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JOGMEC ジャカルタ事務所長 jogmec1@cbn.net.id 正田伸次 特集 : 深海へ向かう世界の石油 天然ガス開発事業動き出したインドネシア マレーシアの大水深石油 ガス開発 1. はじめに における探鉱 開発と EOR(Enhanced Oil Recovery: 増進採油法 ) による生産量維持という2つの局面で活動機会が活発化しつつあると認識されている そこで本稿では 油 ガス田の老朽化が激しく生産量が急激に低下しつつ あるインドネシアと 浅海域からの生産量が頭打ちになる一方 今後大きな需要の伸びが予期されているマレーシアの両国について 現在実施されつつある大水深海域での探鉱 開発の現況や探鉱 開発ポテンシャル そして今後の展望等について紹介する 2. 大水深海域探鉱 開発プレーヤー JOGMECホームページ掲載の石油 天然ガス資源情報 アジア : 大水深海域での探鉱 開発の現況と方向性 (2006/6/21) 石油 天然ガス産業 : 深海探鉱 開発活発化の背景 現状と今後の展望 (2006/5/14) 等で既報のとおり 現在アジアでは 大水深海域 (1) インドネシアインドネシアでの大水深海域探鉱 開発はカリマンタン ( ボルネオ ) 東方沖が中心であるが これまで東南アジア地域 ( 特に海域 ) をビジネス コア地域としていたユノカルを吸収合併したシェブロンがメインプレーヤーである ( 表 1) 同社は インドネシア最大の原油生産事業者 (56 万バレル / 日 シェア 53%) であるが 今後 マカッサル (Makassar) 鉱区ゲヘム (Gehem) 等での開発 生産活動拡大に注力するため 現在 所有する複数の権益を整理中である その他プレーヤーとしてはアナダルコ トタール エニ等が挙げられる アナダルコは シェブロンからマカッサルの探鉱鉱区をスワップ入手しており 同社は今が東南アジア大水深海域での探鉱 開発を進める時機と判断した また トタールやエニも シェブロンが今後ファームアウトするとみられる旧ユノカル権益を手中にしたいと考えている模様である また エクソンモービルは 今のところマレー半島東方沖浅海域での探鉱 開発とアチェでの開発に注力しようとしているが 将来的にはメキシコ湾やアンゴラ沖で蓄積した大水深開発技術をもって カリマンタン東方沖での探鉱 開発を必ず活発化させてくるであろう (2) マレーシアインドネシアと比べてマレーシアは プレーヤーが比較的少ない 具体的には大水深海域で探鉱 開発を行っているのはマーフィー シェル ニューフィールド ヘス ( 以上オペレーター ) コノコ トタールの外国企業 6 社と ペトロナス ( オペレーター ) である ( 表 2) 現時点ではマーフィーがキケー (Kikeh) 開発で先行しているが シェルとペトロナスも それぞれグムスット ( G u m u s u t ) やクババンガン (Kebabangan) での探鉱 開発を着実に進めており この3 社がメインプレーヤーといってよい 21 石油 天然ガスレビュー

表 1 インドネシアカリマンタン東方沖鉱区別オペレーター / シェアホルダー Block (Operator) Water Depth (m) Key Indonesian East Kalimantan Offshore Blocks Area (sq. km) Operator Share (%) Ambalat (Eni) <200 NA 55 Chevron (33.75%)* Other Holders Bukat (Eni) <200 6,250 41.25 Chevron (33.75%)* Aster Bulungan (Eni) <200 NA 100 NA Donggala (Santos) 1,800-2,400 3,821 65.45 Chevron (19.55%), Pertamina (15%) Hui Aman E. Ambalat (Chevron) <200 NA Discoveries (year) East Kalimantan (Chevron) <200 6,825 92.5 Inpex (7.5%) Merah Besar (1997) Ganal (Chevron) 250-2,000 5,050 80 Eni (20%) Gehem (2003) Gula (2001) Gendalo/Gandang (2001) Makassar Strait (Chevron) 250-1,000+ 5,880 50 Exxon (50%) West Seno (1998) Mahakam (Total) <200 16,330 50 Inpex (50%) Sebuku (Pearl) <200 8,773 50 Fuel-X (50%) Muara Bakau (Eni) 75-1,365 NA 50 Chevron (50%)* Pasangkayu (Marathon) 100-2,000 4,708 70 Talisman (30%) Papalang (Zudavi) 1,650-2,450 4,200 31 Chevron (24%)*, Eni (25%), Santos (20%) Popodi (Zodan) 1,650-2,450 5,420 31 Chevron (24%)*, Eni (25%), Santos (20%) Rapak (Chevron) 250-2,000 2,937 80 Eni (20%) Ranggas (2001) Sadewa (Chevron) <200 Saliki (Total) <200 404 50 Inpex (50%) Sunumana (Exxon) <200 5,340 West Pasir (Chevron) <200 25.635 50 Inpex (50%) Source: Company and government reports; Energy Intelligence Research estimates. Producing field(s) in bold. * Chevron's interests are pending being swapped with Anadarko for its shallow-water Northwest Madura Block off Java. 出所 :Energy Intelligent Research( 以下 E.I.R.) 表 2 マレーシア大水深海域鉱区 Block (Operator) North Sabah Water Depth (m) Area (sq. km) Key Malaysian Deepwater Blocks Operator Share (%) Petronas Share (%) Other Shares Discoveries PSC Signed (month/year) Block K (Murphy)* 900-2,800 4,111 80 20 Kikeh, Kakap Jan-06 Block G (Shell) 700-1,800 5,300** 35 30 Conoco (35%) Pisandan-1, Nov-00 Ubah-2, Malikai-1 Block J (Shell) 200-1,000 3,500** 40 20 Conoco (40%) Gumusut Nov-00 Block J (Petronas) 200-1,000 3,500** 60 Conoco (40%) Kebabangan Block H (Murphy) 200-1,000+ 8,858 80 20 Mar-01 Block P (Murphy) 900-2,800 4,246 60 40 Jan-06 Disputed w/ Brunei Block L (Murphy) 800-2,600 6,070 60 40 Jan-03 Block M (Murphy) 800-2,600 6,070 70 30 Jan-03 Sarawak Block E (Shell) 200-1,000+ 4,500** 40 60 Block 2C (Newfield) 200-2,000 4,400 60 40 May-04 Block F (Hess) 200-1,200 9,720 42.5 15 Total (42.5%) Jul-00 E. & SE. Sabah Block SB305 (Petronas) 0-250 100 Block ND6 (Shell) 200-4,000 8,700 50 50 Feb-05 Block ND7 (Shell) 200-4,000 17,000 50 50 Feb-05 * Extension of Block K seven-year lease with Block P added. ** Estimated. 2006.9 Vol.40 No.5 22

特集 : 深海へ向かう世界の石油 天然ガス開発事業動き出したインドネシア マレーシアの大水深石油 ガス開発 3. 探鉱 開発ポテンシャル (1) インドネシアインドネシアの原油生産量は 2006 年 7 月時点で103 万バレル / 日 ( 石油ガス上流監督機関 BPミガス公表値 ) であるが このほとんどは陸上と浅海域からの生産である しかし インドネシアには確認済み たいせき の約 60の堆積盆地のうち3 分の1 以上 が未探鉱であると言われており 未確認埋蔵量についても多大なポテンシャルが残されているとみられる ( 図 1) 2000 年に実施された米国地質調査所 (U.S.G.S.) の評価によると インドネシアの未発見埋蔵量のうち 原油に関しては70%(72 億バレル ) が海洋部にあり またそのうちの60%(46 億バレル ) がカリマンタン東方沖大水深海域のタービダイト鉱床に集積しているとみられている ( 表 3) また ガスに関しては未発見埋蔵量の60%(63 兆立方フィート ) が海洋にあり またそのうちの40%(26 兆立方フィート ) がカリマンタン東方沖大水深海域のタービダイト鉱床に集積しているとみられている ( 表 4) インドネシアにおける大水深海域で現在生産中のものは 唯一ウェストセノ (West Seno: 生産レート4 万 5,000 バレル / 日 2006 年推定 ) であるが 既発見未開発フィールドとしては 北スマトラのジャンブアイェウタラ (Jambu Aye Utara: ガス ) 東カリマンタンのランガス (Ranggas) シシ (Sisi) ヌビ (Nubi) パリ (Pari) バンカ (Bangka) アトン(Aton)( 以上原油 ) ゲヘム グラ(Gula) マハ (Maha) ガンダン (Gandang) ガダ (Gada) サデワ (Sadewa) パパダヤン ( P a p a d a y a n ) ハリムン ( H a l i m u n )( 以上ガス ) がある ( 表 5 6) ウェストセノは 近接するメラブサール (Merah Besar) とあわせて開 発され 生産物はマカッサル (Makassar) ブロックに設置される FPU(Floating Production Unit: 浮遊式生産システム ) から陸上のサンタンターミナルに接続されて 国内製油所に輸送されている また第 2フェーズでは F P U の南側に 2 基の T L P (Tension-Leg Platform) が設置され 2009 年から生産開始される計画となっている その他 カリマンタン東方沖の大水深海域での開発では ゲヘム グラ ゲンダロ (Gendalo)/ ガンダンといった超大水深海域から ガスとコンデンセートの生産が行われるようになっていく見込みである なお 開発システムはクテイ堆積盆地やマカッサル海域においてはTLP やSparといったプラットフォームと FPSO(Floating Process, Storage, & Offloading System) のコンビネーションが適しているとされている (2) マレーシアマレーシアの生産量は現在 72 万バレル / 日で そのうち約半分はマレー半島東方沖浅海域から 残りがサラワク沖およびサバ沖の浅海域からの生産である マレーシアでの石油 ガス開発地域 出所 :Pertamina は大きく分けて3つあり マレー半島東方沖の南シナ海浅海域と ガス指向でビンツルLNG 施設に輸送が可能なサラワク沖 そして より石油指向であるサバ沖である マレー半島東方沖は1980 年代から開発が進められている海域で 国内やシンガポールに向けて供給が行われている 一方 サラワク沖は現在最も大規模なLNG 施設をもつといわれるビンツルを有するマレーシアLNGトレードの中枢で 10 万バレル / 日の原油生産を行っている地域でもある そしてサバ沖は マレーシアでの大水深海域での探鉱 開発の火付け役ともなったサバ沖 K 鉱区キケー油田 (1999 年発見 現在開発準備中 ) や 今後開発に移行される計画となっているカカップ (Kakap) やピサンダン (Pisandan) ウバ (Ubah) マリカイ (Malikai)( 以上マーフィー ) グムスット ( シェル ) クババンガン ( ペトロナス ) などがある ( 表 7) マレーシアにおける未発見埋蔵量については 原油に関しては50%(43 億バレル ) が海洋部にあって またそのうち20%(8 億バレル ) がサバ沖大水深海域のタービダイト鉱床に集積している 浅海域のデルタ鉱床 (13 億バレル ) も含めれば サバ沖の未発見埋蔵 図 1 インドネシアの探鉱状況 23 石油 天然ガスレビュー

量は21 億バレルとなり 全マレーシアの原油未発見埋蔵量の50% を占めると見られている ( 表 8) 一方 ガスについては未発見埋蔵量の50%(50 兆立方フィート ) は海洋にあるが サバ沖大水深海域のタービダイト鉱床に集積しているとみられるガスは そのうちの7%(4 兆立方フィート ) にすぎず サバ沖大水深海域は石油指向といってよい ( 表 9) このうち大水深海域の探鉱 開発で今 最も脚光を浴びているのがサバ沖である ( 表 10) キケーは水深 4,400フィート ( 約 1,340 メートル ) のところに位置し 油層の有効層厚は500フィート ( 約 153メートル ) 期待される埋蔵量は 4 6 億バレルとされている 開発システムは2004 年に公表されており SparとFPSOの組み合わせで キケーに隣接するフィールドと併せて開発される計画となっている 生産開始は2007 年後半とされており12 万バレル / 日からスタートし5 年間かけて15 万バレル / 日となる計画である マーフィーは 2006 年 1 月キケーの北東 110キロメートルに位置するP 鉱区の操業権も取得し 本大水深海域一帯を今後探鉱 開発していく計画であるが P 鉱区のロフプロスペクトでの試掘井はドライであった模様である シェルは2006 年 1 月 本海域で4 番目の成功を見ており 今後マーフィー以上に本海域での主導的役割を演じていく可能性をもっている (G 鉱区 : マリカイ [2004 年 ] ウバ[2005 年 ] ピサンダン [2006 年 ] J 鉱区 : グムスット [2004 年 ]) またサバ東方沖ならびにサバ南東沖においても水深 200 4,000メートルの海域で探鉱を進めようとしている サラワク エリアでの大水深海域では ニューフィールドがオペレーターとなってペトロナスと探鉱作業を行っている2C 鉱区がある 水深は200 Offshore Province Indonesian Oil Resources By Geologic Province Undiscovered Oil* (mil. bbl) Basin Mean P95 P5 Water Depth (m) Turbidities Kutei 4,560 1,171 9,144 250-2,800 Deltaics Kutei 1,593 501 3,022 0-250 Sunda-Asri Northwest Java 481 175 880 3-400 Ardjuna Northwest Java 170 66 320 0-400 East Natuna Greater Sarawak 192 41 455 150-250 Bampo-Cenozoic North Sumatra 100 39 192 0-600 Mergui North Sumatra 71 4 171 0-2,000 South Lacustrine Malay 19 5 38 40-100 Total 7,186 2,002 14,222 Onshore 表 3 インドネシアの地質区分別原油資源量 Brown Shales Central Sumatra 983 409 1,654 Lahat/Talang Akar South Sumatra 708 284 1,308 Deltaics Kutei 682 215 1,295 Fold and Thrust Belt Kutei 432 52 1,046 Ardjuna Northwest Java 114 44 213 Bampo-Cenozoic North Sumatra 100 39 192 Mergui North Sumatra 8 0 19 Total 3,027 1,043 5,727 Total Indonesia 10,213 3,045 19,949 * Including natural gas liquids. Source:US Geological Survey,World Assessment 2000. Offshore Province Indonesian Gas Resources By Geologic Basin Undiscovered Gas (Bcf) Basin Mean P95 P5 Water Depth (m) Turbidities Kutei 25,687 5,829 53,979 250-2,800 Deltaics Kutei 25,030 8,390 46,246 0-250 Bampo-Cenozoic North Sumatra 4,149 1,745 7,266 0-600 Ardjuna Northwest Java 2,710 1,140 4,716 0-400 Mergui North Sumatra 2,432 84 5,217 0-2,000 East Natuna Greater Sarawak 1,963 494 4,141 150-250 Sunda-Asri Northwest Java 874 233 1,835 3-400 South Lacustrine Malay 209 60 415 40-100 Total 63,054 17,975 123,815 Onshore Lahat/Talang Akar South Sumatra 18,250 6,951 31,999 Deltaics Kutei 10,727 3,596 19,820 Bampo-Cenozoic North Sumatra 4,149 1,745 7,266 Brown Shales Central Sumatra 4,078 1,746 7,270 Fold and Thrust Belt Kutei 3,313 454 7,851 Ardjuna Northwest Java 2,632 1,111 4,566 Mergui North Sumatra 270 10 580 Total 43,419 15,613 79,352 Total Indonesia 106,473 33,588 203,167 In gas fields 89,342 29,002 167,877 In oil fields 17,131 4,586 35,290 表 4 インドネシアの地質区分別ガス資源量 2006.9 Vol.40 No.5 24

特集 : 深海へ向かう世界の石油 天然ガス開発事業動き出したインドネシア マレーシアの大水深石油 ガス開発 表 5 インドネシアの油ガス田 ( 西部海域 ) Shallow / Deepwater Oil / Gas Fields Shallow Water Western Indonesian Offshore Oil and Gas Fields* by Geographic Area North Sumatra Natuna Sea Southeast Sumatra Northwest and Central Java Oil Fields R, H-K-L-M, Langsa Belida, Belanak, Kakap, Widuri, Cinta, Rama, Bima Ardjuna, Arimbi, Anoa, Terubuk, Udang, Intan, Indri, Aida, Sundari NW Corner Ikan Pari, Forei Selatan, Nora, Kitty, AA, AV, Krishna, AVS, NWJ APN Banuwati, Asti Gas Fields J1, J2, A, S, NSO Tembang, N. Belut, W. Belut, Kepodang Deepwater Gas Fields Jambu Aye Utara S. Belut, D-Alpha * Fields in italics are prospects. Source: Pertamina and oil company sources. 表 6 インドネシアの油ガス田 ( 東部海域 ) Shallow / Deepwater Oil / Gas Fields Shallow Water Eastern Indonesian Offshore Oil and Gas Fields* by Geographic Area East Kalimantan Madura Island East Java, Papua West Papua, Timor Sea Oil Fields Attaka, Sepinggan N. Camar, S. Camar, Poleng JS53A Stupa, Jumelal Kama Oyong, Jeurk, KE-2, KE-6, KE-30, KE-39, Bukit Tua Sidayu Gas Fields Tunu, Peciko, Stupa BD, Maleo, Payang, Anggur Pagerungun, W. Kangean Vorwata, Wiriagar Deep Deepwater Oil Fields Gas Fields W. Seno, Ranggas Sisi, Nubi, Pari Bangka, Aton Gehem, Gula, Maha Gandang, Gada Sadewa, Papadayan Halimun Sirasun, Batur, Terang MDA Roabiba, Wos, Ubadari Ofaweri, Abadi * Fields in italics are prospects. Source: Pertamina and oil company sources. 表 7 大水深海域原油生産予測 単位 :1,000BPD Potential Deepwater Oil Production Profiles Field Operator Block 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 Indonesia 16 25 36 45 60 75 105 120 West Seno Chevron Makassar Str. 16 25 36 45 60 60 75 90 Ranggas Chevron Rapak 15 30 35 Gehem Chevron Ganal 10 Malaysia 0 0 0 0 15 85 130 155 Kikeh Murphy Block K 15 85 120 120 Kebabangan Petronas Block G 10 20 Kakap Murphy Block K 10 Gumusut Shell Block G 5 Source: Company data and Energy Intelligence Research projections. 25 石油 天然ガスレビュー

2,000メートル これまでにペトロナスが取得している三次元 (3D) 地震探鉱データをもとに 今後掘削深度こうせい 6,000メートルの坑井を 最低 2 坑掘削する計画である また ヘスがオペレーターとなり トタールとペトロナスで探鉱作業を行っているF 鉱区は 水深 200 1,200 メートル 既存の2D 地震探鉱データの5,000キロメートル分について再解釈した後 3D 地震探鉱を実施している 既にいくつかの有望なプロスペクトが抽出されおり 今後探鉱作業が進められていく見込みである 開発システムであるが サバ沖やサラワク沖の開発を行ううえで最適な生産システムと考えられているのは FPSOで またサバ南東沖ではSparや TLPが最も適していると考えられている ( 図 2) Offshore Province Malaysian Oil Resources By Geologic Province Basin Undiscovered Oil* (mil. bbl) Mean P95 P5 Water Depth (m) Brunei-Sabah Deltaic Baram Delta/Brunei-Sabah 1,255 382 2,450 0-150 South Malay Lacustrine Malay Basin 1,158 321 2,356 40-100 Brunei-Sabah Turbidites Baram Delta/Brunei-Sabah 813 237 1,572 75-2,900 Balingian Greater Sarawak 615 150 1,296 0-200 Central Luconia Greater Sarawak 256 84 500 50-200 South Malay Coaly Malay Basin 163 49 309 40-100 Bampo-Cenozoic North Sumatra 13 5 25 3-400 Total 4,273 1,228 8,508 Onshore Brunei-Sabah Deltaic Baram Delta/Brunei-Sabah 66 20 129 Balingian Greater Sarawak 30 7 65 Total 66 20 129 Total Malaysia 4,339 1,248 8,637 表 8 マレーシア地質区分別原油資源量 * Including natural gas liquids. Source: US Geological Survey, World Assessment 2000. なお ペトロナスはマレーシアを東南アジア海域での大水深開発のハブとすべく ペトロナスの子会社 Malaysia International Shipping Corporation (MISC) 傘下にあるMalaysia Marine and Heavy Engineering(MMHE) を前面に押し出して 大水深用施設の建設や増強修理等をさせていく計画である 特に タンカーからFPSOへの改造について注力していく計画で MISCは現在 4 件のFPSO 建造プロジェクトを進めており 今後 2 3 年のうちに10 15 件のFPSOプロジェクトを抱えるものと予想されている このように 石油 ガスの探鉱 開発自体についてはもちろんのこと それを取り巻くプラットフォーム建造や関連サービスに対しても官民あげて力を入れており 本地域における大水深海域の探鉱 開発 生産の全ての局面でハブ的な環境を確立しようとする戦略が明確に見えており 注目に値する Offshore Province Malaysian Gas Resources By Province Basin Undiscovered Gas (Bcf) Mean P95 P5 Water Depth (m) South Malay Lacustrine Malay Basin 17,986 5,253 35,137 40-100 Central Luconia Greater Sarawak 15,067 5,273 27,624 50-200 Brunei-Sabah Deltaic Baram Delta/Brunei-Sabah 6,830 1,978 13,744 0-150 Brunei-Sabah Turbidites Baram Delta/Brunei-Sabah 3,625 938 7,392 75-2,900 South Malay Coaly Malay Basin 3,542 983 6,989 40-100 Balingian Greater Sarawak 2,138 568 4,460 0-200 Bampo-Cenozoic North Sumatra 547 230 958 3-400 Total 49,735 15,223 96,304 Onshore Brunei-Sabah Deltaic Baram Delta/Brunei-Sabah 359 104 723 Balingian Greater Sarawak 79 20 170 Total 438 124 893 Total Malaysia 50,173 15,347 97,197 In gas fields 40,147 12,623 76,362 In oil fields 10,027 2,723 20,834 表 9 マレーシア地質区分別ガス埋蔵量 Source: US Geological Survey, World Assessment 2000. 2006.9 Vol.40 No.5 26

特集 : 深海へ向かう世界の石油 天然ガス開発事業動き出したインドネシア マレーシアの大水深石油 ガス開発 表 10 マレーシア海域 / 水深別油ガス田 Shallow / Deepwater Oil / Gas Fields Shallow Water Malaysian Oil and Gas Fields* by Geographic Area Peninsular Malaysia Sarawak Sabah Malaysia-Thailand Joint Development Area Oil Fields Tapis, Seligi, Bekok, Pulai, Dulang, W. Patricia, Temana, Bayan, Barton, St. Joseph, Erb West, Bunga Seroja, Cai Nuoc, Guntong Bintang, Irong Barat, Siwa, W. Lutong, Bokor, Betty, South Furious, Tembungo Bunga Orkid Angsi, Malong, Sotong, Tukau, Baronia, Fairley-Baram, SE Collins, Kimbalu, SW Emerald Larut, Tinggi, Jerneh Lawang, Block A (21), Block C (2,13), Samarang Lokan, Sumandak, Piatu, Abu, Bertam Rhu Block D (18,21), Block E (1), Tigi Pagan Block F (11), Bentara, Balal Patricia, Apih, North Acis Gas Fields Besar, Belumut, Duyong Block A (3), Block B (11), Kinarut, Titik Terang, Nosong, Cakerwala (MTJDA portion) Deepwater Oil Fields Resak, Angsi, Cakerwala, Block C (24), Block E (4,6,18) Glayzer Jengka, Muda, Senja Bergrading Deep Noring, Block F (6,9,11,12,14,23,27,28), Inas, Bujang Block K (4,5), Block F (2,38), Block B (12), Kumang, Tenggiri Marine Kikeh, Kakap, Gumusut, Malikai, Senangin, Ubah, Kebabangan, Pisandan, Kamunsu Gas Fields Serai, Jintan, Helang, Kebabangan Block M (1,3,4,5) Block G (7) Saderi, Bijan, M3 South, Cili Padi * Fields in italics are prospects. Source: Petronas and other oil company sources. 出所 :the U.S. Minerals Management Services( 米国内務省鉱物管理局 ) 図 2 大水深生産システム概念図 27 石油 天然ガスレビュー

4. 今後の展望 インドネシアとマレーシアでの大水深海域開発には 現時点で次のようなプラスとマイナスの要因がある プラス要因 : 原油価格の高騰が続いており 油価 ガス価が高値で安定していること 探鉱 開発にかかわる政府側のインセンティブが強い状況にあり 政府は炭化水素資源の探鉱 開発に対し強い奨励を行っていること 他のエリアと比較して 競合するプレーヤーが比較的少ないこと 既存インフラが利用できる地域があること ( カリマンタン東のボンタン地域やサラワクのビンツル地域 ) 消費地あるいは潜在的マーケットに比較的近いこと 地質的ポテンシャルが高いと見込まれている割には探鉱自体が進んでおらず 相対的に成功確率の高いエリアが多数残されていること スリムホール掘削等 掘削コストの低減 リグコストの低減が研究されつつあること 開発 生産関連施設の製作所 造船所がすぐ近くにあること ( プロジェクトコントロールがしやすく またデリバリー期間も短くてすむ ) マイナス要因 : 昨今の資機材コスト上昇のため プロジェクト コストがインフレーション傾向にあること ( 大規模プロジェクトでは特に影響を受けやすい ) プロジェクトを進めるにあたり 地方政府の力が台頭してきており 中央政府のみならず地方との関係も考慮しなくてはならなくなってきたこと 探鉱 開発が進んでいないということは 当局側の経験も少なく スムー ズな手続き等が難しくなる可能性があること 環境保全のためのレギュレーションが厳しくなりつつあること 国境問題が未解決な地域での探鉱 開発となる場合があること ( インドネシア マレーシア間のマカッサル海峡北部マレーシアサバとの境界問題 またマレーシア ブルネイ間 マレーシア 中国間の南シナ海境界問題 また将来的にユニタイゼーションを行う場合のマーフィー シェル等 オペレーター間の問題もある 比較的未探鉱の地域であるため 参考となる地質データが少なく 地質モデルの精度が高くないため探鉱リスクが高いこと また開発 生産コストが高いこと インフラ整備状況が特定地域を除けばメキシコ湾等と比べてやはり低いこと 一時的に強い季節風が吹いたり 強い潮流のある海域があることから 浮遊式生産システムや海底生産システムに少なからず影響があること ( 特にサバ沖 クテイ堆積盆 ) ガスを扱える浮遊式生産システムが必要となってくる場合もあること ガス供給が国内へ転換されつつあるなど ガス情勢が見えないこと ( 特にインドネシア ) テロリズム 地震等のリスクも相対的に高いこと ( 特にインドネシア ) このように インドネシアとマレーシアでの大水深海域での探鉱 開発は 自国ならびに周辺国への原油供給を引き上げることのできる大きなポテンシャルがある一方で 政治的リスク 地質的リスク 地政学的なリスク等 様々なリスクを抱えていることもまた事実である しかし 昨今の石油ガス政策にかかわる要人の動きや発言を見る限り この両国における石油天然ガス政策は ここ2 3 年で大きく進展していく可能性がある インドネシアでは 既存鉱区からの生産だけで新規油田からの産出増がなければ 通年 90 万 9,240バレル / 日にとどまるとの予測もある (BPミガス) 一方 開発計画が承認されている新規 12 鉱区だけでは2 万 4,250バレル / 日の増産ができるにとどまるため さらなる大規模油田の新規探鉱 開発を促進していきたいという背景もある そうしたなか プルノモ エネルギー鉱物資源相はこの7 月 同省のトップ人事を刷新して 石油 天然ガス政策てこに梃入れしていく布陣に整えた たとえば 新石油ガス総局長には大臣の腹心であった事務次官ルルク スミアルソ氏を就任させ また大臣直属の経済 投資担当専門官には石油ガス局探鉱生産課長のノフィアン タイブ氏を就任させた 大水深海域での開発にかかわる具体的政策については 今のところ明らかにされてはいないものの 今後 早急に生産量を増加させていくというインセンティブは強く感じられる体制が整えられた また マレーシアでも ペトロナスのモハマド ハッサン マリカン社長兼最高経営責任者 (CEO) が マレー半島部をはじめとして南シナ海やサバ サラワク沖で新たに油田やガス田を開発し 将来的に生産量を維持していきたいという考えを示した 同社アブドゥル カリム副社長も 深海での油田 天然ガス田開発に力を入れる方針から 少なくとも2010 年までは深海油井の掘削に力を入れ 2006 年は東マレーシアで深海油 ガス井 10カ所 2007 年には10カ所 2008 年には11カ所 2006.9 Vol.40 No.5 28

特集 : 深海へ向かう世界の石油 天然ガス開発事業動き出したインドネシア マレーシアの大水深石油 ガス開発 の深海油井掘削を予定していることなどを表明している このようななか ペトロナスは生産分与協定に基づいて米マーフィー オイルと共同開発で 2007 年第 4 四半期にもサバ州沖 K 鉱区にあるキケー油田で日量 12 万バレルで生産を開始し また同州沖 J 鉱区内のグムスット油田でもシェルとコノコ フィリップスの2 社と共同開発で 2011 年までに日量 15 万バレルの水準で生産を始めるという計画を着実に進めつつある 大水深海域での探鉱 開発には長い年月が必要である しかしながら 本海域では 1990 年代後半からの継続的な探鉱が 2000 年前後からの油 ガス田の相次ぐ発見につながり 今後 2 3 年のうちにマレーシアではサバ沖 またインドネシアではクテイ堆積盆地 を中心として 大水深海域での探鉱 開発が大きく進展していくことは間違いないであろう 今後 現在メインプレーヤーとして動いている各社の動向を中心として 本地域における大水深海域での探鉱 開発について 目が離せない状況となってきた 執筆者紹介 正田伸次 ( しょうだしんじ ) 早稲田大学大学院理工学研究科修了 石油公団入団後 米国およびロシアでの駐在を含め 技術部 技術センター等勤務を経て 現在ジャカルタ事務所所長 29 石油 天然ガスレビュー