第 1 章 調達 購買戦術
1-1 調達 ( 基本 ) プロセス整備 まずは Purchasing と Sourcing を説明します 図表 1-1-1 は 企業 の調達プロセスを分解したものです 2
調達 購買 セスを RFx と呼びます この RFx とは RFI (Request for Information): 情報提供依頼 RFP (Request for Proposal) : 提案依頼 RFQ (Request for Quotation): 見積依頼 の三つを総称したものです 簡単に考えてください RFI は サプライヤの企業情報を収集すること RFP は サプライヤから提案をもらうこと RFQ は見積りをもらうことです 実務的 には RFI を実施し RFP と RFQ は同時に行うことが多いでしょうね 企業情報 を聞いて すぐれたサプライヤがいれば 提案と同時に見積りを依頼するケースが 大半のはずです では 次節以降 これら RFx をさらにつっこんで解説を加えていきます ただ し あえてこの節では 本書をはじめるにあたっての助走を書いておきます 調達 購買業務に絶対的な 型 はあるのでしょうか ありません 私がこれか ら書くような一般的な 型 はあります しかし 業種業態や会社規模 サプライ ヤとの関係もさまざまですから 調達 購買担当者は自ら考え抜き 自社に最適な 調達手法や調達プロセス を模索せねばなりません 第1戦術ここで Sourcing を説明します 最適サプライヤと適切価格を決めるまでのプロ 章
考えてみれば 調達プロセスは単純です 仕様書がある サプライヤがいる 見積りをとる 注文する 納品され支払い処理が完了する たったこれだけが上手くいかない 苦しみ もがき 投げ出したくなります しかし その苦しみのなかでも よりよくする努力を怠ってはいけません 改善なき業務は おなじ苦しみを生むだけだからです 重要なポイントは Sourcing( ソーシング ) であっても Purchasing( パーチェシング ) であっても その手法は日々進化すべきだと考えることです よりよい調達プロセス模索の際に重要な心がけ 1. 失敗は存在しません 存在するのは教訓ですおなじことを繰り返して 違う結果を求めるひとを異常者と呼びます よりよい調達を目指すにはさまざまな手法を試す必要があります 上手くいかないこともあります しかし それは失敗ではなく学習の機会です 2. その教訓を習得していなければ おなじ学びが何度も訪れますさきほど書いたとおり おなじ苦しみを繰り返すひとがいます たとえば 見積書入手を繰り返していると 伝え足りなかった条件に気づいたり 設定し忘れた契約条項があったりするでしょう あるいは発注数量が見積り段階よりも少なくなり引き取りを要求されたりとか 品質保証について齟齬があったりとか それを次回の見積依頼時の条件に追加するのです おなじミスを繰り返してはいけません 仕様書上での不足項目は設計者に書き足してもらいましょう 教訓を習得できなければ おなじ学びが何度も訪れるのです 3. 調達 購買をやっている限り 学習は終わりません調達 購買とは 大げさにいえば 世の中のすべてに関わります 中国リスク 震災 法規制 業界規制 新技術 新興国の台頭 何をやったらおしまい ということにはなりません それだけ広い分野に接する稀有な業務です 4. あっちの業界の調達 こっちの業界の調達 がラクなんてことはありません大手自動車メーカーは調達がラク 大手電機メーカーは調達がラク サプライヤはなんでも大手のいうことを聞く そんな幻想が蔓延しています しかし 超大手も超零細の調達もそれぞれ経験した私からすれば そんなことはありません もちろん交渉力に違いはあります しかし 調達にラクはありません 自身の立場を
5. ムカつくサプライヤばかり ムカつく設計者ばかりいたとしたら あなたがそ うだからです サプライヤがいうことを聞かない 社内がいうことを聞かない と愚痴ばかり いうひとがいます しかし 多くはあなたに問題があります 情報をちゃんと提供 し 考え抜き 論理的に話せば きっと 1% ずつでも相手は動いてくれるようにな ります 接する他者はすべて自分の鏡です 6. 会社とか部門がどうであっても 野心さえあれば道を切り拓くことができます 会社にビジョンがない と嘆くよりも 自分自身のビジョンを確立せねばなり ません 野心を持つことは時代錯誤ながら重要な心がけです 7. ぶち当たる調達業務の問題の答えを誰かが出してくれるわけではありません 2 時間でも 1 時間でもよいので 一人で考えることです 少し考えましたが解決策を思いつきません と上司に相談するひとがいます はたして何個くらいの策を考えたのでしょうか 5~6 個では そもそも考えたと いいません 本書などを参考にし まずは徹底的に考えてみてください 若き調達 購買部員のために ここで 私が最初の会社に入社したとき 部長から聞いた ( 私にとっては感動的 な ) 話がありますのでシェアしておきます 大きなことを成し遂げようと思って入社しただろうが この部門はもっとも目 立たない部門だ したがって 謙虚さを学ぶために資材部に入ったと考えてほし い サラリーマンとして金を多く稼ぎたいだろうが 他部門にくらべて認められる 残業時間が少ない したがって 業務をいかに効率的にこなすか考えるために資材 部に入ったと考えてほしい 自分自身の業績が目立つビジネスマンになりたいだろうが この仕事は他人に動 いてもらうしかない 製品が成功しても まず資材部のおかげだと感謝されること はない 配属前のイメージと 実際の仕事はおそらく違う 配属前に求めたものはおそら く手にはいらないだろう しかし 努力次第ではまったく違った喜びを見つけられ 第調達 購買戦術悲観せず できることに全力投球すべきです 1章
るだろう そのためには 楽しいことをやるのではない やることを楽しむ必要がある 会社にいる先輩は あなたを教育するために存在するわけではない 先輩が何も教えてくれなかったとしても 責任はあなたにのみあるし 仕事をどう広げていけるかもあなたにのみかかっている そして矛盾するようだが それでもなお この仕事に野心を持ち続けなさい それでは 今日から頑張ってください これがそのときのメッセージを完全に再現できているかわかりません 口調は違っているでしょうし 内容も漏れがあるかもしれません ただ このときのメモはずっと私の頭のなかにあります 人との出会いだけが一期一会なのではなく 言葉も一語一会ともいうべき出会いがあります あのときたまたま聞いた言葉 不意に飛び込んできたフレーズ それらが私のいまを形作っているのかもしれません また ある先輩からこういわれました 最初に聞いたときには なんとヘンな指針だろうと思ったものの いまだに私を支えてくれています 会社は 会社のために働けという 忠誠心を持てという しかし それは無理な話だ ただ 自分のために働けといったって 長続きしないかもしれない 自分のためだけなら 怠けてもいい と思うかもしれない そんなときには誰かのために働きなさい あなたには彼女がいますか それなら 会社で活躍して 彼女をいつかラクにしてあげたいと思いなさい 彼女がいなくても 母親はいるだろう 活躍している姿を見せたい と思って母親のために働きなさい もし母親が他界していたら 美人な同僚のためでもいい 設計者のためでもいい 誰かのために働きなさい と 瑣末なトラブルを超える意味づけが必要 22 歳のころ 毎日のようにサプライヤから電話がかかってきました こんな程度の数量で安くできるはずないでしょ こんな短い納期で納入は無理っしょ おたくの品質基準は厳しすぎですよ イヤなら発注しないでください 生産打ち切りますので もう納品できません また おなじく社内からも電話がかかってきました なんであんなに高いんだ サプライヤと癒着でもしているのか いつ納入されるんだ なんであんなサプライヤにしたんだ 俺のいうことを聞け すべて資材部のせいだ Sourcing( ソーシング ) と Purchasing( パーチェシング ) と かっこ良くいっても 結局のところ業務とはこういった瑣末な事象の集合体です しかし それで
ません と おそらく そのためには一つの意識改革が必要なのだろうと 私は思 います 業務を 調達 購買部門のためではなく 違う誰かのため へと転換す ること そうすると 苦情やトラブルも愛すべきものに感じられるでしょう ところでみなさんには誰かのために働いているでしょうか これ以降 もう このような精神論は述べません ただ 私自身が心している想いを 少しでも共感 いただける読者に向かってご紹介しました こういった助走を経て やっと次節以降に進んでいきます 第調達 購買戦術もなお 野心を持ち続けなさい と そして よりよくする努力を怠ってはいけ 1章