ゆうなぎ園 1 ことばの役割 主任 広瀬 宜礼 困難であっても 補聴器を装用して少しでも残って 我々は日常生活の中で当たり前のように ことば いる聴覚を活かし 口の形に注目させ 読話 必要 を使って生活していますが その役割について少し があれば 手話や指文字や身振りなどの支援で二次 考えてみたいと思います 一般の方にそれを聞くと 的な問題以降を起こさせないようにするのが 聴覚 相手に伝える 相手の気持ちを知る など情報伝 障害児への療育の役割です 4 耳の構造と聞こえの仕組み かし ことばの役割は ①伝える ②記憶する ③ 考える などがあげられます 考え方によりほかの 耳は 外耳と中耳と内耳に分けられます 図 1 ものが入ることもありますがこれに ④行動調節が A. 外耳は 耳介 耳たぶ 外耳道 耳の穴 入ることもあります つまり 視覚性のものもあり 鼓膜からできています 外から伝わってきた音の振 ますが 我々の生活の中で約 8 割以上がことばを 動を耳介 耳たぶ で集め鼓膜を振動させます B. 中耳は 鼓膜の奥の空洞で耳小骨という 3 つの 使ってと言っても過言ではないでしょう 小さな骨がつながっています 鼓膜の振動は 耳小 2 聞こえる ということ 骨を振動し奥の内耳に伝わります C. 内耳は 骨の中にできたかたつむりのように渦 聞こえについても 大きな音がすると目が覚める ように我々の聴覚は 24 時間働いています そして 巻きの形をした空洞で 大きさは 1 円玉ぐらいです 様々な工夫をしても音をさえぎることは不可能で その中に音の振動を感じる感覚細胞があります 音 それ故 聞こえない世界を体験することもほとんど の振動がその感覚細胞に伝わると 耳の神経が興奮 不可能です ですから 聞こえない人の立場を理解 して その刺激が脳の音を感じる部分に伝わります することも困 難 となります 見 えない人 の場 合 そして初めて音が聞こえたと分かります 真っ暗な部屋やアイマスクをすることにより その 人の状態を体験でき 気持ちを推し量ることも可能 5 難聴の種類と聞こえ です ① 伝音難聴 でんおんなんちょう は 外耳や中耳 に問題が起こり 音の振動が伝わりにくくなった 3 聞 こえないことから起こる様々な問題 と療育の役割 難聴で 生まれつき耳の穴がなかったり 耳小骨 では 聞こえないことからどのような問題が起こ るのでしょうか まず始めに ①一次的な問題とし て音が聞こえないと言う物理的な問題から 危険で あったり 不自由という状態になります 次に ② 二次的な問題として 子どもの場合は ことばの学 習に支障がでます それによりことばの発達に遅れ が出たりします 学校では 学習に困難が出たりし ます そして ③三次的な問題として 周りの友達 と円滑なコミュニケーションがとれずその結果とし て集団参加に支障をきたし 社会性の遅れが出たり します 図 -1 つまり 聞こえないこと自体は 現在の医学では 153 耳の構造 伝音系と感音系 達の役割しか答えられないことが多々あります し
南大阪療育園創立 40 周年記念事業 次に横軸は ②高さを表し単位は Hz ヘルツ で がなかったりで起こります 音は小さく聞こえこ す 低い音は太鼓のような音で 高い音はスズのよ もった感じに聞こえることもあります ② 感音難聴 かんおんなんちょう は 音を感じる うな音です 検査をするときは 低い音はブー 高 内耳や音の信号を伝える神経に問題がおこった難 い音はピーというような純音と呼ばれる音を使いま 聴で ゆうなぎ園児の 90 以上がこのタイプで す ③音色は 太鼓とラッパの音が違うように それ す 神経レベルの難聴なので 歪んで聞こえ そ ぞれの音の成分によって変わります 太鼓には太鼓 の歪み方は人によって様々です の音色があります 人の声も同じで母音 a i u ③ 混合難聴 こんごうなんちょう は 伝音難聴と 感音難聴の両方が起こった難聴です 聞こえ方の e o には それぞれ音色 音の成分 が異なりま 特徴も両方の性質を持っています す 図 2 の A 母音の丸の中の成分でできています 同様に有声子音 b g z は B の丸の中 無声 6 音とことば 子音 s k t は C の丸の中になります 音には ①大きさ ②高さ ③音色の 3 つの要素 7 難聴の程度と が知られています 図 2 は 聴 聴力検査を行うと図 3 のようなに 力検査の結果を記録するものです 縦軸は ①大きさを表します 単位は db デシベ 記録されます は 右の は左の裸耳 補聴器 ル です 30dB はささやき声の大きさ ふつうの声 をつけていない状態 の聞こえを表します コの記 の大きさは 60dB 消防車のサイレンなど近くで痛み 号は 骨導の値です そしてこの値は その人にとっ を感じる音は 120dB ぐらいです 音は 音源から距 てもっとも小さく聞こえる値です たとえば 左耳 離が離れると小さくなります しかし コンクリー の 1000Hz は 90dB 500Hz は 80dB 2000Hz. トなどの部屋の中では 音が反射するのでなかなか は 90dB です ですから X X の下が聞こえる 減りません 大きさについては左側のイラストを参 領域 音 上が聞こえない領域 音 となります 考にしてください また 矢印 は スケールアウトで機械では測定す 聴力レベル db HL と会話や騒音の音の大きさ db HL 図 -2 154
ることが出来ないことを表します 身体障害者手帳 で申請するときの平均聴力は 500Hz と 2000Hz の 値と 1000Hz の 2 倍を足して 4 で割った値です 図 3 の左耳では 80dB 90dB 2 90dB 4 87 5dB となります 身体障害者手帳の等級基準を 表 1 に示します リーニングの装置が導入され始め現在では 70 近 くの子どもが 1 歳までに発見されています それ以 外は 前出の保護者による気づきが中心です その 根拠となる理由は 何かおかしい 音反応が悪 い 或いは無い 呼んでも振り向かない ことば 図 -3 が出ない 或いは少ない 発音がおかしい などで す そこから 自分で耳鼻科を受診したり 健診時 表 -1 に相談されたりして発見されています 3 歳児健診 で発見される子どもは 年間数名に減ってきていま す しかし それでも発見できているわけですから 貴重な砦となっています 10 ゆうなぎ園での支援について ①通園回数など ゆうなぎ園は 難聴幼児通園施設で 日々利用定 員が 30 名で 平成 22 年 9 月現在 40 名の子どもが 契約をしています 対象は 就学前の難聴のある子 8 補聴器を装用したら どもで 重複して障害のある子どももいます 補聴器を装用 つけて使うこと したからと言っ 訓練回数は 表 2 のようになっています 3 歳児 て 健常の人と同じように聞こえるわけではありま までは 午前中に保育的な内容をベースとした集団 せんし ことばの領域がすべて聞こえるわけではあ 支援を行っています 4 5 歳児は 午後に週 1 回集 りません 特に感音難聴の場合は音がひずんで聞こ 団支援を行っています 午前中は 地域の幼稚園や えるので 訓練によって音になれ 口の形を読みと 保育所に並行して通園しています りながら理解を深めます 表 -2 図 4 のように は右耳に は左耳に は 両耳に補聴器を付けたときの聞こえを表しています 9 難聴の発見 今までは 保護者が養育する中で子どもの音反応 やことばの発達などから難聴を発見していました しかし 日本では 1997 年ごろより新生児聴覚スク 155 図 -4
南大阪療育園創立 40 周年記念事業 ②支援の基本方針 果的にサポートします a 保護者がしっかりと子どもとかかわれるために 難聴児の早期支援でも 考え方や方法は時ととも に変化してきました 一昔前は とにかく早くとい 適切なことばかけ デモホーム 方法を支援し う思いのもとに高年齢の内容を低年齢で行わせる傾 ます 向が強かったです しかし 現在は 子どもの本来 b 見通しをもった子育てをするために 発達段階 の姿や発達をしっかりと捉えようという考えが主流 をしっかりとつかんで 到達目標 目標を定し になり それに基づいたカリキュラムになってきま ます c 子どもさんの障害を受容できるように 両親教 した そこで ゆうなぎ園で行っている幼児期の全体的 室にて先輩や成人の障害者の話を聞きます d 交換ノートにより家庭での様子や状況の把握し な発達を促進することをねらいとした支援で 将来 的に一貫して役に立つ力になるポイントを説明しま て 家庭との連携をとります す おかあさん 家庭 は 子どもが育って行く基盤 です 子どもの心をつかみ 焦らず急がず着実に歩 A. 子どもの全人的な発達を促す支援 むことが 子どもの豊かな発達を促します 基本的態度は ことばのみを育てるのではなく C. どのような支援方法で行うか 子どもを育てること これは ことばに偏りがちに なる保護者の考えを 本来の子どもの姿を見つめな 基本的態度は 家庭 幼稚園 保育所との連携を がら子育てが出来るように支援します 深め 相互の情報交換をベースとした支援をおこな a 人 とのかかわりを深められるために よりよい います a 集 団支援は 子どもどうしのかかわりの中で 母子関係を育てます そして 幼稚園 保育所 などでの交流を通して 幅広い人と接する中で 劇遊びや 経験したことを描画 絵日記 活動 かかわりを広げます でそれを表現し 次に再現遊びで再び楽しみな b 考える力をつけるために 積極的にことばで表 がら 表現する力を増やし ことばに結び付け 現し ことばによる思考に結びつけ 周りで起 ます 保 護 者 は 効 果 的 なことばかけ デ モ こる様々な問題をことばで問題解決するように ホーム を子どもと一緒に取り組む課題の中で 支援します 身に着けます c 自分が聞こえないことに気づき聞く態度を身に b 個人支援は ことば ききとり 感覚 再現遊 つける中で 障害の認識を促します び 描画 絵日記 などを中心に子どもが興味 このような取り組みの中で 生きたことばを身に を持った内容から選んで行います つけ 自分が思ったこと感じたことを積極的に話し 指導的ニュアンスを強く出すのではなく 難聴児 考えながら集団の中で生きる力を育てる この力が にとって快適な生活経験となるよう内容や問いかけ 将来的に学習や社会生活の中で活用することにより についてもいろいろ工夫しています 障害を克服していく力を養わせることになります D. 訓練の柱となっているもの B. お母さん お父さん 家族への支援 a 聴覚学習 ことばに偏りがちになる保護者の目を子どもさん 耳からの情報を積極的に聞き 音や 音楽を楽しみ ことばの獲得につなげます b 読話 の障害を受け止め 子どもさんの現状を把握する 耳からの情報が不自由分な時があるので しっかりと子どもさんとかかわり 今どのようなこ それを補足するために 話し手の口形に注目で とがなぜ必要なのかを気づくことができるように支 きるようにします c 発語 援します 基本的態度は 職員が主体的に支援するのではな 不明瞭な発音を相手に分かりやすく伝わ るように練習します d 手話 身振 指文字 聴覚からの情報では不自 く 保護者が上手にかかわることが出来るように効 156
字導入の話 発音支援の話 絵本の話 体験絵本の ケーションが取れるように学習します 話など 聴覚の管理 嘱託医による耳鼻咽喉科診 由分な時は 身振りや手話を使って コミュニ 察 定期聴力検査 補聴器の適合 幼稚園 保育 E. 豊かな経験をするために 所 小学校の先生方との連携 難聴の話 交流会の 上記の支援を進めるために 入園式 始業式 春 実施 訪問支援 卒園生への支援 卒園生の定期 の遠足 親子の集い ゲーム大会と両親教室 デイ 的な集まり 地域の保健師への公開講座 新生児 キャンプ 秋の遠足 お店屋さんごっこ 日曜参観 聴覚スクリーニングにて発見された子どもさんの相 クリスマス会 生活発表会 ゆきあそび たこあげ 談など 大会 卒園式 終業式などの行事を設定しています F. 保護者支援 地域支援 でご相談がありましたら ご連絡ください 両親教室 耳の話 補聴器の話 絵日記の話 文 2010 年 5 月 25 日 157 より 以上のような支援を行っております 難聴のこと