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遺伝子 DNA を構成する核酸を含んだ成分の発見 1869 年にミーシャーによって膿の中の細胞の核の中から発見され ヌクレインと名付けられた ヌクレインは 当初 リン酸とタンパク質のみを含んでいると見なされていた 精製により純化された結果 5 種類の有機塩基 ( アデニン ウラシル グアニン シトシン チミン ) とリン酸を含む新規の酸性物質で有ることが分かり この新規成分は核酸と命名された その後 核酸は 塩基とリン酸の他に糖 (D- リボース 2- デオキシ -D- リボース ) を含んでいることも明らかになった 遺伝子 DNA を構成する核酸を含んだ成分の発見 その後の更なる化学的な分析により 核酸は 塩基 リン酸 糖 ( 五炭糖 ) から構成される ( モノ ) ヌクレオチド (p8) を基本構成単位としていることが明らかになった 遺伝子 DNA を構成する核酸を含んだ成分の発見 このようにして遺伝情報の伝達と発現に関与しているデオキシリボ核酸 (DNA) やリボ核酸 (RNA) が発見された 2 遺伝子の本体の発見 (p4) 生物の形質が親から子孫に受け継がれている現象である遺伝は メンデルを初めとする科学者により科学的に明らかにされていた (1865 年 ) 優性の法則 分離の法則 独立の法則 優劣の法則 分離の法則 F1 黄オス (AA) + 白メス (aa) 精子 (A) 卵 (a) 子供 (Aa) この特徴の違う遺伝子を二つ受けた子供の翅の色はどうなるのでしょう? 黄オス (Aa) + 黄メス (Aa) 第一代で現れなかった特徴が第二代で現れる事を 分離の法則 と呼びます 精子 (A) 又は精子 (a) 卵 (A) 又は卵 (a) F2 黄メス (AA) + 黄メス (Aa/aA)+ 白メス (aa) 2

独立の法則 上の例以外に 例えば翅の形が変わる遺伝子があるとします すなわち遺伝子型 Aやaと違う 遺伝型 Bとbがあり BB/Bb/bBが普通の翅の形で bbは翅の形がギザギザになるとします ( あくまでも空想の例ですが ) この様に違う遺伝型がそれぞれ独立して子孫に遺伝することを 独立の法則 といいます 独立の法則 この場合 産まれてくる子供は 1. 黄色くて普通の翅 (AABB, AaBB, aabb, AaBb, aabb, AabB, aabbなど ) 2. 黄色くてギザギザの翅 (AAbb, Aabb, aabb) 3. 白くて普通の翅 (aaba, aabb, aabb) 4. 白くてギザギザの翅 (aabb) の 4 種類が見られます 2 遺伝子の本体の発見 (p4) 染色体がタンパク質と DNA から成っていることも明らかにされていた 当時は 20 種類のアミノ酸からなるタンパク質の方が 4 種類しかないヌクレオチドから成る核酸よりも遺伝子の本体として相応しいと考えられていた グリフィスらは 莢膜をもつ病原性の S 型と莢膜をもたない非病原性の R 型の 2 種類の肺炎双球菌を用いて種々の実験を行い 菌間で病原性の形質転換が起こること発見した ( 図 1 3) 2 遺伝子の本体の発見 (p5) グリフィスは 肺炎双球菌を使って形質転換因子があることを示した 病原性のなかったR 型が 死んだS 型菌と混ぜることによって 病原性が現れ S 型菌に変わっていた エーブリーは 形質転換因子が何かを求めるため 分解実験を行った 何らかの因子が 病原性 ( およびコロニーの形と莢膜のあるなし ) という形質を転換させた 因子の本体は わからなかった 3

分解実験結果 この抽出物をRNA 分解酵素 タンパク質分解酵素や糖質分解酵素で処理しても形質転換能に変化はなく 抽出物をDNA 分解酵素で処理した場合にのみにその形質転換能が失われることを見いだした エーブリーの実験は 形質転換因子の本体がDNAであることを示している しかし 4 種類しかないヌクレオチドからなるDNAが遺伝子だとは信じられなかった この実験結果では 当時はタンパク質が遺伝子であると強く信じていた当時の人々を説得するには不十分であり 実験系へのタンパク質の混入を疑う科学者が多かった ハーシェイ チェイスの実験 ハーシーとチェイスが大腸菌に感染するウイルス ( バクテリオファージ ) の 1 種である T2 ファージを用いて ファージの構成成分であるタンパク質と DNA のどちらがファージの複製に必要であるか すなわち どちらが遺伝物質であるかを証明した 取り付いたバクテリオファージが細菌に何を注入するかを確かめる実験を行った 生化学分野の研究に使用されている放射性核種の中では エネルギーの高い β 線を放出 彼らは 硫黄 (S) 原子がファージのタンパク質にのみに含まれ リン (P) が DNA にのみ含まれていることを利用した 放射性同位元素の 35 S または 32 P を含んだ培地で培養した大腸菌に感染させて 35 S 標識 T2 ファージ ( タンパク質を標識 ) と 32 P 標識 T2 ファージ (DNA を標識 ) を得た 35 S 32 P 遺伝子の本体は DNA だという決定的な証拠が得られた これらのファージを別々に未標識の大腸菌に感染させ一定時間培養した後 ブレンダーで吸着したファージを大腸菌から離し 遠心分離して上清と沈殿の放射能を調べた ( 図 1-5) その結果 32 P で DNA を標識したファージを感染させた大腸菌の場合にのみ 菌を含む沈殿に放射能を検出することができた すなわち ファージの DNA のみが菌体内に取り込まれることが分かった よって T2 ファージはタンパク質でできた殻ではなく DNA を大腸菌体内に注入して自身を複製することが分かった こうして DNA が遺伝子の本体であることが証明された 4

2 遺伝子の本体の発見 (p4) 核酸 ( ヌクレイン ) の発見から 核酸 (DNA) が遺伝子の本体であることが証明されるのに約 80 年を要した バイテクコミュニケーションハウスより バイテクコミュニケーションハウスより バイテクコミュニケーションハウスより バイテクコミュニケーションハウスより 5

今日の誕生花シャクナゲ ( 石楠花 ) 警戒心をもて B 核酸 (6) SBO DNA や RNA を構成している塩基 ヌクレオシドおよびヌクレオチドの構造とその化学的な特徴を理解する SBO 生命のプログラムである遺伝子を理解するために 核酸の構造 機能および代謝に関する基本的知識を修得する 核酸塩基の構造を書き 水素結合を形成する位置を示すことができる ポイント 核酸を構成する塩基には プリン塩基とピリミジン塩基がある 塩基に五炭糖が N- グリコシド結合したものをヌクレオシドという ヌクレオシドにリン酸が結合したものをヌクレオチドという DNA や RNA は ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で連結したポリヌクレオチドである 1 核酸塩基 (p7) 核酸を構成する塩基は その母核から プリン塩基 ピリミジン塩基 プリン塩基 アデニン グアニン DNA と RNA で共通である ピリミジン塩基 シトシン チミン ウラシル DNA にはシトシンとチミン RNA にはシトシンとウラシル 6

1 核酸塩基 2 ヌクレオシド ヌクレオシドは 塩基に D- リボースあるいはデオキシ D- リボースが N- グリコシド結合したものである 糖が D- リボースの場合 アデノシン グアノシン シチジン ウリジンがある 糖が 2- デオキシ D- リボースの場合は デオキシをつけて デオキシアデノシンのように表す 2 ヌクレオシド 例外として チミンには 2- デオキシ D- リボースのみが結合しているので ヌクレオシドはそのままチミジンと表す 3 ヌクレオチド ヌクレオチドは ヌクレオシドにリン酸が結合したものをいう 例えば アデノシンのリボースの5 の位置にリン酸がものをアデノシン5 -モノリン酸と表す また 5 -アデニル酸と表すこともある 3 ヌクレオチド このヌクレオチドのリン酸が糖の3 と5 位の炭素間にジエステル結合を形成し 連結したものがポリヌクレオチドである 糖がリボースのヌクレオチドが連結したのがRNA デオキシリボースのヌクレオチドが連結したのが DNAである ポイント 核酸を構成する塩基には プリン塩基とピリミジン塩基がある 塩基に五炭糖が N- グリコシド結合したものをヌクレオシドという ヌクレオシドにリン酸が結合したものをヌクレオチドという DNA や RNA は ヌクレオチドがリン酸ジエステル結合で連結したポリヌクレオチドである 7

C SBO DNA 鎖と RNA 鎖 (p8) DNA の構造について説明できる 核酸塩基の構造を書き 水素結合を形成する位置を示すことができる RNA の構造について説明できる DNA 鎖と RNA 鎖の類似点と相違点を説明できる ポイント DNAは二本鎖でらせん構造をとる ( 二重らせん構造 ) DNA 二本鎖の塩基間では アデニンとチミン (A-T) グアニンとシトシン (G-C) が塩基対を形成している ( 相補的結合 ) DNAにおける塩基の配列順序は 遺伝情報として一次構造を指定している RNA 鎖は 基本的に一本鎖であるが部分的に二本鎖を形成する (p54) 1DNA の構造 a DNA の二重らせんモデル DNA 研究が始まった当初 DNA に含まれる 4 種類の塩基の比は等しく DNA はアデニン グアニン シトシン チミンの各々の塩基からなるデオキシモノヌクレオチドが 1 つずつ結合したテトラマーの集まりと考えられていた 1949 年 シャルガフは種々の生物に含まれる DNA の塩基組成を調べた結果 4 種類の塩基の比は等しくなく アデニンとチミン グアニンとシトシンの量がそれぞれ等しいことを発見した ( シャルガフの法則 : 表 1-1) 1DNA の構造 a DNA の二重らせんモデル 1DNA の構造 a DNA の二重らせんモデル シャルガフは DNA の塩基の組成を調べ 4 種の塩基の比は等しくないが A と T および G と C の量が等しいと言う関係があることを見つける プリン塩基 (A+G)= ピリミジン塩基 (T+C) a DNA の二重らせんモデル ウィルキンスとフランクリンらによって撮影された DNA の X 線回折像の結果より DNA がらせん構造をとっていることが予想されていた 8

a DNA の二重らせんモデル これらの知見をもとに 1953 年 ワトソンとクリックは DNA の二重らせんモデルを作り上げ イギリスの科学雑誌 Nature に発表した ワトソンとクリックの出会い ワトソンとクリックが発表した DNA 二重らせん構造の特徴 1. らせんは右巻きである ( らせんが右上がりに巻くのを右巻きと定義 ) ワトソンとクリックが発表したDNA 二重らせん構造の特徴 2. 二本のDNA 鎖はお互いにねじれあって 二重らせんを形成している この場合 塩基は内側にリン酸とデオキシD-リボース部分は外側にある ワトソンとクリックが発表したDNA 二重らせん構造の特徴 3. 4 種類の塩基はデオキシ-D -リボースとリン酸からなるらせんの内側に らせん軸にほぼ垂直となるように らせん階段の板のように埋め込まれている ワトソンとクリックが発表した DNA 二重らせん構造の特徴 4. らせんの直径は 2nm である らせんは 10 塩基対で 1 回転し その距離は 3.4nm である 塩基対は 0.34nm 間隔で積み重なっている 9

ワトソンとクリックが発表した DNA 二重らせん構造の特徴 5. 二本の鎖はそれぞれ逆方向に向いている 1 本の鎖が上向き (5 3 ) なら もう一方の鎖は下向き (3 5 ) に並んでいる ワトソンとクリックが発表したDNA 二重らせん構造の特徴 6. 二重らせんには 幅の広い主溝 (major groove) と幅の狭い副溝 (minor groove) がある ワトソンとクリックが発表した DNA 二重らせん構造の特徴 7. 二本鎖の塩基間でアデニンとチミン (A-T) グアニンとシトシン (G-C) が塩基対を形成して結合 ( 水素結合 ) している A-T G-C 間の結合は特異的で 他の結合 ( A-C A-G C-T G-T) は起こらない ( 相補性 ) 以上の特徴をもつ二重らせんDNAは B 型 DNAと呼ばれている この他 B 型と立体構造が少し異なるA 型 DNAや らせんが左巻きのZ 型 DNAも発見されており これらは互いに主溝や副溝の深さが異なっている 発表された特徴のうち 7の相補性 ( 相補的結合 ) は 2 本鎖 DNAが複製される際に 片方の鎖 ( 鋳型鎖 ) の塩基配列をもとに 相補的な塩基配列を持つもう一方の鎖を合成する また もう片方の鎖の方も同様に合成され 正確にもとの2 本鎖 DNAが複製される遺伝の仕組みを見事に説明することを可能にした 1DNA の構造 c DNA の塩基配列 DNA の基本構造は 大腸菌などの微生物でもヒトにおいても基本的には同じである しかし 塩基配列は異なっており DNA における塩基の配列順序こそが遺伝情報そのものであり 遺伝子としてタンパク質や RNA の 1 次構造を指定している DNA はたった 4 種類の塩基の並び方で複雑な遺伝情報を蓄えており わずか 10 塩基対の短い DNA の場合でもその塩基の並び方は 4 の 10 乗 (4 10 =1,048,576) とおりにもなる ヒトのゲノム DNA には 約 31 億の塩基対が含まれているので 複雑な遺伝情報の蓄積が可能である 1DNA の構造 d DNA の形状 真核生物の核内に存在するDNAは直鎖状二本鎖の linear- 型で 両側に末端がある 一方 原核生物は 閉環状二本鎖で末端が存在しない cc(closed circular)- 型という形状をしている このcc- 型の一本鎖に切れ目が入ってねじれが解消されると開環状二本鎖のoc(open circular)- 型という形状をとる 10

2RNA の構造 RNA は 塩基 リン酸 D- リボースからなる基本構成単位のリボヌクレオチドが ホスホジエステル結合で連結された構造をもつ また DNA と異なり基本的に 1 本鎖であるが 分子内で部分的に塩基対を形成している場合が多い ポイント DNAは二本鎖でらせん構造をとる ( 二重らせん構造 ) DNA 二本鎖の塩基間では アデニンとチミン (A-T) グアニンとシトシン (G-C) が塩基対を形成している ( 相補的結合 ) DNAにおける塩基の配列順序は 遺伝情報として一次構造を指定している RNA 鎖は 基本的に一本鎖であるが部分的に二本鎖を形成する (p54) DNA と RNA の違い 11

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