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地質ニュース

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スライド 1

熊本地域の水循環機構の検討

中期目標期間の業務実績報告書

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2.2 既存文献調査に基づく流木災害の特性 調査方法流木災害の被災地に関する現地調査報告や 流木災害の発生事象に関する研究成果を収集し 発生源の自然条件 ( 地質 地況 林況等 ) 崩壊面積等を整理するとともに それらと流木災害の被害状況との関係を分析した 事例数 :1965 年 ~20

* 伊藤隆郭 長山孝彦 水山高久 ; 種々の透過型砂防堰堤を対象とした土砂流出の制御と促進に関する模型実験 砂防学会誌 8 2 p ( 査読付き ) * 原田紹臣 小杉賢一朗 里深好文 水山高久 ; 老朽化した砂防関係施設の健全度及び対策優先度に関する定量的な評価手法の提案 河川

Title2011 年タイ洪水とその被害 : 実地調査に基づく報告 Author(s) 木口, 雅司 ; 中村, 晋一郎 ; 小森, 大輔 ; 沖, 一雄 ; 沖, 治, 光一郎 第 7 回南アジアにおける自然環境と人間活動に関する研 Citation 究集会 : インド亜大陸 インドシナの自然災害

(6) 災害原因荒廃渓流の源頭部にある0 次谷の崩壊は 尾根付近から発生している 尾根部は山腹斜面に比べ傾斜が緩やかであるが 記録的な集中豪雨 (24 時間雨量 312.5mm( 平成 30 年 7 月 6 日 6 時 ~ 平成 30 年 7 月 7 日 6 時まで ) 累積雨量 519.5mm(

近畿地方整備局 資料配付 配布日時 平成 23 年 9 月 8 日 17 時 30 分 件名土砂災害防止法に基づく土砂災害緊急情報について 概 要 土砂災害防止法に基づく 土砂災害緊急情報をお知らせします 本日 夕方から雨が予想されており 今後の降雨の状況により 河道閉塞部分での越流が始まり 土石流

平成21年度実績報告

平成 29 年 12 月 1 日水管理 国土保全局 全国の中小河川の緊急点検の結果を踏まえ 中小河川緊急治水対策プロジェクト をとりまとめました ~ 全国の中小河川で透過型砂防堰堤の整備 河道の掘削 水位計の設置を進めます ~ 全国の中小河川の緊急点検により抽出した箇所において 林野庁とも連携し 中

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22年5月 目次 .indd

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西松建設技報

深層崩壊危険斜面抽出手法マニュアル(素案)

目次 1 降雨時に土砂災害の危険性を知りたい 土砂災害危険度メッシュ図を見る 5 スネークライン図を見る 6 土砂災害危険度判定図を見る 7 雨量解析値を見る 8 土砂災害警戒情報の発表状況を見る 9 2 土砂災害のおそれが高い地域 ( 土砂災害危険箇所 ) を調べたい 土砂災害危険箇所情報を見る

Fig. 1. Active faults in the Kanto district (after Coordinating Committee for Earthquake Prediction, 1980). A-A' PROFILE DOUGUER ANOMALY RESIDUAL ANOM

新都市社会技術融合創造研究会研究プロジェクト 事前道路通行規制区間の解除のあり方に関する研究

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PowerPoint プレゼンテーション

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Microsoft PowerPoint - 九州支部村上_平成30年7月豪雨

ISSN X 山梨衛公研年報 第53号 2009 山梨の名水百選における水質調査について 辻 敬太郎 佐々木 裕也 小林 浩 清水 源治 Survey of the water quality in the Japanese brand-name water best 100 of

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Microsoft PowerPoint - 参考資料 各種情報掲載HPの情報共有

KATSURA No94

KATSURA No95

第 7 章砂防 第 1 節 砂防の概要 秋田県は 北に白神山地の二ツ森や藤里駒ヶ岳 東に奥羽山脈の八幡平や秋田駒ヶ岳 南に鳥海山など 1,000~2,000m 級の山々に三方を囲まれています これらを水源とする米代川 雄物川 子吉川などの上流域は 荒廃地が多く 土砂の発生源となっています また 本県

資料 -2 第 2 回東京外環地下水検討委員会 資料 今後の地下水位観測について (1) 中央 JCT 周辺における深層地下水の観測井について (2) 大泉 JCT 周辺における観測井について (3) 今後実施する地下水位観測 ( 案 ) について 平成 26 年 8 月 1 日 国土交通省関東地方

業種地質調査業務 (H29) 改正現行備考 第 1 章地質調査積算基準第 1 章地質調査積算基準 第 1 節地質調査積算基準 第 1 節地質調査積算基準 別表第 1 別表第 1 (1) 諸経費率標準値 (1) 諸経費率標準値 対象額 100 万円以下 100 万円を超え 3000 万円以下 3000

地層処分研究開発調整会議 ( 第 1 回会合 ) 資料 3-3 包括的技術報告書の作成と今後の技術開発課題 2017 年 5 月 原子力発電環境整備機構 (NUMO) P. 0

一般的に行政で取り扱う範囲の水循環は 大きく地表水と地下水に分けられます 地表水は 渓流や川のように地上を流れていたり 貯水池 ダムなどに貯められている水です 地下水は 雨が地表面から地中に浸透して 土の中の隙間の部分に存在する水です 土の中の隙間を全て地下水で満たしている場合を飽和状態とよびます

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山岳トンネルの先進ボーリング調査

森林・河川等の環境中における 放射性セシウムの動き

図 6 地質と崩壊発生地点との重ね合わせ図 地質区分集計上の分類非アルカリ珪長質火山岩類後期白亜紀 火山岩 珪長質火山岩 ( 非アルカリ貫入岩 ) 後期白亜紀 花崗岩 後期白亜紀 深成岩 ( 花崗岩類 ) 花崗閃緑岩 後期白亜紀 チャートブロック ( 付加コンプレックス ) 石炭紀 - 後期三畳紀


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平成 30 年度 北の峰トンネルにおける非排水構造採用による環境保全 トンネル周辺の地下水位回復状況と環境保全効果について 旭川開発建設部富良野道路事務所 早坂美紅清水賢宏山﨑勲 旭川十勝道路 ( 北の峰 IC~ 布部 IC 間 ) に計画された北の峰トンネル L=2,928m は 平成 21 年度

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Transcription:

持続可能な水利用を実現する革新的な技術とシステム 平成 23 年度採択研究代表者 H25 年度 実績報告 小杉賢一朗 京都大学大学院農学研究科 准教授 良質で安全な水の持続的な供給を実現するための山体地下水資源開発技術の構築 1. 研究実施体制 (1) 小杉グループ 1 研究代表者 : 小杉賢一朗 ( 京都大学大学院農学研究科, 准教授 ) 2 研究項目 山体地下水の構造解明に基づく適切な山体地下水資源開発手法の検討 (2) 勝山グループ 1 主たる共同研究者 : 勝山正則 ( 京都大学大学学際融合教育研究推進センター, 特定准教授 ) 2 研究項目 山地河川流出水の量的 質的シグナルに基づく優良地下水帯分布域の推定 (3) 松四グループ 1 主たる共同研究者 : 松四雄騎 ( 京都大学防災研究所, 准教授 ) 2 研究項目 地形と山体地下水分布 崩壊危険箇所分布の対応の解明 (4) 中村グループ 1 主たる共同研究者 : 中村公人 ( 京都大学大学院農学研究科, 准教授 ) 2 研究項目 山体地下水の水質と汚染リスクの検討

(5) 佐山グループ 1 主たる共同研究者 : 佐山敬洋 ( 土木研究所水災害リスクマネシ メント国際センター, 主任研究員 ) 2 研究項目 改良型 T-SAS モデルを用いた河川流出水の起源の時空間変動解析 (6) 藤本グループ 1 主たる共同研究者 : 藤本将光 ( 京都大学学際融合教育研究推進センター, 特定助教 ) 2 研究項目 山体地下水の構造解明と優良地下水帯推定結果の検証 (7) 山川グループ 1 主たる共同研究者 : 山川陽祐 ( 筑波大学農林技術センター, 助教 ) 2 研究項目 山体地下水資源開発のための物理探査手法の構築

2. 研究実施の概要 丘陵地や山岳地の山の中に存在している地下水 ( 山体地下水 ) の量や水質を調査し, その開発 利用技術の開発を行う目的で, 地質と地形の異なる4つの調査流域を設定している 小起伏花崗岩山地にある不動寺流域, 小起伏中古生層堆積岩山地にある信楽流域, 大起伏花崗岩山地にある西滝ヶ谷流域, 大起伏中古生層堆積岩山地にある葛川流域である 以下では,7つの研究項目に沿って, 概要と成果を述べる 1. 山地河川流出水の量, 温度, 水質, 安定同位体比の時空間分布の観測山体に眠る優良地下水帯を探査する上で基礎となる, 各流域の水文 水質データの収集を行っている その結果, 花崗岩と中古生層堆積岩の両方の地質において, 起伏が大きく急峻な山地ほど, 洪水が少なく地下水涵養量が多くなり, 山体地下水の賦存量が増えるという傾向が明らかになりつつある 2. 山地河川流出水の量的 質的シグナルに基づく優良地下水帯分布域の推定山地河川流出水の量, 温度, 水質, 安定同位体比の観測データに基づき, 山体地下水の賦存 流動状況を検討し, 優良地下水帯の分布域の推定を行っている 小起伏花崗岩山地では, 渓流水のシリカ, ナトリウム, 硝酸濃度に着目することで, その起源を推定することが可能となり, 山体地下水帯の規模を推測できることが示された 小起伏中古生層堆積岩山地では, 山体地下水が豊富に存在する流域において, 流出水の各種イオン濃度が低く, 小起伏花崗岩山地とは逆の傾向を示した このことから, 流出水の水質をトレーサーとした評価において, 地質の違いを考慮することが重要であると考えられた 3. 改良型 T-SAS モデルを用いた河川流出水の起源の時空間変動解析流出水が持つ各シグナル ( 量, 温度, 質, 安定同位体比 ) を効果的に活用し, 流出水の起源の時間的 空間的な変動を推定するモデルを開発している これまでのところ, 花崗岩を地質とする小起伏山地と大起伏山地において, 地下水貯留量 滞留時間の違いを評価することに成功した 4. 山体地下水の構造解明と優良地下水帯推定結果の検証調査ボーリング孔を掘削して, 山体地下水を直接計測することによって, 地下水の涵養 流動プロセス, 分布域, 賦存量の実態を明らかにしている 降雨によって地下水が涵養される重要なプロセスの一つである groundwater ridging 現象を解明した これは, 降雨の際に斜面下方から上方に向かって地下水が逆流する現象を指している 花崗岩斜面における地下水位の詳細な観測によって, この現象の発生条件として積算雨量が多いことが必要であることが解明された 5. 適切な山体地下水資源開発手法の検討山体地下水の涵養 流動プロセスを解析する数値シミュレーションモデルを構築し, 最適取水方法について解析を行っている また, この解析に必要となる基礎データを効率的に取得するための, 地質調査 水文観測 リモートセンシング手法を検討している H25 年度は, 降雨に伴う山体地下水貯留量変動予測に関して, 二種類の降雨指標を組合わせた関数を提示した この関数による推定は, 簡便ではあるが比較的精度が高く, 様々な山体

に適用できることが確かめられた 6. 地形と山体地下水分布 崩壊危険箇所分布の対応の解明山体の地形情報を, 地下水資源開発と斜面崩壊危険度予測に有効に活用する方法について検討している 山体地下水の賦存 流動状況と, 地形との対応関係を解析した結果, 地形情報から抽出される断層線の分布が, 山体地下水の流動を大きくコントロールしていることが示された 7. 山体地下水の水質と汚染リスクの検討山体地下水の水質分析結果から, 飲用利用した場合の安全性について検証している さらに水質分析結果を, 環境省選定の名水百選の水と比較することにより, おいしさ( 味 ) から見た各山体地下水の特徴を明らかにしている 特に豊富な湧水群が見られる大起伏の中古生層堆積岩山地 ( 葛川流域 ) に関しては, 名水百選の 伏見の御香水 や 布引渓流 に近い軟水の特徴を示すことがわかり, 甘口の日本酒やピルスナービールの製造, 和食への利用 ( 和風だしや炊飯 ) に適した水であることが判明した

3. 成果発表等 (3-1) 原著論文発表 論文詳細情報 ( 国内 ) 1 小杉賢一朗 藤本将光 山川陽祐 正岡直也 糸数哲 水山高久 木下篤彦 (2013) 山体基岩内部の地下水位変動を解析するための実効雨量に基づく関数モデル, 砂防学会誌,66(4), 21-32. 2 小杉賢一朗 三道義己 藤本将光 山川陽祐 正岡直也 水山高久 平松晋也 福山泰治郎 地頭薗隆 (2014) 関数モデルを用いた深層崩壊の要因となる基岩地下水位変動の解析, 砂防学会誌,66(6),3-14. 3 五味高志 宮田秀介 Sidle Roy C. 小杉賢一朗 恩田裕一 平岡真合乃 古市剛久(2013) 分布型流出モデルを用いたヒノキ人工林流域における地表流の発生と降雨流出解析, 日本森林学会誌,95(1),23-31. 4 藤本将光 石田優子 梅本啓介 小杉賢一朗 里深好文 深川良一 (2013) 平成 23 年台風 12 号による那智大社裏山における大規模斜面崩壊の解析条件設定に関する研究, 歴史都市防災論文集,7,45-50. 5 松四雄騎 松崎浩之 千木良雅弘 (2014) 宇宙線生成核種による山地流域からの長期的土砂生産量の推定. 応用地質 54, 272-280. 6 松四雄騎 松崎浩之 牧野久識 (2014) 宇宙線生成核種による流域削剥速度の決定と地形方程式の検証. 地形.( 印刷中 ) 7 八反地剛 松四雄騎 北村裕規 小口千明 八戸昭一 松崎浩之 (2014) 宇宙線生成核種と物質収支法を用いた花崗岩山地の化学的風化速度の推定 : 北アルプス芦間川流域の事例. 地形.( 印刷中 ) 8 渡壁卓磨 松四雄騎 小玉芳敬 進木美穂 松崎浩之 (2014) 宇宙線生成核種 10Be を用いた岩盤侵食河川の下刻速度の推定 : 鳥取県小鹿渓谷の例, 地形.( 印刷中 ) [proceedings( 査読審査の入るものに限る )] 9 藤本将光 小杉賢一朗 石田優子 里深好文 深川良一 (2013) 平成 23 年台風 12 号による熊野那智大社裏山の大規模斜面崩壊において風化基岩層が与える影響, Kansai Geo-Symposium 2013 論文集, 97-102. 論文詳細情報 ( 国際 ) 10 Katsura, S., K. Kosugi, Y. Yamakawa, T. Mizuyama (2014) Field evidence of groundwater ridging in a slope of a granite watershed without the capillary fringe effect, J. Hydrol., 511, 703-718. 11 Toriyama, J., Ohnuki, Y., Ohta, S., Kosugi, K., Kabeya, N., Nobuhiro, T., Shimizu, A., Tamai, K., Araki, M., Keth, S. and Chann, S. (2013) Soil physicochemical properties and moisture dynamics of a large soil profile in a tropical monsoon forest Original

Research Article, Geoderma, 197-198, 205-211. 12 Suryatmojo, H., Fujimoto, M., Kosugi, K. and Mizuyama, T. (2013) Effects of selective logging methods on runoff characteristics in paired small headwater catchment, Procedia Environmental Sciences, 17, 221-229. (DOI: 10.1016/j.proenv.2013.02.032) 13 Suryatmojo, H., Fujimoto, M., Yamakawa, Y., Kosugi, K. and Mizuyama, T. (2013) Water balance changes in the tropical rainforest with intensive forest management system, Int. J. Sustainable Future for Human Security, J-SustaiN, 1(2), 56-62. 14 Chigira M., Tsou C. -Y., Matsushi Y., Hiraishi N., Matsuzawa M. (2013) Topographic precursors and geological structures of deep-seated catastrophic landslides caused by Typhoon Talas, Geomorphology 201, 479 493. 15 Yamada M., Kumagai H., Matsushi Y., Matsuzawa T. (2013) Dynamic landslide processes revealed by broadband seismic records, Geophysical Research Letters 40, 2998 3002. 16 Yamakawa, Y., N. Masaoka, K. Kosugi, Y. Tada, and T. Mizuyama (2013) Application of the electrical resistivity imaging for measuring water content distribution in hillslopes, J. Disaster Res., 8(1), 81-89. (3-2) 知財出願 1 平成 25 年度特許出願件数 ( 国内 0 件 ) 2 CREST 研究期間累積件数 ( 国内 0 件 )