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平成 26 年度 4 年生泌尿器科講義 ( 平成 26 年 6 月 16 日 ) 尿路結石症 (Urinary Calculous Disease,Urolithiasis) Ⅰ 定義と概念 : 尿中成分から形成された尿路の結石 上部尿路結石 ( 腎実質 腎杯 腎盂 尿管 ) と JCHO 北海道病院副院長 ( 泌尿器科 ) 広瀬崇興 下部尿路結石 ( 約 4%: 膀胱 尿道 ) に分類 Ⅱ 原因 : 非特異的な成因が多い 地球温暖化により結石患者数が増加? 食事では 偏った欧米化食生活 高蛋白高脂肪食 ( 内臓脂肪 インスリン抵抗性 尿の酸性化 高シュウ酸尿 ) などが原因で動脈硬化と同様に生活習慣病の一つ 薬物では Ca 製剤 ダイアモックス ( 緑内障薬 ) ステロイド ビタミン D 製剤 ユリノーム ( 痛風薬 ) ケイ酸 Mg( 胃腸薬 ) 抗 HIV 薬の一部 などが原因 その他 内分泌や代謝異常 ( 原発性上皮小体機能亢進 クッシング症候群 腎尿細管性アシドーシス 特発性 Ca 尿症 高尿酸尿症 シスチン尿症 高シュウ酸尿症 ) の原因は 10 20% ストレスによる活性酸素がシュウ酸 Ca 形成促進 長期臥床 肥満も原因になる Ⅲ 疫学 : 本邦の上部尿路結石の初発の年間罹患率 /10 万人 : 男は 1965 年 64 人 1995 年 118 人 2005 年 192 人 女は 1965 年 24 人 1995 年 46 人 2005 年 79 人と上昇中 ( ここ 40 年間で約 3 倍に増加した ) 初発年齢は男女とも 40 歳代で最頻だが それはなお上昇傾向である 生涯罹患率は米国より低いが男 15% 女 7% ( テストステロンが肝を介し 尿中シュウ酸排泄促進 ) 再発率は 5 年以内に 50 %( 特に予防しない場合 ) 結石患者は 男性肥満 (BMI 25%) を 40% 女性肥満を 25% 高血圧を 22% 糖尿病を 10% 高脂血症を 14% 合併し それらは日本人平均より高いため 尿路結石はメタボリックシンドロームの一疾患と言える Ⅳ 自覚症状 : 疼痛 ( 激痛 ) 血尿 ( 肉眼的 顕微鏡的 ) 吐気など 腎実質 腎杯結石 : 自覚症状は軽度か無い 腎盂尿管移行部結石 : 患側の背部痛 ( 激痛 ) 尿管結石 : 部位により患側背部から下腹部の疝痛 関連痛 ( 尿管攣縮による内臓痛から 同一脊髄分節の皮膚に感じる痛み ) 合併症として時に腎盂破裂 膀胱結石 : 排尿時痛 尿流途絶 尿道結石 : 尿道痛 尿閉 1

Ⅵ 結石成分 : Ⅴ 鑑別診断 : 他の急性腹症との鑑別 1) 右側腹部痛 上行結腸の憩室炎 穿孔 閉塞 重積 虫垂炎 2) 左側腹部痛 下行結腸の憩室炎 穿孔 閉塞 虚血 3) 右下腹部痛 虫垂炎 回盲部の憩室炎 穿孔 閉塞 卵巣出血や卵管捻転 鼠径ヘルニアや精索捻転 4) 左下腹部痛 S 状結腸の憩室炎 穿孔 閉塞 捻転 卵巣出血や卵管捻転 鼠径ヘルニアや精索捻転 上部尿路 : カルシウム ( 男 92% 女 90%) リン酸マグネシウムアンモニウム ; 感染結石 ( ここ 40 年で減少傾向男 1.4% 女 5.1%) 尿酸 ( ここ 40 年で増加傾向男 5.5% 女 2.2%) その他 (cystine ケイ酸など ) 下部尿路 : カルシウム ( 男 72% 女 44%) 感染結石 ( 男 10% 女 49%) 尿酸 ( 男 14% 女 4%) ( カルシウム結石のうち約 80% はシュウ酸カルシウム その他リン酸カルシウムなど ) Ⅶ シュウ酸 Ca 結石の成立 : crystal nucleation( 結晶核生成 ) growth( 成長 ) aggregation( 凝集 ) stone( 結石 ) 1)Promoter: Ca++ と oxalate-- の飽和 尿酸 dust マトリックス ( 有機成分のオステオポンチン これは動脈硬化の石灰化形成と同じ機序によるため マクロファージも尿路結石の形成に強くかかわっている ) 2)Inhibitor: Mg++ citrate( クエン酸 ) pyrophosphate シュウ酸 Ca 結石形成の原因となる代謝異常 1) 高カルシウム尿症 (hypercalciuria; 200 250mg/ 日 ) 約 40% に認める 経口カルシウム負荷試験により分類可能 1absorptive type: 腸管 Ca 吸収 血清 Ca 尿細管 Ca 負荷 血清 PTH 尿中 Ca 2renal leak type: Ca の尿細管再吸収障害 尿中 Ca 腎活性型ビタミン D の産生 血清 PTH 腸管 Ca 吸収 骨からの Ca 放出 Ca 摂取量制限しても尿中 Ca 3resorptive type: primary hyperparathyroidism 血清 PTH 骨から Ca 放出 腎活性型ビタミン D 産生 腸管 Ca 吸収 血清 Ca 尿中 Ca 血清 P 2) 高尿酸尿症 (hyperuricosuria;>600mg/ 日 ) 約 10% に認める 尿酸代謝異常 過摂取 1, シュウ酸と Ca の結晶核形成を促進する 2, シュウ酸 Ca 析出の inhibitor と結合 析出 3) 高シュウ酸尿症 (hyperoxaluria;>45mg/ 日 ) 大部分は肝で合成 残りは食事由来で たんぱく 脂肪の過剰摂取で上昇する さらに Mg-oxalate の形成により inhibitor である尿中 Mg 特に腸管炎症疾患 小腸切除 腸バイパス術時なども原因 4) 低クエン酸尿症 (hypocitraturia;<200mg/ 日 ) acidosis(distal renal tubular acidosis) 低 K 血症 過タンパク摂取などが原因 クエン酸の Inhibitor としての機序は尿中 Ca と可溶性結合物を形成 5) 低マグネシウム尿症 (<50mg/ 日 ) Mg 低摂取による 2

Ⅷ リン酸マグネシウムアンモニウム結石 ( 感染結石 ) 持続性の尿路感染症が原因 特に urea-splitting bacteria(proteus 属 Klebsiella 属 Pseudomonas 属 大腸菌など ) により 尿素がアンモニアに分解され アルカリ尿 (>ph7.5) になるため この成分の結石が急速に析出され 鋳型 ( サンゴ状 ) 結石となる Ⅸ 尿酸結石高尿酸尿症が原因 シュウ酸 Ca との混合結石も多い 痛風の 1 病態 尿 ph 5.5 で析出 X 線透過性結石 Ⅹ cystine 結石家族性の常染色体劣性遺伝 尿細管の再吸収障害 ( シスチン リジン オルニチン アルギニン ) で尿に難溶性のシスチンのみ析出 X 線透過性結石 Ⅻ 検査 Ⅺ 尿 ph と結石成分 1) 酸性尿で析出 : 尿酸 cystine 2) 正常 ph 尿で析出 : シュウ酸カルシウム 3) アルカリ尿で析出 : リン酸カルシウム リン酸マグネシウムアンモニウム 末梢血 : 通常は正常 検尿 : 血尿 ( 肉眼的 顕微鏡的 ) 結晶尿 24 時間尿検査 カルシウム リン酸 尿酸 シュウ酸など X-P(KUB 単純 ): 石灰化結石像 超音波検査 : 水腎症 hyperechoic stone CT( 単純 ):X 線透過性結石には特に有用 膀胱鏡 : 尿道膀胱結石 結石成分分析 : 赤外線分光分析法 蓚酸カルシウム リン酸カルシウム 3

2014/3/5 尿酸 リン酸マグネシウムアンモニウム シスチン 4

女性 1 CT 画像 5

男性 1 女性 2 CT 画像 CT 画像 女性 3 CT 画像 XIII 治療 尿管結石の約 60% は自然排石 1) 薬物療法 : 鎮痛薬 ( ブスコパン 6T 分 3 ボルタレン座薬 50mg ペンタジン 15mg,IM オピスタンなど ) 排石促進薬 ( ウロカルン α ブロッカーなど ) 水分補給 ( 経口水分摂取 補液 2000ml/ 日 ) 自然排石率 ( 尿管結石 ):5mm 以下 (55%),6mm(35%), 7mm(25%),8mm(10%) 2) 結石砕石 ( 切石 ) 術 : 衝撃波砕石術 ESWL(Extracorporeal Shock Wave Lithotripsy) ( 禁忌 : 妊婦 出血傾向患者 腎動脈瘤など ) 内視鏡的砕石術 :1)PNL(percutaneous nephrostolithotripsy) 2)TUL(transurethral ureterolithotripsy) 砕石装置 : レーザー ( ホルミウムレーザーなど ) 圧縮空気振動波 ( リソクラスト ) 腹腔鏡下尿管切石術 ( 将来的 ) 開放手術 ( 稀 ) Econolith 電極放電方式の体外衝撃波結石砕石機 6

電極放電 (spark gap) 方式 F2 電極 F1 楕円体反射鏡 Versa Pulse Holmium and Combination Lasers Lithoclast 圧縮空気を送り込むことにより金属製のプローブを前後に動かして砕石を行う 2007 Guideline for the management of ureteral calculi (European Urology 2007 Vol.52) <10mmの尿管結石薬物療法 (αブロッカーを含む) にて自然排石を待つ 疼痛 尿路感染症 腎機能をコントロール 排石なければ ESWL and/or TUL. >10mm の尿管結石第一選択として ESWL and/or TUL いずれも上手くいかない場合 ( 稀 ) 腹腔鏡下尿管切石術 または開放手術 尿路感染症を合併していたら その治療を先行 腎結石治療のアルゴリズム 2013 年版ガイドライン 2013 年版尿路結石症治療ガイドライン <10mm 10~<20mm 20mm 日本泌尿器科学会日本 EE 学会日本尿路結石症学会 ESWL 腎盂上 中腎杯 下腎杯 PNL (ESWL) ESWL PNL f-tul (<15mm) PNL f-tul (ESWL) 7

尿管結石治療のアルゴリズム 2013 年版ガイドライン ( 発症後 1ヶ月以内に自然排石しないもの ) 上部尿路中部尿路下部尿路 <10mm 10mm <10mm 10mm ESWL TUL または ESWL TUL 症例 1 治療前 症例 1 治療後 KUB IVP TUL 後 1 カ月後 症例 3 治療直後 症例 3 治療後経過 ESWL 直後 ESWL1 週後 ESWL1 カ月後 8

XIV 予防 ( そのままの生活では 5 年以内に 50% が再発 ) 1) 基礎疾患にかかわらず 2,000ml/ 日以上の尿量確保 お勧め飲料 : 水 お茶 ( 抹茶以外 ) あまりお勧めでない飲料 : 清涼飲料水 コーヒー アルコール 2) 抗酸化剤 ( 動脈硬化の予防にも有効な 緑茶 ポリフェノール ビタミン E, ハーブ類など ) 3) バランスのとれた食事 ( 昔の日本食 : 豆類 海藻 野菜など ) 蓚酸はカルシウムと同時に摂取 減塩 低動物性タンパク食 4) 尿路感染症の治療 5) 高カルシウム尿症に対し : 腸管吸収型 ( 過剰摂取の抑制 ) 腎漏出型 ( サイアザイド服用 ) 原発性副甲状腺機能亢進症 ( 副甲状腺摘出術 ) 6) シュウ酸カルシウム結石に対し : 酸化マグネシウム剤 ( 保険適用 ) 7) 高尿酸血 ( 尿 ) 症に対し : アロプリノール ( 尿酸生成抑制薬 ) 服用 ウラリット U 服用 8)cystine 結石に対し : チオラ内服 (cystine 尿中濃度 <200mg/l に保持 ) 9) メタボリックシンドロームの予防 予防 ( 将来的なもの ): オステオポンチン抗体 ( ノックアウトマウスは結石できない ) ビスホスホネート ( 宇宙医学により 骨粗鬆症になるのと同じ機序で尿路結石が形成されることが判明し 宇宙飛行士はその予防投与を受けている 9