新潟県連続災害の検証と復興への視点

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気象庁技術報告第134号表紙#.indd

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熊谷地方気象台対象地域埼玉県 平成 26 年 2 月 8 日から 9 日にかけての大雪に関する 埼玉県気象速報 1 資料作成の目的 2 気象の状況 3 警報等の発表状況 4 災害の状況 平成 26 年 2 月 10 日 熊谷地方気象台 この資料は速報として取り急ぎまとめたもので 後日内容の一部訂正や

浸水深 自宅の状況による避難基準 河川沿いの家屋平屋建て 2 階建て以上 浸水深 3m 以上 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 浸水深 50 cm ~3m 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難上階に垂直避難 浸水深 50 cm未満 緊急避難場所, 近隣の安全な建物へ水平避難 自宅に待

ハザードマップポータルサイト広報用資料

~ 二次的な被害を防止する ~ 第 6 節 1 図 御嶽山における降灰後の土石流に関するシミュレーション計算結果 平成 26 年 9 月の御嶽山噴火後 土砂災害防止法に基づく緊急調査が国土交通省により実施され 降灰後の土石流に関するシミュレーション結果が公表された これにより関係市町村は

第 7 章砂防第 1 節砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ケ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県の地

スライド 1

<GK クルマの保険 ( 車両保険 )> ( 自動車によるあて逃げに限ります ) お客さまのおクルマは 車両保険 に加入していますか? 自動車保険の車両保険では 一般車両 もしくは 10 補償限定 のいずれでも 台風や集中豪雨による洪水の事故が対象となります 地震 噴火またはこれらによる津波 によっ

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重ねるハザードマップ 大雨が降ったときに危険な場所を知る 浸水のおそれがある場所 土砂災害の危険がある場所 通行止めになるおそれがある道路 が 1 つの地図上で 分かります 土石流による道路寸断のイメージ 事前通行規制区間のイメージ 道路冠水想定箇所のイメージ 浸水のイメージ 洪水時に浸水のおそれが

2018 年 12 月の天候 ( 福島県 ) 月の特徴 4 日の最高気温が記録的に高い 下旬後半の会津と中通り北部の大雪 平成 31 年 1 月 8 日福島地方気象台 1 天候経過 概況この期間 会津では低気圧や寒気の影響で曇りや雪または雨の日が多かった 中通りと浜通りでは天気は数日の周期で変わった

地区概況 7-6 ( 旧 ) 平三小学校 大字 平蔵 米原 小草畑 概要市の南東部に位置し 長南町 大多喜町に接している 丘陵地と平蔵川沿いの低地からなり 丘陵地にはゴルフ場が複数立地し 低地では 民家や農地が分布する 地区を南北に国道 297 号が通り 国道 297 号沿いには小規模な造成宅地があ

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

溶結凝灰岩を含む火砕流堆積物からなっている 特にカルデラ内壁の西側では 地震による強い震動により 大規模な斜面崩壊 ( 阿蘇大橋地区 ) や中 ~ 小規模の斜面崩壊 ( 南阿蘇村立野地区 阿蘇市三久保地区など ) が多数発生している これらの崩壊土砂は崩壊地内および下部に堆積しており 一部は地震時に

資料 4 安全 安心の確保 ~ 道路の防災 震災対策 ~ Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism

豪雨災害対策のための情報提供の推進について

昭和 28(1953) 年 8 月 11 日 昭和 32(1957) 年 7 月 25 日 昭和 33(1958) 年 9 月 26 日 南山城の大雨 諫早豪雨 狩野川台風 8 月 13 日に サハリンからオホーツク海に進んだ低気圧から伸びる寒冷前線が 北海道の南東岸から東北地方北部を通って朝鮮半島

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土砂災害防止法よくある質問と回答 土砂災害防止法 ( 正式名称 : 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関 する法律 ) について よくいただく質問をまとめたものです Ⅰ. 土砂災害防止法について Q1. 土砂災害は年間どれくらい発生しているのですか? A. 全国では 年間約 1,00

目次 1. はじめに 1 2. 協議会の構成 2 3. 目的 3 4. 概ね5 年間で実施する取組 4 5. フォローアップ 8

津地方気象台対象地域 : 三重県 平成 29 年 1 月 14 日から 16 日にかけての大雪に関する三重県気象速報 目次 1 気象の状況 (1) 概況 (2) 地上天気図及び気象衛星赤外画像 (3) レーダーエコー (4) 観測記録 2 特別警報 警報 注意報 府県気象情報の発表状況 3 被害状況

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序章 はじめに

Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

暴風雪災害から身を守るために~雪氷災害の減災技術に関する研究~

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平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

避難勧告等の 判断 伝達マニュアル ( 土砂災害編 ) ひと 緑がかがやく田園と交流のまち 安全に安心して暮らせるまちの実現に向けて ( 概要版 ) 平成 26 年 9 月 1 日 北海道長沼町

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第 7 章砂防 第 1 節 砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ヶ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県

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されており 日本国内の低気圧に伴う降雪を扱った本研究でも整合的な結果が 得られました 3 月 27 日の大雪においても閉塞段階の南岸低気圧とその西側で発達した低気圧が関東の南東海上を通過しており これら二つの低気圧に伴う雲が一体化し 閉塞段階の低気圧の特徴を持つ雲システムが那須に大雪をもたらしていま

< 被害認定フロー ( 地震による被害木造 プレハブ > 第 次調査 ( 外観による判定 一見して住家全部が倒壊 一見して住家の一部の階が全部倒壊 地盤の液状化等により基礎のいずれかの辺が全部破壊 いずれかに いずれにも ( 傾斜による判定 全壊 外壁又は柱の傾斜が/ 以上 ( % 以上 ( 部位

大雪の際のドライブプランの検討に役立つ新たな情報提供を行います 高速道路会社が共同で 株式会社ウェザーニューズと連携した 新たな 高速道路の情報提供サイト を立ち上げます 大雪の際には情報提供サイトをご確認いただき 大雪地域へのご旅行等の見合わせや広域の迂回など ご協力をお願いします タイムライン

大震災の時のような大都市ではなかったことが大きいと考えられる 地震発生時刻は夕食の準備をしている可能性の高い時間帯であったが 比較的火災も少なく済んでいる この地震でクローズアップされたのは震災関連死 というものであった 内閣府の防災情報に掲載されている死者の死因を見てみると 地震による家屋の倒壊な

また 積雪をより定量的に把握するため 14 日 6 時から 17 日 0 時にかけて 積雪の深さは と質 問し 定規で測っていただきました 全国 6,911 人の回答から アメダスの観測機器のある都市だけで なく 他にも局地的に積雪しているところがあることがわかりました 図 2 太平洋側の広い範囲で


平成 29 年 7 月 20 日滝川タイムライン検討会気象台資料 気象庁札幌管区気象台 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 大雨警報 ( 浸水害 ) 洪水警報の基準改正 表面雨量指数の活用による大雨警報 ( 浸水害 )

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7/5 4:00 7/5 8:00 7/5 12:00 7/5 16:00 7/5 20:00 7/6 0:00 7/6 4:00 7/6 8:00 7/6 12:00 7/6 16:00 7/6 20:00 7/6 24:00 7/5 4:00 7/5 8:00 7/5 12:00 7/5 16:

平成16年度 台風災害調査報告書(WEB).indd

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2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

2 6.29災害と8.20災害 空中写真による災害規模の比較 5 土石流流出位置 災害時の空中写真 3 3 平成26年8月豪雨による広島土砂災害 三入の雨量グラフ 災害時の空中写真 可部地区 山本地区 八木 緑井地区 三 入 では雨量 強度 8

2. 急流河川の現状と課題 2.1 急流河川の特徴 急流河川では 洪水時の流れが速く 転石や土砂を多く含んだ洪水流の強大なエネルギー により 平均年最大流量程度の中小洪水でも 河岸侵食や護岸の被災が生じる また 澪筋 の変化が激しく流路が固定していないため どの地点においても被災を受ける恐れがある

アンケート調査の概要 目的東南海 南海地震発生時の業務継続について 四国内の各市町村における取り組み状況や課題等を把握し 今後の地域防災力の強化に資することを目的としてアンケート調査を実施 実施時期平成 21 年 11 月 回答数 徳島県 24 市町村 香川県 17 市町 愛媛県 20 市町 高知県

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Microsoft PowerPoint 「平成28年熊本地震活動記録(第17報) 案-2.pptx

積立火災保険『THEすまいの積立保険』_損保ジャパン日本興亜

土砂災害防止法ホームページの改造について

(c) (d) (e) 図 及び付表地域別の平均気温の変化 ( 将来気候の現在気候との差 ) 棒グラフが現在気候との差 縦棒は年々変動の標準偏差 ( 左 : 現在気候 右 : 将来気候 ) を示す : 年間 : 春 (3~5 月 ) (c): 夏 (6~8 月 ) (d): 秋 (9~1

1 水害に対する認識 (1) 水害に対する認識 問 1 あなたの家は, 今後 10 年以内に台風や集中豪雨により, 洪水, 高潮, 土砂崩れなどによる水害の被害を受ける可能性があると思いますか この中から 1 つだけお答えください 平成 28 年 1 月 被害を受ける可能性があると思う( 小計 )

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緊急発表(案)(気象台)

家族みんなの防災ハンドブック 保存版

9 報道発表資料平成 29 年 12 月 21 日気象庁 2017 年 ( 平成 29 年 ) の日本の天候 ( 速報 ) 2017 年 ( 平成 29 年 ) の日本の天候の特徴 : 梅雨の時期 (6~7 月 ) は 平成 29 年 7 月九州北部豪雨 など記録的な大雨となる所があった梅雨の時期

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実施概要 平成 5 年度第 回災害対策等緊急事業推進費 ( 主な対策の ). 梅雨前線に伴う豪雨により被害を受けた地域における対策 5 件 674 百万円 ( 国費 ) 具体的には ()~(5) のとおり () 河川 ( 補助 ) (5) 国道 ( 直轄 ) よどがわすいけいふるかわ 平成 5 年

記者発表資料 平成 29 年 1 月 12 日東北地方整備局仙台管区気象台 大雪に対する緊急発表について 今週末にかけての大雪に備え ドライバー等の皆様への呼び掛けについてお知らせします 東北地方では 15 日頃にかけて大雪が継続し 猛吹雪となるところがある見込みです 14 日 ~15 日頃にかけて

Wx Files Vol 年2月14日~15日の南岸低気圧による大雪

7 制御不能な二次災害を発生させない 7-1) 市街地での大規模火災の発生 7-2) 海上 臨海部の広域複合災害の発生 7-3) 沿線 沿道の建物倒壊による直接的な被害及び交通麻痺 7-4) ため池 ダム 防災施設 天然ダム等の損壊 機能不全による二次災害の発生 7-5) 有害物質の大規模拡散 流出

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鬼怒川緊急対策プロジェクト 鬼怒川下流域 茨城県区間 において 水防災意識社会 の再構築を目指し 国 茨城県 常総市など 7市町が主体となり ハードとソフトが一体となった緊急対策プロジェクトを実施 ハード対策 事業費合計 約600億円 ソフト対策 円滑な避難の支援 住民の避難を促すためのソフト対策を

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新潟中越地震における行政機関の初動対応.doc

1 東日本大震災での多くの被害が発生!! 平成 23 年 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災は 三陸沖を震源としたマグニ チュード 9.0 仙台市内での最大震度 6 強 宮城野区 という巨大な地震でした 東部沿岸地域では 推定 7.1m 仙台港 もの津波により 家屋の浸水やライフラ

目次 はじめに P3 1 災害 緊急の範囲 P3 2 時間と場所を考慮した対応の必要性 P3 3 時間ごとの対応 P4 4 場所ごとの対応 P5 5 デジタルサイネージの提供コンテンツ P6 6 緊急時を意識したデジタルサイネージシステム P6 7 情報の切替 復帰の条件 P7 8 緊急運用体制 P

水防法改正の概要 (H 公布 H 一部施行 ) 国土交通省 HP 1

平成 28 年度 支笏湖特有の気象特性に対する 維持管理の検討 札幌開発建設部千歳道路事務所 新保貴広 札幌開発建設部千歳道路事務所 吉田昭幸 札幌開発建設部千歳道路事務所 樋口侯太郎 一般国道 453 号を管理する千歳道路事務所では 支笏湖の越波発生により 度々通行規制を実施している 淡水湖におけ

あおぞら彩時記 2017 第 5 号今号の話題 トリオ : 地方勤務の先輩記者からの質問です 気象庁は今年度 (H 29 年度 )7 月 4 日から これまで発表していた土砂災害警戒判定メッシュ情報に加え 浸水害や洪水害の危険度の高まりが一目で分かる 危険度分布 の提供を開始したというのは本当ですか

3. 調査結果 3.1 期間を通じた気温の比較連続気象観測値から 今切川橋と土工部の徳島 IC 山沿いの大代古墳 IC( 標高約 20m) における期間を通じた気温の統計結果をまとめると 以下の通りとなった 1 今切川橋の雪氷期の平均気温は 大代古墳 TNより0.7 高く 徳島 ICより0.9 低か

2. エルニーニョ / ラニーニャ現象の日本への影響前記 1. で触れたように エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海洋 大気場と密接な関わりを持つ大規模な現象です そのため エルニーニョ / ラニーニャ現象は周辺の海流や大気の流れを通じたテレコネクション ( キーワード ) を経て日本へも影響

第8章 災害復旧計画

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報道発表資料平成 28 年 1 月 4 日気象庁 2015 年 ( 平成 27 年 ) の日本の天候 2015 年 ( 平成 27 年 ) の日本の天候の特徴 : 年平均気温は全国的に高く 北日本と沖縄 奄美ではかなり高い ただし 西日本は2 年連続の冷夏 夏から秋の一時期を除き 全国的に高温傾向が

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第356 第 3 章 災害応急対策計画 (2) 本部の設置場所 (3) 関係機関との連絡 2. 本部の組織 本部の設置場所は 原則として浦安市災害対策本部室とする 関係機関との連絡が必要な場合は 関係機関連絡室 を設置し 警察 自衛隊 ライフライン等から連絡要員の派遣を要請し 連絡 調整にあたる 本

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防災カードゲーム このつぎなにがおきるかな? の遊び方 ( 土砂災害編 ) 1. おおまかな遊び方 1) カードの種類このカードには どしゃさいがい 編です その他 すいがい 編と つなみ 編があります 組み合わせによる活用も可能ですが 今回は 単独での利用を想定しています 2) カードの構成 どし

当面の事業概要 < 平成 25 年度 > 実施設計業務委託 < 平成 26 年度 > 市道 1504 号線電線共同溝整備工事 道路改築工事 < 平成 27 年度 > 市道 1504 号線電線共同溝整備工事 市道 1504,1505,1507 号線道路改築工事 < 平成 28 年度 > 市道 1504


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チェーン規制区間 < 区間 > せいよしうわちょうおおずしきたただ国道 56 号 : 愛媛県西予市宇和町 ~ 愛媛県大洲市北只 ( 延長 7.0km) ( 別紙 1~4 のとおり ) < 規制内容 > 大雪特別警報 が発表され 冬用タイヤでの走行が困難な路面状況になった場合に 従来であれば通行止めと

建築物等震災対策事業について

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NMM-DDAによる弾塑性解析 およびその適用に関する研究

気象庁 札幌管区気象台 資料 -6 Sapporo Regional Headquarters Japan Meteorological Agency 平成 29 年度防災気象情報の改善 5 日先までの 警報級の可能性 について 危険度を色分けした時系列で分かりやすく提供 大雨警報 ( 浸水害 )

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中越地震と豪雪がもたらした複合災害 河島 克久 和泉 薫 伊豫部 勉 新潟大学積雪地域災害研究センター 1 はじめに 2004 年 10 月 23 日に発生した新潟県中越地震 の大きな特徴の一つは 冬 積雪期 が間近に迫 る時期に 我が国有数の豪雪地域に位置する中山 間地で発生したという点です このことは 冬ま でに災害復旧が間に合わなかった箇所については 雪氷災害の発生危険度が著しく高まったことを意 味します そこで 社 日本雪氷学会と日本雪工 学会では 震災直後の 11 月 2 日に 新潟県中越 地震 雪氷災害調査検討委員会 を合同で組織し 起こり得る雪氷災害の危険性を調査し 警鐘を鳴 らしてきました 1) 著者らも同委員会のメンバー (2) 融雪災害 土砂崩れによって河道や用排水路などの閉塞が 多くの場所で発生している 図 2 融雪期には 多量の雪が融け出し 大雨が続くのと同じ状態に なるため 閉塞箇所では土石流 洪水 雪泥流が 発生する危険がある また 斜面や水田等に生じ た亀裂に融雪水が浸透し 土砂崩れが多発する危 険がある (3) 道路交通 地震により道路が被災 陥没 段差など した り 消雪パイプや流雪溝などが損傷したりしてい る箇所が多数ある 図 3 積雪期までに復旧が として 他の研究者 技術者と共同で被害の実態 調査にあたるとともに 積雪期に想定される雪氷 災害の危険性を指摘してきました 本稿では 雪 氷災害の視点からみた地震被害状況を述べるとと もに 19 年ぶりの豪雪となった 2004-05 年冬期 の気象 積雪状況 及びそれにともなう被災地の 雪氷災害 地震と豪雪の複合災害 の発生状況に ついて報告します 2 積雪期前の被害調査 新潟県中越地震 雪氷災害調査検討委員会では 雪崩災害 融雪災害 道路交通 家屋などの視点 から積雪期の雪氷災害の危険性を検討することを 目的として積雪期前に現地調査を行いました そ の結果まとめられた雪氷災害の危険性に関する要 点を以下に示します なお この詳細については 同委員会の報告書 2) をご覧ください 図1 基礎ごと崩落した雪崩予防柵 小千谷市 (1) 雪崩災害 地震による斜面崩壊で植生や地形が大きく変化 したり 雪崩予防柵やスノーシェッドなどの対策 工が壊れたりしている箇所が多く存在する 図 1 このため 崩壊で生じた裸地急斜面や対策工の機 能が低下した箇所での雪崩発生危険度が増大して いる 余震が雪崩の引き金となることもあり得る 図2 164 渓岸崩壊による河道閉塞 川口町

図3 消雪パイプの破損 小千谷市 図 5 アメダス十日町の積雪深 日平均気温と全国の雪 崩災害件数の推移 図 4 ブルーシートで屋根を覆った地震被害家屋 川口 町 間に合わなかった箇所は 除雪 消雪機能が大幅 に低下し 道路交通 車 歩行者 の安全が確保 しにくくなる (4) 家屋 地震によって損傷した家屋は設計通りの強度が なくなっている可能性があるため 屋根雪の荷重 で倒壊する危険性がある 雪が積もった状態で余 震が起きるとさらに危険である また ブルーシー トで屋根を覆っている家屋は 雪下ろし作業に大 きな危険を伴う 図 4 以上の調査結果に基づいて 同委員会では 11 月 14 日に雪氷災害軽減に向けた対応策を様々な メディアを通して公表するとともに これを住民 向けリーフレットとしてまとめ被災住民へ配布し ました 3) 3 2004-05 年積雪期における中越地方の 気象状況 気象庁の資料によれば 2004-05 年積雪期は 12 月中旬まで全国的に気温の高い状況が続きました が 12 月下旬から冬型の気圧配置が強まって寒気 が流入しました その後は日本付近を低気圧や前 線が通過することが多かったため 低気圧に向かっ て暖気が入り 通過後は冬型の気圧配置が強まっ て寒気が入ることを繰り返し 気温の変動が大き い状態が 3 月まで続きました 冬の平均気温とし ては全国的に平年を上回り暖冬傾向であったとい えます 一方 降雪量は 寒気の流入や低気圧の 通過によって北日本の日本海側で多く 東日本の 日本海側の山間部では積雪量が平年を大きく上回 る地点もでました 新潟県中越地方の山間部 平野部の初雪は多く の場所で 12 月 21 日であり 平年に比べて 1 ヶ 月前後も遅いものでした しかし その後断続的 に大雪がもたらされ 積雪量が平年を大きく上回 りました アメダス津南で 2 月 21 日に過去最大 となる最深積雪 369cm を記録したように 61 豪雪 昭和 61 年 以来 19 年ぶりの大雪となりました 中越地方のアメダス十日町における 2004-05 年積 雪期の積雪深と日平均気温の推移を 過去 10 冬 期の平均値と比較して図 5 に示します 気温は過 去 10 冬期平均を曲線で近似したものです この 図から 十日町では 2004-05 年積雪期の最深積雪 が過去 10 冬期平均の約 2 倍に達したこと 冬 (12 2 月 ) 全体の気温が暖冬傾向にあった過去 10 冬 165

厳冬期である 2 月においても しばしば降雨がも たらされていることが分かります 新潟県にける雪崩災害の発生場所は中越地方の 山間部に集中しています これは 図 6 に示した ように中越地方の山間部が大雪となったことに加 えて 中越地震や平成 16 年 7 月の豪雨によって 急斜面が荒廃したことが影響していると考えられ ます 新潟県で死者が出た 2 件の雪崩災害の一つ である高柳町山中 現柏崎市 の雪崩 2 月 18 日 発生 は 平成 16 年 7 月の豪雨時に土砂崩れを 起こした斜面において災害復旧工事中に発生した ものです 図 8 積雪期前には 中越地震の余震 が雪崩の引き金となることが懸念されましたが 幸いなことに余震発生時に災害となるような雪崩 は認められませんでした 中越地震の影響による雪崩災害の典型例は 3 月 19 日に小千谷市西吉谷で発生した事例です 地 震で痛んだ急斜面から未明に発生した湿雪全層雪 崩が斜面下の川 茶郷川 をせき止め 隣接する 民家が床上浸水しました さらに その 7 時間後 に同じ斜面で再び発生した湿雪全層雪崩によって この民家が損壊するとともに作業小屋が全壊しま した 図 9 現場付近の積雪は ほぼ全層が濡れ ざらめ雪からなっており 全体的に水を含んで非 図8 常に脆くなっていました 南魚沼市浦佐では 2 月 4 日に雪崩の危険があ るとして 3 世帯に避難勧告が発令されました 3 世帯は一棟のアパートに入居しており このアパー トは県道を挟んで急斜面に面していました 図 10 この斜面には雪崩予防柵や防護擁壁 県道 脇 がありましたが 中越地震の際に発生した表 層崩壊などによって斜面は荒廃し 柵は流され 擁壁裏側のポッケトに土砂や樹木が溜まった状態 になっていました その後 ポケット内の土砂を 取り除いたり 擁壁がない箇所に雪堤を築いたり するという対策がとられたため 全層雪崩が複数 発生したものの災害には至らずにすみました 5.2 融雪災害 積雪期前には 河道閉塞箇所における土石流 洪水 雪泥流の発生と荒廃した斜面や農地等にお ける土砂崩れの発生が融雪期の災害として懸念さ れていました 河道閉塞箇所においては 積雪期 前の復旧工事や応急対策が功を奏し 19 年ぶりの 豪雪にもかかわらず大規模な災害をもたらす現象 は発生しませんでした しかし 小河川や渓流で 小規模な河道閉塞が非常に多く出現したため 積 雪期前に完全復旧が間に合わなかった箇所では 図9 図 10 高柳町中山の雪崩災害現場 小千谷市西吉谷の雪崩災害現場 南魚沼市浦佐における雪崩発生斜面 融雪期に河川が氾濫し 河川脇の農地へ水が流れ 込んでいる状況がみられました 図 11 その結果 農地が土砂で埋まったり 流水で侵食を受けたり した箇所もありました このような現象の発生に は 土砂のみならず雪崩デブリによる閉塞も関与 167

図 15 サニーホースによる消雪が機能しなかった時の 路面状況 川口町 1 月 13 日 図 14 川口町で消雪用に設置されたサニーホース な連続的な大雪の際には十分に機能することがで きず 図 15 に示すような路面状況になりました また サニーホースが走行車両に巻き込まれ破損 することもありました 大雪時にサニーホースが 機能しなかった原因として 一つには水量が不足 していたことが考えられます また サニーホー ス上に雪 屋根雪 除雪した雪など が多量に堆 積するとその荷重でホースがつぶれてしまい 送 水不能に陥った可能性もあります もし弾性のあ る樹脂で保護された融雪用ホースを用いていれば 消雪不良や破損などの障害は防げたかもしれませ ん この他に 被災道路の交通に関しては 除雪力 の不足 除雪時間の増大 雪崩や土砂崩れによる 通行止めなどの問題がみられましたが 孤立集落 の発生のような重大な災害が生じることなく積雪 期を乗り切ることができました 図 16 地震で被災した後に雪によって倒壊した家屋 魚沼市 5.4 家屋 地震被災家屋の屋根雪荷重による倒壊や著しい 損傷が各地でみられました 図 16 新潟県危機 管理防災課の発表 6 月 9 日 によると 新潟県 内の雪による建物滅失棟の総数は 269 棟であり その内の約 71 に当たる 191 棟が地震による被 害認定で全壊認定を受けた建物です 滅失棟数は 旧山古志村 85 棟 小千谷市 68 棟 栃尾市 21 棟 川口町 20 棟 魚沼市 18 棟 の順に多 図 17 屋根雪落下による浴場倒壊事故が発生した小千 谷市の旅館 浴場は写真の左下に位置する くなっています これらの地域では 冬を迎えて も避難勧告 指示が解除されない地区を多く抱え 169