血液の流れと血圧の基礎知識を学ぼう! 福井 一也 死因順位 ( 平成 20 年動態統計から ) 循環器系の死因 (27.0%) 1
身体全体をめぐる血管網 人体は約60兆もの細胞で構成 神経細胞 身体全体をめぐる血管網 総延長距離10万kmの旅路 地球の約2週半 約60兆の細胞へ 血液は栄養と酸素を全身の細胞に供給 細胞からは老廃物と二酸化炭素を血液へ 2
様々な血管網 手の血管網 肝臓の血管網 血管の全景と太さ 頚動脈 頚静脈 鎖骨下動脈 大動脈 腹部大動脈 大腿動脈 3
血管を観てみよう 大動脈の血管壁 細動脈の平滑筋 自律神経 毛細血管 毛細血管 血液の循環経路 全身の血液量は? * 体重の1/13( 約 7.7%) 血液 l = 体重 kg 0.077 例 : 体重 60kgの人 60 0.077 = 4.62l 1 分間 左心室からでる血液量は? * 約 3.5l~5.0l 安静時心拍数 60~80 回位 左心室からでる 1 回の血液量 = 約 60cc 4
心臓の動きと血圧を支配するもの 自律神経系 ~2つの神経 ~ 交感神経 ~アクセルの役割 ~ ノルアドレナリンの作用により 心臓 心筋の収縮力強 心拍数増加 細動脈 血管収縮 血圧の増加 副交感神経 ~ブレーキの役割 ~ アセチルコリンの作用により 心臓 心筋の収縮力弱 心拍数減少 細動脈 血管拡張 血圧の減少 ホルモン ~ 極微量ではたらく生理的活性物質 ~ 昇圧にはたらく主なホルモン 1 アドレナリン 副腎髄質から分泌 2 レニン ~ ( 腎臓への血流量が減少をャッチ ) 腎臓から分泌 3バリプレッシン ( 抗利尿ホルモン ) 脳下垂体から分泌利尿作用を妨げ 血管を収縮 4 鉱質コルチコイド ( ステロイドホルモンの一種 ) 5 糖質コルチコイド 心臓の収縮力と細動脈の収縮 副腎と交感神経を刺激 副腎皮質から分泌腎臓で Na 水の再吸収と K の放出 副腎皮質から分泌 レニンの分泌を促進 6 甲状腺ホルモン甲状腺から分泌交感神経を活性亢進 降圧にはたらく主なホルモン腎臓でナトリウム放出を利尿促進 血管を拡張 1 心房性 Na 利尿ペプチド ~ 心臓から分泌 2キニン ~ 肝臓から分泌 3プロスタグランジン ~ 腎臓から分泌 心臓の動きと血圧を支配するもの 自律神経とホルモンをあやつる司令塔は? 視床下部 ~ 生命維持機能に関る中枢 ~ 脳は大脳 間脳 中脳 小脳 橋 ( 後脳 ) 延髄( 脳髄 ) からなる視床下部は間脳にあり 小さなブドウの粒の大きさ重さは脳の総重量の0.3% 自律神経機能 内分泌( ホルモン ) 機能の制御 5
全身の血液量体重の 1/13 (7.7%) 1 回に出る血液量 60cc 1 分間の血液量 = 60cc 心拍数 動 脈 血 圧 血圧を支配 脳からの指令自律神経ホルモン 2cm 1 秒間に 11~16cm 5mm 1.5~2.7cm 5~9mm 大動脈 動 脈 1 秒間に 63cm 20~ 50cm 130~ 85mmHg 厚さ 2mm 血圧計はここの血圧を測定 静脈 0.2~0.5mm 0.1~ 0.007mm 細動脈 毛細血管 5cm 0.05~ 0.1cm 35mmHg 15mmHg 厚さ 0.03mm 厚さ 0.0015mm 腎臓 各細胞 物質を交換する 1 日 180 l の血液が流れて体に不要な物質を選別して 1800cc の尿に 1 2 3 4 酸素と二酸化炭素の交換酵素 ホルモン栄養素とミネラルの供給老廃物の排出 血圧とは? 血液が血管を流れるときに血管の壁に与える圧力 血圧 = 心拍出量 血管抵抗 ( 弾力性 ) = 心拍数 1 回拍出量 血管抵抗 ( 弾力性 ) 血流量増加 圧力増加 血圧の単位は? mm Hg 化学記号 水銀 水銀を何 mm 押し上げるかという形で表そうという圧力の単位 最高血圧とは? 心臓が収縮して血液を送るとき 血管に加わる最大の圧力 最低血圧とは? 心臓が拡張した時 血管が元の太さに戻りながらかかる最小の圧力 6
平均血圧と脈圧の考え方 最高血圧 血圧の最高点 最低血圧 血圧の最低点 2 つの血圧の差 脈圧 平均血圧 常に 動脈にかかっている圧力の平均的な値 最高血圧と最低血圧の2つの指標を1つにまとめた値 計算式 平均血圧 = ( 最高血圧 - 最低血圧 ) 3+ 最低血圧 上腕の血圧の波形 平均血圧と脈圧で何がわかるの? 血管壁が硬くなっているか動脈硬化が進んでいるかを見ようとしたもの平均血圧 心臓より遠い血管 ( 細動脈や毛細血管 ) の指標脈圧 心臓より近い大動脈や動脈の指標基準値 分類 至適 正常 正常高値 軽度 中度 重度 脈圧 40 40.1~45 45.1~50 50.1~60 60.1~70 70.1 以上 *50 歳代以上で下の最低血圧が低下してきたときは要注意! 分類 正常 軽度 中度 重度 平均血圧 90 以下 90.1~100 100.1~110 110.1 以上 左右の血圧の差で何がわかるの? 左右の血圧差 10mmHg 以下 問題なし左右の血圧差 20mmHg 以上 大動脈に動脈硬化による狭窄や動脈瘤などの異常がある可能性あり 7
血圧水銀圧圧( 水水銀圧を水圧の高さに変えてみよう 変換するためのヒント 比重水銀 13.5458(20 ) 13.55 水 2m44cm 水銀 )180mmHg 血圧動脈高水 1m76cm 水銀 130mmHg 正常血圧水 0.99823(20 ) 1 落差 95mmHg (1m28cm ) 水銀 35mmHg 水 細動脈 落差 145mmHg ( 1m96cm ) 47.4cm 水銀 15mmHg 全血比重 ( 正常値 ) 各細胞でいろいろの物質が出入りできる血流速度にするため毛細血管の圧は誰でも一定 水 20.3cm 毛細血管 男性 1.052 ~ 1.060 女性 1.049 ~ 1.056 細動脈への圧が高い血管がふくらんだり キズついたりして 動脈瘤がでたり 血栓ができやすい 脳の細動脈は特に弱い! 危険因子高血圧症をもたらす危険因子と合併症高1 本態性高血圧 a 遺伝的等によるもの b 環境影響によるもの c 生活習慣によるもの 塩分の過剰摂取 肥満 ストレス タバコ アルコール 運動不足など 2 二次性高血圧 腎臓病 内分泌性高血圧など他の病気が原因によるもの 主な合併症 1 脳血管障害 2 心臓障害症3 4 脳卒中 ( 脳梗塞 脳出血 くも膜下出血 ) 血管性痴呆症など 虚血性心疾患 狭心症 心筋梗塞 心肥大心不全など 腎臓障害 腎動脈閉塞 蛋白尿 慢性腎臓病 (CKD) 腎不全など 血管障害動脈瘤 解離性大動脈瘤 閉塞性動脈硬化など 8
血圧の日内変動リズム 自律神経が大きく関与 朝から日中まで 活動状態 交感神経が優位 血圧が高くなる 夜から睡眠中まで 休息状態 副交感神経が優位 血圧が低くなる a. 遺伝的などによるもの < 血圧と遺伝 > 高血圧になる体質を子供が持つ確率 両親とも高血圧の場合 1/2 (50%) 親のどちらかが高血圧の場合 1/3 (33%) 両親のどちらも高血圧でない場合 1/20 ( 5%) 遺伝とのかかわりを知り 生活習慣の予防に気を配ろう! 9
< 血圧と年齢 > 平均血圧 脈圧の増加 血管抵抗の増加 ( 弾力性の低下 ) 1 老化による血管壁の硬化 2 動脈硬化が進んでいる 年齢の増加 最高血圧の増加 最低血圧の 60 歳からの低下 b. 環境影響によるもの < 血圧と季節変動 > 高温である夏 体温を下げる為 末梢血管が拡張 血圧は低下 寒冷温である冬 体温を上げる為 末梢血管が収縮 血圧は上昇 夏と冬の差 約 10mmHg 差 環境温度と収縮期血圧 ( 最高血圧 ) の 24 時間変動 10
< 血圧と気圧 > 高気圧がきているとき 大気圧の影響 聴覚を介して交感神経が敏感に刺激 血管や他の臓器が圧縮心拍数はやや増加 血圧もやや上昇 低気圧がきているとき 大気圧の影響 聴覚を介して副交感神経が優位に 血管や他の臓器が膨張心拍数はやや低下 血圧もやや低下 < 血圧と気圧 > 高齢者や一部の気圧変動に敏感な人 心機能 循環機能の低下した人など 気圧 1016hpa が一番安定している 気圧 10hpa 下がると循環器系に影響を及ぼすことがある 又 気温が 10 以下のときは要注意! 高齢者や心筋梗塞後の人は特に気を付けるように! 11
c. 生活習慣によるもの < 血圧と塩分 > 注目される塩分の何が血圧に悪いのか? 塩を化学式で表すと塩化ナトリウム ( Na Cl ) ナトリウム 塩素 < 血圧と塩分 > ナトリウムの役割 1 大部分が細胞外液と骨に存在 2 カリウムと手を組んで細胞内外の物質の交換や水の調整おこなう 3 細胞内外の浸透圧 ( 濃度 ) の調整し維持する 4 ph の調整 5 神経や筋肉の伝達物質など ナトリウムポンプ ~ 調整機能 ~ 細胞で作り出されたエネルギーで カリウム 取り込み ナトリウム 排出 濃度と一定に保ち 機能を維持する 12
< 血圧と塩分 > ナトリウムの過剰摂取 ナトリウムポンプの機能低下 血液中のナトリウム上昇 細胞内のナトリウム濃度上昇 細胞の機能維持ため 水が細胞内へ 細胞の膨張 血圧の上昇 脳へ刺激伝わる のどが渇く 水分を補給する 血管の細胞に起これば 血管が膨張し 空洞が狭まる 腎臓への負荷 ナトリウム 1 日排出量の限界 約 9.9g( 塩分換算 25g) 血管に水分が入り込む 血管内の圧が上昇 高血圧へ < 血圧と塩分 > 必要摂取量と目標値 ナトリウムの1 日推定平均必要量 (18 歳以上 ) 600mg(0.6g) 身近な食塩ではどれくらいの量? 食塩相当量 = ナトリウム量 (g) 2.54 食塩 1.5g = 0.6g 2.54 目標値食塩 6g/ 日以下 高血圧の方が 1g 減塩すると 最大血圧 約 1.2mmHg 最小血圧 約 0.6mmHg 血圧 低下 13
< 血圧と肥満 ( 体重 )> 肥満になるとどうなるの? 肥 満 皮下 内臓組織に脂肪として貯蓄 肝 臓 ブドウ糖を細胞内に取り込むエネルギーに余分なエネルギーは脂肪に インスリンの増加 腎 臓 食 交感神経刺激 事 体重が増えた分細胞に栄養と酸素が必要 毛細血管が多くなり 心臓からの距離が長くなる 余分なブドウ糖を中性脂肪に 血液中の中性脂肪増加 ナトリウム排出抑制 血液中の水分量増加 心拍数増加細動脈収縮 血流量の増加血液を送り出す心臓の負担増 血液がドロドロに 心臓の肥大化 血圧上昇 < 血圧と肥満 ( 体重 )> 目標値標準体重に! * 成人と子供とでは標準体重の出し方が違うので注意 体重 1kg 減少で最高血圧 1.6mmHg 減少 肥満は高血圧だけでなく 心疾患 脳血管障害などの循環器系疾患 糖尿病などさまざまな病気を誘発する恐れがあります 急激なダイエットではなく 無理のない方法で 14
< 血圧と運動 > 運動をすることで何が血圧低下を作用させるのでしょうか? 1 心臓から HANP( 心房性ナトリウム利尿ペプチド ) というホルモンが分泌 軽い運動でも分泌される H A N P ホルモンの作用 1. 腎臓からナトリウムの排泄促進 2. 血管の拡張 血圧 低下 2 血圧を下げるプロスタグランジンやタウリンが増える 3 血圧を上げる下記のホルモンの分泌抑制 カテコールアミン バソプレシン アルドステロン レニンなど 4 長期間の運動の継続によるカロリー消費による体重減少 ( 内臓脂肪の燃焼 ) < 血圧と運動 > どのような運動がよいのでしょうか? 有酸素運動 ~ 呼吸をしながら運動 ~ 20 分から30 分以上連続する運動がよく少し 汗ばむ程度がよい例えばウォーキング ジョギング 水泳 サイクリングなど 運動習慣による血圧の低下の程度は? 長期間で少なくともほぼ毎日 30 分程度の早歩きの歩行により 最高血圧 7~10mmHg の低下 下記の方は主治医と相談の上 運動を! 腎臓病 心臓病 高血圧 糖尿病など治療を受けている人 15
< 血圧と喫煙 > 正常血圧者における喫煙の血圧 心拍数への急性効果 < 血圧と喫煙 > タバコが血圧を上げる原因は何でしょうか? 1 一酸化酸素による酸欠不足 赤血球の増加 心拍数 血流量の増加 血圧上昇 血栓を起こしやすい 2 酸化物質 ( 酸化 LDL-cho など ) による血管内壁の損傷 血小板によってふさがりやすくなる 血栓や動脈硬化 血圧上昇 3 ニコチンによる交換神経を刺激 心拍数増加 細動脈の収縮 血圧上昇 1 本吸う 約 20mmHg 血圧上昇 16
< 血圧とお酒 > 1 日摂取量 30ml 以下 血圧低下 30ml 以上 血圧上昇 人種 性別からみたアルコール摂取量と血圧との関係 単位アルコール摂取量 1 = 15ml < 血圧とお酒 > 高血圧の人が酒を飲んでいるときと 酒を控えたときの 24 時間血圧 17
臓で分解水と二酸化酸素肝< 血圧とお酒 > お酒の何が血圧を左右させるの? 血液中のエタノール ( アルコール ) 心拍数上昇 血管収縮 交感神経を刺激 アセトアルデヒド ( 毒物 ) 大量すぎると血液中へ 血管を拡張し 血圧低下 頭痛 吐き気 二日酔いなど 節酒目標と血圧の低下の程度は? 男性 1 日 30ml 以下女性 1 日 15ml 以下のアルコール制限 動脈硬化の抑制 HDL コレステロールの増加 血圧 約 5mmHg の低下 < 血圧とストレス > 物理的な要因生物学的な要因社会的な要因 ( 寒さ 暑さ 騒音など環境要因 ) ( 過労や睡眠など生活習慣要因 ) ( 職場 家庭等での不安や緊張など要因 ) 精神的 身体的ストレス急性慢性 一時的に 交感神経が活発になりドキドキ心臓が早くなったりする 交感神経や副腎皮質などからのホルモンのはたらきにより持続的に活性化 血圧の上昇 ストレスを上手に解消! ゆとりのある規則正しい生活習慣趣味をもつことや日常生活を工夫気持ちの切り換え方を習得すること 18
血圧を測定してみよう! 血圧測定 医療環境下血圧 ( 診察室血圧測定 ) 非医療環境下血圧自由行動下血圧測定 (24 時間血圧測定 ) 家庭血圧測定 血圧測定機器の種類 水銀血圧計アネロイド血圧計電子血圧計 * 上腕式タイプは精度が高い 家庭血圧の測定方法 測定条件 朝 晩 ~ 環境 社会的などの影響が少ない朝の測定が望ましい 起床 1 時間以内排尿後 朝の服薬前 朝食前 就寝前 共通静かで適当な室温環境背もたれつきのイスに足を組まずに座って数分安静後測定前の喫煙 飲酒 カフェインを摂らないこと入浴 ( シャワー含む ) 前であること 19
測定法と注意点 a. 上腕に巻く カフ ( マーシェット ) の位置は心臓の高さに合わせる * 約 10cm 前後することによって 血圧に7mmHgほどの上下のずれが生じるため b. 厚手のシャツ 上着からカフを巻いてはいけない c. たくし上げて上腕を圧迫してはいけない d. 急速にカフを加圧する ( 水銀血圧計 アネロイド血圧計 ) e. カフ排気速度は2~3mmHg/ 秒で ( 水銀血圧計 アネロイド血圧計 ) f. 心臓に近い右腕で測定 測定回数 1 機会 2~3 回 ( 多くの回数を求めないこと ) Ⅰ 度高血圧 ( 軽症高血圧 ) Ⅱ 度高血圧 ( 中等症高血圧 ) Ⅲ 度高血圧 ( 重症高血圧 ) 20