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Microsoft PowerPoint - 新津地区協議会(第1回)_0314ver02 [互換モード]

3. 対象地区での被災 東日本大震災では 安食地区は約 2km に亘り被災した 当時の現場条件や被災状況 被災のメカニズムを以下のとおり整理した 被災状況 全体的に堤防天端が沈下し 川裏法面において縦断的な亀裂や沈下が生じている なお 川表側に液状化の噴砂のあとは見られるが 法面には大きな変状は見ら

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JICE REPORT 45

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2. 河川関係の被災 新潟県中越沖地震における河川堤防の被害状況は 下表 に示すとおり国管理河川が 25 箇所 都道府県管理河川が 189 箇所 ダムの被害状況は 直轄ダム 機構ダム 補助 ダムでは被害が無く 柏崎市管理の川内 ( こうち ) ダム ( ア ースダム ) では 天端 ( 長さ 120

大震災の時のような大都市ではなかったことが大きいと考えられる 地震発生時刻は夕食の準備をしている可能性の高い時間帯であったが 比較的火災も少なく済んでいる この地震でクローズアップされたのは震災関連死 というものであった 内閣府の防災情報に掲載されている死者の死因を見てみると 地震による家屋の倒壊な

9 箇所名 江戸川区 -1 都道府県東京都 市区町村江戸川区 地区 清新町, 臨海町 2/6 発生面積 中 地形分類 盛土地 液状化発生履歴 近傍では1855 安政江戸地震 1894 東京湾北部地震 1923 大正関東地震の際に履歴あり 土地改変履歴 国道 367 号より北側は昭和 46~5 年 南

H19年度

177 箇所名 那珂市 -1 都道府県茨城県 市区町村那珂市 地区 瓜連, 鹿島 2/6 発生面積 中 地形分類自然堤防 氾濫平野 液状化発生履歴 なし 土地改変履歴 大正 4 年測量の地形図では 那珂川右岸の支流が直線化された以外は ほぼ現在の地形となっている 被害概要 瓜連では気象庁震度 6 強

Microsoft PowerPoint - 【741仙台】平成29年10月23日出水(第2報) ver.pptx

避難開始基準の把握 1 水害時の避難開始基準 釧路川では 水位観測所を設けて リアルタイム水位を公表しています 水位観測所では 災害発生の危険度に応じた基準水位が設定されています ( 基準となる水位観測所 : 標茶水位観測所 ) レベル水位 水位の意味 5 4 ( 危険 ) 3 ( 警戒 ) 2 (

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

熊本地震の緊急調査報告

家族みんなの防災ハンドブック 保存版

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

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ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

2011河川技術論文集

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5. 被害の概要札幌市東区東 15 丁目 ( 屯田通り ) では約 3.0km にわたって道路陥没が発生し, 交通障害が生じた. 加えて, 札幌市北区の西 4 丁目北 34 条 ~37 条においても道路陥没が発生した. 札幌市清田区里塚 1 条では宅地造成地盤の液状化が生じ, 道路や家屋に著しい沈下

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DocuPrint C5450 ユーザーズガイド

2019 年1月3日熊本県熊本地方の地震の評価(平成31年2月12日公表)

平成28年4月 地震・火山月報(防災編)

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

6. 現況堤防の安全性に関する検討方法および条件 6.1 浸透問題に関する検討方法および条件 検討方法 現況堤防の安全性に関する検討は 河川堤防の構造検討の手引き( 平成 14 年 7 月 ): 財団法人国土技術研究センター に準拠して実施する 安全性の照査 1) 堤防のモデル化 (1)

事業計画 ( 岩手県山田町 ) 1. 海岸対策 1 海岸の状況町内の地区海岸数被災した地区海岸数応急対策を実施した地区海岸数本復旧を実施する地区海岸数 8 地区海岸 8 地区海岸 3 地区海岸 8 地区海岸 2 堤防高 9 月 26 日及び10 月 20 日に堤防高を公表 重茂海岸 :T.P. 14

熊本市耐震改修促進計画 骨子(案)

道路災害復旧事業 区分 H24 H25 H26 H27 H 災害復旧事業 道路事業 ( 通常事業 ) 橋りょう 26 箇所延長 1,219m 道 路 602 箇所延長 299,089m 流留垂水地区 実施設

平成 28 年 4 月 22 日 ( 一財 ) 国土技術研究センター 平成 28 年熊本地震による河川堤防の被災調査結果 ( 速報 ) 1. 調査の概要平成 28 年 4 月 14 日に熊本県熊本地方で発生した マグニチュード 6.5 と推定される前震 平成 28 年 4 月 16 日に同じく熊本県

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Microsoft PowerPoint - 大塚

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下図は 緊急復旧工事実施箇所のほか 関東地整における大規模な被災が発生した 箇所を加えた計 78 箇所において 治水地形分類図から基礎地盤微地形を判読したものである 大規模災害が生じた箇所の治水地形分類は 自然堤防 旧河道 旧落掘 氾濫平野が多い 大規模災害箇所 ( 東北 関東 )/ 治水地形分類

2 被害量と対策効果 < 死者 負傷者 > 過去の地震を考慮した最大クラス あらゆる可能性を考慮した最大クラス 対策前 対策後 対策前 対策後 死者数約 1,400 人約 100 人約 6,700 人約 1,500 人 重傷者数約 600 人約 400 人約 3,000 人約 1,400 人 軽傷者

Microsoft PowerPoint - 宇治災害2

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

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和歌山県橋本市におけるダイオキシン類汚染の対策事例

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平成 28 年度 第 3 回一宮川流域浸水対策協議会資料 平成 28 年 6 月 20 日 長生合同庁舎 4 階大会議室 一宮川流域浸水対策協議会

プレゼンテーションタイトル

既存構造物がある場合の基礎地盤の液状化対策案 国土交通省の 都市防災推進事業 ( 市街化液状化対策事業 ) と連動して住宅地域を囲む周辺道路 下水 ( ライフライン ) の液状化対策と協同して住宅地の液状化対策を実施する 対策工法 WG ( 加倉井 中井 秋葉 田村 畑中 ) 都市防災推進事業 (

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気象庁技術報告第134号表紙#.indd

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現行計画 ( 淀川水系河川整備計画 ): 川上ダム案 治水計画の概要 事業中の川上ダムを完成させて 戦後最大の洪水を 中下流部では ( 大臣管理区間 ) 島ヶ原地点の流量 3,000m 3 /s に対して 川上ダムで 200m 3 /s を調節し 調節後の 2,800m 3 /s を上野遊水地や河道

国土技術政策総合研究所 研究資料

Microsoft PowerPoint - 【確定】資料3-1_110527(避難者外し).pptx

スライド 1

写真 豊岡第一樋管地点 ( 久慈川側 ) 写真 豊岡第一樋管地点 ( 堤内地側 ) 写真 水路擁壁の転倒 写真 水路擁壁の転倒 b) 地点 1-2( 湛水防除事業豊岡排水場, 河口から約 1.0km, 右岸 ) 堤外側法面におけるごみ

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東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

Microsoft Word - 09安城中部.docx

した 気象庁は その報告を受け 今後は余震確率の公表方法を改めることとしたという 2. 被害状況 被害要因等の分析 (1) 調査方針本委員会は 以下の調査方針で 被害調査と要因分析を行っている 1 極めて大きな地震動が作用し 多数かつ甚大な建築物被害が生じた益城町及びその周辺地域に着目して検討を進め

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目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

5.2 浸 透 に 対 する 堤 防 強 化 工 法 堤 体 を 対 象 と し た 強 化 工 法 難 透 水 性 材 料 被 覆 材 料 ( 土 遮 水 シート 等 ) 堤 防 強 化 工 法 断 面 拡 大 工 法 ドレーン 工 法 表 のり 面 被 覆 工 法 透 水 性 材 料 ドレーン

リサーチ ダイジェスト KR-051 自然斜面崩壊に及ぼす樹木根系の抑止効果と降雨時の危険度評価に関する研究 京都大学大学院工学研究科社会基盤工学専攻特定教授杉山友康 1. はじめに 鉄道や道路などの交通インフラ設備の土工施設は これまでの防災対策工事の進捗で降雨に対する耐性が向上しつつある一方で

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この資料は速報値であり 後日の調査で変更されることがあります 時間帯 最大震度別回数 震度 1 以上を観測した回数 弱 5 強 6 弱 6 強 7 回数 累計 4/14 21 時 -24 時 /15 00 時 -24 時 30

Microsoft Word - 005_第4章_工法(作業済)

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令和元年6月 地震・火山月報(防災編)

特集大規模自然災害からの復旧 復興 参考 警察が検視により確認している死者数 50 名 災害による負傷の悪化または避難生活等における身体的負担による死者数 106 名 6 月 日に発生した豪雨による被害のうち熊本地震と関連が認められた死者数 5 名建物被害全壊 8,360 棟, 半壊 3

三郷市地震ハザードマップ

対象地点 区 丁目 付近 作成日 : / / データ提供

重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

Microsoft PowerPoint - ◯06_出水期における防災体制

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避難を促す緊急行動 被災した場合に大きな被害が想定される国管理河川において 以下を実施 1. 首長を支援する緊急行動 ~ 市町村長が避難の時期 区域を適切に判断するための支援 ~ できるだけ早期に実施 トップセミナー等の開催 水害対応チェックリストの作成 周知 洪水に対しリスクが高い区間の共同点検

図 -3.1 試験湛水実績図 平成 28 年度に既設堤体と新設堤体が接合された抱土ゾーンにおいて調査ボーリングを実施し 接合面の調査を行った 図 -2.2に示すように 調査ボーリングのコア観察結果からは 新旧堤体接合面における 材料の分離 は認められなかった また 境界面を含む透水試験結果により得ら

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Microsoft Word 最終【資料-4】.docx

Microsoft PowerPoint - 資料-4_171031学識懇(地震対応).pptx

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東北地方太平洋沖地震への 気象庁の対応について ( 報告 ) 気象業務の評価に関する懇談会 平成 23 年 5 月 31 日 気象庁 1

Transcription:

研究報告 新潟県中越地震による信濃川の河川堤防被害調査について 折敷秀雄 調査第一部 河川流域管理室長 防のうち 今回 再度被災した区間があったこと S39年新潟地震で被災して原型復旧し その後に緩 傾斜堤防とした区間が今回無被災であったこと 本稿では 上記被災堤防について調査 研究した以下 研究の背景と目的 の事項について記述している 本復旧工法の提案に関する事項 平成16年10月23日 日 17時56分頃 新潟県中越 被害発生直後に実施した現地調査 地方の深さ約10kmでマグニチュード M 6.8の地震が 主な被災要因の推定 発生し 新潟県の資料によると 以下のような被害が報 地盤改良を含む復旧工法の概略検討と提案 告されている 望ましい追加調査 解析の提案に関する事項 人的被害 死者48人 重軽傷者4,794人 本復旧工事に伴う被災堤防の開削調査 住家被害 120,371棟 129,018世帯 地震時に堤防が有していた諸特性と被災の関係 非住家被害 40,368棟 地震時に緩傾斜堤防が発揮した耐震効果の推定 鉄道被害 新幹線および在来線で多数の不通 河川被害 229箇所 道路被害 6,064箇所 1 震源地 地震の特徴と堤防被害の発生域 図 1に今回の震源地 1964年新潟地震の震源地 信 濃川の位置を示した 信濃川における堤防被害の発生域 は 1964年の地震では 信濃川の大河津よりも下流部 に 今回は大河津よりも上流部に集中していた 今回は 発災後の1日間に震度6以上の強い地震が4回 も発生し このことは国内の観測史上初であった 表 1は発災日における震度5以上の地震 表 1 図 1 最大震度5弱以上の地震一覧表1 震源 河川位置 この地震で 信濃川でも延長約19kmの堤防の亀裂 沈 下や堰 樋門 護岸などの河川管理施設に甚大な被害が発 生した 以下 国土交通省信濃川河川事務所の要請を受け 筆者らが実施した堤防被害調査の概要を報告する 信濃川の堤防被害の主な特徴は 以下のとおりであった 地震発生直前に小千谷で150mm程度の降雨があり 長岡で危険水位に達する出水があったこと 1日に震度6以上の地震が4回発生したこと S39年 1964 新潟地震で被災し原形復旧した堤 JICE REPORT vol.8/ 05.11 11

2 降雨 出水状況 雨量 堤防被害が発生した近傍の雨量観測所の累加雨量 小千谷145mm, 長岡129mm, 大河津81mm 水位 長岡 および大河津水位観測所の出水状況 最高水位 両観測所とも ほぼ2日前に危険水位 発災時水位 指定水位以下 堤体内に浸透した雨水 河川水は 地震時に平時より も高い堤体内水位として残存していた可能性があり 地 図 2 雨量 大河津観測所 河川水位経時変化と 震時に地盤のみならず堤体の一部も液状化して被害を受 被災堤防断面 信濃川右岸2.0km 2 に加筆 けた箇所もあったことが推測される 図 2に 大河津で 地震発生前の10月19日から21日にかけて 台風23 号の影響により発生した信濃川の降雨 出水の概要は の雨量 大河津の水位と与板の水位から内挿法によって求 めた信濃川右岸2.0kmの被災堤防断面との関係を示した 以下のとおりであった 表 2 12 JICE REPORT vol.8/ 05.11 堤防被害一覧 2)に加筆

3 4 JICE REPORT vol.8/ 05.11 13

14 JICE REPORT vol.8/ 05.11

研究報告 4 今後の信濃川堤防の耐震対策の高度化に向けた 調査 検討について 上記3では 早期復旧を旨に極めて厳しい時間的制約 推進される予定であり 上記緩傾斜化工事が今回の地震 時に果たした効果の検証は 今後の同川の堤防整備上で 有益な技術的資料になると考えられる の下に 限られた調査データと概略検討によって復旧工 具体的には 既設の緩傾斜化工事の有無が堤防の耐震 法を提案した 被害軽微な区間には原形復旧を また被 性能向上に果たした効果を確認して 耐浸透性 耐震性 害深刻な3地区には 今回と同規模の外力では液状化が発 両面に効果的な対策工の整備に資することが望まれる 生しない程度の地盤改良を含む復旧工法を提案した 本 復旧の実施により 3地区における再度災害防止は可能と 考えられる 一方 同川では2度目の被災堤防 3地区にやや近似し た被災堤防 被害軽微でも3地区と類似の地形上にある堤 防もあった これらは わずかな条件変化で3地区と同様 な被害になることも考えられる 当地方では 一定期間 ごとに強い地震発生が予想されており 次の災害に備え て以下の調査 解析を行い 検討手法をさらに充実させ た上で3地区以外の堤防の耐震対策を進めておくことが望 まれる 望ましい追加調査 検討事項は 以下のとおりである 1 既設の緩傾斜堤防が今回の災害で発揮した耐震上の 効果 真野代地区 図 6に信濃川0 7k区間における1964年新潟地震 及び2004年新潟県中越地震の堤防被害箇所を示した 同図で右岸6.5kmの長呂地区 図中3' では上記の2つ 図 6 信濃川0 7k区間における被害箇所 2),4)に加筆 の地震によって同箇所で同様な被害が発生した また 今回 右岸2km付近の中条地区 図中1' でも深刻な被 害が発生した この2つの地区の下流に位置する真野代地区 図中1 では 1964年の地震で亀裂 沈下などの顕著な被害が 発生し 原形復旧工事が行われた その後 同地区では 平成2年度に耐浸透性強化を主な目的に法面勾配を緩く 大断面化し 堤体表層に遮水シートを挿入した 緩傾斜 化工事 が実施された そして 当区間は今回の地震で 無被害であった 図 7 一般に 耐浸透性に問題がある堤防と耐震性に問題が ある堤防は 類似の地形上に築堤されている事例が多い 信濃川においても 今後 耐浸透性強化対策工事が鋭意 図 7 真野代地区の堤防強化標準断面4),5)に加筆 JICE REPORT vol.8/ 05.11 15

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