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33 NCCN Guidelines Version NCCN Clinical Practice Guidelines in Oncology (NCCN Guidelines ) (NCCN 腫瘍学臨床診療ガイドライン ) 非ホジキンリンパ腫 2015 年第 2 版 NCCN.or

イルスが存在しており このウイルスの存在を確認することが診断につながります ウ イルス性発疹症 についての詳細は他稿を参照していただき 今回は 局所感染疾患 と 腫瘍性疾患 のウイルス感染検査と読み方について解説します 皮膚病変におけるウイルス感染検査 ( 図 2, 表 ) 表 皮膚病変におけるウイ

ず一見蕁麻疹様の浮腫性紅斑が初発疹である点です この蕁麻疹様の紅斑は赤みが強く境界が鮮明であることが特徴です このような特異疹の病型で発症するのは 若い女性に多いと考えられています また スギ花粉がアトピー性皮膚炎の増悪因子として働いた時には 蕁麻疹様の紅斑のみではなく全身の多彩な紅斑 丘疹が出現し

己炎症性疾患と言います 具体的な症例それでは狭義の自己炎症性疾患の具体的な症例を 2 つほどご紹介致しましょう 症例は 12 歳の女性ですが 発熱 右下腹部痛を主訴に受診されました 理学所見で右下腹部に圧痛があり 血液検査で CRP 及び白血球上昇をみとめ 急性虫垂炎と診断 外科手術を受けました し

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2014 年 10 月 30 日放送 第 30 回日本臨床皮膚科医会② My favorite signs 9 ざらざらの皮膚 全身性溶血連鎖球菌感染症の皮膚症状 たじり皮膚科医院 院長 田尻 明彦 はじめに 全身性溶血連鎖球菌感染症は A 群β溶連菌が口蓋扁桃や皮膚に感染することにより 全 身にい

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染症であり ついで淋菌感染症となります 病状としては外尿道口からの排膿や排尿時痛を呈する尿道炎が最も多く 病名としてはクラミジア性尿道炎 淋菌性尿道炎となります また 淋菌もクラミジアも検出されない尿道炎 ( 非クラミジア性非淋菌性尿道炎とよびます ) が その次に頻度の高い疾患ということになります

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線に及ぶ 4 パッチテスト 光パッチテストで多数の陽性物質が検出されるが それらの抗原によるアレルギー反応は直接原因ではない 5 病理組織学的に湿疹 皮膚炎群の所見を示し 時に真皮内に異型リンパ球の浸潤がみられる などです なお 現在までに本疾患の原因は解明されていません 慢性光線性皮膚炎の臨床像次

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針刺し切創発生時の対応

2017 年 3 月臨時増刊号 [No.165] 平成 28 年のトピックス 1 新たに報告された HIV 感染者 AIDS 患者を合わせた数は 464 件で 前年から 29 件増加した HIV 感染者は前年から 3 件 AIDS 患者は前年から 26 件増加した ( 図 -1) 2 HIV 感染者

Bowen病 ・白板症・ケラトアカントーマなら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

DLST の実際実際に DLST を行う手順を簡単にご説明します 患者末梢血をヘパリンや EDTA 添加の採血管で採取します 調べる薬剤の数によって採血量は異なりますが, 約 10 20mL 採血します. ここからフィコール比重遠心法により単核球を得て 培養液に浮遊し 96 穴プレートでいろいろな薬

164 章血管炎 紫斑 その他の脈管疾患 表皮 A-2 B-3 真皮 A-1 B-2 A-1: 皮膚白血球破砕性血管炎 A-2:IgA 血管炎 B-1: 結節性多発動脈炎 B-2: 好酸球性多発血管炎性肉芽腫症 B-3: 多発血管炎性肉芽腫症 皮下組織 B-1 図.2 炎症の主座となる血管の深さと血

医療関係者 Version 2.0 多発性内分泌腫瘍症 2 型と RET 遺伝子 Ⅰ. 臨床病変 エムイーエヌ 多発性内分泌腫瘍症 2 型 (multiple endocrine neoplasia type 2 : MEN2) は甲状腺髄様癌 褐色細胞腫 副甲状腺機能亢進症を発生する常染色体優性遺

呈することです 侵さない臓器は無いと言ってもいいくらいに現在までに多くの臓器病変が記載されています ( 表 2) ただし 悪性腫瘍( 癌 悪性リンパ腫など ) や類似疾患 (Sjögren 症候群 原発性硬化性胆管炎 Castleman 氏病 二次性後腹膜線維症 肉芽腫性多発血管炎 サルコイドーシス

汎発性膿疱性乾癬のうちインターロイキン 36 受容体拮抗因子欠損症の病態の解明と治療法の開発について ポイント 厚生労働省の難治性疾患克服事業における臨床調査研究対象疾患 指定難病の 1 つである汎発性膿疱性乾癬のうち 尋常性乾癬を併発しないものはインターロイキン 36 1 受容体拮抗因子欠損症 (

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医療関係者 Version 2.0 RET 遺伝学的検査の実施について Ⅰ.RET 遺伝学的検査の対象 甲状腺髄様癌に対する RET 遺伝学的検査 平成 28 年 4 月より甲状腺髄様癌に対する RET 遺伝学的検査が保険収載された 診療報酬点数表によると 保険適用による RET 遺伝学的検査は 遺

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2017 年 8 月 9 日放送 結核診療における QFT-3G と T-SPOT 日本赤十字社長崎原爆諫早病院副院長福島喜代康はじめに 2015 年の本邦の新登録結核患者は 18,820 人で 前年より 1,335 人減少しました 新登録結核患者数も人口 10 万対 14.4 と減少傾向にあります

が 6 例 頸部後発転移を認めたものが 1 例であった (Table 2) 60 分値の DUR 値から同様に治療後の経過をみると 腫瘍消失と判定した症例の再発 転移ともに認めないものの DUR 値は 2.86 原発巣再発を認めたものは 3.00 頸部後発転移を認めたものは 3.48 であった 腫瘍

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口腔がん登録 Q&A Ver /11/21 用語 定義に関する Q&A Q1.本調査に関する各用語の定義を教えてください 下記の図表を参照してください 各用語の定義等について 口腔内 口唇 口腔 顎骨中心性 UICCの Lip & Oral cavity 顎骨中心性) 舌 可動部 上顎

娠中の母親に卵や牛乳などを食べないようにする群と制限しない群とで前向きに比較するランダム化比較試験が行われました その結果 食物制限をした群としなかった群では生まれてきた児の食物アレルゲン感作もアトピー性皮膚炎の発症率にも差はないという結果でした 授乳中の母親に食物制限をした場合も同様で 制限しなか

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01-02(先-1)(別紙1-1)血清TARC迅速測定法を用いた重症薬疹の早期診断

方法について教えてください A 妊娠中の接種に関する有効性および安全性が確立されていないため 3 回接種を完了する前に妊娠していることがわかった場合には一旦接種を中断し 出産後に残りの接種を行うようにしてください 接種が中断しても 最初から接種し直す必要はありません 具体的には 1 回目接種後に妊娠

臨床調査個人票 新規 更新 IgG4 関連疾患 (IgG4 関連疾患包括 ) 行政記載欄 受給者番号判定結果 認定 不認定 基本情報 姓 ( かな ) 名 ( かな ) 姓 ( 漢字 ) 名 ( 漢字 ) 郵便番号 住所 生年月日西暦年月日 * 以降 数字は右詰めで 記入 性別 1. 男

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

別紙 1 新型インフルエンザ (1) 定義新型インフルエンザウイルスの感染による感染症である (2) 臨床的特徴咳 鼻汁又は咽頭痛等の気道の炎症に伴う症状に加えて 高熱 (38 以上 ) 熱感 全身倦怠感などがみられる また 消化器症状 ( 下痢 嘔吐 ) を伴うこともある なお 国際的連携のもとに

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性黒色腫は本邦に比べてかなり高く たとえばオーストラリアでは悪性黒色腫の発生率は日本の 100 倍といわれており 親戚に一人は悪性黒色腫がいるくらい身近な癌といわれています このあと皮膚癌の中でも比較的発生頻度の高い基底細胞癌 有棘細胞癌 ボーエン病 悪性黒色腫について本邦の統計データを詳しく紹介し

70 例程度 デング熱は最近増加傾向ではあるものの 例程度で推移しています それでは実際に日本人渡航者が帰国後に診断される疾患はどのようなものが多いのでしょうか 私がこれまでに報告したデータによれば日本人渡航者 345 名のうち頻度が高かった疾患は感染性腸炎を中心とした消化器疾患が

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39 中毒性表皮壊死症 概要 1. 概要中毒性表皮壊死症 (Toxic epidermal necrolysis:ten) は 高熱や全身倦怠感などの症状を伴って 口唇 口腔 眼 外陰部などを含む全身に紅斑 びらんが広範囲に出現する重篤な疾患である TEN は スティーヴンス ジョンソン症候群 (S

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健康な生活を送るために(高校生用)第2章 喫煙、飲酒と健康 その2

4氏 すずき 名鈴木理恵 り 学位の種類博士 ( 医学 ) 学位授与年月日平成 24 年 3 月 27 日学位授与の条件学位規則第 4 条第 1 項研究科専攻東北大学大学院医学系研究科 ( 博士課程 ) 医科学専攻 学位論文題目 esterase 染色および myxovirus A 免疫組織化学染色

IARC/IACRにおける多重がんの判定規則改訂版のお知らせ

2011 年 9 月 29 日放送第 74 回日本皮膚科学会東京支部学術大会 6 教育講演 4-1( 膠原病 ) 皮膚限局型エリテマトーデスの病型と治療 埼玉医科大学皮膚科教授土田哲也 本日は 皮膚限局性エリテマトーデスの病型と治療 についてお話させていただき ます 言葉の問題と病型分類エリテマトー

2015 年 11 月 5 日 乳酸菌発酵果汁飲料の継続摂取がアトピー性皮膚炎症状を改善 株式会社ヤクルト本社 ( 社長根岸孝成 ) では アトピー性皮膚炎患者を対象に 乳酸菌 ラクトバチルスプランタルム YIT 0132 ( 以下 乳酸菌 LP0132) を含む発酵果汁飲料 ( 以下 乳酸菌発酵果


胞の腫大の 2 つが 正しい病理診断のためのキーワードでした 形質細胞浸潤の目立つ炎症を病理学的に亜急性炎症といいますが この場合 亜急性皮膚炎の診断は臨床の役に立ちません 病理学的に疑うべきは梅毒です 梅毒スピロヘータ ( トレポネーマ パリドゥム ) に対する抗体を利用した免疫染色が決め手になり

通常の単純化学物質による薬剤の約 2 倍の分子量をもちます. 当初, 移植時の拒絶反応抑制薬として認可され, 後にアトピー性皮膚炎, 重症筋無力症, 関節リウマチ, ループス腎炎へも適用が拡大しました. タクロリムスの効果機序は, 当初,T 細胞のサイトカイン産生を抑制するということで説明されました

のヒリヒリ感 ( 灼熱感 ) や痛みとの関連を示唆する報告が増えています 厚くなるものこれには粘膜が厚くなり硬くなる肥厚性カンジダ症があります 慢性の経過をたどり頬粘膜や舌が厚くなって腫瘤を形成して腫瘍と間違えられることもあります このような腫瘤は悪性の場合もありますので専門医の診察が必要です 頬粘

福島県のがん死亡の年次推移 福島県におけるがん死亡数は 女とも増加傾向にある ( 表 12) 一方 は 女とも減少傾向にあり 全国とほとんど同じ傾向にある 2012 年の全のを全国と比較すると 性では高く 女性では低くなっている 別にみると 性では膵臓 女性では大腸 膵臓 子宮でわずかな増加がみられ

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2013 年 1 月 10 日放送 第 111 回日本皮膚科学会総会 10 教育講演 45-4 HSV 感染症 Up date( 性器ヘルペスを中心として ) 愛知医科大学皮膚科 教授渡辺大輔 はじめに単純ヘルペスウイルス (herpes simplex virus:hsv) は 皮膚 粘膜に初感染

した つまり 従来から研究されてきた IgE/Fc RI を介した活性化経路は 肥満細胞活性化の一面に過ぎず むしろ生体防御の見地からすると 感染に対する防御こそ肥満細胞の機能の中心的な役割である可能性も出てきたのです この一連の研究は 肥満細胞は何もアレルギーを起こすために存在しているのではなく

がん登録実務について

ある ARS は アミノ酸を trna の 3 末端に結合させる酵素で 20 種類すべてのアミノ酸に対応する ARS が細胞質内に存在しています 抗 Jo-1 抗体は ARS に対する自己抗体の中で最初に発見された抗体で ヒスチジル trna 合成酵素が対応抗原です その後 抗スレオニル trna

10 年相対生存率 全患者 相対生存率 (%) (Period 法 ) Key Point 1 10 年相対生存率に明らかな男女差は見られない わずかではあ

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されていません 今後社会全体に向けての啓発活動が必要と思われます 一方 クロムは革製品 塗料 インク セメントなど あまり金属にみえないものに入っていま す 足底全面の重症の湿疹とともに全身に撒布疹がある難治性の患者さんがおられました 革靴の切れ端を水に浸したものとク ロムのパッチテストが強陽性を示

第58回日本臨床細胞学会 Self Assessment Slide

p.p.2 # エンテロウイルス感染症 ( 特に 6 型 11 型 25 型 ) 顔面に皮疹をきたす 肝炎様徴候と血小板減少というのは合致しない # パルボウイルス B19 手足口病 顔面の皮疹はきたすが 今回の皮疹の出現パターンとは合致しない # 風疹 血球減少は一般的に見られる また 肝酵素上昇

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

したことによると考えられています 4. ピロリ菌の検査法ピロリ菌の検査法にはいくつかの種類があり 内視鏡を使うものとそうでないものに大きく分けられます 前者は 内視鏡を使って胃の組織を採取し それを材料にしてピロリ菌の有無を調べます 胃粘膜組織を顕微鏡で見てピロリ菌を探す方法 ( 鏡検法 ) 先に述

2017 年 4 月 27 日放送 第 67 回日本皮膚科学会中部支部学術大会 3 教育講演 2 血管炎の診かた 中京病院皮膚科部長小寺雅也 血管炎を疑うべき症例の問診のポイント血管炎の診かたについてお話し致します 最初に 血管炎を疑うべき症例の問診のポイントとしては 原因不明の発熱 体重減少 全身

皮疹が出現するメカニズムは不明のものが多いのですが 後天性魚鱗癬を除き 腫瘍細胞が産生する TGF-aや EGF により表皮細胞の増殖が誘導されることが一因であろうとの推測がなされています Leser trélat 兆候は 有名な病態であり 実際 多くの症例が報告されています 最近は皮膚科以外の診療

日産婦誌61巻4号研修コーナー

多形紅斑・Stevens-Jonhnsons症候群なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

インフルエンザ定点以外の医療機関用 ( 別記様式 1) インフルエンザに伴う異常な行動に関する調査のお願い インフルエンザ定点以外の医療機関用 インフルエンザ様疾患罹患時及び抗インフルエンザ薬使用時に見られた異常な行動が 医学的にも社会的にも問題になっており 2007 年より調査をお願いしております

顎下腺 舌下腺 ) の腫脹と疼痛で発症し そのほか倦怠感や食欲低下などを訴えます 潜伏期間は一般的に 16~18 日で 唾液腺腫脹の 7 日前から腫脹後 8 日後まで唾液にウイルスが排泄され 分離できます これらの症状を認めない不顕性感染も約 30% に認めます 合併症は 表 1 に示すように 無菌

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10038 W36-1 ワークショップ 36 関節リウマチの病因 病態 2 4 月 27 日 ( 金 ) 15:10-16:10 1 第 5 会場ホール棟 5 階 ホール B5(2) P2-203 ポスタービューイング 2 多発性筋炎 皮膚筋炎 2 4 月 27 日 ( 金 ) 12:4

300 IgG4関連疾患

サーバリックス の効果について 1 サーバリックス の接種対象者は 10 歳以上の女性です 2 サーバリックス は 臨床試験により 15~25 歳の女性に対する HPV 16 型と 18 型の感染や 前がん病変の発症を予防する効果が確認されています 10~15 歳の女児および

を身につけることが必要です 図 1,2,3 臨床像から初めに他の疾患で あると考えても 少しでも合致しない 点があれば鏡検を行うようにします 極言すれば 初診時には念のため 全 例鏡検していくくらいの意気込みで ちょうどよいです そして 他の疾患と考えて治療を開 始したが 予想どおりの改善が見られ

1. ストーマ外来 の問い合わせ窓口 1 ストーマ外来が設定されている ( はい / ) 上記外来の名称 対象となるストーマの種類 7 ストーマ外来の説明が掲載されているページのと は 手入力せずにホームページからコピーしてください 他施設でがんの診療を受けている または 診療を受けていた患者さんを

検査項目情報 水痘. 帯状ヘルペスウイルス抗体 IgG [EIA] [ 髄液 ] varicella-zoster virus, viral antibody IgG 連絡先 : 3764 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10) 5F

とが多いのが他の蕁麻疹との相違点です 難治例ではこの刺激感のために日常生活に支障が生じ 重篤な随伴症状としてはまれに血管性浮腫 気管支喘息 めまい 腹痛 嘔気 アナフィラキシーを伴うことがあります 通常は暑い夏に悪化しますが 一部の症例では冬期の運動 入浴で皮疹が悪化することがあり 温度差や日常の運

成人T細胞白血病・NK/ T細胞リンパ腫・皮膚T細胞リンパ腫なら新しい皮膚科学|皮膚病全般に関する最新情報を載せた皮膚科必携テキスト

32 子宮頸癌 子宮体癌 卵巣癌での進行期分類の相違点 進行期分類の相違点 結果 考察 1 子宮頚癌ではリンパ節転移の有無を病期判定に用いない 子宮頚癌では0 期とⅠa 期では上皮内に癌がとどまっているため リンパ節転移は一般に起こらないが それ以上進行するとリンパ節転移が出現する しかし 治療方法

はないのですが 梅毒の進行予防と母子感染の予防のために治療を考える必要があります 神経梅毒では 中枢神経系が侵され 脳神経障害 髄膜炎 脳卒中 認知機能低下 眼障害 聴力障害などの多彩な病態を示します 痴呆症や初発の統合失調症と考えられた症例が神経梅毒と判明し 治療により元の状態に戻って 診断的意義


子宮頸がん予防ワクチンとヘルスリテラシー

学位論文の内容の要旨 論文提出者氏名 佐藤雄哉 論文審査担当者 主査田中真二 副査三宅智 明石巧 論文題目 Relationship between expression of IGFBP7 and clinicopathological variables in gastric cancer (

表 1. 罹患数, 罹患割合 (%), 粗罹患率, 年齢調整罹患率および累積罹患率 ; 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く ; 部位別, 性別 B. 上皮内がんを含む 表 2. 年齢階級別罹患数, 罹患割合 (%); 部位別, 性別 A. 上皮内がんを除く B. 上皮内がんを含む 表 3. 年齢

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婦人科がん検診Q&A

ステロイド療法薬物療法としてはステロイド薬の全身療法が基本になります 発症早期すなわち発症後 7 日前後までに開始することが治療効果 副作用抑制の観点から望ましいと考えられす 表皮剥離が全身に及んだ段階でのステロイド薬開始は敗血症等感染症を引き起こす可能性が高まります プレドニゾロンまたはベタメタゾ

2013 年 5 月 9 日放送 第 76 回日本皮膚科学会東部支部学術大会 2 教育講演 1 皮膚科における血管炎診療のパラダイムシフト 聖マリアンナ医科大学 皮膚科 准教授川上民裕 血管炎を理解するための基礎知識血管炎とは 病理組織において血管への好中球浸潤 血管壁のフィブリノイド壊死を特徴とし


第 12 回こども急性疾患学公開講座 よくわかる突発性発疹症 その症状と対応 ~ 発熱受診患者解析結果を交えて ~ 神戸大学大学院医学研究科内科系講座小児科学分野 長坂美和子

アトピー性皮膚炎におけるバリア異常と易湿疹化アトピー性皮膚炎における最近の話題に 角層のバリア障害があります アトピー性皮膚炎の 15-25% くらい あるいはそれ以上の患者で フィラグリンというタンパク質をコードする遺伝子に異常があることが明らかになりました フィラグラインは 角層の天然保湿因子の

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NEJM 勉強会 2010 年度第 10 回 2010 年 6 月 30 日 C プリント担当 : 河野正憲 Case 6-2010: A 37-Year-Old Man with a Lesion on the Tongue (New England Journal Medicine 2010;362:740-8) 治癒しない口腔内潰瘍は常に積極的に評価をすべきである なぜならばすべての持続する口腔内潰瘍は深刻な全身性病変を示唆するからである とはいえ 大部分の口腔内潰瘍は自然に治癒する 最も多い原因としては軽度の外傷 HSV による感染 そしてアフタ性口内炎である HSV 感染またはアフタ性口内炎の患者は一般的に口腔内潰瘍の既往歴がある これらの二つのタイプの潰瘍は例えば上気道感染症や栄養失調 疲労などの物理的 心理的ストレスと関係しているが たいていは 3 週間以内に自然に治癒する 機械的外傷や火傷 合わない義歯 尖った歯や詰め物 熱くて粘着性のある食べ物による潰瘍は 原因を取り除いてから 3 週間以内に治癒するはずである この患者は外傷の既往歴もないし 過去の潰瘍の既往歴もない しかも 3 週間以内に治癒せず 大きくなってきているようであり これらのありふれた原因による潰瘍であるとは考えにくい 治癒しない口腔内潰瘍は他のもっと深刻な原因による可能性がある この鑑別診断は多岐に渡る (Table1) が 潰瘍の視診と頚部のリンパ節の慎重な診察により 鑑別診断の幅を狭めることができる (Table2) 潰瘍の視診上重要な所見は色 深さ 粘膜表面外への突出 粘膜下腫瘤との関係 そして口腔内における場所である この患者の潰瘍は舌の腹外側に位置していて 盛り上がってはいるものの浅く有痛性であり 表面に白膜があってぬぐい取れず 画像上 辺縁は滑らかであり さらに触知できる頸部リンパ節腫脹を伴っていた 口腔内カンジダは考えられる可能性の中でもっとも良性であるが 容易に拭い取れる白膜で覆われているのが特徴的である リンパ節腫脹が存在していること そして拭い取れないことからカンジダは否定的である この病変は粘膜下の腫瘤が潰瘍化したものでもなさそうだ というのは潰瘍化した腫瘤の場合 潰瘍は隆起し 中心部分が上皮に覆われていないように見えるのが普通である ( おそらく腫瘤上の粘膜への血流が途絶えるからである ) 今回の潰瘍とは様子が違う 今回の病変の臨床症状は浅い潰瘍であり 唾液腺腫瘍やリンパ腫 真菌やマイコバクテリア感染症 炎症性腸疾患 サルコイドーシス ANCA 関連血管炎は考えにくい 口腔内における病変部位はもうひとつの key factor である というのは多くの病気が口腔内のある領域に偏って出現する傾向があるからである 今回の病変は舌の腹側 ( 角化していない粘膜に覆われている ) に位置している 非角化粘膜に覆われている箇所としては 口腔内では口唇 頬 歯槽突起部 口腔底 舌の腹側 軟口蓋 扁桃 咽頭である 角化粘膜は歯肉や硬口蓋 舌の背側に存在する 扁平苔癬は主に頬粘膜に発生し たいていは両側性であり 時には舌の背側もしくは外側に発生する 舌の腹側にみられるときもあり 口腔底にはまれである その他薬剤性潰瘍を考えなければならないが この患者は服薬もなく 薬剤性は考えにくい 鑑別診断 多形紅斑 erythema multiforme ; EM この患者は皮膚と粘膜の両方に病変を持っていたため 多形紅斑の可能性が高まる 多形紅斑は EM major ( 全身症状が強く粘膜病変を有するもの ) と EM minor ( 皮膚のみに病変が限局 ) に分けられる 関連疾患として より深刻な Stevens-Johnson 症候群や中毒性表皮壊死症 (TEN) がある HSV の発疹はしばしば多形紅斑の出現 特に繰り返しの出現につながる HSV DNA は HSV に感染しているようには見えない多形紅斑の 50-70% で分離される EM major と梅毒第二期はともに対称性の皮膚病変が起こりやすいが古典的な EM 病変は target に見える すなわち中心に赤い水疱があり周りを同心円上に赤白色の輪が囲んでいて 手掌や足底の皮膚に好発する EM major ではしばしば多様な激しい有痛性の病変が頬粘膜や口唇粘膜に発生し 潰瘍に進展することもある 舌の腹側は一般的には EM の潰瘍との関係は小さく さらにこの患者の足の水泡はターゲット病変として表現されてはいない それゆえ EM は今回のケースでは考えにくい さらに HSV テストは陰

性であった major aphthous ulcer major aphthous ulcer は 特発性 再発性で組織学的に非特異的な潰瘍である この潰瘍は口腔内のみに発生し ベーチェット病や systemic enteritis 周期性好中球減少症 HIV 粘膜炎などによる潰瘍と臨床的に区別できないといった点を除けば 皮膚病変とは関係していない major aphthous ulcer は 1 つであったり複数であったりするが 再発する傾向にあり 瘢痕を残して治癒する 皮膚 目 陰部病変などがないため この患者におけるベーチェット病の診断は可能性が低い 扁平上皮癌口腔内扁平上皮癌は 持続する口腔内潰瘍を見た場合には必ず考慮しなければならない 最も好発する部位は舌の外側部 (40%), 口腔底 (30%), そして軟口蓋である 黒人 飲酒や喫煙 HPV 感染は扁平上皮癌のリスクを上げる 口腔内扁平上皮癌の発生は 40 歳以下の人および女性で近年増えてきている 生存率は依然として低いままであるが 早期発見が高い生存率につながる それゆえ常に扁平上皮癌を疑わなければならないし 生検を積極的に行う必要がある この患者は飲酒以外の典型的なリスクファクターを持っていない しかしながら扁平上皮癌を除外するために生検することが大切である 梅毒今回最も考えられる診断は 第一期もしくは第二期梅毒である 第一期梅毒の下疳は典型的には梅毒に暴露してから 1~3 週間後に出現してくる 第一期梅毒の単発性の下疳が口腔内に発生した場合 典型的には男性では上唇に そして女性では舌にできる ( 異性間のオーラルセックスによる ) しかし下疳は口腔内の他の場所を含む 体のどの部位にも起こり得る 同性間の性交渉をする男性では 下疳は唇よりも舌にできるかもしれない 下疳は普通多発し 典型的には陰茎や外陰部にできるときは痛みを伴わないものの 舌や指 肛門にできるときは痛みを伴い得る 有痛性の浅い口腔粘膜潰瘍は第二期梅毒の多くて 30% に起こる 卵形または半月形の潰瘍は癒着し蛇行状の病変を形成する場合もあり snail-track ulcers と呼ばれることもある 第二期梅毒の口腔内潰瘍は四肢の対称性の斑状丘疹性皮疹を伴うことが多い この患者には両下腿に接触性皮膚炎によると思われていた皮疹があり ( いくつかは重感染していた ) MSSA が培養されていた しかしながらこの皮疹は梅毒によるものであったかもしれない この患者には限局したリンパ節腫脹が認められた これは第一期 第二期梅毒のどちらでも起こりうる 第二期梅毒で通常見られるその他の所見 例えば咽頭痛 倦怠感 発熱 体重減少などは認められなかった 非トレポネーマによる検査 (VDRL テストと RPR テスト ) は梅毒の staging に役に立つかもしれないし 立たないかもしれない 第一期梅毒の患者のおよそ 70% で血清学的検査が陽性で 第二期梅毒ではほとんどすべての患者が陽性になる 診断方法としてはまず非トレポネーマ検査で陽性であることを確認し その次に特異度が高いトレポネーマテスト (Treponema pallidum particle agglutination assay:tppa) や生検で確認すべきである 病理学的所見 舌病変の生検の結果 単核の炎症細胞が粘膜 - 粘膜下組織結合部分から骨格筋繊維にまで及んで浸潤していた (Fig.3A) その上部の粘膜は一部が潰瘍化していた 浸潤物は 組織球 リンパ球 形質細胞 そして太い上皮細胞を伴ったいくつもの小血管を含んでいた (Fig.3B) 好酸球と好中球も少し含まれていた 別の場所には類上皮性の組織球とそれを取り囲むリンパ球 形質細胞からなる cluster を伴った肉芽腫性物質も見られた (Fig.3C) 形質細胞をふくむ炎症細胞に囲まれ 一部浸潤された小さな神経も見られた (Fig.3D) 鑑別診断としては反応性 感染性 そして腫瘍性病変が挙げられる 類上皮性組織球の cluster の存在は真菌もしくはマイコバクテリア感染症を示唆するが 成熟した肉芽腫や壊死の存在がないため考えにくい 形質

細胞 組織球 そして反応性に見える血管が豊富に見られること また形質細胞神経炎の存在から梅毒も考えられる しかしながら形質細胞はしばしば口腔内粘膜の炎症の経過でも増えてくるものであり 特異性が小さい 浸潤の大きさからリンパ腫も考えられる ランゲルハンス細胞組織球症も考えられ また豊富な血管からは類上皮性血管内皮腫の可能性も高まる 免疫組織学的分析の結果 CD3, CD20, CD68 陽性細胞が浸潤しており リンパ腫のパターンとは異なっていた ランゲルハンス細胞組織球症で陽性となる S-100 タンパクと CD1a は陰性であった CD34 は陰性であり類上皮性血管内皮腫の否定的であった Gomori methenamine silver と抗酸染色の結果 真菌とマイコバクテリアの存在がそれぞれ否定された Steiner 染色は陽性でコイル状のトレポネーマの形態が捉えられた (Fig.3E) 血管親和性 そして類上皮親和性の二つの特徴があり 梅毒トレポネーマの特徴と合致した 以上から舌の病変は 病理学的には第一期梅毒の下疳として合致する所見だと考えられた さらに RPR テストは陽性 (1:64) であるとの情報を得 診断が確定した 診断確定後の経過 診断が確定した後 doxycycline で二週間治療された (penicillin アレルギーがあるため ) その後のフォローアップの検査で舌の病変は治癒しておりリンパ節腫脹を軽快していた 再度 RPR テストを行ったところ 1:64 から 1:4 へと著明に低下していた 第一期梅毒 VS 第二期梅毒 第一期梅毒は通常 感染の 3 週間後から始まり 治療の有無にかかわらず 3-6 週で治癒する孤発性の下疳が特徴的である 第二期梅毒は通常は 下疳が治癒してから 2-10 週後に始まるが 第一期とオーバーラップすることも多い 組織学的に密集した 深い炎症を伴った潰瘍は 第一期梅毒でより多く見られ 血管親和的なトレポネーマの分布も第一期梅毒で多い 最近のとある研究によると 第一期梅毒のうち 74% が RPR テストで陽性であった よって以上を考え合わせると この患者の梅毒の病期は第一期であると考えられる もしこの患者の病期が第二期であったとすると 下腿の皮疹が口腔内潰瘍に先行していたために 患者がそれより前に出現した第一期梅毒の下疳に気づいていなかったと考えなければならないが 第二期梅毒のほとんどの患者は 数週間から数カ月前に出現した下疳に関してよく覚えているものである それに加えて第二期梅毒の皮疹は手掌や足底に多く出現し リンパ節腫脹も限局するよりは全身化するのが普通である