AD STUDIES Vol 購入した商品の広告を見ると選択は間違っていなかったと思う 7 今まで知らなかった企業を広告を通じて知ることがある 8 広告によってその企業のイメージが醸成される 9 広告はその企業に対する評価に影響する 10 広告から企業の姿勢や意思に共感する

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AD STUDIES Vol

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調査結果 1 国内ユーザー SNS 利用率 トップは で 69.6% 1 位は 69.6% 2 位は 40.9% 3 位は 23.0% 調査対象者が 利用している SNS を複数回答で聞いたところ 1 位は で 69.6% 2 位以下は が 40.9% が 23.0% が 19.6% が 19.4%

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「いい夫婦の日」アンケート結果 2014

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夫婦間でスケジューラーを利用した男性は 家事 育児に取り組む意識 家事 育児を分担する意識 などに対し 利用前から変化が起こることがわかりました 夫婦間でスケジューラーを利用すると 夫婦間のコミュニケーション が改善され 幸福度も向上する 夫婦間でスケジューラーを利用している男女は 非利用と比較して

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質問 1 何歳から 長生き だと思いますか? 男性 女性ともに 80 歳 がトップ ( 合計 :42.3% 男性 :43.2% 女性 41.3%) 平均すると 男性が 81.7 歳 女性が 83.0 歳 と女性の方がより高年齢を 長生き と思うという 傾向があり 女性の 5 人に 1 人 (20.8

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平成26年度「結婚・家族形成に関する意識調査」報告書(全体版)

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表 6.1 横浜市民の横浜ベイスターズに対する関心 (2011 年 ) % 特に何もしていない スポーツニュースで見る テレビで観戦する 新聞で結果を確認する 野球場に観戦に行く インターネットで結果を確認する 4.

目次 目次 2 調査概要 3 調査サマリー 4 歩きスマホ は危ないと思うか? / 歩きスマホ をしたことがあるか? 5 歩きスマホ をしてしまう理由は? 6 歩きスマホ をしている人に対して危ないと感じたことはあるか? 7 歩きスマホ が危ないと感じたのはどのようなシーンか? 8 歩きスマホ によ

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2015年 「働き方や仕事と育児の両立」に関する意識(働き方と企業福祉に関する

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「終活」に関する意識調査

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1. 調査の目的 物価モニター調査の概要 原油価格や為替レートなどの動向が生活関連物資等の価格に及ぼす影響 物価動向についての意識等を正確 迅速に把握し 消費者等へタイムリーな情報提供を行う ( 参考 )URL:

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「いい夫婦の日」アンケート結果2011

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2) 親子関係 家族との生活に満足している について と の調査と比較した 図 12-2 に 示しているように の割合は 4 かとも増加傾向が見られた 日 本 米 中

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2018 年 9 月 3 日 このリリースは文部科学記者会でも発表しています 報道関係各位 株式会社イーオンイーオン 中学 高校の英語教師を対象とした 中高における英語教育実態調査 2018 を実施 英会話教室を運営する株式会社イーオン ( 本社 : 東京都新宿区 代表取締役 : 三宅義和 以下 イ

参考 調査員調査の対象者へのアンケート ( 平成 21 年 4 月実施 ) の概要 1 目的総務省統計局が調査対象者から直接 調査員調査の実施状況を把握し 平成 20 年度の委託業務の中で調査員調査の検証を行うとともに 今後の民間調査機関への指導についての参考資料を得る また 本アンケートでは 回答

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第 2 問 A 問題のねらいインターネット上の利用者の評価情報やイラストを参考に場面にふさわしい店を推測させることを通じて, 平易な英語で書かれた短い説明文の概要や要点を捉えたり, 情報を事実と意見に整理する力を問う 問 1 6 友人, 家族, 学校生活などの身の回りの事柄に関して平易な英語で書かれ

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『消費気分調査』レポートVol. 5

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調査概要 : 東日本大震災発生後の生活者調査 東日本大震災後の暮らしと生活意識に関する調査概要 調査期間 :2011 年 4 月 15 日 ~19 日 クローズドモニターに対するインターネット調査 回収割付 男性 女性 20 代 30 代 40 代 50 代 60 代 20 代 30 代 40 代

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平成18年度

TrueView ディスカバリー 広告 YouTube とパートナーのサイトで 価値の高いユーザーの目に留まる重要な瞬間にアピールする

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参考 男女の能力発揮とライフプランに対する意識に関する調査 について 1. 調査の目的これから結婚 子育てといったライフ イベントを経験する層及び現在経験している層として 若年 ~ 中年層を対象に それまでの就業状況や就業経験などが能力発揮やライフプランに関する意識に与える影響を把握するとともに 家

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論文題目 大学生のお金に対する信念が家計管理と社会参加に果たす役割 氏名 渡辺伸子 論文概要本論文では, お金に対する態度の中でも認知的な面での個人差を お金に対する信念 と呼び, お金に対する信念が家計管理および社会参加の領域でどのような役割を果たしているか明らかにすることを目指した つまり, お

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学習指導要領の領域等の平均正答率をみると 各教科のすべての領域でほぼ同じ値か わずかに低い値を示しています 国語では A 問題のすべての領域で 全国の平均正答率をわずかながら低い値を示しています このことから 基礎知識をしっかりと定着させるための日常的な学習活動が必要です 家庭学習が形式的になってい

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Transcription:

吉田秀雄記念事業財団では 広告 広報 メディアを中心とするマーケティングおよびコミュニケーションの研究に資するためオムニバス調査を毎年実施しています 本レポートではオムニバス調査の内容を理解していただくとともに 調査結果データを研究者の方々が自由に使い 幅広く研究していただくために 分析事例を紹介しています 今回は 社会における広告の機能 役割 が 生活者からどのように評価されているのか 広告の今 を明らかにしていきます 広告は社会を豊かにしているか 社会における広告の機能と役割 アド スタディーズ編集部 協力 中村公法電通マクロミルインサイト * オムニバス調査の実施概要 * 調査地域 : 首都 30 km圏 調査対象 : 満 15 65 歳の一般男女個人 抽出方法 : ランダムロケーションクォーターサンプリング 調査方法 : 調査員の訪問による質問紙の留め置き回収調査 回収数 :750 名 今回は 2015 年 7 月に実施した調査データを活用して分析を行った はじめに 広告 という言葉が一般に広まったのは 1872 年のこと 以来 150 年近くの時が経過しようとしている その間 広告の機能や役割は 時代やメディアの変化とともに移り変わってきている と言うことができるだろう 戦後約 70 年間の経過を見ても 食べ物にさえ事欠いた時代には 新しい商品を告知する機能が求められたし 1960 年代以降の高度成長期には消費を牽引する役割を担ってきた オイルショックをはさんで 安定成長への転換期には多様な欲望をすくい上げながら 新しい価値観やライフスタイルを提示し さらに失われた 10 年 ( あるいは 20 年 ) といわれるポストバブルの時代には 再び消費を刺激し モノやサービスの販売へとつなげるマーケティング コミュニケーションとしての役割が期待されるようになっている 一方で ソーシャル メディアの登場に代表されるようなメディアの変化や社会の価値観の変化は 広告の役割や機能にも大きな変質を迫っている 本号の特集でフォーカスされている for Good の動きはその一つの表れ といってよいだろう 今 広告は社会や生活の中でどのような役割を果たしているのか 2015 年のオムニバス調査の結果をもとに考察を加えてみたい Ⅰ 多様な広告の機能と役割 人々の消費行動の中で 広告はどのような機能を果たしているのだろうか 企業と消費者をつなぐ回路として 広告はどのような役割を担っているのだろうか そしてその先に 広告は社会に対してどのような影響力を持っているのだろう 2015 年のオムニバス調査では 社会や生活に果たす広告の機能や役割 という本質的なテーマを掲げ 新たな調査項目を構成した 質問項目は以下の24 項目である 1 広告は新商品を知るきっかけになる 2 広告がきっかけでその商品に関心を持つことがある 3 広告をよく見かける商品は購入時の候補になりやすい 4 どの商品を買うか迷ったときは広告をよく見かけるほうを選ぶ 5 広告から受けたイメージで商品を選ぶことがある 44 AD STUDIES Vol.57 2016

AD STUDIES Vol.57 2016 45 6 購入した商品の広告を見ると選択は間違っていなかったと思う 7 今まで知らなかった企業を広告を通じて知ることがある 8 広告によってその企業のイメージが醸成される 9 広告はその企業に対する評価に影響する 10 広告から企業の姿勢や意思に共感することがある 11 広告を通じて企業の存在意義を感じることがある 12 広告は社会の雰囲気に影響を与えている 13 広告は社会の価値観に影響を与えている 14 広告から新たな生活スタイルが生まれることがある 15 広告から発信される言葉やフレーズは社会に影響を与える 16 広告がその時代のトレンドを生むことがある 17 面白い広告があると友人 知人などに知らせたくなる 18 人生の節目で思い出す広告がある 19 広告の映像やセリフによって元気づけられたことがある 20 広告で見たことが日常の話題になることがある 21 広告に出演するキャストの服装やファッションが参考になる 22 広告で使われた音楽や出演タレントに関心を持つことがある 23 広告は暮らしを豊かにしている 24 広告は消費者にとって必要なものだ広告は新商品を知るきっかけになる広告がきっかけでその商品に関心を持つことがある広告をよく見かける商品は購入時の候補になりやすいどの商品を買うか迷った時は広告をよく見かけるほうを選ぶ広告から受けたイメージで商品を選ぶことがある購入した商品の広告を見ると選択は間違っていなかったと思う今まで知らなかった企業を広告を通じて知ることがある広告によってその企業のイメージが醸成される広告はその企業に対する評価に影響する広告から企業の姿勢や意思に共感することがある広告を通じて企業の存在意義を感じることがある広告は社会の雰囲気に影響を与えている広告は社会の価値観に影響を与えている広告から新たな生活スタイルが生まれることがある広告から発信される言葉やフレーズは社会に影響を与える広告がその時代のトレンドを生むことがある面白い広告があると友人 知人などに知らせたくなる人生の節目で思い出す広告がある広告の映像やセリフによって元気づけられたことがある広告で見たことが日常の話題になることがある広告に出演するキャストの服装やファッションが参考になる広告で使われた音楽や出演タレントに関心を持つことがある図表 1 広告の役割機能に対する評価 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 とてもそう思う (+2) そう思う (+1) どちらともいえない (±0) そう思わない ( -1) まったくそう思わない ( -2) (%)

いずれも とてもそう思う そう思う どちらともいえない そう思わない まったくそう思わない の 5 段階で評価を 得た このうち 1 から 22 までは 広告の個別機能 23 の 広告は暮らしを豊かにしている 24 の 広告は消費 者にとって必要なものだ は広告に対する総合評価と言っ てもよいだろう 図表 1 は 1 から 22 までの 広告の個別機能について 評価を得たものをグラフに表したものである このうち とて もそう思う そう思う の肯定計が全体の 8 割を超えている のは 広告は新商品を知るきっかけになる 90.4% と 広告 がきっかけでその商品に関心を持つことがある 81.6% の 2 つ さらに 広告をよく見かける商品は購入時の候補になり やすい 70.8% 今まで知らなかった企業を広告を通じて 知ることがある 77.5% 広告がその時代のトレンドを生むこ とがある 71.2% などが 7 割を超えている 図表 2 意思決定プロセスに関わる広告の効果 Attention 90.4% 広告は新商品を知るきっかけになる Interest 81.6% 広告がきっかけでその商品に関心を持つことがある Action 70.8% 広告をよく見かける商品は購入時の候補になりやすい どの商品を買うか迷ったときは広告をよく見かけるほうを選ぶ 36.3% 広告から受けたイメージで商品を選ぶことがある 47.7% Share 52.0% 広告で見たことが日常の話題になることがある 商品購入の意思決定プロセスに関わるマーケティング に果たす広告の役割はもちろんのこと 広告が消費者と企 業とをつなぐ役割を負い さらには社会にも影響力を及ぼし ている様子を読み取ることができる Ⅱ 広告の機能は商品の購買で完結しない 広告が 購買に関わる消費者の意思決定プロセスにどの ように影響しているのかを もう少し詳しく見てみよう 図表 2 は 調査項目のうち 購買行動に関わる項目を態 度変容のプロセスに沿って整理したものである 数字に見るように 広告が人々の認知に働きかけ 商品やサービスに対する関心を高める役割を担っていることは論をまたないだろう また購買時点では 商品を選択候補に選び 意思決定を円滑にするような効果も挙げている ただし 広告の効果はここにとどまるのではなく 全体の約半数は広告で見聞きしたことを日常の話題として取り上げ その効果を広げている AIDMAから AISAS へ 従来の態度変容モデルでは 商品の購買によって広告の効果は完結していたが 今日広告は豊かな情報循環を生む基盤としても機能している といえるだろう では 購買に関わる広告の効果は属性によってどのように異なるのだろうか 図表 3 は 広告から受けたイメージで商品を選ぶことがある という項目に対する反応を 性 年代で見たものである とてもそう思う そう思う のトップ 2 ボックスを合算した数字で 最も高いのは女性 15~19 歳の66.7% 全体平均の47.7% と比較すると この層では 20ポイント近くスコアが高いことになる 男女を比較すると男性計の45.2% に対して 女性計では 50.4% と 女性のほうがわずかながら広告のイメージによって商品を選択する傾向が強い また グラフからもわかるように 男性では年代が高まるにつれてスコアが低下する傾向が見られるが 女性では反対に年代が高まるにつれて 商品選択において広告の影響を受けやすい傾向が見られている ( ただし男性の 60 65 歳は女性の15~19 歳に次いでスコアが高く 他とはやや異なる傾向を示している ) 46 AD STUDIES Vol.57 2016

全体の 3 分の 1 にとどまる男Ⅲ 企業への共感 を挙げる者は 次に 企業と消費者の関係性に注目して調査結果を見て みよう 再び 図表 1 を参照していただきたい 企業と消費者との関係性に関わる調査項目は 7 から 11 までの 5 項目 以下の項目が該当している ( とてもそう 思う そう思う 計のスコアをそれぞれに付記した ) 7 今まで知らなかった企業を広告を通じて知ることがある : 77.5% 8 広告によってその企業のイメージが醸成される :46.8% 9 広告はその企業に対する評価に影響する:51.2% 10 広告から企業の姿勢や意思に共感することがある : 38.1% 11 広告を通じて企業の存在意義を感じることがある : 36.4% 数字に見るように 企業に対する認知こそ 7 割を上回るス とてもそう思う (+2) そう思う (+1) どちらともいえない (±0) (%) そう思わない ( -1) まったくそう思わない ( -2) 100 90 80 70 60 50 40 30 20 10 0 男性20 代男性30 代男性40 代男性50 代男性60 65 歳女性15 19 歳女性20 代女性30 代女性40 代女性50 代性15 19 歳3 コアを獲得しているが 企業イメージの醸成や企業の評価 ではおおむね 5 割程度 共感や存在意義という点では全体 の3 分の1 程度のスコアにとどまっている 調査項目のうち 1 から 6 までを マーケティング関連 の項目として括り その平均値をとると スコアは 63.1% それ に対して 7 から 11 の企業のコミュニケーションに関連 する項目の平均値は50.0% となる もちろん 企業への共感や企業の存在価値は 広告だけ で決まるものではなく 企業としての活動のすべてが共感や 存在価値に結び付くことになる とはいえ 広告から企業の 姿勢や意思に共感することがある や 広告を通じて企業 の存在意義を感じることがある という調査項目の文言から すれば 38.1% や36.4% というスコアは 必ずしも高い数字と はいえない むしろあまりにも寂しい数字ではないだろうか for Good が つまるところ 企業と消費者がアジェンダ を共有し 互いに よりよい社会 を目指して手を携えていく 活動を意味するものだとすれば 広告の現状はややもすれ ばマーケティング コミュニケーションに傾き すぎるきらいがあるように思われる 企業の姿広告から受けたイメージで商品を選ぶことがある勢や意思 そして 企業の存在意義 は 広告歳図表 性過去の調査結果が存在していないことから を通じてもっと語られてもよいのかもしれない では 広告は社会に対してどのような影響を 与えているのだろうか 調査項目の 12 から 16 を見てみよう 12 広告は社会の雰囲気に影響を与えている : 53.3% 13 広告は社会の価値観に影響を与えている : 45.6% 14 広告から新たな生活スタイルが生まれるこ とがある :48.7% 15 広告から発信される言葉やフレーズは社 会に影響を与える :65.9% 16 広告がその時代のトレンドを生むことがあ る :71.2% 女上記 5 項目の平均は56.9% 60 この数字を高いと見るのか あるいは低いと見 65 るのか その評価は難しい とはいえ 同様の 調査項目を 1970 年代や80 年代に聞いたとした AD STUDIES Vol.57 2016 47

ら その結果はどうだったろうか 想像することはさほど難しいところではないだろう 広告ターゲットのセグメントが精緻に設計されるようになると同時に メディアの環境が変化する中で 広告は一人ひとりに目を向けるようになってきた その結果 広く社会に共有される文脈が希薄になり 広告の存在感はややもすれば見えにくいものになってきているのかもしれない ような機能を果たせていない 広告を通じて発信される言葉やキャッチフレーズは 社会に影響を与え 新しいトレンドを生むことはあっても 新しい価値観やライフスタイルを提示するような存在にはなり得てはいない そして 広告は人々の暮らしを豊かにする存在にもなり得ていない 広告を取り巻く 幾つかの課題が ここに見え始めている Ⅳ 広告は消費には欠かせない存在だが 必ずしも生活の豊かさに貢献していない 最後に 広告の総合評価に当たる項目についても 数字を概観しておきたい 該当する項目は 以下の 2 つである 23 広告は暮らしを豊かにしている 24 広告は消費者にとって必要なものだ 図表 4 広告の役割機能に対する総合評価 とてもそう思う (+2) そう思う (+1) どちらともいえない (±0) そう思わない ( -1) まったくそう思わない ( -2) 広告は消費者にとって必要なものだ 広告は暮らしを豊かにしている (%) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 図表 4 に示すように 広告は消費者にとって必要なものだ との評価は とてもそう思う そう思う を合わせて 60.0% となっているのに対して 広告は暮らしを豊かにしている とする者は 34.7% にとどまっている その機能の必要性に関しては十分に理解されているものの 現状に対しては必ずしも満足している とは言い難い ここまで見てきたように マーケティングにおける広告の機能と役割は明確である 商品やサービスの存在を知らしめ 関心を高め 購買へと結び付ける そのことは送り手にとってだけではなく 受け手である消費者から見ても有益なコミュニケーションとして評価されている といってよいだろう しかしながら そのことが生活の豊かさに必ずしも像を結んでいないのが現状である 広告は 現在 必ずしも 企業と消費者を強く結び付ける 終わりに今日 メディアが多様化する中で 広告が発するメッセージは 必ずしも マス という回路だけを通じて送り出されているわけではない ネットを通じて あるいはモバイル メディアを通じて 広告はさまざまに形を変え 生活者へと送り届けられている クチコミ という世界も含めて 広告は必ずしも広告然とした顔つきをしているわけでもなく むしろパーソナルなメッセージのようにして 人々の周りを浮遊することが多くなってきているのではないだろうか 広告が広告としてのありようを大きく変えようとしている今日 広告はどのような未来を ありたい姿 として思い描けばよいのだろうか 今回の調査結果はあくまで初めての試みとしての起点であり 今回の結果からだけでは 未来がどの方向へと進んでいるのかを判断することは難しい その趨勢を判断するためには数年間の蓄積が必要だろう だが 少なくとも 広告は暮らしを豊かにしている という評価が 34.7% にとどまっている という事実は 広告に関わるすべての人が受け止めるべき事柄ではないだろうか この数字が 今後どのように変化していくのかを 腰を据えて しっかりと見届けていきたい 本稿は オムニバス調査 2015 の結果に基づいてとりまとめを行った 平成 13(2001) 年度から平成 26(2014) 年度調査結果は当財団ホームページに公開している なお 本稿に対する問い合わせは下記まで 公益財団法人吉田秀雄記念事業財団 104-0061 東京都中央区銀座 7-4-17 電通銀座ビル 4 階 Tel:(03)3575-1384 Fax:(03)5568-4528 48 AD STUDIES Vol.57 2016