 全 と 治 療 哺 乳 前 後 の Brix 値 の 差 から 不 十 分 な 初 乳 の 摂 取 が 疑 われた 場 合 は 可 及 的 速 やかに 500~ 1,000ml の 初 乳 を 投 与 する 有 事 に 備 えて -20 の 冷 凍 庫 に 25% 以 上 の Brix 値 をもつ 初 乳 を 保 存 しておく (1) 移 行 免 疫 不 全 仔 馬 は 初 乳 に 含 有 される 免 疫 グロブリンの 吸 収 に より 細 菌 やウイルスの 感 染 を 防 御 している した がって 生 後 24 時 間 以 内 の 仔 馬 の 初 乳 摂 取 量 が 不 十 分 な 場 合 あるいは 消 化 管 からの 初 乳 の 吸 収 が 不 完 全 な 場 合 は 移 行 免 疫 不 全 ( 仔 馬 の 血 中 IgG 濃 度 が 400mg/ml 以 下 )に 陥 り 感 染 症 を 発 症 する 可 能 性 が 高 くなる (2) 移 行 免 疫 不 全 の 治 療 法 海 外 における 移 行 免 疫 不 全 の 仔 馬 に 対 する 治 療 と しては 抗 体 を 含 有 する 血 漿 輸 液 製 剤 の 投 与 が 一 般 的 である 現 在 のところ わが 国 において 血 漿 輸 液 製 剤 は 市 販 されていない 血 漿 輸 液 製 剤 の 投 与 以 外 の 移 行 免 疫 不 全 に 対 する 予 防 法 は 冷 凍 保 存 した 良 質 の 初 乳 を 生 後 24 時 間 ま でに 投 与 することである すなわち 可 及 的 速 やか な 500~1,000ml の 初 乳 の 投 与 が 推 奨 される この 場 合 母 馬 の 初 乳 の 質 が 高 ければ 母 馬 の 初 乳 を 低 ければ 冷 凍 保 存 した 初 乳 を 投 与 する 初 乳 摂 取 量 が 少 なければ 可 及 的 速 やかに 初 乳 を 投 与 する 冷 凍 保 存 する 初 乳 は 25% 以 上 の Brix 値 をもつこ とが 条 件 であり 採 乳 量 は 500ml を 目 安 とする 採 取 した 初 乳 は ガーゼを 用 いて 異 物 を 除 去 して 清 潔 な 容 器 に 移 し 替 え -20 の 冷 凍 庫 に 保 存 する 投 与 の 際 は 自 然 解 凍 あるいは 冷 蔵 庫 で 解 凍 する 電 子 レンジによる 解 凍 は タンパク 質 が 分 解 されるため に 禁 忌 である また 保 存 期 間 は 1~1.5 年 間 を 目 安 とする なお 後 述 する 新 生 子 黄 疸 を 発 症 させた 母 馬 の 初 乳 は 良 質 であっても 冷 凍 保 存 の 条 件 を 満 たすものではない 25% 以 上 の Brix 値 をもつ 初 乳 を 冷 凍 保 存 しておく 38

4) 生 後 1 週 齢 までの 管 理 様 々な 環 境 の 変 化 に 順 応 する 必 要 がある 感 染 症 に 対 する 十 分 な 注 意 が 必 要 である 体 重 の 増 減 は 健 康 状 態 を 知 る 有 用 な 指 標 とな る この 時 期 の 仔 馬 の 取 り 扱 いは しつけの 面 でも 極 めて 重 要 な 意 味 をもつ 生 後 2~7 日 目 の 仔 馬 は 出 生 直 後 の 虚 弱 な 状 態 を 乗 り 越 え 健 康 状 態 が 安 定 する また 初 めての 放 牧 など 環 境 の 変 化 に 順 応 する 必 要 がある さらに 新 規 環 境 におけるウイルスや 細 菌 の 暴 露 に 加 え 新 規 刺 激 によるストレスに 起 因 する 感 染 症 に 対 し 細 心 の 注 意 を 払 わなければならない このため 少 な くとも 1 日 に 1 回 は 体 温 心 拍 数 および 呼 吸 数 な どを 測 定 する 必 要 がある 可 能 であれば 体 重 の 測 定 が 推 奨 される この 時 期 における 体 重 の 増 減 は 健 康 状 態 を 知 るうえで 有 効 な 指 標 となるからである 一 方 この 時 期 は 不 適 切 な 仔 馬 の 取 扱 いに 起 因 す る 事 故 や 外 傷 が 多 発 する この 時 期 の 取 り 扱 いは その 後 の 騎 乗 を 含 めた 人 馬 の 関 係 に 強 い 影 響 を 及 ぼ す 以 上 のように 生 後 1 週 間 は 極 めて 重 要 な 時 期 であると 位 置 付 ける 必 要 がある 母 乳 の 摂 取 生 後 1~2 ヶ 月 齢 までは 母 乳 のみで 成 長 する ため 母 乳 の 摂 取 量 は 成 長 に 大 きな 影 響 を 及 ぼ す 体 重 の 増 減 は 母 乳 の 摂 取 量 の 有 用 な 指 標 とな る 月 齢 1 週 2 週 2ヶ 月 3ヶ 月 4ヶ 月 日 増 量 1.75kg 1.5kg 1.35kg 1.2kg 1kg 月 齢 5ヶ 月 7ヶ 月 8ヶ 月 9ヶ 月 12 ヶ 月 日 増 量 0.9kg 0.8kg 0.7kg 0.6kg 0.5kg 生 後 2 週 間 までは 唯 一 の 栄 養 源 である 母 乳 の 摂 取 量 が 仔 馬 の 健 康 状 態 に 大 きな 影 響 を 及 ぼす 1~ 2 ヶ 月 齢 までは 十 分 量 の 母 乳 が 産 生 されていれば 仔 馬 は 母 乳 のみによって 要 求 栄 養 量 を 満 たすことが 可 能 である 体 重 の 増 減 母 乳 摂 取 量 の 測 定 は 仔 馬 を 管 理 するうえで 極 め て 重 要 であるが 実 際 には 測 定 困 難 である 最 も 簡 便 かつ 確 実 な 方 法 は 毎 日 の 体 重 測 定 である 1 日 当 りの 増 体 量 の 目 安 は 生 後 1 週 までは 1.75kg 1~2 週 は 1.5kg 2~8 週 までは 1.35kg である 増 体 量 は 仔 馬 の 健 康 状 態 の 指 標 となるため 日 々の 継 続 的 な 測 定 が 推 奨 される 新 生 子 期 の 体 重 測 定 は 母 乳 の 摂 取 量 および 健 康 状 態 の 有 用 な 指 標 となる 仔 馬 の 吸 乳 回 数 および 吸 乳 後 の 行 動 母 乳 摂 取 量 をある 程 度 把 握 する 方 法 としては 仔 馬 の 増 体 量 の 他 に その 吸 乳 回 数 と 吸 乳 後 の 行 動 の 観 察 があげられる 生 後 2 週 齢 までの 仔 馬 は 1 時 間 に 7~8 回 吸 乳 す る 仔 馬 は 乳 房 に 接 近 して 鼻 端 あるいは 頭 で 乳 房 を 突 つくことにより 乳 房 を 刺 激 して 泌 乳 を 促 す 十 分 量 の 母 乳 の 摂 取 後 は 横 臥 して 休 息 することが 多 い 一 方 十 分 量 の 母 乳 が 産 生 されていない 場 合 は 繰 り 返 して 鼻 端 あるいは 頭 で 乳 房 を 突 つき 乳 房 か ら 離 れた 後 も 休 息 しようとしない 乳 房 の 状 態 母 乳 摂 取 量 を 把 握 するもう 一 つの 指 標 は 母 馬 の 乳 房 の 状 態 である 泌 乳 量 が 十 分 な 乳 房 はある 程 度 の 張 りがあるが 不 十 分 な 乳 房 は 皺 が 寄 って 十 分 な 張 りが 認 められない 乳 房 の 状 態 を 観 察 する 際 は 乳 頭 の 湿 潤 程 度 にも 注 意 する 必 要 がある 搾 乳 の 実 施 も 泌 乳 量 を 把 握 39

する 方 法 の 一 つである 通 常 1 回 の 搾 乳 によって 1l 以 上 の 採 乳 が 可 能 であるが 100ml 程 度 の 採 乳 量 に 留 まる 場 合 は 仔 馬 は 十 分 量 の 母 乳 を 摂 取 してい ないことが 推 測 される 一 方 泌 乳 量 が 十 分 であっ ても 仔 馬 が 病 気 などによって 食 欲 が 低 下 している 場 合 は 乳 房 が 膨 張 して 乳 頭 が 乾 燥 する 母 乳 の 摂 取 量 が 不 十 分 であると 推 測 された 場 合 は 仔 馬 が 削 痩 する 前 に 人 工 哺 乳 を 併 用 する 必 要 がある ず 仔 馬 も 負 傷 する 可 能 性 が 高 いからである 生 後 2 週 間 が 経 過 する 頃 には 2ha 以 上 の 大 きな 放 牧 地 に 複 数 組 の 親 子 の 放 牧 が 可 能 となる 健 康 であれば 出 産 翌 日 から 小 パドックに 放 牧 する 母 馬 の 乳 房 の 状 態 から 母 乳 摂 取 量 を 推 測 できる 生 後 1 週 間 までの 放 牧 生 後 数 日 間 は 1 組 の 親 子 のみで 暖 かい 時 間 帯 に 1~2 時 間 小 パドックに 放 牧 する 雪 上 では 寝 藁 を 敷 き 仔 馬 の 休 息 場 所 を 確 保 す る 放 牧 の 開 始 時 期 新 生 子 の 出 産 翌 日 の 放 牧 は 仔 馬 の 状 態 を 確 認 し てから 実 施 する 放 牧 は 新 生 子 の 外 部 環 境 への 適 応 を 促 すために 重 要 である 健 康 な 仔 馬 であれば 出 産 翌 日 から 小 パドックでの 放 牧 が 可 能 である 一 方 歩 行 時 にふらつき 母 馬 を 速 歩 で 追 いかけるこ とが 困 難 な 虚 弱 子 の 場 合 少 なくとも 生 後 24 時 間 は 馬 房 内 での 収 容 が 望 ましい 虚 弱 状 態 が 著 しい 場 合 は 放 牧 の 開 始 までに 2~3 日 が 必 要 である 生 後 4~5 日 間 は 他 の 親 子 と 一 緒 に 放 牧 せず 1 組 の 親 子 のみで 実 施 する これは この 時 期 の 母 馬 は 神 経 質 に 仔 馬 を 守 ろうとするため 母 馬 のみなら 気 候 と 放 牧 放 牧 の 実 施 に 際 して 仔 馬 の 健 康 状 態 とともに 重 要 な 要 素 は 天 候 である 新 生 子 は 体 温 の 調 節 機 能 が 未 発 達 であるため 長 時 間 の 寒 冷 下 での 放 牧 によっ て 体 温 が 低 下 しやすい このため 雨 雪 あるいは 強 風 時 などの 放 牧 は 見 合 わせた 方 がよい また 放 牧 地 の 地 面 は 乾 燥 していることが 望 ましく 雪 や 泥 などで 覆 われている 場 合 は 寝 藁 や 乾 草 を 敷 いて 休 息 場 所 を 確 保 する 必 要 がある さらに 仔 馬 用 の 馬 着 を 着 せて 体 温 の 低 下 を 防 止 する 雪 上 では 寝 藁 を 敷 いて 仔 馬 の 休 息 場 所 を 確 保 する 生 後 1 週 齢 までの 放 牧 時 間 仔 馬 の 成 長 には 睡 眠 と 休 息 が 不 可 欠 であり 馬 房 内 では 40% 以 上 の 時 間 を 横 臥 して 休 息 に 費 やして 40

いる このため 生 後 1 週 齢 までの 仔 馬 は 1 時 間 程 度 の 放 牧 が 望 ましい これ 以 上 の 時 間 の 放 牧 では 駐 立 状 態 を 継 続 していることが 多 い 特 に 天 候 が 優 れない 場 合 仔 馬 は 横 臥 しないため このような 放 牧 は 殆 ど 意 味 がない 1~3 月 の 日 高 地 方 の 放 牧 条 件 は 恵 まれたものでは ないため 生 後 3 日 目 までは 暖 かい 時 間 帯 に 1~2 時 間 小 パドックに 放 牧 する 程 度 で 十 分 である その 後 は 状 況 に 応 じて 放 牧 時 間 を 延 長 する 放 牧 と 仔 馬 の 成 長 仔 馬 の 成 長 には 適 度 な 運 動 が 重 要 であるため こ の 時 期 の 放 牧 は 疲 労 とストレスを 軽 減 させるととも に 効 果 的 な 運 動 を 実 施 できることが 理 想 である 仔 馬 の 行 動 は 吸 乳 睡 眠 および 自 由 運 動 の 3 要 素 が 基 本 であり それぞれが 重 要 な 役 割 を 担 ってい る 特 に 3 ヶ 月 齢 までの 仔 馬 の 成 長 は その 後 の 成 長 に 比 較 して 急 激 であり 成 長 ホルモンが 豊 富 に 分 泌 されている 成 長 ホルモンの 分 泌 は 母 乳 からの 栄 養 良 質 の 睡 眠 そして 適 度 な 運 動 によって 亢 進 す るため 適 切 な 放 牧 環 境 の 整 備 が 重 要 である この ため 厳 冬 期 の 日 高 地 方 では 生 後 4 日 目 以 降 から 2 週 間 程 度 まで パドック 放 牧 と 馬 房 内 休 息 を 繰 り 返 すことが 推 奨 される 以 下 に 厳 冬 期 における 放 牧 例 を 示 す 1 8 時 に 放 牧 早 朝 の 放 牧 でフレッシュ ハッピーになる 2 11 時 に 馬 房 に 収 容 疲 労 した 頃 に 収 容 して 休 息 させる 3 14 時 に 再 放 牧 再 び 放 牧 し フレッシュな 状 態 で 遊 ばせる 416 時 に 馬 房 に 収 容 仔 馬 の 成 長 にとって 放 牧 地 での 運 動 は 極 めて 重 要 である 仔 馬 の 正 常 な 発 育 に 睡 眠 は 不 可 欠 であり 放 牧 と 馬 房 内 休 息 を 繰 り 返 すことが 推 奨 される 41

5) 新 生 子 の 各 種 疾 病 虚 弱 子 虚 弱 子 は 仔 馬 の 適 応 障 害 症 候 群 (NMS:Neonatal maladjustment syndrome)と 呼 ばれている この 疾 患 は 早 産 帝 王 切 開 難 産 早 期 胎 盤 離 脱 (レッド バッグ) 胎 子 期 の 成 熟 異 常 あるいは 子 宮 内 感 染 など によって 発 症 する 妊 娠 後 期 あるいは 分 娩 時 に こ れらの 状 態 に 陥 った 場 合 脳 の 低 酸 素 状 態 が 誘 発 さ れて 虚 弱 子 となる 酸 素 は 体 内 のすべての 細 胞 に 必 要 であるため 多 くの 組 織 に 障 害 が 起 こる 特 に 脳 障 害 による 異 常 行 動 が 最 も 明 らかである また 障 害 程 度 は 低 酸 素 状 態 に 陥 っていた 時 間 に 応 じて 異 なる 症 状 この 疾 患 を 発 症 した 新 生 子 の 外 貌 は 小 型 絹 の ような 細 かい 被 毛 による 被 覆 あるいは 濃 い 色 調 を 帯 びた 舌 が 特 徴 である また 出 産 直 後 は 異 常 に 気 付 かないが 起 立 困 難 や 起 立 までに 時 間 を 要 するこ と 乳 房 の 探 査 が 困 難 であること あるいは 吸 乳 姿 勢 を 維 持 できないことにより 初 めて 明 らかとなる 重 症 例 では 脳 の 損 傷 程 度 が 著 しく 突 発 的 な 痙 攣 横 臥 状 態 での 遊 泳 運 動 頭 頚 の 振 り 回 し 突 発 的 に 駆 け 出 して 壁 に 激 突 するなどの 異 常 行 動 が 観 察 され る これらの 症 状 は 生 後 3 時 間 から 遅 くても 24 時 間 以 内 に 発 現 する また 発 作 や 痙 攣 による 呼 吸 困 難 に 起 因 する 犬 の 遠 吠 え あるいは 豚 のような 鳴 き 声 を 発 することから 吠 える 仔 馬 (Barker foals) といわれる 母 馬 の 認 識 が 困 難 となり 馬 房 内 をふ らつくことから さ 迷 う 仔 馬 (Wanderers) ある いは 歩 行 時 にふらつくことから のろまの 仔 馬 (Dummy foals) など 様 々な 名 称 で 呼 ばれている この 疾 患 に 対 する 処 置 は 確 実 に 初 乳 を 給 与 して 馬 体 を 保 温 することである また 発 作 および 痙 攣 を 起 こして 馬 房 内 を 歩 き 回 る 場 合 は 寝 藁 を 深 く 敷 くとともに 馬 房 の 壁 の 周 りに 梱 包 された 寝 藁 を 置 く さらに 四 肢 に 保 温 を 兼 ねたバンテージを 装 着 することにより 衝 突 時 の 受 傷 を 予 防 する 重 症 例 に 対 しては 獣 医 師 によって 発 作 に 対 する 鎮 静 処 置 脱 水 を 含 む 循 環 系 の 改 善 感 染 症 や 膀 胱 破 裂 の 予 防 処 置 が 実 施 される 発 作 時 の 受 傷 を 予 防 するため 梱 包 された 寝 藁 で 囲 む 四 肢 にバンテージを 装 着 して 受 傷 を 予 防 する 新 生 子 溶 血 性 貧 血 新 生 子 溶 血 性 貧 血 (NI:Neonatal Isoerythrolysis) は 新 生 子 黄 疸 とも 呼 ばれている 新 生 子 の 赤 血 球 ( 抗 原 )に 対 する 抗 体 を 母 馬 が 保 有 し その 抗 体 を 含 有 する 初 乳 の 摂 取 によって 発 症 する 母 馬 由 来 の 抗 体 が 新 生 子 の 赤 血 球 を 異 物 と 認 識 して 攻 撃 し 溶 血 させた 結 果 貧 血 および 黄 疸 が 引 き 起 こされる 本 疾 患 の 発 症 率 は 0.5% 以 下 とされている 症 状 この 疾 病 において 貧 血 に 起 因 する 症 状 が 認 められ る 症 状 の 発 現 時 間 は 仔 馬 の 初 乳 の 吸 収 状 態 と 母 馬 の 抗 体 の 保 有 程 度 によって 差 異 がみられる 早 く て 生 後 8 時 間 遅 いものでは 生 後 4 日 目 までに 発 症 す る まず 呼 吸 数 が 上 昇 して 粘 膜 が 白 色 調 を 呈 し 元 気 消 沈 して 哺 乳 回 数 が 減 少 する さらに 症 状 が 進 行 した 場 合 は 粘 膜 が 黄 色 を 呈 して 赤 色 尿 が 認 めら れるとともに 虚 脱 状 態 に 陥 ることから 獣 医 師 の 42

処 置 が 必 要 となる 治 療 法 輸 血 の 実 施 が 第 一 選 択 となる ユニバーサルドナ ー( 溶 血 を 誘 発 させる 抗 体 を 保 有 していない 馬 ハ ーフリンガー 種 に 多 い)の 血 液 であれば 全 血 輸 血 が 可 能 である 母 馬 の 血 液 を 輸 血 する 場 合 は 血 漿 と 血 球 の 分 離 処 置 が 必 要 となる これは 母 馬 の 血 漿 中 には 初 乳 と 同 様 抗 体 が 含 有 されているからであ る その 他 の 処 置 は 貧 血 および 黄 疸 の 対 症 療 法 で ある 予 防 法 過 去 に 出 産 した 仔 馬 が 溶 血 性 貧 血 を 発 症 している 場 合 その 母 馬 が 出 産 した 仔 馬 には 生 後 24~36 時 間 まで 口 カゴを 装 着 して 初 乳 を 摂 取 させてはならな い また 母 馬 からの 初 乳 の 代 用 として 冷 凍 保 存 した 初 乳 を 投 与 する 出 産 前 に 発 症 原 因 となるAaおよびQq 抗 体 の 検 出 検 査 が 実 施 されているが その 精 度 は 高 くない ま た 仔 馬 が 初 乳 を 吸 乳 するまでに 仔 馬 の 血 液 と 初 乳 を 混 合 する 凝 集 試 験 も 実 施 されているが この 精 度 も 低 い 早 期 に 発 見 できれば 治 療 によって 十 分 な 回 復 が 見 込 めるため 初 乳 の 摂 取 後 の 注 意 深 い 仔 馬 の 観 察 が 最 良 の 対 処 法 である 初 乳 の 摂 取 後 に 元 気 消 沈 口 腔 粘 膜 の 帯 白 黄 色 化 血 色 素 尿 の 排 出 な どが 認 められた 場 合 は 直 ちに 獣 医 師 に 連 絡 する 必 要 がある 新 生 子 溶 血 性 貧 血 ( 左 )と 正 常 ( 右 )な 口 粘 膜 胎 便 の 停 滞 症 状 胎 便 の 停 滞 は 牝 馬 に 比 較 して 骨 盤 が 狭 い 牡 馬 に 発 症 しやすい 胎 便 の 停 滞 を 起 こしている 新 生 子 は 背 中 をアーチ 状 にして 尾 を 挙 上 し 胎 便 の 排 出 姿 勢 を 頻 繁 に 取 ることから 容 易 に 気 づく 軽 症 例 では 不 快 感 を 呈 して 馬 房 内 を 歩 き 回 ったり 落 ち 着 きがな かったりする 一 方 重 症 例 では 疝 痛 様 症 状 を 呈 し 前 掻 き 横 臥 などの 苦 悶 症 状 が 認 められる 胎 便 の 停 滞 では 頻 繁 に 排 尿 姿 勢 を 呈 する 腸 管 の 蠕 動 運 動 を 促 進 するため 初 乳 を 十 分 に 摂 取 させる その 後 も 胎 便 が 排 出 されない 場 合 は グ リセリン リン 酸 ナトリウムあるいは 流 動 パラフィ ンによる 浣 腸 処 置 を 実 施 する また 初 回 の 浣 腸 か ら 30 分 間 は 2 回 目 の 処 置 を 実 施 してはならない 浣 腸 後 に 症 状 が 悪 化 する 場 合 や 2 回 目 の 実 施 後 も 胎 便 排 出 が 認 められない 場 合 は 獣 医 師 に 連 絡 する 必 要 がある 臍 帯 の 異 常 ( 尿 膜 管 遺 残 ) 症 状 胎 子 期 には 膀 胱 から 胎 盤 に 通 ずる 管 が 存 在 し こ れを 経 由 して 尿 が 尿 膜 腔 に 排 出 される この 管 は 尿 膜 管 といわれ 通 常 は 分 娩 後 に 臍 帯 が 切 れる 際 臍 帯 内 の 血 管 とともに 閉 鎖 する しかし 何 らかの 理 由 によって 閉 鎖 しない 場 合 は 尿 が 臍 帯 から 漏 出 す る これが 尿 膜 管 遺 残 であり 臍 帯 感 染 の 誘 発 要 因 となる 臍 帯 感 染 が 悪 化 した 場 合 は 関 節 炎 肺 炎 下 痢 敗 血 症 などが 引 き 起 こされる 可 能 性 がある 尿 膜 管 遺 残 が 認 められる 症 例 においては 臍 帯 周 囲 の 被 毛 が 尿 で 濡 れた 状 態 が 認 められることから 比 較 的 容 易 に 診 断 できる 臍 帯 感 染 あるいはこれに 起 因 する 感 染 症 を 予 防 43

するためには 抗 生 物 質 の 投 与 が 必 要 となる 感 染 症 が 誘 発 されなかった 場 合 は 自 然 閉 鎖 するが 治 癒 しない 場 合 は 外 科 手 術 が 適 応 される 先 天 性 口 蓋 裂 症 状 口 蓋 裂 は 先 天 性 疾 患 の 一 つであり 軟 口 蓋 の 奇 形 によって 口 腔 と 鼻 腔 が 連 絡 している 状 態 である 口 蓋 裂 をもつ 新 生 子 は 吸 乳 後 に 鼻 孔 からミルクが 滴 下 しているため 容 易 に 確 認 できる 確 定 診 断 は 内 視 鏡 検 査 によって 実 施 する 母 乳 を 誤 嚥 するために 誤 嚥 性 肺 炎 を 発 症 しやすく 外 科 的 手 術 が 実 施 されることもあるが 予 後 は 不 良 である 屈 腱 拘 縮 に 起 因 する 屈 曲 肢 勢 は 先 天 性 と 生 後 に 発 症 する 後 天 性 のものに 区 分 され 後 者 はクラブフ ットに 代 表 される ここでは 先 天 性 の 屈 曲 肢 勢 に 関 して 説 明 する 発 生 原 因 および 症 状 主 に 深 指 屈 腱 が 付 着 する 蹄 骨 あるいは 浅 指 屈 腱 が 付 着 する 第 1 および 第 2 指 骨 の 牽 引 によって 屈 曲 が 起 こるため 腱 拘 縮 との 病 名 をもつ 実 際 には 屈 腱 のみの 拘 縮 ではなく 筋 肉 および 腱 の 複 合 組 織 の 拘 縮 により 関 節 の 屈 曲 が 引 き 起 こされる 球 節 が 挙 上 する 程 度 の 軽 症 例 から 屈 曲 した 球 節 前 面 の 接 地 によって 自 力 での 起 立 が 困 難 な 重 症 例 まで 幅 広 い 症 状 が 認 められる 腱 拘 縮 の 原 因 は 明 らかにさ れていないが 先 天 性 のものは 胎 子 期 の 異 常 胎 位 妊 娠 時 の 母 馬 の 不 適 切 な 栄 養 管 理 あるいは 遺 伝 的 な 要 因 の 関 与 が 示 唆 されている また 難 産 や 大 型 仔 馬 の 場 合 にも 発 症 しやすいといわれている 正 常 口 蓋 裂 口 蓋 裂 の 確 定 診 断 は 内 視 鏡 検 査 によって 実 施 する 肋 骨 骨 折 発 生 原 因 難 産 などの 分 娩 時 のトラブル あるいは 大 型 の 新 生 子 の 場 合 は 産 道 の 通 過 時 に 肋 骨 を 骨 折 すること がある また 分 娩 時 の 人 為 的 な 介 助 における 力 任 せの 牽 引 によっても 発 症 することがあるため 注 意 が 必 要 である 症 状 肋 骨 々 折 を 発 症 している 新 生 子 は 運 動 を 嫌 い 呼 吸 が 浅 速 になり 吸 気 時 に 低 いうめき 音 を 発 する こともある 肋 骨 々 折 が 疑 われる 場 合 は 肋 部 の 優 しい 触 診 によって 骨 折 部 位 を 確 認 する 肋 骨 の 骨 折 端 が 腸 管 などの 内 臓 を 損 傷 させる 可 能 性 があるた め 骨 折 側 を 下 方 にした 横 臥 は 回 避 する 肢 勢 異 常 1 屈 腱 拘 縮 に 起 因 する 屈 曲 肢 勢 重 症 例 では 屈 曲 した 球 節 の 前 面 が 接 地 する 治 療 はオキシテトラサイクリンの 投 与 や 屈 曲 の 程 度 によってはギプスなどによる 固 定 である オキ シテトラサイクリンは 筋 収 縮 を 誘 発 するカルシウム イオンをキレート 化 させ 筋 線 維 へのカルシウムイ オンの 流 入 を 抑 制 することにより 筋 線 維 および 腱 線 維 を 弛 緩 させる 一 方 患 肢 を 固 定 するギプスな どの 長 時 間 にわたる 装 着 は 浮 腫 や 擦 過 傷 を 引 き 起 こすため 最 低 でも 12 時 間 毎 に 取 り 替 える 必 要 があ る 44

重 症 例 では ギプスによる 固 定 が 必 要 となる 2 屈 腱 弛 緩 に 起 因 する 屈 曲 肢 勢 発 生 原 因 および 症 状 屈 腱 の 弛 緩 に 起 因 する 屈 曲 肢 勢 は 先 天 的 に 認 め られる 基 本 的 に 起 立 直 後 の 新 生 子 に 観 察 される 屈 腱 弛 緩 は 異 常 ではない 球 節 が 軽 度 沈 下 する 軽 症 例 から 蹄 尖 が 地 面 から 浮 遊 して 球 節 の 掌 側 面 が 接 地 する 重 症 例 まで 幅 広 い 症 状 が 認 められる 前 肢 に 比 較 して 後 肢 での 発 症 が 多 く また 未 成 熟 な 新 生 子 に 多 発 するといわれている 殆 どの 場 合 は 特 別 な 処 置 を 実 施 することなく 生 後 3~5 日 以 内 に 自 然 治 癒 する しかし 重 症 例 で は 球 節 の 褥 創 を 予 防 するために 乾 包 帯 を 装 着 し 馬 房 の 寝 藁 を 厚 く 敷 く 必 要 がある また 蹄 踵 と 蹄 球 を 保 護 するため 蹄 踵 部 にエクステンション 蹄 鉄 を 装 着 する 場 合 もある 新 生 子 において 屈 腱 の 弛 緩 による 球 節 の 沈 下 は 稀 ではない 多 くの 場 合 は 生 後 3 日 ~5 日 以 内 に 自 然 治 癒 する 3 新 生 子 の 肢 軸 異 常 先 天 的 な 腕 節 部 飛 節 部 あるいは 球 節 部 の 肢 軸 異 常 は 未 成 熟 な 新 生 子 に 認 められる 傾 向 があり 腱 の 弛 緩 を 併 発 している 場 合 も 少 なくない 新 生 子 の 多 くは 胸 前 が 狭 く 脚 が 長 い 体 型 をしてい る このような 体 型 では 体 重 を 支 えるために 両 腕 節 の 外 反 (X 脚 ) あるいは 両 飛 節 の 外 反 (X 脚 ) 姿 勢 になりやすい また 虚 弱 による 外 反 姿 勢 は 力 学 的 に 正 常 姿 勢 といっても 過 言 ではなく 多 くの 場 合 は 成 長 に 伴 って 改 善 される 一 方 腕 節 あるい は 飛 節 の 内 反 に 対 しては エクステンション 蹄 鉄 を 用 いる 装 蹄 処 置 や 外 科 的 手 術 による 矯 正 が 必 要 とな る また 内 反 を 呈 する 場 合 は 反 対 側 の 肢 が 外 反 していることが 多 い 手 根 あるいは 足 根 関 節 の 構 成 骨 が 形 成 不 全 によっ て 楔 状 を 呈 し 内 外 の 成 長 が 不 均 衡 になっている 場 合 あるいは 周 囲 靭 帯 の 弛 緩 に 起 因 している 場 合 が あることから X 線 検 査 による 診 断 が 不 可 欠 である 45

吸 運 動 が 不 十 分 になる この 呼 吸 状 態 の 観 察 により 重 症 度 を 把 握 できる 症 状 は 膀 胱 の 損 傷 程 度 に 依 存 して 様 々であり 少 量 ながら 排 尿 する 場 合 もある 一 方 尿 が 貯 留 しな い 重 度 の 損 傷 を 受 けている 場 合 排 尿 は 認 められな い 通 常 出 生 後 2~3 日 以 内 に 異 常 に 気 づく 外 科 手 術 が 不 可 欠 であり 早 期 発 見 早 期 治 療 に よって 完 全 治 癒 を 期 待 できる 両 腕 節 の 外 反 (X 脚 : 左 )と 飛 節 の 左 内 反 右 外 反 ( 右 ) 下 眼 瞼 の 内 反 発 生 原 因 および 症 状 下 眼 瞼 の 内 反 は 先 天 性 疾 患 であるが 分 娩 時 に 発 症 する 可 能 性 もある この 疾 病 により 睫 毛 (まつ げ)が 眼 球 に 接 触 して 角 膜 が 損 傷 し 重 症 例 では 角 膜 潰 瘍 に 進 行 することもある 流 涙 によって 気 付 き 眼 瞼 検 査 によって 確 定 診 断 する 軽 症 例 では 指 によって 下 眼 瞼 を 外 反 させて 保 持 することにより 治 癒 する 場 合 もある 処 置 後 に 再 び 内 反 する 場 合 は 縫 合 によって 下 眼 瞼 を 外 反 させ 2 週 間 程 度 にわたって 固 定 する 必 要 がある 膀 胱 破 裂 発 生 原 因 膀 胱 破 裂 は 娩 出 時 に 発 症 することが 多 い これ は 狭 い 産 道 の 通 過 時 における 膀 胱 圧 迫 が 原 因 であ る 胎 子 期 に 膀 胱 から 胎 盤 へ 尿 を 排 出 させる 尿 膜 管 は 通 常 分 娩 後 に 閉 鎖 するが この 尿 膜 管 が 分 娩 前 に 閉 鎖 する 場 合 がある このことにより 膀 胱 が 尿 で 充 満 され 産 道 の 通 過 時 に 圧 迫 されやすい また 牝 馬 に 比 較 して 牡 馬 に 多 発 する 症 状 背 中 をアーチ 状 にして 尾 を 挙 上 し 胎 便 を 排 出 し ようと 踏 ん 張 る 姿 勢 あるいは 腹 囲 の 膨 満 状 態 が 胎 便 停 滞 と 酷 似 しているため 類 症 鑑 別 が 必 要 である 新 生 子 が 初 乳 を 大 量 に 摂 取 し 破 れた 膀 胱 から 尿 が 漏 れて 腹 腔 内 に 貯 留 した 場 合 横 隔 膜 が 圧 迫 され 呼 膀 胱 破 裂 は 早 期 発 見 早 期 手 術 が 必 要 である ( 膀 胱 破 裂 に 対 する 術 後 に 尿 道 カテーテルが 装 着 されている 仔 馬 ) ヘルニア 1 臍 ヘルニア 症 状 臍 帯 周 辺 の 腹 壁 欠 損 に 起 因 し 腸 管 の 一 部 が 腹 壁 から 脱 出 した 状 態 である 本 症 例 の 診 断 に 際 しては 感 染 による 臍 部 の 腫 脹 との 類 症 鑑 別 が 必 要 である 臍 ヘルニアは 皮 下 に 柔 らかい 腸 管 が 触 知 できるが 感 染 による 腫 脹 は 全 域 に 硬 結 感 が 認 められ 触 診 を 嫌 うことが 多 い 通 常 腹 壁 から 脱 出 した 腸 管 を 触 知 しても 疼 痛 を みせず 容 易 に 腹 腔 内 に 還 納 できる 疼 痛 を 呈 する 場 合 や 還 納 できない 場 合 は 外 科 手 術 が 適 応 される また 外 貌 上 の 問 題 から 外 科 手 術 が 実 施 されること もある 一 方 2~3cm の 大 きさのヘルニアの 場 合 は 自 然 治 癒 することが 多 い 46

臍 ヘルニアは 臍 部 感 染 による 腫 脹 との 鑑 別 が 必 要 である 軽 症 例 では 自 然 治 癒 する 場 合 が 多 い 2 陰 嚢 ヘルニア 発 生 原 因 および 症 状 陰 嚢 ヘルニアは 腸 管 が 鼠 径 輪 を 通 過 して 陰 嚢 内 に 脱 出 した 状 態 である 当 然 牡 馬 のみに 発 症 する が 鼠 径 輪 が 大 きい 場 合 に 発 症 しやすいと 考 えられ ている 腹 壁 から 脱 出 した 腸 管 を 触 知 しても 疼 痛 を 呈 さず 容 易 に 腹 腔 内 に 還 納 できる 場 合 は 精 巣 を 下 方 に 保 持 しながら ゆっくり 上 方 の 腹 腔 内 に 腸 管 を 還 納 す る この 処 置 を 1 日 に 数 回 繰 り 返 すことにより 2 ヶ 月 以 内 に 治 癒 する 場 合 もある 一 方 疼 痛 を 呈 する 場 合 還 納 できない 場 合 陰 嚢 内 で 腸 管 が 膨 張 して 硬 結 感 が 触 知 される 場 合 は 外 科 手 術 が 適 応 される また 手 術 の 際 には 同 時 に 去 勢 術 の 実 施 が 推 奨 される 特 に 総 鞘 膜 の 破 損 に 対 して 鼠 径 輪 を 閉 鎖 する 必 要 がある 場 合 は ヘル ニアの 還 納 処 置 と 去 勢 術 の 実 施 が 不 可 欠 である 総 鞘 膜 の 破 損 は 後 天 性 であると 考 えられている 47

6) 育 子 放 棄 育 子 放 棄 の 発 生 率 は 1% 未 満 であり しばしば 初 産 に 認 められ 以 下 の 3 つのタイプに 分 類 される 1 仔 馬 を 怖 がる 2 仔 馬 自 体 は 容 認 するが 授 乳 を 嫌 う 3 授 乳 時 のみならず 常 に 仔 馬 を 容 認 しない 育 子 放 棄 が 起 こった 場 合 は 唯 一 の 栄 養 源 である 母 乳 の 代 用 すなわち 人 工 哺 乳 あるいは 乳 母 のいずれかを 選 択 する また 虐 待 程 度 が 激 しい 場 合 は 母 馬 の 攻 撃 によって 仔 馬 が 重 篤 な 状 態 に 陥 る 危 険 性 があるため 早 急 に 母 子 を 離 別 させる 必 要 が ある て 哺 乳 する この 方 法 により 人 から 乳 を 与 えられ ているのではなく 母 馬 の 乳 首 から 得 ている 意 識 を 仔 馬 にもたせることが 可 能 である また 仔 馬 の 吸 乳 刺 激 によって 母 馬 に 母 性 本 能 が 誘 発 され 泌 乳 量 を 増 加 させる 効 果 も 期 待 できる 仔 馬 の 舌 と 硬 口 蓋 の 間 に 経 口 投 薬 器 の 先 端 を 挟 むことにより 陰 圧 状 態 になるため 仔 馬 自 身 の 意 思 による 吸 い 込 みが 可 能 となり 誤 嚥 の 危 険 性 が 低 下 する 人 工 哺 乳 はある 程 度 の 費 用 が 必 要 であり 夜 間 の 哺 乳 などの 労 働 力 も 多 大 である さらに 母 馬 が 存 在 しないことによる 仔 馬 の 精 神 面 を 考 慮 した 場 合 人 工 哺 乳 より 乳 母 の 導 入 が 推 奨 される 人 口 哺 乳 は 哺 乳 瓶 よりバケツでの 投 与 が 推 奨 される 育 子 放 棄 がエスカレートした 場 合 は 虐 待 へ 進 展 する 人 工 哺 乳 の 実 施 人 工 哺 乳 を 実 施 する 場 合 哺 乳 瓶 による 投 与 の 継 続 は 仔 馬 の 馬 社 会 性 が 欠 如 しやすく しつけ 面 で のトラブルが 発 生 しやすい このため 可 及 的 速 や かなバケツによる 投 与 への 変 更 が 推 奨 される 人 工 哺 乳 の 利 点 と 欠 点 利 点 乳 母 に 比 較 して 費 用 を 軽 減 できる 欠 点 代 用 乳 の 費 用 (30~40 万 円 ) 多 大 な 労 力 (2 時 間 毎 の 授 乳 ) 仔 馬 の 馬 社 会 性 の 欠 如 仔 馬 の 反 対 側 から 経 口 投 薬 器 を 用 いて 哺 乳 する 母 馬 の 乳 量 が 少 ないため 補 助 的 な 人 工 哺 乳 を 実 施 する 場 合 は 仔 馬 の 反 対 側 から 経 口 投 薬 器 を 用 い 48

乳 母 の 導 入 乳 母 の 導 入 は 高 額 な 費 用 が 必 要 であり また 乳 母 と 仔 馬 との 相 性 も 問 題 となる 乳 母 導 入 の 利 点 と 欠 点 利 点 仔 馬 の 馬 社 会 性 の 形 成 が 可 能 労 力 が 不 要 欠 点 費 用 が 高 額 (80~100 万 円 ) 乳 母 の 手 配 が 困 難 乳 母 と 仔 馬 との 相 性 の 問 題 乳 母 に 孤 児 を 許 容 させる 方 法 乳 母 に 孤 児 を 許 容 させることは 極 めて 困 難 なこ とである 乳 母 および 孤 児 はもちろん 取 扱 いスタ ッフの 安 全 確 保 が 最 も 重 要 である 乳 母 を 導 入 する 際 胎 子 の 産 道 通 過 に 類 似 した 刺 激 を 子 宮 頸 管 に 与 えることにより 母 性 本 能 を 誘 発 できる つまり 乳 母 を 枠 馬 に 保 定 し 用 手 によっ て 子 宮 頸 管 を 刺 激 する 孤 児 は 空 腹 であれば 比 較 的 容 易 に 乳 房 に 接 近 し 吸 乳 を 試 みる 一 方 乳 母 が 孤 児 を 許 容 するために は 時 間 を 要 する 場 合 が 多 い 以 下 に 乳 母 と 孤 児 を 対 面 させる 推 奨 法 を 示 す 乳 母 と 孤 児 を 対 面 させる 推 奨 法 馬 房 内 に 乳 母 の 移 動 を 制 限 する 簡 易 枠 場 を 設 置 する 乳 母 を 枠 場 内 に 保 定 する 馬 房 内 に 仔 馬 のみが 通 過 できる 高 さに 鉄 パイ プを 通 し 仔 馬 専 用 のスペースを 作 る 乳 母 に 鼻 捻 保 定 および 鎮 静 処 置 を 実 施 する 乳 母 の 鼻 孔 周 囲 および 孤 児 の 顔 や 尾 の 周 囲 に ペパーミントやメンソールなどの 刺 激 臭 をも つ 軟 膏 を 塗 布 し 嗅 覚 を 麻 痺 させる 孤 児 に 対 しては 乳 母 自 身 の 仔 馬 の 皮 膚 の 匂 い や 糞 あるいは 乳 母 自 身 の 糞 尿 母 乳 を 塗 り 込 む 馬 房 内 に 簡 易 枠 場 を 設 置 し 乳 母 の 移 動 を 制 限 する 馬 房 内 に 鉄 パイプを 通 し 仔 馬 専 用 のスペースを 作 る 乳 母 は 対 面 から 早 くて 12 時 間 一 般 的 には 3 日 以 内 に 孤 児 を 許 容 する 孤 児 との 対 面 から 5 日 以 上 経 過 しても 乳 母 が 許 容 しない 場 合 は 当 該 乳 母 をあき らめる 乳 母 の 気 性 によって 孤 児 の 許 容 が 困 難 な 場 合 は 乳 母 の 母 性 本 能 を 覚 醒 させるため 乳 母 と 仔 馬 を 収 容 した 馬 房 の 前 に 他 馬 を 連 れて 来 る 方 法 が 推 奨 さ れる この 方 法 により 他 馬 から 孤 児 を 守 ろうとす る 母 性 本 能 の 覚 醒 を 期 待 できる 特 に 牡 馬 を 連 れ て 来 ることは 効 果 的 であるといわれている 同 様 に 他 の 親 子 と 一 緒 に 放 牧 することによっても 他 の 母 馬 の 威 嚇 から 孤 児 を 保 護 する 母 性 本 能 の 覚 醒 を 期 待 できる 49

他 の 母 馬 から 孤 児 を 保 護 する 母 性 本 能 の 覚 醒 を 期 待 できる ~10lの 泌 乳 量 となったことを 確 認 後 乳 母 として 導 入 する しかし 必 ずしも 泌 乳 量 が 十 分 ではない 可 能 性 もあり この 場 合 は 補 助 的 な 人 工 哺 乳 の 併 用 が 推 奨 される ホルモン 処 置 に 関 わる 費 用 は 乳 母 の 導 入 や 人 工 哺 乳 による 飼 育 に 比 較 して 安 価 であり この 方 法 は 経 済 的 な 効 果 および 仔 馬 の 精 神 的 な 安 定 を 満 たす 効 果 を 期 待 できる また 乳 母 として 導 入 してから 30 日 後 には 排 卵 が 確 認 され その 後 の 妊 娠 も 可 能 であ ったことから 前 年 の 未 交 配 馬 あるいは 不 受 胎 馬 の 活 用 が 推 奨 される 空 胎 馬 に 対 するホルモン 剤 の 投 与 による 泌 乳 の 誘 発 空 胎 馬 に 対 するホルモン 剤 の 投 与 による 泌 乳 の 誘 発 方 法 1 プロジェステロンとエストラジオールを 14 日 間 投 与 する 2 1の 処 置 7 日 目 に プロスタグランジンおよ び 高 濃 度 のエストラジオールを 投 与 する 3 1の 処 置 7 日 目 から スルピリド(ドパミン D2 受 容 体 拮 抗 薬 )を 21 日 目 まで 投 与 する 4 1の 処 置 11 日 目 から 4 日 間 搾 乳 を 実 施 し 1 日 の 搾 乳 量 が 5l 以 上 となった 場 合 乳 母 とし て 導 入 できる ホルモン 処 置 前 ( 左 )と 処 置 13 日 後 の 乳 房 ( 右 ) 日 高 育 成 牧 場 では 経 産 空 胎 馬 にホルモン 剤 を 投 与 して 泌 乳 を 誘 発 させることにより 乳 母 を 導 入 す る 方 法 を 実 施 している ホルモン 剤 の 投 与 開 始 から 4~7 日 で 泌 乳 が 可 能 となる その 後 1 日 に 5~7 回 の 搾 乳 を 3~4 日 継 続 することにより 1 日 当 り 5 50