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Transcription:

スペクトラム アナライザは無線に携わるエンジニアにとって基本的なツールの一つではありますが 実際にお客様先にお伺いすると思った以上にスペクトラム アナライザの使用方法についてご存じないてご存じない方がおおくいらっしゃいます それほどスペクトラム アナライザという製品は構造上の制限が多い測定器で 使い方を間違えると正しい測定ができない測定器です 今日のセッションでは では どのように使えば正しい測定になるのかをご理解いただき また最新のディジタルIF 技術を用いたスペクトラム アナライザでは これらの問題点をどのように解決しているかをご説明したいと思います 1

こちらが本日のアジェンダです まず 典型的なスーパーヘテロダイン方式を用いたスペクトラム アナライザの構造とその動き方 そして使用上の注意点についてお話します そして使用上の注意点にその後 ディジタルIF 化により 最新のスペクトラムアナライザがどのように動いているかをお話します そして最後にこのディジタルIFを使用したスペクトラム アナライザの具体的な製品ラインナップをご紹介し まとめとさせていただきます では早速ですが 典型的なスーパーヘテロダイン スペクトラムアナライザから話をすすめていきましょう 2

まず 皆様ご存知かとは思いますが念のためにスペクトラム アナライザのディスプレイからご説明しておきましょう スペクトラム アナライザは 横軸が周波数 縦軸が電力で周波数ごとのパワーを測定する測定器です よく謝った認識をされる方がいますが 周波数を測定する測定器というよりは周波数ごとのレベルを測定する測定器です 周波数確度はカウンターの正確差の比ではありませんので そこは注意する必要があります 縦軸はdBm すなわちログのパワーが表示されます 縦軸の一番上部がリファレンス レベルとよばれ 通常のスペクトラムアナライザではここが最も正確に測定できるポイントです 横軸の周波数は 通常スタート ストップ周波数 または中心周波数とスパンを設定することで比測定対象周波数を特定します また 測定スペクトラムの周波数分解能を変えるために RBW 分解能帯域幅を設定できます さらに VBW ビデオバンド幅を設定することで 変動の激しい信号にアベレージング効果をもたらすことで平滑化することができます これがスペクトラム アナライザの概要です 3

次に内部構造について少しだけお話します こちらは典型的なスーパーヘテロダインのブロック図です 大きく分けて RFブロックとIFブロックに分かれます RFブロックでは 入力信号を信号処理しやすいIF 周波数に落とすためのダウンコンバータがあります ダウンコンバータのローカル周波数は可変掃引しますが IF 周波数は固定された信号のみをモニタしますので 仮想的にRF 信号が掃引しているような信号処理となります よって スペクトラムアナライザは数 10GHzもの広い周波数を一度に掃引することができます IF 信号は通常 20MHz などの低い周波数ですが そのあと IF ゲインアンプ アッテネータ IF フィルタ ( いわゆる RBW のことです ) リニアをログに変換するログアンプ 検波器 ビデオフィルタをとおってディスプレイに表示されます 最近では IF フィルタ以降に AD コンバータを使用して 検波器以降は演算で行うケースも多くなってきています 4

スペアナを正しく使う意味で知っておきたいのは RF アッテネータの意味です RF アッテネータはダウンコンバータで使用されるミキサへの信号の過入力を防ぐためにあります 損傷レベルの保護だけでなく ミキサのリニアリティが損なわれるコンプレッションポイント以上のパワーを防いだり 2 トーンや変調信号などで発生する 3 次相互変調歪みを防ぐ意味で ミキサへの入力レベルをコントロールします 通常ゲインコンプレッションポイントは ハイエンドで +3dBm~5dBm 程度 低価格機では0dBm 以下が一般的です スペクトラムアナライザに例えば +10dBmの信号を入力する際には 少なくとも10dB または 15~20dB 程度のアッテネータを入力しないとミキサのリニアリティが保証できなくなりタを入力しないとミキサのリニアリティが保証できなくなり 歪みも発生するので注意が必要です 5

次にIF 部分について少し話をすすめていきたいと思います IF 部分で最も重要な部品はIFフィルタです いわゆる RBW のことです 6

RBWは分解能帯域幅の略ですが これを可変させることにより 管面上に表示されるスペクトラムの分解能を変更することができます また RBW にはノイズフロアを下げる重要な役割もあります RBW はフィルタですので 帯域が広いほどトータルのノイズ量も増加します 帯域が狭まればノイズ量も減少します このノイズ量は RBW の幅に比例しますので RBW が 1/10 になると ノイズは 10dB 下がります 図でみていただくと明らかなように 1MHz, 100kHz, 10kHz と RBW を可変させることでノイズフロアが減少します ただし フィルタには時定数が存在するために 急峻なフィルタは応答速度が遅くなります RBWを下げるとスペアナの掃引速度が遅くなるご経験はあるかと思いますが この掃引速度は以下の式によって一意的に定まります RBWの2 乗に掃引速度は反比例し スパンに比例します つまり高速に測定したい場合には スパンを狭くするか RBWを粗くしなければなりません こちらの例のように 100kHz RBWで1.9mscが 10kHzにすることで 190msecと100 倍遅くなります このように 掃引速度とノイズフロアはトレードオフの関係にあります 7

次に IF 部にあるゲインアンプについてご説明します 8

IF ゲインアンプの役割は RF アッテネータと一緒に考えるとわかりやいです 例えば +30dBm (1W) の信号がスペアナに入力されるとしましょう このとき 仮にノイズレベルが- 90dBmだとします つまりSNは120dBです ミキサに入る信号が +30dBmと非常に高いので 40dBのアッテネータを用いて 入力レベルを- 10dBmまで下げます アッテネータで信号レベルを40dB 落としてもノイズレベルは落ちるわけでありません すなわち SNは120dBから80dBと悪化します 実際の信号は +30dBmですので IF 信号処理としては40dB 上にオフセットをかけてあげる必要があります このとき S/N は固定のままオフセットされるので 結果的にノイズレベルは 40dB 悪化します つまり アッテネータを増加すると 同じだけノイズフロアが増加します これは内蔵アッテネータでも外付けのアッテネータでも理論的には同じ現象となります このオフセットを与える動作は IF 部のアンプやアッテネータにより調整がなされます 9

このアッテネータとノイズフロアの関係 そしてアッテネータとミキサの歪みの関係を図で示したのが こちらのダイナミックレンジチャートとなります このグラフは 横軸がミキサへの入力レベルをさしています 縦軸が SN 比つまりダイナミックレンジです 緑の線はノイズフロアを意味しています これは ミキサ入力レベルが下がれば下がるほど アッテネータの量が増えることを意味します 赤の線はミキサの高調波歪み 青の線はミキサの 3 次歪を意味します これらは 逆に ミキサ入力レベル すなわちアッテネータの量が増えれば増えるほど歪み量が減ることを意味します このノイズフロアと歪みは互いにトレードオフとなりますので この交点 こちらの例では-30dBmの入力レベルの際に 最もダイナミックレンジがとれる測定が可能となります これを3 次最大ダイナミックレンジといいます このように スペアナのスペックを理解することで お手持ちのスペアナを歪みなくどこまで最大のダイナミックレンジが稼げるかを把握するできます 10

この3 次ダイナミックレンジを具体的にお話します 例えば アンプのような非線形デバイスに2トーン信号を入力するケースを考えます スペアナの管面には非常に大きいIMが見えるわけですが 実際にアッテネータをこの状態で可変してみましょう すると スペアナのミキサが歪んでいる場合には IMDのレベルは下がります 逆に可変しない場合は これはデバイスの歪みと考えられます このようにアッテネータを変動することで ミキサの歪みなのかデバイスの歪みなのかを切り分けることができます 11

では 一つの例ですが この信号はひずんでいるかどうか見てみましょう 一見大したパワーを入力していないので正確な測定ができているように思えます では実際にアッテネータを入力してみましょう このようにアッテネータを 28dB まで増やすと信号レベルが下がりました つまり 最初の測定結果はスペアナの内部ひずみです しかし なぜこの測定結果がでたのでしょう? 12

では 周波数をずらしてみましょう すると このように実は非常に大きな信号が横に存在することがわかりました つまり スペアナの管面に出てなくても ミキサに信号が入力されている限り ミキサは歪む可能性があるからです ミキサを歪ませずに正しい測定を行うには 事前に全帯域に入力されるパワーを確認しておくことが必要です なお スパンの範囲内で非常に大きなパワーが入力される場合は 最近のADコンバータを使用したスペアナではオーバーロードの表示がされます しかし 帯域外の大信号は ADC に入力されないので やはり歪んでいるかどうかはわかりません これは注意が必要です 13

ここまでで RBW, 掃引速度 ノイズフロアやダイナミックレンジなどについてお話しました では その測定結果は果たして正しいのかを疑ってみます スペアナは基本的に振幅レベルを測定する測定器です 実はスペアナは3つの確度に関わる重要な要素があります まず第 1に確度には周波数依存性があります 一般的にマイクロ波領域になればなるほどスペアナの確度は落ちます 次にIFゲイン誤差という確度があります これはリファレンスレベルでどれだけ確度があるかの指標です さらに 一番深刻なのはログスケール誤差です スペアナは リファレンス部が最も正確に測定できますが 下にいけばいくほどレベルの誤差は大きくなります これは IF 信号処理はリニアで行っているものを ログに変換するためです したがって 多くの計測器メーカーが レベル確度 0.5dB などと言っているのは このリファレンス部で しかも 1GHz などの特定の周波数ポイントのみの仕様のことです これには注意が必要です 14

15

実際に代表的なアナログスペアナのスペックをデータシートから見てみます レベル確度には様々な要素があり これらの二乗平方和で総合レベル確度をスペックします それでもこの仕様はあくまでもリファレンスレベルでの誤差であり 管面下にいくと誤差要因が広がります 16

では実際に どれだけ誤差があるかを実測した例がこちらになります 上から 弊社 8591E 3Ghz の低価格スペアナで すでに販売完了したものです 真ん中は他社のスペアナですでに 2 年前に販売完了したミドルレンジモデルです 一番下はこちらも他社製品で現行品のハイエンドモデルです こちらの例では 同じ信号を 画面の半分以下とリファレンス部で測定した結果ですが ご覧いただくように 0.25dB, 0.34dB そしていまどきのモデルでも 0.14dB も誤差が生じます 測定の誤差としてこれらのスペアナは ±1dB 以上と明記されていることもありますが 測定手法によって結果が異なるのはあまりよろしくありません 17

こちらは典型的な測定ミスの例です よく見栄えが良いように信号を画面の真ん中に置くことがありますが これは明らかに測定ミスです 例えば このような側帯波を測定するケースを考えましょう キャリア信号は上 3 桁で測定し ひずみは下半分で測定し このレベル差をデルタマーカーで測定しています この測定をリファレンスレベルを変えてやってみましょう そうすると 0.1dBの測定結果に差がでました このように誤差要因を防ぐためには適切な設定での測定が不可欠となっています 18

さて ここまでは従来のアナログスペクトラムアナライザの動作と その使用上の注意点についてお話をすすめてきました それでは最近のスペクトラム アナライザはどのようなになっているかに話を移していているかに話を移していきます 19

最新のアジレントのスペクトラムアナライザでは フィルタ以降をディジタル化するだけでなく IF セクションを全てディジタル化するディジタル IF 方式を採用しています これは現在市販されているスペクトラム アナライザではアジレントのみが完全にIFセクションをディジタル化することに成功しました このようにIF 信号に落ちた信号は全てADCによりディジタル化され その後 FPGAによりアナログと同じ動作原理がディジタル的に処理されます ここでの最大のメリットは誤差成分を補正できるようになった点です ここで FFTと何が違うのか? について少しお話します 20

( このスライドは間に合わなかったのでお手元にありません ) ディジタルIFスペアナとFFTアナライザは構造的に似通っていますが 動作として明らかに異なります まずFFTが単純ですので先にご説明します 仮に0dBmの信号が5トーン -50dBmの信号が2トーンのスペクトラムを測定したとしましょう FFTアナライザはこのスペクトラムを時間軸として全てADコンバータに入力し FFT 変換することでスペクトラムを表示します このとき ADコンバータには 全ての電力が入力されます つまり 総電力 6.9dB の信号が入力されますので ADコンバータのレンジは6.9dB 以上に設定されます ADCのビット数を仮に 14 ビットとしますと 理論的なダイナミックレンジ限界は約 84dB となります 実際には有効ビット数はより少ないので70dB 程度が限界です すなわち FFT 処理の場合は 最も低い測定レベル限界は-77dBmとなります 実際にはこれよりも10dB 以上悪化します また 帯域幅が広いため 帯域内のノイズが入力されるためにS/Nが悪化します ディジタル IF スペアナの場合には ADC には限られた電力のみが入力されます スペアナが掃引している際に RBW よりも少し広いアナログフィルタによりプリフィルタがあり これにより帯域外電力をカットし S/N を改善させます したがって AD のレンジを比較的低く設定できます さらに各信号入力レベルに応じて ADC のレンジをコントロールできますので 高い信号を測定するときと 低い信号を測定するときに最適なレンジで測定できます つまり ADC のビット数の制限なくダイナミックレンジを稼ぐことができます 21

では 具体的にどのようなメリットがあるのでしょう 大きくは5つのメリットがあります 高速掃引 ダイナミックレンジ改善 不確かさの除去 リアルタイムオートレンジ そしてリアルタイム測定です 22

まず掃引速度に着目してみましょう すでにお話したように掃引速度はRBW, スパン そしてIFフィルタの持つ時定数により決まってしまいます 例えば 1GHzスパンで 3kHz RBW, 3kHz VBWで測定しますと 弊社の比較的古い8563ECというモデルでは280 秒の掃引時間がかかります これでは生産性は非常に低くなってしまいます では PSA ではどうでしょうか? PSA ではアナログ IF フィルタではなく ディジタルフィルタを採用しているため 時定数を高速化できます 8563EC にくらべて半分も速度の改善ができます そして さらに FFT 掃引モードを使うと 11 秒の高速掃引が可能です これならば常識的な時間ですので 実際に使用に耐えうる速度です 実に 4 分 30 秒もの高速化を実現しました 23

実際に他社スペクトラムアナライザとも掃引速度を比較してみますと このFFT 掃引の高速は郡を抜いております 他社スペクトラムアナライザでもFFTモードが用意されていることがありますが VBWの計算ロジックをFFT 上で実現できていなかったり FFTの帯域幅制限があることがあります PSA/MXAなどの弊社ディジタルIFスペクトラム アナライザでは 特に帯域幅の制限なく ブロックでFFTを実行していきますので 掃引時とFFT 時に特に違和感なく また自動的に最適な方法を切り替えることで高速化が実現されます 24

ディジタルIFフィルタでは時定数の高速化だけでなく 細かい分解能設定も可能になります 例えば 3kHz から 1kHz に RBW を変えるといきなり掃引が遅くなり見たい信号が見れないときがあったりしまたりしますが 分解能を細かく設定できることで掃引速度のトレードオフの犠牲をできるだけ最小限にすることができます 25

同じことを古い 8563EC で実施すると やはり 1-3-10step になります 26

ディジタル処理を行うことでダイナミックレンジの改善を行うこともできます これは ACP 測定を行う際にスペアナの残留ノイズを打ち消すテクニックであるノイズ コレクションの例です ACP 測定では ダイナミックレンジを最適化するために 例えばアッテネータを調整しミキサレベルを下げることで スペアナのダイナミックレンジを最適化するのが一般的です すでにお話したようにアッテネータを入力することによりノイズフロアは上昇しますが これはあくまでも仮想的にノイズフロアがあがっただけであり 実際にノイズが増えているわけではありません そのほかにもスペアナの内部には打ち消すことの可能なノイズ成分が多数存在します ノイズコレクション技術は このようにACP 測定時にアナライザの都合で加算されているノイズを計算アルゴリズムにより打ち消す技術で これを使用することにより 例えばW- CDMAのACP 測定の例ですが -67dBcの測定結果を-69dBcに改善することができます 27

ディジタルIFはさらにスペアナの振幅確度を劇的に向上させます これはアナログでのブロックダイアグラムですが アナログスペアナには非常に誤差成分が大きくなる要因が多く含まれます アナログスペアナには非常に誤差成分が大きくなる要因が多く含まれます 28

ディジタルIFにすることにより IFゲインアンプを無くすことができ かつログの誤差をほぼ打ち消すことができます したがって リファレンスレベルをどこに設定しようが どの位置でどの位置でスペクトラムを測定しようが もうディジタルIF 化することで関係なくなるようになりました これはエンジニアにとって 非常に利便性が向上されます 29

実際にスペックシートを比較してみると 様々な誤差要因が最小限に抑えられていることがわかります 仕様では ±0.26dB の誤差 常温での 95% 確度は 0.24dB そして typical 値は 0.17dB と もはやパワーメータ並みのレベル確度を達成します 30

実際にパワーメータと PSA において 100 回同じ測定をして 再現性を比較してみました 測定自体には 0.035dB の差がありますが -20dBm の測定値に対してもはや無視できる誤差範囲です このようにパワーメータに限りなく近づき 再現性を高くパワー測定が可能になりました 31

冒頭にお話したログの誤差はスペアナでの測定上では深刻な問題ですが ディジタルIFのスペアナにはもはやただ画面を動かしているだけにすぎません また ADC 自体のリニアリティも ADCディザによりリニアリティを向上することにより この図では SGで10dBステップで信号をゼロスパンで測定していますが 下半分以下の管面でも 非常に正確に測定が実行されているのがわかります 32

最近のスペアナでもADCによるディジタル処理をすればログ誤差がなくなるわけではありません これは他社の最近のスペアナですが アッテネータを固定して純粋にリファレンスレベルだけを変動さアせたときのレベル測定誤差を見ていくと 測定位置によって0.1dB 以上の誤差が発生することがわかります つまりアナログ時代の問題を引きずっている典型的な例です 33

さらにADCのレンジングがリファレンスレベルにより決まるスペアナもあります これには注意が必要です リファレンスレベルを超えて信号が入力されると 上の画面のようにADCがオーバーレンジを起こし 大きく歪みを起こします リファレンスレベルを超えないか アッテネータを多めにいれておけばよいのですが 例えば非常に小さいIMを測定する際には ログ誤差があるのでレベルを上に持っていきたくなります そこで上に持っていくと今度はキャリア信号がリファレンスを超えてオーバーレンジを起こします これではまずいのでアッテネータを増加させると 今度はノイズフロアがあがって微小信号は見えなくなります これでは正しい測定はできません 34

こういったADコンバータのレンジ調整は アジレントの最高峰モデルPSAにおいては リアルタイムにレンジコントロールを行うことで リファレンスレベルやアッテネータ量とは関係なントロルを行うことでレンスレベルやアタ量とは関係なく最適なADコンバータのレンジを使うことができます これはアナログプリフィルタとACコンバータの直前のリコンストラクションフィルタの間にパワーディテクターがあり フィルタの時間遅延の間に パワーディテクタにより検出された最大パワーにACDのレンジを調整するといったロジックを採用しています 35

最後にディジタル IF スペアナのメリットとして FFT の活用によるリアルタイム性があげられます こちらの画面にあるようにホッピング信号を観測するケースを考えると 普通に掃引していると取りこぼしが発生します ではマックスホールドを使うととりあえずスペクトラムがあったことはわかりますが詳細はわかりません 36

ディジタルIFはFFTアナライザと構造的には同じですので ローカルの掃引を止めて ある特定の周波数において時間サンプリングを行うことで時間軸 FFT による周波数解析 位相測定などの多次元測定ができます さきほどのホッピング信号に関してもスペクトログラムと呼ばれる縦軸が時間 横軸が周波数 色がレベルを表すディスプレイを使うことでどのタイミングで周波数が可変するかが一目瞭然です また シンセサイザのロックアップタイムの測定などに応用することもできます このように時間的に変動する信号や突発的なノイズなどの測定にはFFTモードを活用することで今までの掃引スペアナモードでは測定できなかった現象を観測することができます きます 37

ただし FFTでは前述したようにダイナミックレンジの制限 S/Nの悪化などの問題があります また ACコンバータの速度に応じて測定できる周波数範囲に制限があります さらに一番の懸念事項は FFTといえどもヘテロダイン方式を使用していますので ミキサには全ての電力が加わります ミキサの歪みを検地するのがFFTでは困難なため まず掃引スペクトラムアナライザで全体像を把握し 必要な場合にのみFFTを使用することが望ましいと考えています 38

ここまででご説明したように ディジタル IF 技術を使用することで 高速掃引ダイナミックレンジ改善不確かさの除去オートレンジ機能 FFTによるリアルタイム測定 といった従来のアナログスペアナと比較して劇的にユーザの利便性をたかめ 正確な測定と新しい測定ができるようになりました 39

それでは 最後にこのディジタルIF 技術を採用したスペクトラム アナライザのラインナップをご紹介したいと思います 40

アジレント テクノロジーでは 低価格のハンドヘルドスペアナ ベンチトップもでるから 最高峰のスペクトラムアナライザまで様々な機種をご提案しております そのうち PSA,MXA,EXA がいままでお話したディジタルIF 技術を採用しております 41

PSA MXA EXAの代表的なスペックがこちらです ご覧いただくように総合レベル確度はこれまでのモデルよりも圧倒的に正確となり 全モデルにおいて掃引速度の圧倒的な改善 ノイズコレクションによるACP 性能改善 ログ誤差の除去 そしてFFTによるリアルタイム測定が可能です 42

最高峰の PSA シリーズには オプションで様々な機能が追加可能です 位相ノイズ 外部信号源コントロール 外部ミキサによるミリ波測定 NF 測定 8902A の代替となるメジャリングレシーバ機能 各種移動体通信等の変調解析などがオプションで機能追加できます 43

.MXA/EXAは最新のWindowsベースのプラットフォームで OS ソフトウェアは完全に共有化され 同じソフトウェアが走ります MXA/EXAにおいても最新の移動体通信から WiMAX そしてLTEの変調解析オプションがあり さらにNF 測定や位相雑音測定機能などもオプションでご提供しております 44

そして来月 7 月より MXAに新しいハードウェアオプションとしてベースバンドIQ 入力機能がリリースされます 16bit の高分解能 ADC により業界最高のダイナミックレンジを達成し またアジレントのもつ優れたInifniiumオシロスコープ用パッシブプローブ アクティブプローブがそのまま刺さるように設計されております こちらは会場のデモコーナに実機がございますので ぜひご興味のある方はお立ち寄りください 45

そして これらのPSA MXA EXAと連動して動くソフトウェアが89601A ベクトルシグナル解析ソフトウェアです FFT によるリアルタイム測定や様々な変調解析オプションを搭載しております このソフトウェアはこれらのスペアナだけでなく ロジックアナライザやオシロスコープをフロントエンドのHW として選択することにより 様々な帯域幅 インターフェースの信号の解析をも実現します 46

89601A VSAは様々なオプションにより多彩な変調解析に対応しております 本日のほかのセッションでもこのソフトウェアのご紹介を多数さしあげているかと思います 以上で製品のご紹介を終わらせていただきます 47

以上本日のまとめになりますが スペアナはその内部構造により様々な誤差要因が存在する ディジタルIFによりほとんどの欠点を補うことができる 特に掃引速度とレベル確度の向上 ログ誤差による測定ミスの除去 そしてリアルタイム測定を1 台でこなすことができます ぜひ今後スペクトラムアナライザをご検討の際には アジレントのディジタルアジレントのディジタル IF スペクトラムアナライザを採用いただければ幸いです 48

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