阿武隈川の 概要 東北第2位 福島 宮城両県を 流れる阿武隈川の素顔 阿武隈川は 福島 栃木両県にまたがる那須連邦の旭岳 阿武隈川源流の旭岳 1,835m に源を発し 福島県の中通り地方 宮城県の県南地 方を流下後太平洋に注ぐ流域面積5,400 幹線流路延長は 239 流域面積で全国第11位 東北第

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3. 阿武隈川サミットの組織 阿武隈川サミットを構成するメンバーは 源流の福島県西郷村から河口の宮城県亘理町までの沿川の自治体です 福島県の7 市 5 町 5 村と宮城県の2 市 3 町 合計 22 市町村がメンバーとなっています このほかに アドバイザーとして国土交通省の福島及び仙台河川国道事務所

利水補給

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目 次 桂川本川 桂川 ( 上 ) 雑水川 七谷川 犬飼川 法貴谷川 千々川 東所川 園部川 天神川 陣田川

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2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

PowerPoint プレゼンテーション

東日本大震災における施設の被災 3 東北地方太平洋沖地震の浸水範囲とハザードマップの比較 4

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

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スライド 1

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近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流


現行計画 ( 淀川水系河川整備計画 ): 川上ダム案 治水計画の概要 事業中の川上ダムを完成させて 戦後最大の洪水を 中下流部では ( 大臣管理区間 ) 島ヶ原地点の流量 3,000m 3 /s に対して 川上ダムで 200m 3 /s を調節し 調節後の 2,800m 3 /s を上野遊水地や河道

Q3 現在の川幅で 源泉に影響を与えないように河床を掘削し さらに堤防を幅の小さいパラペット ( 胸壁 ) で嵩上げするなどの河道改修を行えないのですか? A3 河床掘削やパラペット ( 胸壁 ) による堤防嵩上げは技術的 制度的に困難です [ 河床掘削について ] 県では 温泉旅館の廃業補償を行っ

の洪水調節計画は 河川整備基本方針レベルの洪水から決められており ダムによる洪水調節効果を発揮する 遊水地案 は 遊水地の洪水調節計画は大戸川の河川整備計画レベルの洪水から決めることを想定しており 遊水地による洪水調節効果が完全には発揮されないことがある 瀬田川新堰案 は 瀬田川新堰の洪水調節計画は

五名再評価委員会資料

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3. 阿武隈川の現状と課題 利水に関する事項 阿武隈川流域内には環境基準点が 29 地点(湖沼を除く)設定されています BOD75%値の近 1 ヵ年平均値を見ると 大半の環境基準点では環境基準値を満たしていますが 環境基準値 を超過している地点も 3 地点あります 特に郡山市街地付近では BOD75

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見どころ満載な福島県 ドライブしながら クーポン使ってお得に楽しく遊んじゃおう 福島県の高速道路をドライブするだけで得しちゃう 福島ハイウェイドライブチャンス2015 それが 魅力いっぱいの温泉や観光施設を観てまわって お得な特典 をゲットしたら 豪華景品が当たる ラリー にもぜひ参加してみて お得

2. 大和川について が 難波津 現在の大阪 から船で大和川をさか 奈良県には奈良盆地のほぼ全域を流域とし 大阪 のぼり 初瀬川から三輪山麓の海石榴市 つばい 平野を西に横切って大阪湾に注ぐ全長68kmの一級 ち に上陸 飛鳥の宮に至ってから1400年となる 河川である大和川が流れている 記念すべき

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スライド 1

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1 伊達市の概況と東北中央自動車道 ( 相馬福島道路 ) 整備による影響 (1) 伊達市の概況 1 広域的な立地条件 本市は 福島県の中通り地区最北端に位置し 西側は県都福島市に隣接しているほか 西は桑折町 国見町 東は相馬市 飯舘村 南は川俣町 北は宮城県白石市 宮城県丸森町にそれぞれ接している

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資料6

資料4 検討対象水域の水質予測結果について


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鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

ダムの運用改善の対応状況 資料 5-1 近畿地方整備局 平成 24 年度の取り組み 風屋ダム 池原ダム 電源開発 ( 株 ) は 学識者及び河川管理者からなる ダム操作に関する技術検討会 を設置し ダム運用の改善策を検討 平成 9 年に設定した目安水位 ( 自主運用 ) の低下を図り ダムの空き容量

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新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川洪水浸水想定区域図 ( 計画規模 ) (1) この図は 新川水系新川 中の川 琴似発寒川 琴似川の水位周知区間について 水防法に基づき 計画降雨により浸水が想定される区域 浸水した場合に想定される水深を表示した図面です (2) この洪水浸水想定区域図は 平成

阿武隈川河川整備計画素案

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4. 堆砂


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いる この中で 自然と共生した持続可能な循環型社会の推進 に向けては 地球温暖化をはじめとした環境問題は年々深刻さを増す中 東日本大震災で改めて 自然 がかけがえのない大切なものであること 私たちも生態系の一部として 共生 していることを痛感したところであり これを教訓として 豊かな水と緑が育む自然

2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

重工業から農林漁業まで 幅広い産業を支えた動力機関発達の歩みを物語る近代化産業遺産群 *

安全証明書 平成 23 年 4 月 1 日 伊達物産株式会社緊急対策本部広報 伊達物産株式会社にて取り扱う鶏肉について 下記の通り 安全であることを証明致します 記伊達物産株式会社で取り扱います 福島県産伊達鶏 並びに国産若鶏につきまして 緊急時モニタリング検査結果について ( 福島県 肉 ) の検

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ポイント 河川法の法令に基づく手続きを的確に行い できるだけ早く河川整備計画を策定するよう努力 ダムについて効果が限定的という意見もあるが 実施箇所だけでなく淀川水系の上下流全体に幅広く効果があるものであり また洪水時水位をできるだけ低くし安全基準を守る上で必要不可欠なもの 治水対策は あらゆる規模

1. 湖内堆砂対策施設の見直し 1.2 ストックヤード施設計画 ストックヤードの平面配置は 既往模型実験結果による分派堰内の流速分布より 死水域となる左岸トラップ堰の上流に配置し 貯砂ダムから取水した洪水流を放流水路でストックヤード内に導水する方式とした ストックヤード底面標高は 土木研究所の実験結

Microsoft PowerPoint - 宇治災害2

(1) 洪水調節サンルダムの建設される地点における計画高水流量 700m 3 /s のうち 610m 3 /s の洪水調節 を行う (2) 流水の正常な機能の維持下流の河川環境の保全や既得用水の補給等 流水の正常な機能の維持と増進を図る (3) 水道名寄市の水道用水として 名寄市真勲別地点において新

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荒川上流ダム再開発事業 ( 実施計画調査 ) 目 次 1. 事業の概要 1 1) 荒川流域の概要 1 2) 荒川上流ダム再開発事業の目的 2 2. 事業の進捗状況 ( 事業の進捗の見込みを含む ) 4 3. 事業の必要性等に関する視点 5 1) 事業を巡る社会経済情勢等の変化 5 4. 県への意見聴

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研究所報告15号

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最上圏域河川整備計画 最上地区小委員会

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阿賀野川 早出川 阿賀野川平面図 国管理区間 附図 -2

西 郷 村 阿武隈川と西郷村 江戸時代の白河藩主松平定信公は彼の著書 関の秋風 に 白川へ至りてかし の山見ざらんは 孔子の門過ぎてはいらざるが如し かしの山へ至りて楓葉の風 色見ざらんは 堂に至りて 室に入らざるが如し と記しています その甲子の奥深く那須山系三本槍岳に源を発する阿武隈川は 甲子に

東三河の水事情 豊川総合用水事業の評価と設楽ダムをめぐって市野和夫 ( 愛知大学元教授 理博 ) はじめに現在 設楽ダム建設事業の 検証作業 が事業者である国土交通省中部地方整備局自らの手で続けられている 事業推進をしてきた事業者自身が事業推進に有利な土俵を造って 非公開で検証

第3章 阿武隈川の絆 航空写真 水質対策に対する取り組みについては 昭和60年度より農業集落排水事業に着手し平成14年度に全村整備が終了 し 還元水の大幅な水質改善が図られ環境改善の一助となっています 今後の課題 本村は緑化木の村と呼ばれるほど 庭木等の生産が盛んで自然景観 農村景観を活かした住民総

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資料 -5 第 5 回岩木川魚がすみやすい川づくり検討委員会現地説明資料 平成 28 年 12 月 2 日 東北地方整備局青森河川国道事務所

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琵琶湖周辺に対する効果再開発事業の背景と目的 1: 治水 琵琶湖周辺や宇治川では これまで浸水被害が度々発生しています 再開発事業により 洪水調節機能の強化を図ります 背景 ( 過去の洪水被害 ) 発生年月起因被害状況 昭和 28 年 9 月 台風 13 号 死者 ( 不明者含 )178 人 負傷者

4. ダム再生事業の概要 38

水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

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1 CHAORI SOLAR 総 合 カタログ 2

第 7 章砂防第 1 節砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ケ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県の地

水利用と水利権

して 今後広瀬ダム取水に関わる施設整備に着手する予定です 広瀬ダム水源の取水開始は 平成 25 年度を目標としています 山梨地域の各簡易水道事業は 昭和 27 年度から昭和 39 年度の間で給水を開始しています 水道施設の現状として これらの簡易水道等施設では沢水や湧水を水源としているため 降雨時の

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国土技術政策総合研究所 研究資料

河川工学 -洪水流(洪水波の伝播)-

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第 7 章砂防 第 1 節 砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ヶ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県

本編_淀川水系淀川右岸ブロック河川整備計画(変更)第2章.doc

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阿武隈川の 概要 東北第2位 福島 宮城両県を 流れる阿武隈川の素顔 阿武隈川は 福島 栃木両県にまたがる那須連邦の旭岳 阿武隈川源流の旭岳 1,835m に源を発し 福島県の中通り地方 宮城県の県南地 方を流下後太平洋に注ぐ流域面積5,400 幹線流路延長は 239 流域面積で全国第11位 東北第3位 流路延長で全 日本の川ランキング 国第6位 東北第2位 の一級河川です 流域面積 1 利根川 長さ 16,840 1 信濃川 367 2 石狩川 14,330 2 利根川 322 3 信濃川 11,900 4 北上川 10,150 3 石狩川 268 5 木曽川 9,100 4 天塩川 256 6 十勝川 9,010 5 北上川 249 7 淀川 8,240 6 阿武隈川 239 8 阿賀野川 7,710 7 最上川 229 最上川 7,040 - 木曽川 229 流域内人口 136.4万人 9 10 天塩川 5,590 9 天竜川 213 平成22年 国勢調査 11 阿武隈川 5,400 10 阿賀野川 210 諸 元 流域面積 5,400 全国第11位 東北第3位 幹線流路延長 239.3 全国第6位 東北2位 想定氾濫区域 面積 618.5 人口 48.5万人 資産 8,440,000百万円 かんがい面積 390 河川指定延長 1,947.0 総河川敷196 河口 宮城県岩沼市 亘理町 由 来 えん ぎ しき 阿武隈河川の呼び名は 古くは 延喜式 927 に 安福麻 や くも み しょう あ づまかがみ 八雲御抄 1234 に 合曲 吾妻鏡 1180 1265 に 遇 隅 とあり また近世では 逢隅 青熊 大熊 の用字が見られます が 阿武隈川の下流部が阿武隈山脈の突端に阻まれてU字型に大 きく曲流しているので 大曲川 が語源といわれています つまり おほ あふ あぶ と変わったもので 語源の おほくま が転じて あぶくま となったという説です 福島市の東部を流れる阿武隈川 18

第2章 流域特性 阿武隈川水系模式図 太平洋 流域の特徴は 左岸に急峻で土砂流出の多い火山性の奥羽山脈 右岸に比較的穏やかで丘陵 岩沼市 常磐線 的な阿武隈産地を有しており 河道には 岩が露呈した狭窄部が断続的に存在し 狭窄部の上流に 東北本線 角田市 平面図 形成された盆地内に都市が発達し 沿川の主要都市の多くは左岸側に位置しています また 福島県の中通り地方及び宮城県の県南部は 東北地方でも降水量の比較 的少ない地域であるため 阿武隈川の流域の年間降水量は 山間部で1,500 白石川 広瀬川 1,800 平地部で1,200 1,300 程度と 移川 須賀川市 釈迦堂川 杉田川 東北本線 逢瀬川 五百川 荒川 松川 郡山市 二本松市 移川 右支 200 福島 川 摺上 松川 松市 二本 荒川 田市 角 市 岩沼 乙字滝 市 狭窄部 150 大滝根川 水郡線 宮城県 福島県 100 なっています 福島市 縦断図 摺上川 250 阿武隈川の素顔 川 五百 市 郡山 川 杉田 根川 堂川 釈迦 大滝 川市 須賀 川 広瀬 右支 狭窄部 標 高 m 50 流点 川合 白石 狭窄部 0.0-10 0 10 20 30 40 60 70 80 (0.0) 49.6 距離標 km 90 100 110 120 130 140 150 160 KM 降雨特性 福島県 宮城県の県境狭窄部を流れる阿武隈川 19

砂 阿武隈川の 治水 防 阿武隈川水系の砂防事業は 明治33年に福島県が荒川流 域で着手したのが始まりで 直轄による砂防事業は 昭和11年 に最も荒廃の著しい荒川地区が施工区域にへ編入され 昭和 25年に松川流域 昭和52年には須川流域が編入され この3 流域で実施しています 直轄砂防流域は吾妻 安達太良山の火 山特有の崩壊地があり 流域内の大量の不安定上砂が下流へ 流送されており 下流にある保全対策である県都福島市を土 砂災害から守るため 流域の特性を等を配慮しながら事業の推 郷土を守り いつも安全な川に 進を図っています 荒川大暗渠砂防堰堤 阿武隈川の本格的な治水対策は 福島県については大正8 年から 宮城県内の河川改修及び荒川の砂防事業については 昭和11年から実施され 中小洪水に対してはほぼ対応できる 河道が整備されつつあります しかし 流域の治水安全度の向 上とともに 阿武隈川の沿川に都市が発達し 人口 資産の氾濫 域への集積が進むなど より安全な社会基盤を整備する必要性 が高まっています 近年において昭和61年8月洪水 平成10 年8月洪水 平成14年8月洪水 平成23年9月洪水など大規 模な洪水被害が度々発生し 段階的に大きな被害を受けた地 区を中心に堤防等の整備を進めてきましたが ハード面の整備 松川流路工 と併せて 被害を最小限にくい止めるためのソフト面からの対 策や 構造的に水害に強い街づくりを推進する等 これからの 治水対策には多肢に渡る対応が必要となっています 河川整備 昭和50年代以降 社会状況の変化として 水に親しみ 触れ 合える河川とともに 生態系を重視した自然環境の保全 創出 に対する要望が高まりました そのような状況の中から 平成9 年には 河川法 の一部が改正され 同法の目的に 治水 利 水に続いて 河川環境の整備と保全 が加えられました 阿武 隈川水系では 平成16年に策定された 阿武隈川水系河川整 備基本方針 に沿って 平成19年 阿武隈川水系河川整備計 画 が策定されました この計画に基づき 阿武隈川流域の自 然 社会 歴史 文化を踏まえ 安心 安全が持続でき 豊かな 自然を次世代に受け継ぎ さらには流域の自然と人と社会が調 和した活力ある流域を創造する阿武隈川の整備を進めていき ます 阿武隈川と広瀬川の合流点付近 伊達市梁川町 20

第2章 阿武隈川の素顔 治水計画 阿武隈川の治水計画は 150年に1回起こる可能性のある 豪雨に対応することを目標として以下に記述する内容が定め られています この計画の流量を安全に流下させるため 築堤 や河道堀削等の河川改修を行っています 上流 福島 計画規模 降雨確率1/150 基準地点 上流 岩沼 計画規模 降雨確率1/150 基本高水流量 計画高水流量 福島 7,000 /s 5,800 /s 岩沼 10,700 /s 9,200 /s 阿武隈川水系のダム 宮城県 面積 618.5 想定氾濫区域 岩沼市 人口 48.5万人 白石川 資産 844,000千万円 七ヶ宿 ダム 山形県 ダ ム 摺上川 ダム 摺上川 福島市 洪水調節 広瀬川 荒川 阿武隈川の治水計画は 昭和49年に工事実施基本計画の 二本松市 改 訂がなされ 基 準 地 点 福 島 及 び 岩 沼で 基 本 高 水 流 量を 7,000 /s 10,700 /sとし この内1,200 /s 1,500 /sを上流ダム群によって調節し 計画高水流量5,800 /s 9,200 /sと決定されています 七ヶ宿ダム 摺上川ダム 三 逢瀬川 春ダムは 阿武隈川の上流ダム群として沿川地域一体を洪水 郡山市 の氾濫から守ります 大滝根川 三春ダム 釈迦堂川 七ヶ宿ダム 集水面積236.6 総貯水容量1億900万 有効貯水容量9,950万 堤高90mの中央コア型ロック フィルムダムです 洪水調節の他 流水の正常な機能維持 かんがい用水 上水道用水 工業用水の供給の 目的を持つ多目的ダムとして昭和48年度に着工し 平成3年度に完成しました 仙南及び仙塩地区への水 道用水 工業用水の供給及び白石川沿川など約2,800haの農地へのかんがい用水の供給を行っています 摺上川ダム 集水面積160 総貯水容量1億5,300万 有効貯水容 量1億4,800万 堤高105mの中央コア型ロックフィルダム です 洪水調節の他 流水の正常な機能維持 かんがい用水 上水道用水 工業用水の供給 発電の目的を持つ多目的ダムと して昭和57年度に着工 平成17年度に完成しました 完成後 は 福島市 二本松市 伊達市 桑折町 国見町 川俣町への水道 用水供給や 湯野 伊達保原 国見 富野 梁川東部 伊達西根 堰の計4,200haへのかんがい用水の供給を行っています 三春ダム 集水面積226.4 総貯水容量4,280万 有効貯水容量3,600万 堤高65.0mの重力式コンク リートダムです 洪水調節の他 流水の正常な機能維持 かんがい用水 上水道用水 工業用水の供給の目 的を持つ多目的ダムとして昭和47年度に着工し 平成9年度に完成しました 完成後は 郡山市 三春町 田村市 本宮市への都市用水 上水道と工業水道 や 郡山東部地区と三春南部地区の約4,100haへかん がい用水の供給を行っています 21

目的別水利権量 取水量 の割合 平成23年 阿武隈川の 利水 上水道 2.6% その他 0.0% 工業用水 1.8% かんがい用水 29.9% 1,364,000人の 営みを支える水 発電用水 65.7% 阿武隈川の利水は 舟運としての利用が古く 記録にあるの 阿武隈川流域には 136.4万人の人々が生活しており は江戸時代の1660年代から 明治20年 1887年 の東北本 特に福島県については 全面積の約30 にあたる4,080k 線の開通の頃までの約220年間です かんがいについては の阿武隈川流域に全県人口の約56 に当たる114.6万 古くから用水の確保に努力が注がれており 摺上川の水を伊 人が居住しており 県内農地の24 に当たる39,000haの 達地方へ導いた西根堰 江戸時代 や 猪苗代湖の水を郡山 かんがいが行なわれています 許可水利権 市の開拓に用いた安積疎水 明治15年 等 先人達の努力が 現在も大きな役割を果たしています 現在の水の利用は 農業 用水として約39,000haに及ぶ耕地のかんがいに利用され 水力発電としては明治28年に建設された庭坂第一発電所を 始めとする24箇所の発電所により94,000kwの電力供給が 行われています また都市用水として 水道用水は沿川諸都市 水利使用量の変化 384.2 400 平成 2 年 350 の約260万人に供給が行われ 都市周辺に集中する工場等に 250 対する工業用水として 約5 sが取水されています 200 平成23年 197.1 196.1 115.1 100 0 108.0 89.3 3.3 7.2 7.8 6.1 6.0 5.3 上水道 工業用水 水道用水 上水道用水は 郡山市 福島市 岩沼市 角田市 白石市 柴 田町 丸森町等で約7.8 sの取水が行われ 約260万人の 人々への供給が行われています すりかみ上水道 22 298.5 188.2 150 50 319.0 平成14年 300 かんがい 発電 合計

第2章 農業用水 農業用水は 古くから阿武隈川が利用されており 現在は 約39,000haのかんがいが行なわれています 蓬萊ダム 工業用水 工業用水は 白河市 須賀川市 郡山市 福島市 白石市 岩沼市など大都市周辺に化学 繊維 食品等の工場が集まっ ており 仙台港地区 および郡山地区の産業都市指定に伴っ て工場が増加していることもあり 今後は発展要因を見据え て 将来の安定した水需給体制を構築することが必要となっ てきています 阿武隈大堰 発電用水 水力発電所は 本川 支川に明治以降設置され 現在では本 流域最大の蓬莱 信夫両発電所を始め 計24ヵ所で総最大出 力94,000kwの電力を供給しています 信夫発電所 23 阿武隈川の素顔

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阿武隈川の 歴史 舟運が人々の生活を 支えていた 現存する玉崎河岸の蔵 岩沼市 中流域の舟運 古代より流域の人々は 物流や水上交通に川を利用しな がら生活してきました 阿武隈川の舟運は 江戸時代の 1660年代 年貢米を江戸に回送するために始まり 明治 20年 1887 仙台までの東北本線の開通に伴い 鉄道を 利用した陸上輸送が主となると次第に衰退していきました 阿武隈川の舟運は 大きく三つの流域に分けることができ ます 福島から福島県と宮城県の県境水沢 沼ノ 上までの中流域 中流域については 米沢藩により明暦から万治年間頃には 廻米が開始されていたと見られていますが 福島河岸と水沢 沼ノ上河岸間の舟運は 寛文年間に開始されています 寛文4 年 1664 江戸商人渡辺友以が福島から水沢 沼ノ上河岸間 の川ざらいを行い 舟路を開きました その後 寛文10年 1670 信達幕領の廻米を命じられた河村瑞賢により航路が 整備され 翌年航路 東廻り航路 が完成しました 当初は 信達幕領の年貢米や福島藩 米沢藩の年貢米輸 下流域の舟運 水沢 沼ノ上 宮城県丸森町 から河口荒浜 宮城県亘理町 までの下流域 送 その後江戸時代後期になると信達地方から特産の蚕種 生糸等の輸送が始まり 下流からも日用品が運ばれるように なりました 阿武隈川で最も早く舟運が始まった流域で 水沢 沼ノ上河 岸 宮城県伊具郡丸森町 と荒浜の間では寛永年間 1624 1643 には ひらた 舟による舟運が開始されていたとされ ています 下流域では 奥州街道と阿武隈川が接するただ一つの河岸 である玉崎河岸 宮城県岩沼市 があり 荷物を取り扱う中心 は玉崎問屋の渡辺家であり 今に続いています 阿武隈川を利 用して信達地方から仙台方面に送る物資は 玉崎で陸揚げさ れ ここから陸路仙台等に運ばれました 復元された小鵜飼舟 山形県酒田市所蔵 廻米の絵馬 国見町深山神社所蔵 26

第2章 福島河岸から水沢 沼ノ上河岸間には16の河岸があり 輸送 阿武隈川の素顔 阿武隈川舟運図 県指定重要文化財 福島市ふれあい歴史館所蔵 請負業者により小鵜飼舟を利用して水沢 沼ノ上河岸まで運ば れ ここで ひらた 舟に積み替えされ荒浜までは運ばれまし た そして荒浜から松島湾の寒風沢まで小廻船で運び さらに 千石舟に移され江戸へと運ばれました この福島河岸から水沢 沼ノ上河岸までの舟の水路と沿岸 部そして各河岸が描かれたのが 阿武隈川舟運図 県指定 重要文化財 で 明和8年 1771 頃に作成されたとされてい ます 福島河岸 現御倉邸 付近 上流域の舟運 白河から福島までの上流域 福島河岸の上流には蓬莱岩という難所があり 上流から荒浜 ②鬼生田河岸 才俣河岸 二本松市供中 明治元年 元塙領大和久村市右衛門 元白川領明岡村 まで通しての舟運は実現しませんでした 上流域の舟運は 通船時期により二つに区分できます 茂平等の再願により小鵜飼舟 方言こげえぶね で通船し ①川原田河岸 西白河郡中島村 鬼生田河岸 おにゅうだ ました 最盛期には明岡河岸に24艘あったといわれてい 郡山市西田 ます 嘉永2年 1849 川原田村良平 明岡村茂平等により 福島河岸の上流に蓬莱岩の難所があるため 荷物は二 塙代官所へ12里の通船願いが出され 7年後の安政3年 本松で陸揚げされ 馬で福島まで運ばれ そこから舟に積 1856 にようやく通船しました 最大の難所乙字ケ滝に み替えて川を下ったといわれています は 掘割工事で運河が造られました 着工以来3年を経て も完成しなかった難工事でした 河岸は川原田 明岡 中宿 鬼生田の四箇所が設けられました 阿武隈川通船絵図 川原田河岸 中宿河岸 現中島村 現須賀川市 付近 2005年 及び 注 本文は 竹川重男 阿武隈川の舟運 阿武隈川サミット実行委員会刊行 阿武隈川の歴史と 文化 1997年3月 を中心にまとめたものです 27

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