資 料 2 放 送 分 野 におけるコンテンツ 流 通 の 概 況 第 1 市 場 の 概 況 1 市 場 規 模 映 像 コンテンツの 流 通 規 模 は, 近 年, 約 5 兆 円 で 停 滞 している 映 像 コンテンツ 市 場 の 流 通 メディア 別 の 内 訳 は, 新 興 のインターネット 配 信 が 占 める 割 合 が 平 成 20 年 度 においても 1パーセント 程 度 であり( 図 表 1), 引 き 続 き, 放 送 による 流 通 が 占 める 割 合 が 非 常 に 高 い 図 表 1 映 像 コンテンツの 流 通 メディア 別 の 市 場 規 模 出 典 : 財 団 法 人 デジタルコンテンツ 協 会 デジタルコンテンツ 白 書 より 作 成 また, 一 次 流 通 1 のメディアにより 分 類 した 映 像 コンテンツの 流 通 状 況 ( 図 表 2,3)を 見 ると, 一 次 流 通 市 場 において 大 きなシェアを 占 める 地 上 テレビ 番 組 は, 他 の 映 像 コンテンツ と 比 して, 金 額 ベース 及 び 流 通 量 ベースのいずれにおいてもマルチユース 2 が 進 んでいない 図 表 2 メディア ソフト 別 の 市 場 規 模 226 678 1,984 2,731 3,508 合 計 :35,067 合 計 :13,578 25,940 地 上 テレビ 番 組 衛 星 テレビ 番 組 ビデオソフト 映 画 ソフト ネットオリジナル CATV 番 組 3,668 567 4,154 5,189 映 画 ソフト 地 上 テレビ 番 組 衛 星 テレビ 番 組 ビデオソフト 一 次 流 通 市 場 ( 単 位 : 億 円 ) マルチユース 市 場 ( 単 位 : 億 円 ) 出 典 : 総 務 省 情 報 通 信 政 策 研 究 所 メディア ソフトの 制 作 及 び 流 通 の 実 態 に 関 する 調 査 研 究 報 告 書 平 成 21 年 9 月 より 作 成 1 コンテンツの 制 作 に 際 して, 最 初 から 流 通 させることを 想 定 したメディア 上 での 流 通 を 一 次 流 通, 最 初 に 流 通 させることを 想 定 したメディアとは 別 のメディア 上 での 流 通 を マルチユース という 2 前 掲 脚 注 1 参 照 1
図 表 3 メディア ソフト 別 の 流 通 規 模 71 8 1,469 地 上 テレビ 番 組 衛 星 テレビ 番 組 その 他 21.6 41.1 2.4 48.5 衛 星 テレビ 番 組 映 画 ソフト 地 上 テレビ 番 組 その 他 一 次 流 通 市 場 ( 単 位 : 億 時 間 ) マルチユース 市 場 ( 単 位 : 億 時 間 ) 出 典 : 総 務 省 情 報 通 信 政 策 研 究 所 メディア ソフトの 制 作 及 び 流 通 の 実 態 に 関 する 調 査 研 究 報 告 書 平 成 21 年 9 月 より 作 成 2 放 送 コンテンツ 市 場 の 構 造 放 送 コンテンツの 需 要 者 である 放 送 事 業 者 等 は, 地 上 波 については 参 入 退 出 がなく 事 業 者 数 に 変 動 がないが, 衛 星 放 送 については 参 入 退 出 があるにもかかわらず 事 業 者 数 が 減 尐 している( 図 表 4) 図 表 4 民 間 放 送 事 業 者 数 の 推 移 140 民 間 放 送 事 業 者 数 120 100 80 60 40 20 124 19 118 37 114 37 105 37 105 37 107 34 107 30 104 26 127 103 23 96 23 テレビジョン 放 送 一 般 衛 星 放 送 特 別 衛 星 放 送 0 年 度 H11 H12 H13 H14 H15 H16 H17 H18 H19 H20 出 典 : 総 務 省 平 成 21 年 版 情 報 通 信 白 書 より 作 成 映 像 コンテンツの 制 作 調 達 に 係 る 費 用 の 合 計 額 である 制 作 金 額 で 見 た 場 合,コンテンツ の 購 入 者 としては, 地 上 放 送 事 業 者 が 大 きな 地 位 を 占 めている( 図 表 5 左 ) また, 制 作 量 ( 時 間 )で 見 た 場 合, 放 送 事 業 者 数 が 多 い 衛 星 テレビ 番 組 としての 需 要 が 大 きい( 図 表 5 右 ) 2
図 表 5 メディア ソフトの 制 作 規 模 260 294 1,073 2,145 18,609 地 上 テレビ 番 組 衛 星 テレビ 番 組 映 画 ソフト ビデオソフト CATV 番 組 322,511 1,471 98,593 447 衛 星 テレビ 番 組 地 上 テレビ 番 組 CATV 番 組 750,152 ビデオソフト 映 画 ソフト 制 作 金 額 ( 単 位 : 億 円 ) 制 作 量 ( 単 位 : 時 間 ) 出 典 : 総 務 省 情 報 通 信 政 策 研 究 所 メディア ソフトの 制 作 及 び 流 通 の 実 態 に 関 する 調 査 研 究 報 告 書 平 成 21 年 9 月 より 作 成 他 方, 放 送 コンテンツの 供 給 者 である 番 組 制 作 会 社 (344 社 3 )については,その 資 本 規 模 を 見 ると, 約 8 割 の 事 業 者 が 中 小 企 業 4 であり,うち 3000 万 円 未 満 の 事 業 者 が 全 体 の 69.2 パーセントを 占 めている( 図 表 6) 図 表 6 番 組 制 作 会 社 の 資 本 規 模 別 分 布 調 査 対 象 事 業 者 数 :344 社 ~1000 万 円 未 満 12.2% 5.2% 2.3% 13.1% 1000 万 円 以 上 ~3000 万 円 未 満 3000 万 円 以 上 ~5000 万 円 未 満 11.0% 5000 万 円 以 上 ~1 億 円 未 満 56.1% 1 億 円 以 上 ~10 億 円 未 満 10 億 円 以 上 ~ 出 典 : 総 務 省 平 成 20 年 度 放 送 番 組 制 作 実 態 調 査 報 告 書 より 作 成 3 総 務 省 では, 平 成 20 年 11 月, 番 組 制 作 事 業 者 753 社 ( 社 団 法 人 日 本 民 間 放 送 連 盟 が 把 握 している 全 事 業 者 )に 対 し 調 査 を 行 ったところ, 有 効 回 答 がなされた 事 業 者 は 344 社 であった 4 ここで 言 う 中 小 企 業 とは, 資 本 金 の 額 又 は 出 資 の 総 額 が 5000 万 円 以 下 の 会 社 並 びに 常 時 使 用 する 従 業 員 の 数 が 100 人 以 下 の 会 社 及 び 個 人 であって,サービス 業 に 属 する 事 業 を 主 たる 事 業 として 営 むものを 指 す( 中 小 企 業 基 本 法 第 2 条 第 1 項 第 3 号 ) 3
第 2 放 送 コンテンツの 流 通 の 現 状 1 地 上 波 の 系 列 局 間 の 取 引 放 送 コンテンツの 流 通 市 場 の 大 半 を 占 める 地 上 放 送 は,キー 局 を 中 心 とした 番 組 制 作 取 引 及 び 系 列 内 での 番 組 販 売 取 引 が 発 達 している 結 果, 系 列 を 超 えたコンテンツの 売 買 が 活 発 と はいえない 状 況 である 系 列 局 間 の 番 組 取 引 の 具 体 的 な 形 態 は 以 下 のとおりである (1) ネット 枠 を 利 用 した 国 内 番 組 取 引 地 上 テレビジョン 放 送 事 業 者 は,キー 局 及 び 系 列 局 間 において 締 結 されたネットワーク 協 定 に 基 づき, ネット 枠 と 称 する 放 送 枠 を 設 けている ネット 枠 では,キー 局 及 び 全 系 列 局 間 を 結 ぶ 中 継 回 線 を 通 じて, 全 系 列 局 が 同 一 番 組 を 同 時 間, 同 一 内 容 で 放 送 している ネット 枠 の 広 告 については, 通 常 は 一 元 的 に 番 組 を 提 供 する 番 組 発 局 (ほぼキー 局 )が 一 括 セールスを 行 い, 系 列 局 に 収 入 配 分 を 行 う 他 方, 系 列 局 は 番 組 発 局 に 対 して, 分 担 金 を 負 担 する (2) ローカル 枠 を 利 用 した 国 内 番 組 取 引 キー 局 及 び 系 列 局 では,それぞれが 独 自 に 番 組 の 制 作 及 び 調 達 を 行 う ローカル 枠 と 称 する 放 送 枠 を 設 けている キー 局 のローカル 枠 の 番 組 は 自 ら 制 作 することが 多 いが, 系 列 局 は,ニュース, 地 域 情 報 番 組 を 除 きキー 局 等 から 番 組 を 購 入 することが 多 い 図 表 7 地 上 波 放 送 局 の 自 主 制 作 比 率 (グループ 別 平 均 値 ) 各 局 の 自 主 制 作 比 率 ( % ) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 H14 H15 H17 H18 H19 H20 ( 年 度 ) キー 局 関 西 準 キー 局 中 部 局 ローカル 局 独 立 系 U 局 出 典 : 社 団 法 人 日 本 民 間 放 送 連 盟 日 本 民 間 放 送 年 鑑 より 作 成 4
2 主 要 な 放 送 コンテンツ (1) 配 信 状 況 流 通 している 放 送 コンテンツの 中 で 中 心 的 なものとしては, 映 画 コンテンツやスポーツ 中 継 が 挙 げられる 例 えば, 多 チャンネル 有 料 放 送 であるCATVやCS 放 送 に 配 信 され ているチャンネルをみると, 映 画 やスポーツに 関 するものの 人 気 が 高 い( 図 表 8) これら の 中 には, 放 送 事 業 者 による 視 聴 率 又 は 視 聴 契 約 獲 得 の 競 争 に 大 きな 影 響 を 与 える,いわ ゆる キラーコンテンツ も 含 まれている 図 表 8 CATV 向 けチャンネル 配 信 事 業 者 上 位 10 局 ( 平 成 21 年 3 月 末 現 在 ) ( 注 )デジタル 放 送 における 放 送 時 間 のうち, 映 画 は 52.6 パーセント,スポーツは 15.1 パーセントを 占 めている( 株 式 会 社 WOW OW ジ ャ ン ル 別 放 送 実 績 ( 2008 年 度 )) 出 典 : 株 式 会 社 放 送 ジャーナル 社 月 刊 放 送 ジャーナル 2009 年 7 月 号 より 作 成 (2) 放 映 権 の 取 引 ア 映 画 放 送 コンテンツとしての 映 画 は, 多 チャンネル 化 の 進 展 により, 地 上 波 での 放 映 回 数 は 減 尐 し( 図 表 9), 有 料 放 送 による 放 映 が 中 心 となっている テレビで 放 映 される 映 画 の 多 くは 外 国 映 画 であるが, 放 送 事 業 者 がその 放 映 権 を 獲 得 するための 取 引 先 は, 大 手 外 国 映 画 会 社 の 系 列 の 在 日 配 給 会 社, 劇 場 興 行 権 のみならず テレビ 放 映 権 等 を 含 めたオールライツを 獲 得 した 国 内 資 本 の 配 給 会 社, 外 国 の 大 手 配 給 会 社 等 と 様 々である 主 な 契 約 形 態 としては, 個 別 の 映 画 ないし 複 数 の 映 画 のパッケー ジについて,1 一 定 期 間 内 に 一 定 回 数 を 放 映 する 権 利 を 固 定 額 で 支 払 う,2 一 定 の 基 準 額 に 視 聴 契 約 数 や 視 聴 記 録 に 基 づく 従 量 額 を 支 払 うものがある また, 邦 画 については,その 制 作 に 当 たり, 映 画 配 給 会 社,テレビ 局 等 のコンテンツ 流 通 事 業 者 が 共 同 で 出 資 をして 製 作 委 員 会 5 を 組 織 する 方 法 が 主 流 となっており( 図 表 10),テレビ 局 は 他 の 出 資 者 とともに 著 作 権 を 共 有 し, 放 映 権 を 確 保 している 5 コンテンツの 制 作 に 当 たり, 負 債 リスクの 分 散 や 関 係 者 間 で 制 作 費 を 出 資 し,コンテンツに 係 る 様 々なビ ジネスの 推 進 等 を 目 的 とし, 通 常, 任 意 組 合 ( 民 法 第 667 条 )として 結 成 されている 5
6 図 表 9 映 画 のテレビ 放 映 回 数 出 典 : 株 式 会 社 時 事 映 画 通 信 社 映 画 年 鑑 より 作 成 図 表 10 興 行 成 績 上 位 の 邦 画 とテレビ 局 の 出 資 状 況 H20 年 興 行 収 入 順 位 映 画 タイトル 名 称 製 作 委 員 会 参 加 テレビ 局 1 崖 の 上 のポニョ 崖 の 上 のポニョ 製 作 委 員 会 日 本 テレビ 2 花 より 男 子 ファイナル 花 より 男 子 製 作 委 員 会 TBS 3 容 疑 者 Xの 献 身 容 疑 者 Xの 献 身 製 作 委 員 会 フジテレビ 4 劇 場 版 ポケットモンスター ダイヤモンド&パー ル ギラティナと 氷 空 の 花 束 シェイミ ピカチュウプロジェクト テレビ 東 京 5 相 棒 - 劇 場 版 - 相 棒 劇 場 版 パートナーズ テレビ 朝 日, 朝 日 放 送, 名 古 屋 テレビ 放 送 6 20 世 紀 少 年 第 1 章 映 画 20 世 紀 少 年 製 作 委 員 会 日 本 テレビ 7 ザ マジックアワー ザ マジックアワー 製 作 委 員 会 フジテレビ 8 ドラえもん のび 太 と 緑 の 巨 人 伝 映 画 ドラえもん 製 作 委 員 会 テレビ 朝 日 9 マリと 子 犬 の 物 語 マリと 子 犬 の 物 語 製 作 委 員 会 日 本 テレビ, 讀 賣 テレビ, 札 幌 テレビ 放 送, 宮 城 テレビ,テレビ 新 潟 放 送, 静 岡 第 一 テレビ, 中 京 テレビ, 広 島 テレビ, 福 岡 放 送 10 L change the World L FILM PARTNERS 日 本 テレビ, 讀 賣 テレビ 11 おくりびと おくりびと 製 作 委 員 会 TBS, 毎 日 放 送,テレビユー 山 形 12 名 探 偵 コナン 戦 慄 の 楽 譜 名 探 偵 コナン 製 作 委 員 会 日 本 テレビ, 讀 賣 テレビ 出 典 : 社 団 法 人 日 本 映 画 製 作 社 連 盟 ウェブサイトより 作 成 イ スポーツ スポーツ 分 野 でテレビ 放 送 されているものとしては, 国 際 大 会 のようなイベントとプ ロスポーツのリーグ 戦 のようなシーズンを 通 じて 開 催 されるものがある 国 内 でのテレ ビ 放 送 に 係 る 放 映 権 の 取 引 において, 前 者 については,サッカーワールドカップのよう な 大 規 模 なものになると,NHKを 含 む 放 送 各 社 が 共 同 で 出 資 してジャパンコンソーシ アム(JC)を 組 織 している JCは,イベント 主 催 者 からテレビ 放 映 権 を 購 入 し, 出 資 割 合 に 応 じて 中 継 試 合 の 割 当 てを 行 っている 後 者 については,リーグに 所 属 する 各 チームが 個 別 に 放 送 事 業 者 と 放 映 権 の 交 渉 を 行 う 場 合 と,リーグ 組 織 等 が 一 括 して 放 映 権 の 交 渉 を 行 う 場 合 に 大 別 される 6 有 料 放 送 であるCS124/128 度 放 送 では,23 の 映 画 チャンネルが 提 供 されている( 総 務 省 衛 星 放 送 の 現 状 ( 平 成 21 年 10 月 9 日 )) 6
ヨーロッパでは, 特 に 人 気 の 高 いプロサッカーの 放 映 権 を 巡 り, 欧 州 委 員 会 によって, EU 競 争 法 上 の 問 題 が 生 じないよう 必 要 な 措 置 が 取 られた 7 具 体 的 には, 例 えば,UE FAチャンピオンズリーグ 放 映 権 は,かつては 各 国 で1つの 放 送 局 に 対 し 排 他 的 に 販 売 され,その 契 約 期 間 も7 年 と 長 期 に 及 ぶものであったが, 現 在 は 放 映 権 が 分 割 され, 各 国 でも 複 数 の 放 送 局 が 獲 得 可 能 となり, 契 約 期 間 も 最 長 で3 年 とされている 7 2003( 平 成 15) 年 7 月 24 日 付 け 欧 州 委 員 会 公 表 文 Commission clears UEFA s new policy regarding the sale of the media rights to the Champions League(IP/03/1105) 参 照 7
第 3 放 送 コンテンツの 制 作 流 通 を 巡 る 環 境 整 備 広 告 収 入 の 低 下 により, 放 送 コンテンツについてもマルチユースによる 収 益 獲 得 の 機 会 が 重 視 されている このため, 最 近 では,コンテンツの 制 作 段 階 においてマルチユースに 必 要 な 権 利 処 理 を 行 う 動 きがある 8 他 方, 旧 作 を 中 心 に, 放 送 の 一 次 利 用 のみを 想 定 して 制 作 さ れたコンテンツのマルチユースを 促 進 するため, 引 き 続 き 権 利 処 理 の 円 滑 化 が 求 められてい る また, 放 送 コンテンツを 流 通 させる 主 体 として, 放 送 局 等 の 流 通 部 門 ではなく 制 作 者 側 が 主 導 的 な 立 場 にあれば,より 多 様 な 経 路 への 流 通 が 促 進 され, 番 組 取 引 市 場 の 活 性 化 につな がると 考 えられる この 点 に 関 連 して, 従 来 から 指 摘 されている 放 送 局 と 番 組 制 作 会 社 間 の 著 作 権 の 帰 属 の 問 題 があるほか, 最 近 では, 制 作 者 が 流 通 部 門 から 資 金 面 で 独 立 した 形 でコ ンテンツを 制 作 できる 環 境 の 整 備 が 行 われている 1 流 通 促 進 に 係 る 著 作 権 処 理 (1) 権 利 の 集 中 管 理 事 業 権 利 の 集 中 管 理 事 業 とは, 著 作 物 等 の 利 用 の 促 進 と 権 利 者 利 益 の 確 保 のため, 多 数 の 権 利 者 に 代 わり 権 利 を 管 理 する 事 業 であり, 一 任 型 ( 権 利 者 が 利 用 の 許 諾 権 限 を 一 括 して 委 託 するもの)と 非 一 任 型 ( 権 利 者 が 利 用 の 許 諾 権 限 を 留 保 し, 利 用 の 度 にその 可 否 や 使 用 料 等 を 決 定 することができるもの)に 分 けられる 一 任 型 の 管 理 事 業 者 は, 著 作 権 等 管 理 事 業 法 の 規 制 を 受 け, 文 化 庁 への 登 録, 使 用 料 規 程 の 届 出 が 必 要 であり, 正 当 な 理 由 がなければ 著 作 権 等 の 利 用 の 許 諾 を 拒 むことはでき ない( 著 作 権 等 管 理 事 業 法 第 16 条 ) 一 方, 非 一 任 型 による 集 中 管 理 は, 法 律 による 規 制 を 受 けず, 美 術, 翻 訳 出 版, 一 部 の 実 演 などに 関 して 行 われている 図 表 11 主 な 著 作 権 等 管 理 事 業 者 の 例 出 典 : 公 正 取 引 委 員 会 作 成 資 料 管 理 事 業 者 数 及 び 管 理 事 業 者 への 委 託 者 数 はともに 増 加 傾 向 にあり( 図 表 12,13), 著 作 8 ビデオ 化 が 予 定 されるドラマなど 一 部 のものを 除 き, 放 送 コンテンツの 制 作 段 階 においては, 一 次 利 用 に 必 要 な 契 約 のみを 行 っており,その 後 の 利 用 も 含 めた 契 約 はほとんど 行 われてきていない そのため, 放 送 コンテンツの 二 次 利 用 の 際 には, 権 利 情 報 を 調 査 し, 脚 本, 音 楽,レコード, 実 演, 美 術, 写 真 等 すべての 権 利 者 から 改 めて 許 諾 を 得 る 必 要 が 生 じてしまう 8
権 等 の 集 中 管 理 の 増 大 により 利 用 者 の 権 利 処 理 の 円 滑 化 が 進 んでいる 図 表 12 管 理 事 業 者 数 の 推 移 管 理 事 業 者 数 の 推 移 40 35 30 25 20 15 10 5 0 37 36 28 12 H13 H18 H19 H20 ( 年 度 ) 出 典 : 内 閣 官 房 知 的 財 産 戦 略 本 部 デジタル ネット 時 代 における 知 財 制 度 専 門 調 査 会 第 1 回 参 考 資 料 より 作 成 図 表 13 放 送 コンテンツに 係 る 主 な 管 理 事 業 者 への 委 託 者 数 の 推 移 50, 000 45, 000 45, 797 40, 000 日 本 文 藝 家 協 会 ( 原 作 ) 委 託 者 数 35, 000 30, 000 25, 000 20, 000 15, 000 10, 000 5,000 0 31, 399 28, 000 14, 516 15, 144 13, 105 2,209 3,063 3,507 1,626 1,840 1,906 H15 H18 H21(10 月 末 現 在 ) ( 年 度 ) 日 本 脚 本 家 連 盟 ( 脚 本 ) 日 本 音 楽 著 作 権 協 会 ( 音 楽 ) 日 本 芸 能 実 演 家 団 体 協 議 会 実 演 家 著 作 隣 接 権 セン ター( 実 演 ) 出 典 : 公 正 取 引 委 員 会 作 成 資 料 (2) 民 間 における 取 組 及 び 新 たな 問 題 点 ア 民 間 における 取 組 放 送 コンテンツの 二 次 利 用 が 困 難 である 大 きな 理 由 の 一 つに, 権 利 者 と 許 諾 の 条 件 に ついて 合 意 できないなどといった 取 引 条 件 の 問 題 がある 一 方, 放 送 コンテンツの 二 次 利 用 を 行 おうとする 者 が, 権 利 者 情 報 を 容 易 に 把 握 できなかったり, 仮 に 権 利 者 が 判 明 したとしても,その 所 在 や 消 息 が 不 明 であるといった 事 情 により, 取 引 が 成 立 しないと 9
いう 問 題 もある このため, 民 間 において 自 発 的 に, 前 者 については 契 約 内 容 の 標 準 化 9, 後 者 については 権 利 者 情 報 のデータベース 化 10 や 不 明 権 利 者 の 捜 索 等 を 行 うサービス 11 の 提 供 が 進 められている イ 最 近 の 新 たな 動 き 前 記 アに 関 連 して, 社 団 法 人 日 本 音 楽 事 業 者 協 会, 社 団 法 人 日 本 芸 能 実 演 家 団 体 協 議 会, 社 団 法 人 音 楽 制 作 者 連 盟 の3 団 体 が, 平 成 21 年 6 月, 一 般 社 団 法 人 映 像 コンテン ツ 権 利 処 理 機 構 を 設 立 している( 図 表 14 左 ) 同 機 構 は, 映 像 コンテンツの 二 次 利 用 に 係 る 円 滑 な 権 利 処 理 を 実 現 することにより,デジタルネットワーク 上 のコンテンツ 流 通 の 促 進 と,これによる 実 演 家 への 適 正 な 対 価 の 還 元 の 実 現 に 寄 与 することを 目 的 とし ている 平 成 22 年 4 月 に 業 務 が 開 始 され, 二 次 利 用 に 関 する 許 諾 申 請 の 受 付, 不 明 権 利 者 の 捜 索, 通 知 等 が 行 われる 予 定 である また, 政 府 の 知 的 財 産 推 進 計 画 2008 に 基 づき, 平 成 21 年 3 月, 一 般 社 団 法 人 著 作 権 情 報 集 中 処 理 機 構 (CDC)が 設 立 されている( 図 表 14 右 ) 同 機 構 は, 著 作 物 等 の 利 用 者 及 び 権 利 者 との 連 携 の 下 に, 著 作 物 等 の 利 用 状 況 及 び 権 利 関 係 に 関 する 情 報 を 収 集 して 整 理 し,その 成 果 を 関 係 者 に 提 供 することによって, 著 作 物 等 の 適 正 かつ 円 滑 な 利 用 を 促 進 することを 目 的 としている 同 機 構 も 平 成 22 年 4 月 に 業 務 が 開 始 される 予 定 である 図 表 14 映 像 コンテンツ 権 利 処 理 機 構 及 び 著 作 権 情 報 集 中 処 理 機 構 の 概 要 映 像 コンテンツ 権 利 処 理 機 構 著 作 権 情 報 集 中 処 理 機 構 出 典 : 総 務 省 デジタル コンテンツの 流 通 の 促 進 及 び コンテンツ 競 争 力 強 化 のための 法 制 度 の 在 り 方 について 中 間 答 申 ( 案 ) 9 関 係 省 庁 の 支 援 の 下, 平 成 19 年 2 月, 社 団 法 人 日 本 経 済 団 体 連 合 会 に 設 置 された 映 像 コンテンツ 大 国 を 実 現 するための 検 討 委 員 会 において, 放 送 コンテンツ 製 作 者 ( 放 送 事 業 者 番 組 製 作 者 )と 実 演 家 との 協 議 により, 製 作 時 における 契 約 締 結 の 取 組 の 促 進,ネット 配 信 に 関 する 契 約 ルール 放 送 番 組 における 出 演 契 約 ガイドライン が 策 定 され, 現 在, 関 係 者 において 周 知 徹 底 のための 取 組 が 進 められている 10 関 係 省 庁 の 支 援 の 下, 平 成 19 年 6 月, 日 本 経 済 団 体 連 合 会 の 呼 びかけにより, 民 間 の 自 主 的 な 取 組 とし て,コンテンツを 国 内 外 に 発 信 することを 目 的 とした 作 品 情 報 のデータベースである ジャパン コンテン ツ ショーケース の 運 用 が 開 始 された 著 作 権 等 の 権 利 団 体 においては, 権 利 者 情 報 に 関 するデータベー スとして 創 作 者 団 体 ポータルサイト を 整 備 運 用 することを 予 定 している なお, 総 務 省 では, 放 送 番 組 製 作 者 等 のコンテンツに 関 する 権 利 情 報 を 集 約 公 開 するためのデータベースの 構 築 に 向 けた 実 証 実 験 が 行 われており, 前 記 の2データベースとの 相 互 連 携 等 も 目 指 している 11 社 団 法 人 日 本 芸 能 実 演 家 団 体 協 議 会 実 演 家 著 作 隣 接 権 センター(CPRA)と 放 送 事 業 者 等 の 合 意 に 基 づき, 放 送 番 組 の 二 次 利 用 に 係 る 実 演 家 が 不 明 の 場 合, 暫 定 的 な 措 置 として,CPRAが 不 明 者 の 調 査 を 行 い, 使 用 料 を 預 かるとともに, 放 送 事 業 者 は 不 明 者 が 判 明 しない 場 合 でも 二 次 利 用 を 進 めるという 自 主 的 な 取 組 が 実 施 されている 10
ウ 放 送 番 組 固 有 の 課 題 最 近 は, 放 送 番 組 ごとの 権 利 情 報 の 整 備 が 進 められているが,とりわけ 過 去 のものに ついては, 権 利 情 報 が 整 備 されていない 場 合 も 多 い このため, 二 次 利 用 の 際 には, 権 利 情 報 を 改 めて 調 査 し, 放 送 番 組 を 構 成 する 脚 本, 音 楽,レコード, 実 演, 美 術, 写 真 等 すべての 権 利 者 から 改 めて 許 諾 を 得 る 必 要 がある 許 諾 を 得 るに 当 たっては, 権 利 者 が 不 明 な 場 合 も 多 く,その 際 には 文 化 庁 の 裁 定 制 度 ( 著 作 権 法 第 67 条 )を 利 用 すること となる しかし, 二 次 利 用 の 形 態 として 放 送 番 組 を 新 たな 作 品 の 一 部 として 使 用 するこ とが 多 いことを 考 えると, 裁 定 手 続 の 負 担 も 採 算 が 合 わないという 指 摘 もある 加 えて, 既 存 の 放 送 メディアの 流 通 慣 行 においては, 放 送 局 が, 放 送 した 番 組 につい て, 自 ら 又 は 系 列 局 による 再 放 送 や 放 送 以 外 のメディアによる 提 供 ( 例 えば,DVD 販 売 等 )を 予 定 している 場 合 に, 自 己 の 再 利 用 以 外 の 二 次 利 用 について 調 整 を 要 すること もある 2 著 作 権 の 帰 属 コンテンツ 制 作 について,より 公 正 な 取 引 の 実 現 やコンテンツのマルチユースに 資 するた め, 政 府 においてガイドラインが 整 備 されている 具 体 的 には, 公 正 取 引 委 員 会 は, 平 成 16 年 3 月, 役 務 の 委 託 取 引 における 優 越 的 地 位 の 濫 用 に 関 する 独 占 禁 止 法 上 の 指 針 を 改 定 し, 役 務 の 委 託 取 引 として 放 送 番 組 等 の 情 報 成 果 物 の 作 成 委 託 を 明 記 した また, 総 務 省 は, 平 成 21 年 2 月 に 放 送 コンテンツの 製 作 取 引 適 正 化 に 関 するガイドライン を 策 定 し, 具 体 的 な 取 引 に 即 して 問 題 となりうる 事 例, 望 ましいと 考 えられる 事 例 を 提 示 している( 平 成 21 年 7 月 に 第 2 版 が 公 表 ) 実 際 の 放 送 番 組 制 作 取 引 においては, 複 数 の 番 組 制 作 会 社 が 多 層 的 に 関 与 するなど 取 引 が 複 雑 であることから, 著 作 権 の 帰 属 に 関 して 放 送 局 に 有 利 であったり,また 番 組 制 作 会 社 が 権 利 を 確 保 しても,その 多 くは 自 己 で 販 路 を 持 たないことから, 結 果 的 に 放 送 局 に 権 利 を 預 ける 形 となっている 場 合 も 尐 なくないとの 指 摘 がある 3 資 金 調 達 放 送 コンテンツ 制 作 では,スポンサーから 提 供 された 広 告 費 を 基 に 放 送 局 から 制 作 費 を 受 けて 番 組 制 作 会 社 が 納 入 する 下 請 取 引 が 一 般 的 である このため, 放 送 番 組 取 引 市 場 におけ る 多 様 なコンテンツの 制 作 流 通 という 観 点 からは, 番 組 制 作 会 社 が 制 作 資 金 の 面 でも 流 通 部 門 から 独 立 できる 環 境 の 整 備 が 必 要 となる コンテンツ 制 作 会 社 の 資 金 調 達 手 法 としては, 映 画 制 作 や 洋 画 の 買 い 付 けなどについて 商 品 ファンド 法 に 基 づいて 投 資 を 広 く 募 る 手 法 があったが, 放 送 番 組 の 制 作 には 活 用 されてこ なかった 近 年, 知 的 財 産 戦 略 大 綱 ( 平 成 14 年 7 月 3 日 決 定 ) 等 に 基 づいて, 資 金 調 達 手 法 の 多 様 化 の 一 環 として, 以 下 のとおり 信 託 業 法 の 改 正 が 行 われたところである (1) 信 託 業 法 の 改 正 近 年, 知 的 財 産 の 戦 略 的 活 用 への 社 会 的 な 関 心 が 高 まり, 財 産 の 管 理 活 用 機 能 を 担 う 信 託 機 能 が 知 的 財 産 権 の 流 通 に 果 たす 役 割 に 大 きな 期 待 が 寄 せられたことを 踏 まえ, 平 成 16 11
年 12 月, 信 託 業 法 の 抜 本 改 正 が 行 われた( 図 表 15) この 改 正 によって, 新 たな 信 託 の 担 い 手 が 増 えることにより 競 争 が 一 層 促 進 され, 信 託 の 利 用 領 域 が 拡 大 されるとともに, 放 送 コンテンツを 含 む 知 的 財 産 権 も 受 託 可 能 財 産 の 対 象 となったところである 図 表 15 信 託 業 法 改 正 のポイント 出 典 : 社 団 法 人 信 託 協 会 新 しい 信 託 法 の 概 要 ( 平 成 19 年 10 月 1 日 ) (2) 改 正 信 託 業 法 施 行 以 後 の 状 況 前 記 (1)のとおり, 知 的 財 産 権 の 信 託 が 可 能 となり, 当 該 権 利 による 資 金 調 達 が 制 度 的 に 容 易 となったものの, 信 託 が 活 用 される 場 面 は, 特 許 権 等 の 産 業 財 産 権 が 中 心 となっている 著 作 権 については, 信 託 制 度 の 利 用 が 普 及 していないが,その 理 由 として 経 済 価 値 の 評 価 の 困 難 さが 指 摘 されている 12 12 独 立 行 政 法 人 科 学 技 術 振 興 機 構 産 学 官 連 携 ジャーナル Vol.2 No.12 2006 21 頁 等 12