資料 4 第 9 回の議論を受けて ( 原子力関係 ) 1. 原子力発電の外部費用 2. 原子力の技術の進化と安全性 3. 放射性廃棄物の処分について 4. フロントエンドのリスクについて 2 7 12 21 平成 24 年 2 月 資源エネルギー庁
2 1. 原子力発電の外部費用 ( 主なご意見 ) 河野委員将来の事故の費用 保険料としてどのくらいかということが織り込まれていなかった もし 事業者が費用を負った上で 自らの便益より大きいということであれば 事業者が勝手にやればいいということになるが 結果的に潜在的なコストが国により補填されている状況で事業が行われているのであれば 経済的に効率的ではないということ 自分以外の人にコストを乗せて利益を得ているのがフェアではない 目的が経済的な費用 便益を越えて 国が関与すべきこととしてやっているのであれば 国税を使っているので そのことで追加費用がいくらかかるのか明示すべきではないか 松村委員利益だけで コストをつけ回す構造はやめるべき 大きなコストとして保険料対応 リスク対応ということがある 原賠法では無限責任だが 株主有限責任の下で 巨額な賠償が出ても賠償しきれないことが明らかになった 原子力委員会の技術等検討小委員会やコスト等検証委員会で共済という議論が出てきた 各事業者が一定の金額を 例えば 20 兆円 30 兆円という額を全体で積み立てて どこかで事故が起こればそこから払う 30 兆円の積み立てがあれば賠償金を他の人につけ回すということは尐なくなるのではないか
ポイント1 政策経費の加算立地交付金 ( 約 1278 億円 ) やもんじゅ等の研究開発費 ( 約 1402 億円 ) も含めて ( 約 3183 億円 ) コスト試算に上乗せ (3183 億円 2882 億 kwh=1.1 円 /kwh) P4 円 /kwh 10 5 5.9 円 原子力発電コストの徹底検証 ( コスト等検証委員会 ) エネルギー 環境会議のコスト等検証委員会では 従来の発電コストのみならず 事故リスク対応費用や CO 2 対策費用 政策経費などのいわゆる社会的費用も加味して各電源のコスト試算が行われた +1.4 円 +1.1 円 建設費等の上昇分 追加的安全対策 ポイント 2 事故リスク対応費用 ( 賠償 除染 廃炉費用 ) 福島原発事故による損害は 現時点で約 8 兆円 モデルプラントにあわせて補正し約 6 兆円 その場合 0.5 円 /kwh に相当 ただし 損害額は増える可能性があるため 下限として提示し 損害想定額が 1 兆円増えると 0.1 円 /kwh 上昇と記載 P5~6 ~ 8.9 円 ( 下限 ) 最低でも +0.5 円 +1.1 円 +1.4 円 5.9 円 損害額 20 兆円なら 10.2 円 損害額 10 兆円なら 9.3 円 現時点で判明している損害額は約 6 兆円 この場合 8.9 円 2004 年試算今回試算 (2011 年 12 月 19 日 ) 稼動年数 40 年 設備利用率 70%( 実績ベース ) 割引率 3% 第 5 回エネルギー 環境会議資料 1 より抜粋 3
ポイント 1 政策経費の加算について ( 政策経費の実績 ( 平成 23 年度予算 )( 億円 )) コスト等検証委員会では 事業者が直接負担する費用のみならず 電源立地地域対策交付金や将来の発電技術開発費 ( もんじゅ 等 ) も含めた国の政策経費についても コストとして勘案 原子力 石炭火力 LNG 火力 石油火力 一般水力 コーシ ェネレーション 小水力地熱太陽光 陸上風力 洋上風力 ハ イオマス 立地 1,278.0 51.7 60.6 15.5 95.9 0.0 0.0 1.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 防災 91.3 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 広報 ( 周辺地域 ) 広報 ( 全国 ) 10.9 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 30.9 0.6 0.7 0.2 0.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 人材育成 10.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 評価 調査 発電技術開発 将来発電技術開発 324.0 1.2 0.7 0.2 0.9 0.0 0.4 1.5 2.3 1.8 0.0 0.6 0.0 36.1 31.6 17.2 0.0 0.0 0.0 2.6 7.5 77.5 23.8 42.8 2.7 0.1 1,401.8 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 50.6 0.0 0.0 13.5 22.7 導入支援 0.0 0.0 0.0 0.0 8.4 20.3 130.1 33.1 673.4 439.7 0.0 187.8 90.8 資源開発 9.5 43.9 374.8 104.2 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 備蓄 1.0 0.0 0.0 14,241.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 CCS 0.0 44.3 29.8 7.6 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.1 0.0 小計 * 3,182.9 85.0 79.2 15.8 97.0 0.0 2.9 10.2 130.3 25.5 42.8 16.8 22.8 総計 3,193.4 173.2 483.7 14,368.7 105.4 20.3 133.1 43.2 803.7 465.2 42.8 204.7 113.5 * 導入支援 資源開発 備蓄 CCS を除く 色づけされたセルが 今回の試算において加算された政策経費 事業の一部に発電に関するものを含むが切り分けが困難な場合 全額を計上 燃料電池 出典 : コスト等検証委員会報告書 ( 平成 23 年 12 月 19 日 ) 4
ポイント 2 事故リスク対応費用 ( 損害想定額の見積もり ) 現時点で得られる最大限の情報を積み上げる形で検証が行われた 事故費用が確定していないこと等から 事故リスク対応費用は下限値として示された 追加的廃炉費用 損害賠償費用 その他 東京電力に関する経営 財務調査委員会報告 環境省予算資料 大島委員提案資料 原子力損害の判定等に関する中間指針追補 (2011 年 12 月 6 日 ) 9643 億円補正 1 3214 億円 4 億円 原子炉冷却等費用未計上分 12 億 9800 万円補正 1 4 億円 5 兆 8860 億円補正 2 4 兆 6722 億円 * 重複関係は明らかではないが 下限を見積もるという観点から 重複部分を最大に見積もると, 5707 億円 1667 億円 中間指針追補の追加分約 2100 億補正 2 1667 億円 内数 農地の除染費用 5775 億円補正 2 4584 億円 除染関連費用 1 兆 1482 億円 1081 億円 行政費用 9340 億 4900 万円 ( うち 6951 億 4900 万円が除染関連費用の内数 残りの 2389 億円のうち一度設立したり 知見を得てしまえば 次の事故時には同様のことを行う必要がないものを除いた 1361 億 3500 万円を計上 ) 補正 2 1081 億円 補正 1: 廃炉費用については出力に依存しないと仮定し 福島第一 1~4 号機の追加廃炉費用を汚染レベルの高い 1~3 号機の 3 基分で割って補正補正 2: 損害賠償費用のうち一過性の費用については出力とは関係なく計上し 毎年の費用についてはモデルプラントと福島第一の 1 号機から 3 号機までの出力の比で補正したもの補正 3: モデルプラントを前提として試算 904 億円 + 142 億円 発電施設の減損 (1016 億 9200 万円 ) 核燃料の損失 (448 億 5500 万円 ) 補正 3 904 億円 + 142 億円 合計 5 兆 8318 億円 現時点で推計不能とされている費目及び現時点で含まれていないことが明らかな費用 生命 身体的損害 政府による航行危険区域及び飛行禁止区域の設定に係る損害など政府指示にかかる損害 地方公共団体等の財産的損害 ( 除染関係 ) 高濃度汚染地域対策費用 中間貯蔵施設整備費用 最終処分関係費用 出典 : コスト等検証委員会報告書 ( 平成 23 年 12 月 19 日 ) 5
ポイント 2 事故リスク対応費用 ( 原子力損害賠償支援機構法の概要 ) 我が国の原子力損害賠償制度は 原子力損害賠償法に基づく損害賠償措置 ( 民間責任保険あるいは政府補償 ) と支援機構法に基づく相互扶助の仕組みにより 賠償額の多寡を問わず対応可能な枠組みとなっている 支援機構法においては 1 原子力事業者が 相互扶助 の考え方に基づき それぞれ資金を拠出し合って積立金として事故に備え 2 原子力事故による損害賠償額が積立金の額を上回る場合には 政府から交付国債による援助が行われる なお 政府が援助した額については 最終的に全ての原子力事業者によって負担されることとなる 国庫納付 政府 交付国債 支援機構 相互扶助の仕組み 資金交付一般負担金 + 特別負担金一般負担金 被害者 被害事業者 賠償 事故をおこした原子力事業者 原子力事業者 ( 電力会社等 ) 6
7 2. 原子力の技術の進化と安全性 ( 主なご意見 ) 榊原委員原発の位置づけを考える上で最も重要なことは 原子力発電の本質的な安全性をどう見極めるのか 二度と福島のような事故を起こさない確信をもてるのかどうか 日本の製造業に携わる者として 日本の技術は世界最先端にあることを確信している 福島第一は古い第 2 世代炉だが その後技術は改善している 技術面での進歩 成果に加えて 制度面での安全基準を強化することにより 原発のリスクを十分低いレベルにコントロールすることは可能と考えている 次回 安全性について科学的にしっかり議論したい 金本委員原子力を使い続けていくかについては 安全の話が最も重要 過酷事故の確率をどの程度にできるのかに尽きる 福島で 40 年に 1 回ということで起きたが 同じくらいの頻度で起きるとなると原子力は難しい 福島の原発は初期世代で古い技術を使っていた 色々な方からお聞きしていると 今の 3 世代や 3.5 世代炉の事故の確率は遙かに小さいはずだと
世界の発電用原子炉開発の進展 (1) 現行の発電用原子炉は 概ね第 2~ 第 3 世代炉 (2) 今後の次世代炉として 第 3 + 世代炉 (ABWR APWR 等 ) や第 4 世代炉がある 第 3 + 世代炉は 第 3 世代炉に対して静的安全系などより先進的な安全方策を導入 第 4 世代炉は 2030 年頃の実用化を目標として 第 4 世代原子力システム国際フォーラム (GIF:Generation IV International Forum) の場等で開発が進められている 開発目標 : 安全性 信頼性 持続可能性 核拡散抵抗性 核物質防護性 経済性 出典 : 第 4 世代原子力システム国際フォーラム HP 8
炉心損傷頻度 (CDF) と大規模放出頻度 (LRF)( 年間 ) 原子炉世代による事故発生頻度の違い 第 1 世代原子炉から第 3 世代原子炉への技術進展に伴い 事故発生頻度 ( 炉心損傷頻度 早期大規模放出頻度 ) は低減すると評価されている シビアアクシデントのマネジメントと緩和方策により 大規模放出の確率を尐なくとも 1 桁以上低下させることができるとされている (IAEA INSAG-12) 炉心損傷頻度と大規模放出頻度の原子炉世代による進化 第 1 世代第 2 世代第 3/3+ 世代 第 1 世代原子炉 1950~60 年代に開発された初期のプロトタイプ原子炉 第 2 世代原子炉 1970~90 年代に導入された商業用原子炉 第 3 世代原子炉 1990 年代から導入された さらに進化的な改良が入れられた原子炉 炉心損傷頻度 (CDF) 設計値 世代平均大規模放出頻度 (LRF) 設計値 世代平均 出典 :OECD/NEA, Comparing Nuclear Accident Risks with Those from Other Energy Sources, 2010. 原子力委員会原子力発電 核燃料サイクル技術等検討小委員会 ( 第 3 回 ) 資料より抜粋 9
10 改良標準化計画 改良標準化型原子炉 (ABWR APWR) について ABWR( 改良型沸騰水型原子炉 ) APWR( 改良型加圧水型原子炉 ) の開発は 日本における軽水炉技術の定着化を図るために実施してきた改良標準化計画の一環として 安全性 信頼性の高い軽水炉技術の確立を目指して実施されたものであり 従来型の BWR PWR に比して種々の改良設計を採用している ABWR の主な改良点 (1) 原子炉再循環ポンプを原子炉内に設置 ( インターナルポンプ採用 ) し 配管を短縮することで安全性 経済性を向上 (2) 原子炉圧力容器位置を下げることにより原子炉建屋を低重心化し 耐震性を向上 (3) 水圧方式と電動方式の 2 種類の駆動源を有する制御棒駆動システムを導入することで 安全性 信頼性を向上 APWR の主な改良点 (1) 炉心冷却を行う安全系の系統数を増やすことにより 安全系の多重性 独立性を強化し 安全性を向上 ( 非常用炉心冷却系を 2 系列から 4 系列 ) (2) 原子炉格納容器内に非常用水源 ( 燃料取替用水ピット ) を設置して 冷却材喪失事故時の再循環切り換えを不要とし システムの信頼性及び安全性を向上
( 参考 ) 日本の原子力プラントメーカーと最新鋭炉 は日本企業 ( 部品産業も含む ) が関与する炉型 100~120 万 kw 級 は既に建設実績がある炉型 130~170 万 kw 級 B W R ABWR メーカー東芝 日立 GE サイズ 135~150 万 kw 主な特徴インターナルポンプによる再循環系建設実績国内 4 基建設予定国内 3 基 台湾 2 基建設中 米国 2 基建設予定 ESBWR メーカー GE 日立サイズ 160 万 kw 主な特徴自然循環方式のシンプル構造 安全系のパッシブ化建設実績なし建設予定米国 6 基 イント 最大 6 基建設予定 P W R ATMEA1 メーカー ATMEA( 三菱重工 アレバ合弁 ) サイズ 100~115 万 kw 主な特徴パッシブ安全系の導入 柔軟な運転性建設実績なし建設予定ヨルダンに提案中 AP1000 メーカー東芝 WH サイズ 110~120 万 kw 主な特徴パッシブ安全系の導入 炉のコンパクト化建設実績なし建設予定米国 14 基 中国 4 基 インド最大 6 基建設予定 APWR メーカー三菱重工サイズ 150 万 kw 主な特徴大型化 炉心改良 パッシブ安全系の導入建設実績なし建設予定未定 EPR メーカー仏 ( アレバ ) サイズ 160 万 kw 主な特徴 4 重安全系建設実績なし建設予定フィンランド 1 基 仏 1 基建設中 米国 8 基 中国 2 基 インド最大 6 基建設予定 US-APWR EU-APWR メーカー三菱重工サイズ 170 万 kw 主な特徴 APWR の大型化 パッシブ安全系の導入建設実績なし建設予定米国 3 基建設予定 VVER1000/VVER1200 メーカーロシア ( ロスアトム ) サイズ 100~120 万 kw 主な特徴パッシブ安全系の導入建設実績ロシア 10 基 ウクライナ 7 基 アルメニア チェコ 2 基 スロバキア 3 基等 (400~1000 万 kw) 建設予定インド 2 基建設中 ベトナム 2 基 トルコ 2 基 インド最大 12 基建設予定 APR1400 メーカー韓国 ( ドゥーサン ) サイズ 140 万 kw 主な特徴パッシブ安全系の導入 低コスト建設実績なし建設予定 UAE4 基建設予定 VVER1500 メーカーロシア ( ロスアトム ) サイズ 150 万 kw 主な特徴パッシブ安全系の導入建設実績なし建設予定なし ( 中国やレニングラードで導入が検討されたが採用されておらず ) 11
12 3. 放射性廃棄物の処分について ( 主なご意見 ) 田中委員廃棄物が如何に安全に処分できるかについて もう尐し事務局で整理していただきたい 大島委員バックエンド費用については 原発の恩恵を受けているのは今の世代で 放射性廃棄物を全て押しつけられるのは次世代 現存世代が将来世代にツケを回すという意味で 社会的費用が非常に大きい
13 地層処分についての国際的なコンセンサス 地層処分については 人間の制度的な管理に頼ることなく 長期間にわたり廃棄物を人間の生活環境から安全に隔離できる最も現実的な方法である との国際的なコンセンサスがある (The Environmental and Ethical Basis of the Geological Disposal of Long-lived Radioactive Waste, OECD/NEA 1995) 深地層処分は 使用済燃料と高レベル放射性廃棄物を環境から長期間隔絶する上で 現在利用可能な最も有望で受け入れられた方法というのが世界的なコンセンサスである (Blue Ribbon Commission on America s Nuclear Future, Report to the Secretary of Energy, January 2012)
安全確保の考え方 1 地層処分を行う上での主な考慮事項 火山 活断層 侵食 わが国の地質環境 地下水の存在 人間と廃棄体との接近 安全性への影響の可能性 地下水による放射性物質の運搬 地層処分にとって安定な場所を選定 ( サイト選定 ) 対策 適切な多重バリアシステムを構築 ( 工学的対策 ) 人工バリア 隆起 侵食 気候 海水準変動 火山活動 処分施設 地震 断層活動 天然バリア ( 岩盤 ) 安全性の確認 多重バリアシステムの長期安全性を保守的に評価 ( 安全評価 ) 14
安全確保の考え方 2 人工バリアと天然バリアの役割分担 放射能の強い期間は人工バリアの力で放射性物質を封じ込める その後は天然バリアにより 放射性物質が人間の生活環境に影響を与えないようにする オーバーパックガラス固化体緩衝材岩盤 放射能の強い期間 ( 最低 1,000 年以上 ) 放射性物質を閉じ込める ガラス固化体の放射能濃度は製造時の約 3,000 分の 1 になる 放射性物質を閉じこめ 溶け出しにくくする 人工バリア 放射性物質と水の移動を低減させる 天然バリア 人間の生活圏から隔離する 処分施設閉鎖 1,000 年 1 万年 10 万年 100 万年 各々のバリアが機能する時間 15
安全確保の考え方 3 安全評価とは 将来に予想される変化や心配される状況を予測し モデルとデータを用いたシミュレーションにより評価する 将来の状態を言い当てるのではなく 安全性を判断するための材料を提供 シナリオ もし こんなことが起こったら? 地下水による放射性物質の運搬 人間と廃棄体との接近 隆起 侵食や気候変動等の自然変動 初期欠陥 モデルの構築 データの取得 実験や調査に基づく現象の理解 データの取得 地下水の動き方 熱 力の伝わり方 水と物質の反応の仕方等 評価 解析 ( シミュレーション ( 複数 )) 現象を表す数学モデルとデータを用いた評価解析 安全性の判断 安全基準 安全裕度を持たせたモデルやデータ設定 例えば オーバーパックの腐食速度は 時間の経過に伴い低下するが 評価では腐食速度は一定と仮定 放射性物質の地下水に対する溶解度も時間の経過とともに低下するが 評価では溶解度を一定と仮定 炭素鋼の腐食速度の経時変化腐食速度は 実際には時間の経過に伴い低下する 16
安全確保の考え方 4 超長期の不確実性への対処 将来に予想される変化や心配される状況の想定 ( シナリオ ) を評価し 地層処分の安全性を提示 安全性の評価で考慮するシナリオ 地下水シナリオ想定 : 地下水により放射性物質が処分場から人間環境に運ばれる 接近シナリオ想定 : 放射性廃棄物と人間との距離が接近することにより人間環境に影響が及ぶ 基本シナリオ想定 : 現在の地質 地表環境が将来まで継続 人工バリアが安全機能を発揮 変動シナリオ想定 : 天然現象 将来の人間環境 初期欠陥の影響 極端な場合の想定仮想的に 断層やマグマが廃棄体を直撃することを想定した評価を実施 基本シナリオ の想定条件に変化が生じた場合の想定隆起 侵食や気候変動等を考慮した評価を実施 超長期の不確実性が及ぼす影響を把握 17
安全確保の考え方 5 様々なシナリオの評価結果 標準的なケースに加え様々なケースで評価 各ケースの最大線量は諸外国で提案されている安全基準を下回る 地下水シナリオに対する最大線量の分布 Case #1: 標準的なケース ( レファレンスケース ) 千年後にオーバーパックが機能を失い 放射性物質が岩盤および断層破砕帯を移行して地表に到達したと仮定 ( 比較的厳しい結果が得られる条件を設定 ) 岩種 : 結晶質岩 ( 酸性 ) 地下水 : 降水系 GBI : 河川水 地形 : 平野 Case #2- #37: 標準的なケースから 条件 ( 岩種 地下水 GBI 地形等 ) を変えて評価 : 地質環境と生物圏とのインターフェイス ( サイクル機構,1999: 第 2 次取りまとめ総論レポートを基に作成 ) 18
最終処分積立金 高レベル放射性廃棄物等の最終処分については 実施に必要な処分費用を計画的に確保することが極めて重要であることから 電気事業者等が法 に基づき 最終処分の実施主体である原子力発電整備機構へ拠出金を納付している 拠出金の単価は毎年 国が見直しを行っている 法 : 特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律 ( 平成十二年六月七日法律第百十七号 ) 最終処分積立金の基本的スキーム 最終処分積立金の積み立て状況 金融 機関 電力 需要家 国債等購入定期貯金等 元金 利息 電力供給 ( 公財 ) 原子力環境整備促進 資金管理センター ( 指定法人 ) 最終処分積立金の管理 最終処分業務に確実に支出されたことの確認 拠出金の外部管理 電気料金 ( 一部が積立金原資 ) 拠出金の納付 積立金の取り戻し 原子力発電環境整備機構 ( 認可法人 ) 最終処分の実施 施設の建設 改良 維持等 概要調査地区等の選定 拠出金の徴収等 電力会社等 ( 発電用原子炉設置者等 ) 指定 監督 機構の実施計画策定国による承認 設立の認可 監督不測の事態への対応解散の歯止め 拠出金単価の決定 出典 :( 公財 ) 原子力環境整備促進 資金管理センターウェブサイト 国 ( 経済産業大臣 ) 基本方針の策定 最終処分の基本的な方向 関係住民の理解促進の為の施策等 最終処分計画の策定 最終処分を実施する時期 量 最終処分業務に必要な最終処分費 ( 単位 : 億円 ) 平成 17 年算定 平成 18 年算定 平成 19 年算定 平成 20 年算定 平成 21 年算定 平成 22 年算定 高レベル放射性廃棄物分 27,652 27,728 27,879 27,582 27,922 27,769 TRU 廃棄物分 7,439 7,506 7,637 7,548 合計 27,652 27,728 35,318 35,088 35,559 35,317 総見積額は法に基づき算定 最終処分積立金の積立て状況 TRU 廃棄物分については 平成 19 年の特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律の改正により制度化され 平成 20 年度から拠出を開始 最終処分積立金運用残高 ( 単位 : 億円 ) 平成 17 年度末 平成 18 年度末平成 19 年度末平成 20 年度末平成 21 年度末平成 22 年度末 高レベル放射性廃棄物分 4,236 4,999 5,763 6,498 7,394 8,201 TRU 廃棄物分 95 137 175 合計 4,236 4,999 5,763 6,592 7,530 8,375 19
再処理等積立金 核燃料サイクルの根幹をなす再処理等の事業は 極めて長い期間を要するとともに その費用が極めて巨額であることから 必要な資金を 安全性 透明性が担保された形で確保することが必要 そのため 電気事業者が法 に基づき 再処理等に必要な費用を積立てている 再処理等積立金の額は 事業者から届け出られた再処理等の費用を基礎として 国において算定している 法 : 原子力発電における使用済燃料の再処理等のための積立金の積立て及び管理に関する法律 ( 平成 17 年法律第 48 号 ) 再処理等積立金の基本的スキーム 再処理等積立金の積み立て状況 金融 機関 国債等購入定期預金等 元金 利息 ( 公財 ) 原子力環境整備促進 資金管理センター ( 資金管理指定法人 ) 再処理等積立金の管理 再処理等業務に確実に支出されたことの確認 指定 監督 再処理等積立金の積立て状況 平成 17 年度平成 18 年度平成 19 年度平成 20 年度平成 21 年度平成 22 年度 総見積額 126,850 126,873 127,038 118,958 121,308 122,516 積立金残高 10,384 12,479 15,682 18,389 21,443 24,416 平成 23 年度総見積額 : 122,237 億円 ( 平成 23 年 3 月に事業者から届け出のあった基礎資料より算定 ) ( 単位 : 億円 ) 電力 需要家 電力供給 電気料金 ( 一部が積立金原資 ) 積立金の積立て 再処理等費用の支出 積立金の取り戻し 電力会社 ( 特定実用発電用原子炉設置者 ) 再処理事業者等 再処理等の実施計画等の届出 積立額の通知 再処理等の実施計画等の届出 国 ( 経済産業大臣 ) 再処理等の事業を実施するための再処理等積立金法の立案 施行 総見積額は法に基づき算定 総見積額は六ヶ所再処理工場で再処理される使用済燃料 (32,000tU) に係る再処理等の金額 再処理等及び最終処分の費用については コスト等検証委員会による原子力発電コストの試算にも反映されている ( 原子力発電コスト 8.9 円 /kwh 以上のうち 約 0.5 円 /kwh ( 核燃料サイクルは現状モデル 割引率は 3% の場合 )) 出典 :( 公財 ) 原子力環境整備促進 資金管理センターウェブサイト 20
21 4. フロントエンドのリスクについて ( 主なご意見 ) 辰巳委員上流 ( フロントエンド ) のことも資源調達の現場の話から全部含めて 私達がエネルギーを使うことでどこかで悲しんだり泣いたり あるいは地球が傷められたりということがあってはならないので そのあたりのことも説明して欲しい 紛争鉱物の話などもあり ウランに限らず 鉱物を使うことに関して今は非常にシビアな目で見ている
22 ウラン鉱山採鉱における放射線被曝等について ウラン採掘により生じる選鉱くずやその流出管理 土地の修復 労働者の健康管理等については 各国政府が国際基準等を踏まえながら規制が行われている 例えば オーストラリア政府は ICRP (International Commission on Radiological Protection) の勧告に基づき 採掘等に関する放射線防護及び放射性廃棄物管理に関する実施 安全ガイドライン (2005) を制定 UNSCEAR( 原子放射線の影響に関する国連科学委員会 ) の報告によると ウラン鉱山採鉱を含む核燃料サイクル事業における平均実効線量は年々低下し 2000~2002 年においては 各工程とも自然線源からの公衆被曝 ( 年間平均実効線量 =2.4mSv) よりも低い値を示している 核燃料サイクルにおける年平均実効線量 =1.0mSv (2000-2002 年 ) 独立行政法人放射線医学総合研究所放射線防護研究センター酒井一夫 米原英典第 59 回原子力委員会資料第 1 号 UNSCEAR2008 年報告書 より一部抜粋
ウランの国別鉱山別生産量 国別生産量 (2010 年 ) 鉱山別生産量 (2010 年 ) 国名 生産量 (tu) % 1. カザフスタン 17,803 33.2% 2. カナダ 9,783 18.2% 3. オーストラリア 5,900 11.0% 4. ナミビア 4,496 8.4% 5. ニジェール 4,198 7.8% 6. ロシア 3,562 6.6% 7. ウズベキスタン 2,400 4.5% 8. アメリカ 1,660 3.1% 9. ウクライナ 850 1.6% 10. 中国 827 1.5% その他 2,184 4.1% World total 53,663 100.0% 鉱山名 ( 国名 ) 生産量 (tu) オペレーター 1. マッカーサーリバー ( 加 ) 7,654 Cameco(70%) 2. レンジャー ( 豪 ) 3,216 Rio Tinto(68%) 3. ロッシング ( ナミヒ ア ) 3,077 Rio Tinto(68.6%) 4. クラスノカメンスク ( 露 ) 2,920 ARMZ(100%) 5. アーリット ( ニシ ェール ) 2,650 AREVA(37.5%) 6. トートクドゥク ( カサ フ ) 2,439 AREVA(51%) 7. オリンピックダム ( 豪 ) 2,330 BHP Billion(100%) 8. ブデノフスコエ 2( カサ フ ) 1,708 U1(ARMZ)(50%) 9. サウスインカイ ( カサ フ ) 1,701 U1(ARMZ)(70%) 10. インカイ ( カサ フ ) 1,642 Cameco(60%) その他 24,326 World total 53,663 出典 :WNA Homepage ( 参考 ) オペレーターについて < > は生産量順位 (2010 年 ) Cameco( 加 ): 元カナダ国営企業 ウラン鉱山開発専業 <1 位 > AREVA: 原子力分野の幅広い事業を扱うフランス国営企業 <2 位 > Rio Tinto( 英 豪 ): 世界最大級の総合資源メジャー 鉄鉱石分野にも強い <4 位 > BHP Billion( 豪 英 ): 世界最大級の総合資源メジャー 銅 鉛分野にも強い <8 位 > ARMZ: ロシア国営企業 ウラン鉱山開発専業 <5 位 > 23
ウラン鉱山での労働環境や放射線影響について ( アクータ鉱山 ( ニジェール ) の例 ) ウラン鉱業所 ( 鉱石採掘, 製錬工場 ) 作業者の労働環境 放射線防御のための用具 ( マスク 放射線量計 ) はフランス人社員と同じ物を使用 職業訓練 安全教育 (1 回 / 月 ) 労働組合 社宅あり 病院 ( 最新医療機器装備 ) 定期健康診断あり 作業者への放射線影響 放射線の直接影響による疾病報告は過去になし 放射線被曝量については常時モニタリング実施 鉱山事業主の基準値は 18mSv/ 年以内であるが 14~15mSv/ 年を超過したところで被曝のない部署に配置換え措置を実施 採掘による残土の発生規模 製錬廃滓は年間約 15 百万 t( 乾燥重量 ) 排出 広さ 50ha の廃滓捨場に運ばれ 風浸食 雤浸食防止のため 定期的に浸食防止策を実施 工場廃液は年間約 860,000m3 で 自然環境下に廃棄されることはない 製錬工場の廃液および工場の使用済み工業用水は 処理後 11 面 総面積 65ha 総貯留容量 2.6 百万 m3 の廃液貯留池に運ばれ管理される 周辺環境への影響 鉱山事業主は周辺の水 土壌 大気について 定期的な測定 管理を実施 時間 空間的に目立った影響なし 住民の被曝量実績は自然放射線量を含め 規制値 1mSv/ 年に対し 0.6mSv/ 年以下 その他採掘企業の自主的取り組み 鉱山事業主は 国際社会や国の定める基準より 社内の安全基準をより厳しいものに設定 地域に対しては 地域代表者との間で定期的にミーティングを開催し 対話 合議による外部とのコミュニケーション強化に取組んでいる < 参考 > アクータ鉱山 ( ニジェール ):AREVA 社 ( 仏 )(34%) SOPAMIN( ニジェール国営 )(31%) 海外ウラン資源開発 (25%) ENUSA( スペインウラン公社 )(10%) が共同生産中 1978 年生産開始 定格生産量 2,300tU/ 年 ( 累積生産量 60,430tU) 推定埋蔵量 52,000tU 坑内掘 海外ウラン資源開発は 43.3% の製品引取権を保有 出典 :Rapport Environnemental, Social et Sociétal 2009 参画事業者からヒアリング 24
各電源における過酷事故について OECD の報告によると 化石燃料においては 採取 精製 転換 輸送等のフロントエンドにおける事故が エネルギーチェーン全体での事故のほとんどを占める OECD 加盟国に比べ OECD 非加盟国において事故被害が大きい 化石燃料 水力 原子力の各エネルギーチェーンで 1969~2000 年に発生した苛酷事故 ( 死亡者 5 名以上 ) OECD 加盟国 OECD 非加盟国 事故件数 死亡者数死亡者数 / 発死亡者数死亡者数 / 発 ( 人 ) 電量 (GW 年) 事故件数 ( 人 ) 電量 (GW 年) 75 2,259 0.157 1044 18,017 0.597 (819) (11,334) (6.169) 石油 165 3,713 0.132 232 16,505 0.897 天然ガス 90 1,043 0.085 45 1,000 0.111 LPG 59 1,905 1.957 46 2,016 14.896 水力 1 14 0.003 10 29,924 10.285 原子力 0 0-1 31* 2 0.048 エネルギーチェーン 石炭 ( うち 中国 (1994~99 年 )*1) ( 出典 :OECD2010 NEA No.6861 Comparing Nuclear Accident Risks with Those from Other Energy Sources ) 水力及び原子力については 全て発電過程での事故による死亡者数 エネルギーチェーンにおける各過程ごとの事故数の分布 精製 転換 1% 輸送 1% 石炭 発電 熱利用 3% 探査 採取 96% 発電 熱利用 1% 石油 探査 採取 15% 精製 転換 8% 発電 熱利用 5% 不明 11% 天然ガス 輸送輸送 76% 78% ( 出典 :OECD2010の主なデータソースであるPSI 1998 *3 を元に資源エネルギー庁にて作成 ) *3 Severe Accidents in the Energy Sector. Hirschberg S., Spiekerman G. and Dones R., 1998 (Paul Scherrer Institut) 探査 採取 6% *1 中国については 石炭データは中国石炭産業年鑑が入手できる 1994~1999 年についてのみ解析されている なお 2002~2009 年における中国の石炭採掘による死亡者数は平均約 5,000 人 / 年 ( 出典 :( 独 ) 新エネルギー 産業技術総合開発機構委託調査 世界の石炭事情調査 -2010 年度 - ) *2 事故直後の死亡者のみ 主な事故原因石炭 : ガス爆発 火災 落盤等による炭坑での事故石油 天然ガス : 交通事故 タンカー事故 パイプラインの不具合等による輸送中の事故 25