患 者 誤 認 職 員 の 安 全 研 修 にそのまま 使 える 全 く 新 しい 複 合 教 材 モデルの 考 案 医 療 安 全 管 理 者 にとって, 日 常 業 務 におけ るヒューマンエラーを 減 らし, 医 療 事 故 を 未 然 に 防 ぐために 行 うべき 最 も 大 切 な 仕 事 とは 何 であろうか それは 言 うまでもなく, 全 職 員 の 安 全 教 育 である 充 実 した 院 内 研 修 会 を 通 し, 職 員 が 医 療 安 全 の 大 切 さを 心 に 刻 み, 日 頃 から 標 準 ルールを 共 有, 順 守 することが できれば, 安 全 文 化 の 醸 成 は 大 いに 進 む に もかかわらず, 全 国 的 には, 決 して 人 員 や 予 算 に 恵 まれず, 研 修 会 を 実 施 したくてもでき ないことに, 日 々お 悩 みの 医 療 機 関 の 方 々が 多 いのも 事 実 ではないだろうか 今 回,そのような 医 療 安 全 に 関 する,いわ ば 発 展 途 上 の 施 設 を 対 象 とした 研 修 支 援 ツー ルとして,これまでになかったまったく 新 し い 形 式 の 複 合 教 材 モデルを 考 案 した テーマ ごとに 安 全 情 報 を 網 羅 したスライド 集 に, 当 院 のヒヤリ ハット 劇 場 ダイジェスト 動 画 ( 関 連 事 故 の 再 現 & 防 止 寸 劇 )を 組 み 込 み, そのまま 皆 さんがプレゼンテーションに 使 用 するだけで, 全 職 種 職 員 を 対 象 とした 院 内 安 全 研 修 会 を 驚 くほど 簡 単 に 開 催 することがで きる 論 より 証 拠,まずは 自 分 自 身 で, 本 教 材 の 系 統 的 な 内 容 とプレゼンテーションのし やすさを 確 認 されたい 各 スライドは,あくまで 演 者 となる 方 々の 立 場 から, 事 前 にサラッと 一 読 しただけで 容 易 にプレゼンテーションができるレベルの 分 かりやすさ を 追 求 した バランスよく 挿 入 された 複 数 の 寸 劇 動 画 は,スライドから ワンクリックで 再 生 することができる 本 物 の 職 員 が 演 じ, 臨 場 感 に 溢 れた 実 際 の 上 演 寸 劇 記 録 は, 時 間 をかけて 丹 念 に,それぞれ1 3 分 以 内 ( 平 均 2 分 )の 短 縮 動 画 に 自 主 編 集 し, 医 療 現 場 に 即 した 重 要 安 全 情 報 を 徹 底 的 に 見 える 化 することに 努 めた 本 教 材 は 基 礎 的 な 内 容 が 中 心 であるために,すでに 高 水 準 の 安 全 管 理 がなされている 医 療 機 関 では 当 たり 前 のことが 多 く,あまり 参 考 にならな いことをお 断 りしておきたい スライド 集 と 劇 場 編 集 動 画 を 組 み 合 わせた 研 修 教 材 の 使 用 方 法 今 回 はヒューマンエラーの 代 表 格 である 患 者 誤 認 をテーマとして, 計 80 枚 のスラ イドと13 本 の 関 連 動 画 からなる 複 合 教 材 を 提 供 する 教 材 全 体 の 講 演 時 間 については, 演 者 のス ピーチ 速 度 などによって 幅 があるものの, 約 26 分 間 の 全 動 画 再 生 時 間 を 含 め, 概 ね90 分 前 後 となるようにデザインされている 各 施 設 の 安 全 管 理 レベルに 合 わせ,じっくりと 時 間 をかけた 研 修 が 必 要 と 判 断 されれば, 教 材 を2 回 に 分 けて 講 演 してもよいし, 逆 にスラ イドや 動 画 の 一 部 を 省 略 して 研 修 時 間 を 短 縮 することも 可 能 である ただし, 講 演 時 間 が 少 々 長 くなっても,タイミングよく 入 る 短 時 76
❶ ❸ ❷ クリックで再生 ❺ ❹ ❻ 間動画の視角効果により 多くの職員が最後 風化させてはならない歴史的な医療ミスとし まで熱心に 肩の力を抜き 楽しく受講でき て ぜひ多くの職員と共に視聴し 貴重な教 ることを期待している 訓にしていただきたい 動画の終了時点 ま パワーポイントで作成されたスライドから たは動画のスキップや再生を中断する場合 動画の再生はとても簡単である 例えばスラ は カーソルを画面外で左クリックすれば次 イドNo.18 ❶ は マウスでカーソルを静 のスライドへ移る 止画面内に動かすと下端に表示されるバーの 左ボタンをクリックすると再生が始まる 寸 劇1は某大学病院で発生した患者取り違え手 患者誤認 をテーマにした 本教材の概要 術事件の真相に迫った内容である わずか2 本教材は目次 ❼ のとおり 患者誤認の 分弱の編集動画の中で 患者誤認の連鎖を引 防止に必要な安全情報が漏れなく5つの章に き起こした4つの安全システムの不備を端的 系統的に分類されている 紙面の都合上 順 に 見える化 している ❷ ❻ 決して 次 主なスライド要旨を示した 表 本章 77
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を一読すれば すべてのスライドを事前に チェックしなくても プレゼンテーションの 要点を簡単に把握することができる スライド1はタイトル スライド2は目次 スライド80は締めの言葉となっている おわりに 安全な医療の実践はすべての医療機関の使 命である 本教材が多くの施設における安全 教育の一助となることを願っている 第3回 P.107 は 口頭伝達 の実態 問題点 3 東京海上日動メディカルサービス株式会社 リスク マネジャーのための医療安全実践ガイド 日本看護協 会出版会 2009. 4 河野龍太郎 医療におけるヒューマンエラー なぜ 間違えるどう防ぐ 第2版 医学書院 2014. 5 奥澤星二郎 実践 ヒヤリ ハット劇場 企画 開 催のポイント 第3回 台本作り 体験実習 の方法 手順 病院安全教育 Vol.2 No.4 P.63 68 2015. 6 奥澤星二郎 実践 ヒヤリ ハット劇場 企画 開催のポイント 第2回 全職種 全職員を 巻き込 む シ カ ケ 病 院 安 全 教 育 Vol.2 No.3 P.74 80 2015. 7 奥澤星二郎 実践 ヒヤリ ハット劇場 企画 開催のポイント 第1回 企画 広報 準備 開催の プロセス 病院安全教育 Vol.2 No.2 P.48 54 2014. 8 奥澤星二郎 実例で紐解くヒヤリ ハット劇場の作 り方 第3回 医療ミスと接遇不良 病院安全教育 Vol.1 No.6 P.100 107 2014. 9 奥澤星二郎 実例で紐解くヒヤリ ハット劇場の作 り方 第2回 同姓異名患者の取り違え検査ミス の 要因と防止対策 病院安全教育 Vol.1 No.5 P.42 48 2014. 10 奥澤星二郎 実例で紐解くヒヤリ ハット劇場の 作り方 第1回 看護師間の連携不足による点滴業務 ミス 病院安全教育 Vol.1 No.4 P.43 49 2014. 11 奥澤星二郎 猪熊洋子 小沼誠一 小菅敏雄 飯 島博 関口喜美子 インシデント事例をシンプルに 見える化 して伝える ヒヤリ ハット劇場 12年 間 の 成 果 と そ の 本 質 病 院 安 全 教 育 Vol.1 No.3 P.24 28 2013. 適切な安全対策を中心に 今回の 患者誤認 と同様 スライド集と関連動画を複合した職 員研修教材を提供する 本教材内容について 読者の方々からのご 意見やご希望を前向きにお聞かせいただき よりよい教材制作の取り組みへとフィード バックしたい 好評連載中 インシデント別の 安全教材を毎号提供 この機会にぜひご購読を 引用 参考文献 1 日本医療マネジメント学会監修 坂本すが責任編 集 5日間で学ぶ医療安全超入門 学研メディカル秀 潤社 2013. 2 日本医療マネジメント学会監修 相馬孝博著 ねこ ろんで読めるWHO患者安全カリキュラムガイド メ ディカ出版 2013. 81