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第1回_建築のデザインを考える_その1

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0275難病情報センターのご案内_表面#4-03

転職後の活躍を実現するには まず 転職先企業に馴染む ことが重要です そこで 転職支援 のプロである転職コンサルタントに 転職先企業への馴染み について伺いました ミドルが転職先企業に馴染めない よくある失敗例としてもっとも多く挙げられたのは 前職の仕事のやり を持ち込む (66%) という回答でし

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[ 指針 ] 1. 組織体および組織体集団におけるガバナンス プロセスの改善に向けた評価組織体の機関設計については 株式会社にあっては株主総会の専決事項であり 業務運営組織の決定は 取締役会等の専決事項である また 組織体集団をどのように形成するかも親会社の取締役会等の専決事項である したがって こ

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第4回報告書 100人男子会×女子会!学生だけの本音ミーティングinとやま(平成27年11月7日)

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コミュニケーションゲーム

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看護部 : 教育理念 目標 目的 理念 看護部理念に基づき組織の中での自分の位置づけを明らかにし 主体的によりよい看護実践ができる看護職員を育成する 目標 看護職員の個々の学習ニーズを尊重し 専門職業人として成長 発達を支援するための教育環境を提供する 目的 1 看護専門職として 質の高いケアを提供

適切な自己表現 双方向の意思疎通を図る能力 自己評価 評価の根拠 1 上司 先輩などの上位者に対し 正確にホウレンソウ ( 報告 連絡 相談 ) している 自分の意見や主張を筋道立てて相手に説明している 相手の心情を配慮し 適切な態度や言葉遣い 姿勢で依頼や折

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この度は特別 無料レポートをご請求いただきまして 誠にありが とうございます 感謝します このレポートが あなたの人生を好転させるきっかけとなることを 祈りながら作成しました 何か一つでも 今後の人生の糧となるようでしたら この上ない私 の幸せです どうぞ楽しみながら読み進めてください ネットで幸せ

図表マイクロ技法の階層表 Intentional Interviewing and Counseling 2007 A.E.Ivey,M.Ivey( 許可を得て翻訳 掲載 ) ( 資料出所 : 日本マイクロカウンセリング学会 HP (

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どのような便益があり得るか? より重要な ( ハイリスクの ) プロセス及びそれらのアウトプットに焦点が当たる 相互に依存するプロセスについての理解 定義及び統合が改善される プロセス及びマネジメントシステム全体の計画策定 実施 確認及び改善の体系的なマネジメント 資源の有効利用及び説明責任の強化

はじめに 会社の経営には 様々な判断が必要です そのなかには 税金に関連することも多いでしょう 間違った判断をしてしまった結果 受けられるはずの特例が受けられなかった 本来より多額の税金を支払うことになってしまった という事態になり 場合によっては 会社の経営に大きな影響を及ぼすこともあります また

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Ⅰ 評価の基本的な考え方 1 学力のとらえ方 学力については 知識や技能だけでなく 自ら学ぶ意欲や思考力 判断力 表現力などの資質や能力などを含めて基礎 基本ととらえ その基礎 基本の確実な定着を前提に 自ら学び 自ら考える力などの 生きる力 がはぐくまれているかどうかを含めて学力ととらえる必要があ

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1. はじめに 本格的な地方分権の時代を迎え 市民に最も身近な地方自治体は 市民ニーズに応じた政策を自ら意志決定し それを自己責任の下に実行することがこれまで以上に求められており 地方自治体の果たすべき役割や地方自治体に寄せられる期待は ますます大きくなっています このような市民からの期待に応えるた

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回数テーマ学習内容学びのポイント 2 過去に行われた自閉症児の教育 2 感覚統合法によるアプローチ 認知発達を重視したアプローチ 感覚統合法における指導段階について学ぶ 自閉症児に対する感覚統合法の実際を学ぶ 感覚統合法の問題点について学ぶ 言語 認知障害説について学ぶ 自閉症児における認知障害につ

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生徒用プリント ( 裏 ) なぜ 2 人はケンカになってしまったのだろう? ( 詳細編 ) ユウコは アツコが学校を休んだので心配している 具合の確認と明日一緒に登校しようという誘いであった そのため ユウコはアツコからの いいよ を 明日は登校できるものと判断した 一方 アツコはユウコに対して 心

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大泉町手話言語条例逐条解説 前文 手話は 手指の動きや表情を使って視覚的に表現する言語であり ろう者が物事を考え 意思疎通を図り お互いの気持ちを理解しあうための大切な手段として受け継がれてきた しかし これまで手話が言語として認められてこなかったことや 手話を使用することができる環境が整えられてこ

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7 本時の指導構想 (1) 本時のねらい本時は, 前時までの活動を受けて, 単元テーマ なぜ働くのだろう について, さらに考えを深めるための自己課題を設定させる () 論理の意識化を図る学習活動 に関わって 考えがいのある課題設定 学習課題を 職業調べの自己課題を設定する と設定する ( 学習課題


ISO9001:2015規格要求事項解説テキスト(サンプル) 株式会社ハピネックス提供資料

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課題研究の進め方 これは,10 年経験者研修講座の各教科の課題研究の研修で使っている資料をまとめたものです 課題研究の進め方 と 課題研究報告書の書き方 について, 教科を限定せずに一般的に紹介してありますので, 校内研修などにご活用ください

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表紙案8

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ISO 9001:2015 から ISO 9001:2008 の相関表 JIS Q 9001:2015 JIS Q 9001: 適用範囲 1 適用範囲 1.1 一般 4 組織の状況 4 品質マネジメントシステム 4.1 組織及びその状況の理解 4 品質マネジメントシステム 5.6 マネジ

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年賀状作成時の重視点 2 1. は メッセージ重視 は ビジュアル重視 とに今年の年賀状作成時の重視点を聞いたところ とに今年の年賀状作成時の重視点を聞いたところ は ビジュアル ( 絵柄や写真 ) よりもメッセージ ( 言葉 ) を重視は ビジュアル ( 絵柄や写真 ) よりもメッセージ ( 言葉

説明項目 1. 審査で注目すべき要求事項の変化点 2. 変化点に対応した審査はどうあるべきか 文書化した情報 外部 内部の課題の特定 リスク 機会 関連する利害関係者の特定 プロセスの計画 実施 3. ISO 14001:2015への移行 EMS 適用範囲 リーダーシップ パフォーマンス その他 (

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教科 : 外国語科目 : コミュニケーション英語 Ⅰ 別紙 1 話すこと 学習指導要領ウ聞いたり読んだりしたこと 学んだことや経験したことに基づき 情報や考えなどについて 話し合ったり意見の交換をしたりする 都立工芸高校学力スタンダード 300~600 語程度の教科書の文章の内容を理解した後に 英語

生徒用プリント ( 裏 ) 入力した内容はすべて記録されている!! 印 : 授業で学んだこと 管理者のパソコンには どのパソコンから いつ どのような書き込みがされたか記録されています 占いだけではなく メールや掲示板の内容も同じように記録されています もし 悪意のある管理者から個人情報が洩れたらど


3 時間研修カリキュラム時間内容時間 12:00 4. シチュエーション別対応力ポイント コツを学ぶ必要な雑学力 1. コミュニケーションの基本心構え ポイント 注意点 12:50 5. 本日の研修を振り返って 2. 聞く 聴く 訊く スキル傾聴力と質問力 11:10 3. コミュニケーションの癖を

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第 9 章 外国語 第 1 教科目標, 評価の観点及びその趣旨等 1 教科目標外国語を通じて, 言語や文化に対する理解を深め, 積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り, 聞くこと, 話すこと, 読むこと, 書くことなどのコミュニケーション能力の基礎を養う 2 評価の観点及びその趣旨

人的環境の整備 教師 友達 分かりやすい説明の手本となるように, 話す速さや声の大きさを意識して簡潔に話したり, 話すポイントを視覚的に示したりする 道案内の手順を知ることや説明原稿の作成に時間が掛かった場合は, 教師間で役割分担しながらアドバイスする グループ内での自分の役割が明確になるように,

HからのつながりH J Hでは 欧米 という言葉が二回も出てきた Jではヨーロッパのことが書いてあったので Hにつながる 内開き 外開き 内開きのドアというのが 前の問題になっているから Hで欧米は内に開くと説明しているのに Jで内開きのドアのよさを説明 Hに続いて内開きのドアのよさを説明している

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第4章妊娠期から育児期の父親の子育て 45

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調査実施の背景 近年 ライフスタイルの多様化が著しく進んでいます 生涯未婚率が上昇し 単身世帯 一人親世帯も増加するなど 世帯構成が大きく変化しました また 25 歳から 39 歳の就業率が上昇し 共働き世帯も増加しました においては 管理職の積極的な登用が推進される一方で非正規社員の占める割合は高

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資料3 道徳科における「主体的・対話的で深い学び」を実現する学習・指導改善について

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第1章 「問い」とは何か

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≪障がい者雇用について≫

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24 京都教育大学教育実践研究紀要 第17号 内容 発達段階に応じてどのように充実を図るかが重要であるとされ CAN-DOの形で指標形式が示されてい る そこでは ヨーロッパ言語共通参照枠 CEFR の日本版であるCEFR-Jを参考に 系統だった指導と学習 評価 筆記テストのみならず スピーチ イン

仕事をするのが楽しい! と感じる職場の共通点とは

2章 学習スキル

(2) 指導の実際 1 話すこと 聞くこと の実践ア協働による教材研究の柱 モデルの提示について対話のためのスキルの定着や対話の深まりを目指し, 教師や代表グループによる対話のモデルを提示し, 気付いたことや発見したことを基に自分たちの対話や話合いの様子を振り返らせ, 学びの充実を図るようにする 共

失敗がこわいから ルールに反するから 仕事をしてるから 恥ずかしいから 人脈がないから 女だから で ほんとはどうしたいの?名言集 01.indd p11 修正時間 2016 年 10 月 13 日 17:35:42 名言集 01.indd p10 修正時間 2016 年 10 月 13 日 17:

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360度評価トライアルご提案資料

1 高等学校学習指導要領との整合性 高等学校学習指導要領との整合性 ( 試験名 : 実用英語技能検定 ( 英検 )2 級 ) ⅰ) 試験の目的 出題方針について < 目的 > 英検 2 級は 4 技能における英語運用能力 (CEFR の B1 レベル ) を測定するテストである テスト課題においては

Transcription:

これからのビジネスリーダーに必要な 聴き方 講座 第 1 章 聴き方 の重要性 1-1 聴く力 は個人も企業も成長させる 1 聞く と 聴く の違いについて 2 仕事の問題解決と聴く力 1-2 聴き上手となるために 1 聴き取りによって 磨かれる集中力 理解力 忍耐力とは 2 権限によらない問いかけのリーダーシップ 6 7 8 11 11 12 第 2 章信頼関係の構築を基本とした 聴き方 2-1 ありのままを受け止める 1 自分の置かれた情況を受容する 2 ありのままを受け止める責任意識を持つ 3 共感とは心のスキルではない 2-2 相手の前で偽りのない心でいること 16 16 17 18 19 第 3 章 聴き方 基本編 3-1 自らの態度で信頼関係を構築しよう傾聴の方法 1 視線から目線へ 2 身体言語 ( ボディーランゲージ ) 3 声 4 言語的追跡 ( 相づち等 ) 3-2 相手とのやりとりで信頼関係を構築しよう観察の方法 1 相手についての非言語的 言語的観察 2 建設的 肯定的フィードバックを心がける 24 24 24 25 29 30 31 31 31 32

C ONTENTS 第 4 章 聴き方 応用編 4-1 質問はリーダーシップの技術です質問のねらいは何か 1 質問のマナーとルール 2 質問の種類 方法 3 話しやすい環境を作る 4-2 効果的な質問法を自分で研究する話し合いの途中で流れを転換して発展させていく方法 1 相手の真意を汲み取る ( 本当に言いたいことはなにか ) 2 本音を引き出す ( 展望を明らかにする ) 3 気づきを呼び起こす ( 行動変容のきっかけをつくる ) 相手の状況に応じた問いかけのポイント 1 相手が目標を見失った時 2 意見が対立している時 3 相手が感情的な時 4 解決策を求めてきた時 36 36 37 40 42 44 45 45 46 48 49 49 50 50 51 第 5 章 聴き方 事例編 事例 ❶ 後輩がミスした理由の聴き方事例 ❷ 同部署の社員が冷たく後輩が落ち込んでいる事例 ❸ 上司から人事考課についてフィードバックをもらう時の聴き方事例 ❹ プロジェクトで関係部門間の折り合いが悪くなり仲裁する事例 ❺ 新規訪問でのヒアリング事例 ❻ 顧客からクレームがあった時の受け止め方事例 ❼ 後輩が自分の将来を描けなく悩んでいるときのかかわり方 1 キャリアについて 2 キャリアを支援するためのキーワード 3 キーワードを見つけるための効果的な聴き方 54 54 55 55 56 56 57 57 58 60

第1章6 1-1 聴く力 は個人も企業も成長させる 人は生まれてから 20 年で成人し大人の仲間入りをしますが 物理的な成長と同時に精神的な成長を遂げます 小さな身体が大きくなるように この世に生まれてからずっと様々な情報に接することで 自我を確立し 自分の価値観や人生の意義をその人なりに理解し 将来の夢やビジョンを持ち 自分の活動する世界をつくり上げながら活躍していきます 同じように 企業も設立から活動を続ける間 自らが提供したモノやサービスに情報を載せて発信し 顧客からの信頼を獲得します 長年かけて構築した信用 ( ブランドが含まれる ) も付加価値情報として 企業の存立を確かなものにします 以上のように 人間の行動や企業の活動は 情報のインプットとアウトプットの過程そのものであり 情報なくしては 人間の社会的活動は成り立ちません 聴く力 は 情報のインプットを処理する過程での力量をいいます 同じ情報に接しても 人によって活用の仕方が違うように 聴く力 は 人が自分の周囲の人とどのように接してきたかによって決定づけられ かつ社会的行動の蓄積によって培われてくる大事な能力です 属にいう 賢い人 とは 物事の処し方が上手な人を指します これは 生まれ育った環境が自分以外の人 ( 家族や友人も含めて ) と十分な接触と交流を実現できるという意味で恵まれ ( 金銭的にではない ) ていたために 若年であっても精神的な成長を早く遂げたことにあります この後天的な能力を意識して高めていくためには 自分の目の前に現れる物理的な現象から自分なりの意味を読み取る訓練をおこなうことにはじまり 日常のあいさつレベルのことでも自分以外の人との間で取り交わすコミュニケーションの質を高めようと努力することが大事です その人が成長したかどうか ある企業が成長したかどうかは 情報の活用度合いによって見ることができるといってよいでしょう なぜならば 人間や企業の活動をどうしていくかを判断するために必要な情報を適切に処理し 正しいと思われる判断を導き出す力 ( 聴く力 ) が情報の活用によって養われるからです 正しい判断は 人間の行動の自立と統御を可能とし たとえ困難に直面しても状況を打開するための知恵を生み出す元になります そして 知恵を生み出し続けることができるならば 未知のものに対して既知のものを手がかりにし 対処していくこともまた可能となります 情報を活用し続けることが 常に成長し続けること ( ゴーイング

1章 第 1 章 聴き方 の重要性第コンサーン ) につながるのです コミュニケーションの学習において 傾聴 などと言う場合 よく 聞く と 聴く の違いを比較することがあります 耳に音が 聞こえる ことを 聞く といい 聴く については漢字をあてて 心で聴く すなわち 相手の気持ちに共感することをいいます ここでは さらに一歩踏み込んで見ていくことにしましょう 下図は氷山のモデルです 海面に浮かんでいる氷の塊の部分が 耳に聞こえる部分になります 人間はまず 音声や眼に映る文字など具体的な記号として形になったものを 五感を使ってキャッチします 氷山のモデル そこから踏み込んで 海面の下にある表には出ない部分を読み取っていきます この海面下にある部分が 話し手の本当の願いであり意図です これをよく観察して分析してくのが 仕事で求められる 聴く力 になります もちろん相手の感情のケアも行いながら 聴き取りをおこないます したがって 心のセンサーも含めて五感を駆使しながら 自らの経験則に照らし合わせ 分析と総合を繰り返す知的作業が 聴く ことなのです 話し手は 自分の本当の思いが何なのかもわからないまま メッセージを発信してきます ただし すでにこの段階で 人は何らかの交流を周囲とおこなっていて 期待価値 を自分の心の中に芽生えさせ始めています 将来獲得できる報酬を自分なりのものさしで値踏みした結果 得られる想像上の成果レベルが 期待価値 となります これを人から強制されるのではなく自由な意思で値踏みできるから 人は積極的になれ 結果はやってみなければわからないのですが チャレンジする気持ちや いわゆるやる気 ( モチベーション ) も起こってくるのです 逆に期待価値がマイナスなら 人は動機づけられません 人間は具体的な報酬に対しても 自 7

第1章8 分なりの意味を持たせながら値踏みをしています ここでいう価値は相対的なもので 金銭でいう報酬の絶対額とは必ずしも一致しません また 現在価値だけでなく 将来価値 ( 期待度 ) も含めて値踏みされます それほど 人の持つ価値判断は複雑なのです 時には自分にとってつらい事や不利な条件でも 期待価値が認められれば人は納得します これは 人間の成長欲求と一致した社会行動と捉えるとよいでしょう 誰しも もっと満足を得たい 自分がよくなりたいと思って人と関わりを持ち これに応答しながら相互に信頼関係を結びます これがビジネスに必要な信用の元となり ある時には提供者 またある時には受益者という具合に立場を変えながら 価値交換をおこないます これがビジネスの社会的側面です つまり 社会は様々な商業的取引によって成り立つので 企業は価値提供の主役として存在する以上は社会的責任を負うのです この責任を果たす活動 ( 例えばメーカーが製造中止になった品物のパーツを修理用に保管していることなど ) で信用を作り出し 信用は期待価値をプラスにしていくので お互いに積極的に関わろうとして相互交流するのです 交流は相互依存を生み出し 活発化するほどビジネスが発展していきます 相互依存の関係が共存共栄へと発展していくならば 磐石でゆるぎない体制が整うといえます いわば 交流の骨格はお互いを信頼し 期待を込めた情報の発信と受信のやり取りによって形作られるのです ところが 定型業務を流すだけの調子で 仕事をやっているつもりになっている場合は 相手の期待をキャッチした心の交流などどこかへ飛んでしまいます つまり 聞く だけの世界であって表面的にしか物事を捉えず お互いの係わり合いは形式的 機械的で 脆弱なものとなってしまいます この状態では 仕事を通じて人が成長したり会社が発展することもありません まず 信頼あっての仕事 と肝に銘じておきましょう また 人と交流するには 心のゆとりとともに物理的な時間のゆとりを作り出すことが求められます ただ忙しさにかまけて 業務処理的に仕事を終わらせてしまいがちな場合には 注意が必要です 話し手の本当の思いは何なのか それを 聴く ことによって明らかにしていきますが 最終的に明らかにするものは 次図にある全体の構造です

1章第 1 章 聴き方 の重要性第 話し手でさえ 自分にとって本当は何が問題なのか よくわかっていないことのほうが多いのです なぜならば 図のように本当の問題は 現状の不満やトラブルなどではなく 本来はどうありたいのかという自分の理想の姿と現状との間に生じたギャップをいうからです したがって ありたい姿を膨らませば 問題はいくつでも生じてきます これを一つひとつ整理して 何から取り組んでいけばよいかを整理することが相談なのです この全体構造のうち 前述の氷山の海面に姿を現しているのは そのごく一部であることがほとんどなので これを明らかにしていくことが 聴き取り になります 以上が 仕事の世界でよく言われる 情報共有 = 見える化 の本質なのです ITだけに偏った情報共有では 氷山のうち海面の上に出た部分のみをカバーするところにとどまりますので そこから先は 人間的なコミュニケーションの技術によって 海面下の情報を明らかにし 共有するのです そのためにわざわざ足を運び 話し合いの 場 をつくり 面談によって対話をおこないます この 場 は物理的なものだけではなく 話し易い雰囲気づくりも含めた 場 づくりをおこないます したがって 日頃の人間関係 ( 相手に対する信頼の度合い ) も場づくりに影響してきます また この構造は問題解決のための基礎的な設計図ですので 聴き取りによって浮かび上がってきた像はちょうど自分が住みたい家のように 人によって一つひとつ違います たとえば 1 階が現実で 2 階がありたい姿だとしたら そこに到達するための階段をつくらなければならないのですが その階段の幅や高さ ( 踏み面 け上げという ) は利用者の足にあったものになっていなければ 簡単に上れなかったり 途中で階段を踏み外すことになります また エレベーターで直接上りたい人もいます このように 本来は顧客ニーズとは個別に違ってあたり前なのです 実際の行動場面では 顧客は明らかな自分のニーズを元にお店へ出かけ そこに並んでいる商品やサービスから最も自分にフィットしていると思われるものを選択し 9