金属防食用途での完全水系 Dynasylan エボニックのシランカップリング材 Dynasylan( ダイナシラン ) はコーティング分野で広く使用されています ここでは金属防食用途に焦点を当て 近年開発に力を入れてきた完全水系 Dynasylan について以下紹介いたします
Dynasylan はコーティング分野において 防食を含め様々なシーンで活躍 GLYMO DAMO, 4144 など 架橋材的働き 顔料分散 GLYMO. GLYEO, MEMO, VTMO など AMEO, GLYMO DAMO など シラン変性樹脂 添加剤 下地との密着 GLYMO. GLYEO, MEMO, VTMO など Dynasylan 40, GLYMO など 反応性溶剤 AR, XAR など バインダー Page 2 ダイナシランは 防食を含めコーティング分野の様々なシーンで活躍しています ダイナシランをモノマーとして 他モノマーと共重合したポリマー ( シリル化ポリマー シリコーン変性ポリマーと呼ばれる ) を塗料樹脂として用いると 耐久性や下地との密着性に優れた塗料になります ダイナシランで顔料を表面処理することにより また顔料と共に塗料化する際にダイナシランを添加することにより 塗料中での顔料分散効果を発揮します ダイナシランは 主に無機下地材料 ( 金属 セラミック等 ) と塗料の耐水密着性向上のために添加剤として広く用いられております ダイナシランは防錆コーティングでも活躍しています Dynasylan 40 や Dynasylan GLYMO などを 反応性溶剤として使用した場合 特に防錆顔料の固定化 耐久性向上に効果を発揮します Dynasylan AR などは溶剤系無機ジンクリッチペイントのバインダーとして使用され すぐれた防錆性能を発揮します 塩分や水に対する保護膜として優れた抵抗力を付与し 上塗りコーティング剤との接着力が高まります 一方現在の溶剤ベースのシランシステムでは多量の有機溶媒を含むためにもはやほとんどの揮発性有機化合物 (VOC) 規制要件に適合しません そのため主に橋 船 ドック 石油掘削機など耐久性のある防食処理が必要で他のコーティング剤が使用できない所に使用されています
完全水系 Dynasylan シリーズ : VOC ( 揮発性有機化合物 ) フリー Sophistication/ 洗練 CH 2 =CH-Si(OMe) 3 H 2 N(CH 2 ) 3 -Si(OEt) 3 スタンダードシラン Standard Silanes Dynasylan VTMO AMEO GLYMO n-bunh(ch 2 ) 3 -Si(OMe) 3 PEG~~Si(OMe) 3 HN[(CH 2 ) 3 -Si(OMe) 3 ] 2 スペシャルシラン Special Silanes Dynasylan 1189 4148 1124 低 VOC オリゴマーシラン Low VOC Oligomeric Silanes Dynasylan 9896 1146 完全水系シランオリゴマー Water - Borne Silanes Dynasylan HYDROSIL 2627 2926 完全水系ゾル ゲルテクノロジー SIVO SOL Technology Water - Borne Sol - Gel Technology 3 次元構造 VOC( アルコール ) 発生 低 VOC VOC フリー Page 3 有機官能性シラン化合物と無機物表面とのカップリングに際し鍵となる反応は アルコキシシラン (Si- OR) からシラノール (Si-OH) が生成される加水分解反応です シラノール (Si-OH) は極めて反応性が高く 様々な種類の無機表面に作用します 一方 この加水分解反応時に必ず VOC であるアルコール ( メタノールやエタノール ) が副生致します スイスや北欧といった環境意識の高い国々の VOC 規制に対応するため 我々エボニック社はシランモノマーを縮重合し構造が明らかな低 VOC シランオリゴマー製品化に十年以上前に成功致しております その後も年々厳しさを増し続ける VOC 規制ですが 我々エボニック社は VOC フリーを達成するだけでなく異なる複数のシランモノマーから調整することで多機能化しより高い付加価値を持った HYDROSIL シリーズ ( 水溶液 : 完全水系シランオリゴマー ) を製品化しております シラノール (Si-OH) の高い反応性を巧みに制御し構造が明らかで 1 年以上の製品寿命を達成できたのは 世界最大のシラン製造会社である弊社の数十年の経験から得た知識あってのものです 完全水系 Dynasylan の進化は HYDROSIL シリーズの成功にとどまらず 三次元構造を持たせることにより水系ゾルゲルコーティングが可能になりました 単なる添加剤としてだけではなく有機無機ハイブリッド型バインダとしての用途も可能となりました
完全水系 Dynasylan の選択指標 VOC フリー コート膜厚 硬化温度, Page 4 完全水系 Dynasylan シリーズから最適な製品を選択する際には 目的コート膜厚と硬化温度が重要な指標となります 一般的にシランカップリング剤の性能を最大限引き出すには硬化温度 200 前後が理想的です 高温での硬化が可能な場合 目的とする膜厚が数十ナノメーター程度の薄膜向けには HYDROSIL シリーズを ミクロン以上のより厚膜が必要な場合は SIVO110 を推奨致しております 船舶や橋といった構造物など加熱硬化処理が困難な現場塗装への適応は長年の課題でありましたが 完全水系 Dynasylan がその壁を打ち破りました 非常に高い反応性を有するため溶媒の水が揮発することで 無機材表面とシラノール (Si-OH) が反応し化学結合を形成致します 目的とする膜厚がサブミクロン以下の場合は SIVO160 を 数十 ~ 数百ミクロンオーダーの厚膜向けには SIVO140 を推奨致しております これらの製品は 20 程度でも十分な密着性が得られますが 80 程度まで加温するとさらに密着性が向上します もちろん硬化温度 200 にも対応します
Dynasylan HYDROSIL 2909 の紹介 写真 : 左 アリザリングリーン着色ラテックス塗料を塗布したアルミニウム基材 水浴に 24 時間浸漬後クロスカット試験 1wt%HYDROSIL 2909 プライマー有 1wt%HYDROSIL l 2909 プライマー有 写真 : 右 アリザリングリーン着色ラテックス塗料を塗布したアルミニウム基材 QUV 試験機で乾湿サイクル (Dry100 分 Wet18 分 ) に 500 時間曝露後 Hydrosil 2909 プライマー無 Hydrosil 2909 プライマー無 Page 5 図は着色ラテックス塗料を塗付したアルミニウム材を耐久暴露試験後にクロスカット (ISO 2409) した結果です HYDROSIL2909 プライマーの有無で明らかな差が見て取れます プライマーは HYDROSIL 2909 をメトキシプロパノールで希釈し有効成分が約 1% になるように調整しました アルミニウム基板上にプライマーを wet 膜厚 10 ミクロンでワンコートし 室温にて 10 分間静置後 15 で 30 分間乾燥しました アリザリングリーン着色ラテックス塗料は wet 膜厚 100 ミクロンでワンコートし 室温にて 10 分間静置後 150 で 30 分間乾燥しました
Dynasylan SIVO 110 の紹介 上図アルミニウム基板上での Dynasylan SIVO 110 ゾルゲルコーティング (SEM 像 垂直切断 ; 下 : Al 基質 上 : 熱架橋層 ) SIVO 110 下図ポリエステルコイルコーティングした亜鉛めっき鋼の食塩水噴霧試験結果 (500 時間 ) 左 : 溶剤系標準下塗 ( 乾層 5 μm) 右 : SIVO110 下塗 ( 乾層 <1 μm) Page 6 温度架橋ゾルゲルコーティングシステム用の完全水系 Dynasylan SIVO 110 の紹介です Dynasylan SIVO 110 はナノサイズのシリカ粒子をシランカップリング剤処理した 不透明 ~ 乳白 / 無色 ~ 淡黄色の低粘性 (7 mpa s/cst@20 ) 弱酸性水溶液で 水および水に可溶な有機溶剤 ( エタノール イソプロピルアルコール ブチルグリコール メトキシプロパノール等 ) で希釈することができます 反応性のシラノール (Si-OH) を高濃度で含む為 適切な基板 / 基質表面と化学結合し 2 次元及び 3 次元シロキサンネットワークを形成することにより高度の架橋を作り上げます 硬化中に官能性 SiO 2 ゾル粒子は密に充填した構造を取り 共有結合によってシロキサンネットワークに取り込まれます この現象は Dynasylan SIVO 110 によって並外れた硬度 ( 配合により最大鉛筆硬度 5H 迄 ) と引っ掻き傷抵抗性が得られ理由を説明しています 上図はアルミニウム基板上に形成した Dynasylan SIVO 110 ゾルゲルコーティング膜の SEM 像です 写真下部はアルミニウムの表面で その上が撮影のために垂直切断された SIVO 110 熱架橋層です 非常に薄い膜 (<2 ミクロン ) を形成できるため 柔軟性が得られます (DIN EN ISO 1519 によるマンドレル曲げ試験 : 2 mm) シラノール以外にエポキシ基に由来する有機官能基を含んでいるため 上塗り ( 例えば エポキシ塗料 ) への高い密着性が得られます 適切な基質は 鋼 ステンレス鋼 亜鉛メッキ鋼 アルミニウム ガラスなどです 下図はポリエステルコイルコーティングした亜鉛メッキ鋼の食塩水噴霧試験 (500 時間 ) の結果です 一般的な有機溶剤系プライマーの 1/5 以下の乾燥膜厚にも拘らず Dynasylan SIVO 110 がよりすぐれた耐食性プライマーとして機能しています 耐腐食性下塗用途以外にも 220 までの温度耐性を示す透明ゾルゲル上塗りにも有効です Dynasylan SIVO 110 を含む配合剤は スプレー 含浸 またはドクターブレードで塗布することができます 平滑表面に塗布する場合 約 5 g/m 2 の塗布量で推奨乾燥膜厚 0.2~2 ミクロンが得られます ( 約 4 ミクロンの湿層が約 1 ミクロンの乾層に相当 ) スプレー塗付には水で希釈物を使用します ( 処方例 : Dynasylan SIVO 110(20 重量部 ) Tego Wet280 (0.06 重量部 ) 水 (79.94 重量部 ))
Dynasylan SIVO 160 の紹介 溶融亜鉛メッキ鋼 NSS 侵食促進試験 200 時間 SIVO 160 未処理 三価クロム溶液 SIVO 160 水溶液 SIVO 160/ 三価クロム水溶液 アルミニウム 5005 NSS 侵食促進試験 1000 時間 腐食腐食小腐食無 未処理 SIVO 160 水溶液 SIVO 160/ 三価クロム水溶液 Page 7 無機材料表面処理防錆プライマーを目的として開発された完全水系 Dynasylan SIVO 160 の紹介です SIVO 160 は無色 ~ 淡黄色の低粘性 (9 mpa s/cst@20 ) 弱酸性水溶液で重金属及びフッ素を含みません 原液のままでもゾルゲルコート可能ですが膜厚が 1 ミクロン程度になり割れを起こしやすいため イオン交換水やアルコールで 8~10 倍に希釈して使用することが一般的です SIVO160 は酸性条件下のみ安定で 塩基性条件下では徐々に縮重合が進行し沈殿物を形成することがありますので 各種添加物と処方される際にはご注意下さい 以下の基材に適合性がございます ステンレス鋼 溶融亜鉛メッキ鋼 亜鉛メッキ鋼 銅 アルミニウム ガラス セラミック プラスチックフィルム ( コロナ処理等の表面活性処理が必要 ) シリカ蒸着表面 金属蒸着表面などに対して有効的に働きます 得られる薄膜は高度に SiO 2 架橋しているため 水や塩化物イオンを物理的にブロックします 図中右上段は 溶融亜鉛メッキ鋼に対する防食性能の比較です 乾燥膜厚は 100~200 nm NSS 浸食促進試験 200 時間後 未処理の場合 全面白錆化に加えかなりの赤錆も発生しています SIVO160 希釈水溶液 (SIVO160: 12.5wt% + water: 87.5wt%) は三価クロム防錆溶液と同様の防錆性能を示しましたが ほぼ白錆化し赤錆も確認されます これに対し SIVO160 希釈水溶液にわずか 600ppm 三価クロム添加で劇的に防錆性能が向上致しました 六価クロムの代替としては三価クロムと二価コバルトの混合液が用いられていますが SIVO160 は二価コバルトを用いなくとも有効な防食性能を発揮します 図中右下段は アルミニウム 5005(Al-Mg 系合金 ) に対する防食性能の比較です もともと耐食性能の高い金属ですが未処理の場合 NSS 浸食促進試験 1000 時間後では腐食により完全に変色しています これに対し SIVO160 希釈水溶液にわずか 600ppm 三価クロム添加の系では腐食が見られません また SIVO160 希釈水溶液だけでも劇的に腐食が低減されています SIVO160 は重金属を含まず 水洗不要の次世代化成処理液です
Dynasylan SIVO 140 の紹介 25 分 指触乾燥時間 @ 相対湿度 80% (W140-2) 20 分 15 分 ウェット 90 µm ウェット 250 µm 10 分 5 分 0 分 SIVO 140 溶剤系無機 1 液 1 固 溶剤系無機 2 液 1 固 SIVO140 完全水系 1 液 1 固 W140-2 写真 ジンクリッチ塗装 ( 乾燥膜厚約 35μm) した冷間圧延鋼板の食塩水噴霧試験結果 (664 時間 ) Page 8 Dynasylan SIVO 140 は水系亜鉛末塗料のために新規開発された完全水系有機 - 無機ハイブリッドバインダで不透明 ~ 乳白 / 無色 ~ 淡黄色の低粘性 ( 約 1~10 mpa s/cst@20 ) 弱酸性水溶液です 完全に加水分解され 大気中への有機溶剤放出がほぼゼロの環境にやさしい製品です ジンクリッチ塗料は バインダと亜鉛粉末から処方されますが亜鉛粉末の濃度が非常に高い為 乾燥すると亜鉛粒子同士が連結し導電性のある塗膜を形成します ジンクリッチ塗料は主に船体 自動車ボディーの一部 工場の鋼製品の保護や橋梁等構造物の重防食下塗りとして使用されます ジンクリッチ塗料向バインダには幾つか種類があり ポリエステルやエポキシ樹脂等の有機バインダの他 耐熱性 耐 UV 性に優れたケイ酸エステル系無機バインダが存在します また従来の溶剤系だけでなく 水系ジンクリッチ塗料が市場に登場し始めていますが ( 例えば東京スカイツリーの重防食下塗り ) 既存製品は有機バインダの為 残念ながらその耐熱性は無機バインダに比べて高くありません Dynasylan SIVO 140 の固形成分含有量は約 22.5wt% で 二液型としてフィラーや顔料 ( 例えば亜鉛粉末 酸化亜鉛 酸化鉄 シリカ 雲母等 ) と処方可能です 最も単純な処方例 (W140-2): (I) Dynasylan SIVO 140 (14.8 重量部 ) 脱イオン水 (5.4 重量部 ) 等 (II) 亜鉛粉末 (79.8 重量部 ) で得られた結果が図中にあります 指触乾燥時間は膜厚が薄いほど 温度が高いほど 相対湿度が低いほど早くなりますが 処方液は非常に早く乾燥します 相対湿度 50% 20 においてウェット層厚 90 ミクロンの場合 塗膜表面がタックフリーになるまでに要する時間は 5~6 分です より高湿な相対湿度 80% 条件においても乾燥速度の低下は軽微でウェット層厚 90 ミクロンの場合 10 においても 8 分以内にタックフリーとなりました Dynasylan SIVO 140 ベースの処方は大気湿度が高くても塗料の乾燥 硬化の妨げにはならず 5~40 で使用できます 処方塗料の可使時間は フィラーの種類や濃度にもよりますが 通常は 7 時間以上です 塗装はスプレー ブラシ ロ
ーラーを用いて塗付できます 選択した塗付形態に適した均一性を得るため 塗料に脱イオン水を添加することもできます 処方の膜厚は薄くすることも, 厚くすること ( 乾燥膜厚約 60 ミクロン ) もできますがより厚くするためには 2 度塗りを推奨します Dynasylan SIVO 140 を含む処方を鉄または鋼に塗布する際は 予め表面を洗浄する必要がありますので 製造ラインではアルカリ洗浄をし 屋外ではブラスト処理をして鉄 鋼表面を洗浄してください 図中下部にジンクリッチ塗装 ( 乾燥膜厚約 35 ミクロン ) した冷間圧延鋼板を 664 時間食塩噴霧試験した結果を示してあります 完全水系 Dynasylan SIVO 140 亜鉛末処方 W140-2( 写真右 ) は 標準的な溶剤系ケイ酸亜鉛塗料 2 種類 ( 写真左と中央 ) に勝るとも劣らない防食性能です