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目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

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目 次 (1) 財政事情 1 (2) 一般会計税収 歳出総額及び公債発行額の推移 2 (3) 公債発行額 公債依存度の推移 3 (4) 公債残高の累増 4 (5) 国及び地方の長期債務残高 5 (6) 利払費と金利の推移 6 (7) 一般会計歳出の主要経費の推移 7 (8) 一般会計歳入の推移 8

タイトル

平成26年版 特別会計ガイドブック

平成17年5月18日 豊岡市国民健康保険運営協議会シナリオ

資料 1 税財政制度を通じた論点 Ⅰ 現状と課題 1. 地方財政の財政の概要 地方財政の平成 23 年度決算は 歳入約 兆円 歳出 97.0 兆円となっている なお 借入金残高は約 兆円と依然と高い水準にある 国と地方における最終支出ベースにおける比率は 42:58 となって

Microsoft Word - こども保険に関するFAQ.docx

つのシナリオにおける社会保障給付費の超長期見通し ( マクロ ) (GDP 比 %) 年金 医療 介護の社会保障給付費合計 現行制度に即して社会保障給付の将来を推計 生産性 ( 実質賃金 ) 人口の規模や構成によって将来像 (1 人当たりや GDP 比 ) が違ってくる


基調講演

鳩山政権の経済政策の効果


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Taro-★【2月Ver】01~05. ⑲計

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9 地方歳入中に占める地方税収入の割合の推移 ( その 1) 区 都道府県 分 昭和 2 年度昭和 5 年度昭和 10 年度昭和 15 年度 金額比率 % 金額比率 % 金額比率 % 金額比率 % 地方税

図 4-1 総額 と 純計 の違い ( 平成 30 年度当初予算 ) 総額ベース で見た場合 純計ベース で見た場合 国の財政 兆円兆 国の財政 兆円兆 A 特会 A 特会 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定 一般会計 B 特会 X 勘定 Y 勘定

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

一般会計 特別会計を含めた国全体の財政規模 (1) 国全体の財政規模の様々な見方国の会計には 一般会計と特別会計がありますが これらの会計は相互に完全に独立しているわけではなく 一般会計から特別会計へ財源が繰り入れられているなど その歳出と歳入の多くが重複して計上されています また 各特別会計それぞ

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

スライド 1

平成 28 年度予算編成方針 我が国の経済は 景気は引き続き緩やかな回復基調を維持しているが その影響が地方経済にまで十分に行き渡っているとは言えず 我々地方の行財政運営の基本となる税等一般財源を確保するためには 臨時財政対策債に頼らざるを得ない状況が続くものと考える また 税制改正も予測されること

四国地方 主要8行の預金・貸出金等分析(2017年第2四半期(中間期)決算)

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

Aさん : 何ですか 課税の繰り延べ課税の繰り延べって? 減税とは違うのですか? 税理士 : はい 買換特例には 根本的には税金は減らす効果はなく あくまで納税時期を遅らせることしかできないのです 課税の繰り延べの意味 税理士 : 今お持ちの駅前にある不動産を 2 億円で売却し 郊外の賃貸用マンショ

第 7 章財政運営と世代の視点 unit 26 Check 1 保有する資金が預貯金と財布中身だけだとしよう 今月のフロー ( 収支 ) は今月末のストック ( 資金残高 ) から先月末のストックを差し引いて得られる (305 頁参照 ) したがって, m 月のフロー = 今月末のストック+ 今月末

2007財政健全化判断比率を公表いたします

H28秋_24地方税財源

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平成 31 年度社会保障関係予算のポイント 頁 新 ( 平成 31 年 1 月 18 日閣議決定 ) 旧 ( 平成 年 12 月 21 日閣議決定 ) 1 平成 31 年度社会保障関係費の姿 平成 31 年度社会保障関係費の姿 ( 注 ) 年度 31 年度増 減 329, ,914 +1

茂木健一郎 : 脳科学者 ソニーコンピュータサイエンス研究所上級研究員 茂木移民に対して 山崎さんはどう考えられますか? 山崎経済活動にしっかり参加するなら 移民の人も支払い対象にすればいいと思います 波頭日本だったら移民も対象でいいと思います しかし スイスの場合 BI 目当てにどんどん移民が入っ

経済財政モデル の概要 経済財政モデル は マクロ経済だけでなく 国 地方の財政 社会保障を一体かつ整合的に分析を行うためのツールとして開発 人口減少下での財政や社会保障の持続可能性の検証が重要な課題となる中で 政策審議 検討に寄与することを目的とした 5~10 年程度の中長期分析用の計量モデル 短

平成 29 年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について ( 平成 28 年 8 月 2 日閣議了解 ) の骨子 平成 29 年度予算は 基本方針 2016 を踏まえ 引き続き 基本方針 2015 で示された 経済 財政再生計画 の枠組みの下 手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組む 歳出

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別紙2

平成28年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について

1. 復興基本法 復興の基本方針 B 型肝炎対策の基本方針における考え方 復旧 復興のための財源については 次の世代に負担を先送りすることなく 今を生きる世代全体で連帯し負担を分かち合うこととする B 型肝炎対策のための財源については 期間を限って国民全体で広く分かち合うこととする 復旧 復興のため

1 地域主権改革 Q1-6 市町村の人口規模はどのぐらいが適正かについて どういう議論があるのですか A1-6. 市町村の適正な人口規模について 大阪府自治制度研究会 においては 次のような検証 とりまとめがされています 検証 効率的な行政運営 備えるべき組織体制 望ましい行政サービス提供の 3 つ

課題発掘のプロセス 何か 問題はありませんか? 何か お困りのことはないでしょうか? 何か お手伝いすることはありませんか? ありません! これ以上先へは 進まない 1 存在に気付いていない 説明できるほど整理できていない 2 存在には気付いているが 重要だとは考えていない 3 知ってはいるが 解決

PowerPoint プレゼンテーション

市場と経済A

市場と経済A

報告事項     平成14年度市町村の決算概要について


2 決算収支 実質収支は 59 億 63 百万円の黒字で 11 年連続で全団体黒字となった 単収支は 9 億 92 百万円の黒字となった また 赤字団体は35 団体中 15 団体となり 前と比べて8 団体減少した 実質単収支は 189 億 82 百万円の赤字となり 前と比べて41 億 47 百万円赤

スマートグリッドと電気自動車

( 注 ) 年金 医療等に係る経費については 補充費途として指定されている経費等に限る 以下同じ (2) 地方交付税交付金等地方交付税交付金及び地方特例交付金の合計額については 経済 財政再生計画 との整合性に留意しつつ 要求する (3) 義務的経費以下の ( イ ) ないし ( ホ ) 及び (

財団法人ハイライフ研究所 研究報告「銀座座会~銀座が残すべきもの~」

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サラリーマンだった頃は 思いもよらなかったという人が多いでしょうね 給料明細を見て 何でこんなに色々 差し引かれるの?? と思いませんでしたか? でもね そもそも自分が全部払うべき健康保険料や年金の半分は 会社が払って くれているのです そしてさらに 従業員は自分の社会保険料の半分の額についても 自

1. わたしたちと税のかかわりについて考えてみよう 1 わたしたちの身の回りには, さまざまな税とのかかわりがあります ( 注 ) 住民税とは 道府県民税と市町村民税を合わせた呼び方です みんなで調べてみよう! 他にはどんな税があるのだろう? これらの税は, だれが, どんな方法で, どこに納めるの

Microsoft Word - fcgw03wd.DOC

概算要求基準等の推移

⑴ 練馬区の予算規模はどのくらいですか? どんなことに予算が多く使われているのですか? 平成 27 年度の予算規模は約 2,500 億円で 児童 高齢者 障害者 生活困窮者などを支援するための経費の割合が増えています 平成 27 年度における予算額は約 2,500 億円で前年度より約 55 億円増加

スライド 1

歳入総額 区分 平成 年度の財政フレーム ( 単位 : 百万円 ) 30 年度 31 年度 合計 構成比 構成比 構成比 263, % 265, % 529, % 一般財源特別区税特別区交付金その他特定財源国 都支出金繰入金特別区債 167

その 1 の財政状況は? 平成 28 年度一般会計決算からの財政状況を説明します 1 平成 28 年度の主なお金の使い道は? その他の経費 212 億 93 万円 扶助費 82 億 3,606 万円 16.7% 43.0% 義務的経費 219 億 7,332 万円 人件費 44.5% 79 億 8,

小次郎講師のトレーダーズバイブル第33回.pages

進行表 1 委嘱状交付 2 副市長あいさつ 3 委員紹介 ( 自己紹介 ) 事務局紹介 ( 自己紹介 ) 4 委員長 副委員長の選出 南足柄市行政改革推進委員会規則 の概要について説明 委員長に矢野正雄氏 副委員長に喜多村享氏が互選により選出 5 委員長あいさつ 副委員長あいさつ 南足柄市行政改革推


第2回町営住宅等跡地利用懇談会要点録

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特別会計の改革について

図 1 では プライマリーバランスが 11 兆円の赤字であることがわかる この赤字が消えてプライマリーバランスが均衡する姿を想像すると 下の2つの式が成り立つ 経常的歳入 = 経常的歳出 国債発行 = 国債費 国債発行 = 国債費 の式に注目すると 償還費用を賄うために新規に国債を発行しても国債残高

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おカネはどこから来てどこに行くのか―資金循環統計の読み方― 第4回 表情が変わる保険会社のお金

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2. 控除の適用時期 Q. 12 月に取得した自宅の所在地に 年末までに住民票を移しましたが 都合で引っ越しが翌年になってしまった場合 住宅ローン控除はいつから受けることになりますか A. 住宅ローン控除の適用を受けるためには 実際に居住を開始することが必要です したがって 住民票を移した年ではなく

1 目 次

国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省所管      東日本大震災復興特別会計歳入歳出予算補正予定額各目明細書

国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省所管      東日本大震災復興特別会計歳入歳出予算補正予定額各目明細書

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目的状 況予算の 資金の流使れ途 支出先の選定は妥当か 競争性が確保されているか 単位あたりコストの削減に努めているか その水準は妥当か 受益者との負担関係は妥当であるか 事業所管部局による点検 評価項目評価に関する説明 広く国民のニーズがあり 優先度が高い事業であるか 救急医療は 国民が安心して暮

【No

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Ⅱ. 資金の範囲 (1) 内訳 Ⅰ. 総論の表のとおりです 資 金 現 金 現金同等物 手許現金 要求払預金 しかし これはあくまで会計基準 財務諸表規則等に記載されているものであるため 問題文で別途指示があった場合はそれに従ってください 何も書かれていなければ この表に従って範囲を分けてください

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Microsoft Word - H26.7.1市長記者会見の要旨.doc

1. 財政状況の年度推移 ( 一般会計 ) (1) 決算概況 ( 単位 : 億円 ) グラフの解説 一般会計の歳入 歳出の規模は増加傾向にあり 平成 27 年度の決算規模は 歳入 歳出ともに過去最大規模となっています 実質収支は 黒字を継続しており 27 年度は約 49 億円 前年度と比べると約 1

税とのかかわり わたしたちは一日の中で こんなに税とかかわっています 中学生の皆さんも 税とはいろいろなところでかかわっています 税は わたしたちが健康で豊かな生活を送るために 一日の暮らしの中のさまざまな場面で使われています 税についてよく知ることは わたしたちのより良い暮らしを わたしたち自身が

社会保障給付の規模 伸びと経済との関係 (2) 年金 平成 16 年年金制度改革において 少子化 高齢化の進展や平均寿命の伸び等に応じて給付水準を調整する マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びはの伸びとほぼ同程度に収まる ( ) マクロ経済スライド の導入により年金給付額の伸びは 1.6

1 制度の概要 (1) 金融機関の破綻処理に係る施策の実施体制金融庁は 預金保険法 ( 昭和 46 年法律第 34 号 以下 法 という ) 等の規定に基づき 金融機関の破綻処理等のための施策を 預金保険機構及び株式会社整理回収機構 ( 以下 整理回収機構 という ) を通じて実施してきている (2

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平成19年度分から

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The C entral Bank vol Nomura Fund 21 APR / MAY.2016 Nomura Fund 21 APR / MAY

~ わかりやすい決算報告をめざして ~ 市ではさまざまな事業を行っています どのような事業を行うのか 資金調達はどうするか どのように支出するかを 歳入 歳出 という形でお金で表し とりまとめた計画が 予算書 です その予算に沿って事業を行った一年間の結果を報告したものが 決算書 です 決算書 には

税・社会保障等を通じた受益と負担について

財政政策の考え方 不況 = モノが売れない仕事がない ( 失業増加 ) が代わりにモノを買う! 仕事をつくる ( 発注する )! = 財政支出拡大 ( がお金を使う ) さらに乗数効果で効果増幅!! 3 近年の経済対策の財政規模 名 称 内閣 事業規模 公共投資 減税 財政規模 日本経

ども これを用いて 患者さんが来たとき 例えば頭が痛いと言ったときに ではその頭痛の程度はどうかとか あるいは呼吸困難はどの程度かということから 5 段階で緊急度を判定するシステムになっています ポスター 3 ポスター -4 研究方法ですけれども 研究デザインは至ってシンプルです 導入した前後で比較

係を決めよう (1) 班の意見をまとめて発表する班長 (2) 金額を計算し マネープランシートに記入する記録 計算係 (3) 思い出ポイントを管理する思い出係 (4) カードをひくカード係 5 人の班はカード係を 2 人にしましょう 1

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研究報告(田近、小林)

1 1 A % % 税負 300 担額

こんにちは! ふっさんです 今回は 時間で数万円を 今 稼ぐ方法をレポートにまとめたので公開します 僕がこのレポートを作った理由は 多くの人が抱える 2 つの悩みを解決するためです. 稼げる自信がなくて 不安です 2. 教材などを買って学びたいが お金を捻出するのが難しいです というものです まず

Transcription:

日本総研主催シンポジウム 第 1 部 問題提起 3 財政再建の選択肢 株式会社日本総合研究所調査部主任研究員河村小百合 それでは 最後に私 河村のほうから 財政再建の選択肢 ことで 3 番目の問題提起をさせていただきます という 構成 まず最初に わが国財政の現状を簡単に確認させていただいたうえで 私どもとして財政再建のためにどういう選択肢があるのかということで 大きく分けて二つの方向性があるのではないかと考えました 一つは 今の行財政制度を存続させる形で どうやって工夫したらいいか もう一つは ちょっと思い切るのですけれども 国のかたちを刷新してはどうかということで それについてご説明したいと思います 最後に では いつから考えて取り組んでいけばいいかということをお話ししたいと思います J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 37

1. わが国財政の現状 まず最初に わが国財政の現状です 本当に90 年代以降 悪化の一途をたどっているのですけれども ごらんいただきますように 90 年のあたりは わが国は本当にプライマリーバランスも それから利払い費を入れた財政収支もプラスです 債務残高比率も少なくて 主要国のなかでも指折りの健全財政国だった時代があるのですね それがバブル崩壊とともにずうっと転落してきてしまって 小泉構造改革で一時期よくなったかなと思ったんですが リーマンショックがあり 震災があって 今に至っているということだと思います 主要先進国中でみても わが国の財政は最悪の状況 次に これをよその国と比べても ご案内の通り 日本だけが本当に最悪で 政府債務残高のGDP 比が増え続けているような状況にあります 200% を超えている国はほかにありません ギリシャなどはそのレベルに至るもっと前の段階で破綻しているという状況であります 2. 財政再建のために残された選択肢とは-2つの方向性 では 本シンポジウムにおけるマンデートとして 最初 部長の山田から問題提起がございましたけれども 時間的に何年かけるかということは考えるとして この国の財政運営を安定的に続けていくためには 最終的に45 兆円規模で緊縮をしなければいけないという話がありました 私のところでは そのかたちに最終的に持っていくためにどういう改革が必要かということを考えたいと思います 38 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

財政再建の選択肢 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 39

ここで簡単に確認します 45 兆円規模の緊縮と言われて どういう意味があるかということですね 一般会計の規模は92.6 兆円 そのなかで税収は43 兆円しかありません 何と45 兆円 46 兆円ぐらいお金を借りて これだけの歳出を賄っているということです 45 兆円の緊縮 税収を2 倍にしますか それとも歳出をカットしますか 社会保障と地方交付税全部カットしても足りるかどうかぐらいですよね 改めて数字をごらんになって エッと思っていらっしゃる方がいらっしゃるかもしれないですが これが現実なのです この国の見たくない現実はこれなのです 簡単に言えば 年収 430 万円ぐらいなのに900 万円の派手な暮らしを家族でしている 足りないお金 450 万円は 自分ではなく 子どもに返してもらう前提でお金を借り続けている そういうことを毎年続けている それが 今のこの国の状態だと言えます (1) プランA 予算編成ルールと政策評価の徹底 では 一つ目の方向性 順に考えていきたいと思います 45 兆円というと 本当に気の遠くなるような額なのですが どうやったらいいか まず大どころの社会保障ですけれども 放っておけば 先ほども2 兆円 3 兆円とどんどん増えていくという話がありましたね 西沢のプレゼンの最後の19ページに整理してあるという話がありましたが いろいろ頑張って改革をすれば社会保障費の伸びっぱなしはとめられる あるいは減らせる 3 兆円ぐらいだったら縮小できるのではないかということです では ここで何とか3 兆円マイナスできるのだったらと考えても 45 兆円から引くと やっぱり42 兆円とか40 兆円をほかの部分でカットするか さもなければ増税しなければいけないということになります 40 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

財政再建の選択肢 現状整理 1 では まずプランAを考えていくときに これまでの取り組みを簡単に整理したいと思います いろんなご意見がこの世の中にあると思うのですけれども この国は無駄だらけだ 財政再建なんて無駄を減らせば簡単にできますよ というご意見もまだちょっとあるかなという気がします でも 努力しているところもあるはずですから 何をやってきて 何がやれてないのかを確認したいと思います 今まで財政再建に向けて真剣に検討されたことは2 回あったと思います 一つ目は 橋本政権のときに行われた中央省庁等改革ですね 内閣機能が強化され ガバナンス改革が行われ そして政策評価の制度が入りました こちらは実現されたわけですね もう一つは 民主党政権のときに行われた予算編成の改革です ここでは 例えば財政再建の目標を収支と残高の両方で設定するとか 中期財政フレームを決めて 向こう3 年間拘束するとか 本当にその通りに実行すべきことの検討がされたのですが 残念ながら 実現はしませんでした 現状整理 2 では 今の段階で歳出をコントロールするうえでどういう枠組みがあるかということを ご案内のことばかりかもしれませんが 簡単に確認します まず 法制度に基づく取り組みとしては 例えば予算編成過程 それから決算検査 今であれば 予算執行調査とか政策評価とかも行われています ただ 政策評価は導入されましたが 今のところ 担当される各主務省さんの自己評価が原則のような形になっています 総務省の評価もありますが 一部 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 41

42 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

財政再建の選択肢 ですね あと 独立行政法人にも政策評価が入っていますが これは比較的今までのなかでは客観評価が反映されやすい仕組みかもしれません それ以外に制度に基づくというわけではないのですが 政治的なイニシアティブに基づく取り組みとして 行政改革の取り組みであるとか 民主党政権で行われた事業仕分けであるとか 現政権のもとでやっている行政事業レビューとかがあると思います 現状整理 3 こういう取り組みで では どうやって歳出カットしようという着眼点があるかというと かつては よく言われていたような一律の伸びの制限であるシーリングであるとか それからガバナンスの改革も本当に企業経営のような考え方を取り入れることによって 歳出のカットというか 国費の負担の抑制につなげようということでやってきました そのほか 個別の観点としては 調達の改革や受益者負担の拡大といったものがあろうかと思います 現状整理 4 では これまでの取り組みで金額的にいくら減らせたのかということを簡単に確認したいと思います まず最初に ガバナンス改革で 先ほどの橋本改革で独法の制度が入りました 今 102 法人あります 独法というと 不祥事がないと報道されないのですけれども 結構な国の仕事が切り出されて いろんな仕事が行われています これに対して平成 17 年度に運営費交付金 補助金として出された額が3 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 43

兆 3,500 億円ぐらい これがピークかなという感じなのですが それが足元いくらになったかというと 2 兆 9,000 億円ぐらい あら たったの4,000 億から5,000 億円 何だそれだけですか でも そう思われるか 3 兆 3,500 億円のところを4,000 億円ぐらい切ったと思われるか ちょっと評価は分かれるかもしれません それから 民主党政権時代の事業仕分け あれもなかなか注目されて 国民にいろんなことがよくわかったと思いますが カットできたのは1.7 兆円ぐらいと言われています それで 現政権で取り組んでいる行政事業レビューも 夏のレビューですと 予算概算要求への反映は3,000 億円ぐらいということなのですね ですから こうやってみると それなりの取り組みをやってないわけではないのです やっていますし それぞれの局面では結構激しい議論がされているときもあると思いますけれども 先ほど申し上げた40 兆円とか42 兆円とかという額と比べると 本当に差が大きいなということが言えるのではないかと思います ここで簡単に事例をお話ししたいと思います 私自身が 政府の外にいる割には 割とこういう政策を見させていただく機会が今まであったもので その経験からちょっとお話しします なかなか改革できない できないと言われてはいますが いい例もあります その最たる例は独法のなかでは国立病院機構だと思います これは特別会計でかつて運営されていて 年間 2,000 億円の赤字を垂れ流していたものが 今は独法になって本当に収支が好転しまして もう収支相償です 赤字病院もかつて74 病院あったものが 今 もう19 病院にまで減っていて 今 機構全体として国費の投入はゼロです そういう 44 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

財政再建の選択肢 事例もあります 他方 その下に書いてある高齢 障害 求職者雇用支援機構というのは これは一つの例ですが 何だと思われるかもしれませんけれども 以前 京都府にあった 私のしごと館 というのが随分問題になりましたが あれを持っていた旧雇用能力開発機構の後継です ここは 私のしごと館 以外にもいろいろ問題があって ポリテクセンターというのを各地につくっています 職業訓練の施設です 高度なものづくりの職業訓練施設です これはもうほんとに渡辺喜美さんが自民党で行革担当大臣だったころから問題視されていて 地方に移管しましょうという閣議決定が平成 20 年末にされているのですけれども 実は いまだに進んでいません 高度なものづくりの職業訓練施設が47 都道府県全部にあるのです 1 個以上あるのです 要りますかね 製造業の集積というのは地域によって一様じゃないですよね もちろん パフォーマンスのいいところもあるのです でも そうではないところもあって いまだに移管や廃止が進んでない このような事例もあります 今年 行政事業レビューに秋に参加させていただいた経験からすると 政府の直轄 本省直轄の事業だとこんな例もあります 私の担当の一つが文部科学省だったのですけれども そのなかの国立大学法人の改革で 何か改革したところに補助金をつけるという 国立大学改革促進プログラムというものがありました これは外部評価した五人全員 理解できませんでした それから 地域のイノベーションの推進プログラムというのもあるのですが 名前を2 年ぐらいすると変えて新しいプログラムができるんだけれども 今までのプログラムの効果があったかどうかというのはわからない そのような事例もあったりします そういうのを見ていると これではお金が幾らあっても足りないかなという感じがしなくはありません 何が足りないのか? それは誰の役割か? では 何が足りないのでしょうか で それは誰の役割なのでしょうか こういう財政運営を見てみると 幾つか挙げられると思います 一つ目には 財政政策運営全体として財政制約の認識がないんじゃないかなと思います 政府は今 2015 年度のプライマリーバランスGDP 比の2010 年度比半減を掲げていますけれども それは今年の予算編成で具体的な制約として機能しているでしょうか 皆さん どうお考えになられるでしょうか それから二つ目 その制約が認識できたとして それを必ず守るようにするためのルールがないんじゃないかと思います そして三つ目 財政運営全体としての制約が認識できたとして では それをどこの分野の政策にどうやって割り当てるかとか さらにブレークダウンして どこの地域に割り当てるかというのを決めるメカニズムがないんじゃないかという感じがいたします プラン A では このプラン A 現行の制度のままやっていくときに必要なこと 何を考えたらいいかというこ とです 幾つかあろうかと思います J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 45

一つ目は 財政制約の定義ですね これは 最初の山田からの問題提起にもありましたように 今 政府債務残高のGDP 比は増えっぱなしなのです 全然止まる見通しが立ってないのです 少なくとも規模でいいです GDP 比でいいから 増えっぱなしはとめて 横ばいには何とかして持っていかなければいけないと思います そのための制約を表す指標はプライマリーバランスでよろしいですか これには利払い費が入っていません 債務残高が増えるか 減るか 横ばいかというのは いろんな条件によって違います むしろ 指標を新発国債の発行額とかにしたほうが 前年までの財政再建の努力がきれいに出るし 国民にもわかりますね 新しくお金を借り増す分ですから その方が良いのではないかという気がしますが 皆様 いかがお考えになられるでしょうか そして二つ目 ルールですね どういうルールでやっていったらいいか どのレベルでの定義が必要でしょうか 政治的な合意 閣議決定で行けますか 政権が変わると すぐ凍結されちゃいますよね では 法律ですか 日本には財政法 4 条があるのです でも 毎年 特例公債法を通して赤字国債を出せちゃうのですよね 法律も無力でしょうか そうすると 今 ヨーロッパの国がやろうとしているように ドイツはやっていますけれども 憲法で決める必要があるのでしょうか そして三つ目 優先順位を誰が決めるのでしょうか もちろん これは当然政治の役割ですよね 国会で決める だけど 全部を国会で決めきれますか もっと細かいところを誰かが決める必要があるか 今 主務省と財務省主計局との間で予算編成されていますけれども そのプロセスで数字が決まればできるでしょうか 一律カットになってしまわないか その辺が心配な気がします 四つ目 何に基づいて優先順位を決めるのでしょうか 政治力ですか ロビイングですか 地元への 46 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

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利益誘導ですか それでは困りますよね やっぱりここはあまり近道がなくて 政策評価を地道にするしかないのじゃないかと思います でも 今だって 各省の予算要求に全部 政策評価はついているのです 何で機能しないのでしょうかね 行政事業レビューのレビューシートも 5,000 事業 全部つくっているそうです 何でなかなか機能しないのか 自己評価だからですかね どうお考えになられるでしょうか そして最後に 優先順位を日本の国全体として一律で決められるかということがあろうかと思います 分野別の所要財政緊縮額のイメージ( 例 ) こんなふうにカット カット カットと嫌な話ばかりですけれども もちろん 増税も適当に組み合わせてもいいと思います そのときのご参考としていただくように ここにお示ししたのは IMFが今年の夏に示した日本の財政調整プランです 別に人の言うことを聞く必要はない 国際機関の言う通りにする必要は全然なくて 自分の国で考えればいいのですけれども 一つの目安かなと IMFに限らず 先ほど 山田からOECDの話がありましたように 国際機関の見方では 大体日本が安定的に財政運営していくには GDP 比 10% か もっとそれ以上の緊縮が必要だというふうに言っています それを金額に置き直すと 大体 50 何兆円という感じになるんですね それをIMFであれば 消費税率は最終的に15% まで持っていって 増収で24 兆円確保し 歳出カットのほうで28 兆円というようなことを言っています このあたり ご参考にしていただければと思います これぐらいの数字をにらみながら どういうふうに意思決定を変えていったら この制度のままでやっていけるか あれだけの 48 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

財政再建の選択肢 カットができるか でも 国民生活への影響はできるだけ少なくしたいですよね どうお考えになりま すでしょうか (2) プランB 国のかたちの刷新 では もう一つの考え方をこれからご説明したいと思います ちょっと思い切ってなんですけれども 国のかたちを変えてはどうか 先ほどのポリテクセンター 別にあれだけが問題だと言うつもりは全然ないのですけれども この国の例として地方のいろんなところへの支出を国で決めてしまうところがあろうかと思います それを地方に意思決定を移してはどうか もちろん 財源も移すのです そのときに やっぱり財政力が弱いところはありますので 何らかの形で配慮ができないかということ でも そんなことを言われても 本当にそんなことができるのか やって見せてもらわないとわからないというふうに多分お考えになられると思いますので いろんな前提がついているのですが 私どもとしてやってみたものをこれからお目にかけます 今の制度の問題点ですけれども 幾つかあろうかと思います まず 国と地方の役割分担と責任分担が曖昧 それから 優先順位は 国で決めたのを画一的に地方に当てはめてしまう 3 番目 地方が国に依存してしまいがちである 4 番目 地方公共団体間でも実は税収が偏在しているということがあろうかと思います J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 49

現行制度における 国と地方の間の財政資金の流れ ここで 財政資金の流れを確認します 地方というと 地方交付税というふうにすぐ頭に浮かぶんですけれども 実は それだけではありません 確かに一般会計から特別会計を通って地方交付税が地方公共団体に行っていますけれども それ以外にもたくさんの補助金とかが国から直接支給されています 国 地方へは 地方交付税以外にも様々な支出 それを具体的にお示ししたものがこちらです 厚生労働省と文部科学省のオンパレードかなという感じですけれども こうやって国が地方にお金を渡すけれども 教育や社会保障の分野でこうやって国の決めた通りにお仕事してくださいねというふうにやっているのが 今のこの国の制度です ( 図表 ) 国から地方公共団体に支出された主な補助金等 特別会計のほうでも これだけございます 地方公共団体間での税収の偏在の実情 次に 税収の偏在のところをお見せしたいと思います 法人二税 地方消費税で税偏在ということがよく言われていますけれども これは上位 3 県のところと下位 3 県のところを金額ベースでお示ししたものです これは23 年度ですけれども 法人二税について見ると 東京都には7,421 億円入っているのに 下位のほうで見ると 島根県 114 億円 高知 97 億円 鳥取 85 億円 実に3 桁違ってしまいます これは 50 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

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東京都民のものにして 東京都民が使ってしまっていいお金なのでしょうかね 私も東京都民で 私も 私の家族もその恩恵を受けてきたのですけれども 地方消費税のほうも似たような状況です ( 図表 ) 都道府県の積立基金残高の比較 それがどこに出るかというと 各都道府県は基金というのを積んでいます これは財政調整 万が一に備えてとか 地方債の償還に備えてということで積むものですけれども 余力があれば その分も積んでいきます 皆さん オリンピックが東京でできることになってとてもよかったんですけれども この財政難の国のどこにそのお金があるのかなと思われた方はありませんか ここにあるんです 東京都の基金はすごいですよね 1 兆 3,673 億円ございまして そのなかの4,000 億円がオリンピックの積み立てです 少ない県 ここにお載せしていますけれども すごく少なく見えますけれども これらの県の積み立てが足りないわけでは決してないです 必要な分をきちんと積んでおられます でも なお 多いところはこれだけ大きくなっている こういう状況があるということです 刷新 のポイント では どう組みかえるかということですけれども 幾つか考えました 一つ目 国の役割というものは必要不可欠なものに限定する 二つ目 その歳出面での新たな役割分担に見合うように 歳入 ( 税源 ) を再配分します 具体的には 52 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

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法人課税を中心に地方の税ということにして 州と州の間での水平的な調整メカニズムを入れる 交付税はなくします そして三つ目 これが一番大事だと思いますが 財政制約 プランAだと 国全体で45 兆円だの40 兆円と言っているのですが 基本的に大きな州政府単位で負ってもらう形 お金が足りなかったら 州政府の自己責任で調達するということです 基本的には もう国には頼れない 交付税措置とかはなしにするということです そして 今までに発行してしまったたくさんの国債は これは別の扱いにして みんなで平等に負担を分かち合いながら返していきましょうということで考えました 試算の前提 1: 国と地方の役割分担 そして役割分担なのですが これも もちろん いろんな異論がおありだと思います 本当にここはあくまでこういう前提でとりあえず考えてみましたということですけれども 例えば国の役割 外交とか 防衛とか 金融とかは 恐らく異論がないと思います ここでは これだけお金が厳しいということで 社会保障も憲法が保障する生存権に関するものだけということで 年金と生活保護だけ国 あとは地方 州に委ねる 教育であるとか公共事業とかは 自分の州の財政制約を考えながら優先順位を決めていくという形にしてはどうかと考えました 刷新 後の歳出の姿 そういう前提でやってみた場合 では 歳出の姿がどうなるのかということを 23 年度で見ます これ 54 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

財政再建の選択肢 が 23 年度の一般会計の決算の歳出です このうち 国債費の扱いはちょっと微妙なので 別に考えると して 交付税がなくなりますね このうえの二つがスパッとなくなって その分が今申し上げたような 役割分担でいうと 国が 30 兆円 地方に移すのが 32 兆円ぐらいというような感じになります 試算の前提 2: 大きな地方( 州 ) 政府 の切り分け方 そして 次に州政府の切り分け方です これも本当にいろいろあり得ると思うのですが こういう形で七つに割るということでやってみました それぞれ人口 面積 こんなような感じになります これは 後で水平調整のところで使うということになります 試算の前提 3: 国と地方の間での税収の配分 税収の配分ですけれども 先ほどの歳出の役割分担に合わせる形で 国税と地方税 従来の形のうち 法人税だけ地方と統合して水平調整に持っていく それから 消費税も地方消費税と統合して水平調整するというような形で組みかえることを考えてみました 刷新 後の国( 中央政府 ) 歳入の姿 そうすると 歳入の姿がどうなるかということですけれども 今ある23 年度決算の歳入 一般会計の歳入のうち大きなところを 消費税の部分 それから法人税の部分を地方に渡すことによって 水平調整の財源に持っていくということで ここでは考えました J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 55

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財政再建の選択肢 粗い試算結果 では こうしたことをやってどんな形になるかという結果です これから数字をお見せしますけれども ご注意いただきたいのは あくまでこれは23 年度決算の数字を使って 今申し上げたような形で組みかえただけなのです これで財政制約が魔法のように減るということはなくて 結局 各州の負担と あと それから中央政府の負担もちょっとあるんですけれども 足せば40 何兆円と一緒なんですね そこはちょっとご留意いただきたいと思います 要するに 小分けの政府として小分けで認識するほうがいいかどうか で 弱いところへの配慮ができるかどうかなんです 7つの州政府に組み替えると想定した場合 それで 組みかえてみたのがこんな感じになります 歳出規模は 北海道 東北 関東 甲信越 中部 北陸 大体並ぶような感じになって 東京は単独でつくってみました これぐらいの歳出規模を現状だと持っていることになります 7つの州政府の現在の歳入の内訳 これに対して 現状 どういう歳入で賄っているかというのを見たのがこちらです 国から支出されている部分が 国庫支出金と交付税と譲与税ということですが 北海道 東北であれば 全歳入の半分以上ぐらいを国から渡しているということだと思います 現状 これだけの財政調整はしているということです J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 57

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刷新 によって 地方交付税や国庫負担金を廃止する( 37 兆円 ) では これを 先ほど申し上げたような形で 新たに地方交付税を廃止するかわりに法人税と消費税を使って水平調整するとどうなるか というのを見たのがこちらです こんな感じで 北海道 東北であれば これぐらい水平調整の財源が地方の固有財源として来ることになって あと 図表上のピンクの四角を各州政府が認識することになる財政制約です これは 別に歳出規模 仮に現状と同じ規模をやりたかったら これだけは新たに調達しなければいけないということです 要するに これを足していって あと中央政府の分を足すと 先ほどの40 何兆円と同額になります 果たしてこういう歳出構造の州政府とかをつくるのと 中央で財政を差配するのと どちらがいいでしょうかということなのです ですから 国全体として 先ほど申し上げたようないろんな改革は必要だと思いますけれども 45 兆円の財政制約でやっていく そのかわり いろいろ意思決定のルールを変えていくことがいいのか それとも 今申し上げたように 州政府ごとに数兆円単位で財政制約を負っていくのと どちらがいいかということです ここから先はこの後のパネルディスカッションの議論にお譲りしたいと思います そして あわせて ぜひ会場の皆様方のご意見をおきかせいただければと思います 2 通りのやり方についてお示ししましたけれども それ以外にもっといいやり方があるということであれば ぜひぜひお知恵をお貸しいただければと思います 3. いつから財政再建に取り組めばいいか 最後に いつから財政再建に取り組めばいいかということですけれども 万が一 急な金利上昇はあ 60 J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12

財政再建の選択肢 り得ますし アメリカの影響もありますよね それに対する耐久力があれば急がなくてもいいのかもしれません ところが この国にはちょっと耐久力は乏しいかなというような状況にあります まず一つ目 毎年 国債を出して調達している額の規模ですが 日本はGDP 比 6 割です ヨーロッパの国だと3 割も行かないのですね それから財政赤字も極めて大きいです 急に金利が上がったとき 調整しなければいけない圧力は物すごく強くなります ですから 日本にとっては安定的な財政運営を中長期に確保するためのハードルは極めて高い もちろん いろいろなことを考えなければいけませんが やはり一刻も早く検討に着手しなければなりません このままの状態で 私も母親の立場でもあるのですけれども 子どもたちにこんな状態で引き継いでしまっていいのでしょうか やはり早くどういうふうにやっていくかということをみんなで考えて 少しずつやっていったほうがいいのではないかと思います お手元にピンクのアンケート用紙をお配りしております よろしければ ぜひご意見をお寄せください お願いいたします 以上です ご清聴 ありがとうございました ( 拍手 ) J R I レビュー 2014 Vol.2, No.12 61