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別紙3

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為 が 行 われるおそれがある 場 合 に 都 道 府 県 公 安 委 員 会 がその 指 定 暴 力 団 等 を 特 定 抗 争 指 定 暴 力 団 等 として 指 定 し その 所 属 する 指 定 暴 力 団 員 が 警 戒 区 域 内 において 暴 力 団 の 事 務 所 を 新 たに 設

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公表表紙

定款

Microsoft PowerPoint - 390

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技 能 労 務 職 公 務 員 民 間 参 考 区 分 平 均 年 齢 職 員 数 平 均 給 与 月 額 平 均 給 与 月 額 平 均 給 料 月 額 (A) ( 国 ベース) 平 均 年 齢 平 均 給 与 月 額 対 応 する 民 間 の 類 似 職 種 東 庄 町 51.3 歳 18 77

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その 他 事 業 推 進 体 制 平 成 20 年 3 月 26 日 に 石 垣 島 国 営 土 地 改 良 事 業 推 進 協 議 会 を 設 立 し 事 業 を 推 進 ( 構 成 : 石 垣 市 石 垣 市 議 会 石 垣 島 土 地 改 良 区 石 垣 市 農 業 委 員 会 沖 縄 県 農

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Ⅶ 東 海 地 震 に 関 して 注 意 情 報 発 表 時 及 び 警 戒 宣 言 発 令 時 の 対 応 大 規 模 地 震 対 策 特 別 措 置 法 第 6 条 の 規 定 に 基 づき 本 県 の 東 海 地 震 に 係 る 地 震 防 災 対 策 強 化 地 域 において 東 海 地 震

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 1 号 給 の 給 料 月 額 135,6 185,8 222,9 261,9 289,2 32,6 366,2 41

2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 級 の 給 料 月 額 最 高 号 級 の 給 料 月 額 1 級 ( 単 位 : ) 2 級 3 級 4 級 5 級 6 級 7 級 8 級 9 級 1 級 135,6 185,8 222,9 261,

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2 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (26 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 静 岡 県 国 類 似 団 体 2 技 能 労 務 職 区 41.8 歳 42.6 歳 43.5

3 職 員 の 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び の 状 況 (24 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 ( ベース) 43.7 歳 32, , ,321


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1.H26年エイズ発生動向年報ー概要

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2 一 般 行 政 職 給 料 表 の 状 況 ( 平 成 23 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 号 給 の 給 料 月 額 最 高 号 給 の 給 料 月 額 1 級 2 級 3 級 4 級 5 級 ( 単 位 : ) 6 級 7 級 8 級 135, , ,900 2

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検 討 検 討 の 進 め 方 検 討 状 況 簡 易 収 支 の 世 帯 からサンプリング 世 帯 名 作 成 事 務 の 廃 止 4 5 必 要 な 世 帯 数 の 確 保 が 可 能 か 簡 易 収 支 を 実 施 している 民 間 事 業 者 との 連 絡 等 に 伴 う 事 務 の 複 雑

(3) 育 児 休 業 (この 号 の 規 定 に 該 当 したことにより 当 該 育 児 休 業 に 係 る 子 について 既 にし たものを 除 く )の 終 了 後 3 月 以 上 の 期 間 を 経 過 した 場 合 ( 当 該 育 児 休 業 をした 教 職 員 が 当 該 育 児 休 業

2 前 項 前 段 の 規 定 にかかわらず 年 俸 制 教 職 員 から 申 し 出 があった 場 合 においては 労 使 協 定 に 基 づき その 者 に 対 する 給 与 の 全 額 又 は 一 部 を 年 俸 制 教 職 員 が 希 望 する 金 融 機 関 等 の 本 人 名 義 の 口

公 的 年 金 制 度 について 制 度 の 持 続 可 能 性 を 高 め 将 来 の 世 代 の 給 付 水 準 の 確 保 等 を 図 るため 持 続 可 能 な 社 会 保 障 制 度 の 確 立 を 図 るための 改 革 の 推 進 に 関 する 法 律 に 基 づく 社 会 経 済 情

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(5 ) 当 該 指 定 居 宅 介 護 事 業 所 の 新 規 に 採 用 し た 全 て の 居 宅 介 護 従 業 者 に 対 し 熟 練 し た 居 宅 介 護 従 業 者 の 同 行 に よ る 研 修 を 実 施 し て い る こ と (6 ) 当 該 指 定 居 宅 介 護 事 業

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職 員 の 平 均 給 与 月 額 初 任 給 等 の 状 況 (1) 職 員 の 平 均 年 齢 平 均 給 料 月 額 及 び 平 均 給 与 月 額 の 状 況 (5 年 4 月 1 日 現 在 ) 1 一 般 行 政 職 区 類 団 府 分 似 体 平 均 年 齢

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m07 北見工業大学 様式①

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不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン(2011 年 改 訂 版 ) Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011) 合 同 研 究 班 参 加 学 会 : 日 本 循 環 器 学 会, 日 本 胸 部 外 科 学 会, 日 本 人 工 臓 器 学 会, 日 本 心 臓 血 管 外 科 学 会, 日 本 心 臓 病 学 会, 日 本 心 電 学 会, 日 本 心 不 全 学 会, 日 本 不 整 脈 学 会 班 長 奥 村 謙 弘 前 大 学 循 環 器 内 科 班 員 相 澤 義 房 立 川 綜 合 病 院 青 沼 和 隆 筑 波 大 学 循 環 器 内 科 学 磯 部 文 隆 愛 知 医 科 大 学 心 臓 外 科 大 西 哲 NTT 東 日 本 関 東 病 院 循 環 器 内 科 加 藤 貴 雄 日 本 医 科 大 学 内 科 学 清 水 昭 彦 山 口 大 学 保 健 学 系 領 域 新 田 隆 日 本 医 科 大 学 心 臓 血 管 外 科 萩 原 誠 久 東 京 女 子 医 科 大 学 循 環 器 内 科 松 本 万 夫 埼 玉 医 科 大 学 国 際 医 療 センター 心 臓 内 科 村 川 裕 二 帝 京 大 学 溝 口 病 院 第 四 内 科 協 力 員 石 川 利 之 横 浜 市 立 大 学 循 環 器 内 科 岩 亨 愛 知 医 科 大 学 循 環 器 内 科 梅 村 純 榊 原 記 念 病 院 循 環 器 内 科 草 野 研 吾 岡 山 大 学 循 環 器 内 科 栗 田 隆 志 近 畿 大 学 循 環 器 内 科 佐 々 木 真 吾 弘 前 大 学 不 整 脈 先 進 治 療 学 志 賀 剛 東 京 女 子 医 科 大 学 循 環 器 内 科 庄 田 守 男 東 京 女 子 医 科 大 学 循 環 器 内 科 住 友 直 方 日 本 大 学 小 児 科 中 里 祐 二 順 天 堂 大 学 循 環 器 内 科 中 村 好 秀 近 畿 大 学 小 児 科 庭 野 慎 一 北 里 大 学 循 環 器 内 科 平 尾 見 三 東 京 医 科 歯 科 大 学 不 整 脈 センター 外 部 評 価 委 員 大 江 透 心 臓 病 センター 榊 原 病 院 笠 貫 宏 早 稲 田 大 学 生 命 理 工 学 木 村 剛 京 都 大 学 内 科 系 専 攻 内 科 学 児 玉 逸 雄 名 古 屋 大 学 田 中 茂 夫 狭 山 中 央 病 院 ( 構 成 員 の 所 属 は2011 年 7 月 現 在 ) 目 2 3 1. 我 が 国 における 非 薬 物 治 療 の 現 状 3 2.ガイドラインの 内 容 4 3.エビデンスと 推 奨 度 のグレード 5 4. 非 薬 物 療 法 の 適 応 決 定 に 際 し 評 価 すべき 事 項 6 5. 非 薬 物 療 法 の 医 療 条 件 6 6.インフォームド コンセント 7 8 1. 徐 脈 性 不 整 脈 8 2. 頻 脈 性 不 整 脈 9 次 11 1. 房 室 ブロック 11 2. 2 枝 および3 枝 ブロック 12 3. 洞 機 能 不 全 症 候 群 12 4. 徐 脈 性 心 房 細 動 13 5. 過 敏 性 頸 動 脈 洞 症 候 群 反 射 性 失 神 13 6. 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 13 7. 小 児 に 対 するペーシング 14 15 1. Wolff-Parkinson-White(WPW) 症 候 群 房 室 結 節 リエントリー 性 頻 拍 15 1

2. 心 房 細 動 15 3. 心 房 粗 動 心 房 頻 拍 17 4. 上 室 性 頻 脈 性 不 整 脈 に 対 する 房 室 ブロック 作 成 術 17 5. 心 室 期 外 収 縮 18 6. 心 室 頻 拍 18 7. 小 児 における 特 殊 性 19 Implantable Cardioverter-Defibrillator; ICD 19 1.ICD による 二 次 予 防 20 2. 器 質 的 心 疾 患 を 有 する 患 者 に 対 する 一 次 予 防 21 3. 原 因 不 明 の 失 神 23 4. 特 殊 心 疾 患 23 5. 小 児 における 植 込 み 型 除 細 動 器 26 27 1. 心 臓 再 同 期 療 法 28 2. 両 室 ペーシング 機 能 付 き 植 込 み 型 除 細 動 器 (CRT-D) 29 29 1. 心 房 細 動 30 2.その 他 の 上 室 性 頻 拍 30 3. 心 室 頻 拍 31 33 ( 無 断 転 載 を 禁 ずる) 改 訂 にあたって 1980 年 代, 欧 米 では 不 整 脈, 特 に 頻 脈 性 不 整 脈 に 対 する 非 薬 物 治 療 は 飛 躍 的 な 進 歩 を 遂 げた. 我 が 国 ではそ の 導 入, 普 及 が 約 10 年 遅 れ,1994 年 にカテーテルアブ レーションが,1996 年 に 植 込 み 型 除 細 動 器 (Implantable cardioverter-defbrillator; ICD)が 承 認 され, 保 険 適 用 と なった. 我 が 国 の 不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン は2001 年 に 初 版 が 策 定 刊 行 されたが,カテーテルア ブレーションについてはWPW 症 候 群, 上 室 性 頻 拍 を 中 心 に 相 当 数 のアブレーションが 実 施 されており, 適 応 が 明 確 に 記 載 された. 一 方, 心 房 細 動, 非 定 型 的 心 房 粗 動, 器 質 的 心 疾 患 に 伴 った 心 室 頻 拍 等 の 複 雑 不 整 脈 への 適 応 は 一 部 の 症 例 に 限 られた.1990 年 代 から 開 発 が 始 まっ た3 次 元 マッピングシステムはこれらの 複 雑 不 整 脈 の 機 序 解 明 とアブレーション 成 績 向 上 に 大 きく 寄 与 してき た. 我 が 国 では 2000 年 にCARTOシステムが,2006 年 にEnSiteシステムが 認 可 され,それまで 難 治 性 とされ た 不 整 脈 も 多 くの 例 で 治 療 が 可 能 となった.カテーテル アブレーションが 不 整 脈 の 標 準 的 治 療 として 普 及 したこ とを 受 けて2006 年 にガイドラインが 改 訂 され(2006 年 改 訂 版 ), 上 室 性 頻 拍 に 対 するアブレーションの 適 応 が 拡 大 されるとともに 心 房 細 動 を 含 む 複 雑 不 整 脈 に 対 して も 適 応 が 記 載 された.その 後, 特 に 発 作 性 心 房 細 動 を 中 心 として 症 例 数 が 増 加 し, 肺 静 脈 隔 離 術 が 標 準 的 手 技 と して 実 施 されるようになり, 心 房 細 動 治 療 ( 薬 物 )ガ イドライン(2008 年 改 訂 版 ) および 不 整 脈 薬 物 治 療 ガイドライン(2009 年 改 訂 版 ) では 薬 物 治 療 抵 抗 性 の 心 房 細 動 に 対 し, 第 二 選 択 の 治 療 法 としてカテーテルア ブレーションが 推 奨 されるに 至 った.その 他 の 不 整 脈 も 同 様 で,アブレーションが 薬 物 治 療 に 次 ぐ 第 二 選 択, 場 合 によっては 第 一 選 択 として 位 置 づけられるようになっ た.3 次 元 マッピングシステムもバージョンアップによ り 機 能 向 上 し,2008 年 に 第 二 世 代 のCARTO-XP,2011 年 に 第 三 世 代 のCARTO3が,そして2009 年 にEnSiteの 新 機 能 であるNavX が 認 可 された.さらに 我 が 国 への 導 入 が 遅 れたイリゲーションチップカテーテルが2009 年 に 使 用 可 能 となった.これらのアブレーション 支 援 技 術 の 進 歩 もあり, 複 雑 不 整 脈, 特 に 心 房 細 動, 心 室 頻 拍 等 の 難 治 性 不 整 脈 に 対 するカテーテルアブレーション 適 応 のさらなる 拡 大, 明 確 化 が 求 められるようになった. ICD について 見 ると, 初 版 のガイドライン 作 成 当 時 (1999~2000 年 )の 我 が 国 のICD 症 例 数 は 少 なく,エ ビデンスは 皆 無 に 近 かった.そのため 欧 米 の 大 規 模 研 究 によるエビデンスと 我 が 国 の 専 門 家 のコンセンサスによ り, 主 として 心 臓 突 然 死 二 次 予 防 のためのICD 適 応 が 作 成 された. 致 死 的 不 整 脈 ハイリスク 例 に 対 する 一 次 予 防 については,MADIT-Ⅰ(1996 年 ),MUSTT(1999 年 ) の 試 験 結 果 を 受 けて, 非 持 続 性 心 室 頻 拍 か 原 因 不 明 の 失 神 を 有 し, 心 機 能 低 下 を 認 め, 電 気 生 理 検 査 で 心 室 頻 拍 / 細 動 が 誘 発 される 場 合 を 適 応 とした.2001 年 の 初 版 刊 行 後, 欧 米 ではMADIT-Ⅱ(2002 年 ),SCD-HeFT(2005 年 ) 試 験 等 の 一 次 予 防 試 験 の 結 果 が 報 告 され,これらの エビデンスに 基 づき,ICD の 一 次 予 防 の 適 応 は 拡 大 され た. 我 が 国 でも2006 年 改 訂 版 で 二 次 予 防 法 としての ICD 適 応 が 明 確 化 されるとともに, 一 次 予 防 についても 心 不 全 症 状 と 心 機 能 低 下 を 認 める 例 にまで 適 応 が 拡 大 さ れた.その 後 のテクノロジー 発 展 に 伴 うデバイスの 高 性 能 化,サイズの 縮 小 化 等 もあり,ICD の 適 用 例 数 はさら に 増 加 し, 最 新 のエビデンスを 取 り 入 れたガイドライン 改 訂 が 必 要 となってきた.2007 年 に QT 延 長 症 候 群 ( 先 天 性 二 次 性 )とBrugada 症 候 群 の 診 療 に 関 するガイド 2

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン ライン が 策 定 刊 行 されたが, 同 様 の 致 死 的 不 整 脈 に 対 する ICD 適 応 について, 記 載 上 の 整 合 性 も 必 要 とな った. ICD とともに 発 展 した 治 療 手 技 として, 心 室 内 伝 導 障 害 を 伴 う 慢 性 心 不 全 に 対 する 両 心 室 ペーシング,すなわ ち 心 臓 再 同 期 療 法 (Cardiac resynchronization therapy; CRT)がある. 特 に 左 脚 ブロック 型 の 幅 広 いQRS と 慢 性 心 不 全 (NYHA クラスⅢ,Ⅳ), 心 機 能 低 下 を 有 する 例 に 対 するCRTの 症 状, 運 動 耐 容 能,そして 生 命 予 後 改 善 効 果 が 多 くの 臨 床 試 験 によって 立 証 された. 米 国 で はCRTが2001 年 FDA の 認 可 を 受 け,さらに 両 心 室 ペー シ ン グ 機 能 付 きICD(CRT-D) も 開 発 さ れ た. COMPANION 試 験 によってCRT-D の 慢 性 重 症 心 不 全 症 例 における 心 不 全 死 と 突 然 死 の 予 防 による 生 命 予 後 改 善 が 立 証 され,2002 年 にFDA の 認 可 を 受 けた. 我 が 国 で は2004 年 にCRTが,2006 年 にCRT-D が 保 険 適 用 とな った.2006 年 のガイドライン 改 訂 版 刊 行 後, 幅 広 い QRS と 心 機 能 低 下 に 加 え, 軽 度 ~ 中 等 度 心 不 全 (NYHA クラスⅡ,Ⅲ)を 有 する 例 に 対 するCRT-D の 有 用 性 が 報 告 され,2010 年 のRAFT 試 験 ではNYHA クラスⅡ 患 者 においてCRT-D がICD に 比 して 生 命 予 後 を 改 善 する ことが 示 された.CRT 適 応 の 基 準 となるQRS 幅 の 設 定 や 心 機 能, 心 不 全 の 程 度, 心 房 細 動 例 への 適 用 等 今 後 も 検 討 を 要 するが,CRT,CRT-D の 適 応 についてアップ デートする 必 要 が 生 じた. 2006 年 改 訂 版 以 降 に 我 が 国 で 刊 行 または 認 可 された 不 整 脈 診 断 治 療 に 関 するガイドライン,デバイス 機 器 等 の 主 要 なものを 以 下 に 示 す.エビデンスの 根 拠 とな る 臨 床 試 験 については 各 項 目 を 参 照 されたい. (1)CRT-D への 保 険 適 用 (2006 年 ) (2) 臨 床 心 臓 電 気 生 理 検 査 に 関 するガイドライン の 刊 行 (2006 年 ) (3) QT 延 長 症 候 群 ( 先 天 性 二 次 性 )とBrugada 症 候 群 の 診 療 に 関 するガイドライン の 刊 行 (2007 年 ) (4) 心 房 細 動 治 療 ( 薬 物 )ガイドライン 全 面 改 訂 版 の 刊 行 (2008 年 ) (5) 不 整 脈 薬 物 治 療 ガイドライン 部 分 改 訂 版 の 刊 行 (2009 年 ) (6)イリゲーションチップカテーテルの 認 可 (2009 年 ) (7) 心 臓 突 然 死 の 予 知 と 予 防 法 のガイドライン 部 分 改 訂 版 の 刊 行 (2010 年 ) (8) 慢 性 心 不 全 治 療 ガイドライン 部 分 改 訂 版 の 刊 行 (2010 年 ) (9) 第 二 / 第 三 世 代 3 次 元 マッピングシステムの 認 可 CARTO-XP(2008 年 ),CARTO3(2011 年 ), EnSite NavX(2009 年 ) 最 近 の 医 用 工 学 の 進 歩 とともに 非 薬 物 治 療 のいずれも がめざましく 発 展 しており,また 多 くの 大 規 模 臨 床 試 験 により 各 々の 適 応 拡 大 に 関 するエビデンスが 蓄 積 されて いる.このような 背 景 をふまえて2006 年 版 の 部 分 改 訂 を 行 い,ここに2011 年 版 を 策 定 した. Ⅰ ガイドラインの 背 景 および 考 え 方 1 我 が 国 における 非 薬 物 治 療 の 現 状 徐 脈 性 不 整 脈 に 対 するペースメーカ 療 法 は 我 が 国 では 1974 年 に 保 険 償 還 された.その 後 急 速 に 普 及 し,1980 年 代 にはペースメーカの 小 型 化, 電 池 寿 命 延 長, 生 理 的 ペースメーカの 開 発 により 年 間 植 込 み 症 例 数 は 年 々 増 加 し,2010 年 には 約 57,500 例 ( 新 規 : 約 36,000 件, 交 換 : 約 21,000 件 )まで 増 加 している(2002 年 は 約 42,700 件 ). 一 方, 頻 脈 性 不 整 脈 に 対 する 治 療 は1950 年 代 以 降 薬 物 療 法 が 中 心 で あ っ た が,1989 年 のCAST(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial) 報 告 以 来 1), 薬 物 療 法 は 大 きな 転 換 期 を 迎 え, 非 薬 物 療 法 の 位 置 づけが 飛 躍 的 に 向 上 した. 頻 脈 性 不 整 脈 の 根 治 を 目 的 として1970 年 代 から1980 年 代 には 外 科 手 術 が 進 歩 した.さらに1980 年 代 にカテーテルアブレーションと 植 込 み 型 除 細 動 器 (ICD)が 開 発 され1990 年 代 には 欧 米 で 急 速 に 普 及 した. カテーテルアブレーションは 開 胸 術 を 必 要 としない, 不 整 脈 発 生 源 に 対 する 根 治 療 法 として 確 立 している.また, 米 国 では 心 臓 突 然 死 が 年 間 約 40 万 人 でその80~90%が 心 室 細 動 心 室 頻 拍 によると 考 えられており 2),3),ICD は 最 も 強 力 な 突 然 死 予 防 法 として 位 置 づけられている. 慢 性 心 不 全 症 例 の20~30%に 合 併 する 左 脚 ブロック 型 心 室 内 伝 導 障 害 が 独 立 した 予 後 規 定 因 子 となることか 3

ら,1996 年 以 降, 両 室 ペーシングによる 心 臓 再 同 期 療 法 (CRT)が 確 立 され, 欧 米 では 急 速 に 普 及 しつつある. さらに 慢 性 心 不 全 の 死 因 は40~50%が 突 然 死 であり, その 多 くは 心 室 細 動 によると 考 えられることから, 両 室 ペーシング 機 能 付 き 植 込 み 型 除 細 動 器 (CRT-D)が 開 発 された. 我 が 国 では1994 年 にカテーテルアブレーション, 1996 年 にICD,2004 年 にCRT,そして2006 年 にCRT-D の 保 険 適 用 が 認 められた( 図 1). 各 々の 非 薬 物 療 法 は 進 歩 の 著 しい 領 域 であり,ICD,CRT/CRT-D の 植 込 み 件 数 を 見 ても 分 かるように 現 在 なお 普 及 過 程 にある( 図 2). 我 が 国 での 心 臓 突 然 死 の 実 態 は 必 ずしも 明 らかで はないが 4),6~8 万 人 / 年 と 推 定 される.その 直 接 死 因 の 多 くは 心 室 性 頻 脈 性 不 整 脈 と 考 えられるが 5),6),その 基 礎 心 疾 患 はICD 植 込 み 症 例 の 分 析 からは 欧 米 と 異 な ることが 示 唆 されている 7) ( 図 3).したがって, 頻 脈 性 不 整 脈 に 対 して 薬 物 療 法 と 非 薬 物 療 法 の 使 い 分 けのみな らず,カテーテルアブレーションとICD と 外 科 手 術 の 使 い 分 けが 必 要 であり, 現 時 点 における 非 薬 物 治 療 のガ イドライン 作 成 の 臨 床 的 意 義 は 極 めて 高 い. 2 ガイドラインの 内 容 本 ガイドライン( 改 訂 版 )は 不 整 脈 に 対 する 各 非 薬 物 療 法 の 適 応 を 最 新 の 知 見 に 基 づいて 提 唱 するものであ る. 非 薬 物 治 療 の 適 応, 評 価 には 臨 床 心 臓 電 気 生 理 検 査 が 不 可 欠 であるため, 初 めにその 意 義 と 適 応 を 示 し, 次 いで 非 薬 物 療 法 として 心 臓 ペースメーカ,カテーテルア ブレーション,ICD,CRT-D および 外 科 手 術 の 適 応 につ いて 記 載 した.さらに 不 整 脈 ではないが, 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 に 対 するペーシング 治 療 および 心 不 全 に 対 する 両 室 ペーシング( 心 臓 再 同 期 療 法 )についても 言 及 した. なお, 小 児 に 対 する 頻 脈 性 不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 は 成 人 におけるそれに 比 較 して 症 例 数 が 極 めて 少 なく, 臨 床 研 究 も 少 ない.したがってエビデンスに 基 づいて 推 奨 度 の グレードを 提 唱 することは 困 難 であり, 小 児 に 対 するカ テーテルアブレーションおよびICD の 適 応 の 多 くはそ の 特 殊 性 を 勘 案 しつつ 班 員 の 合 意 に 基 づいてグレードを 策 定 記 載 した. 4

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン 9,000 8,000 7,000 CRT- D 6,000 5,000 4,000 CRT- P ICD CRT- P CRT- D 3,000 2,000 ICD 1,000 0 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 12 3 6 19 34 10 3 ARVC HCM 12 DCM 16 81 DCM HCM ARVC 3 エビデンスと 推 奨 度 のグレード 我 が 国 ではペースメーカー 以 外 の 非 薬 物 療 法 は 欧 米 に 比 べ, 開 発, 普 及 が 遅 れ, 不 整 脈 の 非 薬 物 療 法 に 関 する 我 が 国 におけるエビデンスは 少 ない. 本 ガイドラインで は,まず 欧 米 におけるエビデンスに 基 づいた 資 料 を 調 査 し,さらにエビデンスの 水 準 を 批 判 的 に 吟 味 し, 加 えて 日 本 における 情 報 を 収 集 し,それらを 班 会 議 において 班 員 および 協 力 員 の 経 験 と 意 見 に 基 づきエビデンスの 水 準 を 検 討 した. 以 前 のACC/AHA ガイドライン 8)-12) およ びカナダ 医 師 会 によるもの 13), 前 回 改 訂 版 前 後 のガイド ライン 等 14)-16) も 参 考 として 検 討 したが, 我 が 国 におけ るエビデンスの 評 価 が 困 難 なため, 前 回 の 改 訂 版 に 続 き 今 回 もエビデンスの 水 準 は 表 示 しなかった. 推 奨 度 のグ レードについてはカナダ 医 師 会 の4 段 階 法 も 参 考 とし て,ACC/AHA ガイドラインに 基 づき, (1) クラスⅠ: 有 益 であるという 根 拠 があり, 適 応 で 5

あることが 一 般 に 同 意 されている (2) クラスⅡa: 有 益 であるという 意 見 が 多 いもの (3) クラスⅡb: 有 益 であるという 意 見 が 少 ないもの (4) クラスⅢ: 有 益 でないまたは 有 害 であり, 適 応 で ないことで 意 見 が 一 致 している に 分 類 し, 表 示 した. 4 非 薬 物 療 法 の 適 応 決 定 に 際 し 評 価 すべき 事 項 不 整 脈 の 非 薬 物 療 法 の 目 的 は,(1) 心 臓 突 然 死 の 予 防, 生 命 予 後 (mortality)の 改 善,(2) 不 整 脈 に 基 づく 症 状 の 改 善, 生 活 予 後 (morbidity)の 改 善,および(3) 患 者 の 社 会 生 活 上 の 満 足 度 の 改 善 にあり,(2)(3)は 生 活 の 質 (quality of life; QOL)の 改 善 といわれる. 換 言 すれば, 非 薬 物 治 療 の 適 応 は 医 学 ( 生 物 学 ) 的 側 面 からと 社 会 ( 医 学 ) 的 側 面 から 検 討 し, 決 定 する 必 要 がある. 前 者 とし ては 不 整 脈 によるAdams-Stokes 発 作 ( 失 神, 眼 前 暗 黒 感 を 伴 うめまい 等 の 脳 虚 血 症 状 ), 動 悸, 胸 内 苦 悶 感, 胸 痛, 心 不 全 症 状, 血 行 動 態 の 破 綻 等 の 症 状 を 来 たし 得 るか,そして 致 死 的 になり 得 るかを 評 価 する 必 要 がある. さらに, 基 礎 心 疾 患, 心 機 能 からみた 評 価, 頻 脈 性 と 徐 脈 性 不 整 脈 との 関 係 からみた 評 価, 薬 物 や 運 動 に 対 する 反 応 からみた 評 価, 臨 床 心 臓 電 気 生 理 検 査, 加 算 平 均 心 電 図,T wave alternans 等 による 評 価 が 必 要 となる. 後 者 としては, 患 者 を 全 人 的 に 把 握 し, 社 会 ( 家 庭 ないし 職 場 等 ) 人 としての 満 足 度 と 要 求 度 を 評 価 する 必 要 があ る. 例 えば, 飛 行 機 のパイロット, 電 車 や 車 の 運 転 手 お よび 高 所 での 作 業 等 の 危 険 を 伴 う 職 業 に 従 事 する 場 合, 若 年 者, 特 にスポーツ 活 動 を 希 望 する 場 合, 妊 娠 を 希 望 する 場 合, 車 の 運 転 を 希 望 する 場 合, 遠 隔 地 の 居 住 者, 頻 回 に 旅 行, 出 張 ( 特 に 時 差 を 伴 う 海 外 出 張 )をする 場 合, 精 神 的 および 肉 体 的 ストレスの 多 い 職 業 に 従 事 して いる 場 合 等 がある. 5 非 薬 物 療 法 の 医 療 条 件 る. (3) 非 薬 物 療 法 としてのペースメーカ,カテーテルア ブレーション,ICD,CRT/CRT-D および 外 科 手 術 について 十 分 な 知 識 と 医 療 技 術 を 有 する.かつ 各 々の 合 併 症 に 対 しても 緊 急 手 術 等 十 分 な 対 応 が 可 能 である. 1 植 込 み 型 除 細 動 器 保 険 適 用 にあたっての 条 件 として 下 記 の 特 掲 診 療 料 の 施 設 基 準 が 定 められている(2010 年 度 診 療 報 酬 点 数 表 による). (1) 循 環 器 科 および 心 臓 血 管 外 科 を 標 榜 している 病 院 であること. (2) 心 臓 電 気 生 理 学 的 検 査 を 年 間 50 例 以 上 実 施 して いること.なお,このうち5 例 以 上 は 頻 拍 性 心 室 不 整 脈 症 例 に 対 するものである. (3) 開 心 術 又 は 冠 動 脈, 大 動 脈 バイパス 移 植 術 を 合 わ せて 年 間 30 例 以 上 実 施 しており,かつ,ペース メーカ 植 込 み 術 を10 例 以 上 実 施 していること. (4) 常 勤 の 循 環 器 科 および 心 臓 血 管 外 科 の 医 師 がそれ ぞれ2 名 以 上 配 置 されており,そのうち2 名 以 上 は, 所 定 の 研 修 を 修 了 していること. 2 カテーテルアブレーション 1990 年 に 日 本 心 臓 ペーシング 電 気 生 理 学 会 ( 現 日 本 不 整 脈 学 会 )により 以 下 の 施 設 基 準 が 提 起 されてお り 17), 現 在 でも 準 拠 されるべき 点 が 多 い. (1) 心 臓 電 気 生 理 学 的 検 査 について 十 分 な 知 識 と 経 験 を 有 する. (2) 抗 不 整 脈 薬 療 法 について 十 分 な 知 識 と 経 験 を 有 す る. (3) ペースメーカ 療 法 について 十 分 な 知 識 と 経 験 を 有 する. (4) カテーテルアブレーション 施 行 時 には 心 臓 外 科 医 および 医 療 スタッフが 待 機 し, 緊 急 手 術 が 可 能 で ある. 不 整 脈 の 非 薬 物 療 法 は 高 度 の 医 療 技 術 を 必 要 とし,か つ 進 歩 の 速 い 領 域 である.したがって, 本 ガイドライン を 適 用 するにあたっては, 医 師 および 施 設 の 要 素 は 極 め て 重 要 であり, 具 体 的 には 医 師 として 下 記 の 条 件 が 必 要 である. (1) 臨 床 心 臓 電 気 生 理 検 査 について 十 分 な 知 識 と 経 験 を 有 する. (2) 抗 不 整 脈 薬 療 法 について 十 分 な 知 識 と 経 験 を 有 す カテーテルアブレーションは 医 科 点 数 表 第 2 章 第 10 部 手 術 通 則 第 5 号 および 第 6 号 に 掲 げる 手 術 の 施 設 基 準 の 対 象 ( 区 分 1, 経 皮 的 カテーテル 心 筋 焼 灼 術 )であり, 以 下 が 求 められている(2010 年 度 診 療 報 酬 点 数 表 によ る). (1) 緊 急 事 態 に 対 応 するための 体 制 その 他 当 該 療 養 を 行 うにつき 必 要 な 体 制 が 整 備 されていること. (2) 当 該 保 険 医 療 機 関 内 に 当 該 療 養 を 行 うにつき 必 要 6

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン な 医 師 が 配 置 されていること. (3) 当 該 手 術 の 一 年 間 の 実 施 件 数 を 当 該 保 険 医 療 機 関 の 見 やすい 場 所 に 掲 示 していること. (4) 手 術 を 受 けるすべての 患 者 に 対 して,それぞれの 患 者 が 受 ける 手 術 の 内 容 が 文 書 により 交 付 され, 説 明 がなされていること. 3 心 臓 ペースメーカ 保 険 適 用 にあたっての 条 件 として 下 記 の 特 掲 診 療 料 の 施 設 基 準 が 定 められている(2010 年 度 診 療 報 酬 点 数 表 による). (1) 循 環 器 科 又 は 心 臓 血 管 外 科 の 経 験 を5 年 以 上 有 す る 医 師 が1 名 以 上 配 置 されていること.なお, 診 療 所 である 保 険 医 療 機 関 においても 届 出 が 可 能 で あること. 施 設 基 準 にはないが, 心 臓 電 気 生 理 検 査 を 行 え,ペー スメーカ 外 来 等 自 施 設 で 行 えるチェックシステムを 持 っ ていることが 望 ましい. 4 心 臓 再 同 期 療 法 保 険 適 用 にあたっての 条 件 として 下 記 の 施 設 基 準 が 定 められている(2010 年 度 診 療 報 酬 点 数 表 による). (1) 循 環 器 科 および 心 臓 血 管 外 科 を 標 榜 している 病 院 であること. (2) 心 臓 電 気 生 理 学 的 検 査 を 年 間 50 例 以 上 実 施 して いる.うち5 例 以 上 は 心 室 性 頻 拍 性 不 整 脈 症 例 に 対 するものである. (3) 開 心 術 又 は 大 動 脈, 冠 動 脈 バイパス 術 を 合 わせて 年 間 50 例 以 上 実 施 しており,かつ,ペースメー カ 移 植 術 を 年 間 10 例 以 上 実 施 している. (4) 体 外 式 を 含 む 補 助 人 工 心 臓 等 を 用 いた 重 症 心 不 全 治 療 の 十 分 な 経 験 のある 施 設 であること. (5) 常 勤 の 循 環 器 科 および 心 臓 血 管 外 科 の 医 師 がそれ ぞれ2 名 以 上 配 置 されており,そのうち2 名 以 上 は, 所 定 の 研 修 を 修 了 していること. 以 上 の 施 設 基 準 を 満 たすと 同 時 に, 非 薬 物 療 法 を 有 効 かつ 安 全 に 実 施 するために 各 施 設 において 人 材 の 育 成, 設 備 の 充 実,そしてシステムの 確 立 をはかることが 不 可 欠 と 考 えられる. 我 が 国 では 日 本 不 整 脈 学 会 が 臨 床 心 臓 電 気 生 理 検 査, カテーテルアブレーション,ICD,および CRT/CRT-D に 関 する 教 育 研 修 セミナーを 毎 年 実 施 し, 基 本 的 標 準 的 知 識 とともに 最 新 の 情 報 を 提 供 している.また 日 本 不 整 脈 学 会 と 日 本 心 電 学 会 が 合 同 で, 時 代 に 合 った 適 切 な 医 療 が 提 供 可 能 な 不 整 脈 専 門 医 の 認 定 制 度 を 構 築 してお り,2012 年 度 より 運 用 開 始 予 定 である.さらに, 日 本 不 整 脈 学 会 は 心 臓 ペースメーカ 技 師 養 成 セミナー を 開 催 し, 不 整 脈, 電 気 生 理 検 査,ペースメーカ,ICD/ CRT-D,カテーテルアブレーション 等 に 携 わる 人 材 を 育 成 するとともに,ペースメーカやICD 等 のデバイス 製 造 に 関 わる 企 業 側 から 専 門 的 医 療 機 器 情 報 サービスを 提 供 するCardiac Device Representative(CDR)の 認 定 証 を 発 行 している. 6 インフォームド コンセント 不 整 脈 の 非 薬 物 療 法 のような 高 度 の 新 医 療 技 術 を 要 す る 治 療 の 適 応 決 定 にあたっては, 患 者 が 自 ら 理 解 し 得 る 言 葉 で 十 分 な 情 報 を 与 えられた 上 での 自 由 意 思 に 基 づく 同 意 (informed consent)が 不 可 欠 である.その 説 明 内 容 は 個 々の 医 師 の 知 識 と 経 験 に 基 づく 判 断 に 影 響 される が, 具 体 的 には 下 記 の 情 報 を 患 者 に 提 供 することが 必 要 である.(1) 病 気 に 関 わる 情 報 ( 不 整 脈 の 種 類, 重 症 度, 基 礎 心 疾 患 等 ),(2) 治 療 内 容 およびそれによってもた らされる 効 果 に 関 わる 情 報 ( 一 般 的 情 報 のみならず 当 該 施 設 における 実 績 に 関 する 情 報 が 必 要 ),すなわち 治 療 目 的 と 内 容 (ペースメーカやICD,CRT/CRT-D につい ては 機 種 名 および 製 造 会 社 名 を 含 む),その 治 療 効 果 と 成 功 率, 急 性 期 合 併 症 の 種 類 と 重 症 度 および 発 生 頻 度, 長 期 追 跡 時 の 合 併 症 の 種 類 と 重 症 度 および 発 生 頻 度,そ して 本 治 療 法 を 選 択 した 理 由,(3) 本 治 療 法 以 外 の 治 療 法 ( 薬 物 療 法, 他 の 非 薬 物 療 法,さらに 当 該 施 設 のみな らず, 他 施 設 で 可 能 な 治 療 法 )とそれによってもたらさ れる 効 果 ( 各 々の 成 功 率 と 合 併 症 等 ),(4) 本 治 療 法 を 行 わずに 放 置 した 場 合 に 予 想 される 結 果 に 関 わる 情 報 ( 予 測 される 転 帰 とその 確 率 等 ),(5) 各 種 不 整 脈 に 対 す る 本 治 療 法 の 位 置 づけ, 予 測 し 得 ない 合 併 症 が 存 在 し 得 ること( 短 期 および 長 期 ),および 今 後 の 治 療 の 進 歩 の 可 能 性 等 である. 以 上 の 情 報 提 供 後, 患 者 が 他 の 医 師 や 医 療 機 関 の 意 見 (セカンドオピニオン)を 求 めれば,こ れに 応 える 必 要 もある. 一 方, 日 常 診 療 の 場 で 上 記 情 報 を 患 者 に 十 分 提 供 する ことは 必 ずしも 容 易 ではない.それは 現 代 医 学 自 体 の 限 界 や, 当 該 医 師 の 知 識 と 経 験 の 限 界 に 基 づく 場 合 もあれ ば, 情 報 によって 患 者 の 混 乱 を 招 く 場 合 もあり,インフ ォームド コンセントの 内 容 は 重 要 な 課 題 であろう.さ らに 今 後 施 設 基 準 を 満 たした 施 設 名 および 学 会 による 認 定 医 等 の 開 示 のみならず, 実 施 症 例 数 と 治 療 成 績 ( 成 功 率, 合 併 症 )の 開 示 も 求 められるであろう. 7

非 薬 物 治 療 の 適 応 決 定 にあたっては 自 己 決 定 権 が 最 も 重 要 であるが, 患 者 が 強 く 希 望 するから 患 者 が 望 まないから ということを 過 大 評 価 することには 慎 重 でなければならない.これは 決 定 の 根 拠 となる 医 療 情 報 に 偏 りが 生 じる 可 能 性 が 否 定 されないためである. 医 師 はより 正 確 かつ 最 新 の 情 報 を 提 供 できるように 自 己 研 鑽 に 励 み,かつ 患 者 家 族 の 理 解 度 に 応 じてわかりやすく 説 明 できる 手 法 を 身 につけるべきである.そしてインフ ォームド コンセントが 患 者 にとって 利 益 と 不 利 益 を 比 較 考 慮 し 患 者 自 身 が 真 の 利 益 を 選 択 できる 唯 一 の 機 会 であることを 医 師 は 十 分 に 認 識 しなければならない. Ⅱ 心 臓 電 気 生 理 検 査 2. 失 神,めまいを 有 し, 原 因 として 徐 脈 が 疑 われる 場 合 1. ペースメーカの 適 応 のある 洞 機 能 不 全 または 房 室 ブロックで, 洞 結 節 機 能 や 房 室 伝 導 障 害 の 評 価 が 必 要 な 場 合 2. 症 状 のないMobitzⅡ 型 第 2 度 房 室 ブロック, 第 3 度 房 室 ブロックおよび2 枝 または3 枝 ブロックで ブロック 部 位 の 同 定 および 洞 結 節 機 能 評 価 が 必 要 な 場 合 ClassⅡb: 1. 症 状 のない 慢 性 2 枝 ブロック Class Ⅲ: 1. 症 状 の な い 洞 徐 脈, 第 1 度 房 室 ブ ロ ッ ク, Wenckebach 型 第 2 度 房 室 ブロック 1969 年,ScherlagらによるHis 束 心 電 図 の 記 録 以 来, 心 房, 心 室 の 電 位 記 録 や 電 気 刺 激 法 を 含 む 心 臓 電 気 生 理 検 査 は 広 く 普 及 し, 徐 脈 性 不 整 脈, 頻 脈 性 不 整 脈 の 機 序 解 明 や 非 薬 物 治 療 の 適 応 決 定 および 評 価 に 不 可 欠 な 検 査 となっている. 徐 脈 性 不 整 脈 に 対 する 電 気 生 理 検 査 は 標 準 12 誘 導 心 電 図,ホルター 心 電 図, 負 荷 心 電 図 の 補 助 的 な 役 割 を 有 する.しかし, 電 気 生 理 検 査 により,めまい, 失 神 等 の 自 覚 症 状 と 心 電 図 所 見 が 一 致 しない 場 合 の 評 価 や, 各 種 徐 脈 性 不 整 脈 の 病 型 および 重 症 度 分 類 が 可 能 となり, 治 療 法 の 選 択,ペースメーカ 適 応 決 定,ペースメーカの 機 種 選 択 に 重 要 な 情 報 をもたらす. 頻 脈 性 不 整 脈 における 電 気 生 理 検 査 の 役 割 は, 近 年 の 非 薬 物 治 療 の 発 達 に 伴 い 大 きく 変 遷 してきた. 致 死 的 不 整 脈 では 植 込 み 型 除 細 動 器 によって 予 後 の 改 善 がもたら されている.カテーテルアブレーションでは 頻 拍 維 持 に 必 須 の 部 位 の 同 定 等, 電 気 生 理 検 査 は 重 要 な 役 割 を 果 た し, 多 くの 頻 脈 は 根 治 可 能 となった. 頻 脈 における 電 気 生 理 検 査 の 役 割 は, 診 断, 機 序 の 決 定 および 非 薬 物 治 療 の 適 応 と 手 段 の 決 定 にあると 言 え る. 1 徐 脈 性 不 整 脈 診 断 を 目 的 とした 心 臓 電 気 生 理 検 査 1. 失 神,めまい 等 の 症 状 と 徐 脈 との 因 果 関 係 が 不 明 な 場 合 診 断 を 目 的 とした 電 気 生 理 検 査 では 診 断 の 確 定 のみで なく, 失 神,めまい 等 の 自 覚 症 状 が 徐 脈 性 不 整 脈 による かを 診 断 することが 重 要 である. 洞 機 能 不 全 や 房 室 ブロ ック 等 の 徐 脈 性 不 整 脈 において, 自 覚 症 状 は 認 められる が,モニター 心 電 図 やホルター 心 電 図 ではその 関 係 が 証 明 されない 場 合 も 多 い. 洞 結 節 機 能 は 洞 結 節 回 復 時 間 と 洞 房 伝 導 時 間 や 洞 結 節 電 位 記 録 法 で 評 価 される 18)-22). 房 室 ブロック, 心 室 内 伝 導 障 害 の 例 ではHV 間 隔 の 測 定, 高 頻 度 心 房 刺 激 法 によるブロックの 出 現 を 確 認 し, 自 覚 症 状 との 関 係 を 検 討 する 23)-25).ペースメーカ 植 込 み 後 の 症 例 で 失 神 やめまい 等 の 自 覚 症 状 がある 場 合 には 電 気 生 理 検 査 により 他 の 頻 脈 性 不 整 脈 の 有 無 を 評 価 し,さら に 過 敏 性 頸 動 脈 洞 症 候 群, 神 経 調 節 性 失 神 の 合 併 の 有 無 を 評 価 する. 原 因 不 明 の 失 神,めまいを 有 する 例 では, その 原 因 として 徐 脈 性 不 整 脈 による 場 合 が 考 えられる. 過 敏 性 頸 動 脈 洞 症 候 群, 神 経 調 節 性 失 神 では 電 気 生 理 検 査 の 診 断 的 意 義 は 高 くなく,ホルター 心 電 図, 運 動 負 荷 心 電 図 やhead-up tilt 試 験 26) との 組 み 合 わせにより 診 断 を 行 う. ペースメーカの 適 応 のある 洞 機 能 不 全, 房 室 ブロック 症 例 で, 洞 結 節 機 能 や 房 室 伝 導 能 を 評 価 することはペー スメーカの 機 種 選 択 を 行 う 上 で 重 要 である 24). 生 理 的 ペ ーシングは 患 者 のQOL を 改 善 し, 心 房 細 動 の 予 防 ひい ては 生 命 予 後 の 改 善 をもたらす 19),27). 無 症 状 でもブロ ック 部 位 がHis 束 内 またはHis 束 以 下 の 場 合 がある 23)-25). 特 に 基 礎 心 疾 患 を 有 する 症 例 では 無 症 状 でもペースメーカ の 適 応 となる 場 合 がある. 無 症 状 の2 枝 ブロックは 将 来 高 度 房 室 ブロックに 進 行 する 可 能 性 は 否 定 できないが 28), 電 気 生 理 検 査 を 積 極 的 にすすめるエビデンスはない. 新 8

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン たに 出 現 したり, 基 礎 心 疾 患 を 有 する 症 例 で 心 臓 カテー テル 検 査 をする 場 合 に 付 加 的 に 電 気 生 理 検 査 によりHis- Purkinje 系 の 伝 導 能 を 評 価 しておくことは 意 義 がある. 薬 効 評 価 を 目 的 とした 心 臓 電 気 生 理 検 査 なし 1. 洞 機 能 不 全 で 徐 脈 が 内 因 性 か 自 律 神 経 機 能 不 全 か あるいは 薬 剤 によるかの 判 定 が 必 要 な 場 合 2. 徐 脈 頻 脈 症 候 群 で 頻 脈 に 対 する 必 要 不 可 欠 な 薬 剤 により 徐 脈 の 悪 化 を 来 たす 場 合 3. 無 症 状 の 洞 機 能 不 全 症 例 で 洞 機 能 不 全 を 増 悪 させ るおそれのある 薬 剤 の 投 与 が 必 要 な 場 合 4. 無 症 状 の 房 室 ブロック, 心 室 内 伝 導 障 害 例 で 伝 導 障 害 を 増 悪 させるおそれのある 薬 剤 の 投 与 が 必 要 な 場 合 徐 脈 性 不 整 脈 の 薬 効 評 価 を 目 的 とした 電 気 生 理 検 査 に ClassⅠの 適 応 はないが, 診 断 を 目 的 とした 電 気 生 理 検 査 の 評 価 が, 自 覚 症 状 と 一 致 しない 場 合, 薬 物 負 荷 を 行 う.Ⅰa 群 のプロカインアミドやジソピラミド,Ⅳ 群 の ベラパミルを 静 注 し, 洞 結 節, 房 室 結 節,His-Purkinje 系 の 機 能 を 評 価 する 29),30). 洞 機 能 不 全 の 原 因 が 内 因 性 か 自 律 神 経 機 能 不 全 あるい は 薬 剤 によるかは 治 療 法 の 選 択 に 重 要 である. 自 律 神 経 の 影 響 を 除 外 する 目 的 で 薬 理 学 的 自 律 神 経 遮 断 を 行 う. 硫 酸 アトロピン0.04mg/kgとプロプラノロール0.2mg/kg を 静 注 し 評 価 する 22). 薬 剤 の 影 響 が 考 えられれば 投 与 中 止 してから 評 価 し, 自 覚 症 状 との 関 係 を 再 評 価 する. 無 症 状 の 洞 機 能 不 全, 房 室 ブロック, 心 室 内 伝 導 障 害 例 で 不 整 脈 を 増 悪 させるおそれのある 薬 剤 の 投 与 が 必 要 な 場 合 は 電 気 生 理 検 査 により 評 価 を 行 う. 特 に 基 礎 心 疾 患 を 有 する 例 では 重 要 である. ペーシング 治 療 の 有 効 性 確 認 を 目 的 とした 心 臓 電 気 生 理 検 査 1. 神 経 調 節 性 失 神, 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 におけるペ ーシング 治 療 の 有 効 性 を 一 時 的 ペーシングによっ て 確 認 する 場 合 1. 徐 脈 性 心 房 細 動 に 対 するペーシング 治 療 の 有 効 性 を 一 時 的 ペーシングによって 評 価 し,ペースメー カ 植 込 みの 適 応 を 決 定 する 場 合 2. 心 不 全 症 例 における 両 室 ペーシング( 心 臓 再 同 期 療 法,CRT)の 有 効 性 を 一 時 的 ペーシングによっ て 確 認 する 場 合 徐 脈 性 不 整 脈 では 治 療 を 目 的 とした 電 気 生 理 検 査 はな いが, 一 時 的 ペーシングを 行 い, 心 機 能 や 自 覚 症 状 を 評 価 することは 治 療 法 選 択 に 有 用 である. 神 経 調 節 性 失 神, 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 におけるペーシ ング 療 法 の 有 効 性 が 示 されている 31).しかしその 有 効 性 は 症 例 によって 異 なり 一 時 的 ペーシングによって 確 認 が 必 要 な 場 合 がある. 徐 脈 性 心 房 細 動 に 対 するペーシング 療 法 の 有 効 性 を 心 臓 カテーテル 検 査 によりペーシングレートを 変 化 させて 評 価 し, 一 時 的 ペーシングを 長 期 間 留 置 させ, 自 覚 的 他 覚 的 症 状 を 評 価 しペーシング 療 法 の 適 応 を 決 定 する. 心 不 全 症 例 における 両 室 ペーシング( 心 臓 再 同 期 療 法, CRT)の 有 効 性 を 一 時 的 両 室 ペーシングにより 評 価 し, その 適 応 を 検 討 することがある 32). 2 頻 脈 性 不 整 脈 診 断 を 目 的 とした 心 臓 電 気 生 理 検 査 1. 症 状 のあるnarrow QRS 頻 拍 2.wide QRS 頻 拍 3. 失 神,めまいを 伴 う 動 悸 発 作 を 有 するWPW 症 候 群 4. 失 神,めまいを 有 し, 原 因 として 頻 拍 が 疑 われる 場 合 1. 動 悸 発 作 の 原 因 として 頻 脈 性 不 整 脈 が 疑 われるが, 心 電 図 等 により 確 認 できない 場 合 2. 症 状 のないnarrow QRS 頻 拍 頻 拍 の 診 断 においては, 電 気 生 理 検 査 における 頻 拍 の 誘 発 あるいは 頻 拍 に 必 須 の 不 整 脈 基 質 を 同 定 することが 重 要 であるが 33), 頻 拍 の 機 序 によってはプログラム 刺 激 よりも 各 種 の 薬 物 負 荷 が 有 用 である. 非 心 臓 性 の 原 因 ( 甲 状 腺 機 能 亢 進 症, 貧 血 等 )を 除 外 した 頻 脈 性 不 整 脈 は 電 気 生 理 検 査 の 対 象 となる. 症 状 の あるnarrow QRS(<120msec) 頻 拍 34)-36) や 自 覚 症 状 に かかわらず 心 室 頻 拍 を 含 むwide QRS 頻 拍 37),38) はその 機 序 としてリエントリーの 可 能 性 が 高 く 電 気 生 理 検 査 の 良 い 適 応 となる. 頻 拍 の 診 断 は 治 療 方 針 の 決 定 に 有 用 であ り,カテーテルアブレーションによる 根 治 の 可 能 性 が 高 9

い 36),39). 失 神,めまいを 有 するWPW 症 候 群 では 突 然 死 の 可 能 性 があり, 頻 拍 の 誘 発 および 副 伝 導 路 の 不 応 期 の 測 定 によるハイリスク 群 の 同 定 が 重 要 である 40),41).な お,アブレーション 治 療 を 想 定 する 症 例 では 診 断 目 的 の 電 気 生 理 検 査 とアブレーションを 一 期 的 に 実 施 すること が 多 い. 原 因 不 明 の 失 神,めまいを 有 し, 原 因 として 頻 拍 が 疑 われる 症 例 では 頻 拍 の 誘 発 だけでなく 基 礎 心 疾 患 の 診 断 も 重 要 となる. 治 療 効 果 判 定 を 目 的 とした 心 臓 電 気 生 理 検 査 なし 1. 持 続 性 単 形 性 心 室 頻 拍 に 対 する 薬 効 および 催 不 整 脈 作 用 の 評 価 2. 心 室 頻 拍 に 対 するカテーテルアブレーション 後 の 慢 性 期 評 価 が 必 要 な 場 合 ClassⅡb: 1. 房 室 結 節 リエントリー 性 頻 拍 または 房 室 回 帰 頻 拍 の 薬 効 判 定 2. 洞 結 節 リエントリー 性 頻 拍, 心 房 頻 拍, 心 房 粗 動 の 薬 効 判 定 3. 上 室 性 頻 脈 性 不 整 脈 に 対 するカテーテルアブレー ション 後 の 慢 性 期 評 価 が 必 要 な 場 合 電 気 生 理 検 査 における 薬 効 評 価 は, 頻 拍 の 誘 発 阻 止 効 果 を 有 効 指 標 として 行 われ, 電 気 生 理 検 査 ガイド 治 療 と 呼 ばれる. 心 室 頻 拍 に 対 する 電 気 生 理 検 査 ガイド 治 療 の 予 防 効 果 は,ホルター 心 電 図 や 運 動 負 荷 試 験 等 の 非 侵 襲 的 な 評 価 法 に 比 し て 高 い と 考 え ら れ る が,ESVEM (Electrophysiological Study Versus Electrocardiographic Monitoring) 試 験 では 電 気 生 理 検 査 ガイド 治 療 とホルタ ー 心 電 図 を 用 いた 薬 効 評 価 に 差 がないとされ 42), 電 気 生 理 検 査 ガイド 治 療 の 限 界 も 指 摘 されている 43).アミオダ ロンでは 電 気 生 理 検 査 ないしホルター 心 電 図 ガイド 治 療 の 有 用 性 も 報 告 されているが 44), 経 験 的 に 投 与 すること が 多 い. 器 質 的 心 疾 患 のない 右 室 流 出 路 または 左 室 中 隔 起 源 の 特 発 性 持 続 性 単 形 性 心 室 頻 拍 ではカテーテルアブレーシ ョンの 成 功 率 が 高 いが, 器 質 的 心 疾 患 を 有 する 心 室 頻 拍, 特 に 血 行 動 態 が 悪 化 する 症 例 では 植 込 み 型 除 細 動 器 が 適 応 と な る.AVID(Antiarrhythmics Versus Implantable Defibrillators) 研 究 45) においては, 心 室 頻 拍 / 心 室 細 動 の 二 次 予 防 で, 薬 物 による 予 防 治 療 よりも 植 込 み 型 除 細 動 器 治 療 が 予 後 改 善 に 寄 与 することが 示 されており, 植 込 み 型 除 細 動 器 治 療 が 一 般 的 となった 現 在, 電 気 生 理 検 査 ガイド 治 療 の 意 義 は 発 作 頻 度 を 減 少 させる 等, 補 助 的 な 意 味 に 留 まると 言 える. 単 形 性 心 室 頻 拍 においては, 電 気 生 理 検 査 ガイドによる 予 防 治 療 薬 選 択 も 有 用 であり 46)-49), また 多 形 性 心 室 頻 拍 や 心 室 細 動 誘 発 性 評 価 による 催 不 整 脈 作 用 の 予 知 にも 有 用 とされるが 50),51), 植 込 み 型 除 細 動 器 を 適 用 する 症 例 では 予 防 治 療 の 効 果 判 定 は 必 須 では ない. 房 室 結 節 リエントリー 性 頻 拍 または 房 室 回 帰 頻 拍 に 対 し 薬 効 評 価 が 行 われていたが,QOL, 副 作 用 の 問 題 等 から 最 近 では 薬 効 評 価 を 行 わずにカテーテルアブレーシ ョンを 選 択 する 場 合 が 多 い.また, 洞 結 節 リエントリー 性 頻 拍, 心 房 頻 拍, 心 房 粗 動 症 例 で 薬 効 判 定 が 有 用 とす る 報 告 は 少 ない. カテーテルアブレーションの 効 果 判 定 では, 上 室 性 頻 拍 の 再 発 は1~3%と 少 なく, 動 悸 発 作 の 再 発 を 認 めない 限 り 必 要 ないが, 他 の 頻 拍 が 新 たに 出 現 する 場 合 もある. 心 室 頻 拍 では 再 発 率 は 高 く 致 死 的 となる 場 合 もあり 48)-50), 植 込 み 型 除 細 動 器 の 適 用 等,より 強 力 な 二 次 予 防 治 療 の 併 用 を 考 慮 する 45). リスク 評 価 を 目 的 とした 心 臓 電 気 生 理 検 査 1. 心 停 止 蘇 生 例 2. 原 因 不 明 の 失 神 発 作 または 左 室 機 能 低 下 を 有 する 器 質 的 心 疾 患 に 伴 う 非 持 続 性 心 室 頻 拍 3. 症 状 のないWPW 症 候 群 で, 突 然 死 の 家 族 歴 があ るか, 危 険 度 の 高 い 職 業 に 従 事 している 場 合 1. 非 持 続 性 心 室 頻 拍 あるいは 心 室 期 外 収 縮 頻 発 例 で, 器 質 的 心 疾 患 を 有 し, 加 算 平 均 心 電 図 にて 心 室 遅 延 電 位 が 陽 性 の 場 合 2. 失 神 の 既 往 あ る い は 突 然 死 の 家 族 歴 の あ る Brugada 症 候 群 ClassⅡb: 1. 非 持 続 性 心 室 頻 拍 で, 心 機 能 低 下 を 伴 わない 器 質 的 心 疾 患 を 有 する 場 合 2. 心 室 期 外 収 縮 頻 発 あるいは 非 持 続 性 心 室 頻 拍 で, 加 算 平 均 心 電 図 にて 心 室 遅 延 電 位 が 陽 性 で, 器 質 的 心 疾 患 を 認 めない 場 合 3. 失 神,めまいを 伴 う 動 悸 発 作 の 既 往 あるいは 家 族 歴 のあるQT 延 長 症 候 群 突 然 死 のリスク 評 価 に 関 しては, 致 死 的 不 整 脈 の 誘 発 の 可 否 で 判 定 が 行 われているが, 危 険 度 の 高 い 症 例 の 同 定 は 必 ずしも 容 易 ではなく,ホルター 心 電 図, 運 動 負 荷, 10

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン 加 算 平 均 心 電 図,T 波 交 代 現 象 (T wave alternans) 等 に よる 評 価 を 併 せて 総 合 的 に 判 定 する. 心 筋 梗 塞 急 性 期 を 除 く 心 停 止 蘇 生 例 は 心 室 頻 拍, 心 室 細 動 の 再 発 率 が 高 く, 従 来 から 電 気 生 理 検 査 ガイド 治 療 が 行 われている. 器 質 的 心 疾 患 を 有 する 非 持 続 性 心 室 頻 拍 においては 左 心 機 能 低 下 例 が 問 題 となり, 左 室 駆 出 率 40% 未 満 の 場 合, 陳 旧 性 心 筋 梗 塞, 拡 張 型 心 筋 症, 肥 大 型 心 筋 症 では 電 気 生 理 検 査 によるリスク 評 価 を 積 極 的 に 行 う 52)-55). 症 状 のないWPW 症 候 群 では, 突 然 死 の 家 族 歴 がある か,パイロット 等 の 危 険 度 の 高 い 職 業 に 従 事 している 場 合 は, 電 気 生 理 検 査 により 副 伝 導 路 の 不 応 期 を 測 定 し 不 応 期 の 短 いハイリスク 群 を 同 定 する 41). QT 延 長 症 候 群 のリスク 評 価 における 電 気 生 理 検 査 の 意 義 は 少 ないが, 失 神 あるいは 症 状 のある 頻 拍 の 既 往 を 有 するQT 延 長 例 では, 心 腔 内 マッピングにより 単 相 性 活 動 電 位 を 記 録 し, 早 期 後 脱 分 極 との 関 連 を 検 討 するこ とがある 56)-58). 近 年, 器 質 的 心 疾 患 のない 若 年 ~ 中 年 者 の 突 然 死 の 原 因 としてBrugada 症 候 群 が 注 目 されてい るが, 心 電 図 上 特 徴 的 なV 1 ~V 3 誘 導 のST 上 昇 は 検 診 では0.05~0.4%に 認 められる. 自 覚 症 状 のない 症 例 が 大 半 であるが, 失 神 既 往 あるいは 突 然 死 家 族 歴 のある Brugada 型 心 電 図 例 では 植 込 み 型 除 細 動 器 の 適 用 を 考 慮 する 必 要 がある. 電 気 生 理 検 査 における 心 室 細 動 誘 発 の 可 否 を 適 応 決 定 に 用 いるか 否 かには 議 論 があるが, 誘 発 例 は 非 誘 発 例 よりも 予 後 が 悪 いことを 示 す 報 告 もある 59)-62). 器 質 的 心 疾 患 がない 心 室 期 外 収 縮 頻 発 例 では 電 気 生 理 検 査 の 有 用 性 は 低 いと 考 えられている. 誘 発 される 不 整 脈 は, 不 整 脈 の 種 類 や 誘 発 プロトコールによって 臨 床 的 意 義 に 差 がある. 加 算 平 均 心 電 図 にて 心 室 遅 延 電 位 が 陽 性 の 場 合 には 電 気 生 理 検 査 を 考 慮 することもある 63),64). Ⅲ 心 臓 ペースメーカ みによる 倫 理 経 済 上 の 問 題 も 指 摘 されている.このよ うな 現 状 をふまえて,より 厳 密 なペースメーカ 植 込 み 適 応 のガイドラインが 求 められてきた. 米 国 においては, AHA/ACC の 合 同 委 員 会 が 中 心 となり,1984 年 に 最 初 のガイドラインが 提 示 され,その 後 1991 年,1998 年 と 大 幅 な 改 訂 が 加 えられて 今 日 に 至 っている 8),9). 我 が 国 においても 概 ねAHA/ACCのガイドラインに 準 じて 植 込 み 適 応 が 考 慮 されてきたが, 日 本 人 の 特 性 や 社 会 的 状 況 に 見 合 った 適 応 決 定 の 必 要 性 から, 日 本 心 臓 ペーシング 電 気 生 理 学 会 ( 現 日 本 不 整 脈 学 会 )の 委 員 会 が 1995 年 に 独 自 の 心 臓 ペースメーカ 植 込 みに 関 するガイドライン を 発 表 している 65). 医 学 的 適 応 決 定 にあたっては, 症 状 の 性 質 と 強 さ,な らびにそれらと 徐 脈 性 不 整 脈 の 因 果 関 係 の 把 握 が 最 も 重 要 である. 徐 脈 性 不 整 脈 に 伴 う 症 状 としては, 一 過 性 脳 虚 血 による 失 神, 眼 前 暗 黒 感, 強 いめまい,ふらふら 感 等,および 長 時 間 の 徐 脈 による 運 動 耐 容 能 の 低 下 や 心 不 全 症 状 等 が 挙 げられる.また, 徐 脈 により 悪 化 し 得 る 心 疾 患 の 合 併, 徐 脈 を 悪 化 させる 可 能 性 のある 薬 剤 の 使 用 が 必 須 の 場 合, 徐 脈 により 脳 梗 塞 発 症 の 危 険 性 が 高 まる ような 脳 血 管 病 変 の 合 併 等 も 考 慮 すべきである.さらに ホルター 心 電 図 や 心 臓 電 気 生 理 検 査 における 異 常 所 見 も 重 要 である. また 社 会 的 要 因 として, 年 齢, 職 業 ( 電 磁 障 害 を 受 け やすい 職 業, 高 所 で 働 く 場 合, 自 動 車 の 運 転 等 ), 身 体 活 動 度, 家 庭 環 境, 生 活 環 境, 性 格, 患 者 および 家 族 の 希 望 等 を 幅 広 く 考 慮 すべきである. 以 下 のペースメーカ 植 込 みの 適 応 は 新 規 の 症 例 を 対 象 として 記 載 されている.バッテリー 消 耗 に 伴 うジェネレ ーター 交 換 に 際 しても, 基 本 的 には 同 じ 適 応 の 下, 同 じ 機 種 が 用 いられるが, 一 部 には 病 態 の 進 行 が 認 められる ことがあり, 電 気 生 理 検 査 による 再 評 価, 機 種 / 設 定 の 変 更 を 要 することもある. 1 房 室 ブロック 植 込 み 型 ペースメーカは,1960 年 代 に 実 用 化 されて 以 来, 年 々ハード 面 での 改 良 が 重 ねられ, 急 速 に 小 型 化, 高 機 能 化 が 進 んできた.またこれと 並 行 してソフト 面 で の 進 歩 も 著 しく, 房 室 順 次 ペーシングや 心 拍 応 答 機 能 に よりほぼ 生 理 的 心 拍 動 を 再 現 し 得 るに 至 っている. 徐 脈 性 不 整 脈 に 対 する 恒 久 的 ペースメーカ 植 込 みは, 薬 物 治 療 を 含 む 他 の 治 療 の 追 随 を 許 さない 確 立 した 治 療 法 とし て, 生 命 予 後 の 改 善 はもちろんQOL の 改 善 をもその 目 的 として 広 く 臨 床 に 用 いられているが, 一 方 で 過 剰 植 込 1. 徐 脈 による 明 らかな 臨 床 症 状 を 有 する 第 2 度, 高 度 または 第 3 度 房 室 ブロック 2. 高 度 または 第 3 度 房 室 ブロックで 以 下 のいずれか を 伴 う 場 合 (1) 投 与 不 可 欠 な 薬 剤 によるもの (2) 改 善 の 予 測 が 不 可 能 な 術 後 房 室 ブロック (3) 房 室 接 合 部 のカテーテルアブレーション 後 (4) 進 行 性 の 神 経 筋 疾 患 に 伴 う 房 室 ブロック 11

(5) 覚 醒 時 に 著 明 な 徐 脈 や 長 時 間 の 心 室 停 止 を 示 すも の 1. 症 状 のない 持 続 性 の 第 3 度 房 室 ブロック 2. 症 状 のない 第 2 度 または 高 度 房 室 ブロックで, 以 下 のいずれかを 伴 う 場 合 (1)ブロック 部 位 がHis 束 内 またはHis 束 下 のもの (2) 徐 脈 による 進 行 性 の 心 拡 大 を 伴 うもの (3) 運 動 または 硫 酸 アトロピン 負 荷 で 伝 導 が 不 変 もし くは 悪 化 するもの 3. 徐 脈 によると 思 われる 症 状 があり, 他 に 原 因 のな い 第 1 度 房 室 ブロックで,ブロック 部 位 がHis 束 内 またはHis 束 下 のもの ClassⅡb: 1. 至 適 房 室 間 隔 設 定 により 血 行 動 態 の 改 善 が 期 待 で きる 心 不 全 を 伴 う 第 1 度 房 室 ブロック 疾 患 を 有 し, 電 気 生 理 検 査 によりHis 束 以 下 での 伝 導 遅 延 途 絶 が 証 明 された 場 合 ClassⅡb: 1. 慢 性 の2 枝 または3 枝 ブロックがあり, 電 気 生 理 検 査 でHis 束 以 下 での 伝 導 遅 延 途 絶 の 所 見 を 認 めるが, 器 質 的 心 疾 患 のないもの 慢 性 の2 枝 または3 枝 ブロックを 示 す 症 例 における 植 込 み 適 応 の 決 定 にあたっては, 高 度 の 房 室 ブロックを 来 たす 危 険 性 の 判 断 が 重 要 で 76),77), 電 気 生 理 検 査 による His-Purkinje 系 伝 導 機 能 の 評 価 が 重 要 である 78),79). 電 気 生 理 検 査 によるHis 束 以 下 での 伝 導 遅 延 途 絶 の 参 考 所 見 は,(1) 著 明 なHV 間 隔 の 延 長 ( >100msec),(2) 心 房 ペーシング(150/ 分 以 下 )によるHis 束 内 または His 束 下 ブロックの 誘 発,(3)Ⅰa 群 抗 不 整 脈 薬 静 注 に よるHis 束 内 またはHis 束 下 ブロックの 誘 発 である. 房 室 ブロックの 部 位, 程 度,および 症 状 を 考 慮 して 適 応 を 決 定 するが 24),25),66)-71), 最 も 重 要 なのはブロックに 伴 う 徐 脈 に 起 因 する 症 状 の 有 無 である.したがって 症 状 のない 第 1 度 房 室 ブロックは 適 応 とならない. 高 度 また は 第 3 度 房 室 ブロックでは, 投 与 不 可 欠 の 薬 剤 によるも のや 手 術 72),アブレーション 後 で 不 可 逆 的 なもの,ある いは 著 明 な 徐 脈 や 長 時 間 の 心 停 止 を 認 めるものは 73),ブ ロックの 部 位 にかかわらず 適 応 ありと 考 えられる.この 際, 徐 脈 や 心 停 止 の 程 度 として 具 体 的 な 数 値 を 挙 げるの は 困 難 であるが, 心 室 拍 数 <40/ 分, 心 室 停 止 >3 秒 を 参 考 値 として 示 す 74),75). 2 2 枝 および 3 枝 ブロック 1. 慢 性 の2 枝 ま た は3 枝 ブ ロ ッ ク が あ り, 第 2 度 MobitzⅡ 型, 高 度 もしくは 第 3 度 房 室 ブロックの 既 往 のある 場 合 2. 慢 性 の2 枝 または3 枝 ブロックがあり, 投 与 不 可 欠 な 薬 剤 の 使 用 が 房 室 ブロックを 誘 発 する 可 能 性 の 高 い 場 合 3. 慢 性 の2 枝 または3 枝 ブロックとWenckebach 型 第 2 度 房 室 ブロックを 認 め, 失 神 発 作 の 原 因 として 高 度 の 房 室 ブロック 発 現 が 疑 われる 場 合 1. 慢 性 の2 枝 または3 枝 ブロックがあり, 失 神 発 作 を 伴 うが 原 因 が 明 らかでないもの 2. 慢 性 の2 枝 または3 枝 ブロックがあり, 器 質 的 心 3 洞 機 能 不 全 症 候 群 1. 失 神, 痙 攣, 眼 前 暗 黒 感,めまい, 息 切 れ, 易 疲 労 感 等 の 症 状 あるいは 心 不 全 があり,それが 洞 結 節 機 能 低 下 に 基 づく 徐 脈, 洞 房 ブロック, 洞 停 止 あるいは 運 動 時 の 心 拍 応 答 不 全 によることが 確 認 された 場 合.それが 長 期 間 の 必 要 不 可 欠 な 薬 剤 投 与 による 場 合 を 含 む 1. 上 記 の 症 状 があり, 徐 脈 や 心 室 停 止 を 認 めるが, 両 者 の 関 連 が 明 確 でない 場 合 2. 徐 脈 頻 脈 症 候 群 で, 頻 脈 に 対 して 必 要 不 可 欠 な 薬 剤 により 徐 脈 を 来 たす 場 合 ClassⅡb: 1. 症 状 のない 洞 房 ブロックや 洞 停 止 症 状 のない 洞 性 徐 脈 にはペースメーカ 植 込 みの 適 応 は ない. 洞 結 節 機 能 低 下 に 基 づく 徐 脈, 洞 房 ブロック, 洞 停 止 あるいは 運 動 時 の 心 拍 応 答 不 全 により 現 れる 症 状 ( 失 神, 痙 攣, 眼 前 暗 黒 感,めまい, 息 切 れ, 易 疲 労 感, 心 不 全 等 )の 把 握 が 重 要 である 75),80)-88). 可 逆 的 な 原 因 によることが 明 らかな 例 は 除 くが, 必 要 不 可 欠 な 薬 剤 の 長 期 投 与 によるものに 対 して 適 応 を 考 慮 してよい. 必 要 に 応 じて 電 気 生 理 検 査 による 洞 結 節 機 能 評 価 を 行 って 適 応 を 決 定 する 18)-21),89)-93). 12

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン 4 徐 脈 性 心 房 細 動 1. 失 神, 痙 攣, 眼 前 暗 黒 感,めまい, 息 切 れ, 易 疲 労 感 等 の 症 状 あるいは 心 不 全 があり,それが 徐 脈 や 心 室 停 止 によるものであることが 確 認 された 場 合.それが 長 期 間 の 必 要 不 可 欠 な 薬 剤 投 与 による 場 合 を 含 む 1. 上 記 の 症 状 があり, 徐 脈 や 心 室 停 止 を 認 めるが, 両 者 の 関 連 が 明 確 でない 場 合 症 状 のない 徐 脈 性 心 房 細 動 にはペースメーカ 植 込 みの 適 応 はない. 失 神, 痙 攣, 眼 前 暗 黒 感,めまい, 息 切 れ, 易 疲 労 感 等 の 症 状 あるいは 心 不 全 の 発 症 が, 徐 脈 ないし 心 室 停 止 によるものであることを 確 認 することが 重 要 で ある 75),92),94)-96). 可 逆 的 な 原 因 によることが 明 らかな 例 は 除 くが, 必 要 不 可 欠 な 薬 剤 の 長 期 投 与 によるものも 適 応 を 考 慮 してよい. 徐 脈 と 症 状 との 関 連 が 明 らかでない 場 合 には, 徐 脈 や 心 室 停 止 の 程 度 ( 参 考 値 : 覚 醒 時 心 室 拍 数 <40/ 分,もしくは 心 室 停 止 >3 秒 )を 考 慮 するが, ホルター 心 電 図 を 繰 り 返 し 記 録 して, 両 者 の 関 連 性 を 追 究 する 必 要 がある.なお2008 年 のACC/AHA/HRS ガイ ドラインでは5 秒 以 上 の 心 室 停 止 を 認 める 場 合 はクラス Ⅰ 適 応 として 記 載 されている 97). 5 過 敏 性 頸 動 脈 洞 症 候 群 反 射 性 失 神 1. 過 敏 性 頸 動 脈 洞 症 候 群 で, 心 拍 抑 制 による 反 復 す る 失 神 発 作 を 認 める 場 合 2. 反 射 性 失 神 で, 心 電 図 で 心 拍 抑 制 が 記 録 され, 反 復 する 失 神 発 作 を 認 める 場 合 1. 反 射 性 失 神 で, 反 復 する 失 神 発 作 があり,head-up tilt 試 験 により 心 拍 抑 制 反 応 が 認 められる 場 合 Class Ⅲ: 1. head-up tilt 試 験 により 心 拍 抑 制 反 応 が 認 められな い 過 敏 性 頸 動 脈 症 候 群 反 射 性 失 神 反 射 性 失 神 ( 神 経 調 節 性 失 神 )に 対 するペースメーカ の 効 果 に 関 しては, 多 くの 研 究 がhead-up tilt 試 験 に 対 す る 反 応 で 適 応 を 決 め,その 効 果 を 検 討 してきた.その 結 果, 心 拍 抑 制 型 に 対 してペースメーカは 約 50%の 失 神 抑 制 効 果 があると 報 告 されているが 98)-102), 二 重 盲 検 試 験 ではその 効 果 は17%と 低 く, 有 効 性 は 定 まっていな い 103). 一 方, 近 年 になり 植 込 み 型 ループレコーダーに よる 自 然 発 生 の 心 停 止 を 適 応 基 準 としたペースメーカの 効 果 はより 顕 著 であることが 報 告 されている 104),105).また 過 敏 性 頸 動 脈 洞 症 候 群 で 明 らかな 心 拍 抑 制 反 応 を 認 める 場 合 は,ペースメーカにより 症 状 改 善 が 期 待 される 106)-108). ただし, 反 射 性 失 神 は 血 圧 低 下 が 失 神 の 主 因 であること が 多 く, 第 一 の 治 療 法 は 身 体 的 圧 上 昇 手 技 であることを 理 解 する 必 要 がある 109). 6 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 1. 有 意 な 流 出 路 圧 較 差 があり, 圧 較 差 に 基 づく 症 状 によりQOL 低 下 を 来 たす 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 で, 他 にペースメーカ 植 込 みの 適 応 となる 理 由 を 有 す る 場 合 ( 薬 剤 による 徐 脈 を 含 む). 1. 有 意 な 圧 較 差 があり, 圧 較 差 に 基 づく 症 状 により QOL 低 下 を 来 たす 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 で, 症 状 と 圧 較 差 が 関 連 しており, 薬 物 治 療 が 無 効 か 副 作 用 のため 使 用 不 能 か, 他 の 方 法 が 不 適 当 な 場 合 Class Ⅲ: 1. 圧 較 差 がなく, 徐 脈 による 植 込 み 適 応 もない 場 合. 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 に 対 するペースメーカ 療 法 は 1968 年 のGilgenkrantzら 110),1975 年 のHassensteinら 111) の 報 告 以 来, 小 規 模 な 臨 床 経 験 が 報 告 さ れ 112)-114), 1990 年 代 に 入 って 比 較 的 大 規 模 な 試 験 結 果 が 報 告 され た 31). 本 治 療 法 は 左 室 流 出 路 狭 窄 による 症 状 改 善 に 有 効 であると 報 告 され,その 効 果 は 流 出 路 圧 較 差 改 善 と 相 関 すると 考 えられてきた.その 後,Maronら 115) はペース メーカ 療 法 にはプラセボ 効 果 が 大 きいとし,その 治 療 効 果 は 高 齢 者 以 外 では 十 分 ではないと 報 告 した. 一 方, PIC(Pacing in Cardiomyopathy) 試 験 では 116), 一 時 的 ペーシングを 行 い, 圧 較 差 が 悪 化 しない 症 例 に 対 しペー スメーカを 植 込 み, 慢 性 ペーシングの 有 用 性 が 支 持 され ている. 一 方 で 以 前 より 外 科 治 療 が 行 われ, 経 皮 経 冠 的 心 室 中 隔 心 筋 壊 死 作 成 法 (PTSMA)も 保 険 収 載 され, これらと 比 較 検 討 した 報 告 はない.しかしながら,これ ら 侵 襲 的 治 療 法 に 比 べてペースメーカ 療 法 は 安 全 性 が 高 く, 症 例 の 選 択 と 植 込 みを 注 意 深 く 行 うことにより,よ 13

り 有 効 性 が 得 られると 思 われ,PTSMA や 外 科 治 療 を 考 慮 する 際 にはペースメーカ 植 込 みを 先 に 考 慮 すべきであ る.ただし 現 時 点 では 閉 塞 性 肥 大 型 心 筋 症 に 対 する 保 険 適 用 は 認 められていない.なお, 有 意 とされる 圧 較 差 は, 安 静 時 が30mmHg 以 上, 誘 発 される 圧 較 差 が50mmHg 以 上 である 97) ( 参 考 値 ). 7 小 児 に 対 するペーシング 小 児 のペースメーカの 適 応 疾 患 は,(1) 症 候 性 洞 徐 脈, (2) 徐 脈 頻 脈 症 候 群,(3) 高 度 もしくは 完 全 房 室 ブロ ックである 117).これらの 不 整 脈 に 対 するペースメーカ の 適 応 はほぼ 成 人 と 同 様 であるが, 小 児 特 有 の 問 題 があ る.これらを 列 挙 すると,(1) 先 天 性 心 疾 患 術 後 の 患 者 では, 洞 徐 脈 や 房 室 同 期 不 全 により 症 状 が 出 現 すること があり 118),119), 正 常 な 小 児 の 心 拍 数 とは 異 なる 心 拍 数 の 設 定 が 必 要 である,(2) 徐 脈 の 基 準 は 年 齢 により 異 なる, (3) 乳 幼 児 や, 静 脈 奇 形, 先 天 性 心 疾 患 がある 場 合 に 経 静 脈 リード 挿 入 が 困 難 であり, 心 筋 リードを 考 慮 する 必 要 がある,(4) 小 児 や 先 天 性 心 疾 患 に 対 する 無 作 為 臨 床 試 験 が 行 われていないため,ほとんどのエビデンスレベ ルがCである, 等 がある. 一 般 的 に 症 候 性 の 徐 脈 ( 心 拍 数 40 以 下 もしくは3 秒 以 上 の 心 停 止 )はペースメーカの 適 応 である 81),120),121). 持 続 性 もしくは 反 復 性 の 心 房 内 リエントリー 頻 拍 に 洞 機 能 不 全 を 合 併 する 場 合 には, 死 亡 率 が 高 いことが 報 告 さ れており 122),123), 長 期 間 の 心 房 ペーシングや, 心 房 の 抗 頻 拍 ペーシングが 心 房 内 リエントリー 頻 拍 の 予 防 や 停 止 に 有 効 であることも 報 告 されている 124),125).このような 症 例 には,カテーテルアブレーション 126) や, 手 術 127) も 考 慮 する. 無 症 状 の 先 天 性 完 全 房 室 ブロックに 対 するペースメー カ 適 応 の 判 断 は 困 難 であるが, 平 均 心 拍 数, 心 停 止 時 間, 合 併 心 奇 形 の 有 無,QT 時 間, 運 動 耐 容 能 等 を 参 考 に 適 応 を 考 慮 する 128),129). 無 症 状 の 先 天 性 完 全 房 室 ブロック 患 者 にペースメーカを 植 込 むことにより, 長 期 生 存 率 の 改 善, 失 神 の 予 防 に 有 効 であったとの 報 告 130),131) がある 一 方,ペースメーカ 植 込 み 後 に 自 己 免 疫 性 心 筋 障 害 やペ ースメーカによるdyssynchrony により 心 不 全 に 陥 った との 報 告 もあり 132)-134), 心 機 能 の 経 過 観 察 は 重 要 である. 先 天 性 心 疾 患 術 後 の 完 全 房 室 ブロックは 予 後 不 良 であ ることが 知 られており 135), 術 後 7 日 を 経 過 しても 改 善 しない 高 度,もしくは 完 全 房 室 ブロックはクラスⅠの 適 応 である 136).しかし, 周 術 期 の 一 過 性 房 室 ブロックが 数 年 もしくは 数 十 年 後 に 完 全 房 室 ブロックに 進 行 した 場 合 には 突 然 死 のリスクがあることも 報 告 されている 137),138). また,2 枝 ブロックに 進 行 性 のPR 延 長 を 来 たした 場 合 には 高 度 もしくは 完 全 房 室 ブロックへ 進 行 する 可 能 性 が あり 139), 間 欠 性 房 室 ブロック, 原 因 不 明 の 失 神 の 既 往 がある 場 合 にはクラスⅡaの 適 応 と 考 えられる. 心 内 膜 リードを 用 いた 場 合 に, 奇 異 塞 栓 を 起 こす 可 能 性 や 140), 将 来 の 静 脈 路 を 確 保 するための 植 込 み 方 法 も 考 慮 することが 必 要 である. 小 児 および 先 天 性 心 疾 患 患 者 のペースメーカ 植 込 み の 適 応 1. 症 候 性 徐 脈, 心 機 能 不 全, 低 心 拍 出 を 伴 う 高 度 も しくは 完 全 房 室 ブロック 2. 年 齢 に 不 相 応 な 徐 脈 に 伴 う 症 候 性 洞 機 能 不 全 ( 徐 脈 の 定 義 は 年 齢 と 期 待 心 拍 数 により 異 なる) 81),120),121),141) 3. 術 後 少 なくとも7 日 経 っても 回 復 しない 高 度 もし くは 完 全 房 室 ブロック 135),136) 4. 幅 広 いQRS の 補 充 収 縮, 心 室 期 外 収 縮, 心 機 能 不 全 を 伴 う 先 天 性 完 全 房 室 ブロック 131)-133) 5. 乳 児 の 先 天 性 完 全 房 室 ブロックで, 心 室 レートが 55 拍 / 分 未 満,もしくは 先 天 性 心 疾 患 があり 心 室 レートが70 拍 / 分 未 満 のもの 128),129) 1. 先 天 性 心 疾 患 に 洞 機 能 不 全 を 合 併 し, 心 房 内 リエ ントリー 頻 拍 が 反 復 する 場 合 ( 洞 機 能 不 全 は 抗 不 整 脈 薬 によるものも 含 む) 124),141),142) 2. 先 天 性 完 全 房 室 ブロックで,1 歳 を 過 ぎても 平 均 心 拍 数 が50 拍 / 分 以 下 のもの, 基 本 周 期 の2から3 倍 の 心 停 止 を 伴 うもの,もしくは 症 候 性 徐 脈 を 伴 うもの 130),143) 3. 複 雑 心 奇 形 に 伴 う 洞 徐 脈 で, 安 静 時 心 拍 数 が40 拍 / 分 以 下,もしくは3 秒 以 上 の 心 停 止 を 伴 うもの 4. 先 天 性 心 疾 患 に 伴 う 洞 徐 脈 もしくは 房 室 同 期 不 全 により 血 行 動 態 が 悪 化 するもの 119) 5. 先 天 性 心 疾 患 術 後 に 一 過 性 房 室 ブロックがあり, 脚 ブロックを 認 め, 原 因 不 明 の 失 神 を 伴 うもの 133),137)-139) ClassⅡb: 1. 先 天 性 心 疾 患 術 後 の 一 過 性 完 全 房 室 ブロックで2 枝 ブロックを 伴 うもの 144) 2. 無 症 状 で, 年 齢 相 応 の 心 拍 数 であり,QRS の 延 長 が なく, 心 機 能 の 正 常 な 先 天 性 完 全 房 室 ブロック 130),131) Class Ⅲ: 1. 無 症 状 の 先 天 性 心 疾 患 術 後 の 一 過 性 房 室 ブロック で, 正 常 房 室 伝 導 に 戻 ったもの 136),145) 2. 第 1 度 房 室 ブロックを 伴 う,もしくは 伴 わない 先 14

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン 天 性 心 疾 患 術 後 の2 枝 ブロックで, 完 全 房 室 ブロ ックの 既 往 がないもの 3. 無 症 状 のWenckebach 型 第 2 度 房 室 ブロック 4. 無 症 状 の 洞 徐 脈 で,RR 間 隔 が3 秒 未 満,かつ 最 低 Ⅳ 心 拍 数 が40 拍 / 分 以 上 のもの カテーテルアブレーション 1 Wolff-Parkinson-White (WPW) 症 候 群 房 室 結 節 リ エントリー 性 頻 拍 WPW 症 候 群 1. 生 命 の 危 険 がある 心 房 細 動 発 作 または 失 神 等 の 重 篤 な 症 状 や, 軽 症 状 でもQOL の 著 しい 低 下 を 伴 う 頻 拍 発 作 の 既 往 がある 場 合 2. 早 期 興 奮 の 有 無 にかかわらず, 頻 拍 発 作 があり 患 者 がカテーテルアブレーションを 希 望 する 場 合 3. 早 期 興 奮 があり, 頻 拍 発 作 はないがパイロットや 公 共 交 通 機 関 の 運 転 手 等, 発 作 により 多 くの 人 命 に 関 わる 可 能 性 がある 場 合 1. 早 期 興 奮 があり, 頻 拍 発 作 はないが 説 明 を 受 けた 上 で 患 者 がカテーテルアブレーションを 希 望 する 場 合 房 室 結 節 リエントリー 性 頻 拍 1. 失 神 等 の 重 篤 な 症 状 やQOL の 著 しい 低 下 を 伴 う 頻 拍 発 作 の 既 往 がある 場 合 2. 頻 拍 発 作 があり, 薬 物 治 療 の 有 無 にかかわらず 患 者 がカテーテルアブレーションを 希 望 する 場 合 1. 頻 拍 発 作 の 心 電 図 が 確 認 されている 患 者 で, 電 気 生 理 検 査 で 頻 拍 が 誘 発 されず 二 重 房 室 結 節 伝 導 路 のみが 認 められた 場 合 2. 他 の 頻 拍 に 対 する 電 気 生 理 検 査 またはカテーテル アブレーション 治 療 中 に 偶 然 誘 発 された 房 室 結 節 リエントリー 性 頻 拍 ClassⅡb: 1. 頻 拍 発 作 の 心 電 図 が 確 認 されていない 患 者 で, 電 気 生 理 検 査 で 頻 拍 が 誘 発 されず 二 重 房 室 結 節 伝 導 路 のみが 認 められた 場 合 Class Ⅲ: 1. 頻 拍 発 作 の 既 往 のない 患 者 において, 電 気 生 理 検 査 中 に 二 重 房 室 結 節 伝 導 路 が 認 められるが, 頻 拍 は 誘 発 されない 場 合 WPW 症 候 群 ( 房 室 回 帰 頻 拍 を 含 む)や 房 室 結 節 リエ ントリー 性 頻 拍 に 対 する 高 周 波 カテーテルアブレーショ ンの 治 療 効 果 は 著 しく 146)-158), 我 が 国 においても 急 速 に 普 及 した 159)-162). 対 症 療 法 である 薬 物 療 法 とは 異 なり, カテーテルアブレーションは 根 治 的 治 療 法 であり, 患 者 のQOL 改 善 度 においても 医 療 経 済 的 視 点 においてもよ り 優 れた 治 療 法 であると 言 える. 現 在 では 症 状 のある 患 者 に 対 する 第 一 選 択 治 療 として 用 いられることが 多 い. WPW 症 候 群 では, 初 回 発 作 で 多 くの 人 命 に 影 響 を 及 ぼす 可 能 性 のあるパイロット 等 の 特 殊 な 職 業 人 に 対 して は, 無 症 状 であってもハイリスク 群 ( 参 考 値 : 心 房 細 動 時 の 最 短 RR 時 間 220msec, 副 伝 導 路 有 効 不 応 期 250msec)と 考 えられる 場 合 には,その 社 会 的 適 応 につ いて 十 分 考 慮 する 必 要 がある. 顕 性 WPW 症 候 群 におい ては, 成 功 率 が95% 程 度 と 高 く, 再 発 率 も5% 程 度,ま た 合 併 症 は1~2%と 低 いことを 考 慮 すると, 症 状 のな い 症 例 に 対 して 十 分 に 合 併 症 の 説 明 をしてもなお 患 者 が 希 望 する 場 合 は 治 療 の 有 用 性 は 高 いと 考 えられる. 房 室 結 節 リエントリー 性 頻 拍 に 関 しては, 完 全 房 室 ブ ロックとペースメーカ 植 込 みの 合 併 症 が1~2%あるこ とを 含 めて 十 分 な 説 明 を 受 けた 上 で, 患 者 がカテーテル アブレーションを 希 望 することが 必 要 である. 2 心 房 細 動 1. 高 度 の 左 房 拡 大 や 高 度 の 左 室 機 能 低 下 を 認 めず, かつ 重 症 肺 疾 患 のない 薬 物 治 療 抵 抗 性 の 有 症 候 性 の 発 作 性 心 房 細 動 で, 年 間 50 例 以 上 の 心 房 細 動 ア ブレーションを 実 施 している 施 設 で 行 われる 場 合 1. 薬 物 治 療 抵 抗 性 の 有 症 候 性 の 発 作 性 および 持 続 性 心 房 細 動 2. パイロットや 公 共 交 通 機 関 の 運 転 手 等 職 業 上 制 限 となる 場 合 3. 薬 物 治 療 が 有 効 であるが 心 房 細 動 アブレーション 治 療 を 希 望 する 場 合 ClassⅡb: 15

1. 高 度 の 左 房 拡 大 や 高 度 の 左 室 機 能 低 下 を 認 める 薬 物 治 療 抵 抗 性 の 有 症 候 の 発 作 性 および 持 続 性 心 房 細 動 2. 無 症 状 あるいはQOL の 著 しい 低 下 を 伴 わない 発 作 Class Ⅲ: 性 および 持 続 性 心 房 細 動 1. 左 房 内 血 栓 が 疑 われる 場 合 2. 抗 凝 固 療 法 が 禁 忌 の 場 合 心 房 細 動 では 血 栓 塞 栓 症 のリスクが 増 大 し, 心 房 収 縮 の 欠 如 と 不 適 切 な 心 室 拍 数 による 心 機 能 低 下 や 胸 部 症 状 が 出 現 し 得 る.その 治 療 戦 略 は, 年 齢 や 心 房 細 動 持 続 期 間, 器 質 的 心 疾 患 の 有 無 等 により 異 なる. 心 房 細 動 は 発 症 7 日 以 内 に 洞 調 律 に 復 する 発 作 性,7 日 以 上 持 続 する 持 続 性, 除 細 動 不 能 の 永 続 性 に 分 類 される. 心 房 細 動 の 治 療 にはリズムコントロールとレートコン トロールがある. 主 として 持 続 性 心 房 細 動 患 者 を 対 象 と したAFFIRM 試 験 163),RACE 試 験 164),STAF 試 験 165) で は 両 治 療 戦 略 間 で 生 命 予 後 に 差 はなかった. 主 として 発 166) 作 性 心 房 細 動 を 対 象 とした 我 が 国 のJ-RHYTHM 試 験 では 死 亡 率, 脳 梗 塞, 入 院 率 のいずれにおいても 有 意 差 は 認 められなかった.AFFIRM 試 験 のサブ 解 析 では, 洞 調 律 が 維 持 された 患 者 の 予 後 は 良 好 であったことが 示 さ れ, 全 体 としては 抗 不 整 脈 薬 の 副 作 用 のために 有 用 性 が 相 殺 された 可 能 性 がある 167). 一 方, 抗 不 整 脈 薬 治 療 に 比 して 肺 静 脈 隔 離 アブレーションによる 洞 調 律 維 持 効 果 が 優 れているとの 報 告 が 多 い 168)-175).6 か 月 以 上 の 持 続 性 心 房 細 動 において, 電 気 的 除 細 動 後 の 抗 不 整 脈 薬 治 療 群 (58%)よりカテーテルアブレーション 実 施 群 (74%) において12か 月 後 の 洞 調 律 維 持 率 が 有 意 に 高 かった 171). 発 作 性 心 房 細 動 の 多 くの 患 者 においてトリガーが 肺 静 脈 内 に 存 在 し, 左 右 の 肺 静 脈 を 左 房 から 電 気 的 に 隔 離 する アブレーション 法 により 心 房 細 動 の 再 発 が 予 防 可 能 であ る 176). 現 在, 同 側 上 下 の 肺 静 脈 をまとめて 隔 離 する 広 範 肺 静 脈 隔 離 術 177) 178),4 本 の 肺 静 脈 を 個 別 に 隔 離 する 方 法 が 実 施 されるが,いずれも 再 発 例 に 対 しては2 回 目 のア ブレーションが 必 要 となり, 特 有 の 合 併 症 発 生 のリスク が 存 在 する. 成 功 率 は45~94%で, 最 近 は80% 以 上 と の 報 告 が 多 い 173),179)-192). 薬 剤 なしでの 洞 調 律 維 持 率 は 59~93%とされる. 合 併 症 として 左 房 食 道 瘻, 左 房 起 源 心 房 頻 拍, 肺 静 脈 狭 窄, 動 脈 塞 栓 症, 心 タンポナーデ, 迷 走 神 経 障 害 ( 消 化 管 運 動 障 害 ), 横 隔 膜 神 経 障 害 等 が 報 告 されている 193),194).1995~2006 年 の45,115 件 の 統 計 では,1,000 例 の 心 房 細 動 アブレーションに 対 して 0.98 例 (0.098%)の 死 亡 率 であった 195). なお 本 改 訂 版 では, 薬 物 治 療 抵 抗 性 の 有 症 候 性 発 作 性 心 房 細 動 に 対 するアブレーションを 年 間 50 例 以 上 の 心 房 細 動 アブレーションを 実 施 している 施 設 で 行 われる 場 合 という 条 件 付 きでクラスⅠ 適 応 とした. 心 房 細 動 治 療 ( 薬 物 )ガイドライン(2008 年 改 訂 版 ) では, 発 作 性 心 房 細 動 のリズムコントロールの 第 一 選 択 は 抗 不 整 脈 薬 で, 第 二 選 択 として 肺 静 脈 隔 離 術 (アブレーショ ン)が 推 奨 されている. 薬 物 治 療 後 の 再 発 性 発 作 性 心 房 細 動 に 対 するカテーテルアブレーションの 有 用 性 が 示 さ れており 169)-175), 本 改 訂 版 では 薬 物 治 療 が 有 効 でない 場 合 に 実 施 されるアブレーションをクラスⅠとして 位 置 づ けた.クラスⅠ 適 応 に 実 施 症 例 数 の 条 件 ( 年 間 50 例 以 上 ) をつけた 理 由 は, 心 房 細 動 アブレーションの 安 全 かつ 確 実 な 実 施 には 高 度 の 技 術 と 経 験, 設 備 等 が 要 求 されるた めで, 有 用 性 に 関 するエビデンスも 症 例 数 の 多 い 施 設 か ら 報 告 されており, 恒 常 的 に 実 施 していることが 有 効 性, 安 全 性 と 関 連 すると 判 断 されたためである. 我 が 国 でも 心 房 細 動 アブレーション 施 行 数 が 年 々 増 加 しているが, 登 録 制 度 による 治 療 成 績, 合 併 症 等 に 関 する 前 向 き 調 査 や 各 施 設 での 実 施 状 況, 成 績 の 開 示 も 必 要 となるであろう. 持 続 性 心 房 細 動 に 対 するアブレーションの 有 効 性 は, 肺 静 脈 アブレーション 単 独 では20~61%,Complex fractionated atrial electrogram(cfae)アブレーション では9~85%と 様 々である 171),184),196)-198). 肺 静 脈 アブ レーション 単 独 では 不 十 分 で,CFAE アブレーションや 線 状 焼 灼 の 追 加 によって 抗 不 整 脈 薬 なしで47~95%,お よそ70% 以 上 の 洞 調 律 維 持 が 期 待 できる 186),190),199-204). この 成 績 は2~3 回 セッションを 実 施 した 結 果 である. 持 続 性 と 発 作 性 心 房 細 動 に 対 して 肺 静 脈 隔 離 術 単 独 より もCFAE アブレーションを 組 み 合 わせた 方 が1 年 後 の 洞 調 律 維 持 率 が 高 いと 報 告 されている 205). 長 期 成 績 に 関 しては, 発 作 性 心 房 細 動 で 正 常 左 室 機 能 の 患 者 において, 一 部 に 複 数 回 のセッションを 要 した 広 範 肺 静 脈 隔 離 術 による 約 5 年 後 の 洞 調 律 維 持 率 は79.5%, 臨 床 的 改 善 率 は92.5%との 報 告 がある 206). 発 作 性 (51 %),および 非 発 作 性 (49%) 心 房 細 動 に 対 して 広 範 肺 静 脈 隔 離 術 ( 一 部 に 線 状 焼 灼 追 加 ) 実 施 2 年 後 の 洞 調 律 維 持 は87%( 抗 不 整 脈 薬 なし72%, 使 用 15%), 再 発 は 13%,QOL スコアはアブレーション3か 月 後 から 有 意 に 改 善 し,2 年 間 持 続 した 207). アブレーションにより 長 期 間 洞 調 律 が 維 持 されればワ ルファリン 投 与 の 中 止 が 考 慮 されるかもしれない. 心 房 細 動 アブレーション 成 功 群 を 対 象 とした 後 ろ 向 き 解 析 で は,アブレーション3~6か 月 後 に 抗 凝 固 薬 を 中 止 にし た 群 と 継 続 した 群 を 比 較 すると, 約 2 年 間 の 脳 塞 栓 症 と 16

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン 大 出 血 の 頻 度 は 中 止 群 で 有 意 に 低 かった 208). 前 向 きの 大 規 模 無 作 為 試 験 による 確 認 が 必 要 であるが, 現 時 点 では 血 栓 塞 栓 症 のハイリスク 例 では 継 続 すべきであろう 209). 3 心 房 粗 動 心 房 頻 拍 心 房 粗 動 ( 通 常 型 非 通 常 型 ) 1. 頻 拍 や 失 神, 心 不 全 等 の 症 状,QOL の 低 下 を 伴 う 心 房 粗 動 2. 心 房 細 動 に 対 する 薬 物 治 療 中 に 出 現 した 通 常 型 心 房 粗 動 3. 心 房 細 動 アブレーション 中 に 出 現 するか 以 前 に 記 録 されている 通 常 型 心 房 粗 動 1. 他 の 頻 拍 に 対 するカテーテルアブレーション 治 療 中 に 偶 然 誘 発 された 通 常 型 心 房 粗 動 2. 薬 物 治 療 抵 抗 性 の 非 通 常 型 心 房 粗 動 3. パイロットや 公 共 交 通 機 関 の 運 転 手 等 職 業 上 制 限 となる 場 合 ClassⅡb: 1. 他 の 頻 拍 に 対 するカテーテルアブレーション 治 療 中 に 偶 然 誘 発 された 非 通 常 型 心 房 粗 動 心 房 粗 動 は 約 300/ 分 (240~440/ 分 )の 規 則 正 しい 粗 動 波 を 特 徴 とする 上 室 性 頻 拍 である. 心 房 レートが240 ~340/ 分 と 比 較 的 遅 く, 心 房 ペーシングにより 停 止, 捕 捉 (エントレイン)されるⅠ 型 と,より 速 い 心 房 興 奮 頻 度 (350~450/ 分 )で 心 房 ペーシングの 影 響 を 受 けに くいⅡ 型 に 分 類 される.Ⅰ 型 の 多 くは 三 尖 弁 輪 部 を 旋 回 する 右 房 内 マクロリエントリー 性 頻 拍 であり, 下 壁 誘 導 において 典 型 的 な 鋸 歯 状 波 形 を 示 し, 通 常 型 と 呼 称 される. 通 常 型 心 房 粗 動 は 下 壁 誘 導 における 粗 動 波 形 が 陰 性 の 反 時 計 方 向 旋 回 型 と, 粗 動 波 が 陽 性 の 時 計 方 向 旋 回 型 に 分 けられる. 非 通 常 型 心 房 粗 動 は 三 尖 弁 輪 部 以 外 を 旋 回 するマクロリエントリー 性 頻 拍 である.Ⅱ 型 は 心 房 細 動 に 近 い 頻 拍 で, 機 序 は 個 々の 例 で 異 なる. 心 房 粗 動 の 自 覚 症 状 は, 房 室 伝 導 比 により 左 右 され, 無 症 状 で 経 過 するものもあるが,1:1 房 室 伝 導 から 失 神 に 陥 ることもある. 通 常 型 心 房 粗 動 は 三 尖 弁 輪 部 下 大 静 脈 間 の 峡 部 を 線 状 焼 灼 することにより 根 治 可 能 であ る 210),211). 212) 非 通 常 型 心 房 粗 動 は, 下 部 ループリエントリー 性 頻 拍 等 以 外 は 右 房 峡 部 非 依 存 性 であるため 症 例 ごとにアブレ ーション 標 的 部 位 は 異 なる. 開 心 術 既 往 例 では 右 房 壁 の 切 開 創 を 旋 回 するリエントリー 性 頻 拍,あるいは 通 常 型 心 房 粗 動 の 可 能 性 が 高 い 213). 心 房 内 リエントリーの 他, 異 常 自 動 能 に 起 因 することもあり, 粗 動 中 の 右 房, 左 房 の 詳 細 な 興 奮 伝 播 様 式 を 検 討 するため, 三 次 元 マッピン グシステムを 用 いたリエントリー 回 路 同 定, 頻 拍 起 源 同 定 が 有 用 である. 心 房 頻 拍 1. 症 状 を 有 する 頻 拍 起 源 の 限 局 した 再 発 性 の 心 房 頻 拍 で 薬 物 治 療 が 無 効 な 場 合 2. インセサント 型 心 房 頻 拍 1. 症 状 を 有 する 頻 拍 起 源 の 限 局 した 心 房 頻 拍 で 薬 物 治 療 が 有 効 な 場 合 2. 症 状 のない 心 房 頻 拍 で 心 室 機 能 低 下 を 伴 う 場 合 心 房 頻 拍 には, 異 常 自 動 能 ( 異 所 性 自 動 能, 撃 発 活 動 ) や マ イ ク ロ リ エ ン ト リ ー 等 限 局 し た 発 生 源 (focal origin)を 有 するものと,マクロリエントリーによるも のがあるが, 後 者 は 峡 部 非 依 存 性 の 心 房 粗 動 との 区 別 が 曖 昧 である 214)-217).Focal originには 洞 結 節 領 域 のリエ ントリー 性 頻 拍 ( 洞 結 節 リエントリー 性 頻 拍 ), 房 室 結 節 領 域 のリエントリー 性 心 房 頻 拍,その 他 の 領 域 のリエ ントリー 性 頻 拍 がある. 一 方, 異 常 自 動 能 性 は 肺 静 脈, 上 大 静 脈, 冠 状 静 脈, 心 耳, 分 界 稜 等 が 主 たる 発 生 源 で ある 218).また 不 適 切 な 洞 性 頻 脈 は 若 い 女 性 に 好 発 する 頻 脈 性 不 整 脈 である 219),220). 洞 結 節 や 房 室 接 合 部 領 域 の 頻 拍 に 対 するアブレーションは, 洞 機 能 不 全, 房 室 伝 導 障 害 の 合 併 症 を 招 く 可 能 性 がある. 心 房 頻 拍 が 長 期 間 持 続 すると 頻 脈 誘 発 心 筋 症 により 左 室 機 能 が 低 下 するた め, 無 症 状 であってもアブレーションがすすめられる. 4 上 室 性 頻 脈 性 不 整 脈 に 対 する 房 室 ブロック 作 成 術 1. 重 篤 な 症 状 あるいは 頻 拍 による 高 度 の 心 機 能 低 下 を 伴 う, 薬 物 治 療 が 無 効 または 副 作 用 のため 使 用 不 能 な 上 室 性 頻 脈 性 不 整 脈 で, 上 室 性 不 整 脈 に 対 するカテーテルアブレーションが 不 成 功 または 施 行 できない 場 合 1. QOL の 著 しい 低 下 を 伴 う, 薬 物 治 療 が 無 効 または 17

使 用 困 難 な 上 室 性 頻 脈 性 不 整 脈 で, 上 室 性 不 整 脈 に 対 するカテーテルアブレーションが 不 成 功 また は 施 行 できない 場 合 Class Ⅲ: 1. 房 室 伝 導 を 温 存 した 方 が 有 益 だと 考 えられる 場 合 上 室 性 頻 脈 性 不 整 脈 に 対 するカテーテルアブレーショ ンが 成 功 した 場 合 には 房 室 ブロック 作 成 術 は 不 必 要 であ るが,カテーテルアブレーションが 不 成 功 であった 場 合 や 何 らかの 理 由 により 実 施 が 困 難 な 場 合 に 考 慮 すべき 治 療 法 である. 特 に 頻 脈 による 心 機 能 低 下 や 心 不 全 の 悪 化 が 考 えられる 場 合 には, 房 室 ブロック 作 成 術 による 心 室 拍 数 コントロールが 必 須 となる 221).しかし,この 治 療 法 では 恒 久 的 ペースメーカを 植 込 む 必 要 のあること,ま た 心 室 ペーシングによる 非 同 期 収 縮 が 心 室 リモデリング やさらなる 心 機 能 低 下 を 引 き 起 こす 可 能 性 のあることを 十 分 に 理 解 しておくべきである. 最 近, 慢 性 心 不 全 に 合 併 した 永 続 性 心 房 細 動 に 対 する 房 室 ブロック 作 成 術 と 心 臓 再 同 期 療 法 の 有 効 性 が 報 告 されており 222), 重 度 の 心 不 全 合 併 例 では 考 慮 すべきであろう. 房 室 結 節 の 遅 伝 導 路 を 焼 灼 して 房 室 伝 導 能 を 低 下 させる 治 療 法 ( 房 室 伝 導 修 飾 術 )も 試 みられているが, 心 室 拍 数 コントロールが 不 十 分 なこと, 心 拍 の 規 則 性 が 得 られないことより, 房 室 ブロック 作 成 術 +ペースメーカ 植 込 み 術 が 選 択 され る.なお 先 天 性 心 疾 患 の 術 後 の 症 例 に, 心 室 ペーシング により 著 しい 血 圧 低 下 を 認 める 場 合 があるため,あらか じめ 検 討 することが 望 ましい. 5 心 室 期 外 収 縮 1. 心 室 期 外 収 縮 が 多 形 性 心 室 頻 拍 あるいは 心 室 細 動 の 契 機 になり, 薬 物 治 療 が 無 効 または 副 作 用 のた め 使 用 不 能 な 場 合 2. QOL の 著 しい 低 下 または 心 不 全 を 有 する 頻 発 性 心 室 期 外 収 縮 で, 薬 物 治 療 が 無 効 または 副 作 用 のた め 使 用 不 能 な 場 合 3. 頻 発 性 心 室 期 外 収 縮 が 原 因 で 心 臓 再 同 期 療 法 の 両 室 ペーシング 率 が 低 下 して 十 分 な 効 果 が 得 られず, 薬 物 治 療 が 無 効 または 副 作 用 のため 使 用 不 能 な 場 合 1. 心 機 能 低 下 を 伴 うか,または 器 質 的 心 疾 患 に 伴 う 流 出 路 起 源 の 頻 発 性 心 室 期 外 収 縮 2. 流 出 路 起 源 の 頻 発 性 心 室 期 外 収 縮 で, 薬 物 治 療 が 有 効 または 未 使 用 でも 患 者 がカテーテルアブレー ション 治 療 を 希 望 する 場 合 心 室 期 外 収 縮 が 契 機 になり 多 形 性 心 室 頻 拍 や 心 室 細 動 が 誘 発 され 223),224),その 心 室 期 外 収 縮 をアブレーション 治 療 することにより 多 形 性 心 室 頻 拍 や 心 室 細 動 の 発 生 が 予 防 できる 225).また 頻 発 性 心 室 期 外 収 縮 は 心 機 能 低 下 を 惹 起 する 可 能 性 があり 226), 心 室 期 外 収 縮 アブレーション により 心 機 能 低 下 やそれに 伴 う 症 状 を 改 善 できる 227),228). 心 臓 再 同 期 治 療 は 心 不 全 治 療 において 重 要 な 役 割 を 担 っているが, 頻 発 性 心 室 期 外 収 縮 により 両 室 ペーシング 率 が 低 下 することによりその 効 果 が 制 限 されるため, 期 外 収 縮 の 治 療 はペーシング 率 を 上 げることにより 心 機 能 を 改 善 する 229).これらのような 状 況 における 心 室 期 外 収 縮 アブレーションは 心 臓 突 然 死 や 心 不 全 の 治 療 に 直 結 し,アブレーション 治 療 が 果 たす 役 割 は 大 きい. 流 出 路 起 源 の 頻 発 性 心 室 期 外 収 縮 例 や 心 機 能 低 下 例 に おいて 心 室 期 外 収 縮 を 放 置 した 場 合, 将 来 的 な 心 機 能 低 下 を 招 く 可 能 性 が 報 告 されており 230),アブレーション 治 療 の 適 応 が 考 慮 される.なお, 頻 発 性 心 室 期 外 収 縮 が 心 不 全 を 惹 起 するか, 心 不 全 の 症 状 として 心 室 期 外 収 縮 が 発 生 するかは 未 解 決 ではあるが 231), 頻 度 が 高 い 程 心 機 能 が 低 下 する 傾 向 がある 230),232),233). 6 心 室 頻 拍 1. 心 機 能 低 下 または 心 不 全 に 伴 う 単 形 性 心 室 頻 拍 で, 薬 物 治 療 が 無 効 または 副 作 用 のため 使 用 不 能 な 場 合 2. 植 込 み 型 除 細 動 器 が 頻 回 に 作 動 し, 薬 物 治 療 が 無 効 または 副 作 用 のため 使 用 不 能 な 場 合 3. 単 形 性 心 室 頻 拍 が 原 因 で 心 臓 再 同 期 療 法 の 両 室 ペ ーシング 率 が 低 下 して 十 分 な 効 果 が 得 られず, 薬 物 治 療 が 無 効 または 副 作 用 のため 使 用 不 能 な 場 合 4. 症 状 がありQOL 低 下 を 有 する 特 発 性 心 室 頻 拍 で, 薬 物 治 療 が 有 効 または 未 使 用 でも 患 者 がカテーテ ルアブレーションを 希 望 する 場 合 1. 無 症 状 の 流 出 路 起 源 の 特 発 性 心 室 頻 拍 で, 心 拍 数 が 著 しく 速 い 場 合 2. 流 出 路 起 源 の 特 発 性 心 室 頻 拍 で, 薬 物 治 療 が 有 効 または 未 使 用 でも 患 者 がカテーテルアブレーショ ンを 希 望 する 場 合 18

不 整 脈 の 非 薬 物 治 療 ガイドライン 特 発 性 心 室 頻 拍 に 対 するカテーテルアブレーションは 安 定 した 効 果 が 得 られ 234)-241), 最 近 では 心 筋 深 層 部 起 源 であっても 通 電 部 位 を 工 夫 することにより 高 い 成 功 率 が 得 られるようになった 242)-245).その 一 方 で 心 筋 梗 塞 や 心 筋 症 等 の 器 質 的 心 疾 患 を 伴 う 心 室 頻 拍 はアブレーシ ョンが 困 難 であり,たとえ 治 療 に 成 功 したとしても 基 礎 心 疾 患 の 進 行 による 不 整 脈 基 盤 の 変 化 や 病 状 の 悪 化 によ り 不 整 脈 の 再 発 が 多 い 246)-252). 最 近 の 大 規 模 試 験 の 結 果 では, 突 然 死 の 予 防 という 目 的 では, 植 込 み 型 除 細 動 器 が 確 実 な 方 法 であることが 明 らかにされている 45),253)-255). しかし, 植 込 み 型 除 細 動 器 が 使 用 されていても 頻 拍 発 作 によるQOL 低 下 があり,その 作 動 回 数 が 多 い 場 合 には 生 命 予 後 が 悪 い 256).このような 状 況 ではカテーテルア ブレーションが 心 室 頻 拍 発 作 回 数 を 減 少 させる 有 力 な 治 療 手 段 となり 得 る 257),258). 7 小 児 における 特 殊 性 小 児 におけるアブレーションは, 成 人 で 適 応 とされる 不 整 脈 に 対 する 有 効 性 を 認 識 して 適 応 を 考 慮 するととも に 小 児 の 特 殊 性 を 考 慮 する 必 要 がある 259),260). 適 応 例 に は 先 天 性 心 疾 患 合 併 例 261),262) およびインセサント 型 頻 拍 263) で 頻 拍 誘 発 性 心 機 能 障 害 合 併 例 等 の 重 症 例 が 多 い. アブレーション 部 位 が 中 隔 である 場 合 の 房 室 ブロックの 頻 度 は 成 人 よりも 高 い 264) が, 近 年 の 報 告 では, 乳 児 期 においても 安 全 性, 合 併 症 の 頻 度 は 成 人 と 差 がないこと も 報 告 されている 265)-267). 器 質 的 心 疾 患 のない 乳 児 の 頻 拍 は 高 率 に 自 然 軽 快 が 期 待 できる 268)-271) が, 先 天 性 心 疾 患 合 併 例 では 自 然 軽 快 が 少 なく 272), 術 後 不 整 脈 は 手 術 成 績 に 大 きく 影 響 する 273).これらの 特 殊 性 から 先 天 性 心 疾 患 および 小 児 アブレーションを 熟 知 した 医 師 が 施 行 することが 望 ましい. 1. 突 然 死 ニアミスおよび 失 神 の 既 往 があるWPW 症 274) 候 群, 心 室 頻 拍 2. 頻 拍 の 持 続 により 心 室 機 能 が 低 下 した 上 室 頻 拍, 心 室 頻 拍 3. 血 行 動 態 の 異 常 を 伴 う 薬 物 治 療 抵 抗 性 心 室 頻 拍 1. 薬 物 治 療 抵 抗 性 で, 再 発 性 もしくは 症 候 性 の 上 室 275),276) 頻 拍 2. 先 天 性 心 疾 患 に 伴 う 頻 拍 症 例 ( 特 に 術 後 にカテー テル 操 作 が 困 難 となる 場 合 ) 3. インセサント 型 上 室 頻 拍 277) 4. 心 房 内 リエントリー 頻 拍 5. 動 悸 のある 患 者 で, 心 臓 電 気 生 理 学 的 検 査 により 上 室 頻 拍 が 誘 発 される 場 合 6. WPW 症 候 群 で 自 然 歴 や 合 併 症 を 考 慮 した 上 でカ ClassⅡb: テーテルアブレーションを 希 望 する 場 合 278) 1. 薬 物 が 有 効 な 上 室 頻 拍 2. 再 発 性 もしくは 薬 物 治 療 抵 抗 性 およびアブレーシ ョン 無 効 の 心 房 内 リエントリー 性 頻 拍 に 対 する 房 室 接 合 部 アブレーションとペースメーカ 植 込 み ( 経 験 数 の 多 い 施 設 への 紹 介 も 考 慮 する) 3. 薬 物 が 有 効 であるが 血 行 動 態 の 異 常 を 伴 う 心 室 頻 拍 4. 非 持 続 性 心 室 頻 拍 および 非 持 続 性 上 室 頻 拍 Ⅴ 植 込 み 型 除 細 動 器 (Implantable Cardioverter-Defibrillator; ICD) 心 臓 突 然 死 は 心 不 全 死 と 並 んで 心 疾 患 患 者 の 主 要 な 死 因 であり,その 発 生 を 未 然 に 防 ぐことは 生 命 予 後 の 改 善 に 極 めて 重 要 である. 植 込 み 型 除 細 動 器 (ICD)は 心 疾 患 の 種 類 や 一 次 予 防, 二 次 予 防 にかかわらず, 生 命 予 後 を 改 善 する 最 も 有 効 な 治 療 法 の1つである. 我 が 国 では 1996 年 に 保 険 適 用 されたが,ICD 本 体 の 小 型 軽 量 化 や デュアルチャンバー 型 の 開 発 等 により, 植 込 み 手 技 や 術 後 管 理 が 容 易 となった. 現 在 ではICD は 致 死 的 心 室 性 不 整 脈 の 治 療 戦 略 上, 不 可 欠 の 治 療 法 となっている( 図 1). 一 方,ICD 適 応 の 根 拠 となる 臨 床 試 験 のほとんど が 海 外 で 行 われ, 器 質 的 心 疾 患 の 背 景 や 予 後 が 異 なる 我 が 国 に 試 験 結 果 をそのまま 当 てはめることができるか 不 明 な 点 もある( 図 3). 以 下 に 記 載 する 適 応 基 準 の 多 く は 海 外 の 臨 床 試 験 に 依 拠 して 考 案 されたが, 我 が 国 特 有 の 患 者 背 景 も 加 味 して, 包 括 的 に 策 定 した.ただし, 患 者 の 有 する 背 景 は 複 雑 で, 本 ガイドラインの 適 応 クラス の 条 件 にすべての 患 者 が 該 当 するわけではない.したが って, 個 々の 患 者 に 対 するICD の 適 応 については 記 述 された 条 件 のみでなく,その 他 の 状 況 も 勘 案 し, 適 用 さ れるべきである.また,クラスⅠまたはクラスⅢに 該 当 する 場 合 でも 最 終 的 な 判 断 は 患 者 の 臨 床 的, 社 会 的 背 景 を 熟 知 した 担 当 医 によってなされるべきであり,ガイド ラインと 異 なる 方 針 決 定 も 想 定 し 得 る. 今 回 の 改 訂 は2006 年 改 訂 版 279) をふまえて 再 度 考 察 さ れたものであるが,2006 年 以 降, 新 しいエビデンスが 19

多 く 報 告 された.これらに 基 づいて 策 定 された 海 外 のガ イドラインではICD の 適 応 がさらに 拡 大 されており 280), 多 くのクラス 分 類 について 改 訂 が 必 要 になった.また, 前 回 のガイドラインは 不 整 脈 の 状 況 や 症 状 に 応 じたクラ ス 分 類 を 提 唱 していたが, 今 回 は 原 因 となる 基 礎 疾 患 別 に 記 載 することとした. 心 機 能 低 下 例 に 対 するICD の 適 応 判 断 は 極 めて 重 要 であるが,その 多 くは, 左 室 駆 出 率 に 依 存 している.し かしながら 左 室 駆 出 率 は 様 々な 方 法 で 測 定 され, 黄 金 律 と 言 うものはない.したがって, 左 室 駆 出 率 の 数 値 化 は 各 施 設 が 得 意 とする 最 も 信 頼 のおける 方 法 によって 行 わ れ, 必 要 に 応 じて 複 数 の 検 査 結 果 を 勘 案 して 判 断 される べきである. 各 クラスにおいて 示 される 左 室 駆 出 率 の 上 限 は 臨 床 試 験 の 登 録 基 準 に 基 づいたものであり,30~ 40%の 範 囲 内 でばらつきがある. 各 疾 患 別 の 項 目 では 可 能 な 限 り 二 次 予 防 と 一 次 予 防 と に 分 けてクラス 分 類 を 記 述 した. 二 次 予 防 とは 過 去 に 心 肺 停 止, 持 続 性 心 室 頻 拍, 心 室 細 動 の 心 電 図 が 記 録 され ているものに 対 する 適 応 で, 一 次 予 防 とは 心 室 頻 拍 が 非 持 続 性 である 場 合, 失 神 を 認 めるが 心 電 図 で 不 整 脈 が 記 録 されていない 場 合,あるいは 低 心 機 能 のために 突 然 死, 不 整 脈 死 のリスクが 高 い 場 合, 等 に 対 する 適 応 を 指 す. 1. 急 性 の 原 因 ( 急 性 虚 血, 電 解 質 異 常, 薬 剤 等 )に よる 心 室 頻 拍, 心 室 細 動 の 可 能 性 が 高 く, 十 分 な 治 療 にもかかわらず 再 度 その 原 因 に 暴 露 されるリ スクが 高 いと 考 えられる 場 合 Class Ⅲ: 1. カテーテルアブレーションや 外 科 的 手 術 により 根 治 可 能 な 原 因 による 心 室 細 動, 心 室 頻 拍 (WPW 症 候 群 における 頻 脈 性 心 房 細 動 粗 動 や 特 発 性 持 続 性 心 室 頻 拍 ) 2. 12か 月 以 上 の 余 命 が 期 待 できない 場 合 3. 精 神 障 害 等 で 治 療 に 際 して 患 者 の 同 意 や 協 力 が 得 られない 場 合 4. 急 性 の 原 因 ( 急 性 虚 血, 電 解 質 異 常, 薬 剤 等 )が 明 らかな 心 室 頻 拍, 心 室 細 動 で,その 原 因 の 除 去 により 心 室 頻 拍, 心 室 細 動 が 予 防 できると 判 断 さ れる 場 合 5. 抗 不 整 脈 薬 やカテーテルアブレーションでコント ロールできない 頻 回 に 繰 り 返 す 心 室 頻 拍 あるいは 心 室 細 動 6. 心 移 植, 心 臓 再 同 期 療 法 (CRT), 左 室 補 助 装 置 (LVAD)の 適 応 とならないNYHA クラスⅣの 薬 物 治 療 抵 抗 性 の 重 度 うっ 血 性 心 不 全 1 ICDによる 二 次 予 防 1. 心 室 細 動 が 臨 床 的 に 確 認 されている 場 合 2. 器 質 的 心 疾 患 に 伴 う 持 続 性 心 室 頻 拍 を 有 し, 以 下 の 条 件 を 満 たすもの (1) 心 室 頻 拍 中 に 失 神 を 伴 う 場 合 (2) 頻 拍 中 の 血 圧 が80mmHg 以 下,あるいは 脳 虚 血 症 状 や 胸 痛 を 訴 える 場 合 (3) 多 形 性 心 室 頻 拍 (4) 血 行 動 態 の 安 定 している 単 形 性 心 室 頻 拍 であって も, 薬 物 治 療 が 無 効 または 副 作 用 のため 使 用 でき ない 場 合 や 薬 効 評 価 が 不 可 能 な 場 合,あるいはカ テーテルアブレーションが 無 効 あるいは 不 可 能 な 場 合 1. 器 質 的 心 疾 患 に 伴 う 持 続 性 心 室 頻 拍 がカテーテル アブレーションにより 誘 発 されなくなった 場 合 2. 器 質 的 心 疾 患 に 伴 う 持 続 性 心 室 頻 拍 を 有 し, 臨 床 経 過 や 薬 効 評 価 にて 有 効 な 薬 剤 が 見 つかっている 場 合 ClassⅡb: 院 外 において 発 生 した 持 続 性 心 室 頻 拍 や 心 室 細 動 の 致 死 率 は 高 く, 初 回 のイベントから 生 還 した 患 者 が 次 の 発 作 でも 救 命 されるとは 限 らない.したがって 心 室 細 動 や 持 続 性 心 室 頻 拍 の 原 因 を 除 去 することができない( 原 因 が 不 明 な 場 合 も 含 む) 患 者 は 心 臓 突 然 死 のリスクが 最 も 高 く, 原 疾 患 や 心 機 能 を 問 わず 最 善 の 手 段 が 講 じられる べきである. 一 方,WPW 症 候 群, 電 解 質 異 常, 心 筋 梗 塞 発 症 後 急 性 期 (48 時 間 以 内 ), 冠 攣 縮 性 狭 心 症 等 に 対 しては 原 因 に 対 する 治 療 が 優 先 され,ICD の 適 応 とはな らない.ただし, 他 にも 原 因 となり 得 る 病 態 が 合 併 して いたり, 将 来, 同 様 の 原 因 にさらされる 可 能 性 が 高 い 場 合 はICD 適 応 が 考 慮 されるかもしれない. 器 質 的 心 疾 患 に 伴 う 持 続 性 心 室 頻 拍, 心 室 細 動, 心 臓 突 然 死 からの 蘇 生 例 は 不 整 脈 再 発 のハイリスク 例 であ り,2 年 間 の 再 発 率 は10~20%と 報 告 されている 281). これらに 対 する 治 療 法 としては,ホルター 心 電 図 または 電 気 生 理 検 査 ガイドによる 抗 不 整 脈 薬 治 療,アミオダロ ンの 経 験 的 投 与, 手 術 療 法,カテーテルアブレーション, ICD 等 がある 44),282)-295).Ⅰ 群 抗 不 整 脈 薬 は, 催 不 整 脈 作 用, 陰 性 変 力 作 用 および 低 い 有 効 性 のために 限 界 があ る. 前 向 き 無 作 為 試 験 の 結 果 では, 電 気 生 理 検 査 ガイド 下 のソタロールや 経 験 的 アミオダロン 投 与 はⅠ 群 薬 に 比 20