Economic Indicators   定例経済指標レポート

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金融政策決定会合における主な意見

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平成24年度の経済見通しと経済財政運営の基本的態度(閣議了解)

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○ユーロ

現代資本主義論

経済・物価情勢の展望(2018年1月)

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経済・物価情勢の展望(2017年7月)

スライド 1

経済・物価情勢の展望(2016年10月)

中国におけるインフレの行方 中国経済は減速しているものの 過熱の解消にはまだ至っていない 年 9 月のリーマン ショックを受けて 中国は輸出が大幅に落ち込み 景気後退を余儀なくされたが 兆元に上る内需拡大策や 金利と預金準備率の大幅な引き下げをはじめとする拡張的財政 金融政策が実施されたことを受けて

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

経済・物価情勢の展望(2017年10月)

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

中国:なぜ経常収支は赤字に転落したのか

[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

リンギ安進むマレーシア~原油安による経済への影響~

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スライド タイトルなし

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○ユーロ

タイトル

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

長と一億総活躍社会の着実な実現につなげていく 一億総活躍社会の実現に向け アベノミクス 新 三本の矢 に沿った施策を実施する 戦後最大の名目 GDP600 兆円 に向けては 地方創生 国土強靱化 女性の活躍も含め あらゆる政策を総動員することにより デフレ脱却を確実なものとしつつ 経済の好循環をより

エコノミスト便り

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

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2019 年 3 月期決算説明会 2019 年 3 月期連結業績概要 2019 年 5 月 13 日 太陽誘電株式会社経営企画本部長増山津二 TAIYO YUDEN 2017

( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 2, 15, 1. 金 16, 額 12, 12, 9, 営業利益率 経常利益率 当期純利益率 , 6, 4. 4, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 1 社 ( 単位 : 億円 ) 215 年度 216 年度前年度差前年度

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別紙2

中国、財新サービス業PMIは4ヶ月ぶりの低水準に(Asia Weekly(3/4~3/8)) | 第一生命経済研究所 西濵徹

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○ユーロ

第45回中期経済予測 要旨

中国、家計消費の伸びは歴史的低水準に | 第一生命経済研究所 西濵徹

グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

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Invesco Premia Plus Fund

12月CPI

PowerPoint プレゼンテーション

経済見通し

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( 億円 ) ( 億円 ) 営業利益 経常利益 当期純利益 金 25, 2, 15, 12, 営業利益率 経常利益率 額 15, 9, 当期純利益率 6. 1, 6, 4. 5, 3, 2.. 2IFRS 適用企業 8 社 214 年度 215 年度前年度差 ( 単位 : 億円 ) 前年

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

各資産のリスク 相関の検証 分析に使用した期間 現行のポートフォリオ策定時 :1973 年 ~2003 年 (31 年間 ) 今回 :1973 年 ~2006 年 (34 年間 ) 使用データ 短期資産 : コールレート ( 有担保翌日 ) 年次リターン 国内債券 : NOMURA-BPI 総合指数

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日本経済の現状と見通し ( インフレーションを中心に ) 2017 年 2 月 17 日 関根敏隆日本銀行調査統計局

4月CPI~物価は横ばいの推移 耐久財の特殊要因を背景に、市場予想を上回る3 ヶ月連続の上昇

月例経済報告

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

米国を巡る国際マネーフローの動向

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

月例経済報告

2012 年 10 月 15 日号

エコノミスト便り【欧州経済】ユーロ圏はどのように財政を再建したか

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PowerPoint プレゼンテーション

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

ヘッジ付き米国債利回りが一時マイナスに-為替変動リスクのヘッジコスト上昇とその理由

Economic Indicators   定例経済指標レポート

「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」の導入

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

スライド 1

物価の動向 輸入物価は 2 年に入り 為替レートの円安方向への動きがあったものの 原油や石炭 等の国際価格が下落したことなどから横ばいとなった後 2 年 1 月期をピークとし て下落している このような輸入物価の動きもあり 緩やかに上昇していた国内企業物価は 2 年 1 月期より下落した 年平均でみ

【ロシア最新経済金融週報】

IMF世界経済見通し 2015 年 4月 第 章 要旨

マーケット フォーカス経済 : 中国 2019/ 5/9 投資情報部シニアエコノミスト呂福明 4 月製造業 PMI は 2 ヵ月連続 50 を超えたが やや低下 4 月 30 日 中国政府が発表した4 月製造業購買担当者指数 (PMI) は前月比 0.4ポイントの 50.1となり 伸び率がやや鈍化し

平成14年1月20日

(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

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第1章

株式市場 米国株 景気 企業業績は依然として堅調 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 貿易摩擦への懸念から下落米国株式市場は下落しました トランプ米大統領が鉄鋼やアルミニウムの輸入を制限する方針を表明したことから 世界的な貿易摩擦への懸念が高まり下落して始まりました その後 貿

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

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証券市場から見た消費税引上げを巡る論点

オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

2 / 6 不安が生じたため 景気は腰折れをしてしまった 確かに 97 年度は消費増税以外の負担増もあったため 消費増税の影響だけで景気が腰折れしたとは判断できない しかし 前回 2014 年の消費税率 3% の引き上げは それだけで8 兆円以上の負担増になり 家計にも相当大きな負担がのしかかった

Economic Trends    マクロ経済分析レポート

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株式市場 米国株 トランプ氏の政策への期待感後退で調整も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました 11 月 8 日 ( 現地 ) に行われた大統領選挙でトランプ氏が当選し 減税やインフラ投資の拡大などの同氏の政策に注目が集まりました 債券市場では金利が上

株式市場 米国株 高値警戒感の高まりなどから上昇一服も MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場は上昇しました トランプ政権で閣僚などの人事において一部で混乱が見られましたが トランプ大統領の発言などにより減税 金融規制緩和などへの期待が高まったことや 発表された米国企

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中国、一段の景気下振れを示唆する動きが顕在化 | 第一生命経済研究所 西濵徹

株式市場 米国株 国内の政策動向や海外の政治動向などに注目 MSCI 米国 2, % 先月の回顧 米国株式市場はほぼ変わらずとなりました 月初には 2 月末のトランプ大統領の議会演説を好感して 株価は大幅上昇となりました しかし その後は 新政権の経済政策に対する期待が徐々に後退

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

ピクテ・インカム・コレクション・ファンド(毎月分配型)

金融市場2018年12月号

Transcription:

World Trends マクロ経済分析レポート 南アフリカ経済事情 : 電力供給の回復で - 月期は成長が加速 ~ 先行きはインフレと金利高で内需下押し 政治的不安による投資先細り懸念が高まる可能性も ~ 発表日 : 年 月 日 ( 水 ) ( 要旨 ) 1/ 第一生命経済研究所経済調査部 担当副主任エコノミスト西濵徹 (3-1-) 19 日 南アフリカの- 月期の実質 GDPが公表され 対前年比 +.% と前期 ( 同 +.%) から加速 対前期比 ( 年率換算 ) でも+.9% と前期 ( 同 +.1%) から大幅な上昇となった 今年 1 月に発生した電力危機直後に鉱業関連での操業停止が相次いだものの その後は供給量は一部カットされつつも安定供給が確保されていることで 鉱業及び製造業で生産が回復したことが寄与した 世界的な原油 穀物価格の高騰を背景に同国でもインフレ圧力が増大しており 月のCPIXは前年比 + 11.% と過去最大の伸びを示している さらに 足元では海外からの投資資金がもたらす過剰流動性による需要インフレ圧力も加わっており 金融当局は昨年 月以降引き締め姿勢を強めている ただし 足元で原油及び穀物価格が調整局面を迎えていることを理由に直近の金融政策委員会では金利据え置きの決定がなされたものの 先行きも引き締めスタンスは堅持されるものとみられる 同国では1 年のサッカー W 杯を控えてインフラ建設が進められるなど 資本財を中心に輸入が増大している 一方で 主要輸出財の鉱物資源は電力不足による操業減速の影響が国際価格の上昇を招く関係から足元で貿易赤字の縮小が進むものの 海外からの投資に伴う所得移転から経常収支は赤字基調にあり 資本収支でファイナンスする脆弱な構造が続く 足元では原油価格の下落を起因とする資源価格の調整から同国向け投資は弱含んでいるとみられるものの 依然外貨準備は積み上がりが続いている 先行きについては 資源国という強みと内外金利差による投資資金の流入は一定程度期待されるものの インフレと金融引き締めに伴う金利高の影響から内需の鈍化は避けられず 景気全体も減速基調が強まるとみられる 中長期的な成長を見据える上では 絶対的に不足する電力問題の解決が不可欠であり 必要な投資とそれをファイナンスする料金体系の構築など 投資環境の全体的な整備への取り組みが求められる 電力供給の安定化による生産押し上げも 先行きはインフレと金利高による景気下押し懸念強まる見込み 19 日 南アフリカ統計局は - 月期の実質 GDP が対前年同期比 +.% と前期 ( 同 +.%) から加速したと公表した ( 図 1) なお 対前期比( 年率換算 ) では+.9% と前期 ( 同 +.1%) から大幅な上昇を示した 今年 1 月に発生した電力危機によって国内の鉱山では一時期操業停止に陥ったものの その後は送電量が一部カットされつつも安定的に送電されていることで GDP の 割を占める鉱業部門及び製造業部門における生産が大きく回復した 1 年に開催予定のサッカー W 杯に向けたインフラ投資が進められている一方 金融当局は足元で高進が続くインフレ圧力に対する引き締め姿勢を強め 先行きは金利高による投資の減少 自動車や家具などの耐久消費財消費は減速することで景気に下押し圧力が掛かるものとみられる 1 日 南アフリカ準備銀行は金融政策委員会を開催し 政策金利であるレポ金利を 1.% で据え置く決定を行った ( 図 ) 同国では依然として世界的な資源価格高騰に伴いインフレ圧力が高進し続けているものの 足元では世界的な原油及び穀物価格が調整局面を迎え 先行きのインフレ圧力に緩和期待が生じていること インフレの高進に加えて金融引き締めに伴う金利高により個人消費を中心とする内需に鈍化懸念が生じているとして これまでのインフレ抑制姿勢が緩みつつあるとの判断を示した ただし 記者会見で同行のムボウェニ総裁は 先行きのインフレには依然不透明感が残っており 電力料金の改定予定などのインパ

クトを注視する必要があるとも指摘しており 引き締め圧力は堅持される見通しである 同国では 世界的な原油及び穀物価格の騰勢が続いていることによるコストプッシュ型インフレの影響でイ ンフレが高進しており 月の CPIX( 消費者物価からモーゲージ金利を除いたもの ) は対前年同月比 + 11.% と金融当局が掲げるターゲット (3~%) から大きく上振れ 過去最大の伸び幅を記録している ( 図 3) さらに 金利引き上げによる引き締め姿勢が強められているものの 足元の世界的な金融市場におけ る信用不安から先進国の金融当局が緩和姿勢を示していることで内外金利差が拡大している そうしたこと で海外からの投資資金の流入が続いており 過剰流動性が発生するなど依然としてマネーの伸びは高止まり している ( 図 ) こうしたことから 財価格が高い伸びを示している上 賃金の伸びを示すサービス価格 の伸びも高止まりしており 需要インフレが起こっていることが示される ( 図 ) 図 1 実質 GDP 成長率の推移 ( 前年比 ) 農業 鉱業 建設 金融 その他 GDP 7 3 1 図 政策金利の推移 -1 3 7 3 7 ( 出所 )Bloomberg ( 出所 )CEIC 1 図 3 消費者物価の推移 ( 前年比 ) 図 M3 と国内信用の推移 ( 前年比 ) 食料品 衣類 靴 住宅 燃料 1 運輸 通信 その他 CPIX - 3 7 1 1 1 1 図 消費者物価の推移 ( 前年比 ) 財価格サービス価格 3 7 ( 出所 )CEIC 国際収支の脆弱さも資源国という環境が下支え 足元の資源価格の調整局面が為替や株価の下押し材料に 同国では 1 年に開催予定のサッカー W 杯の開催に向けて 様々なインフラ建設が進められており そ の影響から 国際収支面で資機材関連の輸入が高止まりしている その一方 同国の主要輸出財である鉱物 資源は今年 1 月に発生した電力危機の影響で鉱山の操業が一時的に停止すると大きく鈍化した しかし その後は一部供給量がカットされてはいるものの 電力は安定的に供給されているほか 同国からの供給が不安定になったことを材料に国際価格が高騰したことで輸出の伸びは大きく減速するには至らず 足元では貿易収支の赤字幅は縮小している ( 図 ) 1 1 1 1 1 M3 国内信用 3 3 7 1. /

足元では貿易赤字が縮小基調にあるものの 同国は外国資本による鉱業関連での直接投資が多額に上ること から 利益や配当の海外送金に伴い所得収支は大幅なマイナスとなっているため 経常収支は常に赤字基調 が続いている ( 図 7) しかし 経常収支の赤字は海外からの投資資金の流入によってファイナンスする構 造となっており ( 図 ) その結果として足元でも外貨準備は増え続けており 月末時点の外貨準備高は 39 億ドルに達している ( 図 9) こうしたことは 世界の金融市場における信用不安が拡大する折 内外 金利差の拡大といった事態を補強し 投資資金の流入を支える国際的な信任を高めることに寄与してきた このように 同国の 資源国 としての強みに加えて 金融当局による引き締め姿勢の影響から金利高によ って内外金利差が拡大したことにより 通貨ランドは 1 月に発生した電力危機による景気下押し圧力にも拘わらず増価圧力が掛かったとみられる ( 図 1) ただし 同国の主要輸出品である金やプラチナなどの国際価格が世界経済の減速による需要減少期待を折り込む形で頭打ちになった後 足元では調整局面に入っている ( 図 11) さらにこれまで高騰が続いてきた原油価格にも調整局面が到来したことで( 図 1) 米国の景気減速により減価圧力が強まっていた米ドルが買われる動きが強まっており ランドへの減価圧力が掛かり易い状況となっている 通貨ランド相場の動きと同様に 株式市場も外国人投資家を中心とする思惑が相場の動きを左右している 年明け以降は 世界同時株安の影響から一時的には相場が下落したものの その後は世界的なレアメタルを中心とする同国の鉱物資源に対する需要の高さ それを反映した世界的な鉱物資源市況の高止まりした影響から今年 月には史上最高値を更新した しかし その後は足元におけるインフレ圧力が高進している影響から内需に減速懸念が強まっていること さらに 原油価格の調整に加えて鉱物資源価格も調整していることもあり相場は大幅な下げ局面に入っている ( 図 13) とはいえ 年始からの下げ幅は他の国と比べても依然として小幅であると言うことが出来る 3 1 図 輸出入の推移 ( 前年比 ) 収支差 ( 右 ) 輸出輸入 -1 -, 7 図 国際収支の推移 ( 百万ドル ) - -1, -1, -, ( 十億ドル ) 直接投資 証券投資 その他投資 1 経常収支 総合収支 - - - - 3 7 ( 十億ドル ) 1-1 - -3 - - - -7 図 7 経常収支の推移 財 サ所得収支移転収支経常収支 - 3 7 ( 十億ドル ) 3 3 1 1 図 9 外貨準備高の推移 3 7 3/

/ 図 1 為替相場の推移 (ZAR/USD).3.1 7.9 為替安 7.7 7. 7.3 7.1.9 為替高.7. /1 / /3 / / / /7 /,, 1, 1, 1, 1, 図 11 金 プラチナ現物価格の推移 ( ト ル / トロイオンス ), ( 出所 )Bloomberg ( 出所 )Bloomberg プラチナ金 ( 右 ) 1, 7/1 7/ 7/7 7/1 /1 / /7 ( ト ル / トロイオンス ) 1, 1, 9 9 7 7 ( ト ル / ハ レル ) 1 13 11 9 7 図 1 原油先物価格の推移 (WTI) 図 13 株式相場の推移 ( 南アフリカ TOP) 3, 3,,,, 3, 7 /1 / /3 / / / /7 / ( 出所 )CEIC ( 出所 )Bloomberg 先行きはインフレと金利高で需給両面で下押し 政治的不安の増大による信任低下の可能性も残る 先行きの南アフリカ経済は 足元で高進が続くインフレがコストプッシュ型インフレと過剰流動性による需要インフレとの複合型に至っていることを考えると 足元の原油をはじめとする資源価格の調整が続いた場合でも当面はインフレ圧力が持続する可能性が高い そうしたことから 金融当局は引き締め姿勢を堅持せざるを得ず インフレと金利高が共存することで個人消費に下押し圧力が掛かるものとみられる 足元では既に実質ベースでの小売売上は前年比でマイナスに陥っているほか 金利高により自動車などの耐久消費財消費も減速基調が強まっている ( 図 1) さらに 建設関連でも足元では許認可件数が前年比でマイナスに陥るなど金利高の影響もあり ( 図 1) 個人消費に減速の可能性が高まっている また 1 月に発生した電力危機以降 足元では送電は安定的に実施されるには至っているものの 供給量は前年比でマイナスと電力不足は依然深刻な状況が続いている ( 図 1) その上 金利高により企業部門による資本投資が活発化しにくい状況が続いていることで 足元では鉱工業生産 とりわけ鉱業部門の生産は前年比でマイナスという鈍化基調が続いている ( 図 17) 同国では電力供給の 9% を国営電力公社である ESKOM が担っている上 発電の太宗を石炭火力に依存している 市場で取引されない石炭の価格は騰勢が先行きも持続するとみられ 発電量の伸びの鈍化は今後も続いていくことで生産がさらに鈍化することが懸念される こうしたことで消費と投資を中心とする内需 そして供給面でも鈍化は避けられないとみられる 電力不足の原因には電力料金が低すぎることがあり それにより ESKOM が設備のメンテナンス及び拡充に必要な資金を賄えないという構造的な問題がある そうした懸念に対して ESKOM は電力料金の値上げを申請し 1.3% の値上げについては申請が認められた しかし 足元の資源価格の高止まりを背景に ESKOM は今年度中に 3% の再値上げ 来年度にも同程度の値上げの実施を申請している これが承認されれば 実質的には向こう ヵ年のうちに電力料金が 倍強になることを意味するが 昨年 1 月の与党 ANC 党首選で勝利したズマ氏が同国最大の労働組合である南アフリカ労働組合会議 (COSATU) の支援を受けていることを考えると こうした要求が受け入れられる可能性は極めて低い 一方で 低率ながら電力料金が引き上げられることでインフレの押し上げも懸念されよう なお ESKOM は発電能力の増強を目指して今後 ヵ年に約 3 億ドル程度の投資を計画している その資金調達についても様々な憶測が出る中 世界銀行に一部を要

/ 請するとの情報も出始めている ただし その場合はコンディショナリティとして着実な電力料金の引き上げが求められる可能性が高く 要請には依然高いハードルが残るとみられる これまで同国への直接投資は足元でも堅調な推移を見せてきたが 隣国ジンバブエ情勢が不安定化する中で 難民や移民の大量流入が起こり 今年 月には移民の排斥を目的とする暴行事件が頻発するなど 投資環境への懸念が高まった 足元ではそうした事件は沈静化しているものの 依然として % を超える失業率の高さもある上 ジンバブエ情勢が依然として好転する見通しが低い中では政治的な不安定さが増大する懸念は残ると言える さらに 昨年 1 月に実施された与党 ANC 党首選挙で勝利したズマ元副大統領は COTASU の支援を受けたことに見受けられるように左派寄りの政策を志向するとされる中 これまで経済改革の推進による高成長の実現を志向してきたムベキ大統領との路線の違いを浮き立たせることで不透明感を高める可能性もある ズマ氏については今月初めから汚職疑惑に関する公判が行われているが 結審には時間を要するとみられ 政治的不安定さが高まる懸念があると言える こうしたことから 先行きの直接投資については状況によっては大幅な伸びを期待することは難しく 経済の下支え要因を失う懸念も出てくるとみられる こうした状況を背景に 同国経済は先行きにおける減速は避けられないとみられる 前年比 +.1% と堅調な成長を享受してきた 7 年に対して 年については政府は依然として潜在成長率と同程度の同 + % になるとの予測を示しているものの これをも下回り同 +3.% 程度にまで低下する可能性が高まっていると考えられる 同国では 金融当局による緊縮的な金融政策に加えて 政府も財政運営の上で緊縮姿勢を重視してきた一方で 資源価格高騰などを背景にここ数年は高成長を維持したことから歳入も拡大して財政収支は大きく改善し 公的債務の圧縮も進められてきた ( 図 1) インフレと金利高による内需の鈍化が避けられない中では 中長期的な成長を志向する観点からは 1 年のサッカー W 杯に向けたインフラ整備も不可欠ではあるが 海外からの直接投資の積極的な呼び込みに資する投資環境や制度設計などを含む 全体的なインフラ整備に取り組む必要がある バラ撒きや価格統制などといった市場メカニズムを歪める形での財政出動は望ましくないものの 財政を伴う形での資本整備は景気の下支えが期待出来る上 ムベキ政権がこれまで掲げてきた成長戦略にも合致する内容になると考えられる 一方で 金融当局はインフレ圧力が持続するとみられる中で ムボウェニ総裁はインフレタカ派姿勢を強めていることで 先行きも引き締め姿勢を堅持し続けるとみられ 対外的な信任に寄与すると期待される 特に サッカー W 杯に向けた資本投資のために輸入の伸びが依然として高く 国内からの利益 配当払いに伴う経常収支赤字を抱える同国は為替減価圧力が掛かり易いものの 海外からの投資資金の流入を促すことで為替の増価に繋がれば 資源価格が高止まりした場合でも輸入物価の押し下げが期待出来る 足元では原油価格の調整をはじめとする資源価格に調整圧力が強まっているものの これを期に新興国では燃料価格の引き下げ圧力が強まっており 先行きの原油価格がこのまま低下すると考えるのは早計と言える こうしたことから 同国政府は成長戦略と国際的な信任を高めるための方策を探っていく必要がある 通貨ランドの増価は輸出産業にとってはマイナスの影響が懸念されるものの 南部アフリカ関税同盟 (SACU) 枠内での通貨統合の話が進む中 その基軸通貨が足元でも既にランドであることを考えれば 周辺国への裨益の観点から 地域全体としての経済の安定化に資する材料となるとみられる 電力料金については 少なくとも施設の維持管理を賄うレベルで料金設定がなされる必要があり 中長期的には引き上げは避けられないとみられる また 電力不足は同国経済の根幹をなす鉱業部門にとっても克服すべき課題であり ESKOM が向こう ヵ年で大規模な施設拡充を目指す中で 一体的な取り組みが求められ

る ただし 同国では来年に総選挙が予定されていることもあり ドラスティックな方策を望むことは極め て難しいとみられる中 緩やかでも着実な改革の実施が望まれる 3 1 1 - 図 1 小売売上の推移 ( 前年比 ) 図 1 住宅関連指標の推移 ( 前年比 ) 小売売上 ( 実質 ) 自動車売上 3-1 3 7 1 - - - 図 1 電力供給量の推移 ( 前年比 ) 図 17 鉱工業生産の推移 ( 前年比 ) - 3 7 3 7 ( 十億ラント ) - - - 図 1 財政収支の推移 ( 出所 )CEIC 歳入 歳出 財政収支 公的債務 (GDP 比 )( 右 ) - 3 7 3 3 1 1 1-3 7 1 1 - -1-1 - 1 認可 鉱工業生産 完工 うち鉱業 / 以上