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Transcription:

ハートクリニック大船家族教室 統合失調症について 2012 年 12 月 2 日 ハートクリニック医師田村紀郎

目次 1. 統合失調症の基礎知識 2. 統合失調症の症状と経過 3. 治療のながれ 4. 患者さんが気をつけたいこと 5. ご家族の対応と協力

1. 統合失調症の基礎知識

約 100 人に一人の割合で発症します 全国で 60 万人近い患者さんが治療を受けています かつては 特別な病気 と考えられていましたが 病気や治療に関する研究の進んだ現在では治療可能な 脳の病気 と考えられるようになりました 早期に専門医の診察を受けて適切な治療を行うことにより 多くの患者さんは自立した社会生活をおくることが可能です

統合失調症の原因は一つだけではなく さまざまな要因が絡み合って発症します 人は生まれながらにしてストレスにもろい脳と ストレスに強い脳をもっている人がいます 統合失調症は 患者さんのうけたストレスが もろさ の限界を超えたときに発病すると考えられています この病気は 決して育て方や家庭環境が原因で発病するわけではありません また 直接的に遺伝する病気でもありません

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2. 統合失調症の症状と経過

そもそも 統合失調症 とは 統合 = 心や行動をまとめること失調 =できなくなる症 = 状態 のことです

症状は大きくわけると 陽性症状 と 陰性症状 にわかれます 陽性症状 通常ないものが存在する 症状で 発病後まもない急性期や再発時によくみられる症状 陰性症状 通常あるものが存在しない 症状で 消耗期や回復期に目立つ慢性の症状

陽性症状 幻覚 ( 幻聴 ) 実際にないものが見えたり 聞こえたりする 被害妄想 悪口を言われている 見張られているなど 実際にはありえないことを信じる 思考の混乱 ものごとを正確に判断 理解できない 支離滅裂な会話 感情の不安定さ 強い焦燥感 興奮 攻撃的 衝動的行動

陰性症状 感情の低下 周囲に対して無関心 表情や声の感情表出が乏しくなる 意欲低下 注意力 集中力が続かない 身だしなみに無関心になる 思考と会話の貧困 コミュニケーション能力の欠如 社会的ひきこもり 快感消失 非社交性 娯楽への関心や対人関係の欠如

統合失調症の症状は長い経過で推移し 時期によって症状が変化する傾向があります 多くの場合 陽性症状から出現し 治療をえて陰性症状が目立つようになります 陰性症状は急速な回復は容易ではなく じっくりと病気にむきあいながら 症状改善や社会適応の改善を目指す必要があります

経過 前駆期前兆となる自覚症状が発現する時期 急性期思考の混乱や興奮など激しい症状が発現する時期 消耗期急性期の激しい症状で消耗したエネルギーを蓄える時期 回復期ゆっくりと回復に向かう時期

前駆期 仕事や学業 家事などで壁にぶつかっているような感じがして自分に自信がもてなくなり 漠然とした不安感や焦りに襲われます 不眠や頭痛 動悸などさまざまな身体の不調を訴える場合もあります 特に理由もなく仕事や学校を休んだり 人を避けて自宅に引きこもろうとすることで 異常に気付かれることがあります

急性期 現実にはない声が聞こえたり ( 幻聴 ) 誰かに監視されている 狙われているといった妄想が現れ 極度な不安や恐怖感を感じます いらいらして落ちつかなくなったり興奮する人もいれば 1 日中閉じこもって独り言を言ったり一人でにやにや笑うなど 誰の目にも明らかなおかしな行動がみられる人もいます 家族の方が異常に気付き 病院を受診されるのもこの時期がほとんどです

消耗期 急性期の症状が落ち着いた頃から 疲労感が強い 身体が重くて気だるいといった無気力な状態が目立つようになり 睡眠もだらだらと長くなります これは急性期に消耗したエネルギーを充電するため に脳が休息している状態で 回復に向かう過程でみられる状態です まだまだ不安定な時期で 強いストレスなどによって再発するリスクも高く 患者さんをあせらせないことが重要です

回復期 少しずつ睡眠時間が短縮し 活動性も増加し 会話も増えてきます この頃になると 多少のストレスにも耐えられるようになります 回復のスピードはゆっくりですが 焦らずに治療と援助を続けることが大切です

3. 治療のながれ

薬物療法 精神療法 リハビリテーション 入院治療 統合失調症では薬物療法が治療の中心になります 症状によって精神療法やリハビリテーションも並行しておこなわれます 状態によっては入院による治療もおこなわれます

薬物療法 統合失調症の治療は抗精神病薬を中心に使用します 主な作用 幻聴や妄想など陽性症状を改善 無気力 活動性の低下など陰性症状を改善主な副作用 錐体外路症状 : 手のふるえ 身体が落ち着きなく動く 足がむずむずする 自律神経症状 : 口の乾き 便秘 尿が出にくい その他 : 体重増加 月経不順 高血糖など

薬物療法 作用や副作用について それぞれの薬剤の特徴を考慮しながら 薬剤の選択をおこないます 用量についても 状態をみながら調節します 一つの薬剤で効果がなかったり 副作用が強い場合にも 別の薬剤に変更すると上手くいくことがあります

薬物療法 薬剤は効果がでたときほど 継続が重要になります 統合失調症では薬剤の使用ですっかり症状がよくなった場合でも 服用を中止すると 1 年以内に 70-80% のかたが再発するという報告があります 継続的な内服が難しい場合 毎日の服用をおこないたくない場合に 2 週間 or4 週間に 1 回の筋肉注射をおこなう方法もあります

薬物療法 服薬の継続には 服薬アドヒアランス が重要になります 服薬アドヒアランスとは 患者さんが積極的に治療方針の決定に参加し 服薬するということです 従来の 服薬コンプライアンス という用語は患者さんが医師の指示に従って服薬をする という意味でした しかしながら 統合失調症のように長期にわたり服薬が必要な疾患では 患者さんの積極的な姿勢が重要になります そのためには 患者さんの疾病への理解がかかせません

精神療法 患者さんの心の安定をはかるための心理 精神的なサポートをおこないます 医師との面接を通して 自分の症状や病気に対する理解を深めることができます

精神療法における医師の役割 患者さんの悩みや心配事などの訴えに耳を傾け 一緒に考える 病気の特徴や治療法 取り組み方などを説 明する 患者さんに安心感を与える

精神療法の患者さんへの効果 不安が解消され 精神的な安定が得られるよ うになる 病気についての理解が深まり 医師や家族に正確な自分の状態を伝えられるようになる 病気の理解がすすみ積極的に治療にかかわるようになり 服薬アドヒアランスが向上する

リハビリテーション 対人関係やストレスへの対処法を学び 日常生活や社会生活への適応力を回復させるためのプログラム 急性期の激しい症状が落ち着いた後に 患者さんの回復過程に応じて行われます

消耗期 ~ 回復期前期 まだエネルギーを充電している時期なので あまり無理をかけると逆効果です 休養を優先させることが多いです リハビリテーションをおこなう場合も対人関係の刺激の少ない少人数のものを行います ( 作業療法 レクリエーション療法 )

回復期後期 ある程度回復してくると 少しずつ刺激を増やし ていきます グループ活動を通して対人関係の 練習をし 社会生活に慣れていくようにします ( デイケア 社会技能訓練 (SST) など )

入院治療 統合失調症の症状によっては 入院が必要になったり 入院での治療がのぞましい場合があります 興奮 攻撃性が強い場合 身体合併症がでた場合 希死念慮が強くなった場合など 入院が必要になります ご家族からみて 危ない場合は医師に相談しましょう また 医師から入院をすすめられた場合 それに従うほうが無難です

4. 患者さんが気をつけたいこと

日常生活で気をつけたいこと 再発を予防することが大切です 定期的な通院を忘れない 薬をきちんと服用するようにしましょう 小さなステップで少しずつ社会復帰を目指しましょう 焦ったり無理をしないようにしましょう 好きなこと 出来ることから少しずつ始めましょう音楽を聴く テレビを見る 雑誌や新聞を読んでみる簡単な買い物など外出してみる 親しい友人と会ってみる ご家族と相談して家事など日課を作って 生活リズムを整えるのも有効です

再発を予防するために 気をつけること 回復を焦らない 焦らせないこと回復までは良くなったり悪くなったりを繰り返しながら少しずつ安定していきます 自己判断で服薬をやめないこと再発を防ぐためには医師の指示通り服薬を継続することが大切です 定期的に通院しましょう再発したときの対処が遅れずにすみます 受診の際は医師へしっかり情報を伝えましょう

5. ご家族の対応と協力

未知の病気に対する不安や疑問 患者さんへの接し方など ご家族自身のストレスも計り知れないものがあります さまざまな不安や疑問を解決するためには まずはご家族が病気についての正しい知識を身につけることが大切です 正しい知識をみにつけて患者さんをサポートしていくことが 統合失調症の治療には大変有益です

統合失調症では患者さんの症状の安定や再発のしやすさに家族の関わり方が大きく関与しています 患者さんと身近な人との間で小言や叱責 非難など批判的な言葉が頻繁に交わされたり 逆に心配のあまりお互いの距離が近くなりすぎて過干渉になると 患者さんは神経の敏感さが高じて不安定になり 症状が長引いたり再発しやすくなってしまいます

患者さんが引きこもる 家族は心配して何かと声をかける 神経が敏感になっているため 責められていると思い ますます引きこもる 家族は不安や焦りから患者様へも不満や小言を口にするようになる 敏感さが刺激され さらに不安定になる

患者さんがやる気なく見えるのも だらだらしているのも病気特有の症状です この病気は患者さんの努力や頑張りだけで克服できるものではありません ご家族はゆっくりと気長に 患者さんの回復を見守りましょう

ご家族が行動やものの見方を変えるのも必要です 感情的に批判 非難しない 強く励まさない 温かく見守る ほどよい距離感を保つ

再発や症状悪化のサインには注意が必要です 食欲がなくなる 生活のリズムが崩れる そわそわと落ち着きがなくなる ひきこもりがちになる 突然 活動的になるなどがサインになります

再発のしやすさ がこの病気の大きな特徴です 一緒に生活しているご家族が 患者さんの雰囲気がいつもと違う 何か様子がおかしいと察知した場合は 再発の可能性があります 再発のサインを知り 何かおかしいと感じたら 早めに医師に相談してください

患者さんの妄想 幻聴はご家族にとっては対処に悩まされます 否定も肯定もせず 辛さに共感することをすすめます ご家族がコミュニケーションを多くとるようにすると 妄想や幻聴から注意がそれていき 状態が改善してくることもあります 妄想や幻聴がでてきたら 患者さんの横に座ってお茶やジュースをすすめるのも 注意をそらすのに有効なことがあります

患者さんのご家族の方々もご自身の生活や時間を犠牲にすることなく暮らしていくことが大切です 趣味や交友関係を保つなど ご家族自身もストレスをためない工夫が必要です 患者さんを取り巻く周囲の人がゆったりとした気持ちでいること 笑顔でいられることが患者さんの心の安定につながります

ご清聴ありがとうございました