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要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな

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95 自己免疫性肝炎 概要 1. 概要自己免疫性肝炎は 肝細胞障害の成立に自己免疫機序が関与していると考えられる慢性に経過する肝炎であり 中年以降の女性に好発することが特徴である 原則的には既知の肝炎ウイルス アルコール 薬物による肝障害 及び他の自己免疫疾患に基づく肝障害は除外される また 治療に際し免疫抑制剤 特にコルチコステロイドが著効を奏す 一方 最近の調査により 急性肝炎様に発症する症例の存在が明らかとなっている 発症年齢は 60 歳を中心とする一峰性を示し 多くは中年以降の発症であり 最近高齢化がみられる 男女比は約 1:6で女性に多い 2. 原因自己免疫性肝炎の病因は解明されていないが 日本人では 60% の症例で HLA-DR4 陽性 欧米では HLA-DR3 と HLA-DR4 陽性例が多いことから何らかの遺伝的素因が関与していると思われる また ウイルス感染 (A 型肝炎ウイルス Epstein-Barr ウイルス サイトメガロウイルス 麻疹ウイルス ) や一部の薬剤が自己免疫性肝炎発症の誘因として報告されている 3. 症状我が国では初発症状としては 倦怠感が 60% と最も多く 黄疸 (35 %) 食思不振(27%) がこれに次ぐ またウイルス性慢性肝炎では通常ない関節痛 発熱を初発とするものがそれぞれ約 15% にみられる また 合併する他の自己免疫疾患による症状を初発症状とするものもある 自己免疫疾患あるいは膠原病の合併はおよそ 1/3 の症例でみられ 合併頻度の高いものとしては慢性甲状腺炎 (9% 程度 ) シェーグレン症候群 (7% 程度 ) 関節リウマチ(3% 程度 ) がある 身体症候としては 他のウイルス性慢性肝炎 肝硬変と異なることはない 4. 治療法治療目標は血清トランスアミナーゼ (AST GOT,ALT GPT ) の持続正常化である 第一選択薬はプレドニゾロンである 血清トランスアミナーゼと IgG の改善を指標にする ステロイドパルス療法による予後改善効果については 現時点では不明である 一方 急性肝不全 ( 劇症肝炎 遅発性肝不全 ) 例にステロイドパルス療法を行う際には 感染症 ( 特に 真菌感染 ) に対する十分な注意が必要である 2 年間以上血清トランスアミナーゼと IgG が正常内で推移すれば プレドニゾロンの中止も検討可能である しかし 血清トランスアミナーゼや IgG が持続的に正常化していない症例では 治療中止により高率に再燃がみられる 治療を中止した症例の 80% で再燃がみられ 60% の症例は1 年以内に再燃するため 治療中止後も十分な経過観察が必要である 初回のプレドニゾロン治療に良好に反応した症例の多くでは 再燃時においてもプレドニゾロンの増量により血清トランスアミナーゼの正常化を得ることができる 副腎皮質ステロイド治療にもかかわらず再燃を繰り返す症例や副腎皮質ステロイドが使用できない症例では 免疫抑制剤アザチオプリンの使用が有効である アザチオプリン投与時には 血液障害 ( 汎血球減少 貧血 無顆粒球症 血小板 1

減少 ) 感染症 肝障害などに注意が必要である プレドニゾロン漸減時や軽度の再燃時には ウルソデオキシコール酸を併用することで血清トランスアミナーゼの持続正常化を得られる場合がある 自己免疫性肝炎による急性肝不全 ( 劇症肝炎 遅発性肝不全 ) 例の予後は不良であり 肝移植を視野に入れた治療方針の決定が必要である 5. 予後適切な治療が継続的に行われた自己免疫性肝炎症例の予後は 概ね良好であり 生存期間についても一般人口と差を認めない しかし 適切な治療が行われないと 他の慢性肝疾患に比べて早期に肝硬変 肝不全へと進行する 予後を良好に保つためには血清トランスアミナーゼの持続正常化が重要であり 繰り返す再燃は予後不良 ( 肝不全 肝癌 ) につながる 要件の判定に必要な事項 1. 患者数 ( 研究班による ) 約 10,000 人 2. 発病の機構不明 ( 自己免疫的機序の関与が示唆される ) 3. 効果的な治療方法未確立 ( 根本的治療法なし ) 4. 長期の療養必要 ( 適切な治療が行われないと 早期に肝硬変 肝不全へと進行する ) 5. 診断基準あり ( 難治性の肝 胆道疾患に関する調査研究 班自己免疫性肝炎分科会の診断基準等 ) 6. 重症度分類自己免疫性肝炎診療ガイドライン (2013 年 ) 重症度判定の中等症以上 または組織学的あるいは臨床的に肝硬変と診断される症例を医療費助成の対象とする 情報提供元 難治性の肝 胆道疾患に関する調査研究班 研究代表者鹿児島大学大学院医歯学総合研究科客員研究員坪内博仁 2

< 診断基準 > 典型例及び非典型例を対象とする 1. 他の原因による肝障害が否定される 2. 抗核抗体陽性あるいは抗平滑筋抗体陽性 3.IgG 高値 (> 基準上限値 1.1 倍 ) 4. 組織学的に interface hepatitis や形質細胞浸潤がみられる 5. 副腎皮質ステロイドが著効する 典型例上記項目で 1 を満たし 2~5のうち3 項目以上を認める 非典型例上記項目で 1 を満たし 2~5の所見の1~2 項目を認める 注 1. 副腎皮質ステロイド著効所見は治療的診断となるので 典型例 非典型例ともに 治療開始前に肝生検を行い その組織所見を含めて診断することが原則である ただし 治療前に肝生検が施行できないときは診断後速やかに副腎皮質ステロイド治療を開始する 2. 国際診断スコアが計算できる場合にはその値を参考とし 疑診以上は自己免疫性肝炎と診断する 3. 診断時 既に肝硬変に進展している場合があることに留意する 4. 急性発症例では 上記項目 2 3を認めない場合がある また 組織学的に門脈域の炎症細胞を伴わず 中心静脈域の壊死 炎症反応と形質細胞を含む単核球の浸潤を認める症例が存在する 5. 診断が確定したら 必ず重症度評価を行い 重症の場合には遅滞なく 中等症では病態に応じ専門機関へ紹介する なお 1のみを満たす症例で 重症度より急性肝不全が疑われる場合も同様の対応をとる 6. 簡易型スコアが疑診以上の場合は副腎皮質ステロイド治療を考慮する 7. 抗ミトコンドリア抗体が陽性であっても 簡易型スコアが疑診以上の場合には副腎皮質ステロイド治療を考慮する. 自己免疫性肝炎での抗ミトコンドリア抗体陽性率は約 10% である 8. 薬物性肝障害 (Drug-induced liver injury:dili) の鑑別には DDW-J 2004 薬物性肝障害診断スコアおよびマニュアルを参考にする 9. 既知の肝障害を認め この診断指針に該当しない自己免疫性肝炎も存在する 3

( 参考 ) 簡易型スコア Simplified Criteria for the Diagnosis of Autoimmune Hepatitis(2008 年 ) 抗核抗体 (ANA) or 抗平滑筋抗体 (SMA) 40 倍以上抗核抗体 (ANA) or 抗平滑筋抗体 (SMA) 80 倍以上肝腎マイクロゾーム抗体 (LKM) 40 倍以上 SLA 抗体 (SLA) 陽性 1 点 IgG > 正常上限 1 点 >1.1 倍 肝生検 適応像 典型像 1 点 ウイルス性肝炎の否定可能 6 点以上 : 疑診 (probable AIH) 7 点以上 : 確診 (definite AIH) 国際診断スコア 項目点数註 女性 ALP:AST または <1.5 1.ALP と ALT 値との比は, それぞれを正 ALP:ALT 1.5~3.0 0 常の上限値で除した比で表される. すなわ >3.0-2 ち,(ALP 値 ALP 正常上限値 ) (AST 値 AST 正常上限値 ).ALT についても同様 に計算する. 血清グロブリンまたは >2.0 lgg 値 正常上限値との 1.5~2.0 比 1.0~1.5 <1.0 0 ANA SMA または >1:80 2. ゲッ歯目組織切片を用いた間接免疫蛍 LKM-1 抗体 1:80 光法による自己抗体力価.ANA 力値は 1:40 Hep-2 細胞を用いた間接免疫蛍光法によ <1:40 0 る測定も可. 小児は低力価でも陽性. AMA 陽性 -4 肝炎ウイルスマーカー 陽性 -3 3.A 型,B 型,C 型肝炎ウイルスマーカー. 陰性 ( すなわち lgm anti-hav,hbs Ag,lgM anti-hbc,anti-hcv および HCV RNA). こ れらの肝炎ウイルスマーカーが陰性であっ 4

項 目 点数 註ても肝障害を惹起し得るウイルス (CMV, EBV など ) の関与が想定される場合には, それぞれのウイルスマーカーを測定する. 薬物服用歴 陽性 -4 4. 肝障害出現時までに肝障害を惹起し得 陰性 る既知またはその可能性のある薬物服用 歴. 平均アルコール摂取量 <25g/ 日 >60g/ 日 -2 肝組織像 interface hepatitis リンパ球や形質細胞優位の細胞浸潤 肝細胞のロゼット形成 上記のいずれの所見も認めない -5 胆管病変 -3 5. 胆管病変とは PBC または PSC に特徴 的な病変 ( 適切な生検肝組織標本により確 認された胆管消失を伴う肉芽腫性胆管炎 や胆管周囲の高度の同心円状線維化 ) お よび / または銅 / 銅関連蛋白の沈着を伴 った門脈周囲の顕著な胆管反応 ( いわゆる marginal bile duct proliferation with cholangiolitis). 他の病変 -3 6. 異なる病因を示唆する明らかな病変ま たは複数の疑わしい病変. 他の自己免疫疾患の合 併 7. 患者または一親等での他の自己免疫疾患の合併. 付加項目 8. 他の自己抗体や HLA DR3 または DR4 に対する加点は,ANA, SMA および LKM-1 のいずれも陰性の症例に限る. 他の自己抗体陽性 9. 他の自己抗体とは測定方法が確立さ れ,AIH への関連が明らかとされた自己抗 体で, panca, anti-lc1, anti-sla, anti-asgp-r,lsp, anti-lp, anti-sulfatid な どが含まれる ( 成書参照 ). HLADR3 または DR4 陽性治療反応性 10.HLA DR3 や DR4 は主として北欧コーカ ソイドや日本民族に関連している. 他の人 5

項目点数註 寛解 再燃 種では AIH との関連が明らかとされた DR3, DR4 以外の HLA class Ⅱ 抗原が陽性の場合 1 点加点する. 11. 治療にたいする反応性 ( 別表に示す ) の評価時期は問わず, 治療前の合計得点に加点する. 総合点数による評価 治療前 治療後 AIH 確診例 (definite) AIH 疑診例 (probable) AIH 確診例 (definite) AIH 疑診例 (probable) >15 10~15 >17 12~17 6

< 重症度分類 > 1) または2) を対象とする 1) 自己免疫性肝炎診療ガイドライン (2013 年 ) 重症度判定を用いて 中等症以上 2) 組織学的あるいは臨床的に肝硬変と診断される症例 自己免疫性肝炎診療ガイドライン (2013 年 ) 重症度判定 臨床徴候臨床検査所見画像検査所見 1 肝性脳症あり 1AST,ALT>200IU/l 1 肝サイズ縮小 2 肝濁音界縮小または消失 2 ビリルビン >5mg/dl 2 肝実質の不均質化 3プロトロンビン時間 <60% 重症 : 次の 1,2,3 のいずれかが見られる.1. 臨床徴候 :1または2, 2. 臨床検査所見 :1 または2, 3. 画像検査所見 :1または2 中等症 : 臨床徴候 :1,2, 臨床検査所見 :3, 画像検査所見 :1,2が見られず, 臨床検査所見 :1または2が見られる. 軽症 : 臨床徴候 :1,2, 臨床検査所見 :1,2,3, 画像検査所見 :1,2のいずれも見られない. 註 1. 重症と判断された場合 遅滞なく肝臓専門医のいる医療機関への紹介を考慮する 2. 重症の場合 劇症肝炎分科会の予後予測モデル MELD も参考にする 3. 中等症の症例で プロトロンビン時間が 60% 以下 あるいは黄疸高度の場合も専門機関への紹介を考慮する 診断基準及び重症度分類の適応における留意事項 1. 病名診断に用いる臨床症状 検査所見等に関して 診断基準上に特段の規定がない場合には いずれの時期のものを用いても差し支えない ( ただし 当該疾病の経過を示す臨床症状等であって 確認可能なものに限る ) 2. 治療開始後における重症度分類については 適切な医学的管理の下で治療が行われている状態で 直近 6ヵ月間で最も悪い状態を医師が判断することとする 3. なお 症状の程度が上記の重症度分類等で一定以上に該当しない者であるが 高額な医療を継続することが必要な者については 医療費助成の対象とする 7