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1. のれんを資産として認識し その後の期間にわたり償却するという要求事項を設けるべきであることに同意するか 同意する場合 次のどの理由で償却を支持するのか (a) 取得日時点で存在しているのれんは 時の経過に応じて消費され 自己創設のれんに置き換わる したがって のれんは 企業を取得するコストの一

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2030年のアジア

Transcription:

金融資本市場 2016 年 5 月 26 日全 10 頁 期待される国際資金フローへの政策対応 システム上重要な新興国 を含むセーフティネットの拡大が急務 金融調査部研究員矢作大祐 [ 要約 ] 2016 年に入り IMF や G20 の場で国際資金フローに関する議論が行われている 背景には 2015 年以降の国際資金フローの変動に対する懸念がある 金融危機以降 主要新興国に流入していた資金フローは 2015 年に流出へと転換した 2016 年 3 月以降 資金流出は落ち着きつつあるように思われるが 未だ資金流出への懸念は燻りつづけている 現状 新興国は直面する資金流出に対応できる十分なバッファーを有しているものの 新興国と先進国の市場の連動性は時を追うごとに高まり 新興国に危機が発生した場合には 世界にスピルオーバーする可能性もある 新興国に対する国際資金フローの変化を巡って 国際社会はただ手をこまぬいているわけではない G20 や IMF において 資金フローの変動を直接的に抑制する資金フロー管理や 資金流出した際のバッファーとなるセーフティネットに関する議論が行われている 2015 年に大規模な資金流出が発生した中国は 本年 G20 の議長国として 資金フローの変動への政策対応について積極的な役割を果たしていることから 9 月に開催される杭州サミットに向けた議論の進展が期待されよう 新興国を巡る国際資金フローは転換点を迎えたのか 2016 年に入り IMF や G20 の場で国際資金フローに関する議論が行われている 背景には 2015 年以降の国際資金フローの変動に対する懸念がある 具体的には 経済成長の鈍化やコモディティ価格の低迷を背景に中国やサウジアラビアといった主要な新興国から大規模な資金流出が発生した これは 金融危機以降の先進国の金融緩和によって支えられた国際資金フローの構図 すなわち世界経済の原動力であった新興国に流入するという構図に変化が現れたことを意味する 本稿では 2015 年以降の国際資金フローの動向について主要新興国 1 を対象に分析 1 本稿で取り扱う新興国とは 2015 年のドル建ての名目 GDP 上位 20 カ国が対象 (IMF の World Economic Outlook のデータを基に選出 ) 具体的には 中国 インド ブラジル ロシア メキシコ インドネシア トルコ サウジアラビア アルゼンチン ナイジェリア ポーランド タイ エジプト 南アフリカ マレーシア コロンビア フィリピン パキスタン チリ UAE 株式会社大和総研丸の内オフィス 100-6756 東京都千代田区丸の内一丁目 9 番 1 号グラントウキョウノースタワー このレポートは投資勧誘を意図して提供するものではありません このレポートの掲載情報は信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが その正確性 完全性を保証するものではありません また 記載された意見や予測等は作成時点のものであり今後予告なく変更されることがあります 大和総研の親会社である 大和総研ホールディングスと大和証券 は 大和証券グループ本社を親会社とする大和証券グループの会社です 内容に関する一切の権利は 大和総研にあります 無断での複製 転載 転送等はご遠慮ください

2 / 10 を行うとともに 国際社会が検討している政策対応について概観したい 2015 年の新興国への資金フローは低迷 金融危機以降 年間 1,000 億ドルから 7,000 億ドル程度の資金流入が続いてきた新興国への国際資金フローは 2015 年に約 3,000 億ドルの資金流出へと転換した ( 図表 1) 国際資金フローの流出入を分類別で見ると 預金 現金や銀行借入等から構成されるその他投資が約 5,000 億ドルと大幅な資金流出となった また 株式や債券などの証券投資に関しては 2008 年の世界金融危機以来の資金流出 ( 約 600 億ドル ) へと転換した また 直接投資に関しては 依然として約 2,000 億ドルの資金流入となったが その規模は世界金融危機の影響を受けた 2008 年を下回った 次に 資金フローを国別で見ると 人民元安や経済成長の鈍化が懸念された中国からの資金流出の規模が圧倒的に大きい 次に続くのがロシア サウジアラビアといった石油産出国であった ( 図表 2) インドやブラジル メキシコ等 12 ヵ国の新興国は資金流入が継続しているが アルゼンチン エジプト UAE インドを除いた 8 ヵ国で流入規模が前年比 10%~ 70% 程度の減少となった 言い換えれば 2015 年の新興国への資金流入は分類や国を問わず 広い範囲で低迷したと言える このような資金フローの変化は 新興国通貨建ての資産に対する需要の減少から 新興国通貨の減価 或いは外貨準備の減少へと帰結した 例えば 2015 年末の新興国の対ドルレートは前年同期比で ほとんどが減価となった ( 図表 3) ただし 資金流出規模の大きかった国の中でも 中国 サウジアラビアに関しては 為替レートの変動幅が制限されているため大きく減価はしていない しかし 為替レートを安定化するために為替介入が必要であることから その介入原資である外貨準備に関しては大きく減少した 図表 1 新興国を巡る資金フローの推移 ( 億ドル ) 8,000 6,000 4,000 2,000 0 2,000 4,000 6,000 8,000 その他投資直接投資 流出超 2007 年 2009 年 2011 年 2013 年 2015 年 ( 注 ) ネットベース 証券投資合計 流入超

3 / 10 図表 2 国別の資金フロー (2015 年 ) ( 億ドル ) 2,000 0 その他投資直接投資 証券投資合計 流入超 2,000 4,000 流出超 6,000 中国ロシアサウジアラビアタイマレーシアポーランドナイジェリアフィリピンパキスタンチリ南アフリカトルコアルゼンチンインドネシアコロンビアエジプト UAE メキシコブラジルインド ( 注 ) 証券投資 直接投資 その他投資はすべてネットベース 図表 3 2015 年末の新興国通貨の騰落率 ( 対ドル 対 2014 年末比 ) と各国の外貨準備の増減率 ( 対 2014 年末比 ) ( 注 )UAE に関しては データ制約により省略 資金流出に伴う世界へのスピルオーバーリスクの高まりに留意が必要 新興国の資金フローを巡る論点は (1)2015 年の低迷は一過性のものなのか それとも継続的なものなのか (2) 継続的な低迷は新興国或いは 世界に危機をもたらすのか の2 点であろう まず (1) に関しては 新興国の資金フローは 2016 年 3 月以降落ち着きを取り戻しつつあるようにみられる 例えば 2016 年 4 月の新興国通貨の騰落率 ( 対 2015 年末比 ) を見ると 減価の規模が縮小 或いは増価傾向にある また 外貨準備に関しても若干の減少 或いは増加という状況にある ( 図表 4) しかし 足元の資金フローに関して 表面的には小康状態に見えるが 資金流出への懸念は

4 / 10 燻り続けている 2015 年に資金流出が発生した中国を例に挙げると 3 月以降外貨準備は横ばいで推移しているが 実際には中国当局が各銀行に対して外貨売りを要請しているとされ 外貨準備を用いずに為替介入を行っているようである 2 また 中国当局による資金流出に対する規制強化を契機に 中国の民間企業が香港からの輸入額の水増しを通じて 中国国内から資金を退避させている可能性もある ( 図表 5) このような状況下で 市場も引き続き人民元が減価するとの見通しを示している 例えば 中国当局による介入の手が及ばない人民元 / 米ドルのノン デリバラブル フォワードレート (1 年物 ) は 足元のスポットレートよりも 3% 弱の減価が見込まれている ( 図表 6) つまり 表面的には落ち着いているように見える現在においても 水面下では資金フローや外貨準備といったこれまでの指標では捉えることのできない資金流出の動きが存在していると言えよう 次に (2) に関しては 資金流出によって国内の外貨需要を賄う上で困難が生じた場合 バッファーの役割を果たす外貨準備が十分に用意されていれば 危機への耐性は強いと言える 例えば IMF は新興国の外貨準備の水準について 潜在的に資金が流出する可能性のある量に対して 100%~150% 程度の規模を維持していれば 適切と判断している 3 2015 年末時点の新興国の外貨準備の規模について IMF の判断基準を基に評価すると ロシア ブラジル タイ インド フィリピンに関しては適切な水準を大幅に上回る過剰保有 南アフリカ メキシコ チリ ポーランド インドネシア 中国 トルコに関しては適切な水準を保有 マレーシア アルゼンチン エジプトに関しては 適切な水準を下回る過小保有となっている ( 図表 7) 現時点において 大部分の国では潜在的な資金流出にして十分な耐性を有するということが指摘できよう 他方で 新興国に起きた危機が世界にスピルオーバーする可能性が高まりつつある点には留意が必要だろう 例えば 中国の上海総合株価指数と先進国 新興国の主要な株価指数の相関係数を見ると 時を追うごとに正の相関関係が高まっていることがわかる ( 図表 8) 特に それは他の新興国との間に限ったことではなく 先進国との間にも当てはまる 言い換えれば 中国といった新興国が直面する国際資金フローの変化は新興国の閉じられた内部の問題ではなく 先進国を含めて広く世界にも波及する可能性があることから 世界は無関心を装うことはできない 2 中国人民銀行は 国内の銀行に人民元買い ドル売りをするよう指示しているとされる ただし 国内の銀行はドル売りによって 為替変動リスクを抱えることになる そのため 国内の銀行は中国人民銀行に対して フォワードの買い持ち ( 中国人民銀行はフォワードの売り持ち ) を行う 結果的に 中国人民銀行のバランスシートには 4 月末時点で 289 億ドルのフォワードの売り持ちが計上されている 3 IMF は 過去の危機の経験を基に 潜在的な資金流出規模を (1) 輸出による外貨取得の減少 (2) 居住者による資金逃避 (3) 短期対外債務のロールオーバーリスク (4) その他の対外債務 ( 株式や債券等 ) からの資金流出 といった点を考慮し 算出する方法を考案している

5 / 10 図表 4 2016 年 4 月末の新興国通貨の騰落率 ( 対ドル 対 2015 年末比 ) と各国の外貨準備の増減率 ( 対 2015 年末比 ) 40% 20% 為替騰落率外貨準備増減率 0% 20% 40% アルゼンチンエジプトメキシコ中国サウジアラビアパキスタンインドナイジェリアフィリピンタイ南アフリカトルコポーランドロシアインドネシアチリコロンビアブラジルマレーシア ( 注 )UAE に関しては データ制約により省略 図表 5 中国の輸入総額の増減率と中国の香港からの輸入額の増減率 ( 対前年比同期比 ) 図表 6 中国人民元 / 米ドルのスポットレートとフォワードレート (1 年物 ) ( 元 / ドル ) 250% 200% 輸入額計 ( 前年同期比 ) 香港からの輸入額 ( 前年同期比 ) 7.0 6.8 ノン デリバラブル フォワード ( オフショア 1 年物 ) フォワード ( オンショア 1 年物 ) スポット 150% 100% 6.6 50% 6.4 0% 6.2 50% 6.0 100% 2011/1/1 2012/1/1 2013/1/1 2014/1/1 2015/1/1 2016/1/1 2007 年 1 月 2009 年 1 月 2011 年 1 月 2013 年 1 月 2015 年 1 月 ( 年 / 月 / 日 ) ( 出所 )Bloomberg より大和総研作成

6 / 10 図表 7 2015 年末時時点における外貨準備模の適切水準 400% 300% 外貨準備 ( 対潜在的な資金流出量 ) 200% 100% 0% ロシア ブラジル タイ インド フィリピン 南アフリカ メキシコ チリ ポーランド インドネシア 中国 トルコ マレーシア アルゼンチン エジプト ( 注 ) サウジアラビア ナイジェリア コロンビア パキスタン UAE に関してはデータ制約のため省略 図表 8 上海総合株価指数と主要株価指数の相関係数 0.5 インドBSEセンセックス ブラジルボベスパ 南アフリカFTSE/JSE 全株指数 ロシアRTS 米国 S&P 500 日本日経平均株価 英国 FTSEオールシェア ドイツDAX 欧州 S&Pヨーロッパ350 0.4 0.3 0.2 0.1 0.0 0.1 2013 年 2014 年 2015 年 2016 年 1 月 ~3 月 ( 注 ) 対前日騰落率の相関係数 国際資金フローの変化に対する政策対応は進展するか 資本フロー管理の導入 強化は慎重な検討が必要 新興国に対する国際資金フローの変化を巡って 国際社会はただ手をこまぬいているわけではない 本年 2 月以降 G20 や IMF において積極的な議論が行われている 具体的には 2016

7 / 10 年 2 月に上海で開催された G20 財務大臣 中央銀行総裁会議 ( 以下 G20 ) のコミュニケの中で 世界経済における現下の動向に鑑み 我々は より適時なリスクの特定を含め資本フローをよりよく監視し 各国の経験を踏まえ 巨額で変動しやすい資本フローから生じる課題に対処する上でとり得る政策手段及び枠組みについて現状評価を行い 適切に検証を行う ことが確認された 4 これは資本フローの変動自体を抑制するために 国内主体の対外投資の制限や 海外主体の対内投資最低保有期間の設定に代表される資本フロー管理の導入 強化という政策オプションを検討する ということを意味する また IMF に関しても これまでの資本フロー管理や資本の自由化に関連する政策について本年後半までに評価を行い その結果を基に 資本フロー管理や為替介入に関する手法に関して更なる検討を行う方針が公表されている なお 国際社会における資本フロー管理に関する議論は 今回が初めてではない 2012 年に IMF から公表された 資本フローの自由化と管理 に関する組織的見解 ( 以下 見解 ) の中で 資金流出に対する資本フロー管理は 危機的状況及び危機が差し迫った状況にのみ用いられるべきであり 健全なマクロ経済政策及び金融規制とともに実施すべき との認識が示されている これは 資本フロー管理は危機的状況以外の安易に利用するべきではなく 基本的なスタンスとしては 資金流出に対してマクロ経済政策の調整や金融規制といった金融セクターの健全性の強化を以て対応すべきことが意図されている 実際に 大規模な資金流出を経験した 2015 年の中国を例に挙げれば 過去に資本規制を導入した国と比較した場合 危機的状況にあるとは言い難い 5 経済大国である中国が資本フロー管理の強化に専心すれば (1) 本来必要であるマクロ経済政策の調整や金融規制の強化へのインセンティブが薄れることや (2) マーケットは中国当局が危機状態にあると認識しているのではないか との疑念を持ち 自己実現的に中国経済や世界経済に負の影響を与えることも考えられる 勿論危機と判断される場合には 資本フロー管理は有効な政策オプションであるとこれまでも認められているところであり 国際社会において更なる議論が行われることは歓迎すべきだが 資本フロー管理の導入 強化の判断自体は慎重に検討される必要があろう システム上重要な新興国 を含むセーフティネットの拡大が急務 国際資本フロー自体への対応という資本フロー管理に関する議論に加え 各国が危機に対応するために必要な資金を事前に用意しておくセーフティネットの改善も議論が始められている 例えば 2 月の G20 で IMF の分析を基に 4 月の G20 で議論を行うとの方針が示され 実際に 3 月には IMF からセーフティネットの現状に対する評価を行ったレポート ( 以下 IMF レポート ) が公表された 6 そもそも セーフティネットとは 各国が保有する外貨準備や 二国間通貨スワ 4 財務省 (2016) 20 か国財務大臣 中央銀行総裁会議声明 ( 仮訳 )(2016 年 2 月 26-27 日於 : 中国 上海 ) (http://www.mof.go.jp/international_policy/convention/g20/g20_160227.htm) 5 中国と過去に資本フロー管理を導入した国の比較に関しては 以下を参照 矢作大祐 (2016) 中国は資本規制を導入すべきか (https://www.dir.co.jp/library/column/20160314_010718.html) 6 IMF (2016) Adequacy of the Global Financial Safety Net

8 / 10 ップ ( 以下 バイスワップ ) リージョナルスワップ IMF による危機時の貸出等のグローバルセーフティネットといった 資金流出によって発生する国内の外貨不足を賄うための様々な資金源を指す セーフティネットの現状を概観すると 前述の通り 新興国の多くは適切な水準の外貨準備を保有している これに加え アジア通貨危機を契機としたチェンマイ イニシアチブに代表されるリージョナルスワップや 2008 年の世界金融危機に伴って設定された 6 ヵ国中央銀行による常設 無制限バイスワップ IMF の貸出資金基盤の増強等 セーフティネットは継続的に整備されてきたと言える ( 図表 9) IMF レポートの中でもこれまでのセーフティネットに関する国際的な取り組みに関して積極的な評価を行っている 他方で IMF は 過去に発生した危機の事例を基に各セーフティネットの課題を整理した上で 特にセーフティネットの断片化を問題視している ( 図表 10) 具体的には 危機が長期化あるいは地域 世界規模で発生した際に 無制限バイスワップを締結している先進 6 ヵ国は十分な資金が利用できるものの それ以外の国では セーフティネットへのアクセスに格差があると指摘している 例えば バイスワップに関して 大部分は利用期限が比較的短期に設定されていることから 危機が長期化した場合の利用には不向きである また リージョナルスワップに関しては そもそもアジア 欧州に集中するなど 分布にばらつきがあるとともに 地域レベルの危機が発生した場合には 十分な利用が可能か否かは不確実性が残る そして 資金流出による悪影響を防ぐために フレキシブルに利用が可能である外貨準備に関しても 危機から脱出するために必要となるマクロ経済政策等が自主的に行われなければ たとえ十分な外貨準備があったとしても 危機が長期化し 容易に枯渇することを指摘している 以上を踏まえれば 各国によってセーフティネットのアクセスに格差がなく 利用の際には危機から脱出するための政策等に関する条件が課される IMF 貸出の利点が強調されることになる ただし IMF 自身も認めているように 貸出までにかかる時間の長さや 過去に借入をした国が厳しい条件を課された結果 IMF 貸出の利用に難色を示すこと ( スティグマ ) が存在するといった点で 課題も残る そのため IMF レポートの中では 今後 IMF の貸出枠組みの改善がセーフティネットの強化の中核的な目標として取り上げられている IMF の貸出枠組みの改善という結論は IMF 自身が Lender of last resort ( 最後の貸し手 ) としての責務を全うするための自身の目標とも言える 他方で 貸出枠組みが改善されたとしても 欧州債務危機のような巨額の資金が必要となった場合には IMF のみの支援では限界があろう 結果的に IMF の貸出資金基盤を強化する必要が出てくるが 2010 年に決められた IMF 第 14 次増資が米国議会の承認を得るまでに約 5 年かかったことを踏まえれば 容易ではない 加えて IMF の支援は各国の要請に基づくものであり 各国の当局が改革を断行できる政治的な基盤を維持することも必要となる IMF からの借入を受けるために 各国当局は年金改革や増税等痛みの伴う改革を継続的に行わざるを得ないが ギリシャのように経済危機が長引いた場合には改革疲れが発生し 政権交代等によって当局が改革を継続できないような状況も発生する 以上を踏まえれば セーフティネットの強化に関して 国際社会は IMF 貸出枠組みの改善に注 ( https://www.imf.org/external/np/pp/eng/2016/031016.pdf)

9 / 10 力するだけでなく バイスワップやリージョナルスワップなど様々なセーフティネットの改善も押し進める必要があろう 例えば 本年 2 月にラガルド IMF 専務理事が講演の中で 新興国は貿易 金融等において米ドルに代表される国際通貨を利用しているが 先進 6 ヵ国のような無制限バイスワップへのアクセスはなく 結果的に外貨準備に依存せざるを得ないことを指摘している 言い換えれば IMF の貸出枠組みを補完するセーフティネットの具体例として 先進 6 カ国の無制限バイスワップの適用範囲を拡大することが一案として考えられる IMF レポートの中で 国際貿易 金融において重要な役割を果たす中国やブラジル等に関して システム上重要な新興国 と定義している 少なくとも これらの システム上重要な新興国 に関しては 無制限バイスワップへのアクセスを拡大することは 資金フローの変動による影響を他の新興国や世界にスピルオーバーさせない上でも有用と考えられよう 7 その意味では 大規模な資金流出を経験した中国が 資金フローの変動やセーフティネットに関する動きを活発化させていることは注目に値する 例えば 中国当局は G20 に 2011 年以来 5 年ぶりとなる国際金融アーキテクチャー作業部会を再設立し 12 月 ~4 月にかけて計三回の会議を開催している 主要なテーマは資金フローやセーフティネットであり 本年 9 月に開催される G20 杭州サミットにおいて進捗報告がなされるものと想定される また 本年 4 月には周小川中国人民銀行総裁とルー米国財務長官が米中金融協力に関する議論を行っている 6 月の米中戦略経済対話において セーフティネットに関する両国の協力の進展も期待されよう 図表 9 2015 年末時点におけるセーフティネット 外貨準備 ( 億ドル ) 合計 ブラジル 中国インドロシア南ア ASEAN -5 トルコ メキシコ 韓国 ユーロ圏 日本英国米国スイス 81,610 3,565 33,459 3,521 3,684 458 6,861 1,280 1,767 3,680 3,339 12,071 1,190 1,065 5,670 二国間スワップ ( 代表例 ) 6 カ国中央銀行 ( カナダ銀行 イングランド銀行 欧州中央銀行 米国連邦準備制度 スイス国民銀行 日本銀行 ) による常設 無制限スワップライン ( 一部資金提供に関する条件あり ) 中国当局と各国当局との人民元バイスワップは約 5000 億ドル ( 韓国 欧州 シンガポール等と締結 ) 合計 ESM FLAR EFSD EU BOP only 地域間スワップ ( 代表例 )( 億ドル ) NAFA CMIM BRICS CRA AMF SAAR C 11,723 7,360 90 85 560 90 2,400 1,000 118 20 グローバルセーフティーネット 2,800 億ドルの SDR が IMF 加盟国に配分されており 自由に利用可能 IMF が支援を行うための資金基盤として 6,600 億ドル ( クォータ ) が存在 ( 注 )ASEAN-5 には タイ インドネシア シンガポール フィリピン マレーシアが含まれる ( 出所 )IMF Haver Analytics 日本銀行 中国人民銀行より大和総研作成 7 システミック上重要な新興国 とは ブラジル 中国 インド メキシコ ロシアが挙げられる これに加え 危機を伝播させる国 として ブラジル 中国 パナマ 南アフリカ トルコを取り上げている

10 / 10 図表 10 既存のセーフティネットに対する IMF の評価 外貨準備バイスワップリージョナルスワップ IMF 規模 カバレッジ予測可能性利用に至るまでの速度信頼性コスト政策 危機が発生した場合のファイナンシングギャップを既存のセーフティーネットで埋めることが可能か 先進国は既存のセーフティーネットが完全に利用可能であれば 規模 カバレッジともに十分 新興国は既存のセーフティーネットが完全に利用可能であっても ギャップを埋めることはできない セーフティーネットは利用可能か 利用条件は予測可能か 最も利用しやすい ( 利用の目的や規模も自由に決めることができる ) 長期の危機には外貨準備が不足する可能性 外貨準備を利用しすぎると 外貨準備が不足するとの懸念を惹起させうる 特段の政策を課さない 先進国のバイスワップは利用しやすい その他のバイスワップは期限があるため 将来的に利用可能かは不確実 迅速にセーフティーネットを利用することが可能か 最も迅速に利用可能 不完全な為替レートやファンダメンタルズが低迷している国は 外貨準備だけではボラティリティに対抗できない バイスワップが締結されていれば いつでも利用可能 ただし スワップ通貨が国際通貨でない場合には 交換が必要 危機時にセーフティーネットを十分な期間で利用可能か バイスワップは通常短期間の利用を想定 バイスワップを締結するために 条件を満たす必要があることから 政策を課すことが多々ある アジア 欧州に集中しており 他の地域では利用は制限される 多くは利用された経験がないため 実際に利用可能かは不確実 地域 制度によってそれぞれではあるが たいていは貸出条件を決めるまでに時間がかかる 地域全体が危機に陥った場合には 十分な期間で利用可能とは言い切れない セーフティーネットを利用する際に係る金融 政治的なコストは高いか 外貨準備は流動性の高い資産で保有する必要があるため 多くなればなるほどコストがかかる 低利で利用できることから コストは最も低い 外貨準備よりも金融コストは少ない 政治的なコストも IMF よりは少ない 地域 制度によって様々 (EU は包括的な貸出条件があり CMIM や BRICS CRA は IMF の政策に依拠する ) 中国のように国内の要因からバイスワップを締結 その他の制度には 政することもあり その場合策を課さない場合が多いには セーフティーネットとしては有用ではない IMF の加盟国であれば利用可能 それぞれの貸出制度によって金額の上限やその他の条件が存在 プレコーショナルな貸出制度であれば 迅速に利用可能 通常の貸出制度(SBA) であれば 貸出条件を決めるまでに時間がかかる 他のセーフティーネットよりも信頼性は高いが 完全に期間を保証できるわけではない 貸出期間中に貸出条件を満たしているか 確認が必要 金融コストは低いものの 政治的なコスト ( スティグマ ) は高い セーフティーネットを利用する際に 対内外インバランスを抑制 / 解決するための政策を課すか 貸出の条件として 様々な政策が課され 定期的に確認される 危機が終わった後も その後の政策に関してフォローされる ( 出所 )IMF(2016) Adequacy of the Global Financial Safety Net より大和総研作成