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あゆみさんきち
5 years ago
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1 2. 出生児の体重の推移大正大学人間学部日本子ども家庭総合研究所中村敬はじめに近年低出生体重児出生率が上昇し続けておりこの原因をさぐるといくつかの要因の変化が浮かび上がる 1 医学的な理由による妊娠中の摂取エネルギーの制限や美容上の理由による栄養摂取の制限 2 分娩への医療的介入により相対的に早産が増加 3 妊娠中の喫煙の増加 4 多胎児の増加 5 極低出生体重児の増加 6 高年出産の増加などが要因として考えられるそこで今回は満期産児を対象にして妊娠週数別に出生体重の平均値の年次推移を検討したこれらの資料は厚生労働省大臣官房統計情報部から公表されている統計の中には含まれていない筆者がかつて東京都母子保健サービスセンター在職中に東京都の人口動態統計磁気テープ東京都母性医療ネットワークにより構築されていたデータベースから出力した2 次データをもとに再分析を行った研究方法出生体重の変化を検討するにあたって用いた統計資料は 1 東京都母子医療年報 (1988~1998 年 ) に掲載されている妊娠週数別出生体重平均値 2 東京都母子医療年報 (1988~1998 年 ) に掲載されている妊娠週数別出生数 ( 率 ) 3 厚生省乳幼児身体発育値調査 (2000 年 ) 結果から満期産児の妊娠週数別出生体重平均値および妊娠週数別出生率の資料を用いて 1979 年 ~2000 年までの妊娠週数週における出生体重平均値と妊娠週数別出生率の年次推移を検討したさらに 4 東京都母子医療年報により妊娠週数別母体の体重増加量について 1993 年と 1997 年の比較を通して妊娠中の母体の体重増加量と新生児の出生体重との関係を分析した研究結果全国の出生体重別出生率を表 1に示したこれによると 2000~2500 グラム未満の低出生体重児出生率が年次とともに上昇し 4000 グラム以上の巨大児出生率の低下が著しく 2500~4000 グラム未満の割も低下してきていることがわかる低出生体重児出生率を全国と東京についてその年次推移を図 1に示したが 1975 年 ~1980 年を底辺とするU 字型曲線を示し 2000 年現在でもまだ上昇を続けている ( 図 1) 1) 東京都人口動態統計磁気テープより出力した妊娠週数別平均出生体重の年次推移年次別に妊娠 37~40 週の正期産について平均出生体重の年次変化を追ってみると図 2に示した通りで年々各妊娠週数とも低下してきているグラフの 1995 年から急に平均出生体重が増加しているこの現象は人口動態統計の磁気テープのデータの問題で 1994 年までは出生体重は Kg で入力されていたことに起因するつまり 1256 グラムの低出生体重児は 1.2kg で入力されており 3270 グラムの成熟児は 3.2kg で入力されているしたがってこれをグラムに換算して計算すると 3200 グラムになり実際の体重 ( グラム ) より小さくなる 1995 年は死亡診断書の書式も改正され磁気テープの体重の桁数が変更になりグラムで入力されるようになったこの入力されるデータの桁数の改正により 1995 年に出生体重の平均値をとると前年より大きく段差がつ 1

2 く結果を示すことになったものである 1995 年以降の平均出生体重をみると年々低下を示している 2) 東京都人口動態統計磁気テープより出力した妊娠週数別出生率の年次推移妊娠週数別に出生率をみると 37~38 週では年々出生率が上昇しており一方 39~40 週では出生率は年々低下してきている ( 図 3) 妊娠週数別出生率を 1979~2000 年までの分布を重ね合わせると図 4のようになり年では分布の右側 1997 年と 2000 年では分布の左側に位置することがわかる 3) 低出生体重児数に対する早産数の比低出生体重児数に対する早産数の比の年次推移をみてみたこれは年々低下してきており妊娠週数の短い低出生体重児が増加してきているのではなく胎内における発育の低下が原因して低出生体重児になったケースが増加してきていることになる ( 図 5) 4) 妊娠中の母体の体重増加について初産と経産にわけて 1993 年と 1997 年を比較してみたデータは東京都母子医療年報の 1994 年度および 1998 年度版を用いたこれによるとわずか 4 年の差であるが明らかに妊娠中の母体の体重増加量が減少していることがわかる ( 図 6 7) 5) 非妊時の体重と妊娠中の母体の体重増加量妊娠週数を変数として SASによるGLMプロシージャーを用いて多変量相関関係を分析した ( 表 2) GLMプロシージャによる分析は妊娠週数を分類変数出生体重を従属変数とし非妊時の体重と身長非妊時のBMI 妊娠中の体重増加量および妊娠週数を説明変数とする考えられるいくつかのモデルを作成し次式に当てはめて最適モデルの検定を行った (F 分布表のF 値と比べて有意に大きければ比較した大きい方のモデル小さければ小さい方のモデルを採用 ) ( 小さいモデルのS S(Error) - 大きなモデルのSS(Error)) (2つのモデルの自由度の差大きなモデルのMean Square(Error) ) *:SS = Sum of Squares なお有効データ件数は58,979 件であった出生体重を予測する上で妊娠中の母体の体重増加量が大きな影響を与えていることを証明していた ( 表 2 参照 ) 考察低出生体重児出生率は依然として上昇を続けているこの理由は複合的な要因が組み合わさったものと考えられるが特徴は出生体重の比較的大きな 2000~2500 未満の低出生体重児の増加が主原因と考えられるそれではこの体重群で生まれるものが増加している理由は何であろうか一つには妊娠中の母体の体重増加量が年々低下している最近の女性のスリム化が原因とする向きもあるが各妊娠週ごとの体重から非妊時の体重を差し引き妊娠中の体重増加量を求めると 1993 年と 1997 年のわずか 4 年の差にもかかわらず母体の体重増加量が減少してきているこのことは妊娠中のカロリー摂取量が減少していることを表しているものである妊娠中の母体の体重増加量と出生体重は有意な相関関係にあり妊娠中のカロリー摂取制限が出生体重の低下を招いていると考えられる分娩時期に対する産科的介入も行われ妊娠週数は有意に 40 週を超すことはなくなったこのことは 36 週 37 週での出産が増加し相対的に出生体重が低下してきている事実と結びつくしかしながら低出生体重児数に対する早産数の比をみると年々低下してきていることがわかり 2

3 早産による低出生体重児より胎内発育が低下した低出生体重児が増加してきていることを表している低出生体重児が増加してきていることと並列して考えなければならないことは成熟新生児の体重が小さくなっていることである妊娠週数別に出生体重の平均値をみると 1995 年で段差がある理由については既に述べたが各週数とも年々減少し続けている一方妊娠週数別の出生率をみると 37~38 週での出生率は年々増加し 39~40 週での出生率は年々減少してきているこれらをまとめると新生児全体の体重が小さくなってきている低出生体重児については第一編を参照していただきたいが成熟児は分娩時期の介入によりむしろやや早めの妊娠週数で分娩に至るこれも新生児の体重を小さくする要素であるがもっと大きい要因は胎内発育が低下してきていることである筆者はある仮説を立てている妊娠中のカロリー摂取の制限体重コントロールが大きな原因なら体重コントロールに関する医学上の介入がある一定以上普及すれば新生児の体重減少は落ち着き一定に近い値を保つはずである残念ながら年々新生児の体重減少は続いているより複合的な要因を探り当てる必要があるここで問題になるのは妊娠分娩の安全性 ( 合併症の予防と安全な分娩 ) であり新生児の体重が小さくなることで妊娠分娩の安全性が保証されるなら医学的には正しいかもしれないでは小さく産まれた子どもの将来には問題がないのであろうかこれに関するいくつかの欧米の研究がある子宮内における胎児の発育とその後の心血管病変 (Cardio Vascular Disease) や糖耐応能が有意な関係があるという研究が発表されているつまり子宮内での栄養障害は将来生活習慣病と関係するという研究である研究のデザインはコホート研究であるがサンプルサイズや対象の特性など必ずしも無作為対照研究とは言いがたい報告であり今後大規模プロジェクトによるコホート研究が必要になるわが国でも最近は出生体重が小さくなってきており乳幼児期の体格もやや小さめになってきている事実があり今後息の長いコホート研究が必要であろう結論 1) 最近の成熟新生児の出生体重の変化について主に東京都母子医療年報に掲載された資料をもとに年次的変遷について検討した 2) 成熟児の妊娠週数別出生体重平均値の年次推移をみると年々新生児の体重は低下していた 3) 成熟児の妊娠週数別出生率を計算すると年々妊娠週数 37~38 週の出生率は上昇し 39~40 週の出生率は低下してきていた 4) 早産数 / 低出生体重児数の比をみると年々低下しており低出生体重児は早産に起因するものより胎内発育の低下に起因するものが多いと推測された 5) 妊娠母体の体重増加量をみると過去の年次のデータに比べ新しい年次のデータで増加量が少ない結果を示していたまた新生児の体重と母体の体重増加量は一次相関の関係にありまた非妊時母体体重と身長母体の体重増加量妊娠週数は有意な相関にあることが証明されている 6) わが国では現在出生体重が年々小さくなってきている子どもの将来の発育にとっていかなる影響があるものか検討する必要がある 3

4 < 文献 > 1) 東京都母子保健サービスセンター偏 : 母子医療統計 1990 年 ~1998 年度版 2) 東京都母子保健サービスセンター編 : 低出生体重児出生率はなぜ上昇しているか東京都母子医療年報巻末資料 1994 年版 3) 中村敬 : 低出生体重児出生率の年次変遷に関する研究東京大学大学院医学系研究科 ) 中村敬 : 最近の低出生体重児出生率上昇の理由治療第 77 巻第 3 号 ) 中村敬 : 低出生体重児出生率増加の背景母子保健情報 ( 母子愛育会 ) 46 号 )Janet W Rich-Edwards, et al: Birth weight and risk of cardiovascular disease in a cohort of women followed up since 1976, BMJ 315: ,1997 7)CN Hales, et al: Fetal and infant growth and impaired glucose tolerance at age 64, BMJ 303: ,1991 8)DJP Barker; Fetal origins of coronary heart disease, BMJ 311: ,1995 9)DJP Barker; Growth in utero and serum cholesterol concentrations in adult life, BMJ 307, ,1993 4

5 表 1: 年次別妊娠週数別出生体重平均値年次 37 週 38 週 39 週 40 週

6 表 2: 妊娠週数を分類変数出生体重を従属変数としたGLMプロシージャ自由度平方和平均平方和 F 値 PR > F モデル 13 3,988,463, ,804, 残差 ,182,388, ,807.6 修正 ,170,851,407.5 R-Square 変動係数 Root MSE 従属変数平均値独立変数自由度 TypeⅡSS 平均平方和 F 値 PR > F 非妊時母体体重 1 408,209, ,209, , 母体身長 1 5,061, ,061, 体重増加量 1 298,471, ,471, , 妊娠週数 10 2,782,003, ,200, , パラメータ係数標準誤差 T for H0 PR > T 切片非妊時母体体重 (Kg) 母体身長 (Cm) 体重増加量 (Kg) 妊娠週数 32-1, , , サンプルサイズ :58,979

7 図 1: 低出生体重児出生率の年次推移全国東京出生 1000 対

8 図 2 妊娠週数別平均出生体重の年次推移平均出生体重週 38 週 39 週 40 週

9 図 3 : 妊娠週数別出生率の年次推移出生 1000 対週 35 週 36 週 37 週 38 週 39 週 40 週

10 350 図 4: 妊娠週数別出生率の年次推移出生 1000 対週 37 週 38 週 39 週 40 週 41 週 42 週 43 週

11 0.85 図 5 低出生体重児数に対する早産の比 0.80 早産数 / 低出生体重児数

12 図 6: 初産における妊娠中の体重増加量 ( 東京都母子医療年報 ) 増加量 K g 妊娠週数

13 12 図 7: 経産における妊娠中の体重増加量 ( 東京都母子医療年報 ) 11 増加量 k g 妊娠週数

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