第 5 章 任 意 整 理 について Q25 任 意 整 理 のポイント 任 意 整 理 とはどういうことですか そのポイントを 教 えてください 1. 任 意 整 理 とは 任 意 整 理 とは 支 払 能 力 を 超 える 債 務 を 負 っている 債 務 者 について 支 払 能 力 に 応 じた 返 済 計 画 を 立 て その 返 済 計 画 にしたがって 個 々の 債 権 者 との 間 で 返 済 方 法 についての 和 解 をしていく 債 務 整 理 の 方 法 です 一 般 的 に 債 務 者 からの 依 頼 を 受 けて 弁 護 士 認 定 司 法 書 士 が 任 意 整 理 をす る 場 合 には 債 権 者 に 対 して 債 務 者 との 間 の 全 取 引 の 経 過 を 記 載 した 書 面 の 提 出 を 求 め 利 息 制 限 法 に 基 づく 引 き 直 し 計 算 により 残 元 本 額 を 算 出 し その 金 額 を 基 準 として 債 権 者 に 対 して 債 務 者 の 支 払 える 金 額 で 分 割 返 済 を 提 案 し 和 解 を 取 り 付 けることになります 分 割 返 済 の 期 間 としては 3 年 以 内 が 多 いで すが 債 務 者 の 事 情 によっては 5 年 程 度 の 返 済 期 間 になることもあります 和 解 成 立 後 は 家 計 管 理 をしながら 返 済 原 資 を 捻 出 し 返 済 していくことが 大 切 です 2. 任 意 整 理 の 有 利 な 点 任 意 整 理 は 破 産 手 続 きや 個 人 再 生 手 続 きなどの 法 的 整 理 とは 異 なり 裁 判 所 の 関 与 を 原 則 として 必 要 としないため 比 較 的 柔 軟 な 対 応 が 可 能 となります 例 えば 残 元 本 額 をさらに 減 額 する 代 わりに 返 済 期 間 の 短 縮 を 要 求 するなどの 債 権 者 にも 対 応 することができます また 債 務 者 の 返 済 能 力 に 基 づいて 返 済 計 画 を 立 てるので 無 理 のない 返 済 ができるようにもなります また 和 解 にあたっては 残 元 本 額 に 最 終 取 引 日 から 和 解 成 立 までの 遅 延 損 害 金 や 将 来 の 利 息 を 付 けない 形 で 和 解 案 を 提 示 して 債 権 者 と 合 意 すること も 可 能 です さらに 破 産 手 続 きとは 異 なり 債 務 者 は 資 産 を 処 分 せずに 保 有 したまま 債 務 の 整 理 をすることが 可 能 ですし 任 意 整 理 をしたからといって 一 定 の 職 業 における 資 格 制 限 を 受 けることもありません 33
3. 任 意 整 理 の 不 利 な 点 任 意 整 理 の 実 務 においては 基 本 的 に 利 息 制 限 法 による 引 き 直 し 計 算 後 の 残 元 本 額 全 額 を 返 済 することで 和 解 をするため 免 責 許 可 決 定 により 残 債 務 の 返 済 義 務 を 免 れる 破 産 手 続 きに 比 べて 債 務 者 の 返 済 額 は 多 くなるのはもちろん のこと 残 元 本 についても 一 定 程 度 の 減 額 が 認 められる 個 人 再 生 手 続 きと 比 べ ても 返 済 額 が 多 くなる 場 合 があります また 破 産 手 続 きにおいては 早 期 ( 破 産 手 続 開 始 決 定 から 免 責 許 可 決 定 まで 約 2 6 カ 月 ですが 裁 判 所 により 異 なります )に 債 務 の 返 済 義 務 を 免 れて 経 済 的 な 再 生 が 可 能 であることに 比 べ 債 権 者 との 間 で 和 解 した 返 済 期 間 (3 年 ないし 5 年 )が 過 ぎるまでは 債 権 者 に 対 する 返 済 を 続 けていくことになるた め 経 済 的 に 再 生 するまでには 長 い 時 間 がかかります さらに 破 産 手 続 きや 個 人 再 生 手 続 きでは 法 的 手 続 に 基 づいて 債 権 者 の 権 利 につき 画 一 的 処 理 がなされるのに 対 し 任 意 整 理 は 個 々の 債 権 者 との 和 解 で あるため まれに 強 硬 な 債 権 者 から 訴 訟 提 起 や 強 制 執 行 ( 給 与 差 押 えなど)が なされることがあり その 場 合 は 別 途 その 対 応 が 必 要 となります 特 に 不 動 産 担 保 付 きの 借 入 れや 債 権 者 に 所 有 権 が 残 っている 自 動 車 ローンなどの 場 合 には 債 権 者 が 担 保 権 を 実 行 したり 車 を 引 き 揚 げたりして その 処 分 代 金 か ら 優 先 的 に 回 収 を 図 ることも 可 能 ですから 任 意 整 理 を 働 きかけても 債 権 者 の 協 力 をなかなか 得 ることはできません 34
Q26 任 意 整 理 のための 事 前 準 備 任 意 整 理 を 弁 護 士 や 認 定 司 法 書 士 に 依 頼 する 場 合 どんな 準 備 が 必 要 ですか 1. 債 権 者 一 覧 表 の 作 成 など 弁 護 士 や 認 定 司 法 書 士 が 任 意 整 理 を 受 任 した 場 合 には まず 債 権 者 に 対 して 受 任 通 知 を 発 送 します 受 任 通 知 が 債 権 者 に 届 くと 債 権 者 から 債 務 者 への 直 接 の 請 求 は 止 まりますので この 受 任 通 知 が 債 権 者 に 届 くことが 非 常 に 重 要 に なります このため あらかじめ 手 元 のカード 契 約 書 領 収 書 などにより 債 権 者 の 名 称 住 所 電 話 番 号 などを 調 べて 債 権 者 一 覧 表 を 作 成 しておくことが 必 要 です この 一 覧 表 には 上 記 の 情 報 のほかに 各 債 権 者 との 取 引 開 始 時 期 ( 完 済 した 分 も 含 めます ) 現 在 の 債 務 残 高 保 証 人 の 有 無 担 保 差 し 入 れの 有 無 委 任 状 への 署 名 捺 印 や 印 鑑 証 明 書 交 付 の 有 無 などを 記 載 します また カー ドがある 場 合 は 受 任 通 知 と 一 緒 にカードを 債 権 者 に 返 却 することになります 2. 債 権 一 覧 表 の 関 連 資 料 債 権 者 毎 の 債 務 額 を 確 定 する 場 合 に 取 引 開 始 当 初 からの 取 引 経 過 の 開 示 を 受 け 利 息 制 限 法 に 基 づく 引 き 直 し 計 算 を 行 うことになるので 債 権 者 から 全 ての 開 示 が 行 われているかを 判 断 することが 重 要 になります それぞれの 取 引 の 契 約 書 や 領 収 証 が 残 っていれば 相 談 時 にはそれも 持 参 する 必 要 があります また 保 証 人 が 付 いていたり 担 保 を 差 し 入 れていたり 公 正 証 書 が 作 成 され ていたりすると その 債 権 者 への 対 応 はより 慎 重 に 進 める 必 要 もあるので 関 係 書 類 を 準 備 しておきます 3. 債 務 者 本 人 の 身 元 資 産 家 計 収 支 などの 説 明 資 料 受 任 通 知 に 記 載 する 事 項 として 必 要 ですので 債 務 者 本 人 の 氏 名 住 所 生 年 月 日 のほか 債 権 者 に 登 録 されている 住 所 が 現 住 所 と 異 なる 場 合 には その 住 所 を 記 載 した 書 面 を 用 意 する 必 要 があります 次 に 返 済 計 画 を 立 てるため には 家 族 関 係 毎 月 の 収 入 額 ( 給 与 賞 与 の 額 など) 家 計 の 収 入 支 出 の 状 況 主 な 資 産 の 状 況 ( 預 金 保 険 自 動 車 不 動 産 の 有 無 金 額 など)などを 記 載 した 説 明 資 料 を 準 備 します 35
Q27 任 意 整 理 の 手 続 き 任 意 整 理 を 自 分 でしたいのですが 可 能 ですか 1. 債 務 者 自 身 による 交 渉 債 権 者 との 交 渉 場 面 だけを 考 えれば 債 務 者 自 身 が 債 権 者 と 交 渉 して とり あえず 目 先 の 問 題 である 返 済 額 の 減 額 一 時 の 返 済 猶 予 または 利 率 の 引 き 下 げなどをしてもらえるかもしれません その 意 味 では 債 務 者 が 自 分 で 行 うこ とは 可 能 かも 知 れません しかし 任 意 整 理 となると 債 務 者 自 身 が 債 務 整 理 に 関 する 知 識 や 経 験 が 乏 しく かつ 契 約 通 りの 弁 済 ができなくなった 立 場 に 立 つことになるので 債 権 者 と 交 渉 しても 交 渉 は 債 権 者 主 導 で 進 められ 債 務 者 に 不 利 な 条 件 で 和 解 さ せられたり 法 律 の 専 門 家 である 弁 護 士 や 認 定 司 法 書 士 (この 項 では 弁 護 士 など といいます )が 受 任 した 場 合 と 同 条 件 では 和 解 に 応 じなかったりす る 事 例 が 多 く 見 られます また 高 金 利 で 約 定 した 契 約 で 取 引 が 長 期 間 にわたっている 場 合 には 利 息 制 限 法 による 引 き 直 し 計 算 の 結 果 過 払 金 が 発 生 していることが 判 明 するとき がありますが 債 務 者 自 身 の 交 渉 ですと 債 権 者 から 返 還 を 受 けることは 極 め て 困 難 です 2. 弁 護 士 など 専 門 家 の 交 渉 が 不 可 欠 日 本 弁 護 士 連 合 会 では 多 重 債 務 者 に 対 する 任 意 整 理 を 処 理 するための 全 国 統 一 基 準 ( 参 考 資 料 6. を 参 照 してください )の 中 で 1 取 引 開 始 時 点 からの 取 引 経 過 の 全 部 開 示 を 求 めること 2 利 息 制 限 法 所 定 の 制 限 利 率 による 引 き 直 し 計 算 を 行 い 最 終 取 引 日 の 残 元 本 を 確 定 すること 3 弁 済 案 の 提 示 にあたっ ては 遅 延 損 害 金 と 将 来 の 利 息 をつけないことを 打 ち 出 しており 弁 護 士 など の 専 門 家 による 処 理 の 場 合 は この 基 準 に 従 って 和 解 に 応 じる 業 者 が 多 くなっ てきています したがって 適 正 な 処 理 を 望 む 場 合 は 債 務 者 自 身 が 判 断 することよりも 弁 護 士 などの 専 門 家 に 依 頼 して 手 続 を 進 めることが 不 可 欠 です 36
Q28 任 意 整 理 の 弁 護 士 認 定 司 法 書 士 費 用 貸 金 債 務 の 任 意 整 理 を 弁 護 士 や 認 定 司 法 書 士 に 依 頼 した 場 合 の 費 用 は どれ 位 かかりますか 弁 護 士 や 認 定 司 法 書 士 ( 以 下 弁 護 士 など といいます )の 報 酬 は 自 由 化 されており 弁 護 士 などによってその 金 額 はまちまちですので 依 頼 する 場 合 には 事 前 に 確 認 する 必 要 があります 1. 弁 護 士 に 依 頼 する 場 合 東 京 三 弁 護 士 会 で 開 設 している 法 律 相 談 センターでの 受 任 事 件 における ク レジット サラ 金 事 件 の 報 酬 基 準 ( 目 安 ) ( 参 考 資 料 5. を 参 照 してください ) が 広 く 知 られています 同 センターを 通 さない 事 件 について 弁 護 士 が 債 務 整 理 を 受 任 する 際 にも 参 考 にされているようです 例 えば 債 権 者 3 社 以 上 の 基 準 ( 消 費 税 を 含 む)でみると 受 任 してもらう 際 の 着 手 金 として 債 権 者 1 社 当 たり 2 万 1 千 円 和 解 が 成 立 した 場 合 の 報 酬 金 として 債 権 者 1 社 当 たり 2 万 1 千 円 のほかに 残 元 金 ( 利 息 制 限 法 の 制 限 利 率 を 超 える 約 定 利 率 の 場 合 には 引 き 直 し 計 算 を 行 った 後 の 残 元 金 )から 免 除 を 受 けた 金 額 の 10.5% 相 当 額 を 減 額 報 酬 金 ( 業 者 から 過 払 金 の 返 還 を 受 けたときは 過 払 金 報 酬 金 として 返 還 額 の 21% 相 当 額 )の 弁 護 士 報 酬 合 計 額 と 実 費 ( 印 紙 郵 便 切 手 コピー 代 など)が 必 要 となります 2. 認 定 司 法 書 士 の 費 用 認 定 司 法 書 士 の 場 合 も 費 用 は 弁 護 士 の 場 合 と 概 ね 同 様 です ただし 簡 易 裁 判 所 で 訴 訟 代 理 権 が 認 められる 認 定 司 法 書 士 が 取 り 扱 える 事 案 は 訴 訟 訴 訟 以 外 の 交 渉 の 場 合 も 経 済 的 な 利 益 額 が 140 万 円 以 内 の 事 案 に 限 定 されますの で その 金 額 を 超 える 可 能 性 がある 事 案 を 依 頼 しようとする 場 合 には 注 意 が 必 要 です 37