September 12, 2014 1.ブラジルの 貸 出 金 利 はなぜ 高 いのか 2.ドバイの 財 政 状 態 は 依 然 ぜい 弱 と 診 断 した IMF 1.ブラジルの 貸 出 金 利 はなぜ 高 いのか 1.ブラジル 民 間 銀 行 の 高 い 貸 出 金 利 ブラジルが 高 金 利 の 国 であることはよく 知 られていることである ブラジル 国 立 銀 行 の 政 策 金 利 であるSelic 金 利 は11.0%(2014 年 5 月 時 点 )となっており インフレ 率 を 引 いた 実 質 金 利 も4~5%と 高 水 準 にある Segura-Ubiergo(2012) 1 は ブラジルの 実 質 金 利 の 高 さの 理 由 について 1 過 去 の 財 政 リスク2 国 内 の 貯 蓄 率 の 低 さ3 契 約 履 行 環 境 の 悪 さや 中 央 銀 行 の 独 立 性 など 行 政 の 問 題 4 過 去 の 高 インフレや 物 価 変 動 の 大 きさ 5 金 融 政 策 の 波 及 メカニズム( 公 的 銀 行 による 優 遇 レート 存 在 や 住 宅 と 農 業 セクター 向 け 貸 出 の 優 遇 貯 蓄 預 金 の 最 低 利 率 の 高 さ)などを 挙 げている 高 金 利 に 加 えて 預 貸 金 利 差 が 大 きいこともブラジルの 特 徴 として 挙 げられる 民 間 銀 行 の 貸 出 金 利 の 場 合 昔 と 比 べて 縮 小 したとはいえ 依 然 として30% 前 後 と 諸 外 国 と 比 較 しても 突 出 して 高 くなっている ブラジル 国 内 の 貸 出 金 利 預 貸 金 利 差 (2013 年 ) ( 出 所 )ブラジル 国 立 銀 行 ( 出 所 )IMF International Financial Statistics 1 Alex Segura-Ubiergo(2012), IMF Working Paper, The Puzzle of Brazil s High Interest Rates 1
2. 極 端 に 高 い 預 金 準 備 率 が 貸 出 金 利 を 引 き 上 げ ブラジルの 金 利 の 高 さや 預 貸 スプレッドの 大 きさは 昔 から 同 国 固 有 の 問 題 として 注 目 されており 世 界 中 のエコノミストにより 調 査 研 究 が 盛 んに 行 われている ブラジルの 民 間 銀 行 の 預 貸 スプレッドが 大 きい 理 由 については 高 金 利 の 要 因 との 重 複 を 含 め 高 インフレ 体 質 マクロ 経 済 の 不 安 定 さ 金 融 規 制 税 制 ビジネスにおける 契 約 履 行 環 境 の 悪 さ 銀 行 セクターにおける 競 争 環 境 など 多 くの 要 因 が 挙 げられている 以 前 は 高 インフレやマクロ 経 済 の 不 安 定 さが 原 因 として 考 えら れていた しかし インフレがある 程 度 落 ち 着 くようになってからも 他 国 に 比 べて 預 貸 スプレッドの 大 きさは 際 立 っており それだけでは 説 明 がつかない そのため 近 年 銀 行 セクターにおける 金 融 規 制 の 影 響 が 指 摘 され るようになってきた その 中 のひとつに 中 央 銀 行 が 商 業 銀 行 に 課 す 法 定 預 金 準 備 率 の 高 さが 挙 げられる 商 業 銀 行 は 当 座 預 金 の44%( 無 利 子 ) 定 期 預 金 の31%( 追 加 準 備 含 む Selic 金 利 が 付 与 される) 貯 蓄 預 金 の30%(20%はター ゲット 金 利 +α 追 加 準 備 分 はSelic 金 利 が 付 与 される)を 預 金 準 備 として 中 央 銀 行 に 預 託 しなければならない (いずれも2014 年 5 月 時 点 ) 預 金 準 備 率 が 数 %である 先 進 国 は 言 うまでもなく 預 金 準 備 率 の 水 準 は 他 の 新 興 国 と 比 較 しても 突 出 して 高 い 商 業 銀 行 における 預 金 準 備 率 の 異 常 な 高 さによる 利 益 機 会 の 損 失 分 を 商 業 銀 行 はそのまま 貸 出 金 利 に 上 乗 せしている ブラジルの 預 金 準 備 率 の 高 さは 同 国 において 長 く 続 いた 高 インフレに 対 する 金 融 引 き 締 めの 役 割 を 担 って きたが インフレ 率 が 一 ケタ 台 まで 落 ち 着 いた 現 在 においては 効 率 的 な 金 融 仲 介 機 能 を 阻 害 する 同 国 特 有 の 原 因 となっている 現 行 の 貸 出 金 利 の 高 止 まりは 特 に 中 小 企 業 向 けの 融 資 の 伸 びを 停 滞 させている 大 きな 要 因 と 考 えられて いる 中 小 企 業 の 停 滞 は 経 済 全 体 の 供 給 能 力 を 阻 害 すると 同 時 に 産 業 のインフォーマル 化 へのきっかけと なりかねず 同 国 の 供 給 力 制 約 を 起 因 としたインフレ 体 質 の 改 善 が 進 まない 要 因 となることから ブラジル 中 央 銀 行 における 金 融 規 制 制 度 の 見 直 しが 期 待 される 以 上 2014 年 6 月 18 日 ( 公 財 ) 国 際 通 貨 研 究 所 経 済 調 査 部 研 究 員 井 上 裕 介 2
2.ドバイの 財 政 状 態 は 依 然 ぜい 弱 と 診 断 した IMF 概 要 国 際 通 貨 基 金 (IMF)は 2014 年 7 月 3 日 ドバイ 経 済 に 関 する 評 価 を 明 らかにした IMF は ドバイの 債 務 支 払 い 能 力 は 改 善 したものの 依 然 外 部 の 経 済 環 境 に 左 右 されやすい 体 質 だとしている ただし ドバイの 手 堅 い 経 済 運 営 が 見 込 まれることもあり 2014 年 の 財 政 収 支 は 国 内 総 生 産 (GDP) 比 0.5%の 黒 字 になると 予 測 している 国 際 通 貨 基 金 (IMF)は 2014 年 7 月 3 日 IMF 協 定 第 5 条 に 基 づくドバイ 経 済 に 関 する 調 査 協 議 の 結 果 を 公 表 し 財 政 状 態 は 強 固 になりつつあるが 依 然 ぜい 弱 性 も 残 る との 全 体 的 な 評 価 を 明 らかにした ドバイ 経 済 を 分 析 した IMF は ドバイの 債 務 支 払 い 能 力 については 好 調 な 経 済 成 長 と 抑 制 的 な 財 政 支 出 により 改 善 したとしている しかし 同 時 に ドバイ 経 済 は 世 界 経 済 が 大 きく 落 ち 込 む 場 合 には 依 然 ぜい 弱 性 を 持 つとも 指 摘 し ており 継 続 的 な 財 政 健 全 化 の 努 力 と 経 済 成 長 の 見 通 しの 改 善 から 外 部 ショックへの 抵 抗 力 を 高 めたとはいえ 引 き 続 き 外 部 の 経 済 環 境 に 左 右 される 体 質 であることに 変 わりはないと 指 摘 している ちなみに ドバイ 政 府 の 債 務 支 払 額 の 国 内 総 生 産 (GDP) 比 率 について IMF は 基 本 シナリオでは 2013 年 の 60.2% から 2019 年 の 41.6%へと 徐 々に 低 下 すると 予 測 している だが 世 界 経 済 が 大 きく 落 ち 込 んだ 場 合 2019 年 のドバ イ 政 府 の 債 務 支 払 いの GDP 比 率 は 約 71%に 上 昇 すると 見 込 んでいる さらに 世 界 経 済 の 大 幅 な 落 ち 込 みに 不 動 産 価 格 の 急 落 が 重 なった 場 合 ドバイ 政 府 が 政 府 関 連 企 業 の 債 務 の 20%を 引 き 取 ることを 余 儀 なくされるとみられ 2019 年 のドバイ 政 府 の 債 務 支 払 いの GDP 比 率 は 約 86%にまで 上 昇 すると 予 測 している ただし IMF は ドバイの 今 後 5 年 間 の 平 均 経 済 成 長 率 が 大 規 模 不 動 産 プロジェクトの 実 施 や 2020 年 万 国 博 覧 会 ( 万 博 )の 準 備 事 業 の 推 進 から 押 し 上 げられ 5.6%に 高 まるものと 予 測 している もっとも この 場 合 であっても 世 界 経 済 が 落 ち 込 めば この 間 の 平 均 経 済 成 長 率 は 3.5%にとどまるとしており 世 界 経 済 の 先 行 きも 重 要 な 要 素 にな ると 指 摘 している ドバイ 政 府 および 政 府 系 企 業 に ドバイ 政 府 が 一 部 株 式 を 保 有 する 企 業 が 今 後 数 年 に 支 払 う 債 務 額 をあらためて 見 れば 1,417 億 ドルと 2013 年 におけるドバイの GDP の 141%に 達 している 注 目 されるのは このうちドバイ 万 博 の 開 催 前 年 である 2019 年 以 前 に 返 済 期 日 が 訪 れる 債 務 額 が その 65%の 922 億 ドルに 上 ることである なお 債 務 返 済 額 が 最 大 となるのは 2018 年 で 403 億 ドルが 予 定 されている 不 動 産 価 格 の 再 上 昇 が 再 びバブル 化 する 事 態 を 懸 念 するドバイ 政 府 は IMF との 協 議 において 投 機 的 不 動 産 需 要 を 抑 制 するための 目 標 を 明 確 にした 上 で 高 率 の 取 引 料 金 を 導 入 することが 必 要 になるとの 認 識 を 示 した またド バイ 政 府 は 過 去 の 短 期 間 での 各 種 プロジェクトの 集 中 的 な 実 施 が 労 賃 や 資 材 の 急 騰 を 招 いたことについて 反 省 し 3
ており 今 後 の 大 規 模 不 動 産 およびインフラ プロジェクトについては 人 口 動 態 を 慎 重 に 見 極 めながら 徐 々にかつ 柔 軟 性 を 持 って 実 行 する 考 えを 表 明 している こうした 手 堅 い 経 済 運 営 が 見 込 まれることもあり 2013 年 には GDP 比 0.3%の 赤 字 であった 財 政 収 支 が 2014 年 に は 同 0.5%の 黒 字 になると 予 測 される 黒 字 になれば 2006 年 以 降 初 となる さらに アラブ 首 長 国 連 邦 全 体 の 2014 年 の 歳 出 も 3,170 億 ディルハムと 2013 年 の 3,240 億 ディルハムからの 減 少 が 見 込 まれている 表 1 アラブ 首 長 国 連 邦 の 主 な 経 済 指 標 出 所 :IMF 資 料 注 : 各 年 とも 予 測 表 2 ドバイ 政 府 財 政 収 支 (2010~2014 年 ) ( 単 位 : 億 ディルハム) 出 所 : 表 1 に 同 じ 注 :2012 年 は 実 績 見 込 み 2013 年 は 推 計 値 2014 年 は 予 測 表 3 ドバイの 債 務 の 返 済 予 定 額 (2013~2017 年 以 降 ) ( 単 位 :100 万 ドル %) 出 所 : 表 1 に 同 じ (2014 年 7 月 15 日 作 成 ) 記 事 提 供 : 株 式 会 社 インスペックス 特 別 顧 問 畑 中 美 樹 1974 年 慶 應 義 塾 大 学 経 済 学 部 卒 業 後 富 士 銀 行 ( 財 ) 中 東 経 済 研 究 所 カイロ 事 務 所 長 ( 株 ) 国 際 経 済 研 究 所 主 席 研 究 員 を 経 て 現 在 ( 財 ) 国 際 開 発 センター エネルギー 環 境 室 研 究 顧 問 兼 務 中 東 や 北 アフリカ 諸 国 の 王 族 政 治 家 政 府 関 係 者 ビジネスマンに 知 己 が 多 く 中 東 全 域 に 豊 富 な 人 的 ネットワークを 有 する 専 門 領 域 は 中 東 経 済 論 主 な 著 書 : イスラムマネー がわかると 経 済 の 動 きが 読 めてくる (すばる 舎 ) 中 東 のクール ジャパニーズ ( 同 友 館 ) 中 東 湾 岸 ビジネス 最 新 事 情 ( 同 友 館 ) オイルマネー ( 講 談 社 現 代 信 書 ) 石 油 地 政 学 ( 中 公 新 書 ラクレ)など 4
本 資 料 は 信 頼 できると 思 われる 各 種 データに 基 づき 作 成 しておりますが 当 行 はその 信 頼 性 安 全 性 を 保 証 するも のではありません また 本 資 料 は お 客 さまへの 情 報 提 供 のみを 目 的 としたもので 当 行 の 商 品 サービスの 勧 誘 やアドバイザリーフィーの 受 入 れ 等 を 目 的 としたものではありません 投 資 売 買 に 関 する 最 終 決 定 はお 客 さまご 自 身 でなされますよう お 願 い 申 し 上 げます ( 編 集 発 行 ) 三 菱 東 京 UFJ 銀 行 国 際 業 務 部 情 報 室 ( 照 会 先 ) 北 村 広 明 (e-mail): hiroaki_2_kitamura@mufg.jp 5