ピクテ マーケット マンスリー 2016 年 7 月発行 2016 年 6 月発行の欧州 米国市場ニュース 6 月の欧米市場ニュース ユーロ圏の主要経済指標 欧州 米国 タイトル 頁 英国の国民投票 : 欧州連合 (EU) 離脱を選択 2 米国国債利回りの動向を左右するふたつの鍵 5 米国 : 個人消費支出は2ヵ月連続で好調な伸びを記録 8 指標名時点前回値 小売売上高 ( 前月比,) サービス業購買担当者景気指数 (PMI) 鉱工業生産 ( 前月比,) 消費者物価指数 ( 前年同月比,) 製造業購買担当者景気指数 (PMI) 実質 GDP ( 前期比,) 市場予想 公表値 次回発表予定日 次回予想 16 年 4 月 -0.6 0.4 7 月 5 日 0.4 16 年 6 月 53.3 53.2 52.4 7 月 5 日 52.4 16 年 4 月 -0.7 0.8 1.1 7 月 13 日 -- 16 年 5 月 -0.2-0.1-0.1 7 月 15 日 -- 16 年 6 月 52.6 52.6 52.8 7 月 22 日 -- 16 年 1-3 月期 0.6 7 月 2 日 -- 失業率 () 16 年 5 月 10.2 10.1 10.1 7 月 2 日 -- 米国の主要経済指標 指標名時点前回値 市場予想 公表値 次回発表予定日 次回予想 ISM 非製造業景況指数 16 年 5 月 55.7 55.3 52. 7 月 6 日 53.3 失業率 () 16 年 5 月 5.0 4. 4.7 7 月 8 日 4.8 非農業部門雇用者数 ( 前月比, 千人 ) 消費者物価指数 ( 前月比,) 小売売上高 ( 前月比,) 16 年 5 月 123.0 16 38.0 7 月 8 日 175.0 16 年 5 月 0.4 0.3 0.2 7 月 15 日 0.3 16 年 5 月 1.3 0.3 7 月 15 日 0.2 実質 GDP ( 前期比,, 年率 ) 16 年 1-3 月期 0.8 1.0 1.1 7 月 2 日 -- ISM 製造業景況指数 16 年 6 月 51.3 51.3 53.2 8 月 1 日 -- 前回および次回には改定も含みます 2016 年 7 月 4 日時点 ( 日本時間 ) の発表データと予想 予想はブルームバーグ集計市場予想出所 : ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 1
2016 年 6 月 27 日発行ニュース 英国の国民投票 : 欧州連合 (EU) 離脱を選択 英国の国民投票が欧州連合 (EU) からの離脱という衝撃的な結果となったことから 欧州は勿論のこと 広く世界の経済 政治 金融市場に大きな影響が及ぶことが予想されます 金融市場の当初の反応 英国の欧州連合 (EU) 残留を織り込んでいた金融市場は 想定外の投票結果を受け 2008 年 -10 月のリーマン危機直後の下げに匹敵する暴落の展開となりました 欧州域内の株式市場が3-12 の下げに見舞われた一方 ポンドは-12 と急落し ( 結果発表前の ) 対ドルで1 ポンド =1.50ドルに対して一時 1ポンド =1.33ドルを付け 185 年以来の最安値を更新しました これに対し リスク オフ局面の典型的な展開として 金は7 強上昇 一方 独 米の10 年国債利回りは それぞれ 一時 -0.17 ならびに1.4 に低下 ( 価格は上昇 ) し 6 月 24 日には終値ベースで前日比でそれぞれ-14bp -1bp 低下しました また 円は3 年ぶりに一時 1ドル =100 円を割り込みました この間 ユーロが予想以上の底堅さを見せ およそ1 年ぶりの1ユーロ =1.0ドルと4 程度の下げに留まったことが注目されます 図表 1: 今後の主な政治イベント時点 :2016 年 6 月 24 日 2016 年 6 月 26 日 スペイン総選挙 6 月 28-2 日 欧州連合 (EU) 首脳会議 10 月 ( 予定 ) キャメロン首相辞任 保守党党首選挙 10 月 憲法改正を問うイタリア国民投票 11 月 米国大統領選挙 2017 年 5 月 フランス大統領選挙 10 月 ( 予定 ) ドイツ総選挙 出所 : ピクテグループ 政治面への影響 政治面にも甚大な影響が及ぶことが予想されます キャメロン首相は既に辞任を余儀なくされましたが 後任の新首相は国内の議会で強い支援が期待できないことに加え EU 離脱の交渉に際しては 一部 EU 加盟国政府からの厳しい抵抗に対応せざるを得ないことが予想されます 英国がEU 離脱の手続きを 正式に 始めるには ( 欧州理事会に ) リスボン条約 50 条 の発動を通知しなければなりません 通知から 2 年以内に離脱の条件が交渉されることとなりますが 英国がどのような条件を確保しようと考えているかは 現時点では明らかではありません また いかなる条件にも EU 加盟 27 ヵ国の承認が必要となることが先行きの不透明感を強めています 英国との貿易量が少ない加盟国の幾つかは交渉に殆ど関心を示さないものと思われるためです 欧州の複数の国は高い政治リスクにさらされています 経済の低迷を背景に反体制政党が台頭しており 英国の EU 離脱 ( ブレグジット ) が 主流派政党に対する国民の不満を強めた可能性があります 欧州ならびにユーロ圏は 分断の脅威にさらされています スペインでは26 日 ( やり直しの ) 総選挙が行われたばかりですが イタリアでは 10 月に憲法改正案の是非を問う国民投票が予定されており レンツィ首相の去就を決めることとなりそうです ( 図表 1 参照 ) 首相は 上院の権限を大幅に縮小する改正案が否決された場合には辞任することを明らかにしているからです イタリアの状況も懸念されます イタリアはユーロ圏 3 位の経済規模を有する一方 銀行セクターは2,000 億ユーロ強の不良債権を抱えており 政府債務が膨らんだ現状では財政支出を大幅に拡大する余地は見込まれないからです 2
2017 年にはフランスの大統領選挙が予定されていますが 反 EUの国民戦線が国民の支持を増やしています また ドイツでは総選挙が行われます フランス ドイツ オランダ等 複数の国が EUあるいはユーロ圏加盟の是非を問う国民投票を行わざるを得ない状況に陥る可能性も否めません 上述のさまざまな状況を勘案すると ブレグジット は EU あるいはユーロ圏分断のリスクを高める結果となったように思われます EU あるいはユーロ圏分断が避けられないという意味ではありません ブレグジット が欧州の政治家に対して 銀行業界 規制 財政等に関する規制改革を促進するよう 警鐘を鳴らしたということなのです 諸改革を実行し 機能が改善された EU が実現することとなれば 英国は EU との関係を見直したいと考えるかもしれません このような展開は現状では望めそうにありませんが 実は前例があるのです 12 年 デンマークは国民投票でマーストリヒト条約の批准を否決し 欧州株式市場は 15 の下げに見舞われたのですが 2000 年には再度国民投票を実施し 条件付きで加盟を決めているのです 経済面への影響 英国経済には 短期間のうちに ブレグジット の影響が現れることとなりそうです イングランド銀行 ( 中央銀行 ) は国内外の投資家心理や経済界への影響を和らげるための手段を講じており ポンド安が輸出型企業に恩恵をもたらすことが予想されますが 国内経済は 今後数四半期を通じ 減速を免れないと考えます EU が英国の最大の輸出先 (EU 向け輸出は輸出全体の半分近く GDP( 国内総生産 ) 比約 1 割 ) であることを勘案すると ブレグジット は 2016 年の英国の GDP を 1 以上押し下げることが予想されます リーマン ショックが短期間のうちに世界経済に影響を及ぼしたのとは異なって ブレグジット の海外への影響は長期にわたることが予想されます とはいえ EUの政局を巡る不透明感は強まっており 投資家心理や貿易に甚大な影響を及ぼしかねません EUが欧州債務危機からの回復途上にある状況下 低成長は EU 周縁国の脆弱な財政状況を急速に悪化させる脅威となります イタリアの場合 現在 130 のGDP 比政府債務残高を安定させる ( 悪化させない ) ためには前年比 +1.4 のGDP 成長が必要ですが 銀行セクターの抱える問題を考えただけでも相当ハードルが高いと見ています 金融当局の対応 世界の主要中央銀行は 金融システム安定に必要な体制を整えた旨を明らかにしており 協調的政策対応が実現する公算もあると思われます 一方 政治家はあらゆる選択肢を残しておきたいと考えているはずですから 投資に際しては 極めて短期間のうちに抜本的な対策が講じられることを期待すべきではないと考えます 現時点で極めて積極的な姿勢に転じても望ましい結果が得られない可能性は否めません カーニー イングランド銀行総裁は 金融市場安定のため 2,500 億ポンドを市場に供給すること また 今後数週間のうちにも追加の施策を検討し得ることを明らかにしています 欧州中央銀行 (ECB) も 必要とあらば行動する用意があることを明言しています 英国の国民投票の結果は 米国の金融政策にも影響を及ぼすことが予想されます 投票結果が世界経済の不透明感を強めていることから 米連邦準備制度理事会 (FRB) の利上げは 早くとも 10-12 月期にずれ込むこととなりそうです スイス国立銀行 ( 中央銀行 ) は スイスフランの上昇を抑えるため 為替市場に介入したことを明らかにしています 1 ユーロ =1.05 スイスフランを下回ることとなれば マイナス金利幅の拡大が検討される可能性もあります 日本銀行もスイス国立銀行と同様の状況に置かれており 一時 1 ドル =100 円割れとなった状況を勘案すると 円安誘導の追加金融緩和策が導入される公算が高いと考えます 日本銀行は 新たに発行した紙幣を直接消費者に配る ヘリコプター マネー を世界で初めて実行することになるかもしれません ブレグジット は上述の施策を現実のものとし得るのです 3
ブレグジット を踏まえた注目資産 英国の EU 残留を織り込んでいた金融市場は 投票結果に衝撃を受け 大混乱の展開となりました 投資家のリスク選好に最も大きな影響を及ぼしたのは おそらく ユーロ圏の資産クラスに要求されるリスク プレミアムが上昇するメカニズムを通じて ブレグジット の影響が金融市場全般に広がったことだと考えます ピクテでは 市場の動向を示す主要な指標として 欧州金融債ならびにイタリア国債のクレジット デフォルト スワップを注視していますが これまでのところ 目立った動きは見られません 市場の混乱が長引くこととなれば リスク資産がどのような水準で投資妙味を増すかの判断はこれまで以上に難しいものとなりそうです 市場が下落幅を広げ 政治家の言動から十分な確信が得られた場合には 下げの最も大きかったセクターの買いの検討余地があると見られます ユーロは1.05ドル近辺で 一方 ポンドは1.30ドル近辺で投資妙味が増すと考えます 一方 ポンド安の恩恵で増益が予想される英国株には 既に割安感が見られます したがって FTSE100 種株価指数が5,700を割り込んだ時点が分岐点と考えます ドイツ10 年国債利回りは一時 -0.1 を割り込み過去最低水準を更新しており 一段の低下余地は限定的だと考えます また 社債スプレッドが広がれば買いの機会が提供されるかもしれませんが 流動性が低いため 注意が必要と見ています 新興国資産については 目先 ドル高の進行が予想されることから 株式 債券ともに注意が必要と見ています 4
2016 年 6 月 14 日発行ニュース 米国国債利回りの動向を左右するふたつの鍵 投資家にとって米国国債はポートフォリオを守る重要な資産ですが 年初来で利回りが大きく低下しています その背景と今後の見通しを探る鍵となる 物価連動国債 (TIPS) とブレークイーブン インフレ率について解説します 米国国債利回り 低下の背景 米連邦準備制度理事会 (FRB) が 年ぶりの利上げを決定した2015 年 12 月 16 日 米国 10 年国債利回りは 2.3 でした しかしその後は大きく低下し 2016 年 6 月 6 日時点で1.72 となっています その背景の1 点目は 1 月から2 月にかけての金融市場の混乱です 中国経済のハードランディングや世界経済の景気後退 ( リセッション ) 入り 米ハイイールド社債 ( 高利回り社債 低格付け社債 ) 市場の急落などを巡る懸念を受けて 米国 10 年国債利回りは1.66 まで低下しました 2 点目は 2016 年 1-3 月期の米国の実質 GDP( 国内総生産 ) が 前期比年率 +0.8 と期待外れの低成長に終わったことです 3 点目は FRBの利上げペースについての市場の見方です 2015 年末時点では 2016 年中の利上げ回数を 2 回とする見方が大勢でしたが 足元では1 回のみに修正されています 米国国債利回りと TIPS 利回り ブレークイーブン インフレ率の関係 米国国債利回りは 複雑極まりない世界の動向を反映しているため その推移を完全に捉えることは不可能ともいえますが 本稿では 10 年国債利回りと関係の深い 10 年物物価連動国債 ( 米国財務省インフレ防衛国債 以下 TIPS) の利回りと ブレークイーブン インフレ率の動きを足がかりに 考察を試みます ブレークイーブン インフレ率とは 普通国債の名目利回りと TIPS の利回りの格差のことで 市場の期待インフレ率を表すとされます ( 図表 1 参照 ) ただし この定義は 100 正しいわけではありません 流動性リスクプレミアム (TIPS は普通国債ほど流動性が高くないため 利回りが押し上げられている ) や インフレ リスクプレ 図表 1: 米国の 10 年国債利回り TIPS 利回り ブレークイーブン インフレ率 FF 金利日次 期間 :2015 年 1 月 1 日 ~2016 年 6 月 6 日 4.0 3.5 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 10 年国債利回り FF 金利 TIPS(10 年 ) 利回りブレークイーブン インフレ率 (10 年 ) - 15 年 1 月 15 年 4 月 15 年 7 月 15 年 10 月 16 年 1 月 16 年 4 月 10 年国債利回り (1.72) =ブレークイーブン インフレ率 (1.52) + TIPS 利回り (0.1) < 次ページに続きます> 1.72 1.52 0.1 出所 : トムソン ロイター データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 ミアム (TIPS は 普通国債とは異なりインフレ防衛証券であるため 利回りが押し下げられている ) 等 複数のファクターがインフレ期待を歪めているからです つまり 流動性プレミアムはインフレ期待を過小評価する一方 インフレ プレミアムはインフレ期待を過大評価しているのです 5
TIPS 利回り低下の要因 2015 年末以降のTIPS 利回り低下の背景には3つの要因があると考えられます 第一に 年初から2 月にかけての金融市場の混乱への対応として 米国国債 TIPSともに買われたことです さらに3 月以降は 投資家のインフレ懸念が強まり TIPS 市場への資金流入に拍車がかかりました 第二に 年初から原油価格が1バレル =30ドルを下回って大幅に下落し ドル インデックスが急騰したことで ブレークイーブン インフレ率が低下したことです 第三に 2016 年 1-3 月期の米国の実質 GDPが期待外れだったことに加え 事前予想を下回る経済指標の発表が相次いだことから 投資家の世界経済の回復に対する懸念が強まったことです 実のところ 米国の低成長はアトランタ連銀が公表する速報性の高いGDP 予測モデル GDPナウ に示唆されていました GDPナウは GDPとの関連性が強い経済指標が発表されるたびに更新されます 2016 年 1-3 月期のGDPナウが下方修正された時点で 10 年物 TIPS 利回りも低下しました ( 図表 2 参照 ) GDP 成長率の伸びの鈍化と金融市場の混乱を受け FRBはハト派的なスタンスを強めざるを得ず 3 月の連邦公開市場委員会 (FOMC) では年内の利上げのペースについての予想を4 回から2 回に下方修正しました 緩やかな利上げを標ぼうする米国の金融政策が市場を殆ど驚かせなかったのは 利上げ回数の下方修正を既に織り込んでいたためです とはいえ FRBが慎重に行動するであろうことが確認された点は重要です 市場のフェデラルファンド (FF) 金利予想は FF 金利先物市場に反映されますが 当先物金利は年初以降 低下基調です FRBのハト派的なスタンスが10 年物 TIPS 利回りを下押ししたことが図表 3からも確認できます 足元では FOMCメンバーはタカ派的なスタンスに転じており 夏場の追加利上げの準備を整えているようにも思われます 2016 年 5 月半ばに公表された4 月の FOMC 議事録要旨は 次回会合での利上げの意向を確認するものだったため市場を驚かせました ただし FRBが利上げを継続し 10 年物 TIPS 利回りを上昇させるには GDP 成長率の回復が必要です 現状では FRBの利上げペースは極めて緩やかになることが予想されるため 10 年物 TIPS 利回りは2015 年 12 月時点を下回る水準に留まっています 図表 2: 米 TIPS 利回りと GDP ナウ日次 期間 :2016 年 2 月 1 日 ~2016 年 4 月 28 日 0.6 0.4 0.3 0.2 0.1 0. 0.8 0.7 0.6 0.4 0.3 0.2 0.1 TIPS(10 年 ) 利回り ( 左軸 ) GDPナウ (16 年 1-3 月期予測 右軸 ) 16 年 2 月 16 年 3 月 16 年 4 月 TIPS(10 年 ) 利回り ( 左軸 ) FF 金利先物 ( 右軸 ) 0.12 FOMC4 月会合の議事録公表 0.45 15 年 11 月 16 年 1 月 16 年 3 月 16 年 5 月 0.62 GDP ナウは経済指標発表の都度更新される出所 : トムソン ロイター データストリーム アトランタ連銀のデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 図表 3: 米 TIPS 利回りと FF 金利先物日次 期間 :2015 年 11 月 1 日 ~2016 年 6 月 6 日 3.0 2.5 2.0 1.5 1.0 0.8 0.7 0.6 0.4 0.1 出所 : トムソン ロイター データストリーム ブルームバーグのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 0.3 < 次ページに続きます > 6
原油価格の影響を受けて変動したブレークイーブン インフレ率 米国のブレークイーブン インフレ率は 原油価格が直近の安値を付けた2 月半ばに底値をつけた後 大きく上昇し 6 月 6 日現在 1.52 に達しています 2015 年 12 月から2016 年 2 月にかけてのブレークイーブン インフレ率の大幅な低下は 主に原油安に起因するものであり インフレ低下が見込まれていたためですが ドル高の進行や安全資産を求める投資家の米国国債需要を受けた資金流入等の原因も考えられます 実効為替レートで見たドルの増価が進むにつれ 輸入財価格が下落しインフレ率は低下することになりますが 原油安も同様の効果をもたらします 原油価格は2 月 11 日から4 月 28 日にかけてほぼ40 上昇し ドルが6 程度減価した結果 10 年物ブレークイーブン インフレ率は1.72 に上昇しました ( 図表 4 参照 ) ところが 5 月には原油価格が1バレル =50ドルに迫る局面があったにもかかわらず ブレークイーブン インフレ率は再び低下しています 利上げ予想が強まり 米ドル高に転じたためです FOMCのタカ派メンバーは 金融政策が後手に回る状況を避けるために 近いうちに利上げが行われるだろうとの警告を市場に発しています ( 後手に回るとは インフレ率がFRBの見通しを上回る水準で上昇し 物価抑制のため速いペースでの利上げを余儀なくされる状況を指しています ) 原油価格が1バレル =50ドルを大幅に上回る公算は低いと思われます 米国のシェールオイル生産は原油価格の変動と原油在庫の積み上がりに敏感に反応するため 世界経済の改善と需要の伸びに伴って 原油生産が急拡大すると予想されるためです 米国の個人消費支出 ( コアPCE) の上昇は緩やかで FRBが目標とする2 を下回る水準に留まると予想されます この間 賃金上昇率が堅調に推移する一方で ドル高の進行が物価を下押すこととなれば 10 年物ブレークイーブン インフレ率は 長期平均の2 を下回る水準に留まることが予想されます 今後の見通し 仮に 10 年物 TIPS 利回りが 程度まで上昇し 10 年物ブレークイーブン インフレ率が1.7 程度に留まるとすれば 2016 年末の名目国債利回りは2.2 程度まで上昇すると考えられます しかし 脆弱な景況とインフレ上昇のはざまで 国債利 図表 4: 米ブレークイーブン インフレ率と原油価格日次 期間 :2015 年 7 月 1 日 ~2016 年 6 月 6 日 60 55 50 45 40 35 30 25 ドル / バレル 原油価格 ( 左軸 ) ブレークイーブン インフレ率 (10 年 )( 右軸 ) 4.71 16 年 4 月 28 日 1.72 20 15 年 7 月 15 年 10 月 16 年 1 月 16 年 4 月 1.52 原油価格 :WTI 先物出所 : トムソン ロイター データストリームのデータを使用しピクテ投信投資顧問作成 回りの変動率 ( ボラティリティ ) が上昇するリスクは残ります また インフレ率と経済成長率が上振れるならば 国債利回りの大幅上昇も考えられ 足元の市場予想を上回って利上げが進む可能性も否めません ただし 過度の引締めは米国経済を損なうという見方が優勢になり 政策エラーが指摘されるような状況となれば 利回りの上昇は当面 限定されると考えます また 年初の金融市場の混乱が再燃し 安全資産としての国債が見直される状況が展開される場合にも 国債利回りの低下が考えられます 2015 年 12 月 1 日から2016 年 2 月 11 日にかけての株式市場の下落局面では S&P500 種株価指数の騰落率は-12.6 米国 10 年国債は +4. でした 金融市場の先行きを巡る懸念が払拭されないことからも 米国国債が市場のショックやシステミック リスクからポートフォリオを守る重要な資産であることは明らかです 米国国債利回りの先行きを見る上では TIPS 利回りやブレークイーブン インフレ率の動向を見極めることが重要だと考えます 1. 1.8 1.7 1.6 1.5 1.4 1.3 1.2 1.1 7
2016 年 6 月 30 日発行ニュース 米国 : 個人消費支出は 2 ヵ月連続で好調な伸びを記録 米国の 2016 年 5 月の個人消費支出が 2 ヵ月連続で増加したことから GDP( 国内総生産 ) 成長率の予想を上方修正する可能性もあると見ています 一方 世界経済の現状を勘案すると インフレは当面低位で推移することが予想されます 個人消費支出 : 先行きは良好 2016 年 6 月 2 日 米国商務省経済分析局が発表した 5 月の実質個人消費支出は前月比 +0.3 と市場予想を上回りました また 4 月改定値が上方修正されたことから 4-5 月平均の伸び率は 1-3 月期比で年率 +4.8 と伸びが際立ちました ( 図表 1 参照 ) 上記の数値は 米国消費の先行きは明るいと見るピクテの予想と相容れると考えます 雇用や家計所得の持続的な伸びが見込まれる中 消費者心理は比較的好調に推移しており 高位に留まる貯蓄率の一段の低下もあり得ます いずれも 個人消費を支える要因となるはずです 今後の見通しについては 4-6 月期 下期ともに良好な水準を維持するものと考えます GDP( 国内総生産 ) 成長率についても 4-6 月期および 2016 年 2017 年の通年予想いずれも明るい見通しを持っており 2016 年予想は今年初めての上方修正を検討することになりそうです 物価上昇圧力 : 低位に留まる 図表 1: 米国の実質個人消費支出の伸び率月次 期間 :2007 年 1 月 ~2016 年 5 月 4 3 2 1 0-1 -2-3 -4 図表 2: 米国のコア PCE 月次 期間 :2011 年 1 月 ~2016 年 5 月 3.5 3.0 2.5 リセッション後の平均 2.3 実質個人消費支出の伸び率 (3 ヵ月移動平均 年率 ) 直近は 4~5 月 2 ヵ月平均の年率 -5 07 年 08 年 0 年 10 年 11 年 12 年 13 年 14 年 15 年 16 年 前月比 FRB の目標 2.0 5 月のコア PCE 価格指数 (PCE デフレーター 食品 エネルギーを除く ) は 前年同月比 +1.6 と市場予想通りでした ( 図表 2 参照 ) 労働市場の需給の緩みが明確な縮小基調を示していることから 賃金上昇は加速度を増すことが予想される一方 足元の上昇は緩やかな水準に留まっており コア インフレに及ぼす影響も 年内は小幅に留まることが予想されます 世界経済の現状は 米国の物価上昇をもたらすどころか下押し圧力となることも予想されます 実際のところ 米国の長期のインフレ期待は低下基調を辿っています コアPCE 価格指数は 年内 2 を下回って推移する可能性があると見ています 2.0 1.5 1.0 11 年 12 年 13 年 14 年 15 年 16 年 出所 : ピクテグループ 1.6 前年同月比 8
ピクテのウェブサイトで最新情報にキャッチアップ! ピクテ https://www.pictet.co.jp/top Market Flash マーケット関連ニュース ヨーロッパから見た世界のマーケット関連情報ピクテならではの分析はこちら http://www.pictet.co.jp/archives/category/news/markets Today s Headline 今日のヘッドライン 今 マーケットで注目の話題をプロの視点でレポート平日夕方毎日配信中! http://www.pictet.co.jp/archives/category/news/headline Fund Watch ファンド関連ニュース ファンドの現状と日々変動するマーケットの関係を詳しく 解りやすく解説します http://www.pictet.co.jp/archives/category/news/fundinfo 当資料をご利用にあたっての注意事項等 当資料はが作成した資料であり 特定の商品の勧誘や売買の推奨等を目的としたものではなく また特定の銘柄および市場の推奨やその価格動向を示唆するものでもありません 運用による損益は すべて投資者の皆さまに帰属します 当資料に記載された過去の実績は 将来の成果等を示唆あるいは保証するものではありません 当資料は信頼できると考えられる情報に基づき作成されていますが その正確性 完全性 使用目的への適合性を保証するものではありません 当資料中に示された情報等は 作成日現在のものであり 事前の連絡なしに変更されることがあります 投資信託は預金等ではなく元本および利回りの保証はありません 投資信託は 預金や保険契約と異なり 預金保険機構 保険契約者保護機構の対象ではありません 登録金融機関でご購入いただいた投資信託は 投資者保護基金の対象とはなりません 当資料に掲載されているいかなる情報も 法務 会計 税務 経営 投資その他に係る助言を構成するものではありません