図 1 日本の出生体重平均値の推移図 2 日本の低出生体重児割合の推移 195 年 子 319 数 38 子 年 子 34 数 3 子 年 子 数 32 子 年 子 8 数 1 子 52 年 子 18

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33 32 31 図 1 日本の出生体重平均値の推移図 2 日本の低出生体重児割合の推移 195 年 子 319 数 38 子 325 2 年 子 34 数 3 子 282195 年 子 324 3 数 32 子 315 4 1945 12 1 8 195 年 子 8 数 1 子 52 年 子 18 数 9 子 85 195 年 子 5 数 51 子 4 29 1945 5 8 9 2 年 資料人口動態統計 195 年は 1% 抽出統計,1952~1954 年の資料なし 5 8 9 2 年 資料図 1 と同じ 年を頂点として体重は減少に転じ,27 年に表 1 観察対象国における検討指標の統計値と日本の統計値およびz 値は出生体重平均値 3,g, 低出生体重児割観察対象平均値日本の合は9.7% を示している 国数日本値 ( 観察年 ) ± 標準偏差 z 値 ( カ国 ) 本研究は, 出生体重の減少理由を明らかに出生体重平均値 58 3 274± 143g 3 51g(1998) -1.56 するにあたり, この様な現象が日本特有のも低出生体重児割合 58 7.1± 3.% 8.1%(1998).33 妊娠期間平均値 38 39.6±.9 週 39.4 週 (1998) -.22 のであるか否かを検討するために, 国際連合母の年齢平均値 57 27.7± 1.8 歳 29.4 週 (1998).94 が加盟国の出生体重関連指標を収集し掲載し複産児割合 52 1.96±.86% 1.83%(1998) -.15 出生性比 5 16.1± 1.6 15.4 (1998) -.44 ている世界人口年鑑を資料として, 日本の状況を諸外国と比較検討する事を目的とした Ⅱ 研究方法 ( 1 ) 資料と解析方法資料として, 人口動態統計 (1951~27 年版 ) 2), 世界人口年鑑 1986 年版 (1977~198 年値 ) 3),1999 年版 (199~1998 年値 ) 4) を用いた 世界人口年鑑には, 加盟国の出生体重, 母の年齢 ( 出産年齢 ), 妊娠期間, 単複産, 性別の出生数が, 度数分布表の形で掲載されている ( 2 ) 観察対象国の選定と検討指標 4) 観察対象国 : 世界人口年鑑の1999 年版に掲載された国の最近年値の中で, 年間出生数が 1, 例以上で, 出生体重の平均値並びに低出生体重児割合が計算可能な58カ国 (86.6%) を観察対象国とする 検討指標 : 出生体重平均値, 低出生体重児割合, 妊娠期間平均値, 母の年齢平均値, 複産割合, 出生性比 ( 男 / 女 ) を検討指標とする なお, 複産割合は, 全出生児数中の複産出生児数の百分率である ( 3 ) 検討指標の最近年値の度数分布と日本の 位置 各検討指標の最近年値について, 観察対象国の度数分布を作成し, その平均値 ± 標準偏差を算出する 次に, 観察対象国の分布中における日本の位置をz 値 ( 標準評価値 ) で示す 日本の ( 日本の値 - 対象国の平均値 ) = z 値標準偏差 (4) 検討指標の年間変動量の分布と日本の位置年間変動量 : 観察対象国の各検討指標につい 3) 4) て, 世界人口年鑑の1986 年版と1999 年版より最古年値と最近年値との差を求め, 経過年数で除して年間変動量とする 観察対象国集団内における日本の位置 : 各検討指標の年間変動量について, 観察対象国の度数分布を作成し, その平均値 ± 標準偏差を求め, 日本の位置を上述と同様にz 値 ( 標準評価値 ) で示す 33

Ⅲ 結果 ( 1 ) 検討指標の最近年値の分布と日本の位置 各検討指標の度数分布状況について, 観察対象国数, 平均値 ± 標準偏差と日本値 ( 観察年 ), z 値を表 1に示す 1) 出生体重平均値 :58カ国の出生体重平均値の分布と日本の位置を図 3に示した 日本は 3,51gで観察対象国の平均値 3,274gより軽く, z 値 =-1.56と分布の低位置にある なお, 日 キ288z34図 3 58 カ国の出生体重平均値の分布と日本の位置 5 4 3 日本 351z15 平均値 標 324143 2 1 3z192 299z199 表 2 観察対象国における検討指標の年間変動量の統計値と日本の統計値およびz 値 観察対象国数 ( カ国 ) 平均値 ± 標準偏差 ー 354 z11 日本値 日本の z 値 出生体重平均値 5.31±4.12g -7.1 g -1.8 低出生体重児割合 5.1±.11%.15% 1.27 妊娠期間平均値 3 -.1±.7 週.2 週.43 母の年齢平均値 21.1±.1 歳.8 歳 -.2 複産児割合 48.5±.15%.12%.47 出生性比 49 -.1±.27..4 2 4 8 1 12 図 4 5 カ国の出生体重平均値の年間変動量の分布と日本の位置 1 8 平均値 標 31412 4 日本 1z18 2 国 9241 カ z8 ド 本より軽い国はスロバキア2,788g,z= -3.4(1995 年 ), フィリピン2,99g,z= -1.99(1993 年 ), タイ2,999g, z = -1.92 (1999 年 ) の 3 カ国 (5.2%) である 2) 低出生体重児割合 : 日本は8.1% で, 対象国の平均値 7.1% よりやや多いが,z= +.33で分布の平均値付近に位置する なお, 出生体重平均値の軽い上記 3 国の低出生体重児割合は, スロバキア25.%,z=+6.(1995 年 ), フィリピン11.6%,z=+1.5(1993 年 ), タイ11.3%,z=+1.4(1998 年 ) である 3) 妊娠期間 : 日本は39.4 週,z=-.36で, 対象国の内, 中央付近に位置する 4) 母の年齢 : 日本は29.4 歳,z=+.94で, 対象国の平均年齢の27.7 歳より高く, 分布中やや高位置にある 5) 複産割合 : 日本は1.83%,z=-.15で, 観察対象国の平均値 1.96% に近い 6) 出生性比 : 日本は15.4,z=-.46で, 対象国の平均値 16.1と共に, 理論値とされる 14~16にあり, 分布の平均値付近に位置する なお,19 以上を示す国は, 香港 19.7,z= +2.25(1998 年 ), 韓国 11.2, z = +2.56 (1998 年 ) である 以上, 観察対象国の中における日本の位置は, 出生体重平均値は低位置にあるが, その他の検討指標はすべて分布の平均値付近に位置する 84 19 (2) 検討指標の年間変動量の分布と日本の位置 観察対象国における検討指標の年間変動量について, 観察国数, 平均値 ± 標準偏差, 日本の値とz 値を表 2に示した 1) 出生体重平均値 :5カ国の出生体重平均値の年間変動量の分布と日本の位置を図 4に示した 対象国の年間変動量は平均.31gと増加するが, 日本は -7.1gと減少を示し,z=-1.8と低位置にある 日本より低位置に韓国が存在し, 年間 -9.6gの減少で,z= -2.41を示す また, 前述の出生体重平均値が日本より軽い 3 カ国の年間変動量は, スロバキ 34

ア-6.7g,z=-1.7, フィリピン 図 5 3カ国の妊娠期間平均値の年間変動量の分布と日本の位置 +5.1g,z=+1.16, タイ+.9g, 3 z=+.14と, それぞれ異なる 2 平均値 標 1 2) 低出生体重児割合 : 日本は年間 2.15% の増加で, 対象国の平均値 +.1% より多く,z=+1.27と比較的高位置にある 年間増加量が日本より多い国はイスラエル+.15%,z=+1.3, 1 1 1 日本 2z43 1 ー 19 アゼルバイジャン+.16%,z=+1.36, z28 2 カ14z18 韓国 +.17%,z=+1.45, 米領バージ ン諸島 +.17%,z=+1.46, スロバキ 2 ア+.28%,z=+2.45である なお, 前述の出生体重平均値の年間変動量が日本より多いフィリピンは-.15%, タイ-.9% と低体重児割合は, 逆に減少を示している 3) 妊娠期間 : 日本は年間 +.2 週の増加で, z=+.43を示し対象国の平均値 -.1 週の付近に位置する ( 図 5) 4) 母の年齢 : 日本の年間変動量は+.8 歳 z=-.2と対象国の年間変動量平均値 +.1 歳の付近にある 5) 複産割合 : 日本の年間変動量は+.12%, z 値 =+.47で, 対象国の年間変動量の平均値 周産期医療の進歩により体重の軽い新生児の救命率の増加が低出生体重児出生率の上昇理由であると結論している 本研究の目的も, 前述の研究者等と同じく, 日本の出生体重平均値の低下, 並びに低出生体重児割合の増加現象が持続しつつある理由の解明にあるが, その切り口として, このような日本の状況が, 諸外国の中でどのような位置を占めているかを観察する事から, 次に検証すべき仮説要因を見出そうとした その結果を以下に示す.5% の付近に位置する 6) 出生性比 : 日本の年間変動量は.,z =+.4で, 対象国の年間変動量平均値 -.1 の付近に位置する 以上, 日本の特徴は, 出生体重平均値の減少速度, 低出生体重児割合の増加速度は大きいが, その他の検討指標の変動は大きくない ( 1 ) 最近年 (1998 年 ) の分布における日本の状況 1) 出生体重平均値と低出生体重児割合 : 出生体重平均値は, 諸国の中で低位置にあり, スロバキア, フィリピン, タイの国々と共に低出生体重国であると認識しなければならない し Ⅳ 考 察 かし, 低出生体重児割合は諸国の平均値付近にあるのは, 日本の出生体重の標準偏差 ( 分布範囲 ) が, 他の諸国より狭いためである すな 1975 年以降, 日本の出生体重平均値は年々低下し, 低出生体重児割合は増加を続けており, その原因解明を目的とする研究報告が多く見ら 5) れる 特徴的な研究として, 角南は198 年と 2 年の人口動態統計の比較から, 死産の減少 複産の増加 妊娠期間の短縮が推測できる 6) と述べ, また, 中村は, 東京都に所在する11 病院における1998,1999 年の産科資料を分析し, 早産の増加と胎内での胎児発育の低下, および わち,58カ国の出生体重標準偏差の平均値 ± 標準偏差 =557±54g, 日本の標準偏差 =461gで, 観察対象国平均の83% である 日本の出生体重の標準偏差が諸国の中で, 比較的小さい理由の探索も, 今後の検討課題である 2) 妊娠期間, 母の年齢, 複産割合, 出生性比 : 母の年齢は分布のやや高位置を占めるが, 他の検討指標は, 平均値付近にあり, 特異な状況にはない キz14 35

以上の知見から, 日本が低体重国である理由を推理する事は出来ない 日本民族の遺伝的特性か, 生活習慣特性かは今後の課題である ( 2 ) 年間変動量の分布における日本の状況 1) 出生体重平均値と低出生体重児割合 : 出生体重平均値の低下速度は大きく, 観察対象国の中で低位置に, 低出生体重児割合の増加速度も速く, 観察対象国の中で高位置にある すなわち, 観察対象国の中で特異な変動を示している 2) 妊娠期間, 母の年齢, 複産割合, 出生性比 : これら検討指標における日本の年間変動量は, それぞれの分布の平均値付近にあり, 特異な動きではない 以上の知見から, 日本の出生体重平均値の低下現象は, 観察対象国の中では特異的で, 出生体重に対する影響因子である妊娠期間, 母の年齢, 複産割合, 出生性比の変動による影響ではなく, 日本独自に存在する要因に基づくものと判断できる 7) 小池は低出生体重児増加要因に関する研究報告の中で,1975~1993 年における低出生体重児割合と,26~29 歳女性の平均 BMI 値の推移が逆の関係を呈している事を指摘している また, 8) 長野は, 大阪市内の病院における1994~1997 年の産婦 1,52 名を対象に, 非妊時のBMIと分娩直前の体重増加量により分類して観察した結果, 非妊時 やせ で 体重非増加群 に低出生体重児が他の群より高率に見られた, と報告 9) している さらに, 宋は, 従来の日本では, 妊娠中体重が増えすぎると悪いと言う認識が広くあり, 産科医師 助産師が妊婦に体重制限を厳しく指導し過ぎる事があり, この事が低出生体重児を招いている, と述べている この様な報告から, 日本の出生体重平均値の低下, 低出生体重児割合の増加現象は, 妊娠に対する食生活指導のあり方が原因と考えられる この様な仮説を検証するには, いかなる研究を計画 実施するべきか, 今後の課題である 文献 1 ) 人口動態統計特殊報告. 出生時の体重に関する統計. 厚生統計協会.1963 年 4 月. 2 ) 人口動態統計 : 厚生統計協会.1951~27 年版. 3 ) 世界人口年鑑 : 国際連合.1986 年版. 4 ) 世界人口年鑑 : 国際連合.1999 年版. 5 ) 角南重雄, 勝山博信. 最近のわが国の低体重割合の上昇要因に関する人口動態による分析. 厚生の指標.25;52( 8 );2732. 6 ) 中村敬, 長坂典子. 低出生体重児出生率増加の背景要因に関する検討 ( 分担研究 ) 出生体重に及ぼす背景因子の分析. 平成 15 年度児童環境づくり等総合調査研究事業報告書. 7 ) 小池正子, 南優子, 佐藤洋三, 他. わが国の低体重児および早期産の発生 増加の要因の関する考察. 厚生の指標.1996;43( 8 );142. 8 ) 長野ミカ, 岡本由希子, 沖田一美, 他. 体重増加が妊娠 分娩に及ぼす影響について. 大阪母性衛生学会雑誌 1998:34( 1 );957. 9 ) 宋美玄, 下屋浩一郎. 妊婦の体重増加異常. 産婦人科治療.27:94.;84853. 36