報酬比例部分経過的な措置8. 老齢給付 ( 厚生年金保険 ) 老齢厚生年金の全体像 前提条件 老齢基礎年金の受給資格期間 (25 年 ) を満たしていること 原則 65 歳以後に支給 老齢厚生年金 ( 条件 ) 1 ヶ月以上の厚生年金加入期間 老齢基礎年金 65 (S36.4.2 以後生の男性の場合 ) 60 歳から支給される場合があるただし 生年月日に応じて 段階的に支給年齢を引き上げて最終的には廃止特別支給の老齢厚生年金 ( 条件 ) 1 年以上の厚生年金加入期間 60 歳 ~64 歳まで支給される部分 (S16.4.2~S36.4.1 生の男性の場合は一部分のみ ) 報酬比例 老齢厚生年金 定額 老齢基礎年金 60 65 報酬比例部分 定額部分 加給年金 ( 同時に支給開始 ) 報酬比例部分 経過的加算 加給年金 1
( 第 1 段階 ) 報酬比例部分はそのまま定額部分を段階的に廃止 2 年ごとに 1 歳ずつ定額部分が消える ( 女性はすべてプラス 5 年 ) 報酬比例部分 定額部分 60 61 62 63 64 S16 S16 S18 S20 S22 4/1 前 4/2 ~4/2 4/2 4/2 4/2 ~~~~S18 S20 S22 S24 4/1 4/1 4/1 4/1 ( 第 2 段階 ) 報酬比例部分も段階的に廃止 65 S24 S28 4/1 老齢厚生 老齢基礎 4 年 2 年ごとに 1 歳ずつ報酬比例部分が消える 報酬比例部分 60 61 62 63 64 65 S24 S28 S30 S32 S34 S36 ~4/2 ~4/2 ~4/2 ~4/2 ~4/2 ~S28 S30 S32 S34 S36 4/1 4/1 4/1 4/1 4/1 老齢厚生 老齢基礎 2
問題例 S22 年 4 月 2 日 ~S24 年 4 月 1 日の場合 ( 男性 ) はどうか? 報酬比例部分老齢厚生年金定額老齢基礎年金 60? 65 参考問題例 1 ( 問題集 P47 第 1 問問 1 一部のみ抜粋 ) A さん : S26 年 2 月 10 日生まれ 58 歳 (60 歳で定年退職の予定 ) 厚生年金保険に 454 月加入 妻 Bさん : S28 年 4 月 30 日生まれ 56 歳 Aさんと生計維持関係にある 厚生年金保険に80 月 国民年金に400 月加入予定 Aさんと妻 Bさんの公的年金制度からの老齢給付の概略を示した下図の空欄に入る語句または数値は? 60 歳 65 歳 A さん報酬比例部分老齢厚生年金 妻 B さん 老齢基礎年金 ( 1 ) ( 2 ) 歳 65 歳報酬比例部分老齢厚生年金定額老齢基礎年金 ( 3 ) 3
年金額 報酬比例部分 (1+2) 1.031 0.985 (H22 年度物価スライド率 ) 1 総報酬制導入前の期間分 2 総報酬制導入後の期間分 (H15 年 3 月まで ) (H15 年 4 月以降 ) 賞与も 含む 平均標準報酬月額 (H6 の再評価 ) 生年月日に応じた給付乗率 3 月までの被保険者月数 平均標準報酬額 (H6 の再評価 ) 生年月日に応じた給付乗率 4 月以降の被保険者月数 報酬額の反映 加入期間の反映 総報酬制の前と後で分けて考える テキストにしたがって H6 年の再評価としている 4
定額部分定額単価 (1676 円 ) 単価乗率 被保険者月数 0.985 ( 上限あり ) 加給年金 ( おもな要件のみ ) 厚生年金加入期間が 20 年以上ある場合に加算 生計を維持している 65 歳未満の配偶者がある場合 (65 歳に達するまで ) S9.4.2 以後生まれの受給権者の場合にはさらに 配偶者特別加算 あり 生計を維持している未婚の子がいる場合 18 歳になった最初の 3 月 31 日まで 20 歳未満の 1 級 2 級の障害のある子 定額部分がある場合 支給は同時開始 定額部分や報酬比例がない場合 支給は 65 歳から開始 (P40 の計算例 ) 加給年金報酬比例老齢厚生年金定額老齢基礎年金 60 65 同時開始加給年金報酬比例老齢厚生年金老齢基礎年金 60 65 いずれも配偶者が 65 歳まで 老齢厚生年金 5
経過的加算 特別支給により 65 歳前から定額部分がもらえる場合には 原則 定額部分 老齢基礎年金 に相当する内容のはず 65 歳前 65 歳後 But65 歳後の老齢基礎年金が これまでの定額部分より少なくなる場合が多く その分を補うもの 定額部分 経過的加算老齢基礎年金 経過的加算 = 定額部分 - 老齢基礎年金 6
全体の体系図と振替加算について 夫 妻 報酬比例部分復習同時定額部分 加給年金 60 歳 65 歳 特別支給の老齢厚生年金 老齢厚生年金 ( 経過的加算 ) 老齢基礎年金 老齢厚生年金 65 歳振替加算老齢基礎年金 夫の加給年金は 妻が 65 歳になるまで 妻が 65 歳になると 妻の振替加算になる ( 金額は異なる ) 7
在職老齢年金 60 歳以上で在職する厚生年金の被保険者に対して適用 調整 在職による給与 特別支給の老齢厚生年金 60 歳低在老 65 歳 老齢厚生年金 老齢基礎年金 高在老 調整 厚生年金の一部が減額または全額が支給停止 ( ステップ 1) 基本月額 + 総報酬月額相当額 <28 万 = 全額支給 ( 支給停止なし ) 基本月額 + 総報酬月額相当額 >28 万 支給停止部分あり ( ステップ2) 1~4のケースで停止額が異なる 1 基本月額 =<28 万 総報酬月額 =<47 万 2 基本月額 <28 = 万 総報酬月額 >47 万 3 基本月額 >28 万 総報酬月額 <47 万 = 4 基本月額 >28 万 総報酬月額 >47 万 老齢基礎年金 経過的加算部分は減額されない 1 基本月額 + 総報酬月額相当額 <47 万 = 全額支給 ( 支給停止なし ) 2 基本月額 + 総報酬月額相当額 >47 万 支給停止部分あり 70 歳以上の場合には 厚生年金の被保険者ではなくなるが 同様の仕組み ( 高在老 ) が適用される 8
齢厚基本月額老生在職給与在の月額相当現支給停止部分についてのイメージ図 高在老 2 年金額1/2 47 万超 支給停止 ( 月額 ) 総報酬 47 万 ( 支給停止調整額 ) 低在老 ( ステップ 2) 1 のケース 基本月額 (28 万以下 ) 総報酬月額相当 (47 万以下 ) 1/2 支給停止 ( 月額 ) 28 万 ( 支給停止調整開始額 ) 9
計算例 (P70~73 より抜粋 H21 年 1 月実技 個人 ) A さんに関するデータ特別支給の老齢厚生年金の年金額 : 1,500,000 円定年退職前の標準報酬月額 : 470,000 円 60 歳到達時のみなし賃金月額 :449,400 円再雇用後の標準報酬月額 : 260,000 円再雇用後の賃金月額 : 260,000 円計算月以前 1 年間の標準賞与額の総額 : 1,200,000 円 基本月額 = 特別支給の老齢厚生年金額 12 = 125,000 円 総報酬月額相当額 = その月の標準報酬月額 + その月以前 1 年間の標準賞与額の総額 = 260,000 円 + 1,200,000 円 12 = 360,000 円 12 低在老の1のケースに該当支給停止額 ( 月額 )= (125,000 円 +360,000 円 -280,000 円 ) 1/2 = 102,500 円 10 在職老齢年金額 ( 年額 )= 1,500,000 円 -102,500 円 12=270,000 円
調整一部支給停( 補 ) 加給年金部分は減額なし 老齢厚生年金が全部支給停止 加給年金も停止老齢厚生年金の一部のみ停止 加給年金は減額調整後に加算して支給 雇用保険との調整基本手当基本手当 + 老齢厚生年金 or 基本手当高年齢雇用継続給付高年齢求職者給付金退職時 60 歳 65 歳老齢厚生年金も 在職老齢年金との調整 高年齢雇用継続給付 在職による給与 調整 特別支給の老齢厚生年金 老齢厚生年金 ( 在職老齢年金 ) 老齢基礎年金 止停止額上限 : その月の標準報酬月額 6% 60 歳 65 歳一部支給停止 11
計算例のケース ( 類題 :H21 年 9 月 実技 個人第 1 問 ) 高年齢雇用継続給付金 60 歳到達時のみなし賃金月額 :449,400 円 再雇用後の賃金月額 : 260,000 円 61% 未満 15% まで支給 260,000 円 15%=39,000 円 在職老齢年金との調整による停止額 その月の標準報酬月額 6% = 260,000 円 6% = 15,600 円 調整後の在職老齢年金 ( 月額 ) = 270,000 円 - 15,600 円 = 6,900 円 12 Aさんの継続雇用後の収入月額 = 継続雇用後の賃金月額 + 高年齢雇用継続給付金 + 在職老齢年金 = 260,000 円 + 39,000 円 + 6,900 円 = 305,900 円 高年齢雇用継続給付金の支給額が 15% のとき 老齢厚生年金の支給停止額は上限の 6% になる 15:6 になるように調整されている 12
老齢厚生年金の繰上げと繰下げ支給 繰上げ支給 Point 厚生年金の被保険者期間があって 60 歳 ~65 歳未満 S36 年 4 月 2 日以後生まれの男子とS41 年 4 月 2 日以後生まれの女子 ( 特別支給の老齢厚生年金が出ない世代 ) 老齢基礎年金の繰上げと同時請求 月額 0.5% の減額 繰下げ支給 Point 66 歳に達した以降に繰下げの申出ができる 特別支給の老齢厚生年金は繰下げできない (65 歳前からもらっていても 65 歳以後の分のみ繰下げ ) 障害厚生年金や遺族厚生年金の受給権者は 老齢基礎年金との同時請求の必要なし 月額 0.7% の増額 在職老齢年金支給の場合 本来の年金額ではなく 減額調整された在職老齢年金額に対しての増額になる 13
参考問題例 2 (H19 年 9 月学科 問題 6) 60 歳台前半の老齢厚生年金および老齢基礎年金に関する次の記述のうち 誤っているものはどれか 1. 厚生年金保険に 40 年間加入していた昭和 22 年 10 月生まれの男性は 原則として 60 歳から報酬比例部分相当の老齢厚生年金を受給し 64 歳になると報酬比例部分に定額部分が加算された特別支給の老齢厚生年金を受給できる 2. 特別支給の老齢厚生年金 ( 報酬比例部分 + 定額部分 ) の支給開始年齢到達時 受給権者に老齢基礎年金受給中の 67 歳の妻がいる場合 夫の受給する年金に配偶者に係る加給年金額が加算される 3. 昭和 22 年 10 月生まれの男性が 60 歳で退職し 雇用保険の基本手当を受給する場合 基本手当を受給している間は 原則として報酬比例部分相当の老齢厚生年金の支給が停止される 4. 昭和 22 年 10 月生まれの男性は 原則として 60 歳から報酬比例部分相当の老齢厚生年金と 繰上げ支給の老齢基礎年金を同時に受給することができる 14
参考問題例 3 (H21 年 9 月学科 問題 4) 厚生年金保険の老齢給付に関する以下の記述のうち 最も不適切なものはどれか 1. 平成 21 年 9 月末に 60 歳 ( 昭和 24 年生まれ ) になる男性が受給できる 60 歳台前半の老齢厚生年金は 原則として 報酬比例部分のみである 2. 平成 21 年 9 月末に 65 歳 ( 昭和 19 年生まれ ) になり老齢厚生年金の受給権を取得する人は 一定の要件を満たせば 老齢厚生年金の繰下げ支給の申出をすることができる 3. 65 歳からの老齢厚生年金は 老齢基礎年金の受給資格期間を満たし 厚生年金保険の被保険者期間が 1 ヶ月以上ある場合に支給される 4. 70 歳以後も厚生年金保険の適用事業所に在職する人は 被保険者として厚生年金保険料を負担し かつ 老齢厚生年金の全部または一部が調整される 15
参考問題例 ( 解答 ) 参考問題例 1: 1 加給年金 2 64 3 振替加算 参考問題例 2: 1 参考問題例 3: 4 16