論 文 欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 - 経 済 格 差 難 民 危 機 エリート 大 衆 ポピュリズムという 要 因 - 田 中 友 義 Tomoyoshi Tanaka 一 財 国 際 貿 易 投 資 研 究 所 客 員 研 究 員 駿 河 台 大 学 名 誉 教 授 要 約 反 グローバリズムの 動 きが 欧 州 全 域 に 燎 原 の 火 のような 勢 いで 強 まっ ている グローバリズムに 反 対 する 極 右 や 極 左 のポピュリスト 政 党 や 政 治 家 が 台 頭 し 現 実 の 生 活 に 不 満 を 抱 く 低 所 得 層 の 人 々(ここでは 大 衆 と 呼 んでおく)のマグマのように 鬱 積 している 不 満 をうまく 吸 い 上 げて 支 持 の 拡 大 に 繋 げているからである フランスの 極 右 政 党 国 民 戦 線 (FN) は 反 グローバル 化 やイスラム 移 民 の 排 斥 を 訴 え 支 持 層 を 広 げ ドイツや 英 国 オランダ イタリア デンマークなどでも 反 移 民 政 党 が 台 頭 する ポピュリズムの 蔓 延 は グローバリズムを 否 定 して 排 外 主 義 的 保 護 主 義 的 なナショナリズムを 掻 き 立 てることになる こうした 反 グローバリズムやポピュリズム 台 頭 の 背 景 には 経 済 貿 易 のグローバル 化 を 進 めていけば 雇 用 機 会 が 増 え 所 得 も 増 えて 国 も 個 人 も 豊 かになるという 大 衆 の 期 待 があった しかしながら 現 実 は 期 待 とは 大 きく 違 って 2008 年 に 始 まったリーマン ショック 後 の 長 期 の 低 成 長 で 中 間 所 得 層 の 雇 用 や 所 得 が 低 迷 する 中 で 深 刻 な 長 期 の 失 業 による 低 所 得 層 も 急 増 した その 一 方 で 少 数 の 富 裕 層 に 多 くの 富 が 集 中 するな ど 所 得 格 差 が 著 しく 拡 大 欧 州 の 社 会 基 盤 が 大 きく 揺 いでいる また EU の 人 の 自 由 移 動 や 国 境 管 理 の 廃 止 によって 難 民 移 民 が 未 曽 有 の 規 模 で 流 入 し 自 分 たちの 職 場 を 次 々と 奪 っているのではないかと 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 か 自 分 たちの 社 会 保 障 給 付 や 医 療 サービスを 横 取 りしているのではない かと 強 い 憤 りを 感 じたり あるいは 欧 州 で 育 った 若 いイスラム 原 理 主 義 者 がテロ 事 件 を 頻 繁 に 起 こし 社 会 不 安 を 煽 っていると 考 える 人 々が 急 速 に 増 えてきている 排 外 主 義 を 唱 えるポピュリズムがこのような 人 々の 不 満 憤 り 不 安 に 首 尾 よく 付 け 入 り エスタブリッシュメント( 支 配 階 級 )や 権 限 が 肥 大 化 した EU( 官 僚 機 構 )への 異 議 申 し 立 て 運 動 へと 大 衆 を 誘 導 していく 2016 年 6 月 の 英 国 の 国 民 投 票 による EU 離 脱 の 決 定 は 戦 後 一 貫 して 進 められてきた 欧 州 統 合 の 拡 大 深 化 やグローバリズムを 再 検 討 す ることを 余 儀 なくさせる 一 大 サプライズであった いまや 既 存 の 政 党 エリート 層 は 欧 州 が 直 面 する 数 々のリスクを 回 1) 避 する 統 治 力 を 欠 いているのではないか そもそも 大 衆 の 声 を 代 弁 してくれていないのではないかという 反 発 や 不 信 感 が 急 速 に 強 まってい る エリートと 大 衆 との 断 絶 は 深 刻 であると 言 わざるを 得 ない 本 稿 では 台 頭 する 反 グローバリズムの 背 景 を 4 つの 要 因 - 経 済 格 差 難 民 危 機 エリート 大 衆 ポピュリズム-をもとに 検 証 してみる 1. 拡 大 する 経 済 格 差 進 む 貧 困 化 (1) 低 迷 する 経 済 高 止 まりの 失 業 率 EU が 統 合 深 化 の 最 大 の 目 標 とし てきたテーマは グローバリズム( 市 場 統 合 通 貨 統 合 )による 安 定 的 な 経 済 成 長 と 雇 用 の 創 出 によって EU 全 域 の 国 や 国 民 を 豊 かにすることで あった しかしながら 現 実 は こうした 期 待 とは 大 きく 違 っていた 2008 年 のリーマン ショック 後 の EU 経 済 は 長 期 の 低 迷 と 深 刻 な 失 業 者 の 排 出 や 非 正 規 雇 用 の 増 加 などで 低 所 得 者 層 を 生 み 出 し 続 けている(10% 台 の 高 失 業 率 とりわけ 若 年 者 の 失 業 率 は ギリシャ スペイン イタ リアなどでは 40~50%と 絶 望 的 な 状 況 下 にある) 欧 州 経 済 の 長 期 的 低 迷 (メディアは 失 われた 10 年 とか 経 済 の 日 本 化 などと 喧 伝 し ている)や 深 刻 化 する 失 業 者 の 状 況 を 統 計 的 な 側 面 から 検 証 していきた 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
い 表 1 は 2008 年 以 降 の EU の GDP ( 国 内 総 生 産 ) 成 長 率 と 一 人 当 たり GDP の 推 移 を 示 したものである リ ーマン ショックの 翌 年 と 12 年 のユ ーロ 危 機 ( 第 2 次 のギリシャ 債 務 危 機 )には マイナス 成 長 を 記 録 した が 14 年 以 降 やや 回 復 傾 向 に 転 じて いる 表 1 には 示 されていないが 04 年 ~07 年 までの 各 年 の 実 質 GDP 表 1 EU の GDP 成 長 率 の 推 移 GDP 成 長 率 ( 実 質 %) 一 人 当 たり GDP(EU=100) 2008 2009 2010 2012 2013 2014 2015 2008 2009 2010 2012 2013 2014 2015 EU(28) 0.5-4.4 2.1-0.5 0.2 1.4 2.0 100 100 100 100 100 100 100 ユーロ 圏 (19) 0.5-4.5 2.1-0.9-0.3 0.9 1.7 108 108 108 107 107 107 106 ドイツ 1.1-5.6 4.1 0.4 0.3 1.6 1.7 118 116 121 124 124 126 125 英 国 -0.6-4.3 1.9 1.3 1.9 3.1 2.2 114 112 108 107 108 109 110 フランス 0.2-2.9 2.0 0.2 0.6 0.6 1.3 106 107 108 107 108 107 106 イタリア -1.1-5.5 1.7-2.8 1.7-0.3 0.8 105 104 103 101 98 96 95 スペイン 1.1-3.6 0.0-2.6-1.7 1.4 3.2 101 101 97 92 91 91 92 オランダ 1.7-3.8 1.4-1.1-0.2 1.4 2.0 139 137 134 132 132 131 129 スウェーデン -0.6-5.2 6.0-0.3 1.2 2.3 4.2 126 122 125 127 124 123 123 ポーランド 4.2 2.8 3.6 1.6 1.3 3.3 3.6 54 59 62 66 67 68 69 ベルギー 0.7-2.3 2.7 0.2 0.0 1.3 1.4 114 116 119 120 120 118 117 オーストリア 1.5-3.8 1.9 0.8 0.3 0.4 0.9 124 125 126 131 131 129 127 デンマーク -0.7-5.1 1.6-0.1-0.2 1.3 1.0 123 122 126 126 126 125 124 アイルランド -2.2-5.6 0.4 0.2 1.4 5.2 7.8 132 129 130 131 131 134 145 フィンランド 0.7-8.3 3.0-1.4-0.8-0.7 0.5 120 116 115 115 113 110 108 ポルトガル 0.2-3.0 1.9-4.0-1.1 0.9 1.5 79 81 81 77 77 78 77 ギリシャ -0.3-4.3-5.5-7.3-3.2 0.7-0.2 94 94 87 74 74 73 71 チェコ 2.7-4.8 2.3-0.8-0.5 2.7 4.5 81 83 81 82 83 84 85 ルーマニア 8.5-7.1-0.8 0.6 3.5 3.0 3.8 48 49 50 54 54 55 57 ハンガリー 0.8-6.6 0.7-1.7 1.9 3.7 2.9 63 64 65 65 66 68 68 スロバキア 5.7-5.5 5.1 1.5 1.4 2.5 3.6 71 71 73 74 76 77 77 ルクセンブルク -0.8-5.4 5.7-0.8 4.3 4.1 4.8 255 247 254 258 264 266 271 ブルガリア 5.6-4.2 0.1 0.2 1.3 1.5 3.0 45 46 45 46 46 47 46 クロアチア 2.1-7.4-1.7-2.2-1.1-0.4 1.6 63 61 59 60 59 59 58 スロベニア 3.3-7.8 1.2-2.7-1.1 3.0 2.9 89 85 83 81 80 82 83 リトアニア 2.6-14.8 1.6 3.8 3.5 3.0 1.6 63 56 60 70 73 75 74 ラトビア -3.6-14.3-3.8 4.0 3.0 2.4 2.7 60 52 52 60 62 64 64 エストニア -5.4-14.7 2.5 5.2 1.6 2.9 1.1 68 62 63 74 75 76 74 キプロス 3.7-2.0 1.4-2.4-5.9-2.5 1.6 105 105 102 91 84 82 81 マルタ 3.3-2.5 3.5 2.9 4.3 3.5 6.4 80 84 86 84 86 86 89 ( ) 網 かけ;ユーロ 加 盟 19 カ 国 ( 表 2 表 3 も 同 じ) ( 出 所 )Eurostat Database, National Accounts and GDP(July 2016)から 作 成 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 成 長 率 がおおむね 2.0~3.4%で 推 移 していることから リーマン ショ ック 前 の 状 況 にまだ 完 全 に 回 復 して いないといえる ただし EU 加 盟 国 間 で 成 長 の 格 差 が 生 じている 現 状 を 見 落 としてはな らない 2008~15 年 に EU の GDP は 12.6% 増 加 (ユーロ 圏 8.0%)してい る EU の 4 大 国 のうち 英 国 (31.1%) ドイツ(18.1%)が 好 調 であったのに 対 して フランス(9.3%) イタリア (0.3%)は 08 年 の 金 融 危 機 の 影 響 から 抜 け 出 し 切 れず 低 迷 を 続 けてい る 他 方 同 時 期 に GDP が 縮 小 した 加 盟 国 がある ギリシャ(-27.3%) ク ロアチア(-8.2%) キプロス(-7.4%) スペイン(-3.1%)の 4 ヵ 国 である この 他 ポルトガル(0.3%) ラトビ ア(0.2%)もほとんど GDP が 拡 大 していない また 一 人 当 たり GDP でみても 2008~15 年 に 英 国 (24.5%) ドイツ (17.0%)などのように 着 実 に 増 加 している 一 方 ギリシャ(-25.7%) キプロス(-13.8%) クロアチア (-7.1%) スペイン(-4.1%) イタ リア(-2.5%) フィンランド(-1.0%) スロベニア(-0.5%) ポルトガル (2.4%)などのように 08 年 レベル を 下 回 るか あるいはほとんど 増 加 していない 国 が 多 い 以 上 の 様 に EU が 進 めてきたグロ ーバリズムは ドイツ 英 国 などの 北 部 欧 州 の 成 長 の 中 核 地 域 (コア) とイタリア スペイン ポルトガル ギリシャなどの 南 欧 や 東 欧 の 周 辺 地 域 (ぺリヘリ)を 生 み 出 し 二 極 分 化 が 進 行 する 結 果 となってしまって いる 次 節 以 下 で 取 り 上 げるが 大 規 模 な 難 民 移 民 がドイツ 英 国 などの コア 地 域 に 流 入 して 経 済 的 社 会 的 混 乱 を 引 き 起 こしているために ポピュリスト 政 党 が 排 外 主 義 を 唱 え て 一 定 の 支 持 を 集 めている 成 長 の 周 辺 地 域 におかれた 諸 国 の 雇 用 問 題 は 深 刻 である リーマン ショック 以 後 10% 台 の 失 業 率 は 高 止 まりしたまま 大 幅 な 改 善 を 期 待 することは 難 しい とりわけ 深 刻 な 24 歳 以 下 の 若 年 者 の 失 業 率 が ギ リシャ(49.8% 15 年 ) スペイン (48.3%) クロアチア(43.0%) イ タリア(40.3%) ポルトガル(32.8%) などの 周 辺 地 域 で 絶 望 的 なほど 高 い 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
経 済 成 長 から 取 り 残 された 階 層 の 反 グローバリズム 感 情 が 強 まる 理 由 が ここにも 見 い 出 せる (2) 貧 富 の 格 差 拡 大 低 成 長 国 で 顕 著 OECD( 経 済 協 力 開 発 機 構 )の 最 新 の 調 査 によると 多 くの OECD 諸 国 では 過 去 30 年 で 富 裕 層 と 貧 困 層 の 格 差 が 最 大 化 し 12012 年 現 在 80 年 代 には 7 倍 であった 上 位 10%の 富 裕 層 の 所 得 が 下 位 10%の 貧 困 層 の 9.5 倍 に 達 していること 2 所 得 分 布 の 最 上 位 層 の 平 均 所 得 が 特 に 増 加 していること 3 多 くの 国 では 下 位 10%の 所 得 層 は 好 況 時 の 伸 びは 最 上 位 層 に 比 べて はるかに 緩 やか である 上 に 景 気 下 降 時 には 落 ち 込 むと 報 告 している 2) 目 すべき 見 解 として 所 得 格 差 が 拡 大 すると 経 済 成 長 が 低 下 するという 点 である 表 2 は OECD に 加 盟 する EU21 表 2 EU 諸 国 の 所 得 格 差 ( 所 得 上 位 層 10%と 下 位 層 10%の 差 異 : 倍 ) 2005 年 2007 年 2008 年 2009 年 2010 年 2011 年 2012 年 ギリシャ 10.1 10.5 9.6 9.6 11.1 12.7 12.3 スペイン 10.3 9.0 9.8 11.1 11.4 12.2 11.7 イタリア 9.7 8.9 9.1 9.2 10.6 10.3 11.4 英 国 10.1 11.1 11.0 10.9 9.6 9.6 10.5 ポルトガル 12.1 10.4 10.1 9.1 9.5 10.0 10.1 エストニア 9.8 8.2 8.1 8.3 9.5 9.6 9.6 アイルランド 7.7 7.0 6.6 7.9 7.5 7.6 7.4 フランス 6.6 n.a 6.8 6.8 7.2 7.4 7.4 ポーランド 9.2 8.1 7.7 7.6 8.1 7.8 7.3 ハンガリー 6.6 6.0 n.a 6.0 n.a ***7.3 *****7.2 ルクセンブルク 6.9 6.2 6.6 6.1 5.9 6.0 7.1 オーストリア 5.8 6.9 6.9 7.5 6.7 7.1 7.0 ドイツ *6.6 n.a 6.7 6.7 6.7 6.8 6.6 オランダ 6.5 7.1 6.8 6.7 6.7 6.7 ****6.6 スウェーデン *4.7 n.a 5.8 6.2 6.1 6.3 6.3 ベルギー **6.7 6.7 6.3 6.3 6.0 6.3 5.9 スロバキア 6.9 5.2 5.7 6.2 6.2 5.9 5.7 フィンランド 5.6 5.8 5.7 5.5 5.6 5.6 ****5.5 スロベニア 5.1 5.2 5.0 5.3 5.4 5.4 5.5 チェコ 5.4 5.3 5.5 5.5 5.7 5.6 5.4 デンマーク 4.6 5.1 5.0 4.9 5.3 5.2 5.2 ( )*2004 年 **2006 年 ***2012 年 ****2013 年 *****2014 年 ( 出 所 )OECD Income Distribution Database(IDD)から 作 成 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 ヵ 国 (ラトビアを 除 く)の 2005~12 年 の 所 得 の 格 差 拡 大 の 推 移 をみたも のである OECD 平 均 値 の 9.5 倍 を 超 えている 国 は ギリシャ(12.3 倍 ) スペイン(11.7 倍 ) イタリア(11.4 倍 ) 英 国 (10.5 倍 ) ポルトガル(10.1 倍 ) エストニア(9.6 倍 )の 6 ヵ 国 である このうち 所 得 格 差 が 一 層 拡 大 し ている 国 は ギリシャ スペイン イタリア 英 国 の 4 ヵ 国 となってい る 英 国 エストニアを 除 く 4 ヵ 国 は 前 節 で 検 証 したように いずれ も 成 長 の 周 辺 地 域 (ぺリヘリ)に 入 っている OECD 平 均 値 を 下 回 る 国 でも 所 得 格 差 が 拡 大 している 国 は フラン スなど 8 ヵ 国 格 差 が 縮 小 した 国 は アイルランドなど 5 ヵ 国 ドイツ チェコは 所 得 格 差 に 変 動 がなかった ちなみに 米 国 は 05 年 15.5 から 12 年 18.8 日 本 は 03 年 10.1 から 09 年 10.7 に 拡 大 している 所 得 格 差 の 拡 大 は ジニ 係 数 ( 完 全 な 所 得 平 等 を 示 す 0 から 1 人 が 全 所 得 を 独 占 する 1 までの 範 囲 )の 拡 大 にもみられる OECD のジニ 係 数 は 1980 年 代 半 ばには 0.29 であった が 2011/12 年 には 0.32 へと 0.03 ポ イント 上 昇 している 3) OECD 平 均 値 0.32 を 超 える 国 は 英 国 (0.351) ギリシャ(0.340) ポ ルトガル(0.338) エストニア(0.338) スペイン(0.335) イタリア(0.327) の 6 カ 国 である 英 国 エストニア を 除 く 4 ヵ 国 は 成 長 の 周 辺 地 域 (ぺ リヘリ)である 以 上 のように 国 内 の 所 得 階 層 にも 格 差 が 拡 大 傾 向 を 示 しており 所 得 格 差 の 二 極 分 化 が 進 んでいる (3) 格 差 社 会 への 警 告 民 主 主 義 に 脅 威 所 得 格 差 への 警 告 は 多 くの 経 済 学 者 などからも 発 せられている た とえば ノーベル 経 済 学 賞 を 受 賞 し た 米 国 の 経 済 学 者 ジョセフ E ステ ィグリッツは 格 差 の 拡 大 は 何 よ り 社 会 基 盤 そのものを 揺 るがせる 結 果 につながる 格 差 は 国 民 の 結 束 を 蝕 み ひいては 社 会 的 な 対 立 を 誘 発 する 民 主 主 義 国 家 で 格 差 社 会 が 進 行 した 場 合 やがては 社 会 的 不 公 平 感 に 衝 き 動 かされた 持 たざる 者 の 不 満 を 抑 えようと 政 治 的 リ ーダーが 彼 らに 実 現 不 可 能 な 非 現 実 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
的 な 公 約 を 取 りあえず 提 示 するとい った 憂 慮 すべき 事 態 を 招 く と 指 摘 している 4) また 世 界 的 なベストセラー 21 世 紀 の 資 本 の 著 者 であるフランス の 経 済 学 者 トマ ピケティも 不 平 等 のレベルが 高 すぎると 経 済 成 長 のためにならず 民 主 主 義 が 脅 威 に さらされることがある と 語 ってい る 5) 前 出 の OECD 報 告 は 所 得 格 差 は 人 的 資 源 の 蓄 積 を 阻 害 すること により 不 利 な 状 況 に 置 かれた 個 人 の 教 育 機 会 を 損 ない 社 会 的 流 動 性 の 低 下 をもたらし 技 術 開 発 を 妨 げ る と 指 摘 している 6) 持 てる 者 と 持 たざる 者 の 二 極 分 化 という 格 差 社 会 は 政 治 経 済 社 会 など 広 い 範 囲 で 欧 州 レ ベル 一 国 レベル 地 域 共 同 体 (コ ミュニティ)レベルなどあらゆる 面 に 不 安 定 と 分 断 をもたらしている 反 グローバリズムの 動 きは かつ てのような 一 部 の 政 治 団 体 や 市 民 の 運 動 のレベルから 既 存 の 政 治 への 大 衆 レベルの 強 い 不 満 の 表 明 という かたちで 日 常 的 な 意 思 や 行 動 へと 広 がり 浸 透 をみせている こうし た 変 化 をいち 早 く 見 抜 いたポピュリ スト 政 党 が 格 差 社 会 に 大 きな 不 満 を 抱 く 持 たざる 階 層 への 支 持 を 広 げて いるのである 2. 欧 州 を 揺 さぶる 難 民 移 民 危 機 (1) 押 し 寄 せる 難 民 移 民 高 ま る 排 外 主 義 近 年 アフリカ 中 東 など EU 域 外 から 押 し 寄 せる 難 民 への EU レベ ルあるいは 国 レベルでの 対 応 の 遅 れ EU 域 内 の 周 辺 部 ( 中 東 欧 南 欧 ) から 中 心 部 (ドイツ 英 国 北 部 欧 州 )への 移 民 ( 主 に 社 会 保 障 ツー リズム と 揶 揄 される 自 国 より 整 備 された 社 会 保 障 給 付 や 医 療 などの 制 度 を 目 当 てとした 移 民 労 働 )の 急 増 に 対 する 受 入 国 側 の 苛 立 ちや 定 住 外 国 人 に 対 する 差 別 排 斥 の 動 きが 急 速 に 高 まりつつある 7) フランスの 極 右 政 党 国 民 戦 線 (FN)や 英 国 独 立 党 (UKIP)などの 排 外 的 なポピュリズムが 急 速 に 蔓 延 する 中 欧 州 は 難 民 移 民 危 機 に よる 国 内 政 治 や 経 済 社 会 を 不 安 定 化 するリスクを 抑 制 できないことで 苦 慮 している 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 EU28 ヵ 国 への 難 民 申 請 をみてみ ると 表 3 のように 2014 年 の 62 万 6,960 人 に 対 して 15 年 は 前 年 比 111% 増 の 1,321,600 人 と 急 増 した 16 年 1-5 月 も 前 年 と 同 じペースで 増 え 続 けている とくに ドイツ ハ ンガリー スウェーデン オースト リア イタリアの 申 請 数 が 著 しく 増 えている メルケル 首 相 がドイツ 国 境 にたど 表 3 EU の 難 民 申 請 者 の 推 移 ( 人 ) 2011 年 2012 年 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 1-5 月 EU28 ヵ 国 309,040 335,290 431,090 626,960 1,321,600 463,485 ドイツ 53,235 77,485 126,705 202,645 476,510 295,870 ハンガリー 1,690 2,155 18.895 42,775 177,135 17,745 スウェーデン 29,650 43,855 54,270 81,180 162,450 13,315 オーストリア 14,420 17,415 17,500 28,035 88,160 *18,550 イタリア 40,315 17,335 26,620 64,625 84,085 *30,725 フランス 57,330 61,440 66,265 64,310 75,750 *26,710 オランダ 14,590 13,095 13,060 24,495 44,970 *6,975 ベルギー 31,910 28,075 21,030 22,710 44,660 8,205 英 国 26,915 28,800 30,585 32,785 38,800 *13,700 フィンランド 2,915 3,095 3,210 3,620 32,345 *2,610 デンマーク 3,945 6,045 7,170 14,680 20,935 **3,030 ブルガリア 890 1,385 7,145 11,080 20,365 *5,305 スペイン 3,420 2,565 4,485 5,615 14,780 5,420 ギリシャ 9,310 9,575 8,225 9,430 13,205 **5,595 ポーランド 6,885 10,750 15,240 8,020 12,190 5,385 アイルランド 1,290 955 945 1,450 3,275 **550 ルクセンブルク 2,150 2,050 1,070 1,150 2,505 *645 キプロス 1,770 1,635 1,255 1,745 2,265 **665 マルタ 1,890 2,080 2,245 1,350 1,845 **430 チェコ 750 740 695 1,145 1,515 **420 ルーマニア 1,720 2,510 1,495 1,545 1,260 **230 ポルトガル 275 295 500 440 895 **295 スロバキア 490 730 440 330 330 *35 ラトビア 340 205 195 375 330 *75 リトアニア 525 645 400 440 315 70 スロベニア 355 295 270 385 275 575 エストニア 65 75 95 155 230 *15 クロアチア n.a n.a 1,075 450 210 *360 *:2016 年 1-4 月 **:2016 年 1-3 月 ( 出 所 )EUROSTAT Asylum and first time asylum applicants, monthly data and annual aggregated data(march,june2016)などから 作 成 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
り 着 いた 全 てのシリア 難 民 を 優 先 的 に 受 け 入 れると 表 明 したために ド イツへの 難 民 申 請 者 が 極 端 に 集 中 し ている 14 年 の 難 民 申 請 が 20 万 2,645 人 に 対 して 15 年 は 前 年 比 135.1% 増 の 47 万 6,510 人 に 上 った 未 曽 有 の 難 民 申 請 規 模 に 対 して 関 係 の 州 政 府 当 局 の 処 理 能 力 が 限 界 に 達 している 状 態 である メルケル 首 相 は 2015 年 の 流 入 は 過 去 最 高 の 80 万 人 に 達 し 前 年 の 4 倍 に 膨 らむとの 試 算 (15 年 9 月 時 点 ) を 明 らかにし 難 民 受 け 入 れで 公 平 な 割 当 ができなければ シェンゲン 協 定 が 問 題 になる と EU が 一 致 し て 難 民 問 題 に 取 り 組 むことを 求 め た ドイツ 政 府 は 流 入 予 測 を 80 万 人 から 100 万 人 に 修 正 その 後 さらに 150 万 人 に 再 修 正 支 援 体 制 が 破 綻 する リスクを 懸 念 ドイツの 受 け 入 れが 限 界 に 近 いことを 示 した 8) メルケル 首 相 は 難 民 の 急 増 問 題 の 深 刻 化 でかってない 苦 境 に 追 い 込 まれている ドイツ 世 論 も 同 首 相 への 評 価 が 厳 しく 2010 年 のユーロ 危 機 以 降 最 低 水 準 にまで 一 時 的 に 落 ち 込 んだ 政 府 与 党 のキリスト 教 民 主 同 盟 (CDU) キリスト 教 社 会 同 盟 (CSU)の 身 内 からも メルケル 首 相 の 手 法 が ドイツの 破 滅 的 状 況 を 招 いていると 厳 しく 非 難 されるな ど 同 首 相 の 政 治 生 命 を 左 右 するほ ど 追 い 込 まれている 9) 流 入 する 移 民 も 増 え 続 けている EU 統 計 局 (EUROSTAT)によると 2013 年 338 万 9,000 人 14 年 377 万 7,300 人 となっている 過 去 5 年 間 の 推 移 をみてみると 300 万 ~340 万 人 と 安 定 的 な 動 きを 示 している 最 大 の 移 民 受 け 入 れ 国 ドイツには 13 年 69 万 2,713 人 14 年 88 万 4,893 人 が 流 入 していて 15 年 には 100 万 人 の 規 模 に 達 するものと 予 想 されてい る (2) 受 け 入 れ 義 務 化 中 東 欧 が 反 発 欧 州 委 員 会 のユンケル 委 員 長 が 欧 州 議 会 で 2015 年 9 月 イタリア ギ リシャが 抱 える 難 民 受 け 入 れ 数 を 当 初 計 画 の 4 万 人 から 4 倍 の 16 万 人 に 引 き 上 げる 方 針 を 明 らかにした 10) EU は EU 法 相 内 相 理 事 会 を 開 催 し 受 け 入 れ 可 能 な 難 民 の 絞 り 込 みの 迅 速 化 と ドイツ 4 万 206 人 フランス 3 万 783 人 スペイン 1 万 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 9,219 人 ポーランド 1 万 1,946 人 な ど EU 加 盟 22 カ 国 ごとに 人 口 や 経 済 規 模 失 業 率 などを 考 慮 して 受 け 入 れ 分 担 の 義 務 化 について 議 論 したが 合 意 に 至 らなかった その 後 EU 法 相 内 相 理 事 会 は 受 け 入 れ 分 担 の 義 務 化 を 再 協 議 東 欧 4 カ 国 の 反 対 を 押 し 切 って 賛 成 多 数 で 決 定 したが(チェコ ハンガリ ー ルーマニア スロバキアはいず れも 強 硬 に 反 対 フィンランドは 棄 権 ) 16 年 6 月 現 在 実 際 に 受 け 入 れが 実 現 したのは 2,000 人 弱 にとど まる 難 民 危 機 は EU 域 内 の 排 外 主 義 を 勢 いづけている 2016 年 7 月 から EU 議 長 国 となるスロバキアも イスラ ム 教 徒 の 難 民 は 受 け 入 れない とし て 反 難 民 反 イスラムの 強 硬 姿 勢 を 掲 げて 分 担 に 反 発 してきた 国 の ひとつである 2015 年 12 月 には スロバキア 政 府 は EU 司 法 裁 判 所 に EU 難 民 分 担 策 の 無 効 を 求 める 訴 えを 起 こした また 隣 国 ハンガリーも 16 年 10 月 に EU の 分 担 案 を 認 めるかどうかを 問 う 国 民 投 票 を 実 施 する 予 定 である 議 長 国 スロバキアが 2016 年 末 ま で EU の 難 民 対 策 の 協 議 をリードし ていく 役 割 を 担 うだけに 論 議 の 行 方 に 不 透 明 感 が 強 まっている いず れにしても 中 東 欧 諸 国 が EU の 難 民 政 策 に 公 然 と 反 旗 を 翻 した 影 響 は 大 きい 他 方 EU は 欧 州 へ 押 し 寄 せる 難 民 移 民 の 流 入 を 抑 制 するため 欧 州 を 目 指 すシリア 難 民 の 主 要 な 経 由 地 となっているトルコとの 協 力 の 強 化 は 欠 かせない 2016 年 3 月 EU とトルコ 首 脳 会 議 は 欧 州 に 向 かう 経 済 難 民 をトルコ が 受 け 入 れる 一 方 トルコ 内 に 避 難 しているシリア 難 民 らを EU が 引 き 受 けて 域 内 に 定 住 させることで 合 意 した これと 引 き 換 えに EU は 資 金 支 援 の 規 模 を 60 億 ユーロと 従 来 から 倍 増 させるほか EU 域 内 を 旅 行 するト ルコ 国 民 のビザ 免 除 を 前 倒 しするこ と トルコの EU 加 盟 交 渉 を 促 進 する ことにも 合 意 した ただ 報 道 の 自 由 や 人 権 問 題 など で 強 権 的 なトルコ 政 府 との 連 携 強 化 に 対 する 評 価 の 分 かれているうえ 11) EU 加 盟 国 間 で 温 度 差 があり どこま で 実 効 が 上 がるか 今 のところ 不 透 明 である このように 難 民 危 機 に 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
収 束 の 兆 しが 見 えず まさに EU の 連 帯 が 危 機 に 瀕 しているといえよう (3)シェンゲン 協 定 崩 壊 か 独 など 国 境 検 問 を 再 導 入 以 下 は 2015 年 9 月 以 降 シェンゲ ン 協 定 加 盟 国 が 再 導 入 した 主 要 な 国 境 検 問 の 事 例 である 1 ドイツが 15 年 9 月 オーストリ アとの 国 境 審 査 を 開 始 (6 ヵ 月 間 ) 2 ハンガリーが 15 年 6 月 セルビ アとの 国 境 にフェンス 設 置 15 年 9 月 セルビアとの 国 境 審 査 を 強 化 ルーマニアとの 国 境 にフェ ンスを 設 置 すると 発 表 3 オーストリアが 15 年 9 月 ドイ ツとの 国 境 審 査 を 開 始 (6 ヵ 月 間 ) 4 ハンガリーが 15 年 9 月 イタリ ア スロバキア スロベニアとの 国 境 審 査 を 強 化 5 デンマークが 15 年 9 月 ドイツ との 高 速 道 路 鉄 道 線 路 を 一 時 的 に 封 鎖 16 年 1 月 ドイツとの 国 境 で 身 分 証 明 書 の 検 査 を 開 始 6 スウェーデンが 15 年 9 月 国 境 審 査 を 開 始 (6 ヵ 月 間 ) 16 年 1 月 難 民 移 民 流 入 を 制 限 する 措 置 として デンマークからの 入 国 者 に 対 して 身 分 証 明 書 のチェッ クを 開 始 2015 年 夏 以 降 域 外 からの 難 民 の 国 境 管 理 が 不 全 に 陥 り 難 民 の 受 け 入 れに 寛 容 なドイツでさえもシェン ゲン 協 定 を 一 時 的 に 停 止 し 国 境 管 理 を 導 入 するなど 危 機 的 な 状 況 に 陥 った 早 急 に EU レベルでの 難 民 政 策 を 実 効 が 上 がるように EU が 一 致 して 推 し 進 めていかないと 人 (EU 市 民 )の 自 由 移 動 という EU 統 合 の 基 本 原 則 を 揺 るがしかねないこと になる EU のトゥスク 欧 州 理 事 会 常 任 議 長 (EU 大 統 領 )も 域 内 の 難 民 移 民 問 題 に 早 急 に 対 処 しなければ シェ ンゲン 協 定 が 崩 壊 する 可 能 性 がある と 警 告 している 12) 1985 年 に 締 結 されたシェンゲン 協 定 によって EU 市 民 であるか EU 域 外 国 人 であるかに 関 わらず 旅 券 検 査 などの 出 入 国 審 査 ( 域 内 国 境 管 理 ) が 廃 止 され また 対 外 的 には シ ェンゲン 協 定 加 盟 国 (26 ヵ 国 うち EU22 ヵ 国 が 加 盟 ) 共 通 の 短 期 滞 在 査 証 (ビザ)が 発 効 される 共 通 ビザ 政 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 策 がとられている いま 欧 州 統 合 の 基 本 理 念 である 人 の 自 由 移 動 を 可 能 にしたシェ ンゲン 協 定 が 崩 壊 の 危 機 にある 恩 恵 に 伴 う 代 償 も 引 き 受 けよ EU が これまで 欠 けていた 結 束 と 政 治 的 意 思 を 示 さなければならないが 反 グ ローバリズムが 台 頭 する 中 で 政 治 の 選 択 肢 は 極 めて 限 られている 13) 3. 強 まる 反 EU の 動 き 蔓 延 する ポピュリズム (1) 英 の EU 離 脱 の 衝 撃 高 まる 離 脱 ドミノへの 懸 念 2016 年 6 月 23 日 に 実 施 された 英 国 の EU 離 脱 か 残 留 かを 問 う 国 民 投 票 で 国 民 の 過 半 数 が 離 脱 (Brexit) に 賛 成 した 事 前 の 予 想 を 覆 す 投 票 結 果 は 英 国 内 外 に 大 きな 衝 撃 をも って 受 け 止 められた 14) 想 定 外 の 結 果 によって 戦 後 一 貫 して 欧 州 統 合 の 深 化 と 拡 大 (ever closer union) を 追 い 求 めてきたプロセスに 大 きな ブレーキがかかった 英 国 の 国 民 投 票 での 論 点 は 要 約 すると 残 留 派 のグローバリズムと 離 脱 派 のナショナリズムの 対 立 であ る EU 主 導 のグローバリズムが 招 い た 経 済 格 差 や 難 民 移 民 の 急 増 を 甘 受 し 続 けるのか それとも ブリュ ッセルの EU 官 僚 機 構 から 国 家 主 権 を 回 復 し(take back control) 国 益 重 視 に 転 換 すべきか EU 脱 退 は EU(ECSC, EEC, EC を 含 めて) 史 上 初 めての 出 来 事 である (デンマークのグリーンランド 自 治 領 が 1985 年 に 離 脱 した 前 例 はある) しかも EU 第 2 の 大 国 である 英 国 の 離 脱 だけに 英 国 EU ともに 政 治 外 交 軍 事 経 済 などのあらゆる 分 野 で 様 々なリスクが 生 じることが 想 定 される いずれにしても EU 離 脱 の 手 続 き は 初 めてだけに あまりにも 不 確 定 要 素 が 多 い 現 時 点 では EU との 脱 退 交 渉 が 2017 年 以 降 に 始 まること ぐらいしか 明 らかではない また 脱 退 協 定 や 新 たな 貿 易 協 定 について の 交 渉 の 内 容 や 期 間 など(EU 条 約 第 50 条 によると 離 脱 通 告 から 原 則 2 年 間 となっている) 先 行 きはまっ たく 視 界 不 良 である さらに 英 国 に 続 いて EU 離 脱 す る 国 が 相 次 ぐ 離 脱 ドミノ へ 懸 念 が 強 まっている 反 グローバリズム 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
や 排 外 主 義 の 台 頭 は 多 くの 国 に 共 通 する 悩 みである EU 首 脳 が 相 次 い で EU の 結 束 を 訴 えたのも 欧 州 で は 少 なくとも 2017 年 後 半 のドイツ の 連 邦 議 会 選 挙 まで 政 治 の 季 節 が 続 き ポピュリズムの 流 れに 乗 って EU 離 脱 の 圧 力 が 各 地 で 強 まることが 想 定 されるからである (2) 欧 州 懐 疑 主 義 の 底 流 エリー トと 大 衆 の 断 絶 欧 州 の 一 部 の 政 治 家 ( 英 首 相 ア イスランド 首 相 など)やビジネスエ リートなど 一 部 の 富 裕 層 ( 大 手 グロ ーバル 企 業 CEO など) 金 融 大 手 (ス イス UBS など)やグローバル 企 業 ( 米 スターバックスなど)が タッ クスヘイブン ( 租 税 回 避 地 )を 使 っ て 節 税 蓄 財 金 融 取 引 をしていた 実 態 が パナマ 文 書 で 明 らかにな った パナマ 文 書 が 突 き 付 けた 論 点 の 一 つは 政 治 と 倫 理 の 問 題 である 増 税 や 社 会 保 障 カットを 強 いる 政 治 リーダーの 税 逃 れは 格 差 拡 大 に 苛 立 つ 世 論 に 火 をつけた 既 存 の 政 党 エリート 層 エスタブリッシュ メント( 支 配 階 級 )は 負 け 組 の 大 衆 (いわば 低 所 得 者 層 )の 悲 痛 な 声 に 充 分 に 耳 を 傾 けてくれていない 自 分 たちの 声 を 代 弁 してくれていな いという 反 発 や 不 信 感 がこれまで 以 上 に 強 まっている エリートと 大 衆 との 断 絶 は 深 刻 である 反 EU 欧 州 懐 疑 派 が 台 頭 する 背 景 として ユーロ 危 機 の 余 波 に 苦 しむ 各 国 の 経 済 状 況 がある 高 い 失 業 率 や 低 賃 金 非 正 規 雇 用 などに 悩 む 人 々の 怒 りの 矛 先 は ドイツ 主 導 の 緊 縮 財 政 策 や 他 国 から 来 て 自 分 た ちの 職 を 奪 う(ように 見 える) 移 民 に 向 けられる そうした 現 状 を 招 い た 元 凶 として EU(ブリュッセル 官 僚 ) への 反 発 が 強 まっている フランス 人 の 53%が EU 離 脱 を 問 う 国 民 投 票 を 望 んでいる 2016 年 3 月 独 立 系 シンクタンク 欧 州 政 策 センター がブリュッセルで 開 いたセミナーで 英 エディンバラ 大 学 のヤン アイヒホルン 研 究 員 らが まとめた 衝 撃 的 な 調 査 が 話 題 をさら ったという 15) EU 加 盟 国 で EU に 懐 疑 的 な 見 方 が 増 えている 米 ピュー リサー チ センターが 2016 年 6 月 に 発 表 し た EU10 ヵ 国 の 世 論 調 査 結 果 で 明 ら かになった EU を 好 ましくない 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 と 答 えた 人 が 多 かった 国 は ギリシ ャで 71% フランス 61% スペイン 49% 英 国 48% ドイツ 48%など 他 方 好 ましい と 答 えた 人 が 多 かった 国 は ポーランド 72% ハン ガリー61% イタリア 58% スウェ ーデン 54% オランダ 51%などとな っている 15 年 の 世 論 調 査 と 比 べて EU に 肯 定 的 な 意 見 が 減 少 している という 16) 表 4 EU 各 国 の 世 論 の 動 向 (%) EU の 将 来 EU の 主 要 課 題 楽 観 的 悲 観 的 わ か ら 移 民 景 気 失 業 財 政 テロ ない アイルランド 77 18 5 23 27 31 18 14 ルーマニア 75 20 5 21 18 10( 1) 16 28 クロアチア 74 24 2 22 24 25 24 24 デンマーク 74 23 3 50 30 26 17 16 リトアニア 74 21 5 31 24 13( 2)21 20 マルタ 73 18 9 65 21 11 17 27 オランダ 71 27 2 49 35 20 36 18 エストニア 68 27 5 54 22 9( 3)31 17 ポーランド 67 25 8 24 20 20 18 22 フィンランド 65 34 1 24 34 23 39 9( 4) スロベニア 63 35 2 31 23 26 28 13( 5) スウェーデン 63 35 2 48 36 27 23 9( 6) ルクセンブルク 63 34 3 45 19 39 24 18 ブルガリア 62 27 11 37 24 9( 7)12 25 スロバキア 62 34 4 35 20 24 25 18 ハンガリー 61 34 5 43 26 18 26 20 ベルギー 60 36 4 39 25 26 21 20 ドイツ 60 34 6 55 18 19 34 15 スペイン 59 32 9 25 37 32 20 16 ラトビア 59 36 5 38 24 14 26 15 EU28 カ 国 58 36 5 38 27 24 23 17 チェコ 57 41 2 44 18 13 28 30 ポルトガル 55 39 6 16 23 32 37 12 イタリア 53 42 5 43 29 32 15 19 フランス 50 44 6 34 30 29 17 19 オーストリア 49 48 3 37 28 26 36 8( 8) 英 国 49 43 8 36 30 20 16 15 キプロス 41 54 5 20 47 43 16 15 ギリシャ 41 57 2 27 40 32 33 11( 9) ( 1) 犯 罪 (16%) 物 価 上 昇 (12%)( 2) 物 価 上 昇 (14%)( 3) 物 価 上 昇 (11%) ( 4) 気 候 変 動 (15%) EU 影 響 力 (10%)( 5) 犯 罪 (15%)( 6) 気 候 変 動 (19%) 環 境 (15%)( 7) 犯 罪 (11%)( 8) 物 価 上 昇 (15%) 犯 罪 (9%)( 9)EU 影 響 力 (14%) ( 出 所 )European Commission, Eurobarometer83,Spring2015(July2015) 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
表 4 は 欧 州 委 員 会 が 15 年 7 月 に 発 表 した 世 論 調 査 結 果 である EU の 将 来 について EU 全 体 では 58% が 楽 観 的 である に 対 して 36% が 悲 観 的 である と EU への 好 感 度 が 高 いものの 英 国 フランス イタリアなどの 主 要 国 で 楽 観 的 見 通 しが 低 いことが 気 になる 回 答 者 が EU の 3 大 課 題 として 移 民 難 民 景 気 失 業 を 選 択 している 欧 州 委 員 会 のユンケル 委 員 長 は 域 内 で 高 まっている 欧 州 懐 疑 主 義 に ついて 一 般 市 民 の 生 活 への EU 当 局 の 過 度 の 干 渉 が 原 因 の 一 つだ と の 見 解 を 示 した 17) (3)ポピュリズムに 揺 れる 欧 州 表 5 は 欧 州 の 主 要 ポピュリスト 政 党 ( 極 左 極 右 など)の 最 近 の 動 向 を 示 したものである ハンガリー の フィデス ハンガリー 市 民 連 盟 ポーランドの 法 と 正 義 フィンラ ンドの 真 のフィンランド 人 ギリ シャの 急 進 左 派 連 合 は 単 独 政 権 あるいは 連 立 政 権 の 座 に 着 いてい るが 独 仏 など 大 国 主 導 の EU を 警 戒 難 民 の 受 け 入 れ 義 務 化 などで 反 発 する リーマン ショック 以 降 EU の 金 融 危 機 や 財 政 危 機 あるいはユーロ 危 機 が 引 き 金 になって 反 グローバリ ズム 反 EU 反 ユーロ 反 イスラム などを 主 張 する 極 右 や 極 左 のポピュ リスト 政 党 が 欧 州 全 域 に 台 頭 勢 力 拡 大 を 続 けている 英 フィナンシャ ル タイムズ 紙 は ポピュリズム 台 頭 の 背 景 を 的 確 に 伝 えているので 些 か 長 くなるが 引 用 してみたい ポピュリストが 影 響 力 を 持 ったの は 少 なくともその 不 満 の 一 部 は 実 感 を 伴 うものだからである 世 界 金 融 危 機 から 8 年 経 った 今 も 先 進 国 の 労 働 者 はまだ 賃 金 の 伸 び 悩 みや 財 政 緊 縮 プログラム 雇 用 機 会 の 縮 小 に 直 面 している 欧 州 では シリア その 他 の 紛 争 地 域 からの 大 量 の 移 民 が 流 入 しているために 経 済 面 の 不 安 に 文 化 や 民 族 に 関 係 した 不 安 が 上 乗 せされている 財 産 や 地 位 を 奪 わ れた 人 さらには 新 たに 不 安 な 立 場 に 置 かれた 人 が 周 りを 見 回 せば 混 乱 をもたらした 張 本 人 銀 行 家 独 りよがりの 政 治 家 怠 惰 な 規 制 当 局 者 がほとんどかすり 傷 しか 負 って いないことに 気 が 付 く そこに グ ローバル 化 の 配 当 は 長 い 間 最 も 豊 か 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 表 5 ポピュリスト 政 党 の 最 近 の 動 き 国 名 政 党 名 最 近 の 動 き ドイツ ドイツのため 反 移 民 ユーロ 離 脱 反 イスラム シェンゲン 協 定 凍 結 を 主 張 の 選 択 肢 (AfD) する 極 右 政 党 2013 年 の 連 邦 議 会 選 挙 で 議 席 獲 得 には 至 らな かったが 4.9%の 支 持 率 を 獲 得 14 年 の 欧 州 議 会 選 挙 で 7% の 支 持 率 初 の 7 議 席 獲 得 16 年 3 月 の 3 つの 州 の 議 会 選 挙 で 大 躍 進 初 の 議 会 入 り 英 国 の EU 離 脱 を 支 持 フランス 国 民 戦 線 (FN) 脱 ユーロ 反 EU 反 イスラム 不 法 移 民 の 強 制 送 還 シェン ゲン 協 定 停 止 など 主 張 する 極 右 政 党 2012 年 の 国 民 議 会 選 挙 で 2 議 席 獲 得 14 年 の 欧 州 選 挙 で 最 多 の 24 議 席 を 獲 得 して 第 1 党 に 躍 進 15 年 12 月 の 地 方 議 会 選 挙 第 1 回 において 27.7%と 最 大 の 得 票 率 を 獲 得 英 国 の EU 離 脱 を 支 持 英 国 英 国 独 立 党 移 民 排 斥 脱 EU を 掲 げる 右 派 政 党 2013 年 の 地 方 選 挙 で 大 (UKIP) 幅 に 議 席 を 伸 ばして 第 3 党 14 年 の 欧 州 議 会 選 挙 で 24 議 席 イタリア 五 つ 星 運 動 (M5S) を 獲 得 第 1 党 に 大 躍 進 英 国 の EU 離 脱 運 動 を 推 進 既 成 政 党 を 批 判 ユーロ 離 脱 反 財 政 緊 縮 を 掲 げる 2013 年 の 選 挙 で 第 3 党 に 躍 進 初 の 上 院 54 議 席 下 院 109 議 席 を 獲 得 14 年 の 欧 州 議 会 選 挙 で 初 の 17 議 席 を 獲 得 第 2 政 党 に 躍 進 16 年 6 月 のローマ,トリノの 市 長 選 で 同 党 の 候 補 が 初 当 選 北 部 同 盟 (LN) 反 移 民 反 イスラム 反 EU シェンゲン 協 定 停 止 などを 唱 え る 極 右 政 党 2013 年 2 月 の 総 選 挙 で 上 院 12 議 席 下 院 16 議 席 を 獲 得 オランダ 自 由 党 (PVV) 反 EU 反 ユーロ 反 イスラム 移 民 排 斥 を 唱 える 極 右 政 党 2010 年 の 下 院 選 挙 で 24 議 席 を 獲 得 閣 外 協 力 の 形 で 政 権 参 加 14 年 の 欧 州 議 会 選 挙 で 第 3 党 として 4 議 席 を 維 持 英 国 の EU 離 脱 を 支 持 スペイン ポ デ モ ス (PODEMOS) 既 成 政 党 を 批 判 反 緊 縮 雇 用 創 出 を 公 約 に 掲 げる 急 進 左 派 政 党 2014 年 5 月 の 欧 州 議 会 選 挙 で 5 議 席 獲 得 16 年 6 月 の 議 会 選 挙 で 第 3 勢 力 に 躍 進 デンマーク 国 民 党 (DF) 反 イスラム 反 移 民 反 ユーロを 唱 える 極 右 政 党 2014 年 の 欧 州 議 会 選 挙 で 4 議 席 を 獲 得 第 1 党 に 躍 進 15 年 6 月 の 総 選 挙 で 37 議 席 を 獲 得 第 2 党 に 躍 進 英 国 の EU 離 脱 を 支 持 ギリシャ 黄 金 の 夜 明 け (Golden Dawn) 急 進 左 派 連 合 (SYRIZA) 反 ユーロ 反 ユダヤ 主 義 人 種 差 別 など 排 外 的 な 主 張 を 掲 げ る 極 右 政 党 2012 年 5 月 の 総 選 挙 で 初 の 18 議 席 14 年 欧 州 議 会 選 挙 でも 初 の 3 議 席 を 獲 得 15 年 9 月 の 選 挙 で 第 3 党 に 躍 進 欧 州 懐 疑 主 義 反 緊 縮 を 掲 げる 急 進 左 派 政 党 20012 年 選 挙 で 71 議 席 を 獲 得 第 2 党 に 14 年 の 年 欧 州 議 会 選 挙 で 6 議 席 を 獲 得 第 1 党 に 躍 進 15 年 1 月 の 総 選 挙 で 第 1 党 とな り 反 緊 縮 を 掲 げる 独 立 ギリシャ 人 (ANEL, 右 派 )との 左 派 連 立 政 権 を 樹 立 15 年 9 月 内 閣 総 辞 職 後 の 総 選 挙 で ANEL との 連 立 の 第 2 次 SYRIZA 政 権 が 発 足 オーストリア 自 由 党 (FPO) 反 ユーロ 反 移 民 反 イスラムなど 排 外 主 義 を 唱 える 極 右 政 党 2013 年 議 会 選 挙 で 42 議 席 獲 得 第 3 党 に 躍 進 14 年 欧 州 議 会 選 挙 で 4 議 席 として 第 2 党 に 躍 進 16 年 5 月 の 大 統 領 選 の 決 選 投 票 で 自 由 党 候 補 が 僅 差 で 惨 敗 英 国 の EU 離 脱 を 支 持 スウェーデン 民 主 党 移 民 難 民 規 制 強 化 を 主 張 する 極 右 政 党 2010 年 の 総 選 挙 で 初 進 出 20 議 席 獲 得 14 の 欧 州 議 会 選 挙 で 初 進 出 し 2 議 席 獲 得 15 年 10 月 の 総 選 挙 で 第 3 党 に 躍 進 英 国 の EU 離 脱 を 支 持 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
フィンランド 真 のフィン 反 EU 移 民 制 限 などを 掲 げる 右 派 政 党 2011 年 議 会 選 挙 で ランド 人 (PS) 39 議 席 を 獲 得 第 3 党 に 大 躍 進 14 年 の 欧 州 議 会 選 挙 で 2 議 席 を 獲 得 15 年 5 月 から 連 立 与 党 に 参 加 英 国 の EU 離 脱 を 支 持 ポーランド 法 と 正 義 反 移 民 などを 唱 える 民 族 主 義 的 政 党 2015 年 10 月 の 選 挙 で 単 独 過 半 数 を 獲 得 政 権 与 党 に 躍 進 ハンガリー ヨ ッ ビ ク 反 ユーロ 民 族 主 義 反 ユダヤ 主 義 を 掲 げる 極 右 政 党 2014 (Jobbik) ハ 年 欧 州 議 会 選 挙 で 3 議 席 を 獲 得 第 2 党 に 14 年 4 月 の 議 会 ンガリーのた 選 挙 で 24 議 席 を 獲 得 し 第 3 党 に 躍 進 めの 運 動 フィデス ハ ンガリ 市 民 連 盟 は 政 権 に 参 加 ( 出 所 ) 執 筆 者 自 身 が 作 成 難 民 移 民 に 対 する 敵 対 的 はスタンスをとる 中 道 右 派 ポピュ リスト 政 党 2010 年 の 総 選 挙 で 政 権 を 奪 回 14 年 の 総 選 挙 で も 勝 利 政 権 を 維 持 な 上 位 1%の 富 裕 層 にしか 支 払 われ ていないという 不 愉 快 な 事 実 を 考 え 合 わせれば 人 々が 落 胆 しているか もしれない 理 由 が 分 かろうというも のである 18) 英 国 の EU 離 脱 が 引 き 金 になって 更 なる 離 脱 を 目 指 す 第 2 の 英 国 が 出 てくるのだろうか 欧 州 は 政 治 の 季 節 が 続 く 2016 年 7 月 の 英 国 の 政 権 交 代 (メ イ 新 首 相 就 任 内 閣 改 造 ) 16 年 10 月 オーストリア 大 統 領 選 挙 のやり 直 し( 極 右 の 自 由 党 の 大 統 領 誕 生 か) 10 月 ハンガリー 国 民 投 票 (EU の 難 民 受 け 入 れ 義 務 の 是 非 ) 10 月 イタ リア 国 民 投 票 ( 憲 法 改 正 案 で 政 権 の 信 任 が 得 られるか) 17 年 3 月 オラ ンダ 総 選 挙 ( 極 右 の 自 由 党 の 支 持 率 アップか) 17 年 5~6 月 フラン ス 大 統 領 選 挙 国 民 議 会 選 挙 ( 極 右 の 国 民 戦 線 候 補 の 決 選 投 票 へ 進 出 か) 17 年 8~10 月 ドイツ 連 邦 議 会 選 挙 ( 極 右 の ドイツのための 選 択 肢 が 躍 進 か)など 反 EU 反 移 民 EU 離 脱 を 掲 げる 極 右 極 左 政 党 の 支 持 率 が 高 い 主 要 国 の 総 選 挙 国 民 投 票 が 集 中 する EU は 視 界 不 良 の 対 英 脱 退 交 渉 離 脱 ドミノ 懸 念 難 民 移 民 危 機 を 抱 えながら 勢 いづくポピュリズムに 翻 弄 され 続 けるだろう 参 考 資 料 : 1) 例 えば 田 中 友 義 難 民 危 機 に 翻 弄 され る 欧 州 - 受 け 入 れ 対 応 を 巡 って EU 内 に 亀 裂 (ITI フラッシュ 252 2015/10/16) 田 中 友 義 ユーロ 圏 が 抱 え る 4 つのリスク-デフレ 懸 念 と 内 部 対 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105
欧 州 の 反 グローバリズム 台 頭 の 背 景 立 に 揺 れる 欧 州 (ITI フラッシュ 222 2015/03/06)などを 参 照 のこと 2)FOCUS on inequality and Growth(OECD December 2014)p.1. 3)ibid. p1. 4)ジョセフ E スティグリッツ 世 界 に 格 差 をバラ 撒 いたグローバリズムを 正 す (Making Globalization Work, 徳 間 書 店 2006 年 )7-8 ページ 5)トマ ピケティ 21 世 紀 の 資 本 - 限 界 と 未 来 (シンポジウム 広 がる 不 平 等 と 日 本 のあした ( 朝 日 新 聞 社 2015/01/29) 6)op. cit. OECD. p3. 7) 本 節 の 内 容 は 田 中 友 義 大 量 の 難 民 移 民 流 入 に 苦 慮 する 欧 州 (ITI 調 査 研 究 シリーズ 27 欧 州 の 政 治 経 済 リス クとその 課 題 2016 年 3 月 )に 依 拠 し ている 8)Reuters(2015/10/05) 9)Financial Times(October 16, 2015) 2015: Time for Honesty, Unity and Solidarity, Speech by Jean-Claude Junker, President of the European Commission (Strasbourg, 9 September 2015) 11)The Economist(2016/03/12) 12)Reuters(2016/01/20) 13)Financial Times(2016/01/21) 14) 国 民 投 票 に 至 るまでの 経 緯 について は 田 中 友 義 厄 介 なパートナー 英 国 の EU 離 脱 世 論 (Brexit) 高 まる (ITI フラッシュ 170 2013/07/04) 田 中 友 義 英 国 の EU 離 脱 (Brexit) 問 題 の 行 方 -EU 首 脳 会 議 EU 改 革 で 合 意 できる か (ITI フラッシュ 266, 2016/02/18) を 参 照 のこと 15) 日 本 経 済 新 聞 (2016/04/30) 16)EU Referendum, Euroscepticism on rise in Europe, poll suggests(bbc, 2016/06/08) 17)Reuters(2016/04/20) 18)Financial Times(2016/03/11) 10)European Commission, State of the Union 季 刊 国 際 貿 易 と 投 資 Autumn 2016/No.105