ニッセイ 基 礎 研 究 所 基 礎 研 レター -- 日 本 の 生 命 保 険 業 績 動 向 ざっくり 3 年 史 (3) 保 険 料 収 入 保 険 金 支 払 など 銀 行 窓 販 で 復 調? 保 険 研 究 部 主 任 研 究 員 安 井 義 浩 (3)3-833 yyasui@nli-research.co.jp お 金 の 流 れだけみると 保 険 会 社 はまず 保 険 料 を 収 入 し 保 険 金 を 支 払 う 会 社 の 運 営 に 経 費 がか かる たまった 資 金 を 運 用 することで 利 息 配 当 金 売 却 益 などの 収 益 を 得 る(あるいは 損 失 を 被 る) 利 益 に 応 じて 法 人 税 を 支 払 う 契 約 者 配 当 や 株 主 配 当 を 支 払 う という 仕 組 みである もちろん その 過 程 には 複 雑 な 仕 組 みが 控 えており 様 々な 問 題 がからまりあっているわけだが 今 回 は そのうち 入 口 にあたる 保 険 料 収 入 と 出 口 の 保 険 金 などの 支 払 い 事 業 費 の 推 移 を 見 てみる 保 険 料 収 入 の 推 移 保 険 料 収 入 3 3 かんぽ 生 命 団 体 年 金 保 険 個 人 年 金 保 険 団 体 保 険 個 人 保 険 98 98 99 99 生 命 保 険 会 社 の 最 も 重 要 な 収 入 項 目 が 保 険 料 収 入 であり お 金 の 動 きはここから 全 てが 始 まる 契 約 が 獲 得 できてはじめて 保 険 料 収 入 があるので 保 険 料 収 入 は 業 績 そのものという 側 面 があり ニッセイ 基 礎 研 レター -- Copyright NLI Research Institute All rights reserved
その 意 味 では 保 険 事 業 としては 保 険 料 収 入 が 増 加 すればするほど 好 ましい と 言 えるだろう (だからこそ 近 年 では 保 険 金 額 とは 別 に 年 換 算 保 険 料 という 業 績 指 標 も 出 てきている また 損 害 保 険 の 場 合 は 従 来 から 事 故 のあと 損 害 額 の 査 定 があって 後 に 保 険 金 額 が 決 まるので 生 命 保 険 と は 異 なり 通 常 は 契 約 高 というのは 考 えず 保 険 料 収 入 そのものが 重 要 な 業 績 指 標 になっている ) また 保 険 料 収 入 の 動 向 は 時 に 一 時 払 契 約 などで 一 括 収 入 される 保 険 料 や あるいは 貯 蓄 性 商 品 が 好 調 なとき(またはその 反 動 )は 保 険 金 ベースの 業 績 の 動 向 とは 異 なる 様 相 を 示 すこともある ただし 保 険 料 収 入 が 増 加 することは 時 に 高 い 予 定 利 率 を 背 負 う 厄 介 な 資 金 が 増 加 する とい う 面 もあり 実 際 現 在 に 至 るまで 続 く 超 低 金 利 状 況 では あとになってみれば どの 会 社 にとって も 重 荷 さらに 一 部 の 会 社 にとっては 致 命 傷 になるような 状 況 でもあった 98 年 代 以 降 の 動 きをみると 従 来 個 人 保 険 が 大 きな 割 合 を 占 めていたところに 団 体 年 金 保 険 個 人 年 金 保 険 の 好 調 さが 加 わり 順 調 に 増 加 してきていた その 後 いくつかの 生 保 が 破 綻 した 生 保 不 信 の 時 期 には 減 少 傾 向 をたどる ここ 数 年 は 景 気 が 上 向 きとなったことや 銀 行 窓 販 による 一 時 払 契 約 が 増 えたことにもより 持 ち 直 してきている 個 人 年 金 団 体 年 金 といった 年 金 の 占 める 割 合 は 98 年 度 には 割 程 度 だったが 最 大 で 年 度 には 割 以 上 にまでなり 現 在 は 割 強 で 推 移 し ている 保 険 料 に 占 める 一 時 払 の 動 きは 全 体 の 動 向 を 大 きく 左 右 する 下 図 でその 割 合 をみると 個 人 保 険 では 98 年 代 には 一 時 払 養 老 (と 推 測 される) 近 年 は 一 時 払 終 身 が 増 加 しており 全 体 の3 割 程 度 である 一 方 個 人 年 金 保 険 は 一 時 払 が 近 年 は~8 割 を 占 め 大 きく 変 動 している 保 険 料 月 払 のような 平 準 払 契 約 の 場 合 は その 後 保 険 期 間 等 に 応 じて 例 えば~ 年 など 少 しずつではあるが 長 期 間 安 定 して 保 険 料 が 収 入 されるので ある 程 度 見 通 しがつく 一 方 一 時 払 契 約 の 保 険 料 は 金 額 は 大 きいが 翌 年 は 別 途 新 たに 獲 得 した 契 約 からの 収 入 なので ブレが 大 きい 今 後 も 銀 行 窓 販 による 一 時 払 契 約 が 新 契 約 の 主 流 である 傾 向 が 続 けば 保 険 料 収 入 は 年 度 毎 に 相 当 変 動 するだろう (だからそんな 性 質 をもつ 保 険 料 収 入 で 会 社 規 模 を 競 わせても 意 味 が 薄 いと 思 うのだ が?) うち 個 人 保 険 の 収 入 保 険 料 うち 個 人 年 金 保 険 料 月 払 等 一 時 払 月 払 等 一 時 払 3 8 7 3 979 98 989 99 999 9 98 98 99 99 ニッセイ 基 礎 研 レター -- Copyright NLI Research Institute All rights reserved
保 険 金 等 の 支 払 金 の 推 移 保 険 金 等 の 支 払 金 の 種 類 には 保 険 金 年 金 給 付 金 解 約 返 戻 金 その 他 返 戻 金 がある まず 下 のグラフで 全 体 の 規 模 と 構 成 割 合 を 示 した そのあと それぞれの 特 徴 をみてみる 保 険 金 等 の 支 払 金 の 内 訳 3 3 かんぽ 生 命 解 約 その 他 返 戻 金 給 付 金 年 金 保 険 金 98 98 99 99 保 険 金 保 険 金 8 8 かんぽ 生 命 満 期 保 険 金 死 亡 保 険 金 等 98 98 99 99 3 ニッセイ 基 礎 研 レター -- Copyright NLI Research Institute All rights reserved
個 人 保 険 の 死 亡 率 ( 金 額 ベース)の 推 移 3..9.7..3..9.7 保 険 金 支 払 いの 動 きは かんぽ 生 命 の 影 響 が 大 きいので 上 の 保 険 金 のグラフでは 別 にしている 保 険 金 には 満 期 保 険 金 と 死 亡 保 険 金 があり 収 支 に 与 える 影 響 も 動 向 も 異 なるので 注 意 が 必 要 だ 死 亡 保 険 金 の 支 払 の 推 移 は 日 本 国 内 の 死 亡 率 がそれほど 激 しく 変 動 するとは 考 えられない 状 況 なの で 保 有 契 約 高 の 推 移 に 似 ている 保 有 契 約 高 と 死 亡 契 約 高 (= 死 亡 保 険 金 とみていいだろう )か ら 計 算 される 金 額 ベースの 死 亡 率 は 上 のグラフのようになる 一 般 には 日 本 の 平 均 寿 命 は 年 々 延 びて いる すなわち 死 亡 率 は 低 下 しているはずなのだが 保 険 会 社 の 実 績 としては 死 亡 率 は 上 昇 している おそらく 保 有 契 約 の 平 均 年 齢 が 高 齢 化 していることの 反 映 であろう 死 亡 保 険 金 は 例 えば 大 地 震 や 大 きな 飛 行 機 事 故 などで 被 害 者 が 突 然 増 加 すると ほぼそのまま 保 険 会 社 の 損 失 になる という 性 質 がある その 一 方 満 期 保 険 金 は 例 えば 一 時 払 養 老 の 満 期 保 険 金 の 支 払 であるが 98 年 代 の 一 時 期 猛 烈 な 勢 いで 販 売 されたのだが 年 後 とか 年 後 とかに 支 払 うことがわかっているし(99 年 と 998 年 のピーク 前 後 が 一 時 払 養 老 の 満 期 が 多 かったのだろう ) 保 険 料 (の 一 部 )を 準 備 金 として 積 み 立 ててあるので いくら 突 然 支 払 いが 増 えても 収 支 に 直 接 は 影 響 しない ここが 死 亡 保 険 金 とは 異 なる また 銀 行 や 証 券 会 社 も 含 めた 金 融 商 品 の 中 でも 利 回 りが 優 れているなどと 世 に 知 れると 販 売 量 ( 従 ってその 何 年 か 後 の 満 期 保 険 金 支 払 い)も 大 きく 増 減 するという 点 でも 死 亡 保 険 金 とは 性 質 が 異 なる 979 98 989 99 999 9 年 金 年 金 3 98 98 99 99 年 金 支 払 は 保 有 契 約 の 増 加 にリンクして 順 調?に 増 加 している ここ 年 ほどは 銀 行 窓 販 が 好 調 なことか ニッセイ 基 礎 研 レター -- Copyright NLI Research Institute All rights reserved
ら 急 増 している 団 体 年 金 と 個 人 年 金 を 分 けられなかったが 増 加 分 は 個 人 年 金 が 主 であると 思 われる ただし 現 状 では 個 人 年 金 といっても 終 身 年 金 ではなく 確 定 年 金 がほとんどであるし そもそも 支 払 うまで に 準 備 金 を 用 意 できているはずの 仕 組 みなので 年 金 支 払 いが 急 増 したからといって 直 接 会 社 収 支 に 悪 影 響 を 及 ぼすものではない これが 仮 に 将 来 例 えば 終 身 年 金 が 主 流 となって 大 きな 長 寿 リスクを 引 受 けることになれば より 慎 重 な 対 応 ( 保 険 料 や 準 備 金 の 設 定 )が 必 要 になると 考 えられるが 今 のところその 気 配 はない 3 給 付 金 給 付 金 3 その 他 一 時 給 付 金 生 存 給 付 金 手 術 給 付 金 入 院 給 付 金 死 亡 給 付 金 98 98 99 99 給 付 金 といっても 上 のグラフ 内 に 示 したように 様 々な 種 類 がある 一 時 給 付 金 が 最 も 多 く 変 動 も 大 きい 一 時 給 付 金 の 内 容 は 各 社 ごとに 異 なるので 一 律 にはいえ ないが どうやら 年 金 を 何 年 分 か 一 括 して 受 け 取 ると 年 金 ではなく 給 付 金 という 名 前 で 支 払 われ それが 多 いようだ 次 に 多 いのが 生 存 給 付 金 で 学 資 保 険 など 数 年 おきに 比 較 的 少 額 だがまとまったお 金 を 受 け 取 れるタイプの 保 険 から 発 生 するものである このつは 満 期 保 険 金 同 様 支 払 いの 準 備 はされており 収 支 に 直 接 影 響 を 与 えることは 少 ない と 考 えられる 問 題 はここからである 入 院 給 付 金 は 所 定 のけがや 病 気 で 入 院 した 際 に 支 払 われる 給 付 金 で 手 術 を 受 けると 手 術 給 付 金 も 支 払 われる これまでは 安 定 した 支 払 金 額 で 推 移 してきたが 第 3 分 野 商 品 の 販 売 が 好 調 なことから 入 院 給 付 金 は 今 後 増 加 すると 予 想 される 第 3 分 野 は 病 気 の 発 生 率 の 将 来 動 向 に 依 然 不 透 明 な 部 分 もあろうし それに 応 じた 充 分 な 保 険 料 水 準 となっているかどうかも 一 部 不 透 明 なまま 商 品 化 されているかもしれない と 考 えられている また 医 療 技 術 の 進 展 医 療 制 度 の 変 更 などにも 左 右 され 今 後 の 動 きには 注 意 しておく 必 要 がある 死 亡 給 付 金 は 主 に 個 人 年 金 保 険 で 年 金 を 受 け 取 る 前 に 死 亡 した 場 合 の 定 められた 給 付 が 多 いと 思 われる 個 人 年 金 保 険 保 有 契 約 の 増 加 により これも 増 加 傾 向 にある 人 の 生 死 に 係 るような 終 身 保 険 定 期 保 険 など 生 命 保 険 を 第 分 野 自 動 車 保 険 や 火 災 保 険 などの 損 害 保 険 を 第 分 野 というのに 続 き 医 療 保 険 介 護 保 険 など その 中 間 でどちらともいえないものを 第 3 分 野 という 現 在 は 生 命 保 険 会 社 損 害 保 険 会 社 両 方 で 扱 える ニッセイ 基 礎 研 レター -- Copyright NLI Research Institute All rights reserved
解 約 返 戻 金 その 他 返 戻 金 個 人 保 険 の 解 約 失 効 率 の 推 移 ( 対 年 度 始 保 有 金 額 ベース) %.... 98 98 99 99 まずは 個 人 保 険 の 解 約 失 効 率 の 推 移 をみると 上 のグラフのように もともと 98 年 頃 は 保 有 契 約 高 の % 程 度 という 相 当 に 多 い 解 約 失 効 があったわけである それが 新 契 約 の 好 調 保 有 契 約 の 増 加 とともに 次 第 に 改 善 されてきた しかし いくつかの 保 険 会 社 が 破 綻 するような 99 年 代 後 半 にあっては 生 命 保 険 会 社 そのものへの 不 信 から 解 約 が 増 加 していった 近 年 はそれが 落 ち 着 き 各 社 が 新 契 約 獲 得 だけではなく 既 契 約 の 保 全 にも 注 力 度 合 を 増 してきた ということもあって 今 までで 最 も 解 約 失 効 の 少 ない 時 代 になっており これはこれで 望 ましい 傾 向 である その 結 果 としての 解 約 返 戻 金 は ( 残 念 ながら 保 険 種 類 別 のデータにできていないのだが ) 同 様 の 傾 向 ではあるのだが 99 年 代 の 突 出 した 年 度 は 個 人 保 険 ではなく 団 体 年 金 分 野 の 解 約 返 戻 金 で あろう また 近 年 は 解 約 失 効 率 が 低 下 傾 向 であるにもかかわらず 解 約 返 戻 金 は 急 増 している ここでは 会 社 ごとには 示 さないが 個 人 年 金 保 険 の 販 売 が 急 増 していた 会 社 で 大 きな 解 約 返 戻 金 額 となってい るので 一 時 払 個 人 年 金 の 解 約 が 増 加 したものであろう 解 約 返 戻 金 その 他 返 戻 金 8 その 他 返 戻 金 解 約 返 戻 金 98 98 99 99 解 約 返 戻 金 に 関 する 収 支 ということで 補 足 する 解 約 返 戻 金 は 解 約 時 の 準 備 金 そのものか それ 以 下 の 金 額 ( 加 入 から 日 の 浅 い( 数 年 とか) 契 約 )に 設 定 することが 一 般 的 なので 実 は 準 備 金 の 取 ニッセイ 基 礎 研 レター -- Copyright NLI Research Institute All rights reserved
り 崩 しによる 解 約 益 という 利 益 が 出 ることが 多 い しかしそれは 将 来 の 収 入 保 険 料 により 賄 わ れるべきだった 経 費 等 の 回 収 にあたると 考 えられており 素 直 に 喜 ぶわけにはいかない また 解 約 以 後 当 然 のことながら 保 険 料 が 収 入 されなくなるので 明 らかにマイナスの 影 響 である (これも 通 常 はそうだというだけで 実 際 にはケースによる その 契 約 の 予 定 利 率 が.%という 高 い 水 準 だ ったら?) その 他 返 戻 金 というのは 保 険 契 約 の 諸 変 更 に 伴 い 責 任 準 備 金 に 変 更 が 生 じる 際 の 精 算 金 である 契 約 転 換 が 多 かった 頃 は 転 換 に 伴 う 精 算 金 のため 金 額 規 模 も 大 きかったが 近 年 はそれほどでもない (988 年 以 前 の 統 計 では 解 約 返 戻 金 とその 他 返 戻 金 の 内 訳 がすぐには 入 手 困 難 だったので 上 のグ ラフでは 合 算 で 表 示 している ) 3 事 業 費 の 推 移 事 業 費 千 億 円 3 98 98 99 99 事 業 費 の 内 訳 については あまり 詳 しいデータがない それこそざっくりとみることにする 事 業 費 は 人 件 費 関 係 と 物 件 費 関 係 に 大 別 できる ( 各 社 のディスクロージャー 資 料 を 3 年 みれば その 金 額 もわかるのだが 今 回 はご 勘 弁 いただきたい ) 人 件 費 の 中 には 契 約 獲 得 に 応 じた 営 業 職 員 への 報 酬 が 含 まれるので 98~9 年 代 の 新 契 約 好 調 期 には 増 加 し その 後 新 契 約 の 減 少 に 伴 い 減 少 した 物 件 費 については 特 に 国 内 大 手 社 において 保 有 契 約 の 減 少 や 厳 しい 収 支 状 況 に 対 応 して 経 費 節 減 が 叫 ばれ 物 件 費 関 係 は 極 力 削 減 されてきたという 傾 向 がある 現 在 では 窓 販 において 銀 行 に 払 う 手 数 料 が 増 加 していると 想 像 できるが ここでは 詳 細 は 捉 えられていない その 後 外 資 系 損 保 系 生 保 の 新 規 参 入 に 伴 い そうした 会 社 では 当 然 初 期 投 資 的 な 意 味 合 いもあ り 契 約 も 増 加 する 中 で 事 業 費 は 増 加 してゆく 近 年 の 事 業 費 増 加 はその 反 映 であろう 念 のため 毎 回 注 記 しておく 全 体 を 通 して 文 中 のグラフについては インシュアランス 生 命 保 険 統 計 号 ( 各 年 度 版 )( 保 険 研 究 所 )に 基 づくものである グラフ 化 は 筆 者 なお 破 綻 や 合 併 がある 年 度 などにおいて 一 部 データに 不 明 点 や 不 整 合 がある 箇 所 もあるが 業 界 全 体 の 長 期 のトレンドをみるという 主 旨 からご 容 赦 頂 きたい 7 ニッセイ 基 礎 研 レター -- Copyright NLI Research Institute All rights reserved