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The Emerging Markets Monthly PMI FOMC B/S 24 FOMC 5 23 B/S FRB B/S OPEC OPEC ZAR THB KRW MY

The Emerging Markets Monthly FRB B/S 8 25 ECB FOMC B/S FRB QE B/S 2013 FRB ECB 9 7 QE +2 7 PCE PMI

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2015 年 7 月 10 日 エマージングマーケットウィークリー 国際為替部マーケット エコノミスト深谷公勝 大島由喜 斎

The Emerging Markets Monthly... 2 CNY... 3 INR... 4 IDR 7 9 GDP... 5 KRW FTA... 6 MYR... 7 PHP... 8 SGD THB 7 9 GDP MXN NAFT

The Emerging Markets Monthly TRY 1 2 TRY FRB 9 ECB 2526 FOMC 25bp NAFTA NAFTA THB KRW CNY TWD SGD PH

The Emerging Markets Monthly... 2 CNY... 3 INR RBI... 4 IDR... 5 KRW... 6 MYR... 7 PHP... 8 BRL BCB... 9 THB GDP MXN MXN RUB... 1

一部の新興国通貨は売られるも 年初来では高値圏で推移米経済指標の改善を受けてもドル高は進まず エマージングマーケット短期見通し今週の新興国通貨は 資源国通貨や政治リスクが意識された通貨を除き安定した値動きとなった 資源国通貨については イラン石油相が増産凍結に不参加の意思を表明したことに加え サウジ

weeklyReport(Template).xls

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中国貿易統計は冴えない結果となるも 上海株が大きく値を戻したことで 新興国通貨は値持ちする エマージングマーケット短期見通し予想通り FOMC にて利上げが見送られれば 一層安定する見込み今週の新興国通貨はこれまで売り込まれていた MXN 等の資源国通貨の買い戻しや ZAR 及び TRY といった経

The Emerging Markets Monthly GDP... 5 KRW BOK bp

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チャート編 1 日経平均株価 ( 日経 225) TOPIX( 東証株価指数 ) 2,0 NY ダウ工業株 30 種平均株価 ( 米ドル ) ダウセレクト配当込み指数 3,000 28,000 26,000 24, ,000 26,000 2,0 20,000 1,0 24,000 1

Economic Indicators_  定例経済指標レポート

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Currency201207

2015 年 3 月 9 日 対外 対内証券投資の動向 (2015 年 2 月分 ) 投資信託委託会社等による対外証券投資が大幅増加 財務省の 対外及び対内証券売買契約等の状況 ( 指定報告機関ベース ) によると 2 月の対外証券投資は +2 兆 6,754 億円の取得超となり 前月の +2 兆

IMM 通貨先物のポジション動向 (2014 年 11 月 11 日時点 ) 米ドル買いポジションは 3 週間ぶりに縮小 2014 年 11 月 17 日 米商品先物取引委員会 (CFTC) が発表した IMM 通貨先物 1 によると 投機筋 (Non Commercial 非商業部門 ) による主

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<引受基準(個別)>

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人民元週間レポート 2019 年 3 月 29 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

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現代資本主義論

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TFX_フィスコ通貨ウォッチャー

サマリー 1 市場の関心は米大統領選の行方に集まっています 世論調査においてドナルド トランプ氏の優勢が報じられると 市場の更なる丌確実性が懸念され リスク資産からの資金流出が記録されました 10 月の MSCI 世界株価指数はマイナス 2.01% MSCI 新興国株価指数は 0.18% と新興国が

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○ユーロ

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CPI PMI / PMI PMI 50 MSCI VIX CBRT CBRT 16 C

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グローバル株式市場を俯瞰する~2015年8月末データで見る市場動向~

1. 30 第 1 運用環境 各市場の動き ( 4 月 ~ 6 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは狭いレンジでの取引が続きました 海外金利の上昇により 国内金利が若干上昇する場面もありましたが 日銀による緩和的な金融政策の継続により 上昇幅は限定的となりました : 東証株価指数 (TOPIX)

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米国の利上げ見送りと日本の長期化した金融緩和

ファンダの鬼・柳澤 浩と小杉 篤諭の「ファンダメンタルズの学び方、活かし方セミナー!」

【ロシア最新経済金融週報】

人民元週間レポート 2017 年 6 月 16 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

ブラジル レアル為替相場見通し ~ レアル安トレンドは終わったのか ~ 国際為替部アジア エマージングチーム Copyright (c) Mizuho Bank, Ltd. All Rights Reserved.

Microsoft PowerPoint - CSIS 【三井住友銀行】 FOMC後のスペシャルレポート(USHY).pptx

2013 年 8 月 19 日号

2018 年は激動の年 年初来 トルコ株式指数はトルコリラベースで最大で約 24% 下落し トルコリラは日本円に対して最大で約 45% 下落しました トルコ株式 * の推移 ( トルコリラベース ) /12 18/03 18/06 18

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From The FIXED INCOME Desk 2013年3月

金融政策決定会合における主な意見

Weekly

< 豪州債券市場の市況および今後の見通し > 2016 年の豪州債券市場では 金利が低下しました 年初から 2 月にかけては 中国株をはじめ世界の株式市場が下落するなど市場のリスク回避姿勢が強まる中 金利低下が進みました 1 月末に日銀のマイナス金利導入発表を受け 欧州など他国でもさらなる金融緩和期

テーパリング進行下で米国債を買い増す海外投資家

経済学でわかる金融・証券市場の話③

人民元週間レポート 2015 年 12 月 18 日発行 みずほ銀行 ( 中国 ) 有限公司 中国為替資金部

第2章_プラントコストインデックス

中国:PMI が示唆する生産・輸出の底打ち時期

FOMC 2018年のドットはわずかに上方修正

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ブラジル中国インド インドネシア ロシア 図表 新興国の消費者物価上昇率 ( 単位 :%)( 資料 :IMF 世界経済見通し ) 通常であれば 成長率が低下すれば 国内の需給バランスが緩和し むしろ物価は低下するのが自然である しかし 中国以外の カ国は逆に物価上

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1. 各国の GDP 経済見通し 1.1 名目 GDP( 国内総生産 ) 及び一人当たり GNI( 国民総所得 ) (17 年 ) 国 地域 名目 GDP GDP 構成比 1 人当たり ( 億ドル ) ( 名目 ) 名目 GNI( ドル ) アジア,9.% - うち日本 8,71.% 8,8 うち中

1. 30 第 2 運用環境 各市場の動き ( 7 月 ~ 9 月 ) 国内債券 :10 年国債利回りは上昇しました 7 月末の日銀金融政策決定会合のなかで 長期金利の変動幅を経済 物価情勢などに応じて上下にある程度変動するものとしたことが 金利の上昇要因となりました 一方で 当分の間 極めて低い長

当面の金融政策運営について(貸出増加支援資金供給の延長等、12時29分公表)

EFW( )1.doc

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Invesco Premia Plus Fund


受益者の皆様へ 平成 28 年 2 月 15 日 弊社投資信託の基準価額の下落について 平素より弊社投資信託をご愛顧賜り 厚くお礼申しあげます さて 先週末 2 月 12 日 ( 金 ) 以下のファンドの基準価額が 前営業日の基準価額に対して 5% 以上下落しており その要因につきましてご報告いたし


オーバルネクスト ETF 情報 2010 年 2 月 15 日号 ( 株 ) オーバルネクスト 東京都中央区日本橋兜町 13-2 TEL 03(5641)5777

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Outlook201806

○ユーロ

今回の金融政策報告書では 米国内の投資活動が弱いために輸出が想定ほど伸びていないとしながらも 金融業などサービス関連の好調さを示す分析や 商品価格下落がカナダ企業の投資活動を抑制する動きは底打ちしたとの指摘など カナダ景気に前向きな材料も散見されます 当面は 政策金利の据え置きを続けると見通します

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経済金融・情勢資料  15年7月 

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[ 参考 ] 先月からの主要変更点 基調判断 3 月月例 4 月月例 景気は 急速な悪化が続いており 厳しい状況にある 輸出 生産は 極めて大幅に減少している 企業収益は 極めて大幅に減少している 設備投資は 減少している 雇用情勢は 急速に悪化しつつある 個人消費は 緩やかに減少している 景気は

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(2) 資産構成割合の推移 ( 給付確保事業 ) 1 資産配分実績の基本ポートフォリオからの乖離の推移 2 実践ポートフォリオと資産配分実績の推移 3. 運用受託機関 平成 29 年 3 月末現在 2

中国 資金流出入の現状と当局による対応

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米金融政策を巡ってドル高基調が続く中 インドルピーのドルに対する下げは緩やか 2013 年以降の主な高金利新興国通貨 ( 対ドル ) の推移 110 (13 年初 =100) 通貨高 インドルピーインドネシアルピアトルコリラブラジルレアル 40 13/1 13/

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円 N 先週のメキシコペソ相場今週の見通し 12 月 17 日 - 12 月 21 日取引レンジ 5.53 円 円想定レンジ 5.50 円 円 対円レートは強含み 大幅な歳出拡大計画の発表が期待されており 歳出拡大による景気浮揚への期待が高まったことから 投機的なペソ売り

ロシア 3節 第 第3節 ロシア 1 マクロ経済動向 ロシア経済は 緩やかな回復基調にある 2014 年 7 以下 輸出 個人消費 消費者物価 金融市場の動 月以降のウクライナ危機発生及びクリミア併合に伴う 向を中心に概観する 欧米からの経済制裁に加え 2015 年以降 原油価格 の下落を主因として

低インフレ 乏しい利上げ観測労働市場に目を向けると 8 月の失業率は約 年ぶりの低水準となる5.3% に低下した 雇用者数も伸びており 一部では技術者不足の声も聞かれる RBAは今後数年 失業率は自然失業率とされる5.% を目指して低下が続くとの見方を示している ただ 賃金の上昇率は ~ 月期が前年

2016 年 メキシコペソ もとの状況と今後の 通し <メキシコペソ / 円は下落 > < 政策 利とインフレ率の推移 > メキシコペソは もとまで軟調に推移してきました しかし 原油先物価格は2016 年 2 に安値をつけて下落が続いてきた理由として 1 統領選 2メ以降 持ち直す展開

フリーダイヤル 携帯電話 PHS からは ( 土日 休日を除く 9:00~17:00) Ⅱ. 金利およびリート市場 1 は前週末 2 は前々週末の終値 1. 主要国の 10 年債利回り ~ 豪を除き低下

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2013 年 8 月 16 日 エマージングマーケットウィークリー 国際為替部多田出健太 03-3242-7065 kenta.tadaide@mizuho-cb.co.jp 今週のエマージングマーケット Tapering スタートを意識したドル買い前週末の米株式市場が軟調だったことを受け 週明け 12 日のアジア時間はアジア通貨が対ドルで総じて下落する動きとなった シンガポールドルは朝方発表されたシンガポール 4~6 月期の実質 GDP( 改定値 ) は前期比年率 15.5% 増と予想を上回る結果となり 一時 8 週間ぶり高値まで上昇したものの その後は利食い売りに押し戻された 欧米時間には 翌日に米 7 月小売売上高の発表を控え 良好な結果に米量的緩和 (QE) の縮小観測が強まるとの思惑からドル買いが優勢となり エマージング通貨は下落 13 日も QE 縮小観測を背景にドルを買う流れが継続し アジア通貨は弱含む展開となった 注目の米 7 月小売売上高が堅調な結果となると QE 縮小の思惑からドルが買われ エマージング通貨は下押しされた 14 日のアジア時間もアジア通貨は軟調な動きとなり マレーシアリンギは 3 年ぶりの安値を更新した その後発表されたユーロ圏 4~6 月期 GDP が予想を上回るとユーロが上昇する動きに エマージング通貨はサポートされた だが 15 日は QE 縮小観測を背景としたドル買い圧力が残る中でエマージング通貨は上値重く推移している こうした状況下 BRL が大幅に下落したほか ZAR IDR などが引き続き軟調な推移となっている エマージング通貨騰落率 ( 対ドル ) エマージング株式騰落率 CNY THB TWD KRW RUB TRY PHP SGD INR MYR IDR ZAR MXN BRL -2.9% -0.1% -0.1% -0.3% -0.4% -0.7% -0.7% -0.9% -1.0% -1.2% -1.4% -1.6% -1.6% 0.2% ( 資料 )Bloomberg ( 資料 )Bloomberg ( 注 )US: 米国 S&P500 種指数 KR: 韓国総合株価指数 TW: 台湾加権指数 HK: 香港ハンセン指数 CN: 中国上海総合指数 SG: シンガポール ST 指数 TH: タイ SET 指数 ID: インドネシアジャカルタ総合指数 MY: マレーシア FTSE ブルサマレーシア KLCI インデックス PH: フィリピン総合指数 IN: インド SENSEX30 種指数 TR: トルコイスタンブールナショナル 100 種指数 RU: ロシア RTS 指数 ZA: 南アフリカ FTSE/JSE アフリカ全株指数 BR: ブラジルボベスパ指数 MX: メキシコボルサ指数 HK IN PH KR BR ZA TH CN ID MY TR TW RU SG MX US -1.2% -1.8% -0.3% 3.4% 3.1% 2.8% 2.3% 2.1% 1.8% 1.5% 1.4% 1.0% 0.7% 0.6% 0.4% 0.1% 当資料は情報提供のみを目的として作成したものであり 特定の取引の勧誘を目的としたものではありません 当資料は信頼できると判断した情報に基づいて作成されていますが その正確性 確実性を保証するものではありません ここに記載された内容は事前連絡なしに変更されることもあります 投資に関する最終決定は お客様ご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます また 当資料の著作権はみずほ銀行に属し その目的を問わず無断で引用または複製することを禁じます 1

米経済指標の結果次第で振らされる状況は継続 各 EM 通貨の置かれた状況を整理する必要 来週のエマージングマーケットドル相場依存の中でも選別の動きエマージング通貨は FRB の tapering 観測を材料に振らされる展開が続いており 来週は発表される米住宅関連指標の結果や FOMC 議事要旨を受けたドル相場の反応に振らされそうである まず 今晩に 7 月住宅着工があるほか 21 日 ( 水 ) には 7 月中古住宅販売 23 日 ( 金 ) には 7 月新築住宅販売が発表される また 21 日 ( 水 ) には FOMC 議事要旨 (7 月 30~31 日開催分 ) が公表される 8 月は FOMC が予定されていないこともあり 9 月の FOMC を占う上で大きな注目が集まろう こうした状況下 大きな流れはドル相場に依存しているものの エマージング通貨の中で選別の動きが強まっており 各通貨の置かれた状況を整理しておく必要性が高まっている 韓国ウォンは多額の経常黒字を背景に底堅く推移しているものの 1 ドル =1110 ウォン近辺では介入警戒感が拡がっており 上値は限定的となっている マレーシアリンギは 3 年ぶり安値を更新している 経常収支の黒字が急速に縮小しているほか QE 縮小観測に伴い新興国から先進国へと資金の逆流が起こり易くなっている中 外国人投資家による国債保有比率が高いうえに ナジブ政権の財政再建への取り組みが遅いとの見方から売られている また フィリピンペソに関しては 7 月 29 日にフィリピン中央銀行のテタンコ総裁が 1 ドル =42~44 ペソが 良いレンジだ との認識を示しており 44 台近辺まで売られる局面では介入が警戒されている インドネシアの外貨準備は 減少が続く エマージングマーケット : 地域別エマージングアジアインドネシア銀行 ( 中央銀行 BI) が 14 日に発表した 7 月末時点の外貨準備高は前月から 54.2 億ドル減の 927 億ドルとなった 外貨準備の減少は 3 か月連続であり 2013 年は 7 か月中 6 か月で外貨準備が前月比で減少となっている 今年に入り BI はオンショアマーケットのドル需要の 3 分の 1 を占めるとされる国営石油ガス会社プルタミナおよび国営電力会社ペルサハーン リストリク ネガラ (PLN) に対して直接ドルを供給 ( 要するに為替介入 ) しており 外貨準備が減少するのは自然なことである インドネシアルピアは 15 日に 2009 年 6 月以来 約 4 年 2 か月ぶりの安値をつけているが 外貨準備の減少に伴い いずれ為替介入を続ける余裕が無くなるとの不安が市場で拡がっていることが下げを加速していると指摘できる しかし インドネシアの外貨準備高は 6 月末時点で 1000 億ドルを割り込み 7 月末時点では 900 億ドル近くまで減っ 2013 年 8 月 16 日 2

金融政策は引締め方向 ているが 現在の規模でも直ぐに外貨流動性危機に陥るような水準ではない ルピア安の背景には貿易収支の悪化に基づく需給の悪化があり 世界経済の回復ペースが緩慢であることを考えると輸出の伸びには期待できないため 景気引締めによって輸入を抑制することで対応することが必要となりそうである 15 日に開催された金融政策決定会合では 後述するように流動性吸収措置が発表されたが 景気に配慮して利下げには踏み込んでおらず 金融政策の方向性は間違っていないものの 中途半端な感も否めない 15 日に開催された金融政策決定会合では 政策金利である BI レートを 6.50% に据え置くことを決定した また 銀行間取引金利の下限となる預金ファシリティ金利 (FASBI) は 4.75% 上限となる貸出ファシリティ金利は 6.75% からそれぞれ変更はなかった 一方で 1 中銀預金証書 (Bank Indonesia Deposit Certificate:SDBI) の発行 2 預貸率の上限引き下げ 3 預金準備率の引き上げ によってルピアの過剰流動性を吸収する方針を示した 先週の本欄でも述べたが インドネシアの銀行間取引金利 (JIBOR) は その下限金利となる FASBI に張り付くように推移していることから FASBI の引き上げが JIBOR に影響を及ぼすことになり BI レートの引き上げ自体は対外的に利上げを印象付ける程度の効果しかない また JIBOR が FASBI に張り付いて推移しているということは市場でルピアが余剰であることの現れであり 今回の流動性吸収措置によって JIBOR が FASBI から上離れしてくる可能性がある BI レートの引き上げは対外的インパクトが大きいほか FASBI の引き上げにしても利上げとの印象は残る だが 流動性吸収によってインターバンク金利が上昇するならば金融引締め効果が得られるため このような苦肉の策に出たのかもしれない 通貨価値とインフレ率を安定させることや経常収支の持続可能性を確保するためには 成長を多少犠牲にしてでも引締め的な金融政策が必要となる筈であり 今回の決定は方向性としては間違っていないと思われる インドはルピー安抑制策を相次いで発表 だが 小手先対応だけではルピー防衛は難しい 米国が量的緩和 (QE) の縮小に向けて動きだす中 巨額の経常赤字を背景にインドルピーは売り進められており 8 月 6 日には 1 ドル =62 ルピーに迫り過去最安値を更新した インドルピーは年初来で 10% 超下落しており ルピー安によるインフレ圧力が徐々に顕在化しつつある インド 7 月卸売物価指数 (WPI) は前年比 5.8% 上昇と市場予想の同 5.0% 上昇を上回り 6 月の同 4.9% 上昇から加速した インド準備銀行 ( 中央銀行 RBI) は先月に流動性調節ファシリティ (LAF) における MSF( 限界常設ファシリティ ) と RBI が市中銀行に貸し出す際の金利であるバン 2013 年 8 月 16 日 3

クレートを 10.25% に引き上げたほか 流動性引締め措置を導入し ルピー安抑制を試みているが思うような効果は得られていない そうした中 インドのチダムバラム財務相は 12 日 経常赤字の削減策として金や銀 一部品目の輸入関税を引き上げる方針を示した また 政府系金融機関である電力融資公社 (PFC) インドインフラ金融公社(IIFCL) インド鉄道金融公社 (IRFC) の 3 社によるソブリン債の発行や外貨借入の規制緩和によって外貨流入を促進することを発表した 12 日の段階では輸入関税の引き上げに関し具体的な内容は明らかにされなかったが 翌 13 日にインド財務省は金とプラチナの輸入関税率を 8% から 10% に引き上げたほか 銀の関税率も 6% から 10% に引き上げられた インドの経常赤字は原油と金の輸入が主な押し上げ要因となっており インド政府は今年に入ってこれまで 1 月と 6 月に金の関税引き上げを実施し 今回で 3 度目の引き上げとなったわけだが こうした策の効果については懐疑的な見方が多い また RBI は 14 日に国内勢による資金アウトフローに対する規制強化を発表した 発表された規制は以下の 3 点である :(1) 自動的認可ルートにおける ( 同国企業が認可申請なしで実施できる ) 海外直接投資の金額を従来は自己資本の 400% から 100% に引き下げ (2) 個人の居住者が自由送金スキーム (LRS Scheme) に基づいて海外に自由に送金できる金額の上限を年 20 万ドルから 7.5 万ドルへ減額 (3)LRS に基づく送金による海外不動産購入の禁止 なお 今回新たに規制対象となったものであっても 従来どおり RBI による認可ルートを通じて投資活動を行うことはできる 政府 中銀はルピー安に対処すべく様々な対策を打っているものの 大きな成果は挙げられていない 結局のところ ルピーが下落している理由は経常赤字と財政赤字の 双子の赤字 であり これらを改善する改革が実行されなければルピー相場の脆弱性は解消できない 特に 財政赤字はクラウディングアウトによってインド経済の成長力を阻害している懸念があり 早急に財政再建を進めるべきだろう 2013 年 8 月 16 日 4

エマージング経済カレンダー 日付 国 経済指標 イベント 単位 市場予想 前回値 発表値 エマージングアジア 9 日 ( 金 ) 中国 7 月 消費者物価指数 前年比 % 2.8 2.7 2.7 9 日 ( 金 ) 中国 7 月 鉱工業生産 前年比 % 8.9 8.9 9.7 9 日 ( 金 ) 中国 7 月 固定資産投資 前年比 % 20.0 20.1 20.1 9 日 ( 金 ) 中国 7 月 小売売上高 前年比 % 13.5 13.3 13.2 9 日 ( 金 ) 中国 7 月 新規融資 億元 6,400 8,605 6,999 12 日 ( 月 ) インド 6 月 鉱工業生産 前年比 % 1.1 2.8 2.2 12 日 ( 月 ) シンガポール 4~6 月期 実質 GDP( 確報値 ) 前年比 % 3.5 3.7 3.8 12 日 ( 月 ) インド 7 月 輸出 前年比 % - 4.6 11.6 13 日 ( 火 ) フィリピン 6 月 輸出 前年比 % 8.1 0.8 4.1 14 日 ( 水 ) インド 7 月 卸売物価指数 前年比 % 5.00 4.86 5.79 15 日 ( 木 ) シンガポール 6 月 小売売上高 前年比 % 2.3 3.1 4.0 15 日 ( 木 ) インドネシア 金融政策決定会合 % 6.50 6.50 6.50 15 日 ( 木 ) フィリピン 6 月 海外労働者 (OFW) 送金 前年比 % 5.6 5.3 5.8 16 日 ( 金 ) インドネシア 4~6 月期 経常収支 百万 USドル - 5,270 16 日 ( 金 ) 台湾 4~6 月期 実質 GDP( 確報値 ) 前年比 % 2.30 2.27 16 日 ( 金 ) シンガポール 7 月 輸出 ( 除く石油 ) 前年比 % 2.9 8.9 0.7 19 日 ( 月 ) タイ 4~6 月期 実質 GDP 前年比 % 3.3 5.3 20 日 ( 火 ) 台湾 7 月 輸出受注 前年比 % 0.7 3.5 21 日 ( 水 ) タイ 金融政策決定会合 % 2.50 2.50 21 日 ( 水 ) マレーシア 7 月 消費者物価指数 前年比 % 2.0 1.8 21 日 ( 水 ) マレーシア 4~6 月期 実質 GDP 前年比 % 4.8 4.1 22 日 ( 木 ) 中国 8 月 HSBC 製造業 PMI( 速報値 ) 48.2 47.7 23 日 ( 金 ) 台湾 7 月 鉱工業生産 前年比 % 0.30 0.43 23 日 ( 金 ) シンガポール 7 月 消費者物価指数 前年比 % - 1.8 中東欧 アフリカ 9 日 ( 金 ) ロシア 6 月 貿易収支 億ドル 137 150 136 9 日 ( 金 ) ロシア 金融政策決定会合 4.50 4.50 4.50 9 日 ( 金 ) ロシア 4~6 月期 実質 GDP 前年比 % 2.0 1.6 1.2 12 日 ( 月 ) トルコ 6 月 鉱工業生産 前年比 % - 1.0 4.2 14 日 ( 水 ) 南アフリカ 6 月 実質小売売上高 前月比 % 3.0 6.0 1.9 15 日 ( 木 ) トルコ 6 月 経常収支 億ドル 51 75 15~16 日 ロシア 7 月 鉱工業生産 前年比 % 0.2 0.1 19~20 日 ロシア 7 月 実質小売売上高 前年比 % 3.7 3.5 19~20 日 ロシア 7 月 設備投資 前年比 % 1.0 3.7 20 日 ( 火 ) トルコ 金融政策決定会合 % - 3.50 21 日 ( 水 ) 南アフリカ 7 月 消費者物価指数 前年比 % - 5.5 ラテンアメリカ 9 日 ( 金 ) メキシコ 5 月 鉱工業生産 前年比 % 0.1 0.3 2.4 14 日 ( 水 ) ブラジル 6 月 小売売上高 前年比 % 2.0 4.4 1.7 15 日 ( 木 ) ブラジル 6 月 経済活動指数 前年比 % 2.70 2.28 2.35 20 日 ( 火 ) メキシコ 4~6 月期 実質 GDP 前年比 % 2.5 0.8 21 日 ( 水 ) メキシコ 6 月 小売売上高 前年比 % 0.1 0.1 23 日 ( 金 ) ブラジル 7 月 経常収支 百万 USドル ー 3,953 ( 注 )2013 年 8 月 16 日現在 信頼できると判断した情報に基づいて作成されていますが その正確性 完全性を全面的に保証するものではありません 2013 年 8 月 16 日 5

エマージング通貨相場見通し 2013 年 2013 年 2014 年 1~7 月期 ( 実績 ) SPOT 9 月 12 月 3 月 6 月 9 月 対ドルエマージングアジア韓国ウォン (KRW) 1054.49 ~ 1162.90 1115.55 1130 1140 1130 1110 1130 台湾ドル (TWD) 28.913 ~ 30.228 29.947 29.90 29.90 29.80 29.60 29.80 香港ドル (HKD) 7.7503 ~ 7.7664 7.7543 7.76 7.76 7.76 7.77 7.77 中国人民元 (CNY) 6.1203 ~ 6.2492 6.1109 6.12 6.11 6.10 6.09 6.10 シンガポールドル (SGD) 1.2195 ~ 1.2860 1.2701 1.27 1.28 1.27 1.26 1.28 タイバーツ (THB) 28.56 ~ 31.53 31.28 31.10 31.40 31.10 30.90 31.30 インドネシアルピア (IDR) 9603 ~ 10330 10405 10300 10400 10450 10350 10500 マレーシアリンギ (MYR) 2.9570 ~ 3.2536 3.2780 3.22 3.25 3.23 3.18 3.25 フィリピンペソ (PHP) 40.540 ~ 44.181 43.803 43.00 43.20 42.90 42.40 42.80 ベトナムドン (VND) 20798 ~ 21243 21095 21200 21300 21300 21400 21500 インドルピー (INR) 52.890 ~ 61.213 61.444 61.50 60.50 60.50 60.00 61.00 中東欧 アフリカトルコリラ (TRY) 1.7456 ~ 1.9740 1.9328 1.90 1.95 1.95 2.00 2.05 ロシアルーブル (RUB) 29.8356 ~ 33.3727 32.9786 32.80 33.00 33.20 33.60 34.00 南アフリカランド (ZAR) 8.4110 ~ 10.3692 9.9758 9.90 10.20 10.30 10.60 10.80 ラテンアメリカブラジルレアル (BRL) 1.9419 ~ 2.3016 2.3407 2.30 2.35 2.35 2.40 2.45 メキシコペソ (MXN) 11.9364 ~ 13.4618 12.8198 12.80 13.00 13.00 13.10 13.20 対円エマージングアジア韓国ウォン (100KRW) 8.084 ~ 9.303 8.734 8.67 8.77 8.94 9.28 9.29 台湾ドル (TWD) 2.977 ~ 3.480 3.253 3.28 3.34 3.39 3.48 3.52 香港ドル (HKD) 11.110 ~ 13.366 12.565 12.63 12.89 13.02 13.26 13.51 中国人民元 (CNY) 13.872 ~ 16.919 15.944 16.01 16.37 16.56 16.91 17.21 シンガポールドル (SGD) 70.47 ~ 82.45 76.71 77.17 78.13 79.53 81.75 82.03 タイバーツ (THB) 2.824 ~ 3.497 3.115 3.15 3.18 3.25 3.33 3.35 インドネシアルピア (100IDR) 0.883 ~ 1.062 0.936 0.951 0.962 0.967 0.995 1.000 マレーシアリンギ (MYR) 28.322 ~ 34.195 29.722 30.43 30.77 31.27 32.39 32.31 フィリピンペソ (PHP) 2.115 ~ 2.510 2.224 2.28 2.31 2.35 2.43 2.45 ベトナムドン (10000VND) 41.53 ~ 49.70 46.19 46.23 46.95 47.42 48.13 48.84 インドルピー (INR) 1.578 ~ 1.876 1.586 1.59 1.65 1.67 1.72 1.72 中東欧 アフリカトルコリラ (TRY) 48.453 ~ 56.623 50.409 51.58 51.28 51.79 51.50 51.22 ロシアルーブル (RUB) 2.829 ~ 3.319 2.954 2.99 3.03 3.04 3.07 3.09 南アフリカランド (ZAR) 9.299 ~ 11.252 9.767 9.90 9.80 9.81 9.72 9.72 ラテンアメリカブラジルレアル (BRL) 42.174 ~ 51.020 41.624 42.61 42.55 42.98 42.92 42.86 メキシコペソ (MXN) 6.703 ~ 8.457 7.600 7.66 7.69 7.77 7.86 7.95 ( 注 ) 1. 実績の欄は7 月 31 日まで SPOTは8 月 16 日の10 時 40 分頃 2. 実績値はブルームバーグの値などを参照 3. 予想の欄は四半期末の予想レベル 2013 年 8 月 16 日 6