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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

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3 再診患者数の変動 再診患者数の立ち上がりは 3 月 6 日の週からで ピークは 3 月 27 日の週であった ピーク後も 4 月中は 3 人以上 / 週の状況が続いた この時期の患者は ヒノキ花粉の影響を受けているものと思われる 飛散花粉数の 2 次ピークは 再診患者数 ( 週計 ) のピークの

前立腺癌は男性特有の癌で 米国においては癌死亡者数の第 2 位 ( 約 20%) を占めてい ます 日本でも前立腺癌の罹患率 死亡者数は急激に上昇しており 現在は重篤な男性悪性腫瘍疾患の1つとなって図 1 います 図 1 初期段階の前立腺癌は男性ホルモン ( アンドロゲン ) に反応し増殖します そ

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ごく少量のアレルゲンによるアレルギー性気道炎症の発症機序を解明

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抗ヒスタミン薬の比較では 抗ヒスタミン薬は どれが優れているのでしょう? あるいはどの薬が良く効くのでしょうか? 我が国で市販されている主たる第二世代の抗ヒスタミン薬の臨床治験成績に基づき 慢性蕁麻疹に対する投与 2 週間後の効果を比較検討すると いずれの薬剤も高い効果を示し 中でもエピナスチンなら

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転移を認めた 転移率は 13~80% であった 立細胞株をヌードマウス皮下で ~1l 増殖させ, その組

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アレルギーの臨床 2010年3月号 (立ち読み)

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子として同定され 前立腺癌をはじめとした癌細胞や不死化細胞で著しい発現低下が認められ 癌抑制遺伝子として発見された Dkk-3 は前立腺癌以外にも膵臓癌 乳癌 子宮内膜癌 大腸癌 脳腫瘍 子宮頸癌など様々な癌で発現が低下し 癌抑制遺伝子としてアポトーシス促進的に働くと考えられている 先行研究では ヒ

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八村敏志 TCR が発現しない. 抗原の経口投与 DO11.1 TCR トランスジェニックマウスに経口免疫寛容を誘導するために 粗精製 OVA を mg/ml の濃度で溶解した水溶液を作製し 7 日間自由摂取させた また Foxp3 の発現を検討する実験では RAG / OVA3 3 マウスおよび

症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

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Title スギ花粉症初期療法が鼻粘膜ヒスタミン H1 受容体発現に及ぼす効果と機序に関する研究 Author(s) 牧瀬, 高穂 Citation Issue Date 2013-05-31 URL http://hdl.handle.net/10232/19906 http://ir.kagoshima-u.ac.jp

様式 F-19 科学研究費助成事業 ( 学術研究助成基金助成金 ) 研究成果報告書 平成 25 年 5 月 31 日現在 機関番号 :17701 研究種目 : 若手研究 (B) 研究期間 :2011 ~ 2012 課題番号 :23791912 研究課題名 ( 和文 ) スギ花粉症初期療法が鼻粘膜ヒスタミン H1 受容体発現に及ぼす効果と機序に関する研究研究課題名 ( 英文 ) The mechanism and effect of primal therapy and nasal histamine H1 receptor in Japanese cedar pollinosis. 研究代表者牧瀬高穂 (MAKISE TAKAO) 鹿児島大学 医学部 歯学部附属病院 医員研究者番号 :30585120 研究成果の概要 ( 和文 ): 初期療法を施行することで鼻粘膜擦過細胞中のヒスタミンH1 受容体 mrnaの発現量は有意に低下することが確認された スギ花粉飛散開始前の鼻粘膜擦過細胞中のヒスタミンH1 受容体 mrna 発現量と スギ花粉飛散時期の鼻症状に 正の相関関係があることを見出した マウスにスギ花粉エキスを反復投与することで くしゃみや鼻掻きの鼻症状を有意に誘導し 血清中スギ花粉特異的 IgEが産生されることを確認した ヒト鼻粘膜上皮培養細胞にヒスタミン受容体が発現していることを確認できた 研究成果の概要 ( 英文 ): It was confirmed that the expression level of histamine H1 receptor mrna in nasal mucosa was reduced significantly by the enforcement of primal therapy. We found that there was a positive correlation histamine H1 receptor mrna expression level of nasal mucosa before the start of the pollen dispersal and nasal symptoms in pollen dispersal season. By repeating administration of cedar pollen extract in mice, it was confirmed that significantly induced nasal symptoms of scratching and nose sneezing, serum cedar pollen-specific IgE was produced. I was able to confirm that the histamine receptor was expressed in human nasal epithelial cell culture. 交付決定額 ( 金額単位 : 円 ) 直接経費 間接経費 合計 交付決定額 3,200,000 960,000 4,160,000 研究分野 : 医歯薬学科研費の分科 細目 : 外科系臨床医学 耳鼻咽喉科学キーワード : アレルギー性鼻炎スギ花粉症ヒスタミン H1 受容体鼻過敏症

1. 研究開始当初の背景スギ花粉症は春先のスギ花粉飛散によって生じる季節性アレルギー性鼻炎であり 本邦におけるその有病率は年々増加傾向にある スギ花粉症によって生じる症状 ( くしゃみ 鼻汁 鼻閉 ) は患者の QOL を大きく下げる要因となり その医療費と経済損失は計り知れないほど莫大なものとなっている 2008 年に発行された鼻アレルギー診療ガイドラインに本邦におけるスギ花粉症治療について詳細が書かれているが その治療法の一つが初期療法である 初期療法は スギ花粉飛散開始予測日の1~2 週間前から薬物治療を開始する治療法である その有効性に関する報告は多数あり 臨床的に初期療法が有効であることは周知の事実となっている そのため初期療法を実施することによって スギ花粉飛散期における症状軽減と薬物投与量の軽減が期待される しかし 実地臨床の場において その有効性が個人によって差があることは経験的に知られている ヒスタミンはアレルギー性鼻炎発症メカニズムの中心的役割を担うケミカルメディエーターであり その受容体であるヒスタミン受容体には 4 つのサブクラスがあることが現在までに報告されている その中でも H1 受容体 (H1R) は鼻粘膜組織中に存在することが知られており アレルギー性鼻炎患者では その発現が亢進しているという報告がある ヒスタミン過敏性とスギ花粉症の臨床症状は相関することが知られており その受容体である H1R とアレルギー性鼻炎の関連について様々な研究が行われている さらに 最近ではインバースアゴニストの概念も注目されており H1R に対する研究は新しい局面を迎えようとしている 我々はこれまでスギ花粉症患者から得られた下鼻甲介粘膜擦過組織における H1R 遺伝 子 (H1R-mRNA) の発現について定量 PCR 法を用いて解析し 花粉飛散期に一致してその発現が亢進すること さらに H1R-mRNA の発現が花粉飛散開始前からすでに確認されること 初期療法を行うことで H1R-mRNA が有意に低下することを報告した ( 第 20 回日本アレルギー学会春季臨床大会 第 27 回日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー学会 ) また 患者個人で検討した場合 スギ花粉飛散前の鼻粘膜擦過組織中の H1R-mRNA の発現量とスギ花粉飛散期における鼻症状の重症度に相関関係があることを報告した ( 第 111 回日本耳鼻咽喉科学科総会学術講演会 ) 以上のことから 我々はスギ花粉症患者の鼻症状の重症度と鼻粘膜における H1R-mRNA の発現に関係性があることを見出した また 初期療法の有効性を判断する一助として鼻粘膜における H1R-mRNA 発現が有用である可能性を見出した そこで 初期療法が有効であるその機序を解明し臨床応用することで 治療前の時期での初期療法に対する Low-responder と High-responder の予測など 患者個人に対する科学的エビデンスに基づいた治療を実施することが可能となり その結果としてより適切な薬物使用による医療費の軽減と患者 QOL の改善に伴う経済損失の軽減に寄与できるものと考えられる 2. 研究の目的我々が注目する H1R はヒトおよびマウスの鼻粘膜組織中に広く分布している すでに我々はヒト鼻粘膜から綿棒などを用いて臨床現場で非侵襲的かつ迅速かつ確実に鼻粘膜擦過組織を採取し 組織中の H1R-mRNA を定量する方法を確立している また 当教室では以前からアレルギー性鼻炎モデルマウスを使用した実験を多数行っており その手技には十分精通している そこでこの方法を

用いることで以下の点について明らかにしたい (1) ヒト下鼻甲介粘膜擦過組織における H1R-mRNA の発現が スギ花粉症患者のシーズン中のヒスタミン過敏性そして鼻症状と相関することを証明する H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) 発現についても Western blot 法を用いて検討する (2) ヒト下鼻甲介粘膜擦過組織のプレパラート標本を作成し 免疫二重染色法を用いて H1R 発現細胞の同定とその分布を検討する (3) 各種薬剤による初期療法の前後でヒト下鼻甲介粘膜擦過組織における H1R-mRNA の発現および H1R( 蛋白 ) 発現を観察し H1R-mRNA および H1R( 蛋白 ) 発現の抑制効果を比較する さらに スギ花粉飛散シーズン中の臨床症状を比較検討する (4) オフシーズン中に下鼻甲介粘膜をスギ花粉エキスで連続刺激し ヒト下鼻甲介粘膜擦過組織における H1R-mRNA および H1R( 蛋白 ) の発現が抗原刺激によって誘導されることを実証する (5) オフシーズン中の鼻粘膜連続刺激前 1~2 週間に治療薬を投与し 誘発刺激後の H1R-mRNA および H1R( 蛋白 ) の発現抑制効果を観察する (6) アレルギー性鼻炎モデルマウスを使用した実験系を用い 鼻粘膜組織内における各種細胞と H1R の分布について 二重免疫染色等を用いてより詳細に検討を行う 3. 研究の方法 ( 平成 23 年度 ) 1) スギ花粉飛散前後における H1R-mRNA の発現当科およびその関連施設で毎年スギ花粉症の治療を行っている患者を初期療法群と飛散後治療群に分類し これらを対象として 研究を行う 対象患者についてはすでにリストを作成しており すべての患者の臨床所見やアレルギー検査成績に関するデータが保存されている 鹿児島では毎年 2 月半ばにスギ花粉の飛散が開始するため 1) 1 月末から 2 月上旬 2) スギ花粉飛散開始日 3) スギ花粉飛散最盛期 4) スギ花粉飛散終了時に 両群の患者から下鼻甲介粘膜擦過組織を採取し そのプレパラートを作成して二重免疫染色法を用いて炎症細胞の分布を確認し さらに H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現を定量 PCR 法および Western blot 法を用いて測定する 対照としてプラセボ薬投与群が必要であるが 現時点では実施不可能であるため 今回は対照を設けずに投薬された薬剤ごとに細分類し 各薬剤別に H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現を比較する これにより 初期療法群と飛散後治療群での H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現の相違 治療による効果と H1R-mRNA の発現の関連性を明らかにする 2) オフシーズン中の H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現スギ花粉症患者では オフシーズンにスギ花粉エキスで繰り返し鼻粘膜を刺激すると スギ花粉症症状が誘発され ヒスタミン過敏性も亢進することが知られている そこで スギ花粉単独感作症例を対象として スギ花粉エキスで刺激する前に抗ヒスタミン薬あるいは抗ロイコトリエン薬を内服させ これら薬剤の H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現抑制効果を観察する また スギ花粉非飛散期にスギ花粉エキスで 3 日間連続して鼻粘膜を刺激し その 2 日 4 日後に鼻粘膜擦過組織を採取し H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現を観察する また ヒスタミン希釈液で鼻粘膜を

刺激してヒスタミン閾値を測定し これをヒスタミン過敏性の指標として H1R-mRNA と H1R ( 蛋白 ) の発現量と比較する ( 平成 24 年度 ) 1) スギ花粉飛散前後における H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現前年度に引き続いて同様の研究を行い 症例数をさらに蓄積する また スギ花粉の飛散量が前年度とは異なることが予想されることから 花粉飛散量による H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現量の違いや炎症細胞の浸潤様式の相違点を観察する また プレパラートを二重免疫染色して H1R を発現する細胞を同定し さらに画像解析装置を用いて その分布の観察と発現量の定性を行う 2) オフシーズン中の H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現前年度のスギ花粉飛散期の臨床症状によって Low Responder 群と High Responder 群に分けて オフシーズン中の H1R-mRNA と H1R ( 蛋白 ) の発現量を比較する これによって High Responder 群を鼻粘膜 H1R-mRNA と H1R ( 蛋白 ) の発現の程度で鑑別できるか否かを検討する もし これが可能であれば オフシーズン中でも初期療法の適応が決定できると推測される 3) 培養細胞およびアレルギー性鼻炎モデルマウスにおける H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現の検討ヒスタミン受容体は上気道上皮細胞樹立株やマウス鼻粘膜にも発現することが知られている Detroit 562 細胞もそのひとつである この細胞やモデルマウスをヒスタミンやその他の炎症性サイトカインで刺激し H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現量を測定する そのうえで これらの刺激前に初期療法治療薬を添加し H1R-mRNA と H1R( 蛋白 ) の発現抑制の有無を定量 PCR 法や Western Blot 法を用いて確認する 4. 研究成果スギ花粉症に対する治療方法の一つに初期療法がある スギ花粉飛散開始前に治療を開始する初期療法が有用であることは周知の事実となっているが そのメカニズムや治療開始時期については不明な点が多い スギ花粉症を含めたアレルギー性鼻炎において 症状発現の中心的役割を担っているのは 主に肥満細胞から放出されるヒスタミンとその受容体であるヒスタミンH1 受容体である 我々は 初期療法が有効である一因として鼻粘膜のヒスタミン受容体発現の変化に着目し研究を行っている 平成 24 年のスギ花粉飛散時期に初期療法を施行した対象者から鼻粘膜擦過細胞を採取し 鼻粘膜擦過細胞に発現しているヒスタミンH1 受容体 mrnaの発現量を測定し 比較検討を行った その結果 初期療法を施行することで鼻粘膜擦過細胞中のヒスタミンH1 受容体 mrnaの発現量は有意に低下することが確認された また スギ花粉飛散開始前の鼻粘膜擦過細胞中のヒスタミンH1 受容体 mrna 発現量と スギ花粉飛散時期の鼻症状に 正の相関関係があることを見出した これらの結果から スギ花粉症患者に対し 初期療法が有用であることの一因として 鼻粘膜に発現しているヒスタミンH1 受容体の発現量変化が関与している可能性が示唆された また スギ花粉症モデルマウスの作成について スギ花粉エキスを経腹腔投与もしくは経鼻投与を反復することで くしゃみや鼻掻きの鼻症状を有意に誘導し 血清中スギ花粉特異的 IgE が産生されることを確認した また ヒト鼻

粘膜上皮培養細胞にヒスタミン受容体が発現していることを確認できた 5. 主な発表論文等 雑誌論文 ( 計 0 件 ) 学会発表 ( 計 0 件 ) 6. 研究組織 (1) 研究代表者牧瀬高穂 (MAKISE TAKAO) 鹿児島大学 医学部 歯学部附属病院 医員研究者番号 :30585120