膝各論 検査法
膝蓋大腿関節 (PFJ) と大腿脛骨関節 (FTJ) Femur Tibia Patella
圧痛部位別病変部位の類推 1 2 3 4 5 6 7 8 9
発育期の膝関節疾患 1 小児の膝変形 症状 生理的範囲のものが多いが以下のものに注意を要する原因 内反膝 外反膝 : 乳幼児でO 脚 6 歳にはX 脚 ( 外反 5 ) が生理範囲 反張膝 : 乳幼児で20 成人で0 ~5 が伸展正常域 ブローント病 : 近位脛骨骨端板内側部の成長障害による内反変形検査 医療機関 : 単純 X 線など治療方針 疼痛管理
発育期の膝関節疾患 2 離断性骨軟骨炎 症状 不完全分離 : 運動後の不快感 軽い疼痛 走行や階段昇降困難 病巣脱落 : 嵌頓症状 水腫 ROM 制限 激痛原因 外傷などの力学的要因 反復刺激 局所の血行障害 検査 骨化障害 分離 ( 説 ) 医療機関 : 単純 X 線 断層撮影 MRIなど治療方針 疼痛管理
発育期の膝関節疾患 3 1 Osgood-Schlatter 病 2 Larsen-Johansson 病 症状 1 脛骨粗面部の運動時痛 膨隆 圧痛 原因 検査 治療方針 2 膝蓋骨下端部の運動時痛 腫脹 圧痛 膝蓋靱帯付着部の過度の 牽引による剥離損傷 スポーツによる overuse (13 歳前後の男子に好発 ) 医療機関 : 単純 X 線 疼痛管理 安静指導 1 Osgood-Schlatter 病
発育期の膝関節疾患 4 有痛性分裂膝蓋骨 症状 走行 ジャンプ時の膝前面の疼痛 分裂部に一致した著明な圧痛と叩打痛原因 2 個以上の骨化核 ( 通常は1 個 ) を有し骨形成が妨げられた結果 スポーツによる overuse 検査 が発症のきっかけとなる 治療方針 医療機関 : 単純 X 線 疼痛管理 安静指導 膝蓋骨の外上方が最も多い
半月板 靱帯損傷 1 半月板損傷 症状 受傷直後に半月板の損傷側に一致した関節裂隙に疼痛が生じる 嵌頓症状 ( バケツ柄状断裂 ) 原因 体重が負荷した状態で屈曲した膝関節に異常な回旋力が加わる検査 医療機関 :MRI 理学検査 : マックマレー アプレーなどその他 半月板嚢腫 半月板骨化症 10~20 歳代のスポーツ外傷によるものが多い 小児期に多い中高年に多い 中高年に多い
半月板 靱帯損傷 2 a 前十字靱帯 (ACL) 損傷 症状 受傷直後の激痛 関節内出血 陳旧例で膝折れ 膝くずれ現象原因 ジャンプの着地に失敗して膝を捻った際に受傷しやすい検査 医療機関 :MRI 理学検査 : 前方引き出し t ラックマン t その他 ピヴォットシフト t 急性期には筋緊張のために膝 90 屈曲位での前方引き出し症状は出ないことが多い ACL 損傷 健側
半月板 靱帯損傷 2 b 後十字靱帯 (PCL) 損傷 症状 急性時には脛骨への後方ストレスで膝窩部に激痛原因 膝から転倒し 約 90 屈曲位で脛骨粗面部付近に直達外力が加わる検査 医療機関 :MRI 理学検査 : 後方引き出し t その他 前十字靱帯損傷に比べ膝の機能障害は少ない スポーツ活動や階段昇降で不安定感や膝蓋大腿関節痛などの訴えが見られる PCL の損傷機転
半月板 靱帯損傷 2 c 内側 外側側副靱帯 (1 MCL 2 LCL) 損傷 症状 1 圧痛 ( 大腿骨付着部付近が多い ) 外反時に激痛 原因 検査 1 膝に大きな外反力が加わり発症 膝の靱帯損傷で最も頻度が高い 2 膝に内反力が加わり発症 ( 比較的稀な損傷 ) 理学検査 : 内反 外反ストレス t その他 圧痛のみで外反動揺性をほとんど示さない軽症例 (1 度 ) から 10 以上の動揺性を示す重症例 (3 度 ) まである 3 度損傷例の外反ストレス X 線像
膝蓋大腿関節障害 1 膝蓋軟骨軟化症 症状 運動時や階段昇降時 ( 膝屈曲運動 ) に疼痛 ( と轢音 ) 原因 何らかの力学的異常が考えられる検査 医療機関 : 関節鏡 関節造影 CT 理学検査 : 膝蓋骨圧迫 t その他 比較的若年者 (10 20 代 ) 膝蓋骨の関節軟骨の一部に軟化 膨隆 亀裂などをきたす 運動選手 靱帯損傷例 PFJ の形態異常や膝蓋骨亜脱臼を呈する例などに多い 左膝蓋骨関節面の中央から内側にかけて軟骨病変を認める
膝蓋大腿関節障害 2 症状 運動時の膝蓋骨内下縁に疼痛と圧痛 時に弾発現象 原因 滑膜ひだ障害 ( タナ障害 ) 50% の膝に滑膜ひだ ( 別名 : タナ ) がみられ P と F( の内側顆 ) に挟まり 機械的刺激により肥厚や断裂を生じることがある 内側翼状ヒダと膝蓋内側翼状ヒダも原因となる 検査 医療機関 : 関節鏡 関節造影 CT その他 安静や消炎鎮痛剤で改善しない場合は関節鏡視下に切除 タナは膝関節腔内の隔壁の遺残
膝蓋大腿関節障害 3 膝蓋骨脱臼 症状 外傷性脱臼では激痛 ( 内側広筋と内側支帯の部分断裂 ) 原因 検査 大腿四頭筋異常 大腿骨顆部形成不全 脛骨粗面の外方偏位 全身的靱帯弛緩 膝蓋骨高位 外反膝など多くの因子が挙がる Q アングル (20 以内 ) 医療機関 : 単純 X 線 理学検査 : 膝蓋骨不安定 t その他 来院時に自然修復されて いる場合が多い 正常 亜脱臼 脱臼
膝蓋大腿関節障害 4 膝蓋大腿関節症 症状 階段昇降時の膝蓋骨後部疼痛 立ち上がり しゃがみ込み動作困難原因 多くは膝蓋骨の外側偏位による軟骨の摩耗 二次性 : 膝蓋骨骨折 脱臼などの外傷後に発症検査 医療機関 :X 線検査 その他 膝蓋大腿関節に限局した関節症で 大腿脛骨関節に主な病変を認める変形性膝関節症とは区別して論じられる
関節症と関連疾患 1 変形性膝関節症 症状 運動時痛が主体で 特に運動開始時と長時間の歩行で強い原因 軟骨の摩耗 骨棘形成 変形など退行性変性と増殖性変化をきたす 肥満や膝周辺の筋力不均衡などの力学的因子が指摘されている 検査 医療機関 :X 線検査など その他 一次性関節症の多くは内反変形を呈する 右膝
関節症と関連疾患 2 症状 急性期に激痛 夜間安静痛 原因 検査 膝の突発性骨壊死 膝関節 OA と違いステロイドの関節内投与でも著明な効果が得られない 原因不明であるが 多くの患者が骨粗鬆症を伴う高齢の女性であることから 軟骨下端の疲労骨折に原因を求める説がある 医療機関 :X 線検査 (4 期に分類 ) その他 関節鏡など 主に大腿骨内側顆の過重部分に骨壊死を生じる 右膝
圧痛部位別病変部位の類推 1 2 3 4 5 6 7 8 9 有痛性分裂膝蓋骨 膝蓋軟骨軟化症 膝蓋大腿関節症 前膝蓋骨滑液包炎反復性膝蓋骨脱臼 膝蓋骨亜脱臼 タナ障害ラーセンヨハンソン病 ジャンパーズニー 離断性骨軟骨炎 タナ障害オスグッド シュラッター病 内側半月板損傷 膝関節 OA( 内側型 ) 外側半月板損傷 膝関節 OA( 外側型 ) 内側側副靱帯損傷 膝関節 OA( 内側型 ) 外側側副靱帯損傷 膝関節 OA( 外側型 ) 腸脛靱帯炎鵞足炎 内側側副靱帯損傷
理学検査
膝蓋跳動 方法 : 仰臥位で膝を伸展 検者の一方の手を大腿骨にあてて 強く圧迫したまま膝蓋骨底の付近まで滑らせ 膝蓋上方に貯留した液を膝蓋骨の後方に押しやり 他方の指で膝蓋骨の前面から圧迫する 判定 : この時コツコツという音がすれば ( 感じれば ) 陽性とする 意義 : 中等度以上の関節貯留液 ( 陽性 ) 関節包肥厚時には跳動なし ( 陰性 )
膝蓋骨圧迫テスト 方法 : 仰臥位で下肢伸展位 検者は膝蓋骨を大腿骨面に圧迫しながら上下左右に動かす ザラツキや疼痛の有無をみる 判定 : ザラツキや疼痛が認められれば陽性で膝蓋大腿関節の軟骨や骨質の変性を疑う 意義 : 膝蓋軟骨軟化症の検査であるが 変形性膝関節症でも陽性となる
マックマレーテスト 方法 : 上方の手の母指と示指で内側 外側半月板を把持して下方の手で足関節を把握する 1) 膝および股関節を屈曲し 膝を外反 下腿の外旋を加えながら徐々に伸展する 2) 膝に内反 内旋を加えながら徐々に伸展する 判定 : 関節裂隙のクリックの出現の有無をみる 1) 外反 外旋時に内側に疼痛が出現 内側半月板 2) 内反 内旋時に外側に疼痛が出現 外側半月板
ステインマンテスト 方法 : 仰臥位 膝 股関節を最大に屈曲 ( 膝の屈曲により痛みを訴えた場合には可動域の範囲で行う ) 足関節を保持し下腿の内 外旋を行い膝関節の痛みの誘発の有無を調べる 判定 : 内旋時に外側に痛みの誘発があれば外側半月板の障害を推定する 外旋時に内側に痛みの誘発があれば内側半月板の障害を推定する
内反 外反テスト 方法 : 膝伸展位で一方の手を膝関節部に置き 他方の手で足関節をつかみ下腿に内反 外反を強制する 膝関節裂隙に誘発痛の有無をみる 判定 : 外反テストで外側に痛み 外側半月板損傷 ( 圧迫痛 ) 外反テストで内側に痛み 内側側副靱帯損傷 ( 伸脹痛 ) 内反テストで外側に痛み 外側側副靱帯損傷 ( 伸脹痛 ) 内反テストで内側に痛み 内側半月板損傷 ( 圧迫痛 )
アプレーテスト 方法 : (1) アプレー圧迫テスト : 伏臥位で膝を 90 屈曲させ 検者は自分の膝を患者の大腿部に乗せて患者の大腿を固定 次に検者は両手で足部を持ち 踵を下方に押しつけて膝関節を圧迫しながら下腿の内旋 外旋を行う (2) アプレー牽引テスト : さらに今度は下腿を上方に牽引し内旋 外旋を行う 判定 : (1)(2) のテスト中に疼痛が誘発されれば陽性 (+) (1) 陽性 半月板の損傷 変性が疑われる (2) 陽性 靱帯 関節包の肥厚 過緊張が疑われる
前方引き出しテスト 後方引き出しテスト 方法 : 仰臥位で膝を 90 屈曲し 検者の大腿か臀部を患者の足背に乗せ 次に下腿上端を両手でつかみ 前方に引き出す または後方に押し込む操作を加える 判定 : これにより前方あるいは後方に移動するものを陽性とする 意義 : 前方引き出しテスト陽性 前十字靱帯損傷後方引き出しテスト陽性 後十字靱帯損傷