公益社団法人北海道勤労者医療協会勤医協中央病院 33 No. 2015.5 糖尿病を かかえて生きる患者さんを チーム医療で支えます
2 日本人の寿命が伸びる一方で糖尿病の有病率が上がっています 生活習慣病 の代表格ともいえる糖尿病を治療するには 薬剤投与のほか 食事療法や運動療法といった生活習慣全般の改善が欠かせません そこで 勤医協中央病院では 多職種協働でさまざまな角度から患者さんと関わり それぞれの専門性を持ち寄ってトータルケアを行う チーム医療 を実践しています 糖尿病をかかえて生きる患者さんをチーム医療で支えます糖尿病は肥満のある中高年の病気というイメージが浸透していますが 近年は若年層の糖尿病が増えています 幼少期からジュースやスナック菓子を過剰摂取し 10 代でコンビニエンスストアやファストフード店などを頻繁に利用した食事をしていると脂肪摂取比率が高まり 肥満や高脂血症になりやすく 糖尿病のリスクも上昇します 糖尿病は自覚症状に乏しいことから診断が遅れがちです 高血糖を放置したまま生活していいま 若者が危ない!視覚障害者の5 人に1 人は糖尿病による失明で 透析導入者の4 割以上が糖尿病の患者さんです しかし 糖尿病という診断を受けても 自覚症状 がないことから 治療に対するモチベーションが維持できず 血糖のコントロールが不良となったり 治療が中断したりするケースが少なくありません 糖尿病は脳卒中や心筋梗塞の強力な危険因子でもあることから 糖尿病の治療は重大な動脈硬化性疾患を予防することにもつながります 早い段階で糖尿病の発症に気づき 適切な食事療法や運動療法をきちんと行い 糖尿病をコントロールすることができれば 80 歳 90 歳になっても元気に過ごせます そのために 患者さん一人ひとりの病態 暮らしや仕事を理解し その人に合った治療方法を適切に伝えることを心がけています コントロールできる病気です糖尿病内分泌 腎臓病センターセンター長伊いこた古田明あけ美み
3 ることで合併症が進行し 自覚症状が出たときにはかなり悪化しているケースも少なくありません 糖尿病は発症してからでは改善が難しいため 予防治療や早期発見に力を入れなければ患者数は減少しません 小児科や健診センターと連携しながら 若年層の生活習慣病予防に関わりたいと思っています 尿が泡立つ 匂う 残尿感がある 頻尿になった 尿の量が多くなった 口が常に渇いている 水や清涼飲料水をよく飲む 味覚が急に変わった 足がむくみ 重みを感じる 痙攣やこむら返りを起こす血糖値が上がると糖尿病は 膵臓で分泌されるインスリンというホルモンが不足することで血中に大量のブドウ糖が溶け込み 血糖値が異常に高くなる状態です 高血糖状態が長く続くと 血管壁の細胞が障害されるため細小血管障害が起こり さまざまな合併症をもたらします 糖尿病は大きく分けると1 型と2 型がありますが 日本人のほとんどは2 型糖尿病です 糖尿病になりやすい遺伝的な体質とともに 食生活と運動習慣の影響で発症すると考えられています 高血糖状態が続き血管細胞にダメージを与える病気です早期に十分な治療が受けられれば 進行を抑えることも可能です一度発症すると完治できませんさまざまな症状が現れます厚生労働省が発表した 平成24 年国民健康 栄養調査 によると 糖尿病が強く疑われる人が全国で約950万人 糖尿病の可能性を否定できない人が約1100万人 合計約2050万人と推計されています 20 歳以上の成人の4 人に1 人が糖尿病か その予備軍です 若年 2 型糖尿病の背景 20 代 30 代 検査を受ける機会がない 自覚症状がないまま10 年以上経過 若年であるがゆえに受診 診断が遅れる全日本民医連医療部が調査してきた若年 2 型糖尿病患者の実態についてまとめた報告書が 2014 年に公表されました 4 人に 1 人が糖尿病か その予備軍辛い症状が出て初めて受診すでに合併症を発症している通院や治療継続が難しい労働 生活 経済状況下にいる若年の患者さんの1/4が治療を中断してしまう食べ過ぎや運動不足による肥満状態ジュースやスポーツドリンクなどの加糖飲料を過剰摂取する食習慣幼児期 ~10 代運動習慣がないセルフチェック血圧が高い20 歳の時に比べて体重が10 kg以上増えた血縁者に糖尿病の人がいる若年層は糖尿病が悪化する環境要因が多い 不安定な雇用形態による貧困 不規則な生活による深夜の食事や睡眠不足 主な食事にコンビニエンスストアやファストフード店を利用 食べ過ぎや運動不足による高度肥満状態への進展こんな人は要注意
糖尿病の 糖尿病の本当の恐ろしさは 持続性の 高血糖を放置したままでいることで起 こる合併症にあります なかでも 糖 尿病性網膜症 糖尿病性腎症 糖尿 年で発 病性神経障害 は糖尿病に特徴的なも ので 糖尿病発症時から 症すると言われています さらに 心 自覚がないまま 静かに進行します 糖尿病の発症に気がつかずに血糖値が高 いままの状態が続くと 全身の細小血管が 障害され 血栓が出来て詰まったり 血管 が 切 れ て 出 血 が 起 こ っ た り し ま す ま た 血液中のブドウ糖が全身のさまざまなタン パク質と結合し 本来の機能を果たせなく 倍で 若年層に多いの 倍です また 脳梗塞の頻度は が多く 心筋梗塞の発症頻度は非糖尿病患 者の 非糖尿病患者の約 が特徴です 全身に及ぶ合併症を チーム医療で 勤医協中央病院には さまざまな糖尿病 特に腎臓や目の網膜 神経に障害が現れ 病 患 者 さ ん の 足 病 変 を 診 る フ ッ ト ケ ア き る 体 制 が あ り ま す 2011 年 に 糖 尿 い合併症には 動脈硬化性疾 糖尿病があると起こしやす 対 応 し 必 要 な 時 に 適 切 な 治 療 を 行 え る を行いながら 全身に及ぶ合併症の治療に 必要に応じて病棟や外来でカンファレンス 勃 起 障 害 皮膚感染症 筋梗塞や脳梗塞など生命に関わる合併 や す い こ と か ら 糖尿病性 チーム を立ち上げました 関係する各診 合併症に対応できる各専門医が常に連携で 網膜症 糖尿病性腎症 糖 尿病性神経障害 は 患 心筋梗塞 脳梗塞 閉塞 各専門医とスタッフによる 糖尿病フットケアカンファレンス の壊疽などがあります 糖尿 看護師 糖尿病 内分泌内科医 体制 を整えています 査技師 薬剤師 理学療法士などとともに 療科の専門医が 看護師や管理栄養士 検 なってしまいます 2 4 循環器内科医 主治医 病 の 患 者 さ ん の 死 亡 原 因 は 生殖器 整形外科医 性動脈硬化症 や感染症 足 症と呼ばれています 3 がんに次いで動脈硬化性疾患 膀胱炎 15 症を引き起こしやすくなります 肺炎 肺結核 3 大合併 四肢 下痢 便秘 腸 腎盂腎炎 糖尿病性腎症 潰 瘍 壊 疽 皮膚感染症 皮膚 腎臓 10 起立性低血圧 立ちくらみ 狭心症 心筋梗塞 心臓 歯周病 歯 肺 顔面神経麻痺 顔 目 手足のしびれや痛み 下肢閉塞性動脈硬化症 こむらがえり むくみ 糖尿病性神経障害 膀胱 脳 梗 塞 脳 出 血 糖尿病性昏睡 脳 白内 障 緑 内 障 糖尿病性網膜症 合併症 恐ろしい 全身に及ぶ糖尿病の合併症 4
糖尿病の進行 糖尿病になりやすい 遺伝的要因や 生活習慣がある人 ほとんど自覚症状がない 健康診断などで血糖値の異常を 指摘されるまで気づかない 体がだるい 目がかすむ できものができやすい てケガや熱傷に気がつかずに 重症化さ せたり壊疽を起こして手足を切断せざる を得ない状態になることもあります 長時間歩き続けてでき た水泡が悪化 います の重篤な疾病を予防しています めながら足の状態を観察し 壊疽など ケアを行い コミュニケーションを深 の発症リスクが高い方を対象にフット をしている糖尿病の患者さんで足病変 働したフットケア外来では 通院治療 当 院 で 2013 年 月から本格稼 年 間 3000 人 以 上 が 足 を 切 断 し て 糖 尿 病 に よ る 足 病 変 で 壊 疽 に 至 り 髙橋 夏絵師長 皮膚がかゆい 口臭が強い 心筋梗塞や脳卒中などの症状を 引き起こしやすい 糖尿病性腎症 腎臓が機能しなくなって人工透析 こたつで気づかない うちに足を熱傷 皮膚排泄ケア認定看護師 糖尿病性末梢神経障害の感覚異常によっ フットケア外来 手足の壊死 足病変の発症を予防する 糖尿病性腎症の患者さんの病理組織には結節性病変や 滲出性病変が認められる 眼底全体に細かい出血や 白斑が見られる 眼底の血管走行は スムーズである 糖尿病性網膜症 異常 正常 網膜が破壊されて失明 糖尿病性神経障害 壊疽を起こして手足を切断 糖尿病は自覚症状が ないまま進行します 放っておくと 取り返しの とに いこ つかな 5 9 腎臓機能の低下 網膜の破壊 初期 中期 末期 糖尿病性網膜症では網膜が破壊され 視力が低下したり失明すること 糖尿病性腎症では糸球体の毛細血管が破壊され も 糖尿病で視覚障害になる人は年間 3,000 人と言われています 腎臓が機能しなくなります 人工透析者の 4 割以 上が糖尿病性腎症です 眼底写真
6 2 型糖尿病の進行を制御するためには 運動の継続 食事の改善 必要に応じた薬物療法を日々確実に行うことが大切です その取り組みが合併症を防ぐことにつながります 勤医協中央病院では 患者さんが自主的に治療に関われるようサポートする 2 週間の 教育入院 を実施しています 糖尿病教育入院プログラムは 自己管理によって積極的に血糖をコントロールできるようになることを目指すものです 治療や検査 講義を行うだけでなく 医師 薬剤師 管理栄養士 看護師 理学療法士 検査技師などが それぞれの立場から検査値の分析や患者さんへの聞き取り 日常生活のチェックなどを行います 患者さんを多面的に診て問題点を発見し 患者さんと各専門職が同席するカンファレンスで食事療法や運動療法 薬剤投与が効果を上げられるよう多角的な指導や支援を行い 患者さんが継続できる 一人ひとりの今後の治療方針 を見いだします 地域の糖尿病治療の中断者を一人でも減らすために かかりつけ医や近隣の医療機関で教育入院が必要になった患者さんを積極的に受け入れています 患者さん ご家族との面談で食生活の問題点を見つけることがスタートです カロリー制限の具体的方法を中心に 血糖値のコントロールを栄養面からサポートします また 入院食で糖尿病食を体験します 血糖値を下げ 体重を減らすなどの優れたメリットがある有酸素運動を実施します 退院後も自宅で継続できるよう 個人に対応した運動の指導や相談も行います 目標は健康な人と同じように生活し 人生を楽しむこと看護師医師が講師となり オリジナルテキストや手作りの模型などを使いながら 治療方法や合併症について患者さんやご家族に分かりやすく説明します糖尿病教育入院 [ 基本治療 ] 運動療法 [ 基本治療 ] 食事療法処方された薬剤を調剤 監査し 服用や自己注射などが正しく実施されているかを確認します また 複数の薬剤の相互作用や副作用についてもチェックします 薬物療法が必要な場合に行います [ 補助治療 ] 薬物療法かかりつけ医と連携した学習援助型プログラム治療講義
7 何がダメで何がいいのかを一緒に考えます薬剤師管理栄養士糖尿病専門医理学療法士 2 週間にわたる糖尿病教育入院の目的は 糖尿病について正しく理解する 自己管理のモチベーションを上げる ことです 医療スタッフは個々の患者さんが 糖尿病を悪化させる自分自身の生活習慣 を見直して 改善へ向けた行動を自主的に取り組めるように支援します 患者さんの価値観や暮らし方 家族関係などを把握しながら 本音や心の声を引き出すことも大切な役割の一つです 患者さんは 看護師とマンツーマンで会話をしながら 何が悪くて何がいいのか を考えます 血糖測定器で自ら血糖値を測り記録をします 糖尿病教育入院をより良いものにするために 患者さんのカルテ調査でデータを集積し 効果の検証 を行いました 患者さんが自己管理できるようになるケアやアプローチとは何か を常に考えています 笹川恭子看護師 / 糖尿病療養指導士奥山梨紗主任看護師 / 糖尿病療養指導士私たちプロフェッショナルが患者さんを支えます眼科医が網膜の状態を観察します血液や尿の検査で 血糖コントロールの状態を確認します動脈硬化の状態を把握します神経伝導速度検査神経障害を見つけることができます眼底検査臨床検査血圧脈波検査 糖尿病療養指導士は糖尿病とその療養指導全般に関する正しい知識を持ち 医師の指示の下で患者さんに療養指導を行います検査
治療効果が高く安全な アイソトープ治療 たまねぎ通信33 号発行/公益社団法人北海道勤労者医療協会勤医協中央病院発行責任者/事務長佐藤秀明制作/有限会社慶文社バセドウ病の薬物療法を受けている方へたまねぎとぴっくす理念 - 医療 福祉宣言 - 1. 安全 安心で納得のいく医療 福祉をすすめます 2. 地域 友の会とともに健康で住みやすいまちづくりをめざします 3. 互いに学び成長する職場 病院づくりに努力します 基本方針私たち勤医協中央病院は 地域の人々に支えられ この地域になくてはならない病院として発展していくことを目指し ここに 勤医協中央病院医療 福祉宣言 を発表し 勤医協綱領 に基づき その実現に努めます 1. 札幌市北東部の地域中核病院として 急性期医療とがん診療 そして専門的医療を柱に 患者さんの要求に応える医療 福祉の連携を推進する医療機関として発展していきます 2. 北海道の地域崩壊 医療崩壊を防止する運動 支援する運動の一翼を担う病院として行動していきます 3. 災害時 緊急時には病院をあげて地域と住民を守る医療機関となれるように整備を進めていきます 4. 患者さんとの信頼関係を大切にし 良質で安全な医療を 共同の営み として提供する より高い技術も兼ね備えた病院をめざします 5. 臨床研修病院として 民主的な集団医療の実践を通じて 人間の尊厳および権利を尊重できる医療人を育成します 7. 民医連 勤医協綱領に基づき 無差別平等の医療実践をめざします 6. 地域住民や地域の医療 福祉施設とも協力し 子供から高齢者まで安心して住みつづけられるまちづくり 憲法と平和が守られる国づくり 医療 介護改善の運動をすすめます 私たちは これからも無差別 平等の医療を目指し 無料 低額診療制度を継続します診療科目呼吸器内科循環器内科消化器内科糖尿病 内分泌内科リウマチ科腎臓内科 ( 人工透析 ) 血液内科緩和ケア内科外科呼吸器外科心臓血管外科消化器外科乳腺外科肛門外科肝臓外科膵臓外科整形外科泌尿器科婦人科眼科リハビリテーション科放射線診断科放射線治療科精神科病理診断科救急科麻酔科 011 787 7037 011 784 2735 地域に開かれた病院の窓口として以下の業務を行っています 地域の開業医の先生方からの紹介や逆紹介 患者さん ご家族への退院支援 転院に伴う調整地域連携センター (1 階総合ラウンジ横 ) 外来診療はすべて予約制です 救急患者さんの診療については 24 時間受け付けています 休診日 第 4 土曜 日曜 祝日 年末年始 (12 月 30 日 ~1 月 3 日 ) 007 8505 札幌市東区東苗穂 5 条 1 丁目 9 1 011 782 9111( 代表 ) 011 781 0680 診療日には無料巡回バスを運行しています詳しくは勤医協中央病院ホームページで勤医協中央病院周辺地図勤医協中央病院 FAX FAX 007 0870 札幌市東区伏古 10 条 3 丁目 2 8 011 786 5588 011 782 3428 勤医協伏古 10 条クリニック関連施設 FAX アイソトープ治療は放射性ヨウ素を使用するため特別な設備が必要です 札幌市内で実施できる施設は現在6 カ所のみで 当院では2013年から行っています 最大の長所は 効果が確実で治療成功後は再発しないことです 甲状腺ヨウ素摂取率検査で治療に必要な放射性ヨウ素の量を決めてから 治療用の放射性ヨウ素の入ったカプセルを服用します 甲状腺に吸収された放射性ヨウ素が甲状腺組織を破壊し 甲状腺機能亢進症を治します JR 苗穂駅勤医協中央病院キタムラ産業東苗穂病院北海道三菱 Q副作用の心配はありませんか?A治療後に甲状腺機能低下症になると甲状腺ホルモン剤の内服が必要ですが 甲状腺機能は正常化します バセドウ病の眼の症状の悪化に注意が必要です がんや白血病の頻度は増えないことが確認されています Q妊娠に影響はありませんか?A治療後6 カ月以降であれば その後は安心して妊娠 出産していただけます 治療に関して不安がありましたら お気軽にお問い合わせください アイソトープ治療 Q&A 糖尿病内分泌 腎臓病センター内科医長湯野暁子