大 規 模 災 害 後 の 記 念 碑 追 悼 行 事 儀 式 に 関 する 配 慮 事 項 ~ 東 日 本 大 震 災 に 焦 点 をあてて~ 1 学 校 側 が 配 慮 すべきこと この 度 の 東 日 本 大 震 災 のように 心 に 衝 撃 を 与 えかねない 体 験 の 後 半 年 一 年 といっ た 節 目 の 時 期 に 学 校 で 行 う 記 念 行 事 や 追 悼 式 典 は 児 童 生 徒 や 教 職 員 のみなさんが 精 神 的 に 回 復 していく 過 程 において 重 要 な 役 割 を 果 たします こうした 行 事 は 人 と 話 をすることとはまた 違 ったさまざまな 方 法 で 感 情 を 表 に 出 す 機 会 を 与 えてくれます ま た 学 校 での 記 念 行 事 は 深 い 悲 しみの 時 期 に 一 度 区 切 りをつけ 通 常 の 学 校 生 活 へ 戻 るき っかけを 与 えてくれます そしてこの 機 会 に 児 童 生 徒 も 教 職 員 も これまでにで きたこと 助 け 合 ったこと 成 長 したこと に 焦 点 をあてて 振 り 返 ってみるこ とをすすめます 記 念 行 事 には 植 樹 をしたり 手 紙 やカードを 書 いたり あるいはもっと 伝 統 的 な 追 悼 式 を 行 うなど 多 くの 形 式 が 考 えられます 各 行 事 が 精 神 的 な 回 復 に 役 立 つ 度 合 いは 人 によって 異 なり また 感 情 の 表 現 方 法 も 違 うことから 大 きなイベントを 一 つだけ 計 画 するよりも さまざまな 行 事 をいくつか 行 い 幅 広 い 感 情 の 表 現 の 機 会 を 提 供 することが 大 変 重 要 です 今 回 の 震 災 においては 震 災 だけでなく 原 子 力 発 電 にかかわる 汚 染 の 問 題 や 震 災 の 被 害 の 地 域 的 な 差 異 があることから 追 悼 に 関 する 行 事 を 計 画 するにあたっては 多 くの 児 童 生 徒 の 適 応 状 態 に 配 慮 するなど 多 面 的 に 是 非 を 検 討 したうえで 行 う 必 要 があります 記 念 日 反 応 として 記 念 日 や 大 切 な 人 の 命 日 には できごとや 故 人 を 思 い 出 し さみしく 悲 しい 気 持 ちになることがあります 援 助 ニーズの 大 きい 児 童 生 徒 や 家 族 特 に 家 族 を 亡 くした 子 どもには 特 別 の 配 慮 が 必 要 です 今 回 の 東 日 本 大 震 災 のように 予 兆 を 把 握 しにくく 繰 り 返 し 起 こり 得 る 自 然 災 害 や 終 息 が はかりにくい 原 発 汚 染 の 問 題 では アメリカで 起 きた2001 年 9 11 同 時 多 発 テロ 事 件 の 際 と 同 じく 単 にある 児 童 生 徒 や 先 生 が 亡 くなった 場 合 や 一 過 性 の 自 然 災 害 により 複 数 の 人 が 亡 くなった 場 合 とは 状 況 が 異 なります したがって 追 悼 行 事 の 計 画 にも 特 別 の 配 慮 が 必 要 とな ります そうした 大 規 模 災 害 がまた 起 こるかもしれない あるいは 悲 惨 な 状 況 が 起 こるかも しれないという 恐 怖 が 続 いていることで 震 災 から 一 定 の 期 間 がたっても 気 持 ちを 整 理 し て 前 向 きになることは 容 易 でないかもしれません こうした 場 合 は 追 悼 行 事 に 集 まることで 人 々が 感 情 や 不 安 を 共 有 し 孤 独 感 や 無 力 感 を 弱 めることが 非 常 に 重 要 な 目 的 です さらに どんなに 小 さなことでもよい ので 安 心 感 を 高 め 効 果 的 な 予 防 につながる 取 り 組 みについて 考 えるよう 参 加 者 に 呼 び かけることも 追 悼 行 事 の 目 的 になります 2 追 悼 行 事 を 計 画 する 際 のガイドライン 以 下 は 学 校 側 が 考 慮 すべき 注 意 点 です 被 災 地 から 離 れた 場 所 にある 学 校 で 追 悼 行 事 を 行 うことが 必 要 だと 学 校 が 判 断 した 場 合 には 被 害 者 やその 家 族 を 直 接 知 らない 児 童 生 徒 も 追 悼 行 事 には 参 加 をしてもらいましょう 1ゆっくりと 準 備 を 進 めましょう 計 画 や 方 針 を 決 める 段 階 で 児 童 生 徒 教 職 員 家 族 地 域 の 方 々に 参 加 してもらいましょう たとえば 米 国 オクラホマで 起 きた 爆 弾 テロの 犠 牲 者 を 悼 む 記 念 碑 の 計 画 と 建 造 は 5 年 の 年 月 をかけて 行 われました
2 学 校 管 理 職 教 師 保 護 者 の 方 々と 児 童 生 徒 を 構 成 メンバーに 入 れて 追 悼 行 事 実 行 委 員 会 を 作 ってください できれば 被 災 者 との 個 人 的 なつながりのあった 児 童 生 徒 に 本 人 の 意 思 を 尊 重 したうえで 計 画 の 段 階 から 参 加 してもらうことが 大 変 重 要 です 3 追 悼 行 事 は 必 ずしも 亡 くなった 方 を 悼 む 記 念 碑 建 造 である 必 要 はなく 一 連 の 行 事 活 動 として 計 画 することもできます グループに 分 かれてのセレモニーや 各 教 室 で 思 い 思 い の 弔 辞 や 絵 カードや 手 紙 などを 書 くことも 有 効 です 4 異 なる 文 化 を 持 ちながら 日 本 で 生 活 している 人 もいます そうした 人 々の 文 化 的 地 域 的 背 景 に 基 づく 儀 式 伝 統 信 仰 活 動 などを 尊 重 しましょう 3 効 果 的 な 追 悼 行 事 の 例 1 仮 設 の 追 悼 会 場 を 設 けることができます 亡 くなった 方 々を 悼 み 救 出 救 援 にあたった 人 たちに 感 謝 の 気 持 ちを 捧 げるために 学 校 内 に 場 所 を 定 め 生 徒 や 教 職 員 が 花 やメッセ ージ 詩 リボン ぬいぐるみや 写 真 などを 持 ち 寄 ることができるようにします 学 校 と 地 域 住 民 が 意 見 を 出 し 合 い より 恒 久 的 な 追 悼 場 所 に 移 すかどうかを 決 め 可 能 でない 場 合 は ふさわしいやり 方 で 仮 設 の 追 悼 場 所 を 終 了 させます 恒 久 的 な 追 悼 の 場 を 学 校 内 に 設 置 する 場 合 は 慎 重 にその 場 所 を 検 討 し 各 自 が 自 分 の 意 志 でその 場 を 訪 れるかどうかを 決 められ るよう 正 門 以 外 のところを 選 ぶようにしましょう 2 大 きな 災 害 事 故 を 経 験 した 学 校 や 地 域 でよく 求 められるのは いわゆる 希 望 の 贈 り 物 です これは 将 来 似 たような 悲 劇 が 再 発 するのを 防 ぐための 活 動 やプロジェクトを 指 します 例 えば 安 全 や 防 災 について 話 し 合 う 活 動 や 教 科 を 設 けることは 希 望 の 贈 り 物 のよい 例 です また 災 害 後 児 童 生 徒 がどのようなことができたか どのように 助 けあったか どのような 点 で 成 長 したかについての 発 見 も 希 望 の 贈 り 物 です 3 年 齢 に 関 わらず 書 く ことは 特 に 効 果 的 です 児 童 生 徒 たちはカードや 手 紙 ポスター など 書 いて 赤 十 字 等 の 支 援 団 体 を 通 じて 被 害 者 の 家 族 や 救 出 作 業 にあたった 人 たち( 警 察 消 防 など)へ 送 ることも 効 果 的 です 中 学 生 や 高 校 生 なら 市 町 村 都 道 府 県 または 国 の 政 府 宛 に 手 紙 を 書 くこともできるでしょう 4 障 害 のある 児 童 生 徒 たちも 含 め 全 員 が 何 らかのかたちで 参 加 するよう 心 がけてください 児 童 生 徒 の 知 的 情 緒 的 発 達 に 合 わせて 活 動 内 容 を 調 整 しましょう その 行 事 がすべての 児 童 生 徒 にとって 参 加 意 識 が 感 じられるように そして 活 動 がふさわしい 内 容 になるよう に 特 別 支 援 担 当 の 教 員 から 助 言 を 仰 いでください 4 発 達 段 階 に 応 じた 配 慮 追 悼 行 事 は 児 童 生 徒 たちの 発 達 段 階 に 適 した 形 態 のものを 計 画 しましょう 1 幼 い 子 どもたちの 場 合 たとえ 事 態 の 全 容 を 理 解 していないとしても 悲 嘆 の 気 持 ちを 表 現 するために 何 かをすることが 必 要 です 絵 を 描 いて 学 校 の 廊 下 に 貼 ったり 被 災 者 を 助 けた 消 防 士 警 察 官 や 被 災 地 の 子 どもたちに 送 ったりすることは 幼 い 子 どもたちが 気 持 ち を 表 現 し 共 有 する 素 晴 らしい 方 法 です 学 校 全 体 の 追 悼 式 典 の 中 で 歌 を 歌 ったり 詩 を 朗 読 したりすることもよいでしょう 子 どもによっては つらい 気 持 ちが 強 い 場 合 がありま す 気 持 ちの 表 現 には 個 人 差 があることに 留 意 しましょう
2 中 高 校 生 となると 事 件 事 故 を 忘 れず 被 害 者 を 悼 むことだけでなく 同 じような 悲 劇 の 再 発 をできる 範 囲 で 防 ぐための 学 校 や 地 域 社 会 での 活 動 に 自 分 が 貢 献 したと 感 じられ るようにするものが 必 要 です 3 中 高 生 ならば 追 悼 行 事 の 計 画 のあらゆる 面 ( 事 前 準 備 議 事 進 行 後 片 付 けなど)に 参 加 させましょう 例 えば 安 全 教 育 の 内 容 や 子 どもにできる 対 応 策 などを 生 徒 から 募 りま す そうしたアイディアを 書 いた 手 紙 を 生 徒 が 政 府 や 当 該 機 関 に 送 るのもよいでしょう 中 高 生 であれば 地 震 や 津 波 の 自 然 科 学 的 特 徴 や 安 全 予 防 教 育 などの 歴 史 的 経 緯 につ いて 学 ぶことは 克 服 に 役 立 つかもしれません 5 学 校 で 追 悼 式 典 を 行 う 際 のガイドライン 1 管 理 職 は 地 域 にある 他 の 学 校 などとも 協 議 し 必 要 に 応 じて 情 報 交 換 をしながら 計 画 する と より 効 果 的 です 2すべての 学 年 の 児 童 生 徒 を 式 典 の 計 画 に 参 加 させることが 好 ましいでしょう 3 記 念 式 典 は 短 時 間 に 抑 え 内 容 が 児 童 生 徒 の 年 齢 にふさわしいものになるよう 気 を 配 るこ と 小 学 生 であれば 15 分 から20 分 程 度 が 望 ましく 年 齢 の 高 い 生 徒 であっても1 時 間 程 度 を 限 度 にしましょう 4 音 楽 や 児 童 生 徒 自 身 による 演 奏 を 式 典 に 盛 り 込 みましょう 静 かな 音 楽 を 入 退 場 の 間 にかけることで 穏 やかなムードをつくり 保 つことができます 5 児 童 生 徒 保 護 者 教 職 員 で 事 前 に 式 典 の 進 行 や 内 容 について 検 討 しましょう 教 師 は 児 童 生 徒 にこの 式 典 が 通 常 の 集 会 とはどのように 違 うかについて 理 解 させ ふさわしい 態 度 が どんなものかを 児 童 生 徒 と 話 し 合 いましょう 6 短 いスピーチを 数 人 にお 願 いしてください 生 徒 たちに 広 く 知 られていて, 安 心 と 安 全 の 象 徴 となるような 人,つまり 児 童 生 徒 に 大 丈 夫 だという 安 心 感 と 援 助 を 与 えることができる 人 とだと 思 われている 人 (たとえば 市 長 校 長 地 元 の 警 察 署 長 や 地 元 自 治 体 の 教 育 長 な ど)が 望 ましいでしょう 7 状 況 に 配 慮 し 精 神 的 な 負 担 のない 範 囲 で 児 童 生 徒 の 家 族 も 招 待 しましょう 8 追 悼 式 典 には 児 童 生 徒 教 職 員 全 員 が 参 加 するのが 望 ましいです こうした 式 典 は 学 校 全 体 の 絆 を 強 め 児 童 生 徒 一 人 ひとりが 大 切 な 存 在 であるというメッセージを 送 る 効 果 が あるためです ただしつらい 気 持 ちが 強 く 特 別 な 配 慮 を 要 する 生 徒 の 場 合 は 式 典 の 時 間 の 間 に 落 ち 着 ける 場 所 で 何 か 静 かに 行 うことができる 活 動 をする( 例 : 黙 とう する)など 児 童 生 徒 の 状 況 に 応 じた 活 動 を 考 えることが 大 切 です その 際 は 児 童 生 徒 や 保 護 者 と 相 談 して 進 めましょう 保 護 者 といっしょに 行 事 を 行 い 終 了 後 保 護 者 といっしょに 帰 ることを 勧 めます 9 被 害 者 を 悼 み 平 和 や 平 穏 を 奨 励 するようなクラスの 旗 やポスターを 持 ち 寄 るよう 各 学 級 に 呼 びかけましょう 事 前 に 学 級 担 任 や 美 術 の 教 科 担 任 と 連 携 し 授 業 での 制 作 活 動 と 関 連 づけて 行 事 の 一 環 とすることもできます
10 追 悼 式 典 の 中 に 生 命 や 希 望 を 象 徴 するシンボルを 盛 り 込 みましょう 風 船 やロウソクは 心 の 痛 みや 悲 しみを 認 めながら 未 来 への 希 望 を 感 じさせるような 前 向 きでポジティブな 気 持 ちをもたらすシンボルとして 大 変 効 果 的 です 11 全 校 での 記 念 式 典 の 後 下 校 前 に 児 童 生 徒 は 一 度 自 分 の 教 室 へ 短 時 間 でも 集 まるようにし ましょう それにより 他 の 児 童 生 徒 教 師 ( 可 能 であれば)カウンセラーなどメンタル ヘルスの 専 門 家 などと 式 典 でどんなことがあったか どんなことを 感 じたについて 話 し 合 う 時 間 をもつことができます そして よりていねいな 対 応 が 必 要 な 子 どもを 把 握 すること ができます 12 実 行 委 員 会 のメンバーの 方 だけでなく すべての 保 護 者 が 追 悼 行 事 のことを 事 前 に 把 握 で きるよう 連 絡 をとり 家 庭 からも 気 になる 様 子 があれば 連 携 ができるようにしましょう 13その 地 域 に 根 差 した さまざまな 伝 統 や 儀 式 などを 取 り 入 れた 集 会 を 行 うようにしてくだ さい 6 行 事 の 後 のフォローアップ トラウマとなるような 経 験 衝 撃 的 な 体 験 を 過 去 のものとして 一 旦 整 理 し 前 向 きにな ることが 長 い 間 困 難 な 場 合 があります たとえば 復 興 活 動 に 時 間 がかかっている 場 合 トラウマとなるような 事 故 の 影 響 が 長 期 に 渡 る 場 合 などが 考 えられます また 記 念 日 反 応 で 児 童 生 徒 が 深 い 悲 しみを 感 じたり 抑 うつ 的 な 気 分 になったりする 場 合 もあります こうしたケースでは 児 童 生 徒 の 不 安 に 応 えるための 活 動 を 学 校 側 が 検 討 することが 大 変 重 要 です スクールカウンセラー また 学 校 心 理 士 の 資 格 をもつ 先 生 たちが 協 力 して 援 助 ニ ーズの 大 きい 児 童 生 徒 の 援 助 が 行 えるよう 準 備 することが 必 要 です また 行 事 を 契 機 にして 日 常 的 なケアのためのシステムを 状 況 に 合 わせて 改 善 したり 進 展 させたり することを 検 討 してみてもよいでしょう またこのような 行 事 の 影 響 は 直 後 に 出 る 場 合 ばかりではないことから 内 外 の 専 門 家 が 協 力 して 継 続 的 な 観 察 を 行 うことが 重 要 です 具 体 的 なフォローアップについて 以 下 に 例 をあげます 1 記 念 日 の 行 事 の 前 後 テレビ 等 のメディアで 東 日 本 大 震 災 の 地 震 やつなみのシーンが 繰 り 返 し 映 されることが 考 えられます テレビなどの 報 道 にふれる 時 間 を 制 限 するよう 児 童 生 徒 や 保 護 者 に 伝 えてください 2 行 事 の 前 後 は 家 族 など 信 頼 できる 人 と 一 緒 に 過 ごすようすすめましょう また 気 持 ちが つらくなった 場 合 の 相 談 先 について 児 童 生 徒 や 保 護 者 に 連 絡 しておきましょう 3 避 難 してきた 子 どもたちや 家 族 に 対 して 地 域 のボランティア 活 動 食 料 や 他 の 寄 付 活 動 な どと 学 校 による 活 動 との 連 携 をはかることも 効 果 的 です 4 今 の 問 題 を 最 小 化 し これららの 問 題 の 予 防 になることをめざして 安 全 や 防 災 教 育 他 者 の 苦 しみや 考 えに 配 慮 する 心 の 強 さや 寛 容 さを 育 てる 教 育 プログラムなどを 企 画 実 施 す ることも 大 切 です 4 恒 久 的 な 記 念 碑 を 建 造 する または 継 続 的 な 記 念 財 団 を 設 立 して 現 在 及 び 将 来 の 災 害 援 助 に 役 立 てるための 継 続 的 な 記 念 財 団 を 設 立 することも 考 えられます
Translated and adapted from Memorials/Activities/Rituals Following Traumatic Events:Suggestions for Schools National Association of School Psychologists translated Translated by Keiko Nagata at the Japanese Mental Health Network in New York of the Japanese Medical Support Network (JAMSNET) in New York, and reviewed and adapted by Hisako Nishiyama, Naoko Shimada, and Toshinori Ishikuma at the Japanese Association of School Psychologists(JASP). C National Association of School Psychologists