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している政令指定都市等に ゲリラ豪雨対策として整備され現在は 7 基体制で運用している ドップラー機能により 風を観測 図 - X バンド MP レーダの特徴 ( 範囲 対象および目的 a 範囲大阪 神戸 京都 堺の重点監視地域を含み 図 - のとおり 台 ( 六甲 葛城 田口 鷲峰山 鈴鹿 の X バンド MP レーダにより観測可能な範囲を探知範囲とした なお 探知を行う高度は 積乱雲の発生とその後の発達過程を追跡できる地上から上空 0km までとした. 豪雨のタマゴ手法 ( 定高度面データ (CAPPI 作成処理 台 ( 六甲 葛城 田口 鷲峰山 鈴鹿 の X バンド MP レーダを組み合わせ 仰角運用の最適スケジュールを調整し 分間のレーダ観測を行うことで CAPPI データの空間平均カバー率が 76% となる 連続 分間の CAPPI データを合成することで 空間カバー率が 00% となり それを順次 繰り返すことにより 分間隔の 次元観測を可能にしている ( 図 -7, 図 -8 図 -7 近畿 基および鈴鹿局の仰角スケジュール 図 -8 観測イメージ 図 - 局地的豪雨システムの対象範囲 b 対象 発生時は孤立しており 0 分以内で0mm/h に急発達し その後 0mm/h 以上の強雨が 0 分以上続く積乱雲を 豪雨セル の条件を満たす積乱雲を 準豪雨セル とし それらを対象とする c 目的都賀川で発生したような急激に発達する局地的な豪雨による災害を防止するために 従来レーダでは捉えることが困難だった積乱雲の発生当初を探知し 数分から 0 分程度先に豪雨のタマゴを見つけるシステムを整備する ( 図 -6 ( 降雨セルの抽出 追跡京都大学防災研究所で開発された降水セル抽出 追跡プログラム (CCL を改修し 豪雨のタマゴシステムに適用した a 抽出降水セルの抽出は 反射強度 0dBZ( 雨量強度 mm/h 相当 以上の降水域を検出し番号を付ける ( 図 -9 反射強度 図 -9 降水セルの抽出 番号付け b 追跡抽出された降水セルを時間方向に紐付けすることで追跡を行う 紐付けは セルとセルの体積変化量と移動距離を組み合わせた 体積距離 を使用し 体積距離が最小のセル同士を紐付けすることで追跡を行う ( 図 -0 豪雨になる 0 分程度前に探知したい 図 -6 積乱雲の一生

青色 :t 現在時刻の降水セルの範囲赤色 :t- t 時刻前の降水セルの範囲 ー頂高度差 鉛直発達速度 鉛直積算反射強度 渦度 収束量を算出し それぞれの階級毎に豪雨セルの割合を求め それらの回帰直線を算出した ( 図 - この回帰直線をメンバーシップ関数 (a~e とし 重み付けして豪雨発生の可能性を判定する総合指標 (f を作成する 図 -0 降水セルの追跡 体積変化量の式 (a 移動距離の式 (b dv V V (a / / dd x x y y z z (b 体積距離 (c が最も小さいセルとセルを紐付ける C wdd w dv (c ( 各種パラメータの計算処理各時刻の反射強度 渦度 収束量の CAPPI データから 豪雨危険度判定に使用する総合指標値算出のための各種パラメータをセル ( 個の積乱雲 毎に求める パラメータは以下の 種類であり 各パラメータの値が多きほど 豪雨をもたらす積乱雲 ( 豪雨セル に発達しやすい ( 図 - 豪雨セル 図 - メンバーシップ関数算出 未豪雨セル 豪雨セルの割合 (% エコー頂高度差 (a 鉛直発達速度 (b 鉛直積算エコー強度 (c 渦度 (d 収束量 (e のメンバーシップ関数は以下のとおり f x.98.8 (a ( x f x 8.8 0.7 (b ( x f x 0.99. (c ( x f x. 9.6 (d ( x f x 9.60.6 (e ( x 総合指標 (f 図 - 豪雨の危険度判定に用いる各指標 ( パラメータ ( 危険度判定処理 a 総合指標ファジー理論におけるメンバーシップ関数を求めるため 豪雨セル (80 個 と未発達セル (7 個 ごとのエコ G 0.7 f 0.0 f 0.7 f 0. f 0. f (f b ランク a で算出された総合指標値に つのしきい値を設け 危険度ランク およびランクなしの 段階の情報を作成する ( 図 -

空振り 図 - 総合指標値の分布とランク ( Web 表示プログラムの整備豪雨危険度及び統合指標値をはじめとする関連指標値を読み込んで 画像を作成 表示する処理プログラムを豪雨のタマゴサーバに実装した 過去 ヶ月程度の雨域および豪雨のタマゴ表示の円を再現でき GIF ファイルを作成できるため動画をパワーポイントへ貼り付けることができる また豪雨のタマゴのランクを選択するボタンを ON OFF することで表示 非表示の選択ができる ( 図 - ランク の判定が 出ていた 図 - 見逃し 空振りの事例 ( 他の早期探知手法との精度比較豪雨のタマゴ手法 雨雲発達指数 ( 六甲砂防事務所 VIL ナウキャスト ( 防災科学技術研究所 の 手法について 豪雨予測のリードタイム 的中率 見逃率 空振率の検証結果を比較した その結果 豪雨のタマゴは 雨雲発達指数や VIL ナウキャストよりも 0 分程度早く豪雨 準豪雨セルを探知している 豪雨のタマゴは 地上降雨開始前に豪雨を探知できる唯一の手法だが その他手法に比べると見逃しや空振りが多い また豪雨のタマゴは 孤立した積乱雲 のみ対象となっており その他の手法は孤立した積乱雲以外でも予測可能となっている ( 表 - 表 - 図 -6 表 - 手法の特徴 数 mm/h の降雨が数分間継続した後 消滅した 図 - 表示画面. 精度検証 本システム対象範囲内のアメダス及び国土交通省テレメータ雨量から日最大時間雨量を調査し 0~0 年の日最大時間雨量上位 0 日を抽出する 抽出 0 日から 降雨原因が大気不安定である上位 0 日を対象事例に選定する ( 的中 見逃し 空振りの判定.( b で示した豪雨セル 準豪雨セル および降雨強度が mm/h 未満である非豪雨セルを抽出し 豪雨セル 準豪雨セルにランク値が出現した場合を的中 出現しなかった場合を見逃しと定義する また非豪雨セルにランク値が出現した場合を空振り 出現しなかった場合を的中と定義する ( 図 - 見逃し 地上では孤立しているように見えるが 上空で南の雨域と繋がっているため タマゴとして抽出できなかった 0mm/h 到達 表 - 手法比較結果 豪雨予測のリードタイム 手法的中率見逃率空振率降雨開始時刻まで 0mm/h 到達まで 豪雨のタマゴ 6 分 6 秒前 分 6 秒前 8% 6% % 雨雲発達指数 7 分 秒前 分 秒後 9% % % VILナウキャスト 分 6 秒前 0 分 07 秒後 9% % % 図 -6 手法の適用範囲

. 自治体ヒアリング結果 近畿の 7 自治体に直接訪問し 豪雨のタマゴについて ヒアリングを行った 豪雨のタマゴを含めた 手法について 洪水管理 内水氾濫 道路冠水 地下街の浸水などに活用したいとの意見があった 一方 住民へのアラート発信には慎重な意見が多く その理由として 豪雨の対策を取るためには 60 分程度は必要との見解がほとんどであり 0 分程度の早期探知では行政が対応できる時間がないとのことであった また 見逃しは許容されず ある程度の空振りはやむを得ないとの意見があり つのシステムを統合し 精度向上を図って欲しいとの要望が多かった. 今後の課題 ( 上空で結合した降水セルの分離 (CCL の見直し 本システムで見逃しとなる事例や追跡が途中で不能となる事例の多くが 上空で他の降水セルと結合することで生じるセルの不分離が原因である 高度によってセルの分離に用いるしきい値 ( 現行 0dBZ 固定 を可変する等の見直しが必要である ( セルの移動方向を考慮した表示方法の検討現行のランク円は 豪雨セルの重心位置を中心として描いているが セル移動方向がわけるような表示方法を検討することで より防災情報として活用しやすいシステムにしていく必要がある ( 運用を通じた事例の蓄積と感度調整今後運用を通じて検証事例を増やし 豪雨日以外の日も含めて感度調整を行う必要がある ( 他の豪雨早期探知手法との連携方法の検討本システムが対象とするのは 個の孤立した積乱雲であり 組織化した降水システムは対象としていない 利用者側にとってわかりやすく より使いやすい情報になるよう VIL ナウキャストなど他の豪雨探知手法との連携方法を検討する必要がある ( 警報システムの活用検討現在 自治体では 中小河川における安全対策のため 気象庁が大雨 洪水注意報及び警報を発表すると信号が 自動発信され 回転灯が作動するシステムを導入している 今後 自治体との適切な役割分担のもと 豪雨のタマゴシステムによる豪雨探知と警報システムの連動など活用を検討する ( 図 -7 豪雨探知 6. まとめ 豪雨のタマゴサーバ 制御信号 図 -7 警報システムのイメージ 豪雨のタマゴ手法の結論としては 精度向上を行うことができれば 局地的豪雨災害の対策に有効利用する可能性は十分にある 現在 市町村向けに 川の防災情報 でレーダの予測として移動解析を情報提供している それに加え 今後は 本システムも配信することで情報を充実させる予定であり 試行対象自治体が実際に使用した状況を検証し 改善していきたい 最終的には 市民向けに重要かつ迅速な情報提供ツールとして 現場に回転灯を作動させるなど 都賀川水害のような痛ましい災害を防止するための監視体制強化を目指している 謝辞 : 本研究において 京都大学防災研究所の中北研究室の皆様に多大なご協力いただきました ここに感謝の意を表します 参考文献 中北英一 西脇隆太 山邊洋之 山口弘誠 : ドップラー風速 を用いたゲリラ豪雨のタマゴの危険性予知に関する研究 土 木学会論文集 B( 水工学, 第 69 巻 号, 0. 中北英一 山邊洋之 山口弘誠 : ゲリラ豪雨の早期探知に関 する研究, 水工学論文集, 第 巻,00. 中小河川における水難事故防止検討 WG 報告書,009. 中小河川における局地的豪雨対策 WG 報告書,009.