平成 28 年度一般選抜入学試験個別学力試験出題意図 英語 前期日程 出題の趣旨とねらいは従来と同じであり 大学入試センター試験とこの個別学力検査によって英語の学力を総合的に判断することがねらいです 大学入試センター試験では 発音 文法 読解 リスニングなどの基礎的な能力が試されます したがって 個別学力検査では 英語の文章の内容を読み取った上で それぞれの設問に対する解答を自分のことばで表現できるかどうか また 日本語の文章の意味や自分の考えを 文法的に正しくかつ分かりやすい英語で表現できるかどうかを見ることになります 問題 Ⅰは ロシアからオーストラリアに留学した留学生が 母国と留学先では言語コミュニケーションの際の基本的な方法に違いがあり 単に言語としての英語を習得するだけでは円滑な人間関係を築くことができないことを述べた文章です 筆者がロシア語文化と英語文化にどのような違いがあると述べているか 正確に読み取ることが求められます 問題 Ⅱは 人間は古来より自然現象など そのままでは理解できない事象を分かりやすい物語にすることによって理解してきた側面があり それが科学が発達した今日にも依然として引き継がれていることを述べた文章です 英文を読み 物語化に関する論述を丁寧に正確に理解する力が試されます その基本となるのは基礎的な文法知識と語彙力です 問題 Ⅲは Jason と Emily の携帯電話に関する日常的な会話を題材とした問題です 各話者の基本的な論点を把握する力と 自分の意見を英語で発表するための基本的な表現力が求められる問題です 問題 Ⅳの英作文問題は 英語の基本的な語彙力と構文力を試す問題です インターネットによる情報伝達の特徴について述べた平易な日本文の意味を過不足なく英語で表現する能力が求められます 英文読解問題に正しく解答するためには 英語の語彙 文法知識を基礎として 出題文章の全体を理解する総合的な読解力と論理的な思考力が必要になります 和文英訳を含む英作文の問題では 正しい英語で表現する能力の他に 自分の考えをまとめて それを相手に過不足なく伝えるコミュニケーション能力も必要になります 読解問題にしても 英作文にしても 大切なのは基本的な語彙力と正確な文法力 ( とくに構文の知識 ) だということを再認識していただきたいと考えます また 今年度も 答案の文字 ( 英語 日本語 ) が読みづらい a と d などの記号解答に不明瞭なものがある などの指摘が採点者から寄せられました その点にも留意していただきたいと思います Ⅰ コミュニケーション方法に関する文化の違い問 1 英文和訳英語の基本的な構文と語彙に関する知識を確かめる問題です 問題の下線部において 構文に関しては 関係節 同格節 副詞節の三種が使われており それぞれ適切に解釈できているかを見ます 語彙に関しては特に形容詞を適切な日本語にできるかを見ます 結果としては 関係節の解釈 ( 先行詞の特定 ) に誤りが目立ちました また 語彙については dear previous といった形容詞のみならず via English の前置詞 via についても知識の不足が目立ちました 1
問 2 適語補充問題文全体の論旨をつかんだ上で 内容的にも構文的にも適切な英語の前置詞を自分で考えて答える問題です 綴りの知識も見ます 正答率は高くありませんでした 正解である through という前置詞に到達するためには 空所 X の次にモノを表す名詞が生じている箇所だけでなく X の次に attending a university course や living in Australia のような動名詞が生じている箇所もあることに注目する必要があります 問 3 同義語選択本文中に使用されている revelation という抽象名詞の意味を適切に捉えた上で これと置き換え可能な同義語を本文中から見つける問題です 問題文全体を丁寧に読んでいるかどうかを確認します 置き換え可能 という指示があるのですから 意味が同じで冠詞 a に続く ( つまり 子音で始まる ) 名詞を探せばよいことになります この点に配慮せず 形容詞や動詞を解答した受験者が多数ありました 問 4 適語選択正確な英文読解の能力を見る問題です 二つの空欄に入る単語 (more または less) の正しいペアを選ぶには maybe but definitely で示される意味関係を適切に解釈することのみならず 第 4 段落全体の論旨を正確に捉えることも求められます 誤答としては (a) が目立ちました 問 5 英文和訳無生物主語から始まる抽象性の高い表現を解釈する力を見るとともに make を用いた使役構文の知識を確認する問題です 下線部の英文は 主語 + 述語 + 目的語という骨組みをもち 主語と目的語のそれぞれが関係節で修飾されています この構造を理解できていない解答が目立ちました 問 6 内容説明まず この問題の英文全体が 言語使用と文化の相関を主張するものであることを理解しなければなりません その上で 個人の自律 を重視するオーストラリアの文化を反映している会話上のルールを読み取る問題です 第 6 段落と第 7 段落のそれぞれからオーストラリアの会話上のルールを説明した部分を見つけ 日本語で簡潔に説明することが求められましたが 正答率は高くありませんでした 1 つ目のルールに関しては close を物理的距離と解釈する誤答が目立ちました 2 つ目のルールに関しては第 7 段落が該当箇所であることを読み取れていないものがほとんどでした Ⅱ 物語の効用問 1 英文和訳問題文の論旨に合わせて 英語構文を正しく理解しているかどうかを問う問題です 英語の構文の理解 語彙 熟語表現の知識が重要ですが 前後の議論の流れから論理を理解する力も見ます people asked to describe~を ~を記述するよう求められた人々と理解できるか geometric shapes moving about a screen を意味的に主語 述部として理解できるか used を主節の動詞と理解できるか as if~を仮定法の文として理解できるかを見ます 引用符で囲まれた部分は先行する部分を理解するヒントとなったはずですが 期待通りの解答は多くありませんでした 問 2 英文並替英文を並べ替えて段落を復元させる問題により 論理的に段落を構成する能力を試す問題です それぞれ 2
の文の意味を理解し 可能な論理構成を冷静に考えると正しい文章の連結方法 すなわち英文の正しい順序 は唯一的に決まります 問 3 内容説明本文全体が 物語 の役割についての説明であることを理解し それが科学の分野にも当てはまることを 具体例に基づいて理解できるかを見る問題です ガリレオのピサの斜塔の話やニュートンが木から落ちるりんごを見た話はあまりにも有名ですが それを述べるだけでは不十分です それらの話がのちの人が作った虚構であるにもかかわらず それが科学の基本概念の理解や記憶に役立っていることを筆者が主張している点まで述べて欲しかったのですが 期待通りの解答は多くありませんでした remember には 覚える 記憶する と 思い出す の意味がありますがここでは前者として解釈すべきでしょう また figures には 数字 図 表 像 人物 など多様な意味がありますが ここでは 数字 と解釈すべきでしょう 解答を終えたら最後に 自分の書いた日本文が筋の通る日本文になっているかどうかを必ず点検する習慣をつけていただきたいと思います 解答が筋の通らない日本文になっている場合 それは理解が正しくないことを示しています 問 4 内容説明本文全体は物語の意義について述べているのですが この段落は いくつかの領域では過度の物語化に頼ることがないように戒め 物語に基づく理解への誘惑を断ち切る必要があることを述べています そのことを具体例とともに理解できるかを見ます some sciences の具体例が evolutionary biologists や medical and psychological research という形で現れていることが理解できるか また それらの分野において過度の物語性を想定するとはどういうことかを理解した上で解答していただきたかったのですが期待通りの解答は多くありませんでした Ⅲ スマートフォンの功罪問 1 内容の合致する英文を選択する問題スマートフォンについての二人の会話から両者の意見を読み取る力を問う問題です 正答率が比較的高い問題でした 問 2 制約つき自由英作文問題文の会話の流れを理解したうえで スマートフォンが時間の節約になるか 時間の無駄になるかのどちらかについて 本文に述べられていない根拠を挙げて英語で論じる問題です 本文で言及されていない理由を少なくとも 2 つ挙げているか 文法的に正しい英語で表現されているかがポイントとなります これも正答率が比較的高い問題でした Ⅳ インターネットとうわさ日本文で表現されている情報を 正しい英語構文を用いて過不足なく表現できるかどうかを問う問題です (A) 和文英訳 ~の情報が多いとして を関係節などを用いてうまく表現できているか うわさの巣窟 をその意味を考えた上で適切な語彙で表現できているか 考えると が分詞構文などを用いて適切に表されているかがポイントとなります 3
(B) 和文英訳 ~するにつれ を多様な可能性の中から適切な構文を選び ( 例えば副詞節や比較級を適切に用いるなど ) うまく表現できているか メディアが中心であった情報の流れ方 の意味を考えた上で表現が工夫できているかなどがポイントとなります (A)(B) ともに平易な日本文の英訳を求めたものだったことから大多数の受験者が最善を尽くして解答しましたが 各自の英語力を反映して点数がばらつく結果になりました (A) の うわさの巣窟 無責任な発言 インターネットのメディアとしての特性 や (B) の 情報の流れ方 マスメディアが中心であった などの訳出に誤りが散見されました また スペリング 動詞の三人称単数現在語尾 -(e)s 不可算名詞 可算名詞の区別など 基本的な文法事項が守られず得点を失っている答案が数多く見られました 後期日程 出題の趣旨とねらいは従来と同じであり 大学入試センター試験とこの個別学力検査によって英語の学力を総合的に判断することがねらいです 大学入試センター試験では 発音 文法 読解 リスニングなどの基礎的な能力が試されます したがって 個別学力検査では 英語の文章の内容を読み取った上で それぞれの設問に対する解答を自分のことばで表現できるかどうか また 日本語の文章の意味を 文法的に正しくかつ分かりやすい英語で表現できるかどうかを見ることになります 問題 Ⅰは 本来であれば私たちは実行できる仕事の量を正しく理解したうえで取り組む仕事の量を決めるべきですが そのことがよく分かっていながら 実際には予定通りに仕事を完了できないことが多々ありますが この問題について論じた心理学分野の英語論文の趣旨を正確に読み取り 分かりやすい日本語で解答することが求められます 問題 Ⅱは 大学 2 年生のギリシャ語のクラスで ソクラテスの弁明 を使用して授業を行っていた教師が ある学生からソクラテスはギリシャ人ではなくアフリカ出身の黒人だったのではないかという質問を受け それに対して ソクラテスはアテネ生まれのギリシャ人であったと考える方が論理的により妥当であることを述べた文章で 英語学習上 重要な構文や抽象的な意味の語彙が随所に散りばめられており それらの構文や語彙を正しく理解して解答することが求められます 問題 Ⅲは 部分的に崇拝する人のまねをすることがあっても物事の判断は独自の考え方によって決めたい また集中して思考するための一つの方法として慣れ親しんだ本の読書を勧める といった趣旨の 易しいけれども直訳はしにくい日本文の意味内容を 英語の基本的な語彙と構文を駆使して自然な英語で表現する能力が求められます 英文読解問題に正しく解答するためには 英語の語彙 文法知識を基礎として 出題文章の全体を理解する総合的な読解力と論理的な思考力が必要になります 和文英訳問題では 正しい英語で表現する能力が必要です 読解問題にしても 英作文問題にしても 大切なのは基本的な語彙力と正確な文法力 ( とくに構文の知識 ) だということを再認識していただきたいと考えます Ⅰ 人はなぜ締め切りに遅れるのか問 1 内容説明この文章のテーマとなっている planning fallacy についての説明を求める問題であり これが理解できないと文章全体が理解できていないことになります 第 1 段落の冒頭の文と最後の文 および第 2 段落の最後の文を参考にして解答欄に収まるようにまとめれば正解となります 正答率が比較的高い問題でした 4
問 2 英文和訳問題文全体の論旨を理解しているか また基本的な語彙や文法事項が理解できているかを問う問題です とくに 時間がかかる などを意味する take turn out to be~ という定型表現 what で始まる関係節の理解などがポイントとなる比較的容易な英文和訳問題です turn out は基本語彙ですが適切に訳されていない答案が目立ちました また how long all of my articles have taken to write の部分は完了形になっていますが それを無視した訳をしている答案が多数ありました 文の意味を解釈する時は 語彙の意味や構文の把握ばかりでなく 時制や完了形 進行形などの細部にも注意を払う必要があります 問 3 英文和訳問題文全体の論旨を理解しているか また基本的な語彙や文法事項が理解できているかを問う問題です 構文は難しくないはずですが go wrong という熟語の意味を適切な日本語に訳していない解答が目立ちました 無生物主語に続く go wrong ですので 間違える という解釈は適切ではありません また この文は過去時制の文ですが その点に注意を払わず現在のことと解釈している解答も数多くありました 問 4 内容説明著者の問題提起に対応する部分が解釈できているかを問う問題です 具体的には下線部が含まれる段落とその次の段落に述べられている内容を把握できているかどうかがポイントです まず Why 疑問文に対する答えを聞かれているのですから ~であるため ~であるから という形式で解答しなければなりません 2 つの答えのうち 1 つ目の答えはよくできていましたが 2 つ目の答えに関しては 最も重要な our failure is not realizing that a different problem is bound to happen. を正しく解釈できていない解答が多かったです これに先行する部分をまとめるだけでは不十分です また この文を解答すべき部分であると気づいたのに bound という語の意味が分からず 惜しくも解釈を間違えているという解答も多かったです Ⅱ ソクラテスは黒人だったか問 1 英文和訳問題文全体の論旨を理解しているか また基本的な語彙や文法事項が理解できているかを見る問題です 具体的には 筆者がプラトンの著作にこだわる理由を理解し それを正確に訳出できるかがポイントです おおむね良くできていましたが even if 節内の it を this traditional text ではなく to learn 以下の部分を指していると理解してしまった解答が若干ありました 問 2 英文和訳問題文全体の論旨を理解しているか また基本的な語彙や文法事項が理解できているかを見る問題です 具体的には 古典学者たちが ソクラテスがアフリカ出身の黒人であると言わない理由を理解し それを正確に訳出できるかがポイントです おおむね良くできていましたが instructor universally legacy を文脈に合致しない意味に訳している解答が見受けられました 問 3 英文和訳問題文全体の論旨を理解しているか また基本的な語彙や文法事項が理解できているかを見る問題です 具体的には 仮定法過去完了形の文であることに注意し それを正確に訳出できているかがポイントです ほとんどの解答が良くできていました 5
問 4 英文和訳問題文全体の論旨を理解しているか また基本的な語彙や文法事項が理解できているかを見る問題です 具体的には No...deny that~という部分を ~ということを否定する はいない という意味に訳せるかがポイントです おおむね良くできていましたが 文頭の No responsible を 無責任な とする誤訳も見られました 問 5 内容説明代名詞が指す内容を問う問題です 前後の文章の流れを理解していれば容易に解答できる問題です 全体的に良くできていました Ⅲ 独自の考え方をもち集中して考えること日本文で表現されている意味内容を基本的な英語構文を用いて過不足なく表現できるかを問う問題で 日本文を直訳するのではなく その意味するところを正しく分かりやすい英語で表現する能力を見ます 問題文はやや個性的な感覚について述べた文章で 述べていること自体は平易ですが そのまま直訳するとぎこちない英文になりがちです そこで 今回の受験者並びにこれからの受験者に 和文和訳 のプロセスによって英語に訳しやすい日本文にしてから英訳することをお勧めしたいと思います (a) 和文英訳 自分が素敵だと思った人 を a person who I think that he is wonderful/attractive のようにしている解答がありましたがこの that he は不要です どんなに拙くても の 拙い は childish(poor) などと直訳するより not so good/not perfect/not the best のように意訳する 答えを出す は find an answer to a problem/answer a question/solve a problem のように元の日本語にない要素 (a problem や a question) を補う そうすることで英語らしくなります また 自分自身の考え方 my/your own way of thinking の決定詞 my/your が欠落した解答が多数ありました オウンゴールという日本語になってしまったカタカナ語の影響かも知れません (b) 和文英訳 親しみのある本 を a famous book や my favorite book と訳した解答がありましたが a familiar book の方がいいでしょう 物語に没入せずに距離感をもった状態 を I did not enter the story well far away と訳した答案がありましたが 和文和訳 を経ることによって I am not perfectly absorbed in the story and some distance away from it などと訳すといいでしょう だんだん頭が覚醒する感じになる は I feel that my brain is gradually becoming sharpened[awakened] などと訳すとよいでしょう 6