( 様 式 4) 二 国 間 交 流 事 業 共 同 研 究 報 告 書 平 成 26 年 7 月 2 日 独 立 行 政 法 人 日 本 学 術 振 興 会 理 事 長 殿 共 同 研 究 代 表 者 所 属 部 局 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 内 科 学 ( 消 化 器 ) (ふりがな) すず き ひでかず 職 氏 名 准 教 授 鈴 木 秀 和 1. 事 業 名 相 手 国 ( 韓 国 )との 共 同 研 究 振 興 会 対 応 機 関 ( NRF ) 2. 研 究 課 題 名 上 部 消 化 管 知 覚 受 容 体 発 現 とディスペプシア 症 状 発 現 の 日 韓 比 較 研 究 3. 全 採 用 期 間 平 成 24 年 7 月 1 日 ~ 平 成 26 年 6 月 30 日 ( 2 年 0 ヶ 月 ) 4. 経 費 総 額 (1) 本 事 業 により 執 行 した 研 究 経 費 総 額 2,400,000 円 初 年 度 経 費 1,200,000 円 2 年 度 経 費 1,200,000 円 3 年 度 経 費 0 円 (2) 本 事 業 経 費 以 外 の 国 内 における 研 究 経 費 総 額 0 円 5. 研 究 組 織 (1) 日 本 側 参 加 者 ( 代 表 者 は 除 く) 氏 名 所 属 職 名 松 崎 潤 太 郎 津 川 仁 森 英 毅 正 岡 建 洋 慶 應 義 塾 大 学 病 院 予 防 医 療 センター 助 教 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 医 化 学 特 任 講 師 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 内 科 学 ( 消 化 器 ) 大 学 院 3 年 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 内 科 学 ( 消 化 器 ) 助 教 (2) 相 手 国 側 研 究 代 表 者 所 属 職 名 氏 名 韓 国 建 國 大 学 校 医 学 部 消 化 器 内 科 学 准 教 授 Sun-Young Lee (3) 相 手 国 参 加 者 ( 代 表 者 は 除 く) 氏 名 所 属 職 名 Prof. Nayoung Kim M.D., Ph.D. Department of Internal Medicine, Seoul National University School of Medicine/ Professor Hong Seok Choi M.D. Department of Internal Medicine, Konkuk University Medical Center /Senior Resident - 1 -
Mijin Hong M.D. Prof. Hye Seung Han M.D., Ph.D. Department of Internal Medicine, Konkuk University Medical Center /Fellow Department of Pathology, Konkuk University School of Medicine / Associate Professor - 2 -
6. 研 究 実 績 概 要 ( 全 期 間 を 通 じた 研 究 の 目 的 研 究 計 画 の 実 施 状 況 成 果 等 の 概 要 を 簡 潔 に 記 載 してくださ い ) 研 究 の 目 的 機 能 性 ディスペプシア(Functional dyspepsia, 以 下 FD)は 原 因 と 考 えうる 器 質 的 疾 患 や 全 身 性 疾 患 代 謝 性 疾 患 を 認 めないものの 胃 十 二 指 腸 領 域 由 来 と 考 えられる 心 窩 部 痛 や 胃 もたれ 等 の 症 状 を 呈 する 疾 患 で ある 最 近 本 疾 患 の 病 態 機 序 の 一 つとして 胃 十 二 指 腸 における 知 覚 過 敏 が 注 目 されている 日 韓 両 国 は H. pylori 感 染 率 が 高 い 点 は 共 通 するが 食 習 慣 はいわゆるキムチを 常 食 する 韓 国 と 日 本 では 異 なる 点 も 多 い 唐 辛 子 の 成 分 であるカプサイシンの 受 容 体 である Transient receptor potential ion channel of the vanilloid type 1 (TRPV1)は 消 化 管 の 知 覚 受 容 体 としても 知 られ 315C の 遺 伝 子 多 型 が 上 部 消 化 管 の 知 覚 変 容 を 通 じて FD の 発 症 に 関 与 する 可 能 性 が 報 告 されている(J Clin Gastroenterol. 44:1 7, 2008) しかし 詳 細 な 分 子 メカニズムや 各 因 子 の 相 互 関 係 や genetic な 因 子 である 人 種 epigenetic な 因 子 である 食 文 化 や 生 活 習 慣 の 違 い 等 が 及 ぼす 影 響 については 検 討 されていない そこで 本 研 究 では FD 患 者 において 日 韓 両 国 間 の 食 習 慣 や 胃 十 二 指 腸 のカプサイシン 感 受 性 知 覚 受 容 体 発 現 の 違 いが 上 腹 部 症 状 発 現 に 如 何 に 関 連 するか さらに H. pylori 感 染 とその 菌 株 の 違 いが 症 状 発 現 に 如 何 に 影 響 するかを 検 討 し FD の 新 規 治 療 や 予 防 法 を 開 発 することを 目 的 とする 対 象 は 半 年 前 から 少 なくとも 3 ヶ 月 間 続 く 胃 十 二 指 腸 由 来 の 症 状 ( 食 後 の 胃 もたれ 早 期 飽 満 感 心 窩 部 痛 心 窩 部 灼 熱 感 )を 訴 え 来 院 し 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 を 受 ける 予 定 で 試 験 内 容 を 説 明 し 文 書 による 同 意 の 取 得 が 可 能 な 患 者 ( 日 韓 で 各 々100 例 )で 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 で 器 質 的 疾 患 が 除 外 された 場 合 にのみ 試 験 参 加 とする 血 液 採 取 十 二 指 腸 粘 膜 の 内 視 鏡 下 生 検 を 行 い H. pylori 感 染 は 血 清 抗 体 価 で 診 断 する また Rome III 基 準 による FD 関 連 質 問 票 PAGI SYM (Patient Assessment of Upper Gastrointestinal Symptoms)( 上 部 消 化 管 症 状 の 重 症 度 評 価 用 ) PAGI QOL (Patient Assessment of Upper Gastrointestinal QOL) ( 生 活 の 質 (QOL) 評 価 用 ) HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)( 不 安 うつ 用 )による 症 状 評 価 と 食 生 活 ( 時 間 量 内 容 ) 生 活 習 慣 ( 飲 酒 喫 煙 など)を 調 査 する さらに カプサイシン 感 受 性 知 覚 受 容 体 TRPV1 の 十 二 指 腸 粘 膜 で の 発 現 を 検 討 し TRPV1 の 315C の 遺 伝 子 多 型 も 検 討 する 研 究 計 画 の 実 施 状 況 成 果 1. 共 同 臨 床 研 究 プロトコールについて 非 介 入 型 臨 床 研 究 ( 探 索 型 研 究 ) 機 能 性 ディスペプシアの 症 状 発 現 における 十 二 指 腸 知 覚 受 容 体 機 能 の 解 明 ( 日 韓 共 同 研 究 ) (UMIN000009673 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 倫 理 委 員 会 承 認 番 号 20120246,) 対 象 : 日 韓 両 国 で 半 年 前 から 少 なくとも 3 ヶ 月 間 続 く 胃 十 二 指 腸 由 来 の 症 状 ( 食 後 の 胃 もたれ 早 期 飽 満 感 心 窩 部 痛 心 窩 部 灼 熱 感 )を 訴 えた 方 で 原 因 となる 器 質 的 疾 患 を 認 めない Rome III 基 準 を 満 たす 機 能 性 ディスペプシア 患 者 (20 歳 以 上 )で 試 験 内 容 を 説 明 し 文 書 による 同 意 の 取 得 が 可 能 な 患 者 Rome III 基 準 による 機 能 性 ディスペプシアの 診 断 基 準 以 下 のディスペプシア 症 状 のうち1つ 以 上 を 訴 える 患 者 a. 厄 介 な 食 後 膨 満 感 (つらいと 感 じる 食 後 のもたれ 感 ) b. 早 期 満 腹 感 c. 心 窩 部 痛 d. 心 窩 部 灼 熱 感 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 にて 症 状 を 説 明 可 能 な 器 質 的 疾 患 がない 以 上 が 少 なくとも 6 ヶ 月 以 前 に 診 断 され 最 近 3 ヶ 月 の 症 状 も 上 記 基 準 を 満 たす なお 登 録 前 の 2 週 間 に 4 日 以 上 5 段 階 Likert スケールで 中 等 度 (3 段 階 ) 以 上 のディスペプシア 症 状 ( 心 窩 部 痛 心 窩 部 灼 熱 感 食 後 膨 満 感 早 期 飽 満 感 )があった 患 者 のみ 登 録 除 外 基 準 : 1. 器 質 的 疾 患 (LA 分 類 Grade A 以 上 の 逆 流 性 食 道 炎 )が 認 められる 患 者 2. 胃 食 道 などの 上 部 消 化 管 手 術 の 既 往 がある 患 者 3. 暴 飲 暴 食 NSAIDs 服 薬 急 激 なストレス 等 症 状 の 原 因 が 明 らかな 患 者 4. 脳 に 器 質 的 障 害 の 既 往 を 有 する 患 者 統 合 失 調 症 またはうつ 病 と 診 断 された 患 者 - 3 -
5. アルコール 依 存 または 薬 物 依 存 を 有 する 患 者 6. 甲 状 腺 機 能 亢 進 症 などの 重 篤 なホルモン 異 常 を 有 する 患 者 7. 重 篤 な 心 肝 腎 機 能 障 害 感 染 症 または 造 血 器 障 害 を 有 する 患 者 8. 妊 婦, 授 乳 婦 または 妊 娠 している 可 能 性 のある 患 者 試 験 期 間 中 に 妊 娠 を 希 望 する 患 者 9. 過 去 6 ヶ 月 以 内 に H.pylori 除 菌 治 療 を 受 けた 患 者 検 討 項 目 : 結 果 (アウトカム)と 原 因 ( 曝 露 )に 関 する 指 標 A) 結 果 (アウトカム)の 指 標 1. 主 要 評 価 項 目 : ディスペプシア 関 連 の 症 状 スコア(PAGI SYM) 2. 副 次 評 価 項 目 : 関 連 症 状 頻 度 (ディスペプシア 関 連 問 診 票 の 後 半 部 分 GERD Q HADS ( 不 安 抑 う つ 症 状 )) QOL (PAGI QOL) 生 活 スタイル( 年 齢 性 別 身 長 体 重 併 存 症 手 術 歴 嗜 好 ( 喫 煙 飲 酒 ) 服 薬 歴 )に 関 する 背 景 因 子 B) 原 因 ( 曝 露 )の 指 標 : TRPV1 遺 伝 子 多 型 十 二 指 腸 粘 膜 組 織 での 炎 症 と TRPV1 発 現 異 常 人 種 ( 日 本 人 韓 国 人 ) 質 問 票 : 機 能 性 ディスペプシアに 関 連 症 状 の 有 無 発 症 からの 期 間 を 調 査 し 精 神 的 な 症 状 や 生 活 習 慣 併 存 疾 患 などとの 関 連 につき 質 問 票 を 用 いて 検 討 : i) RomeⅢ 基 準 の FD と IBS のサブカテゴリ ー 心 窩 部 痛 症 候 群 (EPS) 食 後 愁 訴 症 候 群 (PDS)の 診 断 に 関 する 質 問 票 ii) 胃 食 道 逆 流 症 状 の 質 問 票 (GERD Q) iii) PAGI SYM (Patient Assessment of Upper Gastrointestinal Symptoms)( 上 部 消 化 管 症 状 の 重 症 度 評 価 用 質 問 票 ) iv) PAGI QOL (Patient Assessment of Upper Gastrointestinal QOL) ( 生 活 の 質 (QOL) 評 価 用 質 問 票 ) v) HADS(Hospital Anxiety and Depression Scale)( 不 安 うつ 用 質 問 票 ) vi) 年 齢 性 別 身 長 体 重 併 存 症 手 術 歴 嗜 好 ( 喫 煙 飲 酒 ) 服 薬 歴 食 生 活 ( 時 間 量 内 容 ) 生 活 習 慣 ( 嗜 好 家 族 構 成 など)についてのアンケート 調 査 ( 生 活 スタイル 問 診 票 ) 採 血 ( 消 化 管 知 覚 受 容 体 Transient receptor potential ion channel of the vanilloid type 1 [TRPV1] の 315C の 遺 伝 子 多 型 の 検 討 抗 ヘリコバクターピロリ IgG 抗 体 の 測 定 ) 上 部 消 化 管 内 視 鏡 検 査 : 十 二 指 腸 粘 膜 の 生 検 十 二 指 腸 液 の 採 取 と ph 測 定 十 二 指 腸 組 織 におけ る TRPV1 染 色 平 成 24 年 度 に 確 定 した 二 国 間 共 通 の 研 究 プロトコールに 従 って 現 在 も 症 例 登 録 を 継 続 している 臨 床 研 究 を 主 導 する 際 は 先 ずその 研 究 デザインを 綿 密 に 設 計 する 点 が 非 常 に 重 要 で 本 二 国 間 共 同 研 究 は 順 調 に 進 行 したと 考 えられる 平 成 24 年 度 には 7 月 13 日 午 前 7 時 から 9 時 に 東 京 新 宿 ( 京 王 プラザホテル 会 議 室 なつめ)にて 韓 国 側 代 表 者 の Sun Young Lee 韓 国 側 参 加 者 の Nayoung Kim Hong Seok Choi および 日 本 側 代 表 者 日 本 側 参 加 者 の 正 岡 建 洋 松 崎 潤 太 郎 福 原 誠 一 郎 平 田 賢 郎 森 英 毅 津 川 仁 が 参 加 し 第 1 回 共 同 研 究 検 討 会 議 を 開 催 した 会 議 では 質 問 票 および 十 二 指 腸 粘 膜 の 生 検 部 位 の 適 切 性 などが 議 論 され 質 問 票 には 以 下 の 様 式 を 採 用 することが 決 定 した 11 月 22 日 午 前 10 時 から 12 時 に Konkuk University Medical Center (International Conference Room)にて 韓 国 側 代 表 者 の Sun-Young Lee 韓 国 側 参 加 者 の Nayoung Kim Hong Seok Choi 日 本 側 代 表 者 日 本 側 参 加 者 の 正 岡 建 洋 松 崎 潤 太 郎 福 原 誠 一 郎 森 英 毅 が 参 加 し 第 2 回 共 同 研 究 検 討 会 議 を 開 催 した この 会 議 ではまず Sungshin Women's University の Hye-Kyung Na に 登 壇 して 頂 き 食 事 中 のカプサイシン 量 をアンケート 調 査 から 推 定 す る 方 法 論 が 提 示 された 一 方 日 本 側 参 加 者 の 正 岡 建 洋 より 日 本 での 平 均 的 なカプサイシン 摂 取 量 が 極 め て 少 ないため 逆 に 定 量 が 困 難 であるといった 報 告 があった 協 議 の 結 果 個 々の 症 例 単 位 での 正 確 なカプ サイシン 摂 取 量 の 推 定 を 行 わずとも 簡 単 な 問 診 票 で 二 国 間 のカプサイシン 摂 取 量 の 差 を 提 示 することは 可 能 であろうと 考 えられた この 訪 問 時 に 日 本 側 代 表 者 は 平 成 24 年 11 月 に 開 催 された Seuol International Digestive Disease Symposium 2012(SIDDS2012)にて The role of Helicobacter pylori infection in the disease entity of functional dyspepsia と 題 して 講 演 を 行 った また 日 本 側 研 究 者 の 森 英 毅 は SIDDS2012 で 口 頭 発 表 をしたほか 滞 在 中 若 手 研 究 者 らも Konkuk 大 学 Yonsei 大 学 などを 訪 問 し 消 化 器 診 療 の 現 場 を 実 際 に 見 学 することができた 平 成 25 年 度 には 5 月 11 日 に 京 都 ( 京 都 国 際 会 館 )で 日 本 側 代 表 者 と 日 本 側 参 加 者 の 正 岡 建 洋 福 原 誠 一 郎 森 英 毅 韓 国 側 代 表 者 と Mijin Hong Hye Seung Han が 参 加 して 第 3 回 共 同 研 究 検 討 会 議 を 行 い 症 例 のリクルートなど 研 究 の 進 捗 状 況 と 研 究 プロトコール の 確 認 を 行 った 平 成 25 年 10 月 11 日 には 東 京 ( 慶 應 義 塾 大 学 医 学 部 )で 日 本 側 代 表 者 と 日 本 側 参 加 者 の - 4 -
正 岡 建 洋 松 崎 潤 太 郎 福 原 誠 一 郎 森 英 毅 韓 国 側 代 表 者 が 参 加 して 第 4 回 共 同 研 究 検 討 会 議 を 行 い 研 究 の 進 捗 状 況 の 報 告 並 びに 中 間 解 析 の 報 告 を 行 った 中 間 解 析 の 結 果 日 本 におけるカプサイシン 摂 取 量 は 韓 国 に 比 べ 顕 著 に 少 ないことが 明 らかになった 平 成 26 年 1 月 18 日 に 日 本 側 代 表 者 と 日 本 側 参 加 者 の 正 岡 建 洋 福 原 誠 一 郎 岡 田 佐 和 子 森 英 毅 韓 国 側 代 表 者 Hong Seok Choi Mijin Hong さらに は Jun Jae Kim Young Baek Kim Sang Pyo Lee が 参 加 してソウル(Konkuk University Medical Center) で 第 5 回 共 同 研 究 検 討 会 議 を 開 催 し 研 究 の 進 捗 状 況 と 中 間 解 析 の 報 告 に 加 えて 今 後 の 研 究 のまとめ 方 や 新 規 の 共 同 研 究 計 画 についての 打 ち 合 わせも 実 施 した - 5 -