Relative Energy at 550 nm Relative Energy (%) 瞳孔径 Fraction Energy 2015 年 JSCRS 学術総会インストラクションコース 7 多焦点眼内レンズ検査入門 屈折型 国内承認の多焦点 IOL の種類 回折型 たなし中村眼科中村邦彦藤田眼科千葉征真井上眼科竹原弘泰東京歯科大学水道橋病院松丸麻紀大木伸一 HOYA 社 isii +2.5D 加入 +3.0D 加入 Alcon 社 ReSTOR 屈折型 回折型のどちらも瞳孔径の影響を受ける +4.0D 加入 瞳孔径の年齢による変化 屈折型多焦点 IOL エネルギーバランス (mm) 7 6 5 4 3 2 1 0 明室遠方 明室近方 暗室遠方 暗室近方 1.0 0.9 Distance 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 Near 1.5 2.5 3.5 4.5 Pupil Dismater (mm) 年齢 ( 歳 ) 近方視力が瞳孔径の影響を受けやすい 回折型多焦点 IOL Tecnis Multifocal のエネルギーバランス 全て同じステップ高の場合 瞳孔径に関らず近方と遠方それぞれ 41% の光エネルギー配分 回折型多焦点 IOLReSTOR のエネルギーバランス 100 1 0.9 0.8 0.7 0.6 0.5 0.4 0.3 入射光の 18% が回折により失われるため コントラスト感度低下 ( コントラスト感度は瞳孔径が影響する ) Distance Near 80 60 Distance 40 Near 20 夜間視のコントラスト感度を改善 0.2 0.1 0 近方視力が瞳孔径に依存しない 1 2 3 4 5 瞳孔径 Pupil Diameter (mm) 0 1 2 3 4 5 6 瞳孔径 (mm) 遠方重視の光エネルギー配分の回折型 1
屈折型多焦点 IOL の特徴 回折型多焦点 IOL の特徴 Tecnis Multifocal 遠方から中間は良好な視力 さらに瞳孔径が充分確保されていれば 近方まで良好な見え方 グレア ハローは回折型より強いが軽減 コントラスト感度も良好 近方視が瞳孔径依存 3mm 程度以上の瞳孔径が要求されるので 高齢者では近方視が得難い 良好な遠方 近方視力 ( 遠方 近方が同等 ) 瞳孔径に関係なく近方視力は良好 コントラスト感度は屈折型に劣るが改善 相対的に中間の見にくさを訴える 瞳孔径が小さい症例ではコントラスト感度低下が問題となりやすい 光エネルギーが遠方 近方均等配分なので 近方視に不満を訴えた場合に眼鏡での対処が困難 回折型多焦点 IOL の特徴 ReSTOR トーリック多焦点 IOL +2.5D 加入 +3.0D 加入 +4.0D 加入 術後の乱視矯正が必要なくなる より適応症例が多くなる 遠方視重視の回折型 良好な遠方 屈折型よりは良好な近方視力 夜間のコントラスト感度は屈折型に劣るが改善 近方視を強く求めるひとには物足りない場合がある ( 近視眼には向かない ) +2.5D,+3.0D 加入はより中間重視の設計 乱視は軽減されるが それ以外はベースの多焦点 IOL の性格がそのまま現れる ベースの多焦点 IOL が適応でない症例はトーリックタイプも適応にならない AcrySof IQ ReSTOR Multifocal Toric IOL 多焦点眼内レンズを導入するに向けて 多焦点眼内レンズ導入の準備 患者さんに正確な情報を伝え クレームに繋がらないような 体制を整える必要がある 術後屈折誤差を最小限にし より良い結果を得るため 2015 年 6 月 20 日 藤田眼科千葉征真 詳細な術前検査を行う必要がある 2
多焦点眼内レンズの情報を患者さんへ提供 手術が決定した患者さんへのカウンセリング 興味を持った患者さんには メーカーが配布している DVDを閲覧してもらう 多焦点眼内レンズについて 詳しく話すと説明に時間がかかって大変 DVDは多焦点眼内レンズの特徴を 要点をまとめて作成されており スタッフが説明する手間もなくなり便利 DVDはパソコンではなく ipadに転送し使用場所も選ばずに閲覧でき パソコンを一台用意するよりコスト面も安い 看護師が一対一で 時間をかけて行う質問しやすい環境を作り 患者さんの要望を聞きだすことが大切 プライバシーに配慮し ipadを使用 カウンセリング後は使用したスライドを印刷し患者さんにお渡して 見直しをしてもらう 新しく近見 中間視力表を購入 テイエムアイ社 ( 株 ) の視力表を導入 後眼部 OCT 術前に黄斑部と緑内障精査が必要 当院では GCC を必ずチェック 30cm 40cm 50cm の 3 種類を購入 視力表が大きいため 扱いやすい ランドルト環どうしの間隔が広いため どの視標を 答えたらよいのか患者さんが分かりやすい 0.7 くらいの近見視力が出ていれば 近見は不自由ないと思われる 眼底疾患と緑内障のチェックが同時に可能 黄斑部の精査 視野検査を追加検査 角膜形状解析装置 ( トポグラフィー ) 適応のチェックに必須検査 円錐角膜のような高次収差が高い症例は術後視力が出にくいため適応外 LASIK 眼など術後屈折誤差が起きる可能性が高い症例は避けた方が無難 眼軸長測定装置 眼軸長測定には 光干渉眼軸測定装置の導入が必須 術後の屈折誤差を最小限にするため 光干渉眼軸測定装置の特徴 Aモードのように角膜圧迫や軸ズレによる測定誤差が少ない測定時間が短い操作が簡便で 検者間での差が少ない再現性が高い 光干渉で測定できる症例は増えているが 測定不能例もあるため Aモードの習得は必要 3
屈折誤差 (D) 屈折誤差 (D) 術後満足度を確認するために 当院での術後 1 ヵ月と 1 年の患者満足度 アンケート用紙を作成 N = 98 例 術後視力と患者の自覚的満足度が一致しないこともある 患者自身のレンズに対する評価 ( 患者の本音 ) を聞くために アンケートは有用 術後 1M 術後 1Y ほとんどの患者さんが不満に感じず 満足している まとめ スタッフ全員で多焦点眼内レンズについて勉強会を行った IC7 多焦点眼内レンズ検査入門 ~ 術前検査 ~ DVDの閲覧とカウンセリングを行って多焦点眼内レンズについてきちんと理解してもらう 使いやすい器機やOCT 角膜形状解析 光干渉眼軸長測定を導入し 術前検査の精度を上げる アンケートがあると 患者さんの自覚的評価を聞くのに有用 1. 眼内レンズ球面度数の選択 2. 多焦点眼内レンズの適応 3. 回折型 or 屈折型の選択 井上眼科竹原弘泰 準備をしっかり行えば 満足度が非常に高いので 4. トーリック多焦点眼内レンズのモデル選択 是非皆様の施設でも導入していただければと思います 眼軸長と術後屈折誤差 (SRK-T 式 n=1036) SRK-T 式では 長眼軸眼では遠視にずれ 短眼軸眼では近視にずれる傾向がある 角膜曲率半径と術後屈折誤差 (SRK-T 式 n=1036) SRK-T 式では flat な角膜では遠視にずれ steep な角膜では近視にずれる傾向がある 眼軸長 (mm) 眼軸長測定 :IOL Master n=1036 角膜曲率半径 (mm) 角膜曲率半径測定 : ケラトメータ 4
Hoffer Q 式 SRK-T 式 IOL Master の眼軸長別推奨式 (mm) 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 多焦点眼内レンズの適応 < 適応 > 白内障以外に疾患がない 眼鏡への依存度を極力減らしたい 多焦点 IOLの性能 ( グレア ハローの可能性 2 重焦点等 ) を理解できる 比較的年齢が若い Holladay 1 式 Haigis 式 (a0 のみ最適化 ) Haigis 式 (a0,a1,a2 最適化 ) Holladay 2 式 IOL 球面度数選択のコツ 1 複数の計算式と併用 2 IOL 定数をまめに最適化 (50 眼毎 眼軸長別 ) 3 眼軸長別に計算式を選ぶ 須藤史子, 島村恵美子 : 眼内レンズ度数計算の進歩. あたらしい眼科 28( 臨増 ):283-286,2011 < 非適応 使用に慎重 > 視力に影響がある疾患がある ドライアイ 高次収差が大きい 瞳孔径が小さい 近見反応が良好 (2mm 以下 回折現象 網膜への光量の低下 ) 眼瞼が下がっている 術前視力が良好 白内障の程度に比べて視力が不良 神経質 完璧主義者 術後の見え方に過度の期待 意志の疎通ができない 繊細な色彩の判別が必要な職業 瞳孔径測定 ( 各瞳孔計の特徴 ) 機種名タイプ測定眼 FP-10000Ⅱ ( テイエムアイ ) Npi -100 ( アイエムアイ ) Wave Front Analyzer ( トプコン ) WAM-5500 ( シギヤ精機製作所 ) プロシオン P3000 (HAAG-STREIT) イリスコーダデュアル ( 浜松ホトニクス ) 瞳孔径は変動が大きい為 両眼開放下で正確に経時的に測定できるのが理想 明所 暗所 遠方近用遠方近用 開放型片眼〇〇〇〇 開放型片眼〇〇〇〇 開放型片眼〇〇 開放型両眼〇〇〇〇 閉鎖型両眼〇〇 閉鎖型両眼〇〇〇 眼瞼下垂と上方視野の関係 MRD(mm) 平均上方視野 ( ) <0.5 10.0±4.7( 中央値 :8.7) ~1.0 19.4±4.5( 中央値 :18.3) ~1.5 23.4±6.6( 中央値 :25.7) ~2.0 27.0±5.5( 中央値 :27.8) ~2.5 31.4±3.1( 中央値 :30.1) ~3.0 38.5±3.5( 中央値 :38.3) ~3.5 40.4±5.2( 中央値 :40.3) 3.5< 45.7±4.6( 中央値 :46.0) 小手川泰枝他 : 眼瞼下垂におけるMargin Reflex Distanceと上方視野と瞳孔との関係. あたらしい眼科.28(2),2011,257-60. 適応例 非適応例? 眼瞼下垂により入射光量が減り 更なるコントラスト感度の低下となる 回折型と屈折型の選択 回折型 瞳孔径に依存しない 遠方と近方 (30cm or 40cm) または遠方と中間など見たい距離で選択肢がある コントラスト感度の低下 ハロー グレアの可能性について納得できる 屈折型 近方視時の瞳孔径が 3.5mm 以上 遠方視のクオリティーを重視 遠方 中間を裸眼で不自由なく見たい 近方視では眼鏡をかけても良い ハロー グレアについて納得できる 患者のライフスタイルやニーズに合わせてレンズの選択を行う ノントーリック IOL 挿入眼における角膜前面乱視と角膜後面乱視 (Pemtacam ) 内部収差 (KR-1W) の関係 (SN60WF n=135) 理論値 角膜前面倒乱視 y=-0.1024x Pentacam y=-0.0707x-0.2986 R 2 =0.1665 KR-1W y=-0.1266x-0.6162 R 2 =0.2613 1.5 1 0.5 0-3 -1 1 3 角膜前面 -0.5 直乱視 -1-1.5 後面 内部収差倒乱視 後面 内部収差直乱視 ケラトメータで計算される角膜乱視は角膜前面直乱視では実際の角膜乱視より 0.3~0.6D 過大評価 前面倒乱視では同程度過小評価されていると考えられる 5
当院におけるトーリック多焦点眼内レンズ (ReSTOR Toric) のモデル選択 まとめ 術前角膜乱視 トーリックカリキュレーター ( メーカー推奨角膜乱視矯正範囲 ) 0D 0.5D 1.0D 1.5D 2.0D 2.5D 3.0D 3.5D 4.0D 4.5D 5.0D T3 T4 T5 T6 多焦点眼内レンズは適応症例の選択を適切に行えば 非常に高い満足度が得られる 患者の裸眼視力への要求度は高いため 常に術前 術後の検査データの確認し 術後屈折誤差を減らすよう心がける レンズの特性 (2 重焦点 ハロー グレア等 ) をよく理解してもらう 当院のノモグラム 直乱視 倒乱視 T3 T4 T5 T6 T3 T4 T5 T6 患者のライフスタイル 性格を把握し レンズ選択 ( 単焦点 or 多焦点 回折型 or 屈折型 ) を行う トーリック多焦点 IOL のモデル選択を決定する際は 角膜後面乱視を考慮し 直乱視 症例の過矯正には気をつける ケラトメータで測定した角膜乱視でモデル決定を行う場合 角膜後面乱視を考慮し メーカー推奨よりも直乱視では 1 または 2 モデル下 また倒乱視ではメーカー推奨通りに選択している 検査項目 多焦点挿入眼の視力検査 東京歯科大学水道橋病院眼科松丸麻紀 遠方視力裸眼 矯正 近方視力裸眼 遠方矯正下 最良矯正 中間視力裸眼 遠方矯正下 最良矯正 検査手順 近方視力表の選定 レンズの種類を確認 レンズの種類を確認 ( 特徴 加入度数 ) +4.0D 回折型 IOL +3.0D 回折型 IOL +2.5D 回折型 IOL 遠方視力 ( 裸眼 矯正 ) 30cm 視力表 40cm 視力表 50cm 視力表 近方視力 ( 裸眼 遠方矯正下 最良矯正 ) * 必要に応じて中間視力 6
各レンズの近方視力特徴 視力表裸眼視力矯正視力最良距離 中間視力 どの距離を測定するか 50cm?70cm?1m? +4.0D 加入回折型 IOL 30cm 視力表 平均 0.7 遠方矯正 or+0.5d 加入 30~35cm 挿入レンズの種類と加入度数を確認する +3.0D 加入回折型 IOL 40cm 視力表 平均 0.7 遠方矯正 40cm 遠方と近方 2 つの焦点で測定可能 ( 通常は遠方焦点で測定 ) +2.5D 加入回折型 IOL 50cm 視力表 平均 0.6 遠方矯正 50cm 裸眼 遠方矯正下 最良矯正視力を測定 中間視力時の加入度数 +2.5D 加入レンズの場合 +4.0D 加入の回折型多焦点 IOL +3.0D 加入の回折型多焦点 IOL * 近方焦点は 50cm 中間距離になるため 30cm or 40cm の測定をしておくと良い 1m 50 cm 1m 50 cm Add Add 30cm 40cm 遠方焦点測定 +1.0D +2.0D 遠方焦点測定 +1.0D +2.0D Add 遠方焦点測定 +3.0D +2.5D 近方焦点測定 -2.0D -1.0D 遠方矯正近方焦点測定 -1.5D or-0.5d * 中間視力は 2 つのレンズで測定する事が可能 ( 遠方焦点 or 近方焦点 ) 近方焦点測定 +1.0D +0.5D まとめ 検査を始める前に眼内レンズの種類と加入度数を確認する ( 加入度数により近方焦点の距離が変わる ) 遠方視力検査は単焦点と同じ 近方視力にも影響するので 完全矯正する 多焦点眼内レンズの特殊検査 近方視力は裸眼 遠方矯正下 最良矯正視力を測定する IOL の種類により視力表を選択する 中間視力は遠方焦点での測定 近方焦点での測定の 2 種類がある ( 通常は遠方の焦点での測定 ) 東京歯科大学水道橋病院眼科大木伸一 7
通常検査 屈折検査 角膜曲率検査 眼圧検査 遠方視力検査 近方視力検査 +4.0D 30cm 視力表 +3.0D 40cm 視力表 +2.5D 50cm 視力表 必要時に行う検査 特殊検査 多焦点眼内レンズ挿入眼の特殊検査 1. 眼鏡検査 近方や中間が見えづらい時に検査 2. コントラスト感度 視力が出づらい時に検査 3. 眼内レンズ挿入角度 ( 多焦点トーリック眼内レンズ ) 自覚視力 角膜形状解析 スリットフォト +4.0D 回折型多焦点眼内レンズ +3.0D 回折型多焦点眼内レンズ +2.5D 回折型多焦点眼内レンズ ライフスタイル読書 裁縫などパソコン 譜面など遠方から日常生活 近方最適距離 30~35cm 40cm 50cm 眼鏡処方 各レンズの特徴と眼鏡処方 中間 3.6% 中間 0% 中間 0% 近用 3.6% 近用 15.6% 近用 60% 眼鏡常時装用 0% 0% 0% 多焦点眼内レンズでの眼鏡処方は? 1 遠方眼鏡 度数づれや乱視の矯正 2 中間眼鏡 +4.0D 回折型多焦点眼内レンズ 遠方と 35cm 前後に焦点があるため中間を見たい時に必要 3 近方眼鏡 +3.0D 回折型多焦点眼内レンズ +2.5D 回折型多焦点眼内レンズ 遠方と 40cm もしくは 50cm に焦点があるため 30cm 前後を長時間見る時に必要 中間眼鏡ポイント 多焦点眼内レンズ挿入眼で中間をもっと見たい時に作製 普段は使わないが PC など中間距離を見たい時に使用する 遠方矯正に +1.0D から +1.5D を加入 近方眼鏡ポイント 多焦点眼内レンズ挿入眼で より近方を見たい時に作製 普段は使わないが 裁縫など 細かな作業時に使用する 遠方矯正に +2.5D から +3.5D を加入 太い 縞 細い 濃い コントラスト感度 コントラスト 薄い コントラスト 縞がある方を答えてもらう 縞が太い低周波数 細い高周波数 太い 縞 低周波数 細い 高周波数 8
眼内レンズ挿入角度 トーリック眼内レンズ挿入後他覚屈折値 自覚的屈折値 角膜曲率半径 <R> mm D deg R1 8.06 41.87 180 R2 7.60 44.41 90 AVG 7.83 43.10 CYL -2.54 180 V.d.=0.2(1.5-2.75D) <R> S C A -2.99-0.23 173 8-2.98-0.24 178 9-2.97-0.26 172 8 <-2.98-0.24 173> 角膜曲率半径と自覚 他覚的屈折値の値が違う トーリック眼内レンズの効果の判断材料 眼内レンズ挿入角度 スリットランプ 波面収差解析装置 スリットランプでおおよそのレンズの位置が確認できる ウェーブフロントアナライザーで角膜 内部 眼球の各乱視が測定できる 9