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千葉市科学館プラネタリウム活用てびき A-1 太陽の動きと星座の観察 ( 第 3 学年 ) この番組は 第 3 学年の内容に合わせて 方位 時刻を調べながら太陽の 1 日の動き を観察 について学習します プラネタリウムの特長を生かし 実際には観察しにくい 太陽の動きや季節の星座について学習する意欲

梨花学習指導案

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第 2 学年 理科学習指導案 平成 29 年 1 月 1 7 日 ( 火 ) 場所理科室 1 単元名電流とその利用 イ電流と磁界 ( イ ) 磁界中の電流が受ける力 2 単元について ( 1 ) 生徒観略 ( 2 ) 単元観生徒は 小学校第 3 学年で 磁石の性質 第 4 学年で 電気の働き 第 5

彩の国埼玉県 埼玉県のマスコット コバトン 科学的な見方や考え方を養う理科の授業 小学校理科の観察 実験で大切なことは? 県立総合教育センターでの 学校間の接続に関する調査研究 の意識調査では 埼玉県内の児童生徒の多くは 理科が好きな理由として 観察 実験などの活動があること を一番にあげています

FdData理科3年

H26kagawamedia

ホームページ掲載資料 平成 30 年度 全国学力 学習状況調査結果 ( 上尾市立小 中学校概要 ) 平成 30 年 4 月 17 日実施 上尾市教育委員会

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Microsoft PowerPoint - syogaku [互換モード]

Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

日本科学教育学会研究会研究報告 Vol. 31 No. 6(2017) 季節による太陽の日周運動の変化の認識に関する研究 Questionnaire about student s recognition of solar diurnal motion changings by the season

けて考察し, 自分の考えを表現している 3 電磁石の極の変化と電流の向きとを関係付けて考え, 自分の考えを表現している 指導計画 ( 全 10 時間 ) 第 1 次 電磁石のはたらき (2 時間 ) 知 1, 思 1 第 2 次 電磁石の強さが変わる条件 (4 時間 ) 思 2, 技 1, 知 2

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画像, 映像などの気象情報や天気と1 日の気温の変化の仕方に興味 関心をもち, 自ら気象情報を収集して天気を予想したり天気の観測をしたりしようとしている 気象情報を活用して, 天気の変化を予想することができる 1 日の気温の変化の仕方を適切に測り, 記録することができる 天気の変化は気象情報を用いて

プラネタリウム学習投影番組一覧表 A : 小学校理科学習 A - 1 太陽の動きと星空の観察 3 年方角や時刻を調べながら太陽の 1 日の動きを観察します A - 2 夏の星座と月の様子 4 年 A - 3 月の動きと季節の星座 4 年 A - 4 冬の星座とその動き 4 年 A - 5 月の満ち欠

2 教科に関する調査の結果 (1) 平均正答率 % 小学校 中学校 4 年生 5 年生 6 年生 1 年生 2 年生 3 年生 国語算数 数学英語 狭山市 埼玉県 狭山市 61.4

第 4 学年算数科学習指導案 平成 23 年 10 月 17 日 ( 月 ) 授業者川口雄 1 単元名 面積 2 児童の実態中条小学校の4 年生 (36 名 ) では算数において習熟度別学習を行っている 今回授業を行うのは算数が得意な どんどんコース の26 名である 課題に対して意欲的に取り組むこ

2、協同的探究学習について

2 教科に関する調査の結果 ( 各教科での % ) (1) 小学校 国語 4 年生 5 年生 6 年生 狭山市埼玉県狭山市埼玉県狭山市埼玉県 平領均域正等答別率 話すこと 聞くこと 書くこと

Taro-① 平成30年度全国学力・学習状況調査の結果の概要について

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国語科学習指導案様式(案)

体育科指導案

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(2) 学習指導要領の領域別の平均正答率 1 小学校国語 A (%) 学習指導要領の領域 領 域 話すこと 聞くこと 66.6(69.2) 77.0(79.2) 書くこと 61.8(60.6) 69.3(72.8) 読むこと 69.9(70.2) 77.4(78.5) 伝統的な言語文化等 78.3(

座標軸の入ったワークシートで整理して, 次の単元 もっとすばらしい自分へ~ 自分向上プロジェクト~ につなげていく 整理 分析 協同的な学習について児童がスクラップした新聞記事の人物や, 身近な地域の人を定期的に紹介し合う場を設けることで, 自分が知らなかった様々な かがやいている人 がいることを知

知識・技能を活用して、考えさせる授業モデルの研究

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Taro-小学校第5学年国語科「ゆる

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学年第 3 学年 2 単元名 ( 科目 ) いろいろな関数の導関数 ( 数学 Ⅲ) 3 単元の目標 三角関数 対数関数 指数関数の導関数を求めることができる 第 次導関数の意味を理解し 求めることができる 放物線 楕円 双曲線などの曲線の方程式を微分することができる 4 単元の学習計画 三角関数 対

平成23年度全国学力・学習状況調査問題を活用した結果の分析   資料

○数学科 2年 連立方程式

解禁日時新聞平成 30 年 8 月 1 日朝刊テレビ ラジオ インターネット平成 30 年 7 月 31 日午後 5 時以降 報道資料 年月日 平成 30 年 7 月 31 日 ( 火 ) 担当課 学校教育課 担当者 義務教育係 垣内 宏志 富倉 勇 TEL 直通 内線 5

3. ➀ 1 1 ➁ 2 ➀ ➁ /

(3) 将来の夢や目標を持っていますか 平成 29 年度 平成 28 年度 平成

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第 5 学年 社会科学習指導案 1 単元名自動車をつくる工業 2 目標 我が国の自動車工業の様子に関心を持って意欲的に調べ, 働く人々の工夫や努力によって国民生活を支える我が国の工業生産の役割や発展について考えようとしている ( 社会的事象への関心 意欲 態度 ) 我が国の自動車工業について調べた事

第 2 学年 5 組理科学習指導案 日時平成 26 年 12 月 12 日 ( 金 ) 場所城北中学校授業者酒井佑太 1 単元名電気の世界 2 単元について (1) 教材観今日の私たちの日常生活において 電気製品はなくてはならないものであり 電気についての基礎的な知識は必要不可欠である しかし 実際

国語の授業で目的に応じて資料を読み, 自分の考えを 話したり, 書いたりしている

第 6 学年理科学習指導案 日時 : 平成 30 年 11 月 21 日 ( 水 )5 校時対象 : 墨田区立第三吾嬬小学校 6 年 1 組指導者 :O.T. 1 単元名月と太陽 ( 教育出版 ) 2 単元の目標 月と太陽の関係を推論しながら調べ 見いだした問題を計画的に追究する活動を通して 月の位

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平成 22 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 22 年 4 月 20 日 ( 火 )AM8:50~11:50 平成 22 年 9 月 14 日 ( 火 ) 研究主任山口嘉子 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (105 名 )

(1) 体育・保健体育の授業を改善するために

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学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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平成 年度佐賀県教育センタープロジェクト研究小 中学校校内研究の在り方研究委員会 2 研究の実際 (4) 校内研究の推進 充実のための方策の実施 実践 3 教科の枠を越えた協議を目指した授業研究会 C 中学校における実践 C 中学校は 昨年度までの付箋を用いた協議の場においては 意見を出

(4) 学校の規則を守っていますか (5) いじめは, どんな理由があってもいけないことだと思いますか

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能を習得したり活用したりすることの必要性について確認する グラフをかく力やグラフを読み取る力を身に付けさせるとともに, 一次関数を学ぶことに対する意欲を高めたい 小単元全体を通して主体的に学ぶ意欲を高め, 自分の考えを説明したいという気持ちにさせた上で, 目的や方法等を明確にした意図のあるペアやグル

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3 学校教育におけるJSLカリキュラム(中学校編)(理科)2.JSL理科における授業づくりの実際

3 題材の目標 (1) (2) 4 題材の評価規準 ( 指導要録の四つの観点 ( 生活や技術への関心 意欲 態度 ) から題材の学習を通して目指す生徒の姿を示します ) 文章の語尾は 評価規準の作成, 評価方法の工夫改善のための参考資料 ( 中学校技術 家庭 ) 平成 23 年 11 月 ( 国立教

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川上達夫

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3 単元の目標 (1) 電流と電圧との関係及び電流の働きに関する事物 現象に進んでかかわり それらを科学的に探究するとともに 事象を日常生活とのかかわりでみようとする 自然事象への関心 意欲 態度 (2) 電流と電圧との関係及び電流の働きに関する事物 現象の中に問題を見いだし 目的意識をもって観察

平成 30 年度全国学力 学習状況調査の結果について ( 速報 ) 1. 調査の概要 実施日平成 30 年 4 月 17 日 ( 火 ) 調査内容 1 教科に関する調査 ( 国語 A 国語 B 算数 数学 A 算数 数学 B 理科 (3 年に 1 回 )) A 問題 : 主として知識に関する問題 B

課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

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1. 調査結果の概況 (1) の児童 ( 小学校 ) の状況 < 国語 A> 今年度より, ( 公立 ) と市町村立の平均正答率は整数値で表示となりました < 国語 B> 4 国語 A 平均正答率 5 国語 B 平均正答率 ( 公立 ) 74.8 ( 公立 ) 57.5 ( 公立 ) 74 ( 公立

教育研究グループ報告書

平成 21 年度全国学力 学習状況調査結果の概要と分析及び改善計画 調査実施期日 平成 21 年 10 月 2 日 ( 金 ) 教務部 平成 21 年 4 月 21 日 ( 火 )AM8:50~11:50 調査実施学級数等 三次市立十日市小学校第 6 学年い ろ は に組 (95 名 ) 教科に関す

目 次 1 学力調査の概要 1 2 内容別調査結果の概要 (1) 内容別正答率 2 (2) 分類 区分別正答率 小学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 3 小学校算数 A( 知識 ) 算数 B( 活用 ) 5 中学校国語 A( 知識 ) 国語 B( 活用 ) 7 中学校数学 A( 知識 )

(3) 指導観公民的分野は地理的分野と歴史的分野の学びの積み重ねによるところが大きい 用語や概念も高度化し 生徒の感想にも 難しい と感じるものが多くなっている そこで その難しいと感じる公民の用語などは積極的に用語集を活用し 難しい言葉に対する抵抗感を少しでも和らげるよう授業でも活用している また

エコポリスセンターとの打合せ内容 2007

数学科学習指導案 1 次方程式 ( 中学校第 1 学年 ) 神奈川県立総合教育センター < 中学校 高等学校 > 数学 理科授業づくりガイドブック 平成 22 年 3 月 問題つくりを題材として取り上げ 身近な生活の中にある数量関係を見いだし それを基に文章題を作らせる指導によって 自ら具体的な事象

単元構造図の簡素化とその活用 ~ 九州体育 保健体育ネットワーク研究会 2016 ファイナル in 福岡 ~ 佐賀県伊万里市立伊万里中学校教頭福井宏和 1 はじめに伊万里市立伊万里中学校は, 平成 20 年度から平成 22 年度までの3 年間, 文部科学省 国立教育政策研究所 学力の把握に関する研究

FdText理科1年

小学校の結果は 国語 B 算数 A で全国平均正答率を上回っており 改善傾向が見られる しかし 国語 A 算数 B では依然として全国平均正答率を下回っており 課題が残る 中学校の結果は 国語 B 以外の教科で全国平均正答率を上回った ア平成 26 年度全国学力 学習状況調査における宇部市の平均正答

子葉と本葉に注目すると植物の成長の変化を見ることができるという見方や, 植物は 葉 茎 根 からできていて, それらからできているものが植物であるという見方ができるようにしていく また, 学んだことを生かして科学的なものの見方を育てるために, 生活の中で口にしている野菜も取り上げて観察する活動を取り

3 調査結果 1 平成 30 年度大分県学力定着状況調査 学年 小学校 5 年生 教科 国語 算数 理科 項目 知識 活用 知識 活用 知識 活用 大分県平均正答率 大分県偏差値

るかどうか, そして, その予想した事柄を ~は, になる という形で表現できるかどうかをみるものである 正答率は, 48.1% であり, 発展的に考え, 予想した事柄を ~は, になる という形で表現することに課題がある (3) 学習指導に当たって 事柄を予想することを大切にする数や図形について成

教育 学びのイノベーション事業 ( 平成 23~25 年度 ) 総務省と連携し 一人一台の情報端末や電子黒板 無線 LAN 等が整備された環境の下で 教科指導や特別支援教育において ICT を効果的に活用して 子供たちが主体的に学習する 新たな学び を創造する実証研究を実施 小学校 (10 校 )

Taro-H29結果概要(5月25日最終)

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「標準的な研修プログラム《

デジカメ天文学実習 < ワークシート : 解説編 > ガリレオ衛星の動きと木星の質量 1. 目的 木星のガリレオ衛星をデジカメで撮影し その動きからケプラーの第三法則と万有引 力の法則を使って, 木星本体の質量を求める 2. ガリレオ衛星の撮影 (1) 撮影の方法 4つのガリレオ衛星の内 一番外側を

瑞浪市調査結果概略(平成19年度全国学力・学習状況調査)

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ICTを軸にした小中連携

(2) 国語科 国語 A 国語 A においては 平均正答率が平均を上回っている 国語 A の正答数の分布では 平均に比べ 中位層が薄く 上位層 下位層が厚い傾向が見られる 漢字を読む 漢字を書く 設問において 平均正答率が平均を下回っている 国語 B 国語 B においては 平均正答率が平均を上回って

平成 30 年度全国学力 学習状況調査 北見市の結果等の概要 Ⅰ 調査の概要 1 調査の目的義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から 全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握 分析するとともに教育施策の成果と課題を検証し その改善を図り 学校における児童生徒への教育指導の充実や学習状況の改善等

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理科学習指導案指導者海田町立海田西中学校教諭柚中朗 1 日時平成 30 年 1 月 24 日 ( 水 ) 2 学年第 2 学年 1 組 ( 男子 14 名女子 18 名計 32 名 ) 3 単元名天気とその変化 ~ 大気の動きと日本の天気 ~ 4 単元について (1) 単元観本単元は, 学習指導要領

4. タブレット端末の利用状況 ( 利用機材の内容と利用のねらい ) ハードウェア機材名 :ipad ねらい : 水が流れる様子や地形が変化した様子を確認できるよう 動画で撮影し記録する 上流 中流 下流それぞれの様子が撮影できるよう ipadは3 台準備する 機材名 :ENVY110( 複合印刷機

での生活では, 理科の学習という意識が薄くなっている 理科の学習が自分の生活に役に立っていると 感じている児童は多いが, 便利にしてくれると感じている児童は少ない このことから理科で学習した 内容が, 生活の中で生かされていることを実感できるような指導を行っていきたい ( 学習活動への意識に関するこ

03-01月の満ち欠けの観測

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中学校理科 < 第 3 学年 > 地球と宇宙 における科学的思考力を育てる教材の開発と指導方法の改善 Ⅰ 主題設定の理由 観音寺市立中部中学校教諭青野孝泰 しし座流星群 や 皆既日食 が世界中で大きな話題となるなど, 天体分野は生徒のみならず, 人類にとっても夢があり関心のある分野である しかし, 天体学習は, 気象条件に左右されやすい 適した時節がある 深夜にまたがる 長時間及び長期間にわたる 都会では光害がある 等の問題点があり, 野外観察が行われにくい状況にある そのため, 生徒の天体観察の経験も乏しいのが現状である 中学校の天体分野の授業でも, 観察が十分には行えておらず, モデル化や理論的な説明が多くなり, 空間概念が十分に発達していない生徒にとっては難解な内容となる そのため, 天体は難しい 嫌いだ と言う生徒も多い 平成 15,16 年度学習状況調査の結果では, 天体分野での 科学的な思考 の正答率が他の観点と比べると低かった その理由を考えてみると, 生徒は, 観察者の視点 ( 位置 ) を 地上から宇宙空間へ, あるいは 宇宙空間から地上へ 移動することが苦手なため, 太陽や星座の日周運動が地球の自転による相対的運動であることをとらえたり, 季節によって同じ時刻に見える星座の位置が変わることなどから地球の公転を地軸の傾きと関連させてとらえたりすることが難しいからである 現行の教育課程では, 天体学習を小学校の3,4 年と中学校の3 年でしか扱っておらず, 知的好奇心旺盛な小学校 5,6 年と中学校 1, 年では天体教材がない さらに, 学習内容の厳選に伴い, 知識が断片化していると考えられる そこで, 第 3 学年 地球と宇宙 の単元において, 教材 教具を開発し, 補充的 発展的内容を取り入れた系統性のある指導計画を作成する そして, 生徒が直接体験し, そのなかに問題を見いだし, 目的意識をもって実験 観察に参加する問題解決型の探究学習を展開することで, 科学的思考力が高まると考え, 本研究主題を設定した Ⅱ 研究方法 学習状況調査や生徒へのレディネステストの結果から, 指導上の課題を明確にする 文献や実践事例から, 天体領域の科学的思考力を育てる指導方法を検討し, 教材を作成する 単元 地球と宇宙 について, 指導計画を立て, 作成した教材を使って実践授業を行う 事後テストなどから, 基礎 基本の定着状況, 生徒の意識の変容などを分析し, 開発した教材を活用した成果や課題を考察する Ⅲ 研究内容 1 生徒の実態 (1) レディネステストから ( 置籍校全校生 506 名平成 16 年 6 月 8 日実施 ) 日常的な天体現象への興味 関心と, この単元の基礎的 基本的な内容の理解に必要な方位概念及び時間概念について調査した 1

星空を見上げたこと 0 40 60 80 0 7 3 0 40 60 80 0 北極星 35 56 流れ星を見たこと 夕日が沈むのを見たこと 朝日が昇るのを見たこと 55 5 74 45 48 6 カシオペヤ座 さそり座 8 1 6 71 63 星空の観察会に参加したこと 6 74 オリオン座 1 61 ある ない 見つけられるたぶん見つけられる見つけられない < 図 1> 自然体験の有無の調査結果 < 図 > 観察技能の調査結果 < 図 1>では, 星空を見上げたことはあるが, 流れ星や日の出を見た体験が少ないことが分かる つまり, じっくり時間をかけて空を見る体験が少ないことを示している また, 観察会の参加経験も少なく, 天体観察の経験が不足している < 図 >からは, 小学校で学習した星座も見つけることのできない生徒が多いことが分かる 家庭で観察させるためには, 自分一人でも星座を見つけることができるような手だてが必要である 0 0 80 80 70 67 60 58 50 40 30 8 0 教室の前の黒板の方位 南に向いたときの右手の方位 1 年 年 3 年 < 図 3> 方位認識の調査結果 ( 正答率 ) < 図 3>の生活場所 ( 教室 ) での方位の認識は, 学年が進むにつれ上昇しているが不十分である 学習経験よりも生活経験や発達段階による認識の差が表れたと思われる 生徒は, 一般的に北が上を向いた地図を使用している そのため, 方位の感覚が不十分な生徒は, 南を向いたとき, 東西南北の位置関係を空間的に把握することが難しいと思われる 0 40 60 80 0 朝 1 年 50 37 7 6 0 40 60 80 0 朝 1 年 63 年 60 33 1 6 年 53 3 年 65 5 6 4 3 年 51 昼 1 年 7 5 6 昼 1 年 57 年 7 3 30 年 61 3 年 16 33 37 3 年 5 東西北南 < 図 4> 太陽の見える方位 < 図 5> 太陽の動く方向 ( 正答率 ) < 図 4>では, 太陽の見える方位の正答率が低く, 朝日が見える方位を西と答えた生徒が平均で 31%, 昼の太陽の見える方位を北と答えた生徒が平均で6% いた それに対し,< 図 5>の太陽の動く方向の正答率は平均で朝 55%, 昼 5% であった これは, 太陽の動きを小学校で学習し, さらに, 生活体験を通して認識していたためと思われる それに対して, 方位の認識は大変低い

< 図 6>は 南の方に月が見えました その場所から東に自転車で 分ぐらい走りました 月はどちらの方に見えますか の設問に対しての結果である 宇宙空間の大きさが認識できていて, 視点の移動ができる生徒は, 南に変わりはない と考える しかし, 宇宙空間の大きさが認識できていなかったり, 視点の移動ができなかったりすると, 西 と考えがちになる 0 40 60 80 0 1 年 33 15 17 35 年 47 13 30 3 年 45 8 7 40 南東北西 < 図 6> 移動後の方位認識調査結果 () 意識調査から ( 置籍校第 3 学年全クラス17 名平成 16 年 月 17 日実施 ) 0 30 40 50 60 70 80 0 0 理科が好き 4 40 理科が分かる 4 37 実験観察が好き 60 ものを作ったり道具を使ったりすることが好き 57 予想して実験している 66 自分から調べようとしている 46 34 宇宙や天体に興味がある 40 43 17 はいどちらともいえないいいえ < 図 7> 理科授業の意識調査結果 < 図 7>より, 生徒たちは実験や観察が好きで, ものづくりや道具を使うことを好んでいる しかし, 予想して実験したり, 自分から調べようとしたりする生徒は少ない 生徒のレディネステストや意識調査の結果から, 天体学習に対する興味 関心や観察の技能, 小学校での既習事項についての定着の度合いに大きな格差があることが分かった この原因としては, 観察経験の不足と方位概念が正しく形成されていないことが考えられる 方位概念は, 空間における天体の相対的位置関係をつかむ上で基本となるものであるので, 授業の前に復習し定着させておきたい 地球と宇宙 における科学的思考力 理科の学習では, 自然の現象を見たり触れたりする体験により自然に対する関心を高め, 自然の事物 現象のなかに問題を見いだし, 目的意識をもって実験 観察などを行うとともに, 事象を実証的, 論理的に考えたり, 分析的, 総合的に考察したりして問題を解決する探究の過程が大切である そしてこの探究の過程のなかで科学的思考力が育ち, 自然現象への知識 理解が深まるのである つまり, この探究の過程を繰り返していくことで, 各段階でどのように思考すればよいかを学び, 問題解決の方法も身に付けていくのである 3

中学校理科第 分野の 地球と宇宙 では, 自然の事物 現象を時間, 空間と関係付けて動的にみたり, 事象の生じる要因や仕組みを分析的, 総合的に考えたりするなど, 事象を論理的, 実証的, 客観的に考察して問題を解決することが必要である この過程を通して, 時間概念と空間概念がさらに発達し, 科学的思考力が育っていくのである 問題意識予想 解決方法の計画 探究の過程 < 図 8> 探究の過程 ( 見通し 目的意識をもつ ) 観察 実験結果の考察 探究の過程では, 目的意識をもたせることが問題解決の原動力となり, 学ぶ必要性や主体的な学習を生むことにつながり, 大変重要である そのためには, 関連ある生活経験や既習事項を想起させたり, 考えるヒントとなる事象を提示したりすることが必要である しかし, 天体学習のように生活経験が乏しく, 既習内容も少ない場合は, 実際に体験させることがなにより有効であるが, ビデオ教材やインターネットで得た資料などを活用しながら体験を補うことも必要である 生徒たちは, 目に見えないものを自分なりに想像し, 概念を形成しながら学習していく そのため, 学習時にうまくイメージできないと理解が困難になる場合がよくある 天体学習ではこのイメージをもたせるためにモデル化することが有効である 天体の学習には縮尺の変更, 視点の変更, 時間の変更の3つの変更が必要である この3 要素を組み替えながら, 実際に自分の目で見た天体とモデルとを結び付けて実験や考察し, 規則性を考えさせることが最も重要である このように, いろいろな要素を組み替えながら行う思考は, 単に天体が分かるだけでなく, それを超えた思考の枠組みを変換する頭の柔軟性を鍛える教材になると思われる 3 指導の改善点と教材開発について (1) 指導の改善点 1 直接体験の重視と支援する授業自然事象への興味 関心や探求心を高めるためには, 直接体験を重視した授業展開が大切である そして, この直接体験は, 生活と結び付いた驚きや感動などの実感を伴うものでなければならない 天体学習における直接体験は, 生徒たちが すごい! 美しい! こんな世界があるのか! と感動したり, 疑問をもったりするものが多い そこで, 夜間の天体観察だけでなく, 朝夕や昼間に行えるものを積極的に取り入れ, 生徒に直接体験させる また, 生徒が自宅で自分一人でも観察できるための支援をしていく 立体的イメージの構築簡単なモデル実験やコンピュータを使ってのシミュレーションを生徒一人一人に体験させることで, 空間の立体的イメージを構築する また, 生徒全員に地球儀を持たせ, 自分で操作させることで, 地球外の視点からみた方位概念を育てていく 3 視点を変更する活動を通して, 科学的思考力を育てる探究の場の設定視点の変更をしながら, 自分で観察した天体とモデルとを結び付けて考えることができる教具を開発し, それを使った探究する場の設定を行う 4

() 教材開発 1 興味 関心をもたせる工夫 < 教材 1> 生徒が興味をもつ天体現象を中心とした天体ビデオを作成し, 導入に使う 身近な天体 ( 太陽, 月, 惑星 ) を中心に, 流星群や巨大流星, 人工衛星 ( スペースシャトル ) などの映像も取り入れ, 動きのある教材にする この映像から天体への興味や疑問をもたせる < 教材 > 北極星を見つける簡易観察装置 1と< 教材 3> 星の動きや太陽の南中高度を観察する簡易観察装置 を生徒一人一人に製作させ,1 年間通じて活用することで興味を持続させる < 教材 > 簡易観察装置 1 < 教材 3> 簡易観察装置 < 教材 5> 太陽や星の日周運動のビデオを作成し, 観察できていない生徒の補助資料とする 特に, 季節ごとの日の出を撮影し, 季節による日の出の位置の違いに気付かせる < 教材 8>ピンホールカメラの原理を利用した太陽投影器をつくり, 太陽観察を体験させる 投影法は比較的安全であり, 大型太陽投影器で互いに協力しながら観察すれば, 黒点まで見ることができる < 教材 >ビデオカメラを利用し, 太陽を直接撮影させる 太陽フィルターやND400フィルターを使えば簡単に減光することができ, 太陽黒点を安全に観察 記録することができる < 教材 8> 太陽投影器 < 教材 > 太陽黒点のビデオ撮影 < 教材 > 金星の日面通過 (04 年 6 月 8 日 ), 部分日食 (04 年 月 日 ), 金星と木星の接近 (04 年 月 5 日 ), 金星と月の接近 (04 年 月 日 ), 水星探し ( 東方最大離角 04 年 月 1 日 ), 金星と水星の接近 (05 年 1 月 1 日 ) などの身近なトピックス的な天体現象を観察させることで, 興味 関心をもたせる 5

< 教材 > 昼間の金星を望遠鏡で観察させたり, 肉眼で探させたりする 特に最大光輝の時は肉眼で十分に見つかり, 双眼鏡を使えば三日月形に欠けている姿が見られる < 教材 1>ブラックライトを光源に使ったモデルで, 月の満ち欠けの原理を体感させる 発泡球に水彩絵の具 ( 蛍光白 ) を塗ると大変見やすくなり, 満ち欠けがよく分かる < 教材 > 昼間の金星観察 < 教材 1> 月の満ち欠けモデル実験 < 教材 13> 金星の満ち欠けモデルで, 原理を体感させる また,< 教材 >で見つけた金星の形をもとに, 地球, 太陽, 金星の位置関係を直感的に推測させる 室内の明かりを消すと < 教材 13> 金星の満ち欠けモデル < 教材 > 太陽や惑星を身近な球体でつくったモデルで表し, 天体の大きさの違いや宇宙の広がりを体感させる 1 億分の1に縮小すると, 太陽が1.mの大型風船, 地球が15m 先のパチンコ玉, 土星が1.km先のソフトボール, 冥王星が約 5km先のmmのビーズ玉になる 1 cm cm 4 cm 4. cm mm 4 mm 6 mm 1 cm 1.1 cm < 教材 > 太陽 惑星モデル 6

一人で観察できる手だての工夫 < 教材 4> 星座観察を教室で疑似体験させ, 星座の方向, 高度, 大きさを体感させる < 教材,3> の操作も習得させる 星座早見の使用方法を説明するときに, 地平線方向の星図を併用する 観察日には地平線方向の星図を方位ごとに作成し配布する 集団宿泊学習で星座観察を行い, 基本的な観察技能を身に付けさせ, 天体学習 (1か年計画) の始まりにする ( 前年度の第 学年で実施 ) < 教材 4> 疑似体験の様子 3 視点の変更を助ける工夫 < 教材 61> 太陽と地球の 球儀モデルを用いて, 天体の日周運動や年周運動をモデルで再 現させることによって, 具体的に天体の位置関係をとらえることができるようにする < 教材 7> 地球儀に取り付けたCCDカメラの映像を見せることで, 視点の移動を助ける 地 球儀に取り付ける位置により, 世界各地の太陽の動きを再現できる < 教材 61> 球儀モデル実験器 < 教材 7> CCD カメラによる視点の移動 < 教材 6> 太陽と地球と金星の3 球儀モデルを用いて, 金星の満ち欠けをモデルで再現させる 欠け方, 大きさ, 見える方向と高度などを測定する活動を通じて, 視点の変更を体験しながら探究させる < 教材 6> 3 球儀モデル実験器 7

4 実践事例 第 3 学年地球と宇宙 ( 全 16 時間 ) (1) 単元の目標 身近な天体の観察を通して, 地球の運動について考察するとともに, 太陽の特徴及び太陽系についての認識を深めることができる () 単元の指導計画 時 学習内容 ( は開発教材活用, は科学的思考力を育てる探究の場 ) 開発教材と教科書実験 夜空を眺めてみよう 教材 1( 導入用天体ビデオ) 1 北極星とカシオペヤ座を見つけよう 教材 ( 簡易観察装置 1) 簡易観察装置の製作( 希望者, 放課後 ) 教材 3( 簡易観察装置 ) 夜間観察 教材 4( 星座観察の疑似体験 ) 観察結果を発表しよう 地球の自転によって星や太陽はどのように動いて見えるか 教材 3( 簡易観察装置 ) 3 地球の自転や公転, 地軸のかたむきについて知ろう 教科書 p.57[ 観察 1] 4 星の1 日の動きを調べよう ( 夜間観察 ) 教材 5( 太陽, 星の日周運動ビデオ) 太陽の1 日の動きを調べよう 5 観察結果をもとに, 天体の日周運動について知ろう 教材 61( 球儀モデル実験器 ) 6 モデル実験器を使って太陽の日周運動を確かめよう 教材 7( 視点移動用 CCDカメラ) 地球の公転によって星や太陽はどのように動いて見えるか 教科書 p.61[ 実験 1] 7 各季節に見られる星座を調べよう 教材 61( 球儀モデル実験器 ) コンピュータ シミュレーションを使って星の1 年間の動きを調べよう 教科書 p.65[ 実験 ] 季節はなぜ生じるのか ( 香川型教材教師用 ) 8 立体模型をつくろう ( 香川型教材 31) 季節ごとの太陽の光のあたり方のちがいを調べよう ( 香川型教材 3) 天体や星座など宇宙について学んだことから考えよう 教材 61( 球儀モデル実験器 ) 教材 7( 視点移動用 CCDカメラ) 太陽の特徴を調べてみよう 教科書 p.68[ 観察 ] 太陽の黒点のようすを調べよう 教材 8( 太陽投影器 ) 1 黒点の観察結果より, 太陽の特徴をまとめよう 教材 ( 太陽黒点のビデオ撮影 ) 教材 ( 部分日食の観察 ) 太陽系のなかま 13 惑星くらべをしよう 教材 ( 太陽 惑星モデル) 宇宙の広がり 惑星はどのような天体か 教科書 p.7[ 観察 3] 昼間の金星を見つけよう 教材 ( 昼間の金星観察 ) 月の満ち欠けを調べよう 教材 1( 月の満ち欠けモデル) 15 見つけた金星の位置をモデルで確かめよう 教材 13( 金星の満ち欠けモデル) 16 金星の満ち欠けを探究しよう 教材 6( 3 球儀モデル実験器 ) 8

(3) 指導の実際 1 興味付け第 時 太陽の黒点のようすを調べよう 目標太陽の観察に関心をもち, 進んで取り組もうとする 太陽の黒点のようすを記録することができる 部分日食の日を観察日に選び, 太陽への関心を高めた 各自で小型の投影器を作成し, 部分日食を観察した 大型投影器をグループで操作し, 日食や黒点を観察した ビデオカメラで撮影し, 次時の映像資料とした 望遠鏡での投影観察( 教科書の方法 ) も行った 知識の習得 ( 太陽系構造のイメージづくり ) 第 13 時 惑星くらべをしよう 目標惑星やその他の太陽系の小天体に関心をもち, それらについて調べるとともに, 太陽系を構成する天体の特徴や太陽系全体の構造について説明できる 太陽系の惑星について学習した 太陽と惑星のモデルを使って, 大きさの違いや, 宇宙空間の広がりを体感した 月, 恒星の大きさや距離を計算し, モデルで表した 太陽系外の宇宙の広がりを理解した 3 問題意識始業前の登校時間 昼間の金星を見つけよう 目標金星に関心をもち, 金星の位置や満ち欠けを記録できる 金星と木星の接近がテレビや新聞で報道された翌週を観察日に選び, 関心を高めた 1 週間前から金星を肉眼で観察した ( 自宅で朝 6 時 ) 朝の見やすい時間帯を選び, 望遠鏡で満ち欠けを観察した 4 知識の補充 ( ヒントとなる現象の提示 ) 第 時前半 月の満ち欠けを調べよう 目標月の満ち欠けについて, その仕組みを説明できる 月の満ち欠けの写真をもとに, 満ち欠けする理由を考えた 月の満ち欠けモデルを一人一人で体験し, 理解を深めた 月の満ち欠けの原理をワークシートにまとめた 5 予想と実験 考察 ( 探究の場 ) 星なんかどこにもないよ 本当に見えるの? 小さいけど半分欠けて見えるよ どうして? 第 時後半 ~16 時 見つけた金星の位置をモデルで確かめよう, 金星の満ち欠けを探究しよう 目標金星の見え方から金星と地球, 太陽の位置関係を考察し, 太陽系の構造について理解する 観察した金星の形をもとに, 金星の満ち欠けモデルを用いて太陽, 金星, 地球の位置関係を推測した 3 球儀モデル実験器を扱い, 金星の見かけの大きさと満ち欠けの変化のようすを調べた 地球からの内惑星の見え方についてまとめた

Ⅳ 実践を通して 1 指導と教材の効果について (1) 生徒の意識調査から ( 置籍校第 3 学年 1 クラス 35 名平成 16 年 月 1 日実施 ) 0 5 15 5 30 35 学習に意欲的に取り組めた 3 3 ( 人 ) 学習内容を理解することができた 6 観察やものづくりが楽しくできた 1 1 1 予想したり, 考えたりした 1 3 自分から調べようとした 4 できたほぼできたあまりできなかったできなかった < 図 > 授業後の意識調査結果実践授業終了後に, 意識調査を行った 学習に意欲的に取り組めた が83%, 観察やものづくりが楽しくできた が4% であった 学習内容を理解することができた ほぼできた と答えた生徒が77% であり, この単元としては高いと思われる また,< 図 7>の事前意識調査と比べて, 予想したり, 考えたりした が86% と増え, 自分から調べようとした 生徒も57% と低いものの伸びてきた これらの結果から, この単元の取り組み全体が生徒の天体への興味 関心 意欲を高めるのに有効であったと考える () 教材の有用性調査から ( 置籍校第 3 学年 1クラス35 名平成 16 年 月 1 日実施 ) 開発教材が学習理解に役に立ったかを, 生徒へのアンケートで調べた 0 5 15 5 30 35 ( 人 ) 教材 1( 導入用天体ビデオ ) 1 16 0 教材 4( 星座観察の疑似体験 ) 4 0 教材 5( 太陽, 星の日周運動ビデオ ) 1 教材 ( 簡易観察装置 1) 15 教材 3( 簡易観察装置 ) 5 1 教材 6(3 球儀モデル実験器 ) 7 教材 7( 視点移動用 CCDカメラ ) 15 15 5 教材 8( 大型太陽投影器 ) 5 6 4 教材 ( 太陽黒点のビデオ撮影 ) 17 4 教材 ( 部分日食の観察 ) 5 1 教材 ( 昼間の金星観察 ) 15 17 3 教材 1( 月の満ち欠けモデル ) 教材 13( 金星の満ち欠けモデル ) 13 教材 ( 太陽 惑星モデル ) 6 7 役に立った少し役に立った役に立たなかった < 図 > 生徒への教材有用性調査結果教材 1,4,5のビデオやコンピュータシミュレーションを使った映像で視覚的にとらえさせる教材は, ほとんどの生徒が役に立ったと回答している プロジェクターを使い理科室背面全体に投影することで臨場感が増し, 動きを繰り返し再現することで全員に納得するまで疑似体験させることができた 直接体験を補う教材としては大変有効であった

教材,3の簡易観察装置を使うことで北極星の位置に確信がもてた生徒が多く,< 図 >のように, 北極星やカシオペヤ座が見つけられる割合も増加した しかし, 家庭で個人観察したために使用方法が分からなくなった生徒や, 使わなくても見つけられる という生徒もいた さそり座は南に山脈があるため見つけにくい という感想が多かった オリオン座は3 学期も継続観察させている 星座や星の見つけ方などの観察を支援する教材を工夫したことで観察技能が向上し, 多 0 5 15 5 30 35 ( 人 ) 北極星 ( 授業前 ) 4 13 ( 授業後 ) 15 カシオヘ ヤ座 ( 授業前 ) 3 8 4 ( 授業後 ) 15 さそり座 ( 授業前 ) ( 授業後 ) 3 オリオン座 ( 授業前 ) 5 6 4 ( 授業後 ) 6 1 見つけられるたぶん見つけられる見つけられない < 図 > 授業前後の観察技能調査結果 くの生徒が観察できた そして, 直接体験したことで興味 関心がさらに高められた 教材 6,7は, 方位概念が十分でない生徒にとっては難しく, レディネステストで方位認識が不十分であった5 名は 役に立たなかった と回答していた 方位概念がある程度できている生徒には効果があり, 設定した探究の場では, 器具をのぞき込み真剣に考える生徒の姿が見られた 生徒のなかには外惑星の満ち欠けを発展的に考える者も現れた 教材 8,,,の昼間の天体観察は, ほとんどの生徒が興味をもち 役に立った と回答している 昼間に星が見えることに驚き, 金星の欠けた姿に疑問をもつ生徒が多かった 探究の過程で問題を意識させ, 目的意識をもたせるのに効果的であった 役に立たない と回答した生徒は, 見えにくい という感想をもっていた 金星観察は特に時期を考慮したい 教材 1,13のモデル実験は, 一人一人が体験でき, 視覚的で, 天体の公転と満ち欠けの関係が大変分かりやすかった という感想が多かった 教材 の太陽 惑星モデルは, 実際に手にすることができるので, 大きさの違いがよく分かった 太陽の大きさに驚いた という感想が多かった 科学的思考力について (1) 授業後の定期テストから ( 置籍校第 3 学年全クラス17 名平成 16 年 1 月 日実施 ) 学期末の定期テストで, 地球の自転 公転と星 0 0 座の見える方角 惑星の公転と見かけの位置の変授業クラス 80 化 について, 科学的な思考力の定着状況を調査し 70 60 他の4クラスた < 図 1>の結果では, すべての問題で従来型の授の平均 50 業を行った他のクラスの平均より高かった 特に金 40 30 星, 火星の位置を公転軌道上に図で表す問題では, 正 答ではないがおおむね満足できる解答を加えると8 割 0 となり, 基礎 基本の定着は図られたと思う 問題 1 問題 問題 3 問題 4 問題 5 問題 6 < 図 1> 定期テストの結果 ( 正答率 ) () 視点の移動と空間把握の問題から ( 置籍校第 3 学年 1クラス35 名平成 16 年 月 6 日実施 ) 問題 1: 満月, 半月, 三日月の日に, 月から地球を見るとどのように見えるでしょうか 問題 : 4 時, 東の地平線から流れ星が昇ってきました この現象が起こる仕組みを, 図や言葉で説明しなさい ( 教材 1の導入用天体ビデオで多くの生徒が疑問をもった現象 )

< 図 13>は, これら 問の結果である 満月, 半月については3 分の 以上, 三日月は3 分の1 の生徒が正解した また, 流れ星については約半数の生徒が説明することができた できなかった生徒のなかにも, 図や言葉では表現できないが, 地球儀等の実物モデルを使って流れ星の経路を示すことができる者が多かった 以上のことから3 分のの生徒は視点を移動して空間を認識していると考えられる 満月半月三日月流れ星 0 5 15 5 30 35 ( 人 ) 7 4 1 13 3 17 できた できなかった < 図 13> 視点の移動と空間把握問題の結果 Ⅴ まとめと今後の課題 1 直接体験の重要性と観察計画の作成 教師作成のビデオやコンピュータシミュレーションを活用したり, 生徒自作の観察装置を全員に持たせたりしたことで, 観察意欲が増し, ほぼ全員の生徒が家庭での観察を行えた また, 昼間の天体観察は感動や疑問をもたせ, 探究学習を進める上で有効であり, 直接体験の重要性を再認識した 今後は第 学年後半からの天体を定期的に観察する1か年計画と, トピックス的天体現象を学年にこだわらずに観察する3か年計画を組み合わせた, 長期間の観察計画を作成したい また, トピックス的天体現象とその観察方法を, 先生方に情報配信していくことも必要だと考える 指導計画の見直しと開発教材の改良 今回は, 従来の学習の流れをそのままに, 新しい教材を加えることで計画してきた 教材が 理解できない という生徒も見られ, 別の指導方法や支援が必要であったと思われる 特に, 授業前に方位概念や空間概念を確実に定着させる必要があった さらに, 身近な天体 ( 太陽, 地球, 月, 星座 ) の位置関係を単元の早い段階でイメージさせる必要もあった そこで, 今後は指導過程を組み替えた指導計画を作成する 将来的には, 小学校からの指導内容も見直し, 系統性をもたせた小中一貫のカリキュラムの作成が必要だと考える また, 分かりやすい, 使いやすい, 作りやすい, 丈夫な 教材になるように改良を行い, 授業での効果的な活用方法も研究したい 3 探究する場の設定 生徒たちは, 観察を通して驚きや疑問をもち, モデルを使うことで具体的にイメージし, そして, 視点を変えて考察することにより, 空間概念に対する理解を深めることができた しかし, モデルやシミュレーションは, あくまでも思考を助ける補助教具である モデルやシミュレーションを使って考察, 推論した結果を再び観察で実証することで, さらに理解が深まる 数か月後の金星の位置と欠け方を推測し, 再度, 金星を観察させたいと思っている 最後に, 本研究を進めるに当たりご協力いただいた香川県立五色台少年自然の家に心より感謝申し上げます < 参考文献 > 佐賀県教育センター: 基礎 基本の定着を図る小 中学校理科指導,15 年度研究紀要,04 船橋市総合教育センター: 小学校における新しい天文学習, 研究集録第 13 集,0 文部省: 中学校学習指導要領解説理科編, 大日本図書,1 1