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32 小野啓, 他 は変化を認めなかった (LacZ: 5.1 ± 0.1% vs. LKB1: 5.1 ± 0.1)( 図 6). また, 糖新生の律速酵素である PEPCK, G6Pase, PGC1 α の mrna 量が LKB1 群で有意に減少しており ( それぞれ 0.5 倍,0.8 倍

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解糖系 (2) 平成 24 年 5 月 7 日生化学 2 ( 病態生化学分野 ) 教授 山縣和也

本日の学習の目標 解糖系の制御機構を理解する 2,3-BPG について理解する 癌と解糖系について理解する

エネルギー代謝経路 グリコーゲン グリコーゲン代謝 タンパク質 アミノ酸代謝 トリアシルグリセロール グルコース グルコース 6 リン酸 アミノ酸 脂肪酸 脂質代謝 解糖系 糖新生 β 酸化 乳酸 ピルビン酸 アセチル CoA ケト酸 ピルビン酸脱水素酵素 クエン酸回路電子伝達系 ATP

細胞質 解糖 Glycolysis エムデン マイヤーホフ経路 Embden-Meyerhof pathway ATP ADP ATP ADP グルコース グルコース 6-リン酸 フルクトース 6-リン酸 フルクトース 1,6-ビスリン酸 ATP 3-ホスホグリセリン酸 ADP 1,3- ビスホスホグリセリン酸 グリセルアルデヒド 3- リン酸 ジヒドロキシアセトンリン酸 NADH NAD 2- ホスホグリセリン酸 ADP ATP NADH NAD ホスホエノールピルビン酸ピルビン酸乳酸 ミトコンドリア ( クエン酸回路, 酸化的リン酸化 )

Louis Pasteur (1822-1895)

パスツール効果 酸素がないと酵母はあまり増殖しないが 大量の糖を発酵する 酸素があると増殖はさかんであるが糖の発酵は低下する 1861 年の観察だが その仕組みは 100 年間不明であった

6- ホスホフルクト -1- キナーゼ Phosphofructokinase (PFK, PFK-1) 解糖系の調節酵素 ( 解糖系調節の主役 ): 律速酵素 -2O 3 POCH 2 O CH 2 OH -2O 3 POCH 2 O CH 2 OPO 2-3 H H OH HO H OH + ATP フルクトース 6- リン酸 Fructose-6-phosphate (F6P) Mg 2+ + ADP + H + PFK H H OH HO H OH フルクトース 1,6- ビスリン酸 Fructose-1,6-bisphosphate (FBP) PFK F6P ATP 基質結合部

ホスホフルクト -1- キナーゼ (PFK) の ATP によるアロステリック制御 PFK の反応速度 (% Vmax) 100 50 低 [ATP] 高 [ATP] Km Km [ フルクトース 6- リン酸 ]

アロステリック酵素 : アロステリック部位へ結合するエフェクターによって触媒部位が調節される酵素 アロステリック部位 基質結合部位

アロステリック制御 : 基質結合部位とは異なる別の部位に結合して活性を調節する ATP 濃度が低いときには F6P が結合できる PFK F6P ATP 基質結合部 アロステリック結合部位 ATP 濃度が高いときには F6P の親和性を低下させる F6P ATP PFK ATP

アロステリック制御 : 基質結合部位とは異なる別の部位に結合して活性を調節する アロステリック結合部位 クエン酸 PFK F6P ATP 抑制 アロステリック結合部位 AMP PFK F6P 活性化 ATP

クエン酸が多い = エネルギーが豊富 クエン酸回路

パスツール効果 酸素がないと酵母はあまり増殖しな いが 大量の糖を発酵する 酸素があ ると増殖はさかんであるが糖の発酵は 低下する ミトコンドリアで産生 酸素の充分にある条件下では クエン酸と ATP が多量に産生される そのために PFK が抑制されてしまう

-2O 3 POCH 2 O CH 2 OH PFK -2O 3 POCH 2 O CH 2 OPO 2-3 H H OH HO H OH フルクトース 6- リン酸 Fructose-6-phosphate (F6P) H H OH HO H OH フルクトース 1,6- ビスリン酸 Fructose-1,6-bisphosphate (FBP) PFK2 (phosphofructokinase-2) フルクトース 2,6- ビスリン酸 Fructose 2,6-bisphosphate (F2,6P) 解糖系 (PFK) の促進因子 -2O 3 POCH 2 H H OH O OPO 3 2- HO H CH 2 OH

F26P は強力なアロステリック活性促進作用をもち ATP による抑制を解除する

肝臓における調節機構 グルコース PFK2 F-6-P PFK インスリンにより活性化 F-2,6-BP PFK の活性化 F-1,6-BP 肝臓ではグルコースが豊富にある ( インスリンが高値 ) と解糖系が加速される (Feedfoward 反応 )

二機能酵素 (bi-functional enzyme) PFK2 FBPase2 フルクトースビスホスファターゼ 2 F6P から F26P へ F26P から F6P へ PFK2 は F6P を F26P にする作用以外にも F26P を F6P にもどす働きも行うことができる (fructose-2, 6-bisphosphatase 活性をもつ )(bi-functional enzyme)

二機能酵素 (bi-functional enzyme) PFK2 FBPase2 F6P から F26P へ 血糖が高いときにはフォスファターゼ活性は抑制されており PFK2 の部分が活性化されている

二機能酵素 (bi-functional enzyme) PFK2 FBPase2 P F26P から F6P へ 血糖が低いときには 膵臓の α 細胞から分泌されるグルカゴンにより リン酸化されることで PFK2 の部分が抑制され F26BP の濃度が減少する 血糖が低いときには解糖系は阻害される

PFK による解糖系制御のまとめ PFKはアロステリック効果によりATPによって阻害される 逆にAMPによって活性化される つまりエネルギー状態が高いときは解糖を抑制し エネルギーが低いときは促進する PFKはTCAサイクルの中間体であるクエン酸によっても抑制される TCAサイクルの素材が十分あるときには貴重なグルコースをそれ以上分解しないようにする 肝 PFKはF26Pによって活性化される 空腹時にはグルカゴンによってF26Pが減少するように流れる そのため肝の解糖系は抑制され 逆に糖新生 ( グルコースをつくる ) が増加する

解糖系の制御段階 ヘキソキナーゼ グルコース + ATP グルコース 6- リン酸 + ADP + H+ ホスホフルクトキナーゼ フルクトース 6- リン酸 + ATP フルクトース 1,6- ビスリン酸 + ADP + H+ ホスホエノールピルビン酸 + ADP +H+ ピルビン酸キナーゼ ピルビン酸 + ATP

抑制 ヘキソキナーゼ グルコース + ATP グルコース 6- リン酸 + ADP + H+ へキソキナーゼは G6P によってフィードバック阻害をうける G6P がたくさんできると ヘキソキナーゼが抑制され 解糖系は抑制される しかし β 細胞に発現するグルコキナーゼは G6P で阻害されない ( 細胞により解糖系の制御が異なる ) PFK が抑制されると F6P が増加する そうすると G6P も増加し へキソキナーゼも抑制されてしまう

HK PFK グルコース G6P F6P F16P ( 解糖系 ) 促進 ( フィードフォワード刺激 ) ホスホエノールピルビン酸 + ADP +H+ ピルビン酸キナーゼ ピルビン酸 + ATP 抑制 グルカゴン ( 肝臓の PK はグルカゴンでリン酸化され 抑制される ) 抑制アラニン ( ピルビン酸に変換される )

赤血球における 2,3-BPG の産生 19µM 1µM 4000µM 118µM

赤血球 : 酸素を豊富に含み 全身の細胞に酸素を運搬する 酸素は水にとけにくい ヘモグロビンは赤血球に含まれるタンパク質であり 血液中での酸素担体として働く ヘモグロビンは α 鎖 2 本と β 鎖 2 本からなり 4 量体を形成している ヘモグロビンによって酸素の運搬が容易になる

酸素が結合するにつれてサブユニット間をつないでいる静電気的結合 ( 塩橋 ) は弱くなるか壊れる 酸素が次々に結合することでヘモグロビンは低親和性 (T 型 ) から高親和性 (R 型 ) に変換する

ヘモグロビンの酸素結合部位のうち酸素と結合しているものの割合を飽和度 Y で示す 酸素分圧 po2 と Y をプロットしたものを酸素解離曲線という 酸素結合部位の半分が酸素と結合している時 つまり Y=0.5 のときの酸素分圧を P50 と呼ぶ 1mmHg=1 torr

BPG はヘモグロビンの酸素親和性を低下させる BPGは2つのβサブユニットを架橋することで酸素と結合していないヘモグロビンの4 次構造を安定化させる したがって近くの酸素をうばってヘモグロビンに結合させることがない ( 酸素飽和度を減少 ) 組織がより容易に酸素を利用できるようにしている

赤血球における 2,3-BPG の産生 19µM 1µM 118µM 23-BPG による高地順応 低地から高地へ移動すると 酸素がうすいために容易に息切れする しかし 数日すると適応現象で 23BPG の濃度が上昇し 空気がうすいにもかかわらず 十分な酸素を組織にわたすことができるようになる

癌と解糖系 がん細胞は増殖が速いために 血管からの酸素供給が追い付かない ( 低酸素になっている )

癌と解糖系 癌細胞 低酸素 HIF1 (hypoxia inducible factor) 転写因子 : 特定の遺伝子のプロモーターに結合して その遺伝子の発現をふやす 解糖系酵素の遺伝子発現を増加 解糖系が亢進

ポジトロン断層撮影法 (PET) がん細胞で解糖の亢進とそれに伴うグルコースの取り込み増加が起きていることを利用して 新しい診断法が開発されている グルコースを F-18 という放射性同位元素でラベルした FDG( フルオロデオキシグルコース ) を注射するとがんの場所にとりこまれる

理解の確認のために 1. 酸素が多量にあると増殖も解糖も促進する 2. 多量のATPはPFKの活性を抑制する 3. アロステリック結合部位は基質結合部位と一致する 4. クエン酸はPFKの活性を促進する 5. F26PはPFKの強力な抑制因子である 6. グルカゴンは肝においてF26Pを増加させる 7. へキソキナーゼはG6Pにより抑制される 8. ピルビン酸キナーゼはATPで抑制される 9. ヘモグロビンは酸素と結合し 肺から組織に酸素を運ぶ 10. 23BPGの存在下ではヘモグロビンの酸素親和性は低下する 11. がん細胞では解糖系が亢進していることが多い