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[ 租 税 判 例 研 究 会 ] 錯 誤 無 効 等 に 基 因 した 原 状 回 復 後 の 贈 与 税 更 正 処 分 の 効 力 と 有 限 会 社 の 低 額 資 本 組 入 れによる 出 資 の 評 価 ~ 更 正 の 請 求 の 期 間 延 長 の 改 正 との 関 わりに 焦 点 をあてて~ 第 44 回 2012 年 ( 平 成 24 年 )4 月 6 日 租 税 判 例 研 究 会 座 長 中 央 大 学 教 授 大 淵 博 義 MJS 租 税 判 例 研 究 会 は 株 式 会 社 ミロク 情 報 サービスが 主 催 する 研 究 会 です MJS 租 税 判 例 研 究 会 についての 詳 細 は MJS コーポレートサイト 内 租 税 判 例 研 究 会 のページをご 覧 ください <MJS コーポレートサイト 内 租 税 判 例 研 究 会 のページ> http://www.mjs.co.jp/seminar/kenkyukai/

<2012.2 MJS 租 税 判 例 研 究 会 > 錯 誤 無 効 等 に 基 因 した 原 状 回 復 後 の 贈 与 税 更 正 処 分 の 効 力 と 有 限 会 社 の 低 額 資 本 組 入 れによる 出 資 の 評 価 ~ 更 正 の 請 求 の 期 間 延 長 の 改 正 との 関 わりに 焦 点 をあてて~ 第 一 審 大 阪 地 裁 平 成 16 年 8 月 27 日 判 決 ( 原 告 一 部 勝 訴 税 資 254-9726) 控 訴 審 大 阪 高 裁 平 成 17 年 5 月 31 日 判 決 ( 被 告 控 訴 棄 却 税 資?255-10042) 上 告 審 最 高 裁 平 成 18 年 7 月 14 日 判 決 ( 上 告 不 受 理 税 資 256-10452) 税 経 システム 研 究 所 顧 問 大 淵 博 義 第 1 事 案 の 概 要 本 件 は 平 成 5 年 に 原 告 らが 父 から 生 前 贈 与 を 受 けた 有 限 会 社 の 出 資 の 評 価 に 当 たり 配 当 還 元 方 式 を 適 用 した 是 非 を 巡 る 争 いである (なお 文 中 の 氏 名 法 人 名 は 仮 名 である ) 1 有 限 会 社 A 社 の 設 立 と 出 資 の 経 緯 等 (1) 平 成 3 年 5 月 15 日 1 口 の 払 込 金 額 100 万 円 で B 社 ( 代 表 者 丁 )が510 口 ( 払 込 金 額 51,000 万 円 51%) 戊 が490 口 ( 同 49,000 万 円 49%)を 出 資 して 不 動 産 の 賃 貸 及 び 管 理 業 務 等 を 目 的 とする 有 限 会 社 A 社 ( 以 下 A 社 という )が 設 立 された A 社 の 代 表 者 にはB 社 の 代 表 者 の 丁 が 就 き 戊 戊 の 妻 丙 ( 以 下 丙 という ) 戊 の 長 男 原 告 正 之 の 妻 C( 以 下 C という ) 及 び 戊 の 長 女 D( 以 下 D という )がそれぞれA 社 の 取 締 役 に 就 いた なお A 社 の 設 立 の 際 の 出 資 1 口 の 引 受 金 額 100 万 円 のうち 出 資 1 口 について1 万 円 を 超 える 引 受 金 額 は 資 本 準 備 金 と し その 結 果 A 社 の 設 立 時 の 資 本 金 は1,000 万 円 資 本 準 備 金 99,000 万 円 ( 自 己 資 本 10 億 円 )で あった 1 なお A 社 は 平 成 3 年 ないし4 年 にかけて3 回 の 増 資 を 行 い 設 立 と 同 様 の 条 件 で 資 本 準 備 金 に 組 み 入 れており その 増 資 後 のB 社 の 出 資 割 合 はが30.8%(3,600 口 中 1,110 口 )である 2 (2) 戊 のA 社 の 出 資 持 分 の 原 告 らへの 贈 与 戊 は 平 成 5 年 6 月 15 日 A 社 の 出 資 持 分 ( 以 下 本 件 出 資 という )490 口 について 戊 の 長 男 原 告 甲 と 原 告 甲 の 子 であり 戊 及 び 丙 と 養 子 縁 組 をしている 原 告 乙 に 各 245 口 をそれぞれ 贈 与 した( 以 下 本 件 贈 与 という ) (3) 原 告 らに 係 る 平 成 5 年 贈 与 税 の 申 告 原 告 らは 平 成 5 年 中 に 戊 から 本 件 贈 与 及 び 大 東 市 新 田 中 町 所 在 の 土 地 の 贈 与 を 受 けたことから 平 成 6 年 3 月 15 日 被 告 税 務 署 長 に 対 し 原 告 らは 本 件 贈 与 に 係 る 本 件 出 資 について 財 産 評 価 基 本 通 達 ( 以 下 評 価 通 達 という )194に 基 づき 評 価 通 達 188-2が 定 める 配 当 還 元 方 式 によ り 本 件 出 資 の1 口 当 たりを5,000 円 と 評 価 し 甲 と 乙 の 同 評 価 額 を 各 1,225,000 円 と 評 価 して 平 成 5 年 分 の 贈 与 税 の 申 告 をした 1 戊 は 同 日 E 社 から5 億 円 を 借 り 受 け( 最 終 弁 済 期 限 平 成 8 年 6 月 10 日 利 率 年 9.2%) 上 記 4 億 9,000 万 円 の 出 資 払 込 金 の 支 払 に 充 てている 2 A 社 は 設 立 時 から 平 成 8 年 2 月 29 日 までの 各 事 業 年 度 の 間 利 益 配 当 を 行 っていない

(4) 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 に 関 する 書 類 の 存 在 等 ア 戊 と 原 告 らとの 間 で 本 件 贈 与 を 解 約 することに 合 意 した 旨 の 平 成 6 年 6 月 19 日 付 けの 贈 与 者 戊 と 受 贈 者 原 告 甲 間 及 び 贈 与 者 戊 と 受 贈 者 原 告 乙 間 の 各 贈 与 契 約 の 解 約 の 合 意 書 ( 以 下 本 件 各 解 約 合 意 書 という )が 存 する イ 戊 は 平 成 7 年 10 月 31 日 死 亡 したが 戊 の 遺 産 に 係 る 平 成 8 年 6 月 22 日 付 け 遺 産 分 割 協 議 書 には 原 告 甲 が 相 続 する 財 産 として 本 件 出 資 490 口 が 記 載 されている また 被 相 続 人 戊 に 係 る 同 年 7 月 31 日 提 出 の 相 続 税 の 申 告 書 のうち 相 続 税 がかかる 財 産 の 明 細 書 中 には 本 件 出 資 490 口 が 1 口 の 単 価 50 万 円 で2 億 4,500 万 円 取 得 者 は 原 告 甲 として 記 載 されている (5) 本 件 各 更 正 等 及 びこれに 対 する 原 告 らの 不 服 申 立 ての 経 緯 被 告 税 務 署 長 は 平 成 9 年 3 月 12 日 原 告 らに 係 る 本 件 申 告 について 本 件 出 資 の 評 価 につき 払 込 額 と 同 額 の1 口 当 たり100 万 円 として 評 価 すべきであるとして それぞれ 課 税 価 格 2 億 4,967 万 円 納 付 すべき 贈 与 税 額 1 億 6,344 万 円 とする 本 件 各 更 正 及 び 過 少 申 告 加 算 税 2,428 万 円 の 本 件 各 賦 課 決 定 を 行 った これに 対 して 原 告 らは 所 定 の 不 服 申 立 て( 裁 決 で 一 部 取 消 )を 経 由 して 訴 えを 提 起 したものである 2 争 点 (1) 本 件 贈 与 の 錯 誤 無 効 の 成 否 (2) 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 の 有 無 及 びこれが 贈 与 税 の 課 税 要 件 事 実 に 与 える 影 響 (3) 本 件 出 資 の 評 価 ( 配 当 還 元 方 式 の 可 否 及 びこれによらない 場 合 の 評 価 方 法 ) (4) 本 件 各 賦 課 決 定 について 国 税 通 則 法 65 条 4 項 所 定 の 正 当 な 理 由 の 有 無 (5) 本 件 裁 決 の 固 有 の 瑕 疵 の 有 無 ( 注 )ここでは(4)) 及 び(5))は 省 略 し (3)についての 研 究 は 簡 潔 に 述 べることとし (1)と(2)を 中 心 に 検 討 する 第 2 争 点 についての 当 事 者 の 主 張 と 判 決 要 旨 1 争 点 (1)( 本 件 贈 与 の 錯 誤 無 効 の 成 否 )について ( 原 告 ら) (1) 本 件 贈 与 は 平 成 4 年 8 月 に 訴 外 I 榮 太 郎 ( 以 下 I という )の 死 亡 による 相 続 税 申 告 の 際 に 本 件 A 社 の 出 資 と 同 様 のI 保 有 の( 有 )J 社 ( 以 下 J 社 という )の 出 資 が 相 続 財 産 の 評 価 として1 口 当 たり5,000 円 で 評 価 されていたことから 丁 は 戊 に 本 件 出 資 の 生 前 贈 与 を 勧 め たところ 戊 は 本 件 出 資 の 贈 与 をすることを 決 定 し 平 成 5 年 6 月 15 日 原 告 らに 対 し 本 件 贈 与 を 行 った (2)ところが 平 成 8 年 2 月 14 日 Iに 対 して J 社 の 出 資 の 評 価 額 は1 口 当 たり50 万 円 と 評 価 した 更 正 処 分 が 行 なわれたことから 本 件 贈 与 についても 多 額 の 贈 与 税 が 課 される 可 能 性 があった (3) 以 上 の(1) 及 び(2)に 照 らせば 本 件 贈 与 は 贈 与 税 が 低 額 で 済 むということを 前 提 とし て 行 われたものであるから かかる 意 思 決 定 の 齟 齬 は 動 機 の 錯 誤 である 戊 は 贈 与 税 が 低 額 であ ることから 本 件 贈 与 をする 旨 を 原 告 甲 に 明 示 して 贈 与 したものであり 明 示 の 表 示 をもって 動 機 を 表 明 していたから 本 件 贈 与 は 錯 誤 により 無 効 である ( 被 告 税 務 署 長 ) 納 税 義 務 者 が 納 税 義 務 の 発 生 原 因 となる 私 法 上 の 法 律 行 為 を 行 った 場 合 に 法 定 申 告 期 限 を 経 過 した 時 点 で 当 該 行 為 をしたときに 予 定 していたよりも 重 い 納 税 義 務 が 生 ずることが 判 明 したと

しても そのことを 理 由 として このような 課 税 負 担 の 錯 誤 により 当 該 行 為 は 無 効 であることを 課 税 庁 に 主 張 することはできないと 解 すべきである 原 告 らにおいて 本 件 出 資 の 評 価 額 が1 口 5,000 円 よりも 高 額 であることを 認 識 した 時 点 は 贈 与 税 の 法 定 申 告 期 限 ( 平 成 6 年 3 月 15 日 ) 経 過 後 である ことは 原 告 らにおいて 自 認 しているところであり 本 件 贈 与 に 関 する 錯 誤 無 効 を 主 張 することは 失 当 である ましてや 戊 は 租 税 回 避 の 目 的 で 本 件 贈 与 を 行 ったものであるから それに 失 敗 した からといって 錯 誤 無 効 でなどと 主 張 することは リスクなしに 租 税 回 避 の 試 行 をすることを 認 めよ と 主 張 するに 等 しく 到 底 採 用 されるべきではない 2 争 点 (2)( 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 の 有 無 及 びこれが 贈 与 税 の 課 税 要 件 時 事 に 与 える 影 響 ) ( 原 告 ら) 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 に 至 る 経 緯 は 以 下 のとおりである (1) 顧 問 税 理 士 は 本 件 出 資 について 予 期 に 反 して 贈 与 税 の 財 産 評 価 として1 口 50 万 円 に 評 価 される 可 能 性 があることを 報 告 した 原 告 らは 本 件 出 資 が1 口 当 たり50 万 円 として 評 価 される のであれば その 贈 与 税 額 を 本 人 の 所 得 及 び 所 有 財 産 では 支 払 いようがないことから 平 成 8 年 3 月 戊 の 共 同 相 続 人 ら 全 員 が 参 集 して 本 件 贈 与 につき 遡 及 して 合 意 解 除 することとした そこで 法 的 知 識 がないこともあって 贈 与 者 の 生 前 の 日 付 で 贈 与 者 名 をもって 受 贈 者 との 間 での 本 件 各 解 約 合 意 書 を 作 成 した なお 平 成 6 年 3 月 15 日 に 受 贈 者 である 原 告 らは 本 件 贈 与 により 取 得 した 本 件 出 資 につき1 口 5,000の 評 価 で 確 定 申 告 を 行 っている (2) 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 に 基 づいて 受 贈 者 は 本 件 出 資 を 贈 与 者 に 返 還 し 本 件 出 資 は 共 同 相 続 人 の 所 有 に 帰 すとともに 本 件 出 資 の 発 行 会 社 における 出 資 者 名 簿 は 訂 正 され 同 内 容 に 基 づく 法 人 税 の 確 定 申 告 が 実 施 された 本 件 では 平 成 5 年 6 月 15 日 に 行 われた 本 件 贈 与 による 本 件 出 資 の 取 得 によって 受 贈 者 の 納 税 義 務 はいったんは 抽 象 的 に 成 立 したものであるが 本 件 贈 与 は 平 成 8 年 3 月 に 遡 及 効 を 有 する 合 意 解 除 により 本 件 出 資 は 返 還 され 原 状 回 復 が 行 われているから 贈 与 税 の 課 税 要 件 である 贈 与 に よる 財 産 の 取 得 との 要 件 を 充 足 しないこととなり いったん 成 立 した 抽 象 的 納 税 義 務 は 遡 及 して 消 滅 しているから その 後 に 行 われた 本 件 更 正 等 は 違 法 と 断 ぜざるを 得 ない ( 被 告 税 務 署 長 ) 贈 与 税 は 個 人 が 死 因 贈 与 を 除 く 贈 与 によって 財 産 を 取 得 したときに 課 税 要 件 ( 納 税 義 務 者 課 税 物 件 課 税 標 準 税 率 )が 充 足 して 抽 象 的 に 納 税 義 務 が 成 立 し また 上 記 贈 与 に 係 る 受 贈 者 の 贈 与 税 申 告 により その 納 付 すべき 贈 与 税 額 が 確 定 するものであるところ 合 意 解 除 は 遡 及 効 がなく 法 的 性 質 上 法 定 解 除 事 由 取 消 事 由 ないし 無 効 原 因 の 存 否 にかかわりなく 当 事 者 の 合 意 により 行 い 得 る 新 たな 契 約 であるから 本 件 贈 与 が 法 定 申 告 期 限 後 に 合 意 解 除 されたとしても いったん 充 足 された 課 税 要 件 事 実 が 消 滅 することにはならないのであり 合 意 解 除 の 主 張 は それ 自 体 失 当 である このことは このような 合 意 解 除 によっていったん 有 効 に 成 立 した 納 税 義 務 を 免 れさせるような 取 扱 いを 認 めたならば 納 税 者 間 の 公 平 を 害 し 租 税 法 律 関 係 が 不 安 定 となり ひ いては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 につながることからもうかがわれるところである 3 争 点 (3)( 本 件 出 資 の 評 価 配 当 還 元 方 式 適 用 の 可 否 及 びこれによらない 場 合 の 評 価 方 法 ) について ( 被 告 税 務 署 長 ) (1) 本 件 出 資 について 配 当 還 元 方 式 を 定 める 評 価 基 本 通 達 188-2は 適 用 すべきでないこと

ア 評 価 基 本 通 達 の 趣 旨 からすれば 評 価 基 本 通 達 に 定 められた 評 価 方 式 を 形 式 的 に 適 用 すること が 実 質 的 な 租 税 負 担 の 公 平 を 著 しく 害 する 結 果 となるなど 評 価 基 本 通 達 に 定 められた 評 価 方 式 によらない 評 価 を 行 うことが 正 当 であるとして 是 認 される 特 別 の 事 情 がある 場 合 には 評 価 基 本 通 達 によらずに 他 の 合 理 的 な 方 法 により 評 価 するのが 相 当 であると 解 される そして かかる 特 別 の 事 情 の 根 拠 事 実 としては 1 本 件 出 資 が 不 自 然 不 合 理 であること 2 本 件 出 資 が 行 わ れたことにより これがなされなかった 場 合 に 比 べて 評 価 基 本 通 達 所 定 の 方 法 による 贈 与 財 産 の 評 価 額 が 著 しく 減 少 すること 3 本 件 出 資 が 贈 与 税 負 担 軽 減 の 意 図 に 基 づくものであること とい う 事 情 が 挙 げられるものと 解 される 3 イ 本 件 出 資 に 係 る 特 別 の 事 情 の 存 在 根 拠 1 A 社 は 贈 与 時 点 において 開 業 2 年 ほどしか 経 ていない 有 限 会 社 であること 戊 の 出 資 金 額 は 4 億 9,000 万 円 と 多 額 であり その 原 資 は 戊 が 当 時 71 歳 という 高 齢 にもかかわらず あえて 借 入 金 により 調 達 していること 2 戊 は これまで 配 当 を 受 けておらず 借 入 金 に 係 る 多 額 の 利 息 の 支 払 のみを 行 っていること 3 A 社 は B 社 が 常 にA 社 の 同 族 社 員 となるように 意 図 的 に 出 資 割 合 を 調 整 することにより 戊 を 常 に 同 族 社 員 以 外 の 社 員 等 にしていること 4 出 資 1 口 当 たりの 額 面 金 額 (1 万 円 )と 払 込 金 額 (100 万 円 )が 大 きく 乖 離 していること その 出 資 払 込 金 の100 分 の99を 資 本 準 備 金 とし 通 常 の 経 済 活 動 を 行 う 会 社 であれば 合 理 的 説 明 のできな い 異 常 な 資 本 構 成 をとっていること 上 記 の 事 情 を 踏 まえると 本 件 出 資 も 専 ら 配 当 還 元 方 式 を 定 める 評 価 基 本 通 達 188-2の 適 用 を 受 けることにより 本 件 贈 与 に 係 る 贈 与 財 産 の 価 額 を 大 幅 に 圧 縮 し これにより 原 告 らの 贈 与 税 の 負 担 を 減 少 させることだけを 意 図 して 当 初 から 計 画 的 に 実 行 されたものであったと 認 めるこ とができるから 上 記 のような 特 別 の 事 情 が 認 められると 解 すべきである したがって 配 当 還 元 方 式 を 定 める 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 められた 評 価 方 式 によらないで 他 の 合 理 的 な 方 式 によ り 評 価 することが 許 されると 解 される (2) 評 価 基 本 通 達 188-2によらない 場 合 の 本 件 出 資 の 評 価 方 法 について ア 純 資 産 価 額 を 基 準 とした 評 価 方 法 を 適 用 することが 相 当 であること 出 資 は 会 社 資 産 に 対 する 割 合 的 持 分 としての 性 格 を 有 し 会 社 の 所 有 する 総 資 産 価 値 の 割 合 的 支 配 権 を 表 象 したものであり 社 員 は 出 資 を 保 有 することによって 会 社 財 産 を 間 接 的 に 保 有 する ものであるから 当 該 出 資 の 理 論 的 客 観 的 な 価 値 は 会 社 の 純 資 産 の 価 額 を 出 資 口 数 で 除 したも のと 考 えるのが 相 当 であり また そのような 方 法 が 取 引 相 場 のない 株 式 等 の 評 価 の 原 則 的 な 評 価 方 法 といい 得 るものである そして この 点 原 告 らは 他 の 評 価 方 法 を 主 張 するが 純 資 産 価 額 方 式 は 株 価 等 の 評 価 方 法 と して 高 い 合 理 性 を 有 すると 考 えられるから 原 告 らの 上 記 主 張 は 失 当 である イ A 社 は 戊 を 含 むB 社 以 外 の 出 資 者 のほとんどが 個 人 的 な 信 頼 関 係 により 出 資 し 同 社 の 経 営 を 丁 に 任 せているように 同 族 的 色 彩 の 濃 い 閉 鎖 的 な 会 社 である 本 件 出 資 は 贈 与 税 の 負 担 軽 減 を 図 る 意 図 で 取 得 されたものであって 本 件 趣 旨 における 払 込 額 とほぼ 同 額 の 払 戻 しを 受 ける 意 図 計 画 があることがうかがわれ 実 質 的 には 出 資 者 に 対 し その 地 位 を 有 している 間 本 件 出 資 を 通 じて 出 資 額 相 当 額 の 会 社 資 産 を 支 配 させるものと 評 価 できることからすれば 本 件 出 資 については 上 記 の 純 資 産 価 額 を 基 準 とした 評 価 方 法 を 適 用 するのが 相 当 である 3 本 件 更 正 処 分 は 贈 与 税 負 担 軽 減 のみを 意 図 して 一 時 的 に 保 有 するものであり 預 け 金 と 同 様 であるとして 1 口 100 万 円 と 評 価 している

ウ 純 資 産 価 額 を 基 準 とした 評 価 方 法 について 純 資 産 価 額 方 式 を 規 定 する 評 価 基 本 通 達 185の ただし 書 には 1 株 当 たりの 純 資 産 価 額 につい ては その 価 額 に2100 分 の80を 乗 じて 計 算 した 金 額 とする 旨 定 められているが これは 単 独 の 同 族 株 主 グループの 所 有 株 式 数 によって 会 社 支 配 を 行 っている 場 合 の 支 配 力 との 較 差 を 考 慮 して 持 株 割 合 の 合 計 が50% 未 満 である 同 族 株 主 グループに 属 する 株 主 の 取 得 株 式 を 純 資 産 価 額 方 式 により 評 価 する 場 合 には 20%の 評 価 減 を 行 うこととしているものである そうとすれば 評 価 会 社 にお いて 各 同 族 株 主 グループの 利 害 対 立 やその 会 社 支 配 力 の 較 差 が 問 題 とならないなどの 事 情 つま り 本 件 出 資 のように 各 出 資 者 に 強 度 の 個 人 的 信 頼 関 係 があり 贈 与 税 の 負 担 の 軽 減 を 図 ること を 主 たる 目 的 としている 特 別 の 事 情 が 認 められるから 出 資 者 の 出 資 割 合 の 多 寡 による 同 族 株 主 グループ 間 の 利 害 対 立 及 び 会 社 支 配 力 の 較 差 が 問 題 となる 余 地 はなく 20%の 減 額 を 適 用 する 必 要 はない そして これによるA 社 の 出 資 1 口 当 たりの 純 資 産 価 額 は 99 万 7,894 円 となる ( 原 告 ら) (1) 本 件 出 資 の 経 緯 本 件 出 資 は 収 益 の 多 様 化 及 び 増 加 を 図 る 必 要 性 に 迫 られていた 戊 がその 解 決 策 として 行 ったも のである それは A 社 が 行 う 地 下 げ 事 業 に 期 待 して 投 資 をするというものであり 地 下 げ 事 業 が 有 望 な 事 業 であるかどうかにつき 戊 は 長 男 の 原 告 甲 ( 大 東 市 役 所 課 税 課 勤 務 )にアドバイスを 求 めたところ 底 地 の 取 得 単 価 は50 万 円 を 予 定 して 借 地 人 への 譲 渡 は150 万 円 と 言 う 計 画 は 当 時 の 当 該 土 地 近 辺 の 売 買 実 例 等 の 土 地 価 格 からすると 有 望 であるというアドバイスを 受 けた かかる 経 緯 から 戊 は 本 件 出 資 を 行 ったのであり 出 資 の 目 的 は 投 資 により 配 当 を 得 ることにあったのである なお オリックスからの 借 り 入 れは もともと 時 価 7 億 円 の 土 地 を 売 却 して 資 金 を 調 達 する 予 定 にしていたが 当 時 の 土 地 価 格 の 推 移 から 土 地 の 将 来 の 値 上 がりを 考 慮 して 将 来 売 却 するとし ても 当 面 は 借 り 入 れにより 資 金 を 調 達 したものにすぎず 本 件 出 資 は 配 当 目 的 であったのである したがって バブル 経 済 が 崩 壊 することなく 地 価 が 推 移 していれば 本 件 出 資 を 通 じて 収 益 状 況 を 改 善 しようとした 戊 の 目 的 は 十 分 達 成 されていたのであった (2) 本 件 贈 与 の 経 緯 平 成 4 年 8 月 Iが 死 亡 し 翌 平 成 5 年 2 月 2 日 Iの 相 続 に 関 する 相 続 税 の 申 告 がされたが A 社 と 同 様 のJ 社 の 出 資 が 相 続 財 産 の 評 価 として1 口 当 たり5,000 円 で 評 価 されることが 分 かったこと から 丁 が 戊 に 本 件 出 資 を 贈 与 してはどうかと 勧 めた その 後 税 理 士 にも 相 談 して 慎 重 に 検 討 し た 後 に 本 件 贈 与 を 決 定 したもので 贈 与 税 の 負 担 を 軽 減 する 意 図 はなかったものである (3) 本 件 出 資 の 評 価 は 配 当 還 元 方 式 によるべきこと ア 非 支 配 株 主 であるか 否 かの 判 定 は 株 式 の 所 有 割 合 という 外 形 標 準 による 形 式 基 準 によって 判 定 されるのであり 本 件 においては 原 告 らは 形 式 的 にも 非 支 配 株 主 であるし 実 質 においても 原 告 らはA 社 を 支 配 しておらず 丁 の 意 向 に 従 うだけでの 出 資 者 であるから 本 件 出 資 について 支 配 株 主 に 適 用 する 純 資 産 価 額 方 式 で 評 価 する 理 由 は 全 くなく あくまでも 非 支 配 株 主 としての 原 則 的 評 価 方 式 である 配 当 還 元 方 式 によって 評 価 が 行 われなければならない イ 相 続 税 負 担 軽 減 の 意 図 と 租 税 法 規 適 用 の 関 係 (ア) 本 来 適 用 が 予 定 されている 評 価 基 本 通 達 の 適 用 を 排 して 別 の 評 価 基 本 通 達 を 適 用 するとして も いずれの 通 達 も 相 続 財 産 の 評 価 は 時 価 による と 規 定 する 相 続 税 法 22 条 を 受 けて 相 続 財 産 の 客 観 的 交 換 価 値 を 明 らかにするために 設 けられたものであることは 共 通 している ここに 客 観 的 な 交 換 価 値 とは 通 常 の 第 三 者 間 で 売 買 される 場 合 に 形 成 される 価 額 をいうから 当 該 財 産 を 取 得

した 際 の 主 観 的 な 取 得 の 意 図 や 目 的 は 本 来 財 産 の 価 額 には 影 響 をしないはずである したがって 租 税 負 担 軽 減 の 意 図 のような 主 観 的 事 情 は それ 自 体 に 独 立 の 意 味 があるのではな く 客 観 的 な 交 換 価 値 を 明 らかにする 上 での 一 資 料 にすぎないというべきである すなわち 相 続 税 対 策 の 目 的 で 取 得 したものであろうと それ 以 外 の 他 の 目 的 で 取 得 したもので あろうと 当 該 財 産 の 客 観 的 要 因 すなわち 当 該 財 産 の 現 況 によって 当 該 財 産 の 価 値 は 決 まる のであり それこそが 相 続 税 法 22 条 の 規 定 する 時 価 である (イ) 以 上 のような 基 本 的 視 点 から 考 察 すれば 配 当 還 元 方 式 を 規 定 する 評 価 基 本 通 達 の 適 用 を 排 斥 し これに 代 えて 純 資 産 価 額 方 式 を 規 定 する 評 価 基 本 通 達 を 適 用 することを 正 当 化 する 特 別 の 事 情 なるものの 本 体 は 租 税 負 担 の 軽 減 の 意 図 などといったものではなく 当 該 財 産 を 純 資 産 価 額 方 式 で 評 価 するに 相 応 しい 事 情 すなわち 当 該 財 産 が 一 時 的 一 過 性 のもので 純 資 産 価 額 で 現 金 化 できるという 事 情 でなければならないはずである (4) 評 価 基 本 通 達 188-2によらない 場 合 の 本 件 出 資 の 評 価 方 法 について ア 評 価 基 本 通 達 185ただし 書 において 持 分 割 合 が50パーセント 未 満 の 同 族 株 主 の 出 資 につき 会 社 支 配 力 の 低 減 を 考 慮 して20%の 評 価 減 を 行 うこととしているが 被 告 税 務 署 長 はこれを 認 めない で いわゆる 修 正 純 資 産 価 額 方 式 を 採 用 した しかし 原 告 らは 同 族 株 主 等 以 外 の 株 主 であり ま た 丁 の 経 営 支 配 を 目 的 として 原 告 らの 出 資 割 合 は 低 いものに 抑 えられているから 法 律 上 原 告 らが 本 件 出 資 を 通 じて 会 社 を 支 配 しておらず それゆえ 本 件 出 資 を 通 じて 会 社 財 産 を 実 質 的 に 保 有 しているとはいえないことも 明 らかであり 修 正 純 資 産 価 額 方 式 でないことはもちろん そも そも 純 資 産 価 額 方 式 を 適 用 する 根 拠 が 存 在 しない イ 商 法 上 株 式 会 社 は 新 株 の 発 行 価 額 の2 分 の1を 超 えない 額 は 資 本 に 組 み 入 れないことができ る 旨 規 定 されているところ( 商 法 284 条 ノ2) ほぼ 全 ての 株 式 会 社 が 資 本 組 入 額 をこの 許 容 限 度 い っぱいに 低 く 抑 え できるだけ 資 本 準 備 金 への 組 入 額 を 多 くしている かかる 会 社 の 株 式 出 資 につき それを 保 有 する 同 族 株 主 以 外 の 株 主 に 相 続 贈 与 が 発 生 した 場 合 評 価 基 本 通 達 通 り 配 当 還 元 方 式 が 適 用 されているのが 課 税 実 務 の 実 際 である 本 件 においても 仮 に1 口 の 出 資 払 込 金 100 万 円 のうち その 半 分 の50 万 円 を 資 本 金 に 組 み 入 れて いたとしたら 課 税 庁 は 配 当 還 元 方 式 の 適 用 を 否 定 しなかったと 思 われる その 場 合 には 本 件 出 資 の 評 価 は 1 口 当 たり25 万 円 となるのに 対 し 本 件 で 被 告 らは1 口 当 たり 約 100 万 円 と 主 張 している このことからも 被 告 ら 主 張 の 評 価 額 が 課 税 実 務 から 乖 離 していること は 明 らかである ウ 本 件 出 資 の 評 価 方 法 本 件 出 資 の 評 価 方 法 についてみるに 原 告 らが 同 族 株 主 以 外 の 株 主 であり 本 件 出 資 を 通 じて 会 社 財 産 を 何 ら 支 配 しているわけではないという 実 態 を 踏 まえれば 本 件 出 資 の 評 価 方 法 は 基 本 的 に 収 益 還 元 方 式 の 一 種 である 配 当 還 元 方 式 によって 評 価 すべきである そして 評 価 の 実 態 におい て 払 込 価 額 の 半 額 が 資 本 金 に 組 み 入 れられるというのが 慣 例 であることからして 本 件 出 資 にお いても 1 口 100 万 円 の 払 込 金 額 につき 半 額 の50 万 円 が 資 本 金 に 残 りの50 万 円 が 資 本 準 備 金 に 払 い 込 まれたものとして これを 配 当 還 元 方 式 で 評 価 した25 万 円 をもって 本 件 出 資 の 評 価 とすべきで ある 第 3 一 審 判 決 と 控 訴 審 判 決 の 判 断 1 争 点 (1)( 本 件 贈 与 の 錯 誤 無 効 の 成 否 ) について (1) 原 告 において 本 件 出 資 に 係 る 贈 与 税 額 について 動 機 の 錯 誤 が 存 したものということはでき

るが 申 告 納 税 方 式 を 採 り 申 告 義 務 の 違 反 や 脱 税 に 対 しては 加 算 税 等 を 課 して 適 正 な 申 告 がさ れることを 期 している 我 が 国 の 租 税 制 度 の 下 において 安 易 に 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 法 律 行 為 の 錯 誤 無 効 を 認 めて 納 税 義 務 を 免 れさせることは 納 税 者 間 の 公 平 を 害 すると 共 に 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 につながるものといえる したがって 納 税 義 務 者 は 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 私 法 上 の 法 律 行 為 を 行 った 場 合 同 法 律 行 為 の 際 に 予 定 していな かった 納 税 義 務 が 生 じたり 同 法 律 行 為 の 際 に 予 定 していたものよりも 重 い 納 税 義 務 が 生 じること が 判 明 したとしても その 法 定 申 告 期 間 を 経 過 した 後 に かかる 課 税 負 担 の 錯 誤 が 上 記 法 律 行 為 の 動 機 の 錯 誤 であるとして 同 法 律 行 為 が 無 効 であることを 主 張 することは 許 されないものと 解 する のが 相 当 である (2)これを 本 件 についてみるに 原 告 らは 本 件 出 資 の 評 価 額 が1 口 5,000 円 よりも 高 額 であるこ とを 贈 与 に 係 る 贈 与 税 の 法 定 申 告 期 限 ( 平 成 6 年 3 月 15 日 ) 経 過 後 に 知 ったのであり また 本 件 においては 専 ら 本 件 出 資 の 評 価 額 を 低 廉 なものとするための 方 策 として1 対 99の 割 合 をもって 資 本 金 と 資 本 準 備 金 への 振 り 分 けをしているものであるから 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 配 当 還 元 方 式 を 適 用 して 本 件 出 資 の 価 額 を 評 価 することは 実 質 的 な 租 税 負 担 の 公 平 を 著 しく 害 することが 明 らかであるところ 戊 も 子 の 原 告 甲 らに 戊 の 財 産 を 低 額 の 税 金 の 負 担 で 移 譲 する 目 的 で 本 件 出 資 に 及 び その 後 本 件 贈 与 に 及 んだものと 認 められることに 照 らせば 原 告 らに 本 件 贈 与 が 無 効 であるとして 納 税 義 務 を 免 れさせることは 納 税 者 間 の 公 平 を 害 すると 共 に 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 を 招 来 するものというべきであって 原 告 らの 錯 誤 無 効 の 主 張 は 許 されないものと 解 するのが 相 当 である よって 本 件 贈 与 が 錯 誤 無 効 であるとする 原 告 らの 主 張 は 理 由 がない < 控 訴 審 判 決 > (1) 納 税 義 務 者 は 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 私 法 上 の 法 律 行 為 を 行 った 場 合 同 法 律 行 為 の 際 に 予 定 していなかった 納 税 義 務 が 生 じたり 同 法 律 行 為 の 際 に 予 定 していたものよりも 重 い 納 税 義 務 が 生 じることが 判 明 したとしても その 法 定 申 告 期 間 を 経 過 した 後 に かかる 課 税 負 担 の 錯 誤 が 上 記 法 律 行 為 の 動 機 の 錯 誤 であるとして 同 法 律 行 為 が 無 効 であることを 主 張 す ることは 許 されないものと 解 するのが 相 当 である (2) 納 税 者 らにおいて 贈 与 財 産 である 出 資 の 評 価 額 が 想 定 より 高 額 であると 認 識 した 時 点 が 本 件 贈 与 に 係 る 贈 与 税 の 法 定 申 告 期 限 経 過 後 であり 贈 与 が 錯 誤 により 無 効 であるとして 納 税 者 らをして 納 税 義 務 を 免 れさせることは 納 税 者 間 の 公 平 を 害 するとともに 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 を 招 来 するものというべきであるから 納 税 者 らの 錯 誤 無 効 の 主 張 は 許 されない 2 争 点 (2)( 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 の 有 無 及 びこれが 贈 与 税 の 課 税 要 件 事 実 に 与 える 影 響 )につ いて (1) 原 告 らは 本 件 贈 与 につき 遡 及 して 合 意 解 除 することとした 旨 主 張 するが 本 件 各 解 約 合 意 書 の 作 成 日 付 は 上 記 のとおり 平 成 6 年 6 月 であり 原 告 ら 主 張 の 平 成 8 年 3 月 とは 大 幅 に 異 なって おり 原 告 甲 の 上 記 陳 述 ないし 供 述 のとおり 本 件 各 解 約 合 意 書 自 体 は 戊 の 死 後 作 成 されたもの とも 解 され さらに 原 告 の 準 備 書 面 の 主 張 からみると 本 件 出 資 に 係 る 贈 与 税 額 が 多 額 に 上 る 懸 念 を 抱 いた 原 告 甲 において 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 の 書 面 を 整 え また 本 件 贈 与 が 合 意 解 除 された ことを 前 提 とする 戊 の 相 続 税 の 申 告 を 行 ったことは 認 められるものの 原 告 らと 他 の 戊 の 相 続 人 ら 間 において 現 実 に 本 件 贈 与 を 解 除 する 旨 の 合 意 がされたのか 否 か また その 合 意 がされたとし

ても それがいつされたのかは 全 く 明 らかではない したがって 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 の 事 実 自 体 これを 認 めることはできないものといわざるを 得 ない (2)ア なお 本 件 贈 与 の 合 意 解 除 の 事 実 が 認 められるとしても 合 意 解 除 は 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 法 律 行 為 について 同 法 律 行 為 の 当 事 者 間 の 事 後 的 な 合 意 により 同 法 律 行 為 を 解 消 させるものである してみれば 申 告 納 税 方 式 を 採 り 申 告 義 務 の 違 反 や 脱 税 に 対 しては 加 算 税 等 を 課 して 適 正 な 申 告 がされることを 期 している 我 が 国 の 租 税 制 度 の 下 において 安 易 に 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 法 律 行 為 の 事 後 的 な 合 意 解 除 の 効 果 を 認 めて 当 該 納 税 義 務 を 免 れさせること は 納 税 者 間 の 公 平 を 害 すると 共 に 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 に つながるものといえる したがって 納 税 義 務 者 は 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 私 法 上 の 法 律 行 為 を 行 った 場 合 その 法 定 申 告 期 間 を 経 過 した 後 に 同 法 律 行 為 を 事 後 的 に 合 意 解 除 したとしても その 効 果 を 主 張 して 当 該 納 税 義 務 を 免 れることは 許 されないものと 解 するのが 相 当 である この 点 法 定 取 消 権 又 は 法 定 解 除 権 に 基 づいて 贈 与 契 約 が 取 り 消 され 又 は 解 除 された 場 合 を 除 き 贈 与 契 約 の 取 消 し 又 は 解 除 があった 場 合 においても 当 該 贈 与 契 約 に 係 る 財 産 について 贈 与 税 の 課 税 を 行 う 旨 規 定 する 名 義 変 更 通 達 11 項 は 上 記 解 釈 に 沿 うものとして 合 理 性 を 有 するものと 解 される イ これを 本 件 についてみるに 原 告 らが 本 件 贈 与 を 合 意 解 除 したとする 時 点 が 本 件 贈 与 に 係 る 贈 与 税 の 法 定 申 告 期 限 であり そして 本 件 においては 専 ら 本 件 出 資 の 評 価 額 を 低 廉 なものとす るための 方 策 として1 対 99の 割 合 をもって 資 本 金 と 資 本 準 備 金 への 振 り 分 けをしているものであり 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 配 当 還 元 方 式 を 適 用 して 本 件 出 資 の 価 額 を 評 価 することは 実 質 的 な 租 税 負 担 の 公 平 を 著 しく 害 することが 明 らかであるところ 戊 も 子 の 原 告 甲 らに 財 産 を 低 額 の 税 金 の 負 担 で 移 譲 する 目 的 で 本 件 出 資 に 及 び その 後 本 件 贈 与 に 及 んだものと 認 められることに 照 らせば 原 告 らに 本 件 贈 与 を 合 意 解 除 したとして 納 税 義 務 を 免 れさせることは 納 税 者 間 の 公 平 を 害 すると 共 に 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 を 招 来 するものというべ きであって 原 告 らの 合 意 解 除 に 基 づく 納 税 義 務 の 消 滅 の 主 張 は 許 されないものと 解 するのが 相 当 である < 控 訴 審 判 決 > (1) 贈 与 の 合 意 解 除 の 事 実 が 認 められるとしても 合 意 解 除 は 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 法 律 行 為 について 同 法 律 行 為 の 当 事 者 間 の 事 後 的 な 合 意 により 同 法 律 行 為 を 解 消 させるもの であり 申 告 納 税 方 式 を 採 り 申 告 義 務 の 違 反 や 脱 税 に 対 しては 加 算 税 等 を 課 して 適 正 な 申 告 がされることを 期 している 我 が 国 の 租 税 制 度 の 下 において 不 適 正 な 納 税 をしようとした 者 が 予 想 と 異 なる 課 税 がされることが 判 明 したことを 理 由 として 安 易 に 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 とな る 法 律 行 為 の 事 後 的 な 合 意 解 除 の 効 果 を 認 めて 当 該 納 税 義 務 を 免 れさせることは 納 税 者 間 の 公 平 を 害 するとともに 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 につながるも のといえるから 納 税 義 務 者 は 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 私 法 上 の 法 律 行 為 を 行 った 場 合 その 法 定 申 告 期 間 を 経 過 した 後 に 同 法 律 行 為 を 多 額 の 贈 与 税 が 賦 課 されることを 回 避 するとの 理 由 で 事 後 的 に 合 意 解 除 したとしても その 効 果 を 主 張 して 当 該 納 税 義 務 を 免 れることは 許 され ないものと 解 するのが 相 当 である (2) 納 税 者 らが 本 件 贈 与 を 合 意 解 除 したとする 時 点 が 贈 与 に 係 る 贈 与 税 の 法 定 申 告 期 限 ( 平 成 6 年 3 月 15 日 ) 経 過 後 であることは 納 税 者 らにおいて 自 認 しているところであって 合 意 解 除 の 理 由 が 課 税 回 避 にあることも 明 白 であるから 納 税 者 らの 合 意 解 除 に 基 づく 納 税 義 務 の 消 滅 の 主 張 は 許 されないものと 解 するのが 相 当 である

3 争 点 (3)( 本 件 出 資 の 評 価 ( 配 当 還 元 方 式 によることの 可 否 及 びこれによらない 場 合 の 評 価 方 法 ))について (1) 相 続 税 法 22 条 は 贈 与 により 取 得 した 財 産 の 価 額 については 原 則 として 当 該 財 産 の 取 得 の 時 における 時 価 により 評 価 すべき 旨 定 めているところ ここにいう 時 価 とは 当 該 財 産 の 取 得 時 における 当 該 財 産 の 客 観 的 な 交 換 価 値 すなわち 不 特 定 多 数 の 当 事 者 間 で 自 由 な 取 引 が 行 われる 場 合 に 通 常 成 立 すると 認 められる 価 額 をいうものと 解 するのが 相 当 である しかしながら 財 産 の 客 観 的 な 交 換 価 値 というものが 必 ずしも 一 義 的 に 確 定 されるものではない ことから 課 税 実 務 上 は 納 税 者 間 の 公 平 納 税 者 の 便 宜 徴 税 費 用 の 節 減 という 見 地 から 相 続 税 法 が 規 定 する 相 続 税 及 び 贈 与 税 の 対 象 とな る 財 産 の 評 価 の 一 般 的 規 準 が 評 価 基 本 通 達 により 定 められ そこに 定 められた 画 一 的 な 評 価 方 法 により 同 財 産 の 評 価 をすることとされている そして 上 記 のように 評 価 基 本 通 達 により 画 一 的 に 適 用 すべき 評 価 方 法 を 定 めた 以 上 は これが 合 理 性 を 有 する 限 り 納 税 者 間 の 公 平 及 び 納 税 者 の 信 頼 保 護 の 見 地 から 原 則 として 全 ての 納 税 者 との 関 係 で 評 価 基 本 通 達 に 基 づく 評 価 を 行 う 必 要 があり 特 定 の 納 税 者 あるいは 特 定 の 贈 与 財 産 についてのみ 評 価 基 本 通 達 に 定 める 方 法 以 外 の 方 法 によって 評 価 することは たとえその 方 法 によ る 評 価 がそれ 自 体 としては 相 続 税 法 22 条 の 定 める 時 価 として 許 容 できる 範 囲 内 のものであったとし ても 許 されないものと 解 すべきである しかしながら 他 方 評 価 基 本 通 達 に 定 められた 評 価 方 法 によるべきであるとする 趣 旨 が 上 記 の ようなものであることからすると 上 記 の 評 価 方 法 を 画 一 的 に 適 用 するという 形 式 的 平 等 を 貫 くこ とによって かえって 実 質 的 な 租 税 負 担 の 公 平 を 著 しく 害 することが 明 らかな 場 合 など 上 記 評 価 方 法 によらないことが 正 当 と 是 認 される 特 別 の 事 情 がある 場 合 には 別 の 合 理 的 な 評 価 方 法 による ことが 許 されるものと 解 すべきである このことは 評 価 基 本 通 達 6において 評 価 基 本 通 達 の 定 めによって 評 価 することが 著 しく 不 適 当 と 認 められる 財 産 の 価 額 は 国 税 庁 長 官 の 指 示 を 受 けて 評 価 するとされていることからも 明 らかである (2)これに 対 し 小 会 社 については1 株 当 たりの 純 資 産 価 額 によるべきものとされているところ 小 会 社 について 純 資 産 価 額 方 式 が 原 則 とされるのは 小 会 社 は 事 業 規 模 や 経 営 の 実 態 からみて 個 人 企 業 に 類 似 するものであり これを 株 式 の 実 態 からみても 株 主 が 所 有 する 株 式 を 通 じて 会 社 財 産 を 完 全 支 配 しているところから 個 人 事 業 者 が 自 らその 財 産 を 所 有 している 場 合 と 実 質 的 に 変 わ りがないことにかんがみ 小 会 社 の 株 式 が 会 社 財 産 に 対 する 持 分 を 表 現 することに 着 目 するものと 解 される 上 記 原 則 的 評 価 方 法 に 対 する 特 例 として 同 族 株 主 以 外 の 株 主 等 が 取 得 した 株 式 の 価 額 は 配 当 還 元 方 式 によるべきものとされているが これは 事 業 経 営 への 影 響 の 少 ない 同 族 株 主 の 一 部 及 び 従 業 員 株 主 などのような 少 数 株 主 が 取 得 した 株 式 については これらの 株 主 は 単 に 配 当 を 期 待 するにとどまるという 実 質 のほか 評 価 手 続 の 簡 便 性 をも 考 慮 したものと 解 されており 合 理 性 を 有 するものといえる そして 本 件 贈 与 時 点 におけるA 社 の 各 出 資 者 の 出 資 割 合 は 本 件 贈 与 時 点 ( 平 成 5 年 6 月 15 日 )においては B 社 が3,600 口 中 1,110 口 を 出 資 しており その 出 資 割 合 が30.8%であるこ とから B 社 が 同 族 社 員 と 評 価 されるのに 対 し 原 告 らが 本 件 贈 与 により 贈 与 を 受 けた 本 件 出 資 はあわせて490 口 で その 出 資 割 合 は13.6%であり また 原 告 らは 同 族 社 員 以 外 の 社 員 に 当 たることとなる したがって 評 価 基 本 通 達 の 定 めによれば 原 告 らが 本 件 贈 与 により 得 た 本 件 出 資 の 価 額 の 評 価 は 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 配 当 還 元 方 式 によるべきこととなる (3) 次 に 本 件 出 資 に 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 配 当 還 元 方 式 がどのように 適 用 されるかにつ

いて 検 討 する ア 本 件 贈 与 がされた 平 成 5 年 分 の 贈 与 税 の 計 算 に 際 しての 本 件 贈 与 に 係 る 本 件 出 資 の 価 額 の 評 価 は B 社 の 出 資 割 合 が30%を 超 えて 同 族 社 員 と 評 価 され 一 方 原 告 らの 出 資 割 合 は13.6%であり また 原 告 らはB 社 の 同 族 関 係 者 に 当 たらないことから 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 配 当 還 元 方 式 によるべきこととなる そして 出 資 1 口 当 たりの 資 本 の 額 が1 万 円 とされ A 社 による 配 当 が 行 われていないことから 配 当 還 元 方 式 によった 場 合 の 本 件 出 資 の 価 額 は1 口 当 たり5,000 円 となる イ 本 件 の 事 実 関 係 を 前 提 とすると 本 件 出 資 は 配 当 還 元 方 式 が 適 用 されるように 出 資 割 合 を 調 整 した 上 本 件 基 本 通 達 188-2が1 口 当 たりの 資 本 金 の 額 を 基 準 に 評 価 する 旨 定 めていることを 利 用 して 本 件 出 資 に 係 る 引 受 金 額 のうち1 口 当 たり1 万 円 のみを 資 本 金 に 組 み 入 れ 残 り99 万 円 は 資 本 準 備 金 として 全 額 資 本 金 に 組 み 入 れた 場 合 の100 分 の1の 評 価 額 になるように 設 定 することによ り 極 めて 低 額 の 税 金 の 負 担 で これを 子 である 原 告 甲 や 孫 であり 養 子 である 原 告 乙 に 贈 与 するこ とを 目 的 としてされたものと 認 められるところ このような1 対 99の 割 合 を 持 って 舌 資 本 金 と 資 本 準 備 金 への 振 り 分 けは 何 ら 合 理 性 を 有 しないものであり 専 ら 本 件 出 資 の 評 価 額 を 低 廉 なものとす るための 方 策 に 過 ぎないものといわざるを 得 ない 以 上 によれば 本 件 のように 専 ら 本 件 出 資 の 評 価 額 を 低 廉 なものとするための 方 策 として1 対 9 9の 割 合 をもって 資 本 金 と 資 本 準 備 金 への 振 り 分 けをしているような 場 合 にまで 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 配 当 還 元 方 式 を 適 用 して 本 件 出 資 の 価 額 を 評 価 することは 実 質 的 な 租 税 負 担 の 公 平 を 著 しく 害 することが 明 らかであるというべきであるから 上 記 評 価 方 法 によらないことが 正 当 と 是 認 される 特 別 の 事 情 が 存 するものといえる したがって 本 件 出 資 については 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 配 当 還 元 方 式 を 形 式 的 に 適 用 す ることなく 他 の 合 理 的 な 評 価 方 法 により 評 価 すべきものと 解 するのが 相 当 である (4) 本 件 出 資 の 価 額 の 評 価 ア (ア) 被 告 税 務 署 長 は 出 資 は 会 社 資 産 に 対 する 割 合 的 持 分 としての 性 格 を 有 し 会 社 の 所 有 す る 総 資 産 価 値 の 割 合 的 支 配 権 を 表 象 したものであり 社 員 は 出 資 を 保 有 することによって 会 社 財 産 を 間 接 的 に 保 有 するものであるから 純 資 産 価 額 方 式 によるべきであると 主 張 するが 本 件 出 資 について 純 資 産 価 額 方 式 によって 評 価 した 場 合 その 価 額 が 客 観 的 な 交 換 価 値 すなわち 不 特 定 多 数 の 当 事 者 間 で 自 由 な 取 引 が 行 われる 場 台 に 通 常 成 立 すると 認 められる 価 額 と 認 められるか 否 か を 吟 味 する 必 要 がある そして 評 価 基 本 通 達 は 小 会 社 については その 事 業 規 模 や 経 営 の 実 態 からみて 個 人 企 業 に 類 似 するものであり これを 株 式 の 実 態 からみても 株 主 が 所 有 する 株 式 を 通 じて 会 社 財 産 を 完 全 支 配 しているところから 個 人 事 業 者 が 自 らその 財 産 を 所 有 している 場 合 と 実 質 的 に 変 わりがないこ とにかんがみ 小 会 社 の 株 式 が 会 社 財 産 に 対 する 持 分 を 表 現 することに 着 目 して 純 資 産 価 額 方 式 を 原 則 的 評 価 方 法 とし 一 方 事 業 経 営 への 影 響 の 少 ない 同 族 株 主 の 一 部 及 び 従 業 員 株 主 などのよ うな 少 数 株 主 が 取 得 した 株 式 については これらの 株 主 は 単 に 配 当 を 期 待 するにとどまるという 実 質 をも 考 慮 して 同 族 株 主 以 外 の 株 主 等 が 取 得 した 株 式 の 価 額 の 特 例 的 評 価 方 法 として 配 当 還 元 方 式 によるべきものとしているところであり かかる 評 価 は 合 理 的 である (イ)そこで 本 件 出 資 について 戊 ないし 原 告 らにおいて A 社 に 対 する 支 配 権 を 有 していたも のと 認 められるか 否 か 検 討 する A 社 この 点 戊 が 取 得 した 本 件 出 資 の 口 数 は490 口 であり その 出 資 割 合 は 本 件 贈 与 時 点 におい ては 13.6%に 過 ぎないし また A 社 の 設 立 やその 後 の 事 業 運 営 の 経 緯 となる 事 実 等 をみても 戊 がA 社 の 設 立 やその 後 の 事 業 運 営 に 積 極 的 に 関 わっているものとは 認 められず また 原 告 らが

経 営 を 支 配 しているという 事 実 を 認 定 することはできない A 社 が 預 貯 金 公 社 債 のようなリスクの 少 ない 商 品 で 運 用 しているなら 出 資 金 とほぼ 同 額 くら いで 本 件 出 資 を 買 い 戻 す 約 束 をすることが 可 能 であろうが A 社 の 地 下 げ 事 業 は 預 貯 金 公 社 債 等 への 投 資 とは 異 なり 安 全 確 実 でも 換 金 容 易 でもない 資 産 ( 借 地 権 の 底 地 )に 投 資 するものであ るから 出 資 金 とほぼ 同 額 くらいで 本 件 出 資 を 買 い 戻 すという 約 束 は 不 合 理 であって 明 確 な 裏 付 資 料 なしに 認 定 し 得 るものではないのである 以 上 から 本 件 出 資 について 戊 ないし 戊 から 本 件 出 資 の 贈 与 を 受 けた 原 告 らにおいて A 社 に 対 する 支 配 権 を 有 していたものと 認 めることはできないしたがって 本 件 出 資 の 価 額 について 被 告 税 務 署 長 が 主 張 する 純 資 産 価 額 方 式 により 評 価 することが 相 当 であるとは 言 い 難 い イ この 点 については 上 記 認 定 のように 戊 ないし 戊 から 本 件 出 資 の 贈 与 を 受 けた 原 告 らにおい て A 社 に 対 する 支 配 権 を 有 するものではなく また A 社 からの 本 件 出 資 の 払 込 金 額 相 当 額 の 回 収 を 期 待 していたとはいえ 同 回 収 が 確 実 なものとして 約 束 されていたとはいえないことにかんが みれば 本 件 出 資 の 時 価 すなわち 客 観 的 交 換 価 値 としては 結 局 本 件 出 資 に 対 する 配 当 を 期 待 する 限 度 に 止 まるものと 解 さざるを 得 ない したがって 本 件 出 資 の 客 観 的 な 交 換 価 値 を 把 握 することは 非 常 に 困 難 なものといわざるを 得 な いが 評 価 基 本 通 達 188-2の 定 める 配 当 還 元 方 式 の 考 え 方 そのものは 優 れて 合 理 的 なものであるこ とに 照 らせば 本 件 出 資 を 評 価 するについても 上 記 配 当 還 元 方 式 の 考 え 方 を 参 酌 して 評 価 するの が 客 観 的 な 交 換 価 値 の 把 握 方 法 として 相 当 であると 解 される ウ もっとも 本 件 において 専 ら 本 件 出 資 の 評 価 額 を 低 廉 なものとするための 方 策 として1 対 9 9の 割 合 をもって 資 本 金 と 資 本 準 備 金 への 振 り 分 けをしており 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 配 当 還 元 方 式 を 適 用 して 本 件 出 資 の 価 額 を 評 価 することが 実 質 的 な 租 税 負 担 の 公 平 を 著 しく 害 すること が 明 らかであって 上 記 評 価 方 法 によらないことが 正 当 と 是 認 される 特 別 の 事 情 が 存 するものとい える この 場 合 イ 記 載 のとおり 評 価 基 本 通 達 188-2の 定 める 配 当 還 元 方 式 の 考 え 方 自 体 には 合 理 性 が あり 上 記 資 本 金 と 資 本 準 備 金 への1 対 99の 振 り 分 けが 合 理 性 の 存 しない 租 税 回 避 目 的 のものと 認 め られることにかんがみ また 本 件 事 業 が 順 調 に 推 移 した 場 合 には 多 額 の 配 当 あるいは 状 況 に 応 じ て 払 込 金 額 相 当 額 の 回 収 自 体 も 可 能 となることをも 踏 まえると 本 件 出 資 に 係 る 払 込 金 額 (1 口 当 たり100 万 円 ) 全 額 を 資 本 金 に 当 たるものとした 上 で 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 方 式 に 準 じて 本 件 出 資 の 価 額 の 評 価 をするのが 相 当 と 解 される この 点 原 告 らは 特 に 非 上 場 会 社 においては 時 価 発 行 の 場 合 発 行 価 格 の2 分 の1ぎりぎり まで 資 本 準 備 金 に 組 み 入 れるのが 実 態 であるとして 本 件 出 資 の 評 価 においても 1 口 当 たり100 万 円 の 払 込 金 額 のうち 半 額 の50 万 円 を 資 本 金 に 当 たるものとした 上 で 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 め る 方 式 に 準 じて 本 件 出 資 の 価 額 の 評 価 をすべき 旨 主 張 する しかしながら A 社 に 対 する 出 資 については 原 告 ら 主 張 にように1 口 当 たり100 万 円 の 払 込 金 額 のうち 半 額 の50 万 円 を 資 本 金 に 充 て 残 り50 万 円 を 資 本 準 備 金 に 充 てるといった 取 扱 を 行 っていな いのであるから 本 件 出 資 の 価 額 の 評 価 に 際 し 1 口 当 たり100 万 円 の 払 込 金 額 のうち 半 額 の50 万 円 を 資 本 金 に 当 たるものとして 評 価 することが 相 当 であるとは 認 められない (5) 以 上 から 評 価 基 本 通 達 188-2に 定 める 方 式 に 準 じ 出 資 1 口 当 たりの 資 本 金 額 を 払 込 金 額 全 額 の100 万 円 とした 上 で 本 件 出 資 の 価 額 を 評 価 するのが 相 当 であるところ これによれば 本 件 出 資 の 価 額 は1 口 当 たり50 万 円 と 評 価 すべきこととなる < 控 訴 審 判 決 >

(1) 財 産 評 価 基 本 通 達 に 定 められた 評 価 方 法 を 画 一 的 に 適 用 するという 形 式 的 平 等 を 貫 くこと によって かえって 実 質 的 な 租 税 負 担 の 公 平 を 著 しく 害 することが 明 らかな 場 合 など 上 記 評 価 方 法 によらないことが 正 当 と 是 認 される 特 別 の 事 情 がある 場 合 には 別 の 合 理 的 な 評 価 方 法 によ ることが 許 されるものと 解 すべきである (2) 他 の 判 決 要 旨 は 一 審 と 同 様 の 趣 旨 である( 省 略 ) 4 争 点 (4)(5)について ( 省 略 ) 第 4 研 究 Ⅰ 錯 誤 無 効 に 基 因 して 経 済 的 利 得 を 返 還 した 後 に 行 われた 更 正 処 分 の 効 力 はじめに 原 告 らは 本 件 出 資 を 配 当 還 元 方 式 により 1 口 5,000 円 と 評 価 して 贈 与 税 申 告 を 行 っていたが 先 行 した 別 件 のI 事 案 の 相 続 税 の 更 正 処 分 ( 平 成 8 年 )において J 社 の 出 資 の 評 価 額 が5,000 円 から 50 万 円 に 評 価 された( 修 正 配 当 還 元 方 式 )ことから 本 件 出 資 の 評 価 も 同 様 のリスクがあると 考 え て 本 件 贈 与 を 解 除 して 名 義 を 贈 与 者 の 父 に 変 更 し 相 続 税 申 告 において 相 続 財 産 とされている 等 の 事 実 が 見 られる しかし 合 意 解 除 の 書 面 は 戊 の 生 前 の6 年 6 月 19 日 付 けとなっている 等 が 指 摘 されている 等 遡 及 的 に 作 成 された 文 書 のようでもある しかし ここでの 判 例 研 究 のテーマで ある 錯 誤 無 効 又 は 合 意 解 除 後 の 更 正 処 分 の 効 力 という 論 点 について 考 察 を 加 えるので かかる 事 実 認 定 に 関 する 問 題 については 言 及 せず 錯 誤 無 効 又 は 合 意 解 除 による 原 状 回 復 後 の 相 続 税 申 告 に 対 する 更 正 処 分 の 効 力 という 論 点 に 絞 って 考 察 することとする 1. 納 税 義 務 成 立 後 の 後 発 的 事 由 による 課 税 要 件 事 実 の 消 滅 と 納 税 義 務 の 去 就 国 税 通 則 法 15 条 は 納 税 者 の 納 税 義 務 の 成 立 につき 所 得 税 は 暦 年 終 了 時 法 人 税 は 事 業 年 度 終 了 の 時 また 相 続 税 及 び 贈 与 税 については 相 続 又 は 贈 与 により 財 産 を 取 得 した 時 に 納 税 義 務 が 成 立 すると 規 定 している かかる 納 税 義 務 の 成 立 を 抽 象 的 納 税 義 務 の 成 立 という この 抽 象 的 納 税 義 務 は 申 告 納 税 方 式 を 採 用 する 前 記 各 税 にあっては 原 則 として納 税 者 の 申 告 により 具 体 的 納 税 義 務 として 確 定 し 無 申 告 又 は 申 告 書 に 記 載 された 課 税 標 準 や 税 額 が 法 律 の 規 定 に 従 っていなかった 場 合 その 他 その 税 額 が 税 務 署 長 の 調 査 したところと 異 なる 場 合 に 限 り 税 務 署 長 の 処 分 により 確 定 することとされている( 同 法 161 一 ) この 納 税 申 告 ( 確 定 申 告 )は 抽 象 的 納 税 義 務 の 成 立 時 において 発 生 している 具 体 的 事 実 に 基 づいて 行 われるものであり したがって 国 税 通 則 法 15 条 納 税 義 務 の 成 立 する 時 までに 発 生 していない 事 実 は 当 該 申 告 に 反 映 することは できないし また 抽 象 的 納 税 義 務 の 成 立 時 以 後 確 定 申 告 前 に 発 生 した 事 実 であっても その 発 生 した 事 実 の 効 果 が 抽 象 的 納 税 義 務 の 成 立 時 以 前 に 遡 及 する 効 力 を 有 しない 場 合 には 抽 象 的 納 税 義 務 に 影 響 を 与 えないから 確 定 申 告 に 反 映 させることはできない 一 方 抽 象 的 納 税 義 務 の 成 立 時 ( 所 得 税 では 暦 年 終 了 時 ) 前 に 発 生 した 事 実 が 遡 及 効 を 有 する 場 合 には 確 定 申 告 に 反 映 させる 必 要 があるし また 当 該 抽 象 的 納 税 義 務 の 成 立 時 以 後 に 発 生 した 事 実 であっても その 事 実 の 遡 及 効 により すでに 成 立 した 抽 象 的 納 税 義 務 を 消 滅 又 は 変 更 させる 場 合 には その 消 滅 変 更 後 の 事 実 を 前 提 とした 確 定 申 告 や 更 正 処 分 等 によって 具 体 的 納 税 義 務 が 確 定 するのである すなわち 具 体 的 納 税 義 務 が 確 定 する 前 ( 申 告 又 は 更 正 等 が 行 われる 前 )に 遡 及 効 を 有 する 法 的 事 実 によって 抽 象 的 納 税 義 務 が 消 滅 変 更 された 場 合 には 当 該 消 滅 変 更 前 の 事 実 に 基 づいて 申

告 することも また 更 正 等 の 対 象 とすることもできないということである つまり 事 後 的 であ るとしても 法 的 効 果 として 抽 象 的 納 税 義 務 が 消 滅 又 は 変 更 されているにもかかわらず かかる 事 実 を 捨 象 して 消 滅 変 更 されている 抽 象 的 納 税 義 務 に 基 づいて 申 告 又 は 課 税 処 分 を 行 うことは 所 得 ( 財 産 )なきところに 課 税 する ということであり 許 されない このことは 租 税 法 におけ る 当 然 の 法 解 釈 である 4 また 法 律 行 為 が 無 効 であれば そもそも 法 的 効 力 が 発 生 していないから 課 税 要 件 事 実 は 存 在 し ないことになるが 無 効 の 行 為 であっても その 行 為 に 基 因 して 経 済 的 成 果 を 得 ていれば その 経 済 的 成 果 が 課 税 要 件 を 充 足 していることになるから 課 税 関 係 が 発 生 することになる しかして その 経 済 的 成 果 が 無 効 に 基 因 して 失 われた 場 合 には 上 記 と 同 様 に 解 することになる( 通 則 法 71 二 参 照 ) 2. 本 件 贈 与 契 約 の 錯 誤 無 効 に 関 する 主 張 を 排 斥 した 本 判 決 の 論 理 (1) 動 機 の 錯 誤 と 無 効 本 件 贈 与 契 約 は 本 件 出 資 の 贈 与 税 の 評 価 額 が 配 当 還 元 価 額 であれば 受 贈 者 も 贈 与 税 を 負 担 で きるという 認 識 の 下 で 行 われたものであり しかして 本 件 贈 与 は 錯 誤 による 契 約 である そして かかる 錯 誤 は 動 機 の 錯 誤 であるから 一 般 的 に 無 効 ではないものの その 動 機 が 相 手 方 に 表 示 さ れている 本 件 贈 与 契 約 の 場 合 には 当 該 契 約 は 無 効 というのが 現 在 の 民 法 上 の 通 説 である 5 (2) 本 判 決 の 錯 誤 無 効 と 納 税 義 務 に 関 する 本 判 決 の 一 般 的 解 釈 ~ 課 税 要 件 事 実 消 失 後 の 更 正 処 分 の 是 非 ~ 本 判 決 は この 点 に 関 して 一 般 論 として 申 告 納 税 方 式 の 下 で 安 易 に 納 税 義 務 の 発 生 の 原 因 となる 法 律 行 為 の 錯 誤 無 効 を 認 めて 納 税 義 務 を 免 れさせることは 納 税 者 間 の 公 平 を 害 すると 共 に 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 につながるものといえる ( 要 旨 ) と 判 示 し 6 当 初 予 定 していたものよりも 重 い 納 税 義 務 が 生 じることが 判 明 したとしても その 法 定.. 申 告 期 間 を 経 過 した 後 に かかる 課 税 負 担 の 錯 誤 が 上 記 法 律 行 為 の 動 機 の 錯 誤 であるとして 同 法... 律 行 為 が 無 効 であることを 主 張 することは 許 されない.ものと 解 するのが 相 当 である と 判 示 してい る かかる 判 決 の 一 般 論 の 判 示 に 関 しての 意 図 するところは 必 ずしも 明 確 ではない 前 段 の 錯 誤 無 効 は 動 機 の 錯 誤 だけではなく 要 素 の 錯 誤 も 含 まれるように 読 めるが 後 段 は 動 機 の 錯 誤 と していることから 前 段 の 錯 誤 無 効 は 動 機 の 錯 誤 に 限 定 しているようにも 読 める しかし いずれにしても 無 効 という 概 念 は 私 法 上 の 借 用 概 念 であるから 原 則 として 私 法 上 の 概 念 と 同 様 の 意 味 内 容 として 解 釈 すべきであるから 例 えば 通 則 法 71 条 二 号 の 経 済 的 成 果 がそ の 行 為 の 無 効 であることに 基 因 して 失 われた という 場 合 の 無 効 は 民 法 上 の 無 効 概 念 が 前 提 で なければならない そうであれば 民 法 上 の 通 説 である 錯 誤 の 動 機 が 行 為 の 相 手 方 に 表 示 されてい る 場 合 には その 動 機 の 錯 誤 による 法 律 行 為 は 無 効 であるから 同 号 の 期 間 制 限 の 特 例 に 規 定 する 経 済 的 成 果 が ( 動 機 の 錯 誤 が 表 明 されている 法 律 行 為 の) 無 効 であることに 基 因 して 失 わ 4 この 点 の 解 釈 については 異 なる 判 決 もあるが 最 高 裁 により 修 正 が 図 られている 後 述 参 照 5 野 村 豊 弘 動 機 の 錯 誤 ( 民 法 判 例 百 選 別 冊 ジュリスト NO.136 44 頁 参 照 6 この 判 決 の 解 釈 は 租 税 負 担 の 錯 誤 以 外 の 錯 誤 に 限 定 しているのではなく 一 般 的 な 無 効 について 論 じているもので あり また 納 税 者 が 自 ら 税 負 担 の 錯 誤 に 気 付 いた 場 合 も 同 様 に 解 しているから 税 務 調 査 で 指 摘 された 場 合 等 に 限 定 したものではない ところが 後 述 するように 本 判 決 は その 後 に 続 く 判 示 では 税 負 担 が 過 重 となる 場 合 の 主 張 制 限 を 指 摘 していることから 前 段 の 一 般 論 の 判 示 は 税 負 担 の 過 重 となる 場 合 の 錯 誤 に 限 定 しているとも 解 され るが いずれにしても 判 決 の 解 釈 論 は 粗 雑 の 誹 りを 免 れない

れた 場 合 には 租 税 実 体 法 における 課 税 要 件 事 実 が 消 滅 したことになるから すでに 申 告 し 納 税 義 務 が 確 定 している 場 合 には その 経 済 的 成 果 の 喪 失 の 時 から3 年 間 の 更 正 の 期 間 制 限 の 特 例 が 適 用 されて 減 額 更 正 の 対 象 となるというのが 同 条 号 の 法 解 釈 である この 場 合 この 経 済 的 成 果 に ついて 申 告 している 納 税 者 の 場 合 には 各 税 法 ( 例 えば 所 得 税 法 152 条 同 令 274 条 )の 規 定 により 更 正 の 請 求 が 認 められるが 更 正 の 請 求 が 行 われていない 場 合 であっても 前 記 更 正 の 期 間 制 限 の 範 囲 内 での 職 権 減 額 更 正 が 可 能 であることはいうまでもない また その 法 律 行 為 により 経 済 的 成 果 を 得 ていながら その 部 分 又 は 他 の 所 得 も 含 めて 申 告 して いなかった 場 合 には 抽 象 的 納 税 義 務 は 発 生 しているが 具 体 的 納 税 義 務 が 未 確 定 ということになり そして その 後 に 当 該 経 済 的 成 果 が 法 律 行 為 の 無 効 であることに 基 因 して 失 われた 場 合 には 抽 象 的 納 税 義 務 は 消 滅 し 具 体 的 納 税 義 務 は 確 定 する 機 会 を 喪 失 して 課 税 関 係 は 終 結 することになる したがって その 無 効 行 為 により 失 われた 経 済 的 成 果 に 対 して具 体 的 納 税 義 務 の 確 定 行 為 である 更 正 処 分 を 行 うことは 所 得 なきところに 課 税 する また 財 産 なきところに 課 税 する という ことであり 租 税 法 の 解 釈 として 許 されないことである 例 えば 利 息 制 限 超 過 利 息 を 取 得 していた 納 税 者 が その 部 分 を 無 効 として 借 主 からの 返 還 請 求 に 応 じて 返 還 した 場 合 についてみると その 超 過 利 息 を 含 めた 利 息 収 入 ( 雑 所 得 )を 個 人 が 申 告 せ ず 更 正 決 定 も 行 われていなかった 場 合 つまり 具 体 的 納 税 義 務 が 確 定 していない 段 階 で そ の 返 還 が 行 われた 場 合 に その 後 に 行 われた 税 務 調 査 において すでに 返 還 した 制 限 超 過 利 息 を 雑 所 得 として 更 正 又 は 決 定 処 分 を 実 施 することはできないということである すなわち 獲 得 してい た 経 済 的 成 果 が 無 効 に 基 因 して 喪 失 し 課 税 物 件 が 存 在 しないことになったのであるから 課 税 関 係 が 発 生 しないことは むしろ 当 然 であり 仮 に かかる 無 効 による 所 得 等 の 消 滅 を 認 めずに 現 実 の 経 済 的 実 体 ( 実 質 )と 異 なる 課 税 を 行 うことは 許 されない そして このことは 判 決 がいう 納 税 者 間 の 公 平 を 害 し 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいて は 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 につながる ということにならないことは 言 うまでもない なぜならば 法 律 行 為 が 私 法 上 無 効 により その 無 効 に 基 因 した 経 済 的 成 果 が 喪 失 して 課 税 要 件 事 実 が 消 滅 した 以 上 それは 租 税 実 体 法 の 課 税 要 件 を 充 足 せず 納 税 義 務 が 消 滅 し 租 税 負 担 能 力 を 喪 失 したものであ るから 課 税 要 件 を 充 足 している 者 との 間 において 納 税 者 間 の 公 平 を 害 することなどありえないか らである それは 租 税 負 担 が 過 重 となることが 判 明 したために 当 初 の 贈 与 が 表 示 された 動 機 の 錯 誤 により 無 効 と 評 価 される 場 合 も 同 様 である そして 仮 に 税 負 担 の 錯 誤 無 効 の 場 合 には かかる 解 釈 が 採 用 できないというのであれば 私 法 の 借 用 概 念 である 無 効 につき 税 負 担 の 錯 誤 無 効 を 除 くという 特 別 の 規 定 を 法 定 する 必 要 があると 解 すべきことはいうまでもないことである また 具 体 的 納 税 義 務 が 確 定 する 以 前 に 無 効 な 法 律 行 為 に 基 因 して 経 済 的 成 果 が 喪 失 したこと により 課 税 要 件 事 実 が 消 滅 した 場 合 には そもそも 租 税 法 律 関 係 は 発 生 しておらず 発 生 する 余 地 もないのであるから 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 に することはないし 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 にもつ ながらない 本 判 決 のいうように 納 税 者 間 の 公 平 を 害 し 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にし ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 につながる ということが 想 定 されるとすれば 納 税 者 がある 法 律 行 為 により 納 税 申 告 をして 具 体 的 納 税 義 務 が 確 定 している 場 合 ( 課 税 庁 の 更 正 決 定 を 含 む )に あらゆる 錯 誤 無 効 を 容 認 するとすれば いったん 確 定 した 租 税 法 律 関 係 が 不 安 定 になるということがいえるかもしれな い しかし 所 得 税 法 は 明 文 で 無 効 に 基 因 して 経 済 的 成 果 が 失 われた 場 合 の 更 正 の 請 求 を 認 め し かも その 無 効 の 内 容 を 限 定 して 規 定 しているわけではないから 無 効 の 内 容 に 応 じて 更 正 の 請 求 を 認 めないという 解 釈 は 明 文 の 規 定 に 違 背 した 違 法 な 解 釈 というべきであり 許 されないことで

ある したがって その 無 効 原 因 が 動 機 の 錯 誤 であれ また その 動 機 が 租 税 負 担 の 錯 誤 に 基 因 したも のであれ 私 法 上 その 錯 誤 が 無 効 と 認 定 される 場 合 には 具 体 的 納 税 義 務 の 未 確 定 な 場 合 はもち ろん 納 税 申 告 により 納 税 義 務 が 確 定 している 場 合 でも 所 得 税 の 事 業 所 得 等 及 び 法 人 税 法 のよう に 継 続 的 事 業 等 に 係 る 場 合 を 別 として 7 課 税 要 件 事 実 の 消 滅 として 更 正 の 請 求 により 又 は 職 権 に より 減 額 更 正 することが 必 要 となる このような 場 合 において 租 税 法 律 関 係 の 早 期 の 安 定 性 を 図 るために 法 は 更 正 の 期 間 制 限 ( 通 則 法 71 3 年 改 正 5 年 )を 措 定 しているところである 本 判 決 は 上 記 の 判 示 に 続 いて... 法 律 行 為 の 際 に 予 定 されていたものよりも 重 い 納 税 義 務 が 生 じることが 判 明 したとしても その 法 定 申 告 期 間 を 経 過 した 後 に かかる 課 税 負 担 の 錯 誤 が 上 記 法... 律 行 為 の 動 機 の 錯 誤 であるとして 同 法 律 行 為 が 無 効 であることを 主 張 することは 許 されない.もの と 解 するのが 相 当 である とも 判 示 している 8 ここでの 論 点 は 1 当 初 予 定 していた 納 税 義 務 よりも 過 重 であることが 判 明 し 2その 法 定 申 告 期 限 後 において 3 法 律 行 為 を 無 効 として 主 張 することは 許 されない と 認 定 したことである し かしながら かかる 判 示 の 前 提 が すでに 納 税 申 告 等 により 具 体 的 納 税 義 務 が 確 定 している 場 合 及 び 納 税 申 告 がなされていないために 納 税 義 務 が 確 定 していない 場 合 の 両 方 を 予 定 しているの かどうかが 明 らかではない 前 者 の 場 合 も 予 定 した 判 示 であれば それは 前 述 したように 無 効 に 基 因 した 経 済 的 成 果 の 消 失 による 更 正 の 請 求 ( 所 法 152 所 令 274)が 認 められている 以 上 採 用 でき ない 解 釈 である これと 異 なる 解 釈 を 採 用 したのが 本 判 決 であるとすれば 借 用 概 念 である 無 効 を 私 法 概 念 のそれとは 別 異 に 解 するということであり 借 用 概 念 の 解 釈 上 疑 義 があるし また か かる 解 釈 を 現 行 法 の 解 釈 として 採 用 することは 租 税 法 律 主 義 に 違 背 し 許 されない 本 判 決 は 後 者 の 具 体 的 納 税 義 務 が 未 確 定 の 場 合 に 限 定 した 判 示 であると 推 察 されるが その 場 合 には 何 故 に 申 告 の 法 定 期 限 という 日 の 前 後 で 納 税 義 務 に 異 動 が 生 ずるのかという 点 については 何 一 つ 論 理 的 に 説 明 されていない なかんずく この 判 示 の 疑 問 は 2その 法 定 申 告 期 限 後 にお いて 3 法 律 行 為 を 無 効 として 主 張 することは 許 されない という 趣 旨 が (a) 法 定 申 告 期 限 後 の 課 税 上 又 は 訴 訟 上 の 主 張 制 限 を 意 味 するに 止 まるのか また (b) 本 件 のように 租 税 負 担 の 錯 誤 無 効 に 基 因 して 原 状 に 復 したとしても( 課 税 要 件 の 所 得 又 は 財 産 の 消 滅 返 還 ) 現 行 実 定 法 にお ける 解 釈 として 当 該 年 分 の 所 得 又 は 贈 与 による 財 産 の 取 得 という 課 税 要 件 事 実 ( 課 税 標 準 ) は 消 滅 していないと 解 し その 後 の 具 体 的 納 税 義 務 を 確 定 する 更 正 が 可 能 である と 解 しているの かが 不 明 であるという 点 である この 点 は 判 示 が 法 律 行 為 を 無 効 として 主 張 することは 許 されない としていることから (a) の 単 なる 主 張 制 限 ともとれるが そうとすれば 前 述 したよう 私 法 上 の 錯 誤 無 効 に 該 当 すれば 動 機 が 租 税 負 担 の 錯 誤 による 無 効 であるとしても 法 定 申 告 期 限 後 の 更 正 の 請 求 を 認 め また 更 正 の 期 間 制 限 の 特 例 も 認 めていることと 矛 盾 することになる 加 えて 本 件 のような 錯 誤 無 効 による 所 得 等 の 消 滅 の 租 税 法 の 適 用 という 問 題 は 事 実 関 係 の 主 張 ではなく 法 律 解 釈 による 条 文 の 適 用 の 問 題 であるから その 主 張 制 限 が 法 的 にいかなる 意 味 を 有 しているのかということも 不 分 明 である 次 に (b)のように 実 体 法 の 解 釈 として 本 件 の 租 税 負 担 の 錯 誤 による 贈 与 が 無 効 であり そ 7 継 続 事 業 の 所 得 の 消 滅 の 場 合 には その 消 滅 した 年 分 又 は 事 業 年 度 の 必 要 経 費 又 は 損 金 と 控 除 により 是 正 されるこ ととされている( 所 法 152 条 所 令 274 条 参 照 ) 8 この 点 については 金 子 宏 租 税 法 第 16 版 有 斐 閣 (2011 年 )も 同 様 のことを 述 べているが その 法 的 論 拠 は 明 確 ではない

の 経 済 的 成 果 を 喪 失 したとしても 課 税 要 件 事 実 は 消 滅 しないという 解 釈 は もとより ありえな い 解 釈 である すなわち 具 体 的 納 税 義 務 の 確 定 前 に 無 効 に 基 因 して 課 税 要 件 が 消 滅 し 抽 象 的 納 税 義 務 は 遡 及 的 に 発 生 していないことになった 以 上 それを 本 件 更 正 のように 具 体 的 納 税 義 務 とし て 確 定 させる 理 論 的 根 拠 を 説 明 することができない 9 また (b)の 解 釈 は そもそも 無 効 に 基 因 して 経 済 的 成 果 が 失 われたことから 更 正 の 請 求 が 認 められ また 更 正 の 期 間 制 限 の 特 例 が 認 め られていることと 矛 盾 することになり 当 を 得 ない 解 釈 である (3) 本 件 贈 与 の 無 効 と 本 件 更 正 処 分 の 効 力 本 判 決 は 本 件 贈 与 契 約 が 錯 誤 無 効 であることを 前 提 とし その 上 納 税 者 の 錯 誤 無 効 の 主 張 を 制 限 しているように 思 われる その 点 についての 疑 問 と 問 題 点 は 前 述 したとおりであるが このこ とは 本 判 決 が 理 論 的 に 不 十 分 であり そして そのことを 補 充 する 理 論 的 根 拠 が 見 出 せない 以 上 本 判 決 のこの 点 に 関 する 判 示 は 誤 りといわざるを 得 ない そこで 次 に 無 効 により 所 得 等 の 課 税 要 件 事 実 が 消 滅 した 後 に 行 われた 本 件 更 正 処 分 の 効 力 について 結 論 的 に 考 察 しておく 贈 与 者 の 父 戊 と 原 告 らの 本 件 出 資 の 贈 与 契 約 は 当 事 者 が1 口 の 出 資 の 価 額 が5,000 円 と 言 う 前 提 で 締 結 されたものであるから 当 該 契 約 は 動 機 の 錯 誤 により 無 効 であり その 無 効 に 基 因 して 本 件 出 資 は 贈 与 者 の 戊 に 返 還 され 名 義 も 変 更 され 本 件 贈 与 前 の 原 状 に 回 復 したことになるから 贈 与 により 取 得 した 財 産 という 贈 与 税 の 課 税 要 件 事 実 は 消 滅 したことになる したがって 本 件 の 場 合 には 原 告 らの 贈 与 税 の 確 定 申 告 により 具 体 的 納 税 義 務 として 確 定 した 1 口 5,000 円 の 評 価 での 贈 与 税 額 についての 更 正 の 請 求 も 可 能 であるともいえよう 10 また 贈 与 によ り 取 得 した 財 産 の 返 還 後 ( 経 済 的 成 果 の 消 失 後 )に 更 正 処 分 することができないことは 前 述 したと おりである 11 贈 与 契 約 の 無 効 に 基 因 として その 経 済 的 成 果 ( 贈 与 財 産 の 取 得 )が 返 還 されたことに より 一 旦 成 立 していた 贈 与 税 の 抽 象 的 納 税 義 務 が 消 滅 した 以 上 具 体 的 納 税 義 務 の 確 定 は 不 可 能 であるということである かかる 解 釈 は その 経 済 的 成 果 の 返 還 による 更 正 の 請 求 が 許 されるか 否 かという 手 続 きの 問 題 と は 関 わりなく 実 体 法 上 の 解 釈 から 導 かれる 論 理 であることに 留 意 すべきである つまり 更 正 の 請 求 は 具 体 的 納 税 義 務 の 確 定 後 に 生 じた 課 税 要 件 事 実 の 消 滅 又 は 減 少 による 納 税 義 務 の 是 正 に 関 する 手 続 きであり しかして ここでの 議 論 のように 具 体 的 納 税 義 務 の 確 定 前 の 課 税 要 件 事 実 の 消 滅 又 は 減 少 の 事 実 は 更 正 の 請 求 とは 無 関 係 な 租 税 実 体 法 の 所 得 等 の 消 滅 変 更 の 要 因 であるとい うことである なお 敷 衍 するに 前 述 した 国 税 通 則 法 71 条 ( 更 正 の 期 間 制 限 の 特 例 )2 号 の 無 効 に 基 因 した 経 済 的 成 果 の 喪 失 による3 年 ( 改 正 後 5 年 )の 更 正 の 期 間 制 限 の 特 例 は 国 税 の 一 般 通 則 として 相 続 税 贈 与 税 に 適 用 されることはいうまでもない かくして 本 件 贈 与 の 場 合 も 無 効 であることに 起 因 して 経 済 的 成 果 ( 贈 与 により 取 得 した 財 産 )が 失 われているから この 特 例 対 象 となる しかも この 規 定 には 後 発 的 事 由 の 更 正 の 請 求 手 続 きの 有 無 とは 関 わりなく 税 務 署 長 は 行 政 指 針 的 義 務 としての 減 額 更 正 義 務 を 負 担 しているということである 贈 与 により 取 得 した 経 済 的 成 果 ( 財 産 の 取 得 )が 贈 与 契 約 の 無 効 であることに 起 因 して 失 われた 9 その 意 味 で 法 定 申 告 期 限 経 過 後 の 合 意 解 除 につき 納 税 義 務 が 消 滅 しないとした 本 判 決 及 びこれと 同 趣 旨 と 思 われ る 贈 与 税 個 別 通 達 はその 理 解 を 誤 っている この 点 については 後 述 する 10 無 効 に 起 因 して 贈 与 により 取 得 した 財 産 を 返 還 した 場 合 の 更 正 の 請 求 については 相 続 税 法 には 所 得 税 法 施 行 令 274 条 のような 更 正 の 請 求 の 特 例 の 規 定 がなく また 国 税 通 則 法 23 条 2 項 でも 直 接 規 定 するところではない 後 述 するように かかる 贈 与 契 約 の 無 効 による 財 産 の 返 還 による 課 税 関 係 の 是 正 は 同 法 の 同 条 項 を 準 用 して 適 用 すべき ことが 合 理 的 である 11 更 正 が 可 能 であるのは 贈 与 財 産 の 返 還 が 再 贈 与 ( 逆 贈 与 )と 認 定 できる 事 実 関 係 がある 場 合 に 限 定 される

場 合 につき 相 続 税 法 又 は 国 税 通 則 法 に 更 正 の 請 求 に 関 する 明 文 の 規 定 を 欠 いているという 法 の 形 式 的 欠 陥 はあるが 12 上 記 の 更 正 の 期 間 制 限 に 関 する 国 税 通 則 法 の 規 定 によれば 本 件 贈 与 契 約 が 無 効 であることに 基 因 して 贈 与 財 産 の 出 資 を 贈 与 者 へ 返 還 し 課 税 要 件 事 実 が 失 われている 本 件 の 場 合 には 確 定 申 告 の 贈 与 税 額 が 減 額 更 正 の 対 象 になることは 言 うまでもない しかして 仮 に 形 式 的 解 釈 から 本 件 の 場 合 には 更 正 の 請 求 は 認 められないと 解 するとして も それは 国 税 通 則 法 又 は 相 続 税 法 において 更 正 の 請 求 が 認 められないにすぎず 相 続 税 法 に おける 租 税 実 体 規 定 の 解 釈 により 無 効 に 起 因 して 取 得 した 贈 与 財 産 が 失 われた 場 合 には 贈 与 税 の 抽 象 的 納 税 義 務 は 消 滅 しているのであるから 課 税 庁 が 当 該 贈 与 税 の 申 告 につき 更 正 処 分 をする のであれば それは 本 件 のような 増 額 更 正 ではなく 国 税 通 則 法 71 条 2 号 ( 無 効 に 起 因 した 経 済 的 利 得 の 返 還 )の 更 正 期 間 の 特 例 により 原 告 らの 贈 与 税 の 申 告 により 確 定 している 申 告 税 額 を 減 額 更 正 をすべきことが 国 税 通 則 法 の 趣 旨 である 以 上 のとおり 本 件 更 正 処 分 は 原 告 らが 父 戊 から 贈 与 により 取 得 した 本 件 出 資 を 当 該 贈 与 の 無 効 に 基 因 して 贈 与 者 に 返 還 し 贈 与 税 の 抽 象 的 納 税 義 務 が 消 滅 した 後 になされたものであるから 違 法 であり 取 消 しを 免 れないと 解 すべきである 3. 合 意 解 除 後 に 行 なわれた 本 件 更 正 処 分 の 効 力 (1) 合 意 解 除 の 実 態 以 上 のとおり 本 件 贈 与 契 約 は 無 効 であり 本 件 更 正 処 分 は 違 法 と 解 するが 百 歩 譲 って 本 件 贈 与 契 約 が 無 効 ではなく 相 続 人 の 原 告 らにより 合 意 解 除 されたという 認 定 に 立 つ 場 合 の 本 件 更 正 処 分 の 効 力 を 論 ずる なお ここでの 議 論 は 贈 与 契 約 の 無 効 に 起 因 して 契 約 の 合 意 解 除 という 法 形 式 が 採 用 され 贈 与 により 取 得 した 財 産 が 返 還 された 場 合 においても 共 通 する 議 論 であること を 付 言 しておく ところで 本 件 贈 与 は 当 該 出 資 が 配 当 還 元 価 額 により 評 価 されないのであれば 契 約 を 解 除 す るという 解 除 条 件 付 贈 与 契 約 として 評 価 することも 実 態 的 には 可 能 であろう そうであれば 戊 の 本 件 契 約 上 の 地 位 を 承 継 した 原 告 が 解 除 条 件 の 成 就 ( 課 税 庁 の 配 当 還 元 方 式 の 不 適 用 )により 約 定 解 除 権 を 行 使 して 贈 与 契 約 を 解 除 したと 評 価 できるところ かかる 場 合 には 後 発 的 事 由 の 更 正 の 請 求 が 可 能 な 場 合 であるから 以 下 での 問 題 点 を 論 ずるまでもなく その 解 除 以 後 に 行 われた 本 件 更 正 処 分 が 違 法 であることはもちろん 配 当 還 元 価 額 での 申 告 についても 更 正 の 請 求 が 認 め られたものと 思 われる 13 (2) 本 判 決 の 論 旨 とその 前 提 論 理 の 誤 謬 本 判 決 は 本 件 贈 与 が 相 続 人 間 で 合 意 解 除 されたこと 自 体 を 否 定 しているが 続 いて その 合 意 解 除 がなされたことを 前 提 として 論 を 進 めているので この 合 意 解 除 後 に 行 われた 更 正 処 分 の 効 力 について 検 討 を 加 えることとする 12 最 高 裁 昭 和 57 年 2 月 23 日 判 決 (サザツ 事 件 民 集 36 巻 2 号 215 頁 )は 青 色 申 告 承 認 取 消 処 分 が 判 決 等 で 取 り 消 され 青 色 申 告 が 復 活 した 場 合 の 繰 越 欠 損 金 の 控 除 は 納 税 者 の 更 正 の 請 求 が 許 容 されることを 前 提 とした 判 示 がな されているが このような 事 例 の 更 正 の 請 求 は 形 式 的 には 国 税 通 則 法 23 条 2 項 の 後 発 事 由 の 更 正 の 請 求 事 由 には 該 当 しないが 納 税 者 に かかる 減 額 更 正 を 要 求 する 権 利 を 付 与 すべきであるという 視 点 からの 合 理 的 な 解 釈 という べきであろう かかる 解 釈 と 同 様 に 贈 与 契 約 の 無 効 を 原 因 として 贈 与 財 産 を 返 還 して 現 状 回 復 がなされているので あれば 同 条 項 の 更 正 の 請 求 により 救 済 を 図 るべきことは 法 の 要 請 するところであると 解 される 13 このような 解 釈 に 対 して 解 除 権 ( 約 定 解 除 権 通 法 令 61 二 )には 租 税 負 担 に 関 する 解 除 条 件 は 該 当 しないとい う 解 釈 を 採 用 するのであれは 解 除 権 の 行 使 による 解 除 にも やむをえない 事 情 による 解 除 という 制 限 を 立 法 化 す るのが 先 決 である

本 判 決 は 先 に 見 た 錯 誤 無 効 の 場 合 と 同 様 の 論 旨 により 事 後 的 合 意 により 法 律 行 為 を 解 消 させ るというものであることから 1 納 税 者 間 の 公 平 を 害 すること 2 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にするこ と 3ひいては 申 告 納 税 方 式 の 破 壊 につながること と 判 示 し 法 定 申 告 期 限 後 に 合 意 解 除 したと しても その 効 果 を 主 張 して 納 税 義 務 を 免 れることは 許 されないと 判 示 している ここでも 判 決 は 幾 つかの 基 本 的 な 誤 りを 犯 している すなわち 1 納 税 申 告 等 により 具 体 的 納 税 義 務 が 確 定 している 場 合 の 合 意 解 除 と その 納 税 義 務 確 定 前 の 合 意 解 除 に 基 づく 原 状 回 復 により 課 税 要 件 事 実 が 消 滅 の 場 合 とを 混 同 して 議 論 を 展 開 していること 2 手 続 規 定 と 実 体 規 定 とを 混 同 して 議 論 を 展 開 していること 以 上 の 基 本 的 な 国 税 通 則 法 又 は 租 税 実 体 法 の 関 連 についての 理 解 に 誤 りがある 確 かに 納 税 者 が 確 定 申 告 した 後 に 当 事 者 の 合 意 解 除 により 確 定 した 納 税 義 務 が 自 由 に 変 更 で きるというのであれば 税 収 の 早 期 安 定 という 税 制 の 要 請 に 反 して 租 税 法 律 関 係 を 不 安 定 にする ということがいえようが かかる 合 意 解 除 がすべて 確 定 した 納 税 義 務 の 変 更 をもたらすものではな いことはいうまでもない 本 判 決 は この 点 の 国 税 通 則 法 の 制 度 体 系 を 理 解 していないといわざる を 得 ない 現 在 の 国 税 通 則 法 は 納 税 者 の 納 税 申 告 等 により 確 定 した 租 税 債 務 額 を 増 額 する 修 正 は 納 税 者 自 ら 行 う 修 正 申 告 ( 通 則 法 19)により 是 正 を 図 り 一 方 法 定 申 告 期 限 後 の 事 後 的 事 由 による 課 税 標 準 及 び 税 額 の 減 額 の 是 正 は 更 正 の 請 求 ( 通 法 232 他 の 個 別 税 法 の 規 定 以 下 後 発 的 事 由 による 更 正 の 請 求 という )により 減 額 更 正 を 求 める 制 度 を 採 用 している そして かかる 更 正 の 請 求 が 認 められるのは 一 定 の 事 由 に 制 限 されているところ 本 件 のような 税 法 不 知 による 合 意 解 除 は 法 定 申 告 期 限 後 に 生 じたやむをえない 事 情 ( 通 則 法 232 三 ) として 政 令 で 法 定 されている 当 該 契 約 後 に 生 じたやむをえない 事 情 ( 通 則 令 61 三 ) には 該 当 しないという 解 釈 が 判 例 理 論 として 定 着 している 14 したがって 確 定 した 具 体 的 納 税 義 務 を 減 額 修 正 するためには 納 税 者 からの 更 正 の 請 求 を 待 っ て そして その 請 求 の 理 由 が 法 所 定 の 事 由 に 該 当 する 場 合 に 初 めて 税 務 署 長 の 減 額 更 正 が 行 わ れるという 制 度 であるから 確 定 した 税 額 を 合 意 解 除 により 自 由 に 変 動 させることにより 租 税 法 律 関 係 が 不 安 定 となるものでもない また かかる 更 正 の 請 求 が 認 められる 一 定 のやむをえない 事 情 による 合 意 解 除 に 限 定 して 認 められる 減 額 更 正 であるから 納 税 者 間 の 不 公 平 をもたらすことにな るものではなく 申 告 納 税 制 度 を 破 壊 するものでもない 本 判 決 は 原 告 らの 合 意 解 除 に 基 づく 納 税 義 務 の 消 滅 の 主 張 は 認 められないものと 解 するのが 相 当 である と 判 示 しているが ここでもその 主 張 が 制 限 されるということが 納 税 義 務 の 発 生 確 定 という 実 体 法 との 関 連 が 明 確 ではない 訴 訟 における 主 張 が 制 限 されるというのが 信 義 則 か らのものであれば 別 の 議 論 がありえようが 本 判 決 は このような 場 合 を 想 定 しているのではな く 本 件 のように 納 税 申 告 により 納 税 義 務 が 低 額 で 確 定 している 場 合 に その 確 定 した 税 額 が 誤 りであり 多 額 な 課 税 が 行 われる 余 地 があるからといって これを 合 意 解 除 して 原 状 に 復 して その 納 税 義 務 を 消 滅 させ 課 税 を 免 れるということを 容 認 することはできないということであろう この 場 合 更 正 の 請 求 が 認 められる 合 意 解 除 であれば 本 件 のような 申 告 期 限 後 の 解 除 であって も 納 税 義 務 の 消 滅 を 認 めて その 後 に 行 われた 更 正 処 分 は 違 法 と 言 うことになるということを 判 決 は 理 解 しているのかどうかは 不 明 である しかし 本 判 決 が このような 場 合 の 合 意 解 除 を 無 視 14 東 京 地 裁 昭 和 60 年 10 月 23 日 ( 行 集 36 巻 10 号 1736 頁 )は 租 税 負 担 の 知 識 の 欠 落 あるいは 誤 解 という 主 観 的 事 実 のみ では やむを 得 ない 事 情 には 当 たらないとする

して 更 正 処 分 を 行 うことが 許 されると 理 解 しているとは 思 われないので かかる 理 解 を 前 提 として 本 件 事 案 における 本 判 決 の 論 理 的 矛 盾 を 検 証 する (3) 租 税 実 体 規 定 による 課 税 標 準 等 の 消 滅 等 と 手 続 規 定 ( 更 正 の 請 求 )との 関 連 < 法 解 釈 論 からの 考 察 > 更 正 の 請 求 が 認 められる 場 合 の やむをえない 事 情 による 合 意 解 除 は 課 税 要 件 の 充 足 が 事 後 的 に 不 充 足 となったということによる 減 額 更 正 の 請 求 事 由 であるが 一 方 やむを 得 ない 事 情 に 当 らないとされている 税 法 不 知 の 場 合 の 合 意 解 除 は 更 正 の 請 求 という 手 続 きが 認 められないという ものであり 租 税 法 律 関 係 の 早 期 の 法 定 安 定 性 という 視 座 からの 手 続 的 制 限 であるということを 理 解 する 必 要 がある 換 言 すれば 更 正 の 請 求 の 認 められない 合 意 解 除 であっても その 解 除 により 収 入 した 金 員 を 返 還 した 場 合 には 課 税 要 件 事 実 の 消 滅 ( 例 えば 所 得 の 消 滅 )として 各 税 法 の 実 体 規 定 により 課 税 標 準 額 及 び 税 額 が 減 少 する 以 上 税 務 署 長 は 減 額 更 正 の 指 針 的 義 務 があるということであ る そ れ が 通 則 法 24 条 の 更 正 の 意 義 である この 点 の 理 解 のために 幾 つか 例 を 挙 げて 検 証 しておきたい 1 通 則 法 23 条 1 項 の 原 則 的 更 正 の 請 求 に 該 当 する 場 合 に 法 定 の 請 求 期 間 の 法 定 申 告 期 限 から1 年 内 ( 改 正 5 年 内 )に 更 正 の 請 求 を 行 わなかった 場 合 には 更 正 の 請 求 が 制 限 を 受 けることにはなる か 課 税 標 準 等 は 実 体 法 上 過 大 の 違 法 状 態 にあるから これを 客 観 的 真 実 の 課 税 標 準 又 は 税 額 とす るために 税 務 署 長 は 減 額 更 正 することができるし 本 来 これを 知 りえた 場 合 には 更 正 する 義 務 ( 指 針 的 義 務 )がある つまり 更 正 の 請 求 の 手 続 規 制 と 租 税 実 体 法 による 課 税 標 準 等 及 び 税 額 が 過 大 又 は 消 滅 しているということとは 別 であるということである したがって 税 務 署 長 が 税 務 調 査 を 実 施 して 更 正 する 場 合 増 額 加 算 部 分 のみを 更 正 し 更 正 の 請 求 事 由 である 課 税 標 準 の 申 告 の 過 大 部 分 の 誤 謬 を 減 額 しないで 行 なった 更 正 は 客 観 的 真 実 の 課 税 標 準 等 の 額 を 超 えた 過 大 な 更 正 処 分 として 違 法 であり 取 り 消 されることになる この 理 は 後 発 的 事 由 の 更 正 の 請 求 も 同 様 である すなわち 私 法 上 合 意 解 除 に 遡 及 効 がある 以 上 15 いかなる 理 由 であろうとも 合 意 解 除 に 該 当 すれば いったん 充 足 していた 課 税 要 件 が 当 該 解 除 により 事 後 的 に 消 滅 することになるから 納 税 申 告 をしている 場 合 には 更 正 の 請 求 を 行 ってそ の 是 正 を 図 ることになる 一 方 更 正 の 請 求 が 認 められない 合 意 解 除 であれば 手 続 きとしての 更 正 の 請 求 は 制 限 を 受 けることになるが 各 税 法 の 租 税 実 体 規 定 ( 課 税 標 準 等 の 発 生 変 更 消 滅 に 関 する 規 定 )により 当 該 合 意 解 除 による 原 状 回 復 により 課 税 要 件 事 実 が 消 滅 することにより 納 税 義 務 が 減 少 又 は 消 滅 するから その 後 に この 合 意 解 除 を 無 視 して 更 正 処 分 を 行 うことは 許 され ない 2 法 定 申 告 期 限 から1 年 内 ( 改 正 5 年 内 )に 通 則 法 23 条 2 項 の 更 正 の 請 求 が 認 められない やむ を 得 ない 事 情 以 外 の 事 情 により 合 意 解 除 が 行 われ 原 状 回 復 がなされ 法 定 期 間 内 に 原 則 的 更 正 の 請 求 ( 通 法 231)が 行 われた 場 合 には かかる 合 意 解 除 による 更 正 の 請 求 による 減 額 更 正 は 認 められ る また 更 正 の 請 求 のいかんにかかわらず 税 務 署 長 は 減 額 更 正 する 権 限 を 有 している つまり 通 則 法 23 条 1 項 の 本 文 かっこ 書 では 同 2 項 の 後 発 的 事 由 の 発 生 が 原 則 的 更 正 の 請 求 の 期 間 満 了 の 日 後 に 到 来 するものに 限 る と 規 定 されていることから 当 該 原 則 的 更 正 の 請 求 の 期 間 内 における 同 項 の 後 発 的 事 由 の 更 正 の 請 求 は 通 則 法 23 条 1 項 の 原 則 的 更 正 の 請 求 として 取 り 扱 うこととなる したがって 法 定 申 告 期 限 から1 年 内 ( 改 正 5 年 内 )に 行 われた 同 2 項 の 後 発 的 15 本 判 決 の 被 告 は 合 意 解 除 には 遡 及 効 はないと 主 張 しているが 論 外 である

事 由 の 更 正 の 請 求 の 対 象 とならない 合 意 解 除 の 場 合 には 通 則 法 23 条 1 項 による 更 正 の 請 求 による ことが 認 められると 解 すべきである なぜならば 合 意 解 除 が やむを 得 ない 事 情 か それに 当 らない 事 情 かということによって 税 法 上 異 なる 取 扱 いを 受 けるのは 更 正 の 請 求 の 制 限 であっ て 当 該 合 意 解 除 に 至 った 事 情 によって 実 体 法 上 の 課 税 標 準 等 の 額 が 異 なるという 解 釈 はありえ ないからである この 差 異 を 容 認 すべきと 言 うのであれば それは 立 法 による 以 外 にはない 別 の 角 度 から 見 ると やむを 得 ない 事 情 による 合 意 解 除 が 前 記 1 年 内 ( 改 正 5 年 内 )の 期 間 内 に 行 われた 場 合 には 通 則 法 23 条 1 項 による 更 正 の 請 求 が 認 められるのに 対 して 同 様 の 期 間 内 に やむを 得 ない 事 情 以 外 の 事 情 による 合 意 解 除 が 行 われた 場 合 には 同 条 項 の 期 間 内 の 更 正 の 請 求 が 認 められないということは 解 釈 上 整 合 性 がないといえるであろう つまり 事 情 は 何 であれ 合 意 解 除 に 該 当 すれば 実 体 法 上 遡 及 効 をもって 課 税 要 件 事 実 の 減 少 消 滅 の 原 因 事 実 になるということであり そのうち やむを 得 ない 事 情 による 場 合 の 更 正 の 請 求 の 期 間 の 特 例 を 設 けたと 解 すべきである そして 法 定 の 後 発 的 事 由 に 該 当 しない やむを 得 ない 事 情 以 外 の 事 情 による 合 意 解 除 については 本 判 決 のいう 租 税 法 律 関 係 の 安 定 性 の 見 地 から 納 税 者 からの 減 額 更 正 発 動 の 権 利 行 使 に 制 限 を 加 えるための 更 正 の 請 求 手 続 きに 関 する 期 間 とその 事 由 からの 手 続 制 限 と 解 すべきである この 点 については 見 解 の 対 立 がある 〇 筆 者 のような 考 え 方 を 無 制 限 説 ( 一 元 説 )といい この 見 解 に 立 つものとして 次 を 参 照 武 田 昌 輔 監 修 DHCコンメンタール 国 税 通 則 法 1 巻 1254 頁 関 根 稔 所 得 年 度 終 了 後 に 行 われた 合 意 解 除 の 事 実 を 申 告 に 反 映 させることの 可 否 税 務 事 例 18 巻 6 号 (1986 年 )2 頁 谷 口 勢 津 夫 通 常 の 更 正 の 請 求 と 特 別 の 更 正 の 請 求 との 関 係 シュトイエル328 号 1 頁 伊 藤 義 一 現 物 出 資 に 係 る 錯 誤 合 意 解 除 による 無 効 の 効 果 の 遡 及 の 有 無 と 国 税 通 則 法 第 23 条 第 2 項 かっこ 書 の 適 用 がある 更 正 の 請 求 にやむを 得 ない 事 情 が 必 要 か について (TKC 税 研 情 報 1999 年 12 月 1 日 号 39 頁 ) 〇 これに 対 して 法 定 期 間 内 の 原 則 的 更 正 の 請 求 が 認 められるのは 後 発 的 事 由 の 更 正 の 請 求 の 事 由 に 限 定 されるという 制 限 説 ( 二 元 説 )がある この 説 に 立 つものとして 次 を 参 照 今 村 隆 錯 誤 又 は 合 意 解 除 による 無 効 主 張 の 可 否 税 理 42 巻 6 号 (1999 年 )191 頁 〇 しかし 本 文 で 指 摘 した 理 由 のほか 後 発 的 更 正 の 請 求 が 創 設 される 以 前 ( 昭 和 45 年 前 )は その 後 発 的 事 由 の 課 税 要 件 事 実 の 消 滅 変 更 等 は 原 則 的 更 正 の 請 求 により 対 処 していたことからも 無 制 限 説 が 妥 当 する < 継 続 事 業 からの 所 得 との 整 合 性 > 継 続 事 業 を 前 提 とする 法 人 又 は 不 動 産 売 買 等 の 継 続 事 業 を 営 む 個 人 が 税 法 不 知 に 基 因 して 売 買 契 約 を 合 意 解 除 して 原 状 回 復 した 場 合 に 発 生 した 損 失 は その 原 状 回 復 の 日 を 含 む 事 業 年 度 ( 年 分 ) において 前 期 損 益 修 正 損 等 として 損 金 の 額 又 は 必 要 経 費 の 額 に 算 入 され 控 除 されることに 異 論 を 唱 えるものはいないであろう すなわち このことは いかなる 事 情 による 合 意 解 除 であっても そ れが 再 売 買 ではなく 私 法 上 の 合 意 解 除 であり その 利 得 した 経 済 的 成 果 が 当 該 解 除 により 返 還 され て 消 滅 した 以 上 法 人 税 法 又 は 所 得 税 法 における 租 税 実 体 法 上 の 損 失 として 認 識 されるということ